説明

プリンタの制御方法およびプリンタ

【課題】動作停止状態からの復帰時に、そのまま印刷すると紙が無駄になることが予測される場合には再印刷を行わずに印刷データを破棄するプリンタを提案すること。
【解決手段】ロール紙プリンタ1は、各種エラー状態を検出すると印刷動作を停止し、開閉蓋3を開き状態から閉じ状態に切り換えるカバークローズ動作をトリガとしてエラー状態から復帰して、中断していた印刷動作を再開する。印刷動作の再開時には、ロール紙収納部11内に装填されている記録紙12aの用紙判別動作を行い、現在装填中の記録紙12aの用紙種類が、受信バッファに記憶保持されている未完了印刷データにおいて印刷対象として指定されている用紙種類と一致するか否かを判定する。一致すると判定された印刷データについては再印刷し、一致しない印刷データは読み捨てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラー状態に移行した場合に所定の復帰処理によって印刷可能な状態に復帰するプリンタおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、用紙切れや紙ジャム、用紙種類の不整合などによる各種のエラー状態が発生した場合に印刷を停止させ、エラー原因を取り除くと印刷可能な状態に復帰して、中断した印刷を再開するプリンタが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、印刷中や紙送り中における紙詰まり状態や用紙切れ状態、カバーオープン状態などを検出すると印刷を停止してオフライン状態になり、これらのエラー状態が解消されるとオンライン状態に復帰するレシート用のプリンタが記載されている。このプリンタは、エラー状態が発生する直前に受信した印刷データを受信バッファから破棄すると共に、エラー状態が発生した後に受信する印刷データについても全て破棄する。そして、プリンタが復帰した時点で再度受信バッファをクリアすると共にホストコンピュータにその旨の信号を送り、ホストコンピュータから印刷データを再送信させる。これにより、復帰後に中断した部分から印刷が自動再開されてしまうことにより無駄な印刷物が発行されてしまうという不具合を防止することができ、印刷用紙やインクなどの消耗品の無駄な消費を抑制できる。
【特許文献1】特開2006−62266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のプリンタは、エラー状態になると印刷途中あるいは未印刷の印刷データが全て破棄されるので、そのまま印刷を再開しても不具合が発生しないデータまでもが破棄されてしまう。そのため、復帰時にホストコンピュータ側から印刷が完了していない印刷データを全て再送信する必要があり、ホストコンピュータの処理負担が大きい。また、復帰後にプリンタ側から再送信を要求して印刷データの再受信および再解析を行うので、破棄された印刷データの再印刷が完了するまでに時間がかかるという問題点があった。
【0005】
また、特許文献1のプリンタでは、復帰処理中に新しい印刷用紙を装填したり設定を変えるなどの操作が行われたことにより、復帰時のプリンタの状態や装填されている印刷用紙が未印刷の印刷データの印刷に適合しなくなってしまう場合は想定されていない。よって、このような場合にそのまま印刷を再開すると、再送信した印刷データが適合しない用紙に印刷されてしまう恐れがあり、印刷用紙が無駄になる恐れがあった。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、エラー状態からの復帰時に、そのまま印刷すると紙が無駄になることが予測される場合には再印刷を行わずに印刷データを破棄するプリンタおよびプリンタの制御方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のプリンタの制御方法は、
所定のエラー状態が検出されると動作停止状態に移行して、前記エラー状態を解消するための所定の復帰処理が行われるまで待機し、
前記復帰処理が行われると、動作可能状態に復帰すると共に、前記動作停止状態への移行時に印刷が完了していない受信済みの印刷データを正常に印刷できるか否か判定し、
正常に印刷できると判定した場合には、当該印刷データの印刷動作を開始し、
正常に印刷できないと判定した場合には、当該印刷データを破棄することを特徴としている。
【0008】
本発明は、このように、動作停止状態からの復帰時に、印刷が完了していない受信済み印刷データについて、復帰後のプリンタの状態によって正常に印刷できるか否かの判定を行い、正常に印刷できないことが予測される印刷データについては印刷せず破棄してしまうので、正常に印刷されない印刷データが印刷されてしまうことによる印刷媒体やインクなどの消耗品の無駄な消費を抑制できる。また、正常に印刷できることが予測される印刷データはそのまま印刷するので、正常な再印刷にかかる手間を最小限にすることができる。
【0009】
本発明において、前記動作停止状態への移行時に、印刷が完了していない受信済みの印刷データが複数記憶されている場合には、当該複数の前記印刷データのそれぞれについて正常に印刷できるか否かを判定し、前記複数の前記印刷データのうち、正常に印刷できないと判定された前記印刷データを破棄し、正常に印刷できると判定された前記印刷データの印刷動作を開始するとよい。このように、受信済みの印刷データを選別して正常に印刷可能な印刷データのみを印刷し、他の印刷データは破棄することにより、無駄にならない印刷物のみを作成することができる。また、再印刷の手間を削減することができる。
【0010】
また、本発明において、前記復帰処理が行われると、前記動作可能状態に復帰するときに印刷媒体装填部に装填されている印刷媒体が、前記受信済みの印刷データにおいて印刷対象とされている印刷媒体と一致しているか否かを判定し、一致していると判定した場合には、当該印刷データの印刷動作を開始し、一致していないと判定した場合には、当該印刷データを破棄するとよい。このようにすると、適合しない印刷媒体に印刷してしまうことがないので、印刷媒体やインクなどの消耗品を無駄にしなくて済む。
【0011】
このとき、前記復帰処理に、印刷媒体装填部を開閉するための開閉カバーを閉じるカバークローズを検出する処理が含まれるようにするとよい。用紙切れや紙ジャム、用紙不適合などのエラー状態の解消のために行われる処置の際には印刷媒体装填部を開閉するカバークローズ動作が必ず行われるので、この動作を検出し復帰のためのトリガ動作に含めれば、印刷媒体装填部を閉じる動作と共に印刷可能状態への復帰を開始させることができ、速やかに印刷可能状態に復帰できる。
【0012】
また、前記動作可能状態への復帰時に正常に印刷できると判定された受信済みの印刷データの印刷動作を、外部装置からの印刷再開指令によって開始するとよい。このようにすると、プリンタ本体へのエラー解消処置が終了しても直ちに印刷を再開させず、ホストコンピュータなどの外部装置からの設定コマンドによる設定更新などを行った後に印刷を再開させることができるので、プリンタ本体の用紙設定と装填されている印刷媒体の不適合などによる印刷の失敗を防止できる。
【0013】
更に、本発明において、前記動作停止状態に移行したことによって前記印刷データの印刷が印刷内容の途中の所定位置で中断され、前記動作可能状態への復帰時に、当該中断された印刷データを正常に印刷できると判定した場合には、当該印刷データの印刷動作を、印刷が中断された位置から再開するとよい。このようにすると、印刷が中断した印刷データの中の未印刷の印刷内容だけを印刷できるので、既に印刷された内容が再印刷されることによる印刷媒体の無駄な消費を抑制できる。
【0014】
あるいは、本発明において、前記動作停止状態に移行したことによって前記印刷データの印刷が定型の印刷領域への印刷内容の途中で中断され、前記動作可能状態への復帰時に、当該中断された印刷データを正常に印刷できると判定した場合には、当該印刷データの印刷動作を、印刷が中断された印刷領域の先頭位置から再開するとよい。このようにすると、定型のシートやラベルなどの定型の印刷領域に印刷する場合に、一つのトランザクション等の途中まで印刷して印刷が中断されたシートやラベルなどから印刷を再開することができるので、シートやラベル単位で必要部分だけ再印刷を行うことができる。
【0015】
