説明

プリンタの画像品質評価システムおよび画像品質評価方法

【課題】工程、時間、および消耗品コストを低減させた、プリンタの画像品質評価システム。
【解決手段】記録ヘッドを保持するキャリッジを走査させて記録ヘッドから画像データに基づいて記録用紙にインクを吐出して画像を出力するプリンタのための画像品質評価システムであって、記録ヘッドと質量および形状が等価であり記録ヘッドの代わりにキャリッジに保持されて用いられるヘッド形状工具を備え、ヘッド形状工具は、画像データと、ヘッド形状工具を保持する状態で記録時と同様の動作状況で走査させたキャリッジの位置情報を用いて前記画像データを変換処理して得られた記録用紙に出力する形式の位置情報を含むデータと、の相似性を判定する機能と、相似性の判定結果を出力する機能と、を有する画像品質評価システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタの画像品質評価システムおよび画像品質評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出して記録を行うインクジェット型のプリンタの大半は、インクを吐出する記録ヘッドとして、交換可能にキャリッジに保持して用いられるカートリッジ式記録ヘッドを採用している。プリンタにセットした用紙は、紙送り部により一定方向に送られるよう制御されており、キャリッジは紙送り方向に対して交差する方向(例えば垂直)に駆動するよう制御されている。用紙が記録位置まで送られると、キャリッジに搭載されている記録ヘッドの走査が行われて、記録ヘッドからインクが用紙に対して吐出される。記録画像の一行分が記録されると、キャリッジは待機位置に戻り、紙送り部により記録画像一行分だけ用紙が送られる。インクジェット型のプリンタの大半は、この動作を繰り返し、画像を記録するよう制御されている。
【0003】
このようなプリンタの性能を検査するためのシステムとして、速度センサーを備え、記録ヘッドと形状・質量が等価で、キャリッジに搭載可能な検査工具を用いることが知られている(特許文献1参照)。この検査工具を搭載したキャリッジを、実際には記録をすることなく、記録時と同じ動作状況で走査してキャリッジ速度をセンサーで検出し、また、キャリッジを停止して紙送り動作を行い紙送り動作速度を検出する。均一な動作速度で記録が行われない場合は、実際の記録において、例えば、吐出されるインクのドット位置がばらつくことにより、記録される画像にムラが生じ得る。このような知見に基づき、検出した両速度から、プリンタの性能ムラを判定する。
【0004】
特許文献1の検査工具によると、実際の記録をせずにプリンタの性能ムラを判定することができるので、記録検査および微調整に要する工程・時間、記録検査に必要な消耗品(記録ヘッド、インク、用紙等)等を省略して、検査コストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−113804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の検査工具では、キャリッジ走査や紙送りに起因する性能ムラを評価できるが、記録画像の色合い等の画像処理の影響を受ける画像品質の評価ができない。また、従来の画像品質の評価は、作業者の目視による記録画像の確認で行われるため、明確な規格値が設定できず、正確な判定が下せない場合があった。すなわち、判定基準は、良品と不良品との境目を明確にするための、限度見本と呼ばれる良品のサンプルおよび不良品となる規格ぎりぎりのサンプルと、検査で記録した画像と、を見比べて判定するが、作業者個々により、判定結果が異なることがあった。
【0007】
そこで、本発明は、実際に記録をすることなく、画像処理による画像品質への影響を自動的かつ高精度に検査可能な画像品質評価システムおよび方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の画像品質評価システムは、記録ヘッドを保持するキャリッジを走査させて記録ヘッドから画像データに基づいて記録用紙にインクを吐出して画像を出力するプリンタのための画像品質評価システムであって、記録ヘッドと質量および形状が等価であり、記録ヘッドの代わりにキャリッジに保持されて用いられるヘッド形状工具を備え、ヘッド形状工具は、画像データと、ヘッド形状工具を保持する状態で記録時と同様の動作状況で走査させたキャリッジの位置情報を用いて前記画像データを変換処理して得られた、記録用紙に出力する形式の位置情報を含むデータと、の相似性を判定する機能と、相似性の判定結果を出力する機能と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プリンタの画像品質に係る性能検査において、実際に記録をすることなく、元の画像データと記録データとの差異を判断することができ、これにより画像処理の影響による画像品質の評価ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1の検査対象のプリンタ、検査時に用いられるヘッド形状工具、および記録画像判定工具のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1の検査で用いられる検査対象のプリンタを示す斜視図である。
【図3】(a)は、本発明の実施例1の検査で用いられるキャリッジを示す斜視図であり、(b)は、本発明の実施例1の検査で用いられるヘッド形状工具を示す斜視図であり、(c)は、本発明の実施例1の通常動作時に用いられるヘッドカートリッジを示す斜視図である。
【図4】(a)は、本発明の実施例1で用いられる記録画像判定工具を示す斜視図であり、(b)は、 本発明の実施例1の検査で用いられる検査対象のプリンタを制御するプログラムの構成の一例を示す図である。
【図5】(a)は、本発明の実施例1の検査時におけるCPUの処理を示すフローチャートであり、(b)は、本発明の実施例1の検査時におけるヘッド形状工具の処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例1の検査時におけるヘッド形状工具内で、画像データが記録データに変換される過程を示すフローチャートである。
【図7】(a)は、本発明の実施例1の検査時におけるヘッド形状工具内で画像データから変換されたヘッド制御信号の一例を示す図であり、(b)は、本発明の実施例1の検査時における記録データの一例を示す図である。
