説明

プリンターおよびプリンターの制御方法

【課題】主走査を行うタイミングが異なることに起因するライン形成位置のずれを抑制すること。
【解決手段】複数のノズルが形成された印刷ヘッドを所定方向に移動させるとともに前記複数のノズルからインクを吐出させる主走査と前記所定方向に垂直な方向に移動させる副走査を前記印刷ヘッドに実行させ、かつ、N−1回目(Nは2以上の自然数)以前の前記主走査で印刷されたラインの間にN回目の前記主走査で他のラインを印刷するとともに、複数のラインで構成される印刷単位をNmax回(NmaxはNの最大値)の主走査で印刷し、かつ、画素毎のインク量を示すデータが同一であってもNmax回目の前記主走査ではNmax−1回目以前の前記主走査よりも吐出されるインク量が多くなるように前記印刷ヘッドから吐出されるインク量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターにおいては、複数のノズルを備える印刷ヘッドを所定方向に移動させつつ各ノズルからインクを吐出させる主走査を行って印刷媒体上の複数のラインについて印刷を行い、複数のラインの印刷が完了した後、上述の所定方向と垂直な方向に印刷ヘッドを移動させる副走査を行い、主走査と副走査とを繰り返すことによって印刷を行う。また、ノズルの間隔よりも短い間隔でドットを印刷することによって高解像度での印刷を実現するため、N−1回の主走査で印刷されたラインの間にN回目の主走査でラインを印刷する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−292908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術においては、早いタイミングで印刷されたラインと遅いタイミングで印刷されるラインとでライン形成位置のずれが発生することを防止することができなかった。すなわち、インクジェットプリンターにおいては、インクが印刷媒体に印刷されるとインクが印刷媒体に浸透することによって印刷媒体が伸びやすくなるため、複数回の主走査によって複数のラインの印刷が完了する場合、最後の主走査が行われる段階では既に多くのインクが印刷媒体に印刷されている。従って、最後の主走査が行われる段階ではそれ以前の主走査が行われた段階よりも印刷媒体が伸びており、最後の主走査以前でのラインの形成位置と最後の主走査でのラインの形成位置とにずれが生じてしまう。当該ずれは、印刷ヘッドが大きく、印刷ヘッドに形成されたノズルの数が多くなるほど顕著に発生する。従って、印刷媒体の一方の辺の端から端まで印刷可能な大きさの印刷ヘッドを備えるプリンターにおいては、特に上述のずれが顕著に発生する。
本発明は上記課題にかんがみてなされたもので、主走査を行うタイミングが異なることに起因するライン形成位置のずれを抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明においては、画素毎のインク量を示すデータが同一であってもNmax回目の主走査ではNmax−1回目以前の主走査よりも吐出されるインク量が多くなるように印刷ヘッドから吐出されるインク量を制御して印刷を行う。すなわち、N−1回の主走査で印刷されたラインの間にN回目の主走査で他のラインを印刷することによって画像を形成していき、複数のラインで構成される印刷単位をNmax回の主走査で印刷する印刷方式において、最後(Nmax回目)の主走査よりも前の主走査では相対的にインク量が少なくなるように構成する。
【0006】
この構成によれば、印刷単位を構成する複数のラインの印刷を完了するために実行すべき主走査のうち、Nmax回目の主走査よりも前の主走査では相対的にインク量が少なくなり、当該Nmax回目の主走査よりも前の主走査で印刷されたインクによる印刷媒体の伸びは、各主走査でのインク量が同等である場合と比較して小さくなり、主走査を行うタイミングが異なることに起因するライン形成位置のずれを抑制することが可能である。
【0007】
印刷ヘッドには、複数のノズルが形成されており、これによって、同一回の主走査によって複数のラインを印刷可能であればよい。印刷ヘッド制御手段は、当該印刷ヘッドの動作を制御して主走査および副走査を実行させることができればよい。主走査と副走査は、印刷ヘッドと印刷媒体とが相対的に移動する動作であり、主走査においては、複数のノズルからのインクの吐出を伴い得る状態で印刷ヘッドと印刷媒体との相対的な移動方向が所定方向となるように設定される。副走査においては、印刷ヘッドと印刷媒体の相対的な移動方向が当該所定方向に垂直な方向となるように設定される。
【0008】
印刷ヘッド制御手段は、主走査の順序と各主走査で吐出される吐出インク量が関連するようにしながら印刷指示にかかる画像を印刷することができればよい。すなわち、N−1回目以前の主走査で印刷されたラインの間にN回目の主走査で他のラインを印刷することによって画像を形成していき、複数のラインで構成される印刷単位をNmax回の主走査で印刷する構成においては、印刷済のライン間にさらにラインを形成して印刷単位の印刷を完了させる。この場合、印刷単位の印刷を完了させるために所定の順序で主走査を行うことになり、主走査の順序に応じてプリンターにて各ラインが印刷される順序が特定される。そこで、画素毎のインク量を示すデータが同一であってもNmax回目の主走査よりも前のNmax−1回目以前の主走査ではNmax回目の主走査でのインク量よりも相対的にインク量が多くなるように吐出インク量を制御する。
【0009】
ここで、画素毎のインク量を示すデータは画素毎のインク量を直接的あるいは間接的に特定するためのデータであれば良く、画素毎にインク滴を吐出するか否かを特定するためのデータであっても良いし、画素毎のインク量を示す階調値であっても良いし、画素毎のインク量に対応した他の表色系(例えばsRGB等の入力表色系)の階調値であっても良い。
【0010】
なお、印刷ヘッド上で副走査方向にM個のノズルが1列に並んでおり、Nmax回の主走査によってL個のラインを印刷する場合には、L×M個のラインが印刷単位を構成する。また、Nmax回の主走査を行う順序は印刷開始前に決定されていれば良く、隣接する複数のラインをラインが並ぶ順序に沿って印刷するように主走査を行っても良いし、ラインが並ぶ順序と異なる順序(印刷済のラインから1ライン以上離れたラインを印刷する順序)で印刷するように主走査を行っても良く、種々の構成を採用可能である。
【0011】
さらに、プリンターにおいては、画素毎のインク量を示すデータが同一であってもNmax回目の主走査ではNmax−1回目以前の主走査よりも吐出されるインク量が多くなるように吐出インク量を制御すればよい。なお、画素毎のインク量を示すデータに値域が存在する場合、少なくとも値域の一部において画素毎のインク量を示すデータが同一であってもNmax回目の主走査で吐出されるインク量とNmax−1回目以前の主走査で吐出されるインク量とが異なるように構成されていればよい。むろん、値域の全部において画素毎のインク量を示すデータが同一であってもNmax回目の主走査で吐出されるインク量とNmax−1回目以前の主走査で吐出されるインク量とが異なるように構成されていてもよい。
【0012】
さらに、ここでは、少なくともNmax回目の主走査で吐出されるインク量がNmax−1回目以前の主走査で吐出されるインク量よりも多ければ良く、むろん、Nmax−1回目以前の主走査において、主走査の回数が増加する度にインク量が線形的あるいは非線形的に増加するように構成されていてもよい。また、インク量は単位面積あたりのインクの記録密度によって調整しても良いