説明

プリンタ、光強度と受光感度の決定方法及びプログラム

【課題】様々な種類の媒体に対応して、フォトセンサにおける最適な光強度と受光感度を自動的に決定可能にする。
【解決手段】所定間隔で印刷領域が配置された第1面と、印刷位置マークが付された第2面とを備えた媒体を搬送モータで搬送し、印刷領域に印刷を行うプリンタであって、複数の光強度を切替可能とし、所定の光強度の照射光を第2面に出力する発光手段と、複数の受光感度を切替可能とし、発光手段からの照射光の反射光を受光し、受光した反射光を基に出力電圧を発生する受光手段と、を有しており、媒体が搬送モータによって最小搬送単位だけ搬送される毎に、発光手段の光強度と受光手段の受光感度との組合せの全てに対応して出力電圧を検出し、当該検出を少なくとも印刷領域の長さ分繰り返し行い、組合せ毎に、出力電圧の電位差を算出し、少なくとも、電位差が最大である組合せを、光強度と受光感度を調整するための組合せとして予め決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、光強度と受光感度の決定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ラベルプリンタは、台紙上に一定間隔でラベルが貼付され、その裏面にIマーク(印刷位置マークの一例)が付された媒体に対して印刷を行うことが可能であるが、媒体の種類は多様化しており、媒体毎にラベルの厚さやIマークの濃淡に差異がある。よって、印刷を行う際には、このような差異に対応しながらIマークやラベル間の領域(ラベルギャップ)を検出する制御が必要となる。
【0003】
一方、上記検出を行う手段としては、透過型フォトセンサや反射型フォトセンサが使用されているが、これらフォトセンサ自体にも、発光側(発光素子)の光強度や受光側(受光素子)の受光感度にばらつきがある。
【0004】
このようなフォトセンサ毎に生じる光強度や受光感度のばらつきに対しては、保守員等が手動で調整できるが、生産効率が悪く、また、調整の誤差も生じやすいという問題がある。この問題を解決するものとして、例えば特許文献1に開示されているラベルプリンタがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−288906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のラベルプリンタでは、媒体の搬送を行わない状態にてIマークが無い部分(白部分)を基に発光側の光強度と受光側の受光感度を決定しているため、実際の印刷時において、Iマークの検出不良(エラー)が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、印刷位置マーク又はラベル間の領域の検出不良を生じさせることなく、様々な種類の媒体に対応して、フォトセンサにおける最適な光強度と受光感度を自動的に決定できるプリンタ、光強度と受光感度の決定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明のプリンタは、所定間隔で印刷領域が配置された第1面と、印刷位置マークが付された第2面とを備えた媒体を搬送モータによって搬送し、印刷領域に印刷を行うプリンタであって、印刷位置マーク又は印刷領域間の領域を検知するための検知手段として、複数の光強度を切り替え可能とし、第2面に対して所定の光強度の照射光を出力する発光手段と、複数の受光感度を切り替え可能とし、発光手段から出力された照射光の反射光を受光し、受光した反射光を基に出力電圧を発生する受光手段と、を有しており、媒体が搬送モータによって最小搬送単位だけ搬送される毎に、発光手段の光強度と受光手段の受光感度との組合せの全てに対応して出力電圧を検出し、当該検出を少なくとも印刷領域の搬送方向の長さ分繰り返し行い、組合せ毎に、検出した出力電圧の最大値と最小値の電位差を算出し、少なくとも、算出した電位差が最大である組合せを、発光手段の光強度と受光手段の受光感度を調整するための組合せとして予め決定することを特徴とする。
【0009】