【図8】(a)は、本発明の実施例1の検査時における記録画像判定の処理を示すフローチャートであり、(b)は、本発明の実施例1および2の検査時における画像データと記録データとの相似性の判定処理を示すフローチャートである。
【図9】(a)は、本発明の実施例1の検査時における細分化した画像データの一例を示す図であり、(b)は、本発明の実施例1の検査時におけるX座標およびY座標で示す位置に置換した画像データの一例を示す図であり、(c)は、本発明の実施例1の検査時における画像データと記録データとの相似性判定処理の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施例1である検査工程を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施例2の検査対象のプリンタ、および検査時に用いられるヘッド形状工具のシステム構成を示すブロック図である。
【図12】(a)は、本発明の実施例2の検査時におけるCPUの処理を示すフローチャートであり、(b)は、本発明の実施例2の検査時におけるヘッド形状工具の処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施例2である検査工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態を、下記の実施例1および2により説明する。
【実施例1】
【0012】
実施例1は、プリンタ1にヘッド形状工具2と記録画像判定工具3とが付属する構成で実施される。
【0013】
図1は、実施例1の検査対象のプリンタ1と、検査時に用いられるヘッド形状工具2と、記録画像判定工具3とを備えるシステム構成を示すブロック図である。
【0014】
プリンタ1は、インクジェットプリンタが該当する。プリンタ1は、システム部11、キャリッジ12、および駆動部13に大別される。プリンタ1は、その他、ユーザーがプリンタ1の操作を行うための操作パネル14と、キャリッジ12が動作した際に位置を確認するためのエンコーダー部材15とを有する。
【0015】
システム部11は、CPU111と、記録制御部112と、RAM113と、操作制御部114と、ホストインターフェース115と、画像処理部116と、ROM117とを有し、これらは、システムバス118を介してデータを送受信する。CPU111は、ROM117内に保存されているプリンタ1の動作プログラムとプリンタ1の設定情報とを、RAM113に展開し、および読み出して、プリンタ1の制御を行う。記録制御部112は、駆動部13のキャリッジ駆動機構131および紙送り部駆動機構132のそれぞれとデータを送受信し、プリンタ1の駆動部13の制御を行う。RAM113は、SDRSDRAM、DDRSDRAM等が該当する。RAM113では、CPU111が処理するプリンタ1の制御プログラムと、画像データとが展開される。操作制御部114は、操作パネル14と接続し、プリンタ1の設定情報を操作パネル14に送信する機能と、ユーザーが操作パネル14を操作した際に操作した情報を受信する機能とを備える。ホストインターフェース115は、ネットワーク、IEEE1394等のコントローラが該当する。プリンタ1は、ホストインターフェース115を介し、記録画像判定工具3とデータの送受信を行うことが可能である。また、ホストインターフェース115は、ユーザーがPC等の情報処理装置内の画像データをプリンタ1で記録する際に、プリンタ1が情報処理装置より画像データを受信するために使用される。画像処理部116は、RAM113に展開された画像データの色補正、および色変換等の処理を行う機能を備えている。ROM117は、フラッシュメモリ、EEPROM等が該当する。ROM117には、プリンタ1の動作用プログラム、プリンタ1の設定情報、画像処理用のデータ、および記録検査用の画像データが保存されている。ROM117の代わりにHDDを用いることも可能である。システムバス118は、PCI等が該当する。システムバス118は、プリンタ1のCPU111、ASIC、メモリ等を電気的に接続し、それによりプリンタ1内での電気信号の送受信が行われる。
【0016】
キャリッジ12には、カートリッジ型記録ヘッドを保持するための固定機構が設けられている。また、キャリッジ12は、キャリッジ制御のための処理を行うキャリッジ基板121を備えている。キャリッジ基板121には、キャリッジASIC1211(以下、CR ASICとも称す)と、エンコーダーセンサー1212とが実装されている。CR ASIC1211は、エンコーダーセンサー1212が読み取った信号を検出し、その検出した結果から、現在のキャリッジ12の位置を算出する機能を有する。CR ASIC1211は、また、記録ヘッドの有無の確認、および記録ヘッドの温度管理等を行う機能を備える。エンコーダーセンサー1212は、光学センサーであり、エンコーダー部材15を挟んで反対側に位置する発光部と受光部とを有する。発光部よりエンコーダー部材15に対して発光が行われ、エンコーダー部材15を透過した光が受光部で検知されて、電気信号に変換される。変換された電気信号はエンコーダーセンサー1212からCR ASIC1211に送信される。
【0017】
駆動部13には、キャリッジ駆動機構131と、紙送り部駆動機構132とが実装されている。キャリッジ駆動機構131は、モーターとタイミングベルトとで構成され、記録制御部112からの制御に従い、キャリッジ12を駆動する。紙送り部駆動機構132は、2以上のモーターおよびローラ、タイミングベルト、ローラの回転数を検出するセンサーで構成され、記録制御部112からの制御に従い用紙を搬送し、給紙および排紙を行う。キャリッジ12は、用紙搬送方向と交差する方向(例えば垂直方向)に駆動される。プリンタ1は、ローラの回転数をセンサーで検出し、検出結果から、用紙の紙送り長さを算出する。
【0018】
操作パネル14は、ユーザーがプリンタ1の操作を行うための操作部である。また、プリンタ1の状態を表示するディスプレイを備える。
【0019】
エンコーダー部材15は、エンコーダーセンサー1212の発光部より発光された光を透過する透光部と、発光された光を遮断する遮光部とを有する。透光部と遮光部とが交互に並んでいる。
【0020】