次に、本発明のプリンタは、前記動作停止状態への移行時に印刷完了していない受信済みの印刷データの印刷または/および破棄を、上記のプリンタの制御方法により行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、動作停止状態からの復帰後に、印刷が完了していない受信済み印刷データが正常に印刷できなかったことによる印刷媒体やインクなどの消耗品の無駄な消費を抑制できる。また、正常に印刷できることが予測される印刷データはそのまま印刷するので、正常な再印刷にかかる手間を最小限にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明のロール紙プリンタの実施の形態を説明する。
【0018】
(全体構成)
図1は本発明を適用したインクジェット方式のロール紙プリンタの外観斜視図であり、図2はロール紙プリンタの開閉蓋を全開にした状態の外観斜視図である。ロール紙プリンタ1は、全体としてほぼ直方体形状をしたプリンタ本体2と、当該プリンタ本体2の前面に取り付けた開閉蓋3とを有している。プリンタ本体2の外装ケース2aの前面には所定幅の排出口4が形成されている。排出口4の下側には排紙ガイド5が前方に突出しており、当該排紙ガイド5の側方には蓋開閉レバー6が配置されている。外装ケース2aにおける排紙ガイド5および蓋開閉レバー6の下側には、ロール紙出し入れ用の矩形の開口部2bが形成されており、この開口部2bが開閉蓋3によって封鎖されている。
【0019】
蓋開閉レバー6を操作すると開閉蓋3のロックが解除される。ロック解除後、排紙ガイド5を前方に引くと、開閉蓋3はその下端部を中心として前方に旋回し、ほぼ水平となるまで開く。開閉蓋3が開くと、図2に示すように、プリンタ内部に形成されているロール紙収納部11(印刷媒体装填部)が開放状態となる。同時に、ロール紙収納部11から排出口4に到る搬送路A(図3参照)が開放状態となり、プリンタ前方からロール紙12の交換作業などを簡単に行うことができる。なお、図2では開閉蓋3および蓋開閉レバー6を省略してある。
【0020】
開閉蓋3の近傍には開閉検出器3aが取り付けられている。開閉検出器3aは、フォトセンサ、磁気センサ、マイクロスイッチなどから構成されている。開閉検出器3aは、開閉蓋3が開き状態から閉じ状態に切り換わったこと、および、閉じ状態から開き状態に切り換わったことを検出できる。
【0021】
外装ケース2aの所定位置には、ロール紙プリンタ1内の各種エラーを報知するための図示しないエラーランプが取り付けられている。エラーランプは、エラーの種類に対応付けて複数設けることができ、その種類としては、例えば、開閉蓋3が開いているカバーオープンエラー状態を報知するランプ、ロール紙収納部11に装填されているロール紙12を使い切った場合に点灯するランプ、搬送路A上の記録紙12aの用紙種類がロール紙プリンタ1に記憶保持されている設定データあるいは受信した印刷データで指定されている用紙種類と異なっている場合に点灯するランプ、紙ジャムが発生した場合に点灯するランプ、その他の正常な印刷が困難な場合に点灯するエラーランプ、等がある。なお、エラー発生時に音によってエラー状態を報知するためのブザーを取り付けてもよい。
【0022】
図3はロール紙プリンタ1の内部の概略構成を示す説明図である。ロール紙収納部11には、ロール紙12が、プリンタ幅方向に向いた横置き状態で転動可能に収納されている。ロール紙12は、一定幅の長尺状の記録紙12aをロール状に巻き付けたものである。
【0023】
ロール紙収納部11の上側には、プリンタ本体フレーム10の上端に水平に取り付けられたヘッドユニットフレーム13が配置されている。ヘッドユニットフレーム13には、インクジェットヘッド14、インクジェットヘッド14を搭載しているキャリッジ15、キャリッジ15のプリンタ幅方向への移動をガイドするキャリッジガイド軸16が配置されている。インクジェットヘッド14は、インクノズル面14aが下向きになるようにキャリッジ15に搭載されている。また、ロール紙収納部11の上側には、キャリッジ15をキャリッジガイド軸16に沿って往復移動させるためのキャリッジモータ17およびタイミングベルト18を備えたキャリッジ搬送機構が配置されている。
【0024】