本発明の光強度と受光感度の決定方法は、所定間隔で印刷領域が配置された第1面と、印刷位置マークが付された第2面とを備えた媒体を搬送モータによって搬送し、印刷領域に印刷を行う装置にて行われる光強度と受光感度の決定方法であって、装置は、印刷位置マーク又は印刷領域間の領域を検知するための検知手段として、複数の光強度を切り替え可能とし、第2面に対して所定の光強度の照射光を出力する発光手段と、複数の受光感度を切り替え可能とし、発光手段から出力された照射光の反射光を受光し、受光した反射光を基に出力電圧を発生する受光手段と、を有しており、媒体が搬送モータによって最小搬送単位だけ搬送される毎に、発光手段の光強度と受光手段の受光感度との組合せの全てに対応して出力電圧を検出し、当該検出を少なくとも印刷領域の搬送方向の長さ分繰り返し行い、組合せ毎に、検出した出力電圧の最大値と最小値の電位差を算出し、少なくとも、算出した電位差が最大である組合せを、発光手段の光強度と受光手段の受光感度を調整するための組合せとして予め決定することを特徴とする。
【0010】
本発明のプログラムは、所定間隔で印刷領域が配置された第1面と、印刷位置マークが付された第2面とを備えた媒体を搬送モータによって搬送し、印刷領域に印刷を行う装置が読み取り可能なプログラムであって、装置は、印刷位置マーク又は印刷領域間の領域を検知するための検知手段として、複数の光強度を切り替え可能とし、第2面に対して所定の光強度の照射光を出力する発光手段と、複数の受光感度を切り替え可能とし、発光手段から出力された照射光の反射光を受光し、受光した反射光を基に出力電圧を発生する受光手段と、を有しており、装置に、媒体が搬送モータによって最小搬送単位だけ搬送される毎に、発光手段の光強度と受光手段の受光感度との組合せの全てに対応して出力電圧を検出し、当該検出を少なくとも印刷領域の搬送方向の長さ分繰り返し行う処理と、組合せ毎に、検出した出力電圧の最大値と最小値の電位差を算出する処理と、少なくとも、算出した電位差が最大である組合せを、発光手段の光強度と受光手段の受光感度を調整するための組合せとして予め決定する処理と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印刷位置マーク又はラベル間の領域の検出不良を生じさせることなく、様々な種類の媒体に対応して、フォトセンサにおける最適な光強度と受光感度を自動的に決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るラベルプリンタの構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るサンプリングデータのイメージ例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るラベルプリンタの初期設定時の動作例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係るラベルプリンタの運用時の動作例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係るラベルプリンタの発光側の電流OFFによる省電力制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
まず、図1を参照して、本実施形態のラベルプリンタの構成について説明する。本実施形態のラベルプリンタは、媒体の一例であるラベル連続体に対して印刷を行う。ラベル連続体は、図1に示すように、台紙の表面(第1面)には、ラベルが等間隔で貼付されている。各ラベルは、台紙表面に対して剥離可能である。また、各ラベルに対して印刷(印字)が行われる。このことから、ラベルは印刷領域と呼ぶことができる。ラベルとラベルの間には所定の領域(ラベル間の領域、ラベル間ギャップ)がある。また、図1に示すように、台紙の裏面(第2面)には、印刷位置マークの一例であるIマーク(黒色のバー)が等間隔で印刷されている。各Iマークは、各ラベルの所定位置(例えば先頭位置)に対応しており、ラベル連続体における印刷開始位置やラベル端の決定などに利用される。
【0015】
ラベル連続体は、図1の矢印で示す搬送方向に搬送される。搬送方向の上流には、図示しない供給リールが配置されており、それにラベル連続体は巻かれている。また、搬送方向の下流には、図示しないサーマルヘッドとプラテンローラが対向して配置されている。プラテンローラは、例えばギアを介して、図示しないステッピングモータ(搬送モータの一例)の駆動により回転させられる。この回転により、ラベル連続体は、図1の矢印で示す搬送方向に搬送され、サーマルヘッドの配置位置にて、サーマルヘッドによりラベルに印刷が行われる。