ヘッド形状工具2は、カートリッジ型記録ヘッドと形状および質量が等価であり、ヘッドASIC21と、記録画像変換部22と、メモリインターフェース23と、を有する。ヘッドASIC21は、カートリッジ型記録ヘッドが有するヘッドASICと同じものである。ヘッドASIC21は、画像処理部116で色変換・色補正が行われた画像データを受信し、画像データを記録画像変換部22へ送信する。また、ヘッドASIC21は、記録画像変換部22で変換された記録データを受信し、メモリインターフェース23へ記録データを送信する。記録画像変換部22は、画像データを、用紙に記録するための形式すなわち記録データに変換する機能を有する。記録データは、記録ヘッドのノズル先端のインク加熱用ヒーターを通電するために用いるヘッド制御信号である。記録画像変換部22は、ヘッドASIC21より画像データを受信し、受信した画像データを記録データに変換する。メモリインターフェース23は、記録画像変換部22で変換された記録データを外付きメモリ4に保存する機能を持つ。
【0021】
記録画像判定工具3は、ディスプレイ画像変換部31と、ディスプレイ画像変換部32と、画像比較部33と、ホストインターフェース34と、メモリインターフェース35と、ディスプレイ36と、を有する。ディスプレイ画像変換部31は、プリンタ1のホストインターフェース115より記録画像判定工具3のホストインターフェース34へ送信された画像データを、ディスプレイ36へ表示するデータ形式に変換する。変換されたディスプレイ用の画像データは、画像比較部33と、ディスプレイ36の左画面36Aとに送信される。ディスプレイ画像変換部32は、外付きメモリ4より記録画像判定工具3のメモリインターフェース35へ送信された記録データを、ディスプレイ36へ表示するデータ形式に変換する。変換されたディスプレイ用の記録データは、画像比較部33と、ディスプレイ36の右画面36Bとに送信される。画像比較部33は、ディスプレイ画像変換部31から送信されたディスプレイ用の画像データと、ディスプレイ画像変換部32から送信されたディスプレイ用の記録データとを受信し、両データの相似性を比較し、判定する機能を有する。ホストインターフェース34は、プリンタ1のホストインターフェース115より、画像データを受信し、ディスプレイ画像変換部31へ画像データを送信する。メモリインターフェース35は、外付きメモリ4より、記録データを受信し、ディスプレイ画像変換部32へ記録データを送信する。ディスプレイ36は、ディスプレイ画像変換部31から送信されたディスプレイ用の画像データと、ディスプレイ画像変換部32から送信されたディスプレイ用の記録データとを受信する。また、ディスプレイ36は、画像比較部33で算出された両データの相似性の判定結果を表示する。
【0022】
外付きメモリ4は、フラッシュメモリ、SDカード等の不揮発性記録媒体が該当する。プリンタ1のメモリインターフェース23より記録データを受信する機能と、記録データを保存する機能と、記録画像判定工具3のメモリインターフェース35へ記録データを送信する機能と、を有する。
【0023】
なお、上述のプリンタ1、ヘッド形状工具2、および記録画像判定工具3間におけるデータの送信および受信は、有線による通信に限定されるものではなく、無線通信により送受信するもの(無線送信、無線受信)であってもよい。
【0024】
図2は、実施例1で用いられる検査対象のプリンタ1の概略構成を示す斜視図である。プリンタ1は、キャリッジ12、給紙ローラ1321、排紙ローラ1322、およびエンコーダー部材15を有する。キャリッジ12は、通常の記録時には、記録ヘッドカートリッジ5が搭載されており、キャリッジ12の駆動で記録ヘッドカートリッジ5が外れることがないよう固定されている。検査が実行される時には、記録ヘッドカートリッジ5に代えてヘッド形状工具2がキャリッジ12に搭載される。また、キャリッジ12は、エンコーダー部材15を読み取るための、エンコーダーセンサー1212を有する。プリンタ1には、記録用紙6がセットされている。記録用紙6は、ロール形状の巻き紙であり、ロール紙スプーラー7で固定されている。
【0025】
図3(a)は、実施例1で用いられるキャリッジ12を示す斜視図である。キャリッジ12は、エンコーダーセンサー1212、接続端子1213を有する。エンコーダーセンサー1212は、エンコーダー部材15を読み取る機能を備える。接続端子1213は、ヘッド形状工具2、もしくは、記録ヘッドカートリッジ5と電気的に接続し、電気信号を送受信するために用いられる。
【0026】
図3(b)は、実施例1で用いられるヘッド形状工具2を示す斜視図である。ヘッド形状工具2は、記録ヘッドカートリッジ5と形状および質量が同一であり、キャリッジ12に搭載でき、キャリッジ12の駆動でヘッド形状工具2が外れることがないよう固定できる。また、ヘッド形状工具2は、キャリッジ12と電気的に接続できる。ヘッド形状工具2は、メモリ挿入口24と、接続端子25とを有する。メモリ挿入口24は、外付きメモリ4と電気的に接続するために用いられる。接続端子25は、キャリッジ12と電気的に接続し、電気信号を送受信するために用いられる。
【0027】
図3(c)は、通常動作時に用いられる記録ヘッドカートリッジ5を示す斜視図である。記録ヘッドカートリッジ5は、記録用紙6に画像を記録するため、インクの吐出を行う機能を有する。記録ヘッドカートリッジ5は、キャリッジ12に搭載でき、キャリッジ12の駆動で記録ヘッドカートリッジ5が外れることがないよう固定できる。また、記録ヘッドカートリッジ5は、キャリッジ12と電気的に接続できる。記録ヘッドカートリッジ5は、インク吐出口51と、接続端子52とを有する。インク吐出口51は、画像を記録する時に、インクが吐出される出力口である。接続端子52は、キャリッジ12と電気的に接続し、電気信号を送受信するために用いられる。
【0028】
図4(a)は、実施例1で用いられる記録画像判定工具3を示す斜視図である。記録画像判定工具3は、プリンタ1より、元の画像データを、また、ヘッド形状工具2より、ヘッド形状工具2内で変換処理して得られた記録データを受信し、両データの相似性を比較し、判定する工具である。また、両データを、位置情報を含むデータの形で、記録画像判定工具3に表示することができる。記録画像判定工具3は、ホストインターフェース挿入口341と、メモリ挿入口351と、ディスプレイ36と、を有する。ホストインターフェース挿入口341は、プリンタ1と電気的に接続し、電気信号を送受信するために用いられる。メモリ挿入口351は、外付きメモリ4と電気的に接続するために用いられる。ディスプレイ36は、画像データおよび記録データの相似性の判定結果を表示する。
【0029】
