説明

プリンタ、プリンタの制御方法および制御プログラム

【課題】ホログラムなどの特殊加工が施された記録用紙を用いる場合であっても、印刷ヘッドの摩耗を低減し、信頼性を向上させるとともに、取り扱いを容易とする。
【解決手段】印刷ヘッドを載置し、記録媒体の幅方向に往復移動されるキャリッジを備えたプリンタにおいて、幅方向の両端部のうち少なくとも一方の端部に記録面における厚さよりも厚い所定の厚さを有する肉厚部を有する記録媒体に対し、画像の印刷を行うに際し、印刷における移動時を含み、印刷ヘッドを肉厚部へ接触させずにキャリッジを移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、プリンタの制御方法および制御プログラムに係り、特に郵便局、銀行などの金融機関で運用されている金融機関システムあるいはPOS(Point Of Sales)システム等に用いられ、偽造防止用の特殊加工が施された記録用紙に印刷を行うためのプリンタ、プリンタの制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、郵便局、銀行などの金融機関で用いられている金融機関システムあるいはスーパーマーケットなどの店舗で用いられているPOSシステムにおいては、有価証券、クーポンあるいはチケットなどにおいて偽造を防止するため、ホログラムなどの偽造防止用特殊加工が施された記録用紙に印刷を行うことが望まれている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−177282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、偽造防止用特殊加工が施された記録用紙は、特殊加工として、ホログラムシールや磁気記録シールが貼り付けられているため、特殊加工を施す前の厚みと比較して特殊加工が施された部分の厚みが増してしまう場合がある。
このような場合において、特に記録用紙と印刷ヘッドとの距離を大きく採ることができない接触型あるいは近接型の印刷ヘッドを有するサーマルプリンタやインクジェットプリンタなどにおいては、印刷ヘッドが特殊加工部分と接触し、摩耗などの観点から信頼性が低下するという問題点があった。
また記録用紙には様々な幅のものが存在し、特殊加工が施される位置も様々となることから、ユーザにとって設定が煩雑となってしまうという不具合もあった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、ホログラムなどの特殊加工が施された記録用紙を用いる場合であっても、印刷ヘッドの摩耗を低減し、信頼性を向上させるとともに、取り扱いが容易なプリンタ、プリンタの制御方法および制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、幅方向の両端部のうち少なくとも一方の端部に記録面における厚さよりも厚い所定の厚さを有する肉厚部を有する記録媒体に対し、画像の印刷を行うプリンタにおいて、前記記録面に前記画像の印刷を行う印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを載置し、前記記録媒体の幅方向に往復移動されるキャリッジと、前記印刷における移動時を含み、前記印刷ヘッドを前記肉厚部へ接触させずに前記キャリッジを移動させるキャリッジ駆動部と、を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、キャリッジ駆動部は、印刷ヘッドを載置したキャリッジを往復移動させるに際し、印刷における移動時を含み、印刷ヘッドを肉厚部へ接触させずにキャリッジを移動させる。
したがって、ホログラムなどの特殊加工が施された記録用紙を記録媒体として用いる場合であっても、印刷ヘッドの摩耗を低減し、信頼性を向上させるとともに、取り扱いが容易となる。
【0006】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様において、前記キャリッジ駆動部は、前記記録媒体の前記幅方向における前記印刷ヘッドの基準位置を前記記録面の前記幅方向中央位置とすることを特徴としている。
したがって、記録媒体として様々な幅を有するものを用いる場合でも、容易に設定が行え、用紙幅と、肉厚部の位置とを設定するだけで、制御手順を同一にして印刷が行える。
【0007】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様または第2の態様において、前記キャリッジ駆動部は、前記肉厚部に対向する位置を前記印刷ヘッドが移動するに際し、前記印刷ヘッドを前記記録媒体から離間する方向に駆動し、所定距離離間した位置で移動させることを特徴としている。
したがって、確実に印刷ヘッドを肉厚部に接触させずに移動させることができる。
【0008】
また、本発明の第4の態様は、本発明の第1の態様ないし第3の態様のいずれかにおいて、前記記録媒体の搬送時の位置を、当該記録媒体の前記幅方向における中央位置を所定位置に合わせるように設定する。
したがって、様々な幅を有する記録媒体であっても、同様の手順で処理することが可能となる。
【0009】
また、本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様ないし第4の態様において前記記録媒体は、ロール状に形成され、かつ、前記肉厚部は、長さ方向に断続的に形成されており、前記記録媒体の前記肉厚部の非形成部分を検出し、前記非形成部分で前記記録媒体をカットするカッタ部を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、カッタ部の劣化を抑制しつつ、容易かつ確実に記録媒体のカットが行える。
【0010】
本発明の第6の態様は、印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを載置し、前記記録媒体の幅方向に往復移動されるキャリッジと、を備えたプリンタの制御方法において、幅方向の両端部のうち少なくとも一方の端部に記録面における厚さよりも厚い所定の厚さを有する肉厚部を有する前記記録媒体に対し、画像の印刷を行う印刷過程と、前記印刷における移動時を含み、前記印刷ヘッドを前記肉厚部へ接触させずに前記キャリッジを移動させるキャリッジ駆動過程と、を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、ホログラムなどの特殊加工が施された記録用紙を記録媒体として用いる場合であっても、印刷ヘッドの摩耗を低減し、信頼性を向上させるとともに、取り扱いが容易となる。
【0011】
本発明の第7の態様は、印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを載置し、前記記録媒体の幅方向に往復移動されるキャリッジと、を備えたプリンタをコンピュータにより制御するための制御プログラムにおいて、幅方向の両端部のうち少なくとも一方の端部に記録面における厚さよりも厚い所定の厚さを有する肉厚部を有する前記記録媒体に対し、画像の印刷を行わせ、前記印刷における移動時を含み、前記印刷ヘッドを前記肉厚部へ接触させずに前記キャリッジを移動させる、ことを特徴としている。
上記構成によれば、ホログラムなどの特殊加工が施された記録用紙を記録媒体として用いる場合であっても、印刷ヘッドの摩耗を低減し、信頼性を向上させるとともに、取り扱いが容易となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ホログラムなどの特殊加工が施された記録用紙を用いる場合であっても、印刷ヘッドの摩耗を低減し、信頼性を向上させるとともに、取り扱いが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係るプリンタの外観斜視図である。
プリンタ1は、記録用紙としてロール状に巻かれたロール紙20を用い、このロール紙の印刷面に液体のカラーインクを噴射することで、文字を含む画像を記録するものである。
プリンタ1の本体ケース10は、図1に示すように、プリンタ1の前面を構成する前面パネル11と、略箱形のケースカバー12とを組み合わせて構成される。
前面パネル11には、ロール紙収容部カバー13およびカートリッジ装着部カバー14が各々開閉可能に設けられている。また、前面パネル11の側部には、プリンタ1の電源をオン/オフさせる電源スイッチ15、プリンタ1の動作状態に応じて点灯/点滅するLED等を備えた表示部16、および、ロール紙20を送るためのマニュアルフィードボタン17を含むオペレータが操作するスイッチやボタン等が並ぶ操作パネル18等が設けられている。
また、ロール紙収容部カバー13の上部には、画像が記録されたロール紙20を排出するための排紙口13Aが開口している。
【0014】
図2は、図1に示したプリンタのロール紙収容部カバーとカートリッジ装着部カバーとを開いた状態の斜視図である。
ロール紙収容部カバー13の内側には、図2に示すように、ロール紙20を収容するロール紙収容部21が形成されている。この図2に示すようにロール紙収容部カバー13を前方に開くことでロール紙20を露出させ、交換等を行える。
また、カートリッジ装着部カバー14の内側にはカートリッジ装着部22が形成され、インクカートリッジ23が装着される。インクカートリッジ23は、プリンタ1で使用される黒、シアン、マゼンタ、イエローの4色の液体インクをそれぞれ貯留した4つのインクパック(図示略)を収容する。また、インクカートリッジ23には、後述するように廃インクを貯留する廃インク収容部(図示略)が設けられている。インクカートリッジ23は、プリンタ1に対して着脱可能であり、カートリッジ装着部カバー14を前方に開くことで、インクカートリッジ23の交換等が可能となる。
【0015】
図3は図2に示したプリンタから本体ケースを取り外した状態の斜視図である。
図3に示すように、本体ケース10に収容された機構部2は、プリンタ1の本体の幅方向(図中、矢印A方向)に沿ってキャリッジガイド軸24が架設され、このキャリッジガイド軸24を挿通するキャリッジ30が配設されている。
キャリッジ30は、インクを噴射するノズルを備えた液体噴射ヘッドとしての印刷ヘッド31(図4)を搭載する。印刷ヘッド31は、例えばピエゾ素子を用いたアクチュエータを駆動して、ノズル32Aからインクをロール紙20に向けて噴射し、画像を記録する。
キャリッジ30には、インクカートリッジ23内のインクパックからインクを供給するインク供給チューブ60が接続されている。インク供給チューブ60は各色のインクを通す複数のチューブが連結された構成を有し、このインク供給チューブ60により供給されたインクは、キャリッジ30が搭載するダンパユニット61および背圧調整ユニット62を介して、印刷ヘッド31に供給される。
【0016】
キャリッジ30はキャリッジガイド軸24に挿通され、ロール紙20の幅方向に、往復移動可能に配設されている。キャリッジガイド軸24の後方にはキャリッジ駆動モータ25が設けられ、キャリッジ駆動モータ25の回転軸に繋がるプーリとキャリッジ30との間には、無端形状の駆動ベルト26が架け掛け渡されている。キャリッジ駆動モータ25は、正転および逆転動作が可能であり、このキャリッジ駆動モータ25の回転に伴って、キャリッジ30が、キャリッジガイド軸24に沿った主走査方向(図中、矢印A方向)に移動する。
キャリッジ30は、ロール紙20へ画像を記録する記録動作中はキャリッジガイド軸24に沿った移動可能範囲内を往復移動し、待機状態においては、図3中に右端で示すホームポジションに位置する。ホームポジションは、次に説明するプラテン27上から外れた位置にある。印刷ヘッド31からインクを噴射しない時間が所定時間(例えば、3秒)以上継続した場合、プリンタ1は、キャリッジ30をホームポジションに移動させて、待機状態に移行する。
【0017】
ロール紙収容部21に収容されたロール紙20の上方には、略平板形状のプラテン27が配設されている。プラテン27はキャリッジ30の走路の下方に位置している。ロール紙20は、このキャリッジ30とプラテン27との間を通って、図中、矢印A方向で示す主走査方向と直交する搬送方向に搬送され、排紙口13A(図1)からプリンタ1の外部に引き出される。
キャリッジ30が搭載する印刷ヘッド31は、プラテン27の上方において、ロール紙20に対してインクを噴射する。
【0018】
図4は、プリンタの主要部の断面図である。
プリンタ1内には、インクを吐出して実際の印刷を行う印刷ヘッド31と、印刷後のロール紙20であるロール紙20Xを排紙口13A側に搬送するフロントローラ32と、プリンタ1内で印刷前のロール紙20であるロール紙20Pをプラテン27側に搬送するための搬送ローラ33と、が設けられている。
そして、フロントローラ32の排紙口13A側には、ロール紙20Xを自動的に切断するための後述のオートカット装置(自動カッタ装置)を構成する第1可動刃51、第2可動刃53および受け刃54が配置されている。
【0019】
図5は、オートカッタ装置の用紙カット状態における正面図である。
オートカッタ装置34は、動力源となるモータ41を備えており、このモータ41のモータシャフト41Sには、平歯車のモータ歯車42が挿入されている。このモータ歯車42には、平歯車の大歯車43aが噛合している。さらにこの大歯車43aには、第1鋸歯状歯43bが一体成形されて回転軸方向に沿って移動可能に配置されている。ここで、大歯車43aおよび第1鋸歯状歯43bとは、伝達歯車43を構成している。
ウォーム軸44は、伝達歯車43と回転軸心を同一に配置され、第1鋸歯状歯43bと噛合する第2鋸歯状歯44aとウォーム44bとが一体成形されており、一端を図示しないフレームによってその移動を規制されている。このウォーム軸44のウォーム44bには、支軸47に回転自在に支持されたハスバ歯車48が噛合して回転されることとなる。
【0020】
ハスバ歯車48には、後述する第1可動刃51、リンク部材52および第2可動刃53を駆動するための駆動ピン48aが設けられている。
さらに、伝達歯車43とウォーム軸44との第1鋸歯状歯43bと、第2鋸歯状歯44aが係合するように伝達歯車43を付勢する圧縮バネ49が設けられている。
第1可動刃51は、一端を支軸51aに回動自在とされ、その側面には、第1可動刃駆動ピン51bが立設されている。
また、第2可動刃53も一端を支軸53aに回動自在とされ、その側面には、第2可動刃駆動ピン53bが立設されている。
さらに第2可動刃53の先端側には、トラック溝53cを有する駆動片53dがハスバ歯車48側に延在しており、トラック溝53cには、駆動ピン48aが摺動可能に保持されている。
そして、リンク部材52は、一端を支軸52aに回動自在とされるとともに、第1可動刃駆動ピン51bと係合し、第1可動刃駆動ピン51bを摺動可能に支持する第1トラック溝52b4と、第2可動刃駆動ピン53bと係合し、第2可動刃駆動ピン53bを摺動可能に支持する第2トラック溝52cと、を備えている。
また、第1可動刃51および第2可動刃53の下方には、固定の受け刃54が配置されている。
【0021】
図6は、プリンタの制御系の概要構成ブロック図である。
プリンタ1は、ロール紙20を自動的に切断(パーシャルカット状態も含む)する上述のオートカッタ装置34と、ロール紙20を搬送するためのフロントローラおよび搬送ローラ33を含む用紙搬送部35と、図示しないCPU、ROM、RAMなどを備えプリンタ1全体を制御するコントローラ36と、印刷ヘッド31を駆動するためのヘッド駆動部37と、印刷ヘッド31が載置されたキャリッジ30を駆動するためのキャリッジ駆動部38と、操作パネル18を含む操作部39と、を備えている。
プリンタ1は、単独で動作するわけではなく、図示しない通信インタフェースを介してホストコンピュータと接続されて用いられる。
【0022】
ここで、ロール紙20の構成について説明する。
図7は、ロール紙の構成説明図である。図7(A)は、ロール紙の平面図、図7(B)は、図7(A)におけるロール紙のX−X断面図である。
ロール紙20は、図7(A)、図7(B)に示すように、幅方向の両端部に記録面20Aにおける厚さよりも厚い所定の厚さを有する偽造防止用特殊加工されたホログラム形成部(=肉厚部)20B1、20B2が設けられている。
このホログラム形成部20B1、20B2は、図7(A)に示すように、ロール紙20の長さ方向に断続的に形成されており、所定の長さ毎にホログラム非形成部20Cが設けられている。このホログラム非形成部20Cは、オートカッタ装置34による切断位置に対応して設けられている。
図7においては、肉厚部としてのホログラム形成部20B1、20B2は、ロール紙20の幅方向の両端部に設けられているが、いずれか一方であってもよい。また、ホログラム非形成部20Cについても必ずしも設ける必要はない。
【0023】
図8は、ロール紙と印刷ヘッドの配置関係説明図である。
次に実施形態の動作説明に先立って、ロール紙20と印刷ヘッド31の配置関係について説明する。
本実施形態において、ロール紙20と印刷ヘッド31の配置関係は、ロール紙20の幅方向中央位置および印刷ヘッド31の主走査方向(ロール紙20の幅方向に相当)中央位置を基準としている。この構成によれば、ロール紙20の幅、肉厚部(上述の例では、ホログラム形成部20B1、20B2)の幅および形成位置、形成数などの影響を受けずに、確実に印刷ヘッド31を肉厚部へ接触させずにキャリッジを走査(移動)させることができ、印刷ヘッド31の片減りなどを招くことがない。
【0024】
すなわち、図8において、記録面20Aに、左側から右側に向かって印刷ヘッド31を走査し、印刷を行う場合、記録面20Aの記録可能開始位置PSは、ロール紙20の幅方向中央位置をP0とし、記録面20Aの幅を2ΔPXすると、
PS=P0−ΔPX
で表され、記録可能終了位置PEは、
PE=P0+ΔPX
で表される。
同様に、印刷ヘッド31の制御に用いる走査可能開始位置、すなわち、記録可能開始位置PSは、印刷ヘッド31の主走査方向端部から距離をPHとすると、
PS=P0−PH
で表され、走査可能終了位置、すなわち、記録可能終了位置PEは、
PE=P0+PH
で表される。
【0025】
次に実施形態の動作について説明する。
図9は、実施形態の処理フローチャートである。
図10は、動作説明図である。
以下の説明においては、印刷ヘッド31の走査方向先端部の位置をH1とし、走査方向後端部の位置をH2とする。図10において、初期状態における走査方向は、左方向とし、印刷ヘッド31のクリーニングあるいはワイピングを行うのは、図10の左方向に設定されたホームポジションHPで行うものとする。
プリンタ1のコントローラ36は、キャリッジ駆動部38を制御し、キャリッジ30、ひいては、印刷ヘッド31を所定の走査方向(図10では、左方向)に移動する(ステップS11)。
【0026】
続いてコントローラ36は、印刷ヘッド31の走査方向後端部の位置H2が記録面20Aの記録可能開始位置PSに至ったか否かを判別する(ステップS12)。
ステップS12の判別において、いまだ印刷ヘッド31の走査方向後端部の位置H2が記録面20Aの記録可能開始位置PSに至っていない場合には(ステップS12;No)、コントローラ36は、キャリッジ駆動部38を制御し、印刷ヘッド31の所定の走査方向への移動を継続する(ステップS11)。
ステップS12の判別において、印刷ヘッド31の走査方向後端部の位置H2が記録面20Aの記録可能開始位置PSに至った場合には(ステップS12;Yes)、コントローラ36は、キャリッジ駆動部38を制御し、印刷ヘッド31を記録面20Aに対し所定の印刷時位置まで近づけ(ステップS13)、ヘッド駆動部37を制御して印刷を開始する(ステップS14)。
【0027】
次にコントローラ36は、印刷ヘッド31の走査方向先端部の位置H1が記録面20Aの記録可能終了位置PEに至ったか否かを判別する(ステップS15)。
ステップS15の判別において、いまだ印刷ヘッド31の走査方向先端部の位置H1が記録面20Aの記録可能終了位置PEに至っていない場合には(ステップS15;No)、コントローラ36は、キャリッジ駆動部38を制御し、印刷ヘッド31の所定の走査方向への移動および印刷を継続する。
ステップS15の判別において、印刷ヘッド31の走査方向先端部の位置H1が記録面20Aの記録可能終了位置PEに至った場合には(ステップS15;Yes)、コントローラ36は、印刷ヘッド31のクリーニング及びワイピングを行うタイミングであるか否かを判別する(ステップS16)。
【0028】
ステップS16の判別において、現時点では印刷ヘッド31のクリーニング及びワイピングを行うタイミングでは無い場合には(ステップS16;No)、コントローラ36は、印刷が終了したか否かを判別する(ステップS17)。
ステップS17の判別において、印刷が終了していない場合には(ステップS17;No)、用紙搬送部35を制御して、所定量だけロール紙20を搬送し(ステップS18)、キャリッジ駆動部38を制御して、今度は、印刷ヘッド31を図10中、右方向に移動させ、印刷を継続することとなる。
ステップS17の判別において印刷が終了した場合には、印刷ヘッド31を記録面20Aに対し所定の待機時位置まで離間させ、用紙搬送部35を制御して、ロール紙20を搬送し、切断位置センサの出力に基づいて、ロール紙20を切断位置、すなわち、ホログラム非形成部20Cがオートカッタ装置34の第1可動刃51、第2可動刃53および受け刃54に対向する位置まで搬送し、カットする(ステップS19)。
【0029】
ここで、具体的なオートカット処理について説明する。
オートカッタ装置34のモータ41に駆動電圧を印加するとモータ41は矢印A方向へ回転し、モータ歯車42も同じく矢印A方向へ回転することとなる。一方、モータ歯車42と噛み合う伝達歯車43は矢印B方向へ回転することとなる。
これらに伴い、伝達歯車43と噛合しているウォーム軸44も矢印B方向へと回転し、ハスバ歯車48は、ウォーム44bにより回転数を大きく減らされて矢印C方向へ回転される。
矢印C方向に回転されるハスバ歯車48に設けられている駆動ピン48aは、駆動片53dのトラック溝53c内を図5中、左方向に移動することとなり、第2可動刃53の先端部が支軸53aを回動中心として下方に回動し、第2可動刃駆動ピン53bも第2トラック溝52c内を右下方向に摺動しつつ、リンク部材52を支軸52aを回動中心として下方に回動させる。
【0030】
この結果、第1可動刃51の第1可動刃駆動ピン51bも第1トラック溝52b内を右下方向に摺動し、第1可動刃51の先端部が支軸51aを回動中心として下方に回動されることとなる。
そして、第1可動刃51および第2可動刃53と、受け刃54と、の間に位置するロール紙20を切断することとなる。
このとき、第1可動刃51の先端の刃部分と、受け刃54との間には、図5に示すように、隙間wが残るようにされており、この結果、ロール紙20は、パーシャルカット状態となって、ユーザにより容易に切り離しができる状態となる。
【0031】
そして、ロール紙20を切断した後、ハスバ歯車48は正方向に回転され、第1可動刃51および第2可動刃53が初期位置(ホーム位置)に復帰したことを図示しない検出器により検出すると、モータ41の駆動及びその回転方向を制御するコントローラ36はモータ41への通電を止め、オートカッタ装置34による用紙のカット動作を終了する。
一方、ステップS16の判別において、印刷ヘッド31のクリーニング及びワイピングを行うタイミングある場合には(ステップS16;Yes)、コントローラ36は、印刷ヘッド31を記録面20Aに対し所定の待機時位置まで離間させるとともに、キャリッジ駆動部38を制御し、印刷ヘッド31をホームポジションHPまで移動し、クリーニング及びワイピングを行う(ステップS20)。
【0032】
そしてコントローラ36は、キャリッジ駆動部38を制御して、今度は、印刷ヘッド31を図10中、右方向に移動させ、印刷を継続することとなる。
以上の説明のように、本実施形態によれば、幅方向の両端部のうち少なくとも一方の端部に、ホログラム形成部20B1、20B2のように、記録面における厚さよりも厚い所定の厚さを有する肉厚部を有する記録媒体に対し、画像の印刷を行うに際しても、印刷ヘッド31を肉厚部へ接触させずにキャリッジ30を移動させるので、肉厚部を有する記録媒体であっても、印刷ヘッドの距離を正常に保ち、印刷が正常に行え、印刷ヘッド31が肉厚部への接触に起因して片減りして印刷品質が低下することもない。
【0033】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
以上の説明においては、印刷ヘッド31を走査するタイプのプリンタについて説明したが、記録媒体との距離を変更可能な印字位置固定タイプのプリンタについても適用が可能である。
以上の説明においては、プリンタ1として、インクジェット方式のプリンタについて説明したが、ドットインパクト方式のプリンタや、サーマル方式のプリンタのように印刷ヘッドが記録媒体に直接接触するような場合であっても同様に適用が可能である。
以上の説明においては、プリンタ1として、ピエゾ素子を用いたアクチュエータによりインクを吐出するインクジェット式プリンタを例示したが、他の方法によりインクを吐出する印刷ヘッドを用いても良い。例えばインク通路に配置したヒータに通電し、インク通路内に発生する泡(バブル)によりインクを吐出する印刷ヘッドを用いても良い。
【0034】
以上の説明においては、プリンタ1がロール紙20を使用する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、記録媒体として、所定長さに切断されたカットシートや、複数枚のシートが連接された連続シート等を用いてもよい。これらのシートは、普通紙、複写紙、厚紙等の紙類、あるいは合成樹脂製のシートであり、これらのシートにコーティングや浸潤等の加工を施したものを用いることもできる。また、カットシートの形態としては、例えば、PPC用紙や葉書等の定形サイズのカット紙に加え、通帳等の複数のシートを綴じた冊子形態のものや、封筒等の袋状に成形されたものが挙げられる。また、連続シートの形態としては、例えば、幅方向両端にスプロケットホールが穿設され、所定長さ毎に折り畳まれた連続紙が挙げられる。また、本実施形態で説明したロール紙20は、紙または合成樹脂のいずれで構成されていてもよく、コーティングや浸潤等の加工がなされていてもよい。
【0035】
さらに、本発明は、上記実施形態で説明したプリンタ1のように外部のホストコンピュータに接続される態様に限らず、ホストコンピュータとしての機能を備えた特定の装置に内蔵され、或いは組み込まれた印刷装置に対しても適用可能である。
また、プリンタ1は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により図6に示す各機能部を実現するものであって、具体的なハードウェアの実装形態やソフトウェアの仕様等は任意である。その他のプリンタ1の具体的な細部構成についても任意に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態に係るプリンタの外観斜視図である。
【図2】プリンタのカバーを開いた状態の斜視図である。
【図3】プリンタからケースを取り外した状態の要部斜視図である。
【図4】キャッピング装置の要部構成を示す斜視図である。
【図5】ワイピング動作の様子を模式的に示す図である。
【図6】ワイピング動作におけるキャリッジの位置を示す図である。
【図7】プリンタの制御系の構成を示すブロック図である。
【図8】制御部の機能的構成を詳細に示す図である。
【図9】プリンタの動作を示すフローチャートである。
【図10】プリンタの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
1…プリンタ、2…機構部、10…本体ケース、11…前面パネル、12…ケースカバー、13…ロール紙収容部カバー、13A…排紙口、14…カートリッジ装着部カバー、15…電源スイッチ、16…表示部、17…マニュアルフィードボタン、18…操作パネル、20…ロール紙、20A…記録面、20B1,20B2、ホログラム形成部、20C…ホログラム非形成部、20P…ロール紙、20X…ロール紙、21…ロール紙収容部、22…カートリッジ装着部、23…インクカートリッジ、24…キャリッジガイド軸、25…キャリッジ駆動モータ、26…駆動ベルト、27…プラテン、30…キャリッジ、31…印刷ヘッド、32…フロントローラ、32A…ノズル、33…搬送ローラ、34…オートカッタ装置、35…用紙搬送部、36…コントローラ、37…ヘッド駆動部、38…キャリッジ駆動部、39…操作部、HP…ホームポジション、PE…記録可能終了位置、PS…記録可能開始位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の両端部のうち少なくとも一方の端部に記録面における厚さよりも厚い所定の厚さを有する肉厚部を有する記録媒体に対し、画像の印刷を行うプリンタにおいて、
前記記録面に前記画像の印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを載置し、前記記録媒体の幅方向に往復移動されるキャリッジと、
前記印刷における移動時を含み、前記印刷ヘッドを前記肉厚部へ接触させずに前記キャリッジを移動させるキャリッジ駆動部と、
を備えたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1記載のプリンタにおいて、
前記キャリッジ駆動部は、前記記録媒体の前記幅方向における前記印刷ヘッドの基準位置を前記記録面の前記幅方向中央位置とすることを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のプリンタにおいて、
前記キャリッジ駆動部は、前記肉厚部に対向する位置を前記印刷ヘッドが移動するに際し、前記印刷ヘッドを前記記録媒体から離間する方向に駆動し、所定距離離間した位置で移動させることを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプリンタにおいて、
前記記録媒体の搬送時の位置を、当該記録媒体の前記幅方向における中央位置を所定位置に合わせるように設定することを特徴とするプリンタ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプリンタにおいて、
前記記録媒体は、ロール状に形成され、かつ、前記肉厚部は、長さ方向に断続的に形成されており、
前記記録媒体の前記肉厚部の非形成部分を検出し、前記非形成部分で前記記録媒体をカットするカッタ部を備えたことを特徴とするプリンタ。
【請求項6】
印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを載置し、前記記録媒体の幅方向に往復移動されるキャリッジと、を備えたプリンタの制御方法において、
幅方向の両端部のうち少なくとも一方の端部に記録面における厚さよりも厚い所定の厚さを有する肉厚部を有する前記記録媒体に対し、画像の印刷を行う印刷過程と、
前記印刷における移動時を含み、前記印刷ヘッドを前記肉厚部へ接触させずに前記キャリッジを移動させるキャリッジ駆動過程と、
を備えたことを特徴とするプリンタの制御方法。
【請求項7】
印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを載置し、前記記録媒体の幅方向に往復移動されるキャリッジと、を備えたプリンタをコンピュータにより制御するための制御プログラムにおいて、
幅方向の両端部のうち少なくとも一方の端部に記録面における厚さよりも厚い所定の厚さを有する肉厚部を有する前記記録媒体に対し、画像の印刷を行わせ、
前記印刷における移動時を含み、前記印刷ヘッドを前記肉厚部へ接触させずに前記キャリッジを移動させる、
ことを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−51165(P2009−51165A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222287(P2007−222287)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】