【0016】
供給リールとサーマルヘッドの間には、フォトセンサ(検知手段の一例)が配置される。ここでは、Iマークを検出する反射型フォトセンサを例に説明する。
【0017】
フォトセンサの発光側(発光手段の一例)には、図1に示すように、ASIC(トランジスタ制御部)1、電源電圧VCC14、トランジスタアレイ(内部2回路)2、電流制限抵抗3、発光ダイオード4が備えられる。電流制限抵抗3は、RとR/2(R×1/2Ωの抵抗)が並列に接続されており、発光ダイオード4と直列に接続されている。ASIC(トランジスタアレイ制御部)1は、2bitでトランジスタアレイ2のON/OFFをコントロールする。このコントロールにより、R、R/2において3個の組合せ(RのみON、R/2のみON、RとR/2の両方ともON)が実現でき、発光ダイオード4に流す電流(光強度)を3段階に調節(切り替え)できる。
【0018】
フォトセンサの受光側(受光手段の一例)には、図1に示すように、ASIC(トランジスタ制御部)5、電源電圧VCC15、トランジスタアレイ(内部4回路)6、負荷抵抗7、フォトトランジスタ8が備えられる。負荷抵抗7は、RL、RL/2、RL/4、RL/8が並列接続されており、フォトトランジスタ8と直列に接続されている。ASIC(トランジスタアレイ制御部)2は、4bitでトランジスタアレイ6のON/OFFをコントロールする。このコントロールにより、受光感度の組合せとして、RL、RL/2、RL/4、RL/8において15個の組合せが実現でき、受光側の負荷抵抗7(受光感度)を15段階に調節(切り替え)できる。
【0019】
フォトトランジスタ8のコレクタの電圧(以下、センサ出力電圧という)は、CPU(Central Processing Unit)10のアナログポートに接続され、さらに、コンパレータ13のマイナス側に接続されている。コンパレータ13のプラス側には、D/Aコンバータ12のアナログ出力電圧が入力するように接続されている。
【0020】
なお、CPU10は、メモリ(データ格納部)11に対してデータのリード(読み出し)/ライト(書き込み)が可能であり、D/Aコンバータ12に対して、出力したいアナログ電圧のデータを転送できる。さらに、CPU10は、センサ出力電圧を解析し演算を行い、各ASIC1、5に対し、トランジスタアレイ制御のためのデータを転送できる。
【0021】
このような反射型フォトセンサを用いて、Iマークの部分とIマーク以外の部分(白部分)についてセンサ出力電圧を測定すると、Iマークの部分では、光の反射光量が低下するため、フォトトランジスタ8に流れる電流が少なく、センサ出力電圧はVCC15に近い高い電圧となる。一方、Iマーク以外の部分では、光の反射光量が高いため、フォトトランジスタ8に流れる電流が多く、センサ出力電圧は0Vに近い低い電圧となる。
【0022】
以上のように構成された本実施形態のラベルプリンタにおける初期設定時の動作について、図3のフローを参照して説明する。この初期設定時の動作は、例えば、ラベルプリンタの製品出荷後、最初に使用される(印刷が行われる)前に実行される。
【0023】
ラベルプリンタに用紙(ラベル連続体)がセットされ(S101)、ラベルプリンタがセンサ閾値設定モードで起動される(S102)。
【0024】
発光側の電流制限抵抗3の組合せ数をmとし、mは、m=1〜3段階ある。mの値を初期設定する。例えば、電流が最小になる設定をm=1とする(S103)。
【0025】
受光側の負荷抵抗7の組合せ数をnとし、nは、n=1〜15段階ある。nの値を初期設定する。例えば、負荷抵抗が最大になる設定をn=1とする(S104)。
【0026】
上記各初期設定の後、CPU10は、センサ出力電圧をアナログポートで読み取り、それをデジタルデータに変換し、メモリ11に格納する(S105)。これにより、3個ある電流制限抵抗3の組合せのうちの1番目の組合せと、15個ある負荷抵抗7の組合せのうちの1番目の組合せとの組合せに対応するセンサ出力電圧が検出(サンプリング)されることになる。
【0027】