図4(b)は、実施例1で用いられる検査対象のプリンタ1を制御するプログラムの構成の一例である。プリンタ1の制御プログラムには、ノーマルモード、検査モード、およびサービスモードが存在する。各モードは、起動時のプリンタ1に接続する構成に応じて、自動的に、適切なモードに移行できる。例えば、起動時に、プリンタ1と、ヘッド形状工具2および記録画像判定工具3とが接続している場合は、プリンタ1が自動的に検査モードに移行するように設定できる。ノーマルモードは、ユーザーがプリンタ1で記録動作を行うためのモードで、通常、ユーザーは、ノーマルモードの記録動作プログラムのみを使用する。検査モードは、作業者が記録検査を行う場合に使用するためのモードである。検査モードは、ノーマルモードの記録動作プログラムに加え、記録検査プログラムを有する。記録検査は、記録検査プログラム上で行われる。サービスモードは、ユーザー先でプリンタ1の動作エラーが発生した場合に、サービスマンがプリンタ1のエラー履歴を回収するためのモードである。ノーマルモードの記録動作プログラムに加え、履歴取得プログラムを有する。
【0030】
図5(a)は、実施例1の検査時におけるCPU111の処理を示すフローチャートである。プリンタ1の電源オンがされ、検査モードで起動した場合に、このフローチャートが開始する。
【0031】
S101では、プリンタ1は、検査モードのスタンバイ状態である。S102へ進む。
【0032】
S102では、操作パネル14で検査プログラムを選択して、検査プログラムが実行された場合は、S103へ進む。検査プログラムが実行されてない場合は、S101へ進む。
【0033】
S103では、ヘッド形状工具2がプリンタ1に接続されてない場合は、S104へ進む。ヘッド形状工具2がプリンタ1に接続された場合は、S105へ進む。
【0034】
S104では、検査プログラム動作のエラーを操作パネル14に表示する。S101へ進む。
【0035】
S105では、ROM117内の記録検査用の画像データを画像処理部116で色変換・色補正する。S106へ進む。
【0036】
S106では、色変換・色補正した画像データをヘッド形状工具2の記録画像変換部22へ送信する。S107へ進む。
【0037】
S107では、記録画像判定工具3がプリンタ1に接続されてない場合は、S104へ進む。記録画像判定工具3がプリンタ1に接続されている場合は、S108へ進む。
【0038】
S108では、ROM117内の記録検査用の画像データを記録画像判定工具3に送信し、検査時のCPU111の処理の動作を終了する。
【0039】
図5(b)は、実施例1の検査時におけるヘッド形状工具2の処理を示すフローチャートである。プリンタ1の電源オンがされ、検査モードで起動した場合に、このフローチャートが開始する。
【0040】
S201では、プリンタ1は、検査モードのスタンバイ状態である。S202へ進む。
【0041】
S202では、色変換・色補正した画像データをヘッド形状工具2の記録画像変換部22が受信していない場合は、S201へ進む。色変換・色補正した画像データをヘッド形状工具2の記録画像変換部22が受信していた場合は、S203へ進む。
【0042】
S203では、記録画像変換部22が画像データを記録データに変換する。S204へ進む。
【0043】
S204では、メモリインターフェース23に外付きメモリ4が接続している場合は、S205へ進む。未接続の場合は、S205に進まずに、S204で、外付きメモリ4の接続を待つ。
【0044】
S205では、S203で変換した記録データを外付きメモリ4に送信し、検査時におけるヘッド形状工具2の処理を終了する。
【0045】
図6は、本発明の実施例1の検査時における、ヘッド形状工具2内で画像データが記録データに変換される過程を示すフローチャートである。図5(b)のS203での画像データを記録データに変換する処理を示しており、S202で記録画像変換部22が画像データを受信した時に、処理動作が開始する。キャリッジ12の位置は、走査方向をX軸方向、紙送り方向(用紙の搬送方向)をY軸方向とした位置情報で管理される。Y軸方向は、用紙がセットされたと仮定した場合の、紙送りされた用紙に対するキャリッジ12の位置を示す。実際には、キャリッジ12は、紙送り方向に動作しない。また、実際に用紙がプリンタ1にセットされている必要はない。
【0046】
S301では、キャリッジ12のX軸方向およびY軸方向の位置情報をリセットし、記録開始位置を(X座標0、Y座標0)に設定する。S301へ進む。
【0047】
S302では、キャリッジ12を記録開始位置(X座標0、Y座標0)に移動させる。S303へ進む。
【0048】
S303では、記録画像変換部22が画像データを受信し、受信した画像データを色別のヘッド制御信号である記録データに変換する。次に、ステップS304へ進む。
【0049】
S304では、プリンタ1は、キャリッジ12が実際の記録時と同じ動作状況でX軸方向に駆動するよう制御する。S305へ進む。
【0050】
S305では、キャリッジ12のX軸方向の位置を検出する。S306へ進む。
【0051】
S306では、キャリッジ12の検出したX座標と設定したY座標とで示される位置情報に基づき、S303で画像データを変換して得られた各色のヘッド制御信号(記録データ)をX座標およびY座標で示される位置に置換し、位置情報を含む記録データとする。S307へ進む。
【0052】
S307では、キャリッジ12のX軸方向1行分の画像データの置換を終えたか確認する。ここで、キャリッジ12のX軸方向1行分の画像データとは、キャリッジ12をX軸方向に1回走査する際の記録に用いられる画像データのことをいう。キャリッジ12のX軸方向1行分の画像データについての置換を終えるまで、S304からS306の動作を繰り返す。キャリッジ12のX軸方向1行分の画像データの置換を終えた場合は、S308へ進む。
【0053】
S308では、全画像データの置換を終えたか確認する。全画像データの置換を終えてない場合は、S309へ進む。
【0054】
S309では、キャリッジ12をX座標0の地点に移動し、画像データ一行分だけ、紙送り部駆動機構132を紙出力側に動かす。S310へ進む。
【0055】
S310では、紙送り部駆動機構132の回転数を検出する。検出した回転数から、用紙がセットされたと仮定した場合の、用紙が紙出力側に動いたとされる距離を算出する。算出した値を加算してキャリッジ12のY座標を再設定する。S303へ進む。S303からS310の動作を繰り返し、S308で、全画像データの置換を終えた場合は、画像データの記録データへの変換処理を終了する。このようにして、画像データは、位置情報を含む形の記録データに変換される。
【0056】
図7(a)は、実施例1の検査時における、ヘッド形状工具内で画像データから変換されたヘッド制御信号の一例である。
【0057】
図7(b)は、図7(a)に対応する記録データの一例である。
【0058】
すなわち、図6に示されるフローにより、画像データは、図7(a)に示されるような各色のヘッド制御信号(記録データ)に変換され、得られた記録データは、図7(b)に示されるような位置情報を含む記録データに置換される。
【0059】
図8(a)は、実施例1の検査時における、記録画像判定工具3の処理を示すフローチャートである。記録画像判定工具3がプリンタ1より画像データを受信した際に、処理を開始する。
【0060】
S401では、記録画像判定工具3は、プリンタ1より画像データを受信するまで、待機する。記録画像判定工具3がプリンタ1より画像データを受信した場合は、S402へ進む。
【0061】
S402では、記録画像判定工具3がプリンタ1より受信した画像データをディスプレイ36の左画面36Aに表示する。
【0062】
S403では、記録画像判定工具3に外付きメモリ4が接続するまで、待機する。記録画像判定工具3に外付きメモリ4が接続した場合は、S404へ進む。
【0063】
S404では、記録画像判定工具3が外付きメモリ4より記録データを受信し、該記録データをディスプレイ36の右画面36Bに表示する。
【0064】
S405では、記録画像判定工具3は、プリンタ1より受信した画像データおよび外付きメモリ4より受信した記録データを画像比較部33に送信し、画像比較部33で両データの相似性判定処理を行う。S406へ進む。
【0065】
S406では、S405で処理した相似性判定処理の結果をディスプレイ36に表示し、処理を終える。
【0066】
図8(b)は、実施例1の検査時における、元の画像データと記録データとの両データの相似性の判定処理を示すフローチャートである。図8(a)のS405での元の画像データと記録データとの両データの相似性の判定処理を示しており、実施例1の場合は画像比較部33が、実施例2の場合は画像比較部27が、両データを受信した時に、動作を開始する。
【0067】
S501では、画像比較部33が、元の画像データと記録データとを受信している。S501へ進む。
【0068】
S502では、元の画像データを細分化し、細分化した画像データを色別にX座標およびY座標で示される位置に置換する。色別にX座標およびY座標で示される位置に置換した画像データと記録データとを、座標毎に比較し、同一もしくは非同一か判定する。同一と認められた座標の個数、および非同一と認められた座標の個数をカウントする。
【0069】
S503では、S502でカウントした同一と認められた座標の個数が一定割合以上の場合は、S504へ進む。S502でカウントした同一と認められた座標の個数が一定割合未満の場合は、S505へ進む。評価基準の割合の数は、作業者が任意に設定できる値とする。
【0070】
S504では、元の画像データと記録データとの両データに相似性が有ると判定し、判定結果をディスプレイ36へ送信し、相似性判定処理を終了する。
【0071】
S505では、元の画像データと記録データとの両データに相似性が無いと判定し、判定結果をディスプレイ36へ送信し、相似性判定処理を終了する。
【0072】
ここで、判定処理の結果について説明する。画像データを記録データに変換する際には、データ変換に用いる画像処理の影響を受ける。元の画像データと記録データとの両データに相似性が有ると判定された場合には、画像処理により、画像データおよび記録データのそれぞれが表す画像に差異が生じていないか、生じた差異は画像品質に与える影響が許容範囲内の差異であると判断する。一方、元の画像データと記録データとの両データに相似性が無いと判定された場合には、画像処理により、画像データおよび記録データのそれぞれが表す画像に、画像品質に与える影響が許容できない範囲の差異が生じたと判断する。
【0073】
判定に用いる記録データは、実際にキャリッジを走査しながら検出したキャリッジの位置情報に基づいて、X座標およびY座標で示される位置に置換されている。したがって、上記データの相似性の判定においては、キャリッジの走査を行う際の動作速度ムラが画像品質に与える影響は取り除かれており、画像処理が画像品質に与える影響を判断することができる。
【0074】
図9(a)は、実施例1の検査時における、細分化した元の画像データの一例である。
【0075】
図9(b)は、細分化した元の画像データをX座標およびY座標で示される位置に置換した画像データの一例である。
【0076】
図9(c)は、元の画像データと記録データとの両データの相似性判定処理の一例である。この例では、図9(b)に示す置換した画像データと図7(b)に示す記録データとを比較することによって、元の画像データと記録データとの相似性を判定する。対応する座標におけるデータが同一の場合はOK、非同一の場合はNGが示されている。本例においては、OKすなわちデータが同一と認められる座標の個数の割合が97%以上である場合に、相似性ありの判定基準を満たすものとされている。実際にカウントされた同一と認められた座標の個数の割合は90%であるため、元の画像データと記録データとに相似性は無いと判定される。
【0077】
図10は、実施例1である検査工程を示すフローチャートである。実際に、作業者が行う実施例1の検査の工程を示す。
【0078】
S601では、プリンタ1とヘッド形状工具2とを接続する。また、プリンタ1と記録画像判定工具3とを接続する。S602へ進む。
【0079】
S602では、ヘッド形状工具2と外付きメモリ4とを接続する。S603へ進む。
【0080】
S603では、プリンタ1の電源をオンして、プリンタ1を起動する。S604へ進む。
【0081】
S604では、プリンタ1を検査モードに移行する。S605へ進む。
【0082】
S605では、作業者が操作パネル14を操作し、プリンタ1の検査プログラムを実行する。S606へ進む。
【0083】
S606では、ヘッド形状工具2から外付きメモリ4を外す。S607へ進む。
【0084】
S607では、記録画像判定工具3に外付きメモリ4を接続する。S608へ進む。
【0085】
S608では、ディスプレイ36に元の画像データと記録データとの両データの相似性の判定結果が表示される。ディスプレイ36上に表れた結果を確認し、検査工程を終了する。
【0086】