インクジェットヘッド14の下側には、プリンタ幅方向に水平に延びるプラテン19がインクノズル面14aと一定のギャップを隔てて対向配置されており、プラテン19によってインクジェットヘッド14の印字位置が規定されている。プラテン19の後端には、下方に湾曲しているテンションガイド20が取り付けられている。
【0025】
プラテン19の後側(搬送方向上流側)には、後側紙送りローラ21および後側紙押えローラ22がプリンタ幅方向に水平に架け渡されている。後側紙送りローラ21には、記録紙12aを介して後側紙押えローラ22が上側から所定の押圧力で押し付けられている。また、プラテン19の前端側(搬送方向下流側)には、前側紙送りローラ23および前側紙押えローラ24が配置されている。前側紙送りローラ23には、記録紙12aを介して前側紙押えローラ24が上側から押し付けられている。後側紙送りローラ21および前側紙送りローラ23は、プリンタ本体フレーム10に搭載されている紙送りモータ25によって同期して回転駆動される。
【0026】
搬送路Aのインクジェットヘッド14よりも上流側には、紙検出器26が配置されている。紙検出器26は、反射型フォトセンサあるいは透過型フォトセンサにより構成されており、搬送路A上に引き出されている記録紙12aからの反射光あるいは透過光を利用して、記録紙12aの有無、および、記録紙12aの用紙種類を検出する。
【0027】
ロール紙収納部11内のロール紙12から繰り出される記録紙12aは、テンションガイド20によって所定の張力が付与された状態で、プラテン19上の印字位置を経由する搬送路A(図3に示す太い一点鎖線)に沿って搬送され、排出口4から引き出された状態にセットされる。この状態で紙送りモータ25が駆動制御されると、後側紙送りローラ21および前側紙送りローラ23が回転し、記録紙12aが一定の搬送量ずつ紙送りされる。そして、記録紙12aの紙送りと同期してインクジェットヘッド14が駆動され、印刷位置を通過する記録紙12aの表面に印刷が行われる。その後、印刷済みの記録紙12aが排出口4から排出された状態で搬送が停止し、排出口4の近傍に配置されたオートカッタ28によって記録紙12aの先端部分が切断され、印刷済みの記録紙片が発行される。
【0028】
(制御系)
図4は、ロール紙プリンタ1の制御系を示す概略ブロック図である。ロール紙プリンタ1の制御系は、CPU、ROM、RAMなどを備えた制御部30を中心に構成されている。また、制御部30には、フラッシュROMなどの不揮発性メモリ33が接続されている。制御部30には、送受信部31を介して、ホスト装置32などの上位機器から印刷データやコマンドなどが供給される。制御部30は、ホスト装置32などからの印刷指令に基づき、ロール紙を送り出す紙送り機構やキャリッジ搬送機構などの各部の駆動を制御して、紙送り動作および印刷動作を実行する。
【0029】
制御部30の出力側には、ヘッドドライバ14bを介してインクジェットヘッド14が接続されており、制御部30は、ヘッドドライバ14bを介してインクジェットヘッド14を駆動制御する。また、制御部30の出力側には、モータドライバ17aおよびモータドライバ25aを介してキャリッジモータ17および紙送りモータ25が接続されており、制御部30は、モータドライバ25a,17aを介して紙送りモータ25およびキャリッジモータ17を駆動制御する。制御部30は、紙送りモータ25を送り出し方向に駆動制御するステップ数あるいは回転量を積算することにより、記録紙12aの所定の搬送量を算出する。
【0030】
ロール紙プリンタ1は、長尺の剥離台紙の表面に一定間隔でラベルが剥離可能な状態で貼り付けられているラベル紙のほか、ラベル紙における各ラベル上の所定位置に印刷基準位置を示すブラックマークが付されたマーク付きラベル紙、ラベル紙でないマーク付きの連続用紙、マーク無しの無地の連続用紙、などの多種類の記録紙への印刷が可能である。また、ラベル紙やマーク紙については、ラベルやマークの配置や寸法などが異なる多種類の記録紙への印刷が可能である。また、無地の連続用紙であっても、紙質が異なる多種類の記録紙への印刷が可能である。さらに、これらの記録紙の紙幅やラベル幅を適宜変更した記録紙への印刷が可能である。
【0031】