ここで、nは、n=1であるため(S106/NO)、CPU10は、n+1(n=2)とし、ASIC5に命令を出す(S107)。これにより、ASIC5は、4bitでトランジスタアレイ6のON/OFFを切り替え制御する。すなわち、15個ある負荷抵抗7の組合せのうちの2番目の組合せが選択される。その後は、再度S105において、CPU10は、センサ出力電圧を検出し、メモリ11に格納する。これにより、3個ある電流制限抵抗3の組合せのうちの1番目の組合せと、15個ある負荷抵抗7の組合せのうちの2番目の組合せとの組合せに対応するセンサ出力電圧が検出(サンプリング)されることになる。以降、この動作をn=15になるまで(S106/YES)繰り返し行う。
【0028】
次に、mは、m=1であるため(S108/NO)、CPU10は、m+1(m=2)とし、ASIC1に命令を出す(S109)。これにより、ASIC1は、2bitでトランジスタアレイ2のON/OFFを切り替え制御する。すなわち、3個ある電流制限抵抗3の組合せのうちの2番目の組合せが選択される。その後は、再度S104において、nをn=1に初期設定し、S105からS107までを繰り返す。以降、S104からS109までの動作をm=3になるまで繰り返し行う。
【0029】
以上のようにして、3個ある電流制限抵抗3の組合せと、15個ある負荷抵抗7の組合せとの全ての組合せに対応するセンサ出力電圧が検出(サンプリング)される。そして、ここまでが、ステッピングモータの1ステップ中に行うセンサ出力電圧のサンプリングである。なお、本実施形態において、ステッピングモータの1ステップは、ラベル連続体の最小搬送単位の一例である。
【0030】
CPU10は、ステッピングモータを1ステップ駆動するよう制御する(S110)。ここで、CPU10は、その駆動により、ラベル連続体が一定距離搬送されたかどうかを判断する(S111)。ここでは一定距離の例をラベル長とする。ラベル長とは、図1に示すように、搬送方向におけるラベルの長さを意味する。なお、一定距離は、ラベル長以上の長さであってもよい。このように、本実施形態では、少なくともラベル長分の搬送が行われるときのセンサ出力電圧を検出するので、Iマーク以外の部分だけでなく、Iマークの部分も含めたセンサ出力電圧を検出することができる。
【0031】
S111の判断の結果、一定距離の搬送が終了していない場合は(S111/NO)、再度、上記S103〜S109においてセンサ出力電圧のサンプリングが行われる。このように、ステッピングモータの1ステップ毎に、3個ある電流制限抵抗3の組合せと、15個ある負荷抵抗7の組合せとの全ての組合せに対応するセンサ出力電圧のサンプリングが繰り返され、一定距離(ラベル長分)の搬送が終了したら(S111/YES)、一連の動作が終了される。
【0032】
図2は、図3の動作によりメモリ11に格納された、センサ出力電圧のサンプリングデータのイメージ例である。図2には、例として、3つの組合せ(組合せa、b、c)に対応したサンプリングデータだけを示しているが、実際には45個の組合せに対応したサンプリングデータが存在する。図2に示すように、組合せ毎に、センサ出力電圧の最大値と最小値は異なっている。CPU10は、45個の組合せ毎に、サンプリングデータの最大値と最小値を検出し、その電位差を算出する。これにより、45個の電位差が算出される。さらに、CPU10は、算出した各電位差を比較し、電位差が最大である組合せと、電位差が2番目に大きい組合せと、電位差が3番目に大きい組合せとを決定する。図2の例では、電位差が最大である組合せは組合せa、電位差が2番目に大きい組合せは組合せb、電位差が3番目に大きい組合せは組合せcとなっている。組合せb、cは、組合せaの前後の組合せである。このようにして決定された組合せは、実際の運用(印刷)時において、発光側の光強度と受光側の受光感度を調整するときの組合せとなる。なお、ここでは、例として、3つの組合せが決定されたが、組合せ数はこれに限定されない。また、少なくとも、電位差が最大である組合せは組合せが決定されればよい。
【0033】
その後、CPU10は、電位差が最大である組合せのときの閾値(例えば(最大値+最小値)/2)の値を算出し、D/Aコンバータ12に閾値電圧のデータを転送する。なお、
閾値の値は、最大値から一定の値を引いた電圧値でもよい。
【0034】
以上の動作を実行することで、センサ閾値設定モードが終了する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態のラベルプリンタは、ラベル連続体を搬送するためのステッピングモータの1ステップ駆動毎に、フォトセンサの発光側の電流(光強度)を3段階と、フォトセンサの受光側の負荷抵抗(受光感度)を15段階との合計45段階に変化させ、45段階それぞれのフォトセンサの出力電圧をサンプリングする。このサンプリングは、少なくともラベル長分搬送されるまで繰り返し行われる。そして、本実施形態のラベルプリンタは、Iマークの部分を含めたフォトセンサの出力電圧の最大値と最小値を基に、少なくとも、電位差が最も大きくなる組合せを決定する。これにより、本実施形態のラベルプリンタでは、Iマークの検出不良を生じさせることなく、様々な種類の媒体に対応して、フォトセンサにおける最適な光強度と受光感度を自動的に一意に決定することが可能となる。
【0036】
次に、本実施形態のラベルプリンタにおける運用時の動作について、図4のフローを参照して説明する。この運用時の動作は、図3のセンサ閾値設定モードが終了した後で、実際にラベル印刷が行われるときに実行される。
【0037】
図3のS101でセットされたラベル連続体と同じ種類のラベル連続体がセットされる(S201)。なお、異なる種類のラベル連続体に印刷を行う場合には、そのラベル連続体を使用して再度図3のセンサ閾値設定モードを行う必要がある。
【0038】
センサ出力電圧の検出(サンプリング)が開始される(S202)。すなわち、実際に印刷が行われる際にも、センサ出力電圧のサンプリングが行われることになる。そしてここでは、サンプリングのときに使用される組合せとして、図2の例で説明した組合せa(電位差が最大)、組合せb(電位差が2番目に大きい)、組合せc(電位差が3番目に大きい)が予め決定されているとする。
【0039】
ラベルプリンタにおいて、上位(例えばラベルプリンタに接続されたパソコン等)から、ラベルに印刷される印刷データが受信される(S203)。
【0040】
1枚目のラベルの搬送が開始されると、CPU10は、そのラベルのIマークの検出動作中に、それと同時にステッピングモータの1ステップ毎に、組合せa、組合せb、組合せcを基に電流制限抵抗3と負荷抵抗7を調整(切り替え)しながら、各組合せに対応したセンサ出力電圧を読み取り、メモリ11に格納していく(S204)。ここでも、このサンプリングは、少なくともラベル長分行われる。メモリ11に格納されるセンサ出力電圧(サンプリングデータ)は、1枚目の組合せaのデータ、1枚目の組合せbのデータ、1枚目の組合せcのデータとなる。
【0041】
CPU10は、1枚目のラベルについてIマークの検出(ラベル長分のセンサ出力電圧のサンプリング)が終了すると、予め定められた回数(ラベルの枚数)分のIマークの検出が終了したかどうかを判断する(S205)。ここでは、予め定められた回数を3回とする。判断の結果、3回に満たない場合は(S205/NO)、S203に戻り、上位からの印刷データを待ち、再度S204の動作が行われ、3回に達するまでこれを繰り返す。よって、2枚目、3枚目のラベルについても、S204の動作が行われる。これによりメモリ11に格納されるセンサ出力電圧(サンプリングデータ)は、2枚目の組合せaのデータ、2枚目の組合せbのデータ、2枚目の組合せcのデータ、3枚目の組合せaのデータ、3枚目の組合せbのデータ、3枚目の組合せcのデータとなる。つまり、ここでは、9つのデータが格納されることになる。
【0042】
以上のようにして、Iマークの検出が連続して3回終了した後(S205/YES)、CPU10は、上記9つのデータ毎に、最大値と最小値の電位差を算出する。次に、CPU10は、組合せa、b、c毎に、算出した電位差の平均を算出する。これについて、例えば組合せaを例に説明する。まず、CPU10は、1枚目の組合せaのデータの最大値と最小値を基に電位差を算出し、それを1枚目の電位差とする。同様に、CPU10は、2枚目の組合せaのデータの最大値と最小値を基に電位差を算出し、それを2枚目の電位差とする。同様に、CPU10は、3枚目の組合せaのデータの最大値と最小値を基に電位差を算出し、それを3枚目の電位差とする。次に、CPU10は、1枚目の電位差、2枚目の電位差、3枚目の電位差の平均値を算出し、それを組合せaの平均値とする。以上の計算を組合せb、組合せcについても行い、それぞれ組合せbの平均値、組合せcの平均値とする。