以上説明した実施例1は、プリンタに、ヘッド形状工具および記録画像判定工具を用いて画像品質評価を行う画像品質評価システムの例である。本発明において、ヘッド形状工具は、記録ヘッドと形状および質量が等価であり、記録ヘッドと置き換えて通常の記録時と同じ動作状況で走査させて用いる。この構成によれば、プリンタの画像品質に係る性能検査において、実際に記録を行うことなく記録動作シミュレーションができ、元の画像データと記録データとの差異の判断が可能となり、画像処理に起因する画像品質評価ができる。
【0087】
上記実施例1によれば、検査判定時に、記録データと元の画像データとの差異を、ディスプレイへの表示により目視で確認することができる点で有利である。なお、本発明において、両データの相似性の判定を行った結果を通知できる構成を備えればよく、実施例に記載のように記録データおよび元の画像データをディスプレイに表示する機能を必須の構成要素とするものではない。
【実施例2】
【0088】
実施例1においては、ヘッド形状工具と記録画像判定工具とを用いて、ヘッド形状工具内で生成された記録データと元の画像データとの相似性の判定を記録画像判定工具内で行う検査について説明した。実施例2においては、記録画像判定工具を用いることなくヘッド形状工具のみを用いて、ヘッド形状工具内で生成された記録データと元の画像データとの相似性の判定をヘッド形状工具内で行う方法を説明する。なお、実施例1と同様の構成については、原則として、重複する記載を割愛する。
【0089】
実施例2の検査で用いられるヘッド形状工具2は、図3(b)に斜視図で示されている実施例1のヘッド形状工具2とほぼ同様の構成を有するが、いくつかの点で若干異なる。まず、実施例2の検査で用いられるヘッド形状工具2においては、メモリ挿入口24およびメモリインターフェース23は必須の構成要素ではない。また、実施例2の検査で用いられるヘッド形状工具2は、ROM26と、画像比較部27と、LED28とを有し、ヘッド形状工具2内で、元の画像データと記録データとの相似性を判定できる。実施例2の検査で用いられるプリンタ1のプログラムの構成は、実施例1と同一とする。画像データを記録データに変換する処理と、元の画像データと記録データとの相似性を判定する処理は、実施例1と同一であり、図6および図8(a)のフローチャートを流用する。
【0090】
図11は、実施例2の検査対象のプリンタ1と、検査時に用いられるヘッド形状工具2と、を示すブロック図である。
【0091】
プリンタ1は、インクジェットプリンタが該当する。プリンタ1は、システム部11、キャリッジ12、および駆動部13に大別される。プリンタ1は、その他、ユーザーがプリンタ1の操作を行うための操作パネル14と、キャリッジ12が動作した際に位置を確認するためのエンコーダー部材15とを有する。
【0092】
システム部11は、CPU111と、記録制御部112と、RAM113と、操作制御部114と、ホストインターフェース115と、画像処理部116と、ROM117を有し、これらは、システムバス118を介してデータを送受信する。CPU111は、ROM117内に保存されているプリンタ1の動作プログラムとプリンタ1の設定情報とをRAM113に展開し、および読み出して、プリンタ1の制御を行う。記録制御部112は、駆動部13のキャリッジ駆動機構131および紙送り部駆動機構132のそれぞれとデータを送受信し、プリンタ1の駆動部13の制御を行う。RAM113は、SDRSDRAM、DDRSDRAM等が該当する。RAM113では、CPU111が処理するプリンタ1の制御プログラムと、画像データとが展開される。操作制御部114は、操作パネル14と接続し、プリンタ1の設定情報を操作パネル14に送信する機能と、ユーザーが操作パネル14を操作した際に操作した情報を受信する機能とを備える。ホストインターフェース115は、ネットワーク、IEEE1394等のコントローラが該当する。ホストインターフェース115は、ユーザーがPC等の情報処理装置内の画像データをプリンタ1で記録する際に、プリンタ1が情報処理装置より画像データを受信するために使用される。画像処理部116は、RAM113に展開された画像データの色補正、および色変換等の処理を行う機能を備えている。ROM117は、フラッシュメモリ、EEPROM等が該当する。ROM117には、プリンタ1の動作用プログラム、プリンタ1の設定情報、画像処理用のデータ、および記録検査用の画像データが保存されている。ROM117の代わりにHDDを用いることも可能である。システムバス118は、PCI等が該当する。システムバス118は、プリンタ1のCPU111、ASIC、メモリ等を電気的に接続し、それによりプリンタ1内での電気信号の送受信が行われる。
【0093】
キャリッジ12は、カートリッジ型記録ヘッドを保持するための固定機構とキャリッジの制御機能を持つキャリッジ基板121とを有する。キャリッジ基板121は、キャリッジASIC1211(以下、CR ASICとも称す)と、エンコーダーセンサー1212とが実装されている。CR ASIC1211は、エンコーダーセンサー1212が読み取った信号を検出し、その検出した結果から、現在のキャリッジ12の位置を算出する機能を有する。CR ASIC1211は、また、記録ヘッドの有無の確認、記録ヘッドの温度管理等を行う機能を備える。エンコーダーセンサー1212は、光学センサーであり、エンコーダー部材15を挟んで反対側に位置する発光部と受光部とを有する。発光部よりエンコーダー部材15に対して発光が行われ、エンコーダー部材15を透過した光が受光部で検知されて、電気信号に変換される。変換された電気信号はエンコーダーセンサー1212からCR ASIC1211に送信される。
【0094】
駆動部13には、キャリッジ駆動機構131と、紙送り部駆動機構132とが実装されている。キャリッジ駆動機構131は、モーターとタイミングベルトとで構成され、記録制御部112からの制御に従い、キャリッジ12を駆動する。紙送り部駆動機構132は、2以上のモーターおよびローラ、タイミングベルト、ローラの回転数を検出するセンサーで構成され、記録制御部112からの制御に従い、用紙の給紙および排紙を行う。プリンタ1は、ローラの回転数をセンサーで検出し、検出結果から、用紙の紙送り長さを算出する。
【0095】
操作パネル14は、ユーザーがプリンタ1の操作を行うための操作部である。また、プリンタ1の状態を表示するディスプレイを備える。
【0096】
エンコーダー部材15は、エンコーダーセンサー1212の発光部より発光された光を透過する透光部と、発光された光を遮断する遮光部とを有する。透光部と遮光部とが交互に並んでいる。