そのため、ロール紙プリンタ1の制御部30は、ロール紙収納部11に装填されているロール紙12を構成する記録紙12aの種類(ラベルやマークの配置や紙質、紙幅などの各種仕様)に合わせて、印刷位置やインクの吐出量などを制御するための用紙設定情報を保持している。すなわち、ロール紙プリンタ1の不揮発性メモリ33には、このロール紙プリンタ1で印刷が可能な多種類の記録紙12aに対応する多種類の用紙設定情報が予め記憶されている。
【0032】
制御部30の入力側には、開閉検出器3aや、紙検出器26が接続されている。制御部30は、開閉検出器3aによって開閉蓋3が閉じたことを検出すると、紙検出器26の検出出力に基づいてロール紙収納部11に装填されている用紙の種類を判別する用紙判別動作を行う。例えば、ロール紙12から引き出されて搬送路A上に装填された記録紙12aを所定量搬送して、搬送中の紙検出器26の検出出力に基づき、記録紙12aの用紙の種類を判別する。そして、制御部30は、判別した用紙の種類に基づいて対応する用紙設定情報を読み出してロール紙プリンタ1の各部を制御することにより、各用紙に対する最適な印刷動作を行うことができる。紙検出器26により、用紙の有無や、用紙の長さ、ラベルの長さ、用紙に印されたマークの間の距離などを検出し、用紙の種類やサイズを判別することもできる。また、キャリッジ15に搭載された不図示の光学センサにより、キャリッジ15を走査して用紙幅を検出することもできる。また、キャリッジ15に搭載された不図示のエンコーダにより、キャリッジ15がロックして紙ジャムになったことも検出できる。そして、制御部30はこれらに基づいて最適な印刷制御やエラー制御を行うこともできる。
【0033】
また、制御部30は、これらの各検出器の検出出力に基づいて、ロール紙プリンタ1のエラー状態を判定する。すなわち、制御部30は、開閉検出器3aによって開閉蓋3が閉じていないことを検出したときは、カバーオープンエラー状態であると判定する。また、紙検出器26によって記録紙12aが検出されないときは用紙切れ状態と判定する。また、用紙判別動作によって判別された記録紙12aの用紙の種類が、ロール紙プリンタ1に記憶保持されている設定データあるいは受信した印刷データにおいて指定されている用紙種類と一致しているか否かの判定を行い、一致していない場合には用紙種類違いエラーと判定する。そして、記録紙12aの搬送速度や紙送りモータ25の負荷などの検出結果に基づいて、紙ジャム状態であるか否かの判定を行う。その他にも、図示しないインクカートリッジ収容部のカバーの開閉状態やインクカートリッジの装着状態、インク切れ状態や廃液タンク内の廃インク量などの検出結果に基づき、正常な印刷が実行できないエラーの有無を判定することができる。
【0034】
(動作停止状態から動作可能状態への復帰制御)
次に、ロール紙プリンタ1におけるエラー発生時の印刷停止状態(動作停止状態)から印刷可能状態(動作可能状態)への復帰の際に行われる制御について説明する。
【0035】
上記のように、制御部30は、開閉蓋3が開いているカバーオープンエラー、用紙切れエラー、用紙種類違いエラー、紙ジャムエラー、あるいはその他のエラーなどの各種エラー状態を検出すると、印刷動作を停止させると共に、エラーランプなどによってエラーの発生をユーザに報知する。そして、この報知後に、開閉蓋3を開き状態から閉じ状態に切り換えるカバークローズ動作を検出すると、エラー状態から復帰して中断していた印刷動作を再開するようにロール紙プリンタ1の各部を制御する。
【0036】
図5はカバークローズ動作をトリガとする動作可能状態への復帰制御のフローチャートである。この処理は、ロール紙プリンタ1がエラー発生状態にあるときに、オペレータが開閉蓋3を開けてエラーから回復させるための処理をした後行う開閉検出器3aによる開閉蓋3の閉動作(カバークローズ動作)の検出をトリガとして実行される。ここで、エラー発生状態のロール紙プリンタ1の受信バッファやイメージバッファには、受信済みの印刷データのうち、印刷が完了していない未完了印刷データ(印刷中断状態の印刷データ、および、印刷待ち状態の印刷データ)が記憶保持されている。
【0037】
制御部30は、ステップS1〜S2において、ロール紙収納部11内に装填されている記録紙12aの用紙判別動作を行う。まず、ステップS1において、紙検出器26によって搬送路A上の記録紙12aの有無を判別し、記録紙12aが検出されないときは、用紙無しエラー状態であると判定して(ステップS1:No)、再びエラー状態に移行する。一方、記録紙12aが検出されると用紙有りと判定して(ステップS1:Yes)、ステップS2に移行する。そして、現在装填中の記録紙12aがどのような用紙種類かを判別する。
【0038】
続いて、ステップS3〜S4において、ステップS2で判別した現在装填中の記録紙12aの用紙種類が、受信バッファに記憶保持されている未完了印刷データにおいて印刷対象として指定されている用紙種類と一致するか否かを判定する。まず、ステップS3では、装填中の記録紙12aと指定されている記録紙12aの用紙サイズ(用紙幅や印刷領域のサイズ等)が一致するか否かを判定する。用紙サイズが一致しないと判定した場合には(ステップS3:No)、用紙サイズエラーであると判定して、後述するステップS6に進む。
【0039】
一方、ステップS3で用紙サイズが一致していると判定した場合(ステップS3:Yes)にはステップS4に進み、装填中の記録紙12aと指定されている記録紙12aの用紙タイプ(連続紙か否か、ラベル用紙か否かおよびラベルの形状、ブラックマークや切り欠きなどの目印の有無、等)が一致するか否かを判定する。用紙タイプが一致しないと判定した場合には(ステップS4:No)、用紙タイプ違いエラーであると判定して、後述するステップS6に進む。
【0040】
ステップS4で用紙タイプも一致していると判定した場合(ステップS4:Yes)にはステップS5に進む。この場合には、制御部30は、ロール紙プリンタ1に、未印刷の印刷データを正常に印刷可能な記録紙12aが現在セットされていると判断し、ステップS5において、現在記憶保持している未印刷の印刷データの印刷動作を開始する。
【0041】
ステップS3およびS4で用紙サイズあるいは用紙タイプのいずれか一方でも異なっていると判定された場合には、制御部30は、この記録紙12aでは、現在記憶保持している未印刷の印刷データを正常に印刷できないと判断し、ステップS6において、現在保持している印刷データを受信バッファやイメージバッファから消去して破棄してしまう。すなわち、この場合には、現在保持している未印刷の印刷データを読み捨てる。
【0042】
ここで、未印刷の印刷データとして、複数の印刷データが記憶保持されていた場合には、制御部30は、各印刷データに対してステップS3〜S4の判定を行い、印刷データを、現在装填されている記録紙12aに正常に印刷可能なものと、正常に印刷可能でないものとに選別する。そして、正常に印刷可能でない印刷データのみをステップS6においてバッファから消去して破棄し、正常に印刷可能な印刷データについては残して、ステップS5において再印刷の対象とする。
【0043】
このようにすれば、動作停止状態からの復帰時に正常に印刷できない用紙に自動的に再印刷されてしまうことがないので、記録紙12aやインクなどの無駄な消費を抑制でき、無駄にならない印刷物のみを作成することができる。また、正常に印刷できることが予測される印刷データはそのまま印刷するので、正常な再印刷にかかる手間を最小限にすることができる。
【0044】
また、用紙関係のエラー状態から復帰させるための処置(例えば、記録紙12aの交換作業や補充作業、紙詰まりを取り除くための作業など)の最後に、開閉蓋3を閉めるカバークローズ動作が行われるので、エラー原因の除去のための処置の完了と同時に印刷可能状態への復帰および再印刷を開始することができる。よって、速やかな復帰が可能となる。
【0045】
なお、未印刷の印刷データのうち、印刷中断状態の印刷データについては、中断位置から印刷を再開するように制御するとよい。このとき、印刷内容に応じて印刷物の長さが変わるレシートのような非定型の印刷データの場合には、中断位置からそのまま印刷を開始してもよいが、定型のシートやラベルなどの印刷する場合にように印刷領域の寸法が予め設定されており、シート単位で印刷を行う場合や、定型のラベル上に印刷する印刷データの場合には、印刷を中断したシートやラベルの先頭から印刷を開始するようにロール紙プリンタ1の各部を制御するとよい。このようにすると、既に印刷された内容が再印刷されることによる印刷媒体の無駄な消費を最大限抑制でき、シート単位やラベル単位で最小限必要な部分だけ再印刷を行うことができる。