【0043】
CPU10は、組合せaの平均値、組合せbの平均値、組合せcの平均値を比較し、最大となる平均値の組合せを新たな組合せとして決定する(S206〜210)。
【0044】
CPU10は、決定した新たな組合せに変更する(S211)。この新たな組合せは、4枚目以降のラベルのIマーク検出で用いられることになる。
【0045】
以上が、運用時(ラベル印刷時)の動作である。
【0046】
以上説明したように、本実施形態のラベルプリンタは、運用時において、センサ閾値設定モードのときと同じ種類のラベル連続体に対し、通常のIマーク検出動作中に同時に、予め(センサ閾値設定モードのときに)決定しておいた組合せでセンサ出力電圧のサンプリングを行う。このサンプリングは、図3のときと同様に、ステッピングモータの1ステップ毎に、ラベル長分繰り返して行われる。そして、本実施形態のラベルプリンタは、連続する3つ(予め定められた数)のIマークを検出したところで、組合せ毎に電位差の平均値を算出し、どの組合せの平均値が最大となるかを判断する。判断の結果、初期設定の組合せ(例えば組合せa)の平均値が最も大きい場合、本実施形態のラベルプリンタは、Iマークの印刷濃度のばらつきは見られなかったものと判断し、そのままの組合せで運用する。一方、初期設定の組合せ以外の組合せの平均値が大きい場合は、本実施形態のラベルプリンタは、Iマークの印刷濃度のばらつきがあったものと判断し、初期設定の組合せを平均値が最も大きい組合せ(例えば組合せb又はc)に変更し、次回以降のIマーク検出のときに、変更した組合せを用いて自動的に発光側の光強度及び受光側の受光感度を補正する。
【0047】
なお、上記本実施形態のラベルプリンタにおいて、ラベル間の領域を検出する透過型フォトセンサを適用することも可能である。また、上記本実施形態のラベルプリンタでは、発光側の光強度(電流制限抵抗)の組合せを3段階、受光側の受光感度(負荷抵抗)の組合せを15段階としているが、使用するフォトセンサの特性によっては、この組合せ数は自由でよい。また、上記本実施形態のラベルプリンタでは、トランジスタアレイを使用しているが、代わりにアナログスイッチを使用することもできる。また、上記本実施形態のラベルプリンタでは、図3において予め決定される組合せとして、図2に示す組合せa、b、cとしているが、同じ種類の用紙でばらつきが大きい場合は、この組合せ数を増やすことができる。
【0048】
また、上記本実施形態のラベルプリンタでは、発光側の光強度(電流制限抵抗)の組合せを3段階としているが、トランジスタアレイ2を全てOFFにする場合も含めて4段階にすることも可能である。この場合において、CPU10は、ラベル連続体を一定距離(少なくともラベルの長さ方向の寸法以上で、ラベル端またはIマークが少なくとも2回以上検出できる長さ)搬送させることで、同時に、ラベル端からラベル端まで(IマークからIマークまで)の周期をステッピングモータのステップ数でカウントすることができる。CPU10は、このカウント結果から周期が一定期間を超えて長い場合は、図5に示すようにIマーク検出不要期間であると判断し、発光側に流れる電流を切ることが可能となる。これにより、省電力化を図ることができる。
【0049】
以上説明してきた本実施形態のラベルプリンタで得られる効果について以下にまとまる。フォトセンサのばらつきにより、感度が低いもの、高いものがあるが、本実施形態のアイデアを実施することで、感度が低いセンサは発光側の電流を増やし、かつ、受光側の負荷抵抗についても制御することで、用紙に適した感度を作ることができる。同様に、感度の高いセンサは、発光側の電流を減らして、かつ、受光側の負荷抵抗についても制御することで、用紙に適した感度を作ることができる。このため、フォトセンサ自体の感度のばらつきを気にすることなく、様々な用紙を使用することができる。また、Iマーク部分を含めてセンサの出力電圧をサンプリングし、それを基に光強度と受光感度を決定するので、実際にIマークを検出するときの検出不良を防止できる。また、保守部品としてフォトセンサを供給する際にも、フォトセンサ自体の感度のばらつきを気にすることなく供給が可能である。また、同じ種類の用紙において、用紙の製造ロットのばらつきや製造ベンダーの違いでIマークの印刷濃度が異なることがある場合でも、自動的に感度を補正するため、用紙に適した感度に設定することができる。