【0097】
ヘッド形状工具2は、カートリッジ型記録ヘッドと形状、質量が等価であり、ヘッドASIC21と、記録画像変換部22と、ROM26と、画像比較部27と、発光部たるLED28とを有する。ヘッドASIC21は、カートリッジ型記録ヘッドが有するヘッドASICと同じものである。ヘッドASIC21は、画像処理部116で色変換・色補正が行われた画像データを受信し、画像データを記録画像変換部22へ送信する。また、ヘッドASIC21は、記録画像変換部22で変換された記録データを受信し、画像比較部27へ記録データを送信する。記録画像変換部22は、画像データを用紙に記録するための形式すなわち記録データに変換する機能を有する。記録データは、記録ヘッドのノズル先端のインク加熱用ヒーターを通電するためのヘッド制御信号である。記録画像変換部22は、ヘッドASIC21より画像データを受信し、受信した画像データを記録データに変換する。ROM26は、フラッシュメモリ、EEPROM等が該当する。ROM26には、記録検査の相似性判定の基準となる画像データが保存されている。この画像データは、プリンタ1のROM117に保存されている記録検査用の画像データと同一のデータである。画像比較部27は、記録画像変換部22で変換された記録データと、ROM26に保存されている相似性判定の基準となる画像データとを受信し、両データの相似性判定を行う。また、画像比較部27は、LED28の点灯の仕方を制御する機能を有し、LED28を連続点灯または点滅するよう制御できる。LED28は、画像比較部22での記録データの判定結果を受けて、判定結果を示す。例えば、LED28が連続点灯する場合は、記録データが元の画像データと相似性が有り、LED28が点滅する場合は、記録データが元の画像データと相似性が無いと示すことができる。
【0098】
図12(a)は、実施例2の検査時におけるCPU111の処理を示すフローチャートである。プリンタ1の電源オンがされ、検査モードで起動した場合に、このフローチャートが開始する。
【0099】
S701では、プリンタ1は、検査モードのスタンバイ状態である。S702へ進む。
【0100】
S702では、操作パネル14で検査プログラムを選択して、検査プログラムが実行された場合は、S703へ進む。検査プログラムが実行されてない場合は、S701へ進む。
【0101】
S703では、ヘッド形状工具2がプリンタ1に接続されてない場合は、S704へ進む。ヘッド形状工具2がプリンタ1に接続された場合は、S705へ進む。
【0102】
S704では、検査プログラム動作のエラーを操作パネル14に表示する。S701へ進む。
【0103】
S705では、ROM117内の記録検査用の画像データを画像処理部116で色変換・色補正する。S706へ進む。
【0104】
S706では、色変換・色補正した画像データをヘッド形状工具2の記録画像変換部22へ送信し、検査時のCPU111の処理の動作を終了する。
【0105】
図12(b)は、実施例2の検査時におけるヘッド形状工具2の処理を示すフローチャートである。プリンタ1の電源オンがされ、検査モードで起動した場合に、このフローチャートが開始する。
【0106】
S801では、プリンタ1は、検査モードのスタンバイ状態である。S802へ進む。
【0107】
S802では、色変換・色補正した画像データをヘッド形状工具2の記録画像変換部22が受信していない場合は、S801へ進む。色変換・色補正した画像データをヘッド形状工具2の記録画像変換部22が受信していた場合は、S803へ進む。
【0108】
S803では、記録画像変換部22が画像データを記録データに変換する。S804へ進む。
【0109】
S804では、元の画像データと記録データとの相似性の有無を判定するため、両データを比較する。相似性の判定方法は、S502と同じ処理となる。すなわち、S804では、元の画像データを細分化し、細分化した元の画像データを色別にX座標およびY座標で示される位置に置換する。X座標およびY座標で示される位置に置換した画像データと記録データとを、座標毎に比較し、同一もしくは非同一か判定する。同一と認められた座標の個数、および非同一と認められた座標の個数をカウントする。
【0110】
S805では、S804でカウントしたデータが同一と認められた座標の個数が一定割合以上の場合は、元の画像データと記録データとの両データに相似性が有ると判定して、S806へ進む。S804でカウントしたデータが同一と認められた座標の個数が一定割合未満の場合は、元の画像データと記録データとの両データに相似性が無いと判定して、S807へ進む。評価基準の割合の数は、作業者が任意に設定できる値とする。
【0111】
ここで、判定処理の結果について説明する。実施例1の場合と同様に、画像データを記録データに変換する際には、データ変換に用いる画像処理の影響を受ける。元の画像データと記録データとの両データに相似性が有ると判定された場合には、画像処理により、画像データおよび記録データのそれぞれが表す画像に差異が生じていないか、生じた差異は画像品質に与える影響が許容範囲内の差異であると判断する。一方、元の画像データと記録データとの両データに相似性が無いと判定された場合には、画像処理により、画像データおよび記録データのそれぞれが表す画像に、画像品質に与える影響が許容できない範囲の差異が生じたと判断する。
【0112】
判定に用いる記録データは、実際にキャリッジを走査しながら検出したキャリッジの位置情報に基づいて、X座標およびY座標で示される位置に置換されている。したがって、上記データの相似性の判定においては、キャリッジの走査を行う際の動作速度ムラが画像品質に与える影響は取り除かれており、画像処理が画像品質に与える影響を判断することができる。
【0113】
S806では、LED28が連続点灯するよう制御し、検査時におけるヘッド形状工具2の処理を終了する。
【0114】
S807では、LED28が点滅するよう制御し、検査時におけるヘッド形状工具2の処理を終了する。
【0115】
図13は、実施例2である検査工程を示すフローチャートである。実際に、作業者が行う実施例2の検査の工程を示す。
【0116】
S901では、プリンタ1とヘッド形状工具2とを接続する。S902へ進む。
【0117】
S902では、プリンタ1の電源をオンして、プリンタ1を起動する。S903へ進む。
【0118】
S903では、プリンタ1を検査モードに移行する。S904へ進む。
【0119】