【0046】
(改変例)
(1)上記実施形態では、カバークローズ動作をトリガとして用紙判別動作だけでなく再印刷の実行開始あるいは印刷データの読み捨てまでを全て行うようにしていたが、カバークローズ動作をトリガとして行う処理を、用紙判別動作および未印刷の印刷データが正常に印刷可能であるか否かの判定まで、あるいは、再印刷できない印刷データの読み捨てまでにとどめておき、カバークローズ動作後にホスト装置32から印刷再開コマンドを受信することにより、印刷動作を再開するようにしてもよい。
【0047】
あるいは、カバークローズ動作をトリガとして行う処理を用紙判別動作のみにしておき、カバークローズ動作後にホスト装置32からロール紙プリンタ1の設定変更コマンドを送って印刷設定を変更した後、変更後の印刷設定で現在装填されている記録紙12aに対して未印刷の印刷データを正常に印刷可能か否かを判定し、正常に印刷可能であると判定した場合には再印刷を開始し、正常に印刷可能でないと判定した場合には印刷データの読み捨てを実行するようにしてもよい。
【0048】
(2)上記実施形態では、未印刷の印刷データが正常に印刷可能であるか否かの判定を、用紙種類の一致不一致にのみ着目して行っていたが、他の条件の不整合についての判定を追加して行っても良い。例えば、インク切れの判定や廃インク量の判定、インク漏れやノズルの目詰まり、ヘッド温度異常の有無などの、ロール紙プリンタ1の状態のうち印刷動作や紙送り動作に影響する任意の条件についての判定を行うようにしてもよい。
【0049】
(3)上記実施形態では、用紙種類が一致するか否か、すなわち、印刷データで指定された通りに正常に印刷できるか否かに基づいて印刷再開時の印刷の可否を判定していたが、レイアウトや色などの不整合については許容し、印刷内容を一応すべて印刷できると判定した場合には印刷を実行するようにしてもよい。
【0050】
(4)上記実施形態では、全ての未印刷の印刷データに対して正常な印刷が可能か否かの判定すなわち再印刷の可否の判定を行っていたが、印刷データの種類によって、再印刷の可否を判定するか否かを分けてもよい。あるいは、各印刷データについて、個別に再印刷の判定を行うか否かをホスト装置32のドライバ画面上で設定できるようにしてもよい。また、再印刷をページ単位で行うか中断位置から行うかなどの、印刷再開位置の設定を、印刷データの種類によって、あるいは印刷データ毎に個別に設定できるようにしてもよい。
【0051】
(5)上記実施形態は、ロール紙を装填するロール紙プリンタ1に本発明を適用した例であるが、本発明は、定型にカットされた用紙に印刷するプリンタや、連続帳票を折り畳んだ状態でセットされる連続帳票に印刷するプリンタに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を適用したロール紙プリンタの外観斜視図である。
【図2】ロール紙プリンタの開閉蓋を全開にした状態の外観斜視図である。
【図3】ロール紙プリンタの内部の概略構成を示す説明図である。
【図4】ロール紙プリンタの制御系を示す概略ブロック図である。
【図5】動作可能状態への復帰制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1…ロール紙プリンタ、2…プリンタ本体、2a…外装ケース、2b…開口部、3…開閉蓋、3a…開閉検出器、4…排出口、5…排紙ガイド、6…蓋開閉レバー、10…プリンタ本体フレーム、11…ロール紙収納部(印刷媒体装填部)、12…ロール紙、12a…記録紙(印刷媒体)、13…ヘッドユニットフレーム、14…インクジェットヘッド、14a…インクノズル面、14b…ヘッドドライバ、15…キャリッジ、16…キャリッジガイド軸、17…キャリッジモータ、17a…モータドライバ、18…タイミングベルト、19…プラテン、20…テンションガイド、21…後側紙送りローラ、22…後側紙押えローラ、23…前側紙送りローラ、24…前側紙押えローラ、25…紙送りモータ、25a…モータドライバ、26…紙検出器、28…オートカッタ、30…制御部、31…送受信部、32…ホスト装置、33…不揮発性メモリ、A…搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエラー状態が検出されると動作停止状態に移行して、前記エラー状態を解消するための所定の復帰処理が行われるまで待機し、