【0050】
なお、特許文献1では、用紙をセットする際に、Iマークや、ラベルギャップが検出位置にかからないようにするなど制限があるため、ユーザは注意して用紙をセットしなければならない。これに対して、上記実施形態では、用紙をセットする場所を指定する必要がないため容易であるところが異なる。上記実施形態では、用紙を一定距離(少なくともラベル長以上)を搬送し、フォトセンサの出力電圧をサンプリングし、その中で最大値と最小値を検出するため、用紙をセットする位置は自由であり、Iマークやラベルギャップにかからないように用紙をセットするといった注意を払う必要はない。よって、用紙のセットは容易になる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0052】
例えば、上述した実施形態における動作は、ハードウェア、または、ソフトウェア、あるいは、両者の複合構成によって実行することも可能である。
【0053】
ソフトウェアによる処理を実行する場合には、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ内のメモリにインストールして実行させてもよい。あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させてもよい。
【0054】
例えば、プログラムは、記録媒体としてのハードディスクやROM(Read Only Memory)に予め記録しておくことが可能である。あるいは、プログラムは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto Optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体に、一時的、あるいは、永続的に格納(記録)しておくことが可能である。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することが可能である。
【0055】
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体からコンピュータにインストールする他、ダウンロードサイトから、コンピュータに無線転送してもよい。または、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送してもよい。コンピュータでは、転送されてきたプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることが可能である。
【0056】
また、上記実施形態で説明した処理動作に従って時系列的に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力、あるいは、必要に応じて並列的にあるいは個別に実行するように構築することも可能である。
【符号の説明】
【0057】
1、5、9 ASIC
2、6 トランジスタアレイ
3 電流制限抵抗
4 発光ダイオード
7 負荷抵抗
8 フォトトランジスタ
10 CPU
11 メモリ
12 D/Aコンバータ
13 コンパレータ
14、15 VCC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で印刷領域が配置された第1面と、印刷位置マークが付された第2面とを備えた媒体を搬送モータによって搬送し、前記印刷領域に印刷を行うプリンタであって、
前記印刷位置マーク又は前記印刷領域間の領域を検知するための検知手段として、複数の光強度を切り替え可能とし、前記第2面に対して所定の光強度の照射光を出力する発光手段と、複数の受光感度を切り替え可能とし、前記発光手段から出力された照射光の反射光を受光し、受光した反射光を基に出力電圧を発生する受光手段と、を有しており、
前記媒体が前記搬送モータによって最小搬送単位だけ搬送される毎に、前記発光手段の光強度と前記受光手段の受光感度との組合せの全てに対応して前記出力電圧を検出し、当該検出を少なくとも前記印刷領域の搬送方向の長さ分繰り返し行い、
前記組合せ毎に、検出した出力電圧の最大値と最小値の電位差を算出し、