S904では、作業者が操作パネル14を操作して、プリンタ1の検査プログラムを実行する。S905へ進む。
【0120】
S905では、LED28に元の画像データと記録データとの両データの相似性の判定結果が表示される。LED28の点灯のパターンから、判定結果を確認し、検査工程を終了する。
【0121】
以上説明した実施例2は、プリンタに、ヘッド形状工具を用いて画像品質評価を行う画像品質評価システムの例である。本発明において、ヘッド形状工具は、記録ヘッドと形状および質量が等価であり、記録ヘッドと置き換えて通常の記録時と同じ動作状況で走査させて用いる。この構成によれば、プリンタの画像品質に係る性能検査において、実際に記録をすることなく記録動作シミュレーションができ、元の画像データと記録データとの相似性の判定が可能となり、画像処理に起因する画像品質評価ができる。
【0122】
実施例1の検査では、ヘッド形状工具と記録画像判定工具とを検査用工具として用いていたのに対し、実施例2の検査では、ヘッド形状工具のみを用いて検査を行うことができる。実施例2の検査は、検査時にセットする検査用工具が少ないため、作業効率の点で有利である。
【符号の説明】
【0123】
1…プリンタ、
11…システム部、
111…CPU、
112…記録制御部、
113…RAM、
114…操作制御部、
115…ホストインターフェース、
116…画像処理部、
117…ROM、
118…システムバス、
12…キャリッジ、
121…キャリッジ基板、
1211…CR ASIC、
1212…エンコーダーセンサー、
13…駆動部、
131…キャリッジ駆動機構、
132…紙送り部駆動機構、
14…操作パネル、
15…エンコーダー部材、
2…ヘッド形状工具、
21…ヘッドASIC、
22…記録画像変換部、
23…メモリインターフェース、
3…記録画像判定工具、
31…ディスプレイ画像変換部、
32…ディスプレイ画像変換部、
33…画像比較部
34…ホストインターフェース、
35…メモリインターフェース、
36…ディスプレイ、
36A…ディスプレイ画面 左側、
36B…ディスプレイ画面 右側、
4…外付きメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを保持するキャリッジを走査させて該記録ヘッドから画像データに基づいて記録用紙にインクを吐出して画像を出力するプリンタのための画像品質評価システムであって、
記録ヘッドと質量および形状が等価であり、前記記録ヘッドの代わりにキャリッジに保持されて用いられるヘッド形状工具を備え、
前記ヘッド形状工具は、
画像データと、前記ヘッド形状工具を保持する状態で記録時と同様の動作状況で走査させたキャリッジの位置情報を用いて前記画像データを変換処理して得られた、記録用紙に出力する形式の位置情報を含むデータと、の相似性を判定する機能と、
相似性の判定結果を出力する機能と、
を有することを特徴とする画像品質評価システム。
【請求項2】
前記ヘッド形状工具は、
画像データを受信する機能と、
受信した前記画像データを、前記ヘッド形状工具を保持する状態で記録時と同様の動作状況で走査させたキャリッジの位置情報を用いて記録用紙に出力する形式の位置情報を含むデータに変換する機能と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像品質評価システム。
【請求項3】
前記ヘッド形状工具は、発光部を有し、
前記判定結果を出力する機能は、前記発光部を点灯させる機能と、前記点灯の仕方を制御する機能と、で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の画像品質評価システム。
【請求項4】
記録ヘッドを保持するキャリッジを走査させて該記録ヘッドから画像データに基づいて記録用紙にインクを吐出して画像を出力するプリンタのための画像品質評価システムであって、
記録ヘッドと質量および形状が等価であり前記記録ヘッドの代わりにキャリッジに保持されて用いられるヘッド形状工具と、
記録画像判定工具と、
を備え、
前記ヘッド形状工具は、
画像データを記録用紙に出力する形式のデータに変換処理する機能と、
前記記録用紙に出力する形式のデータを前記記録画像判定工具に送信する機能と、
を有し、
前記記録画像判定工具は、
画像データを受信する機能と、
前記ヘッド形状工具から前記記録用紙に出力する形式のデータを受信する機能と、
受信した前記記録用紙に出力する形式のデータを、前記ヘッド形状工具を保持する状態で記録時と同様の動作状況で走査させたキャリッジの位置情報を用いて位置情報を含むデータに置換する機能と、
受信した前記画像データと、前記位置情報を含むデータとの相似性を判定する機能と、
相似性の判定結果を出力する機能と、
を有することを特徴とする画像品質評価システム。
【請求項5】
前記記録画像判定工具は、
受信した前記画像データを表示する機能と、
前記位置情報を含むデータを表示する機能と、
を有することを特徴とする請求項4に記載の画像品質評価システム。
【請求項6】
データを送信する機能は、データを不揮発性記録媒体に書き込む機能を含み、
データを受信する機能は、データを前記不揮発性記録媒体から読み出す機能を含むことを特徴とする請求項4に記載の画像品質評価システム。
【請求項7】
データを送信する機能は、データを無線送信する機能を含み、
データを受信する機能は、データを無線受信する機能を含むことを特徴とする請求項4に記載の画像品質評価システム。
【請求項8】
記録ヘッドを保持するキャリッジを走査させて該記録ヘッドから画像データに基づいて記録用紙にインクを吐出して画像を出力するプリンタのための画像品質評価方法であって、
記録ヘッドと質量および形状が等価であるヘッド形状工具を、前記記録ヘッドの代わりにキャリッジに保持させて、記録時と同様の動作状況で走査させる工程と、
画像データと、走査させた前記キャリッジの位置情報を用いて前記画像データを変換処理して得られた記録用紙に出力する形式のデータとの相似性を判定する工程と、
相似性の判定結果を出力する工程と、
を含むことを特徴とする画像品質評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−49212(P2013−49212A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188889(P2011−188889)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】