前記復帰処理が行われると、動作可能状態に復帰すると共に、前記動作停止状態への移行時に印刷が完了していない受信済みの印刷データを正常に印刷できるか否か判定し、
正常に印刷できると判定した場合には、当該印刷データの印刷動作を開始し、
正常に印刷できないと判定した場合には、当該印刷データを破棄することを特徴とするプリンタの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンタの制御方法であって、
前記動作停止状態への移行時に、印刷が完了していない受信済みの印刷データが複数記憶されている場合には、
当該複数の前記印刷データのそれぞれについて正常に印刷できるか否かを判定し、
前記複数の前記印刷データのうち、正常に印刷できないと判定された前記印刷データを破棄し、正常に印刷できると判定された前記印刷データの印刷動作を開始することを特徴とするプリンタの制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリンタの制御方法であって、
前記復帰処理が行われると、前記動作可能状態に復帰するときに印刷媒体装填部に装填されている印刷媒体が、前記受信済みの印刷データにおいて印刷対象とされている印刷媒体と一致しているか否かを判定し、
一致していると判定した場合には、当該印刷データの印刷動作を開始し、
一致していないと判定した場合には、当該印刷データを破棄することを特徴とするプリンタの制御方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のプリンタの制御方法であって、
前記復帰処理に、印刷媒体装填部を開閉するための開閉カバーを閉じるカバークローズを検出する処理が含まれることを特徴とするプリンタの制御方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかの項に記載のプリンタの制御方法であって、
前記動作可能状態への復帰時に正常に印刷できると判定された受信済みの印刷データの印刷動作を、外部装置からの印刷再開指令によって開始することを特徴とするプリンタの制御方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかの項に記載のプリンタの制御方法であって、
前記動作停止状態に移行したことによって前記印刷データの印刷が印刷内容の途中の所定位置で中断され、前記動作可能状態への復帰時に、当該中断された印刷データを正常に印刷できると判定した場合には、
当該印刷データの印刷動作を、印刷が中断された位置から再開することを特徴とするプリンタの制御方法。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかの項に記載のプリンタの制御方法であって、
前記動作停止状態に移行したことによって前記印刷データの印刷が定型の印刷領域への印刷内容の途中で中断され、前記動作可能状態への復帰時に、当該中断された印刷データを正常に印刷できると判定した場合には、
当該印刷データの印刷動作を、印刷が中断された印刷領域の先頭位置から再開することを特徴とするプリンタの制御方法。
【請求項8】
前記動作停止状態への移行時に印刷完了していない受信済みの印刷データの印刷または/および破棄を、請求項1ないし7のプリンタの制御方法により行うことを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−23297(P2010−23297A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185671(P2008−185671)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】