少なくとも、算出した電位差が最大である組合せを、前記発光手段の光強度と前記受光手段の受光感度を調整するための組合せとして予め決定することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記電位差が最大である組合せに加え、算出した電位差が2番目に大きい組合せ、及び、算出した電位差が3番目に大きい組合せを予め決定することを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
予め決定した組合せが複数有り、当該予め決定した組合せを用いて前記検知手段の感度を調整する場合、
前記媒体が前記搬送モータによって最小搬送単位だけ搬送される毎に、前記予め決定した組合せの全てに対応して前記出力電圧を検出し、当該検出を少なくとも前記印刷領域の搬送方向の長さ分繰り返し、さらに、当該検出を予め定められた印刷領域の数分行い、
前記予め決定した組合せ毎に、検出した出力電圧の最大値と最小値の電位差を前記印刷領域の数分算出し、さらに、前記印刷領域の数分算出した電位差の平均値を算出し、
算出した平均値が最も大きい組合せを、次回から前記発光手段の光強度と前記受光手段の受光感度を調整するための組合せとして決定することを特徴とする請求項1又は2記載のプリンタ。
【請求項4】
前記組合せは、
前記発光手段側に備えられる複数の制限抵抗における組合せと、前記受光手段側に備えられる複数の負荷抵抗における組合せとの組合せであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項5】
所定間隔で印刷領域が配置された第1面と、印刷位置マークが付された第2面とを備えた媒体を搬送モータによって搬送し、前記印刷領域に印刷を行う装置にて行われる光強度と受光感度の決定方法であって、
前記装置は、
前記印刷位置マーク又は前記印刷領域間の領域を検知するための検知手段として、複数の光強度を切り替え可能とし、前記第2面に対して所定の光強度の照射光を出力する発光手段と、複数の受光感度を切り替え可能とし、前記発光手段から出力された照射光の反射光を受光し、受光した反射光を基に出力電圧を発生する受光手段と、を有しており、
前記媒体が前記搬送モータによって最小搬送単位だけ搬送される毎に、前記発光手段の光強度と前記受光手段の受光感度との組合せの全てに対応して前記出力電圧を検出し、当該検出を少なくとも前記印刷領域の搬送方向の長さ分繰り返し行い、
前記組合せ毎に、検出した出力電圧の最大値と最小値の電位差を算出し、
少なくとも、算出した電位差が最大である組合せを、前記発光手段の光強度と前記受光手段の受光感度を調整するための組合せとして予め決定することを特徴とする光強度と受光感度の決定方法。
【請求項6】
所定間隔で印刷領域が配置された第1面と、印刷位置マークが付された第2面とを備えた媒体を搬送モータによって搬送し、前記印刷領域に印刷を行う装置が読み取り可能なプログラムであって、
前記装置は、
前記印刷位置マーク又は前記印刷領域間の領域を検知するための検知手段として、複数の光強度を切り替え可能とし、前記第2面に対して所定の光強度の照射光を出力する発光手段と、複数の受光感度を切り替え可能とし、前記発光手段から出力された照射光の反射光を受光し、受光した反射光を基に出力電圧を発生する受光手段と、を有しており、
前記装置に、
前記媒体が前記搬送モータによって最小搬送単位だけ搬送される毎に、前記発光手段の光強度と前記受光手段の受光感度との組合せの全てに対応して前記出力電圧を検出し、当該検出を少なくとも前記印刷領域の搬送方向の長さ分繰り返し行う処理と、
前記組合せ毎に、検出した出力電圧の最大値と最小値の電位差を算出する処理と、
少なくとも、算出した電位差が最大である組合せを、前記発光手段の光強度と前記受光手段の受光感度を調整するための組合せとして予め決定する処理と、
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−215028(P2011−215028A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84157(P2010−84157)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(302069930)NECパーソナルプロダクツ株式会社 (738)
【Fターム(参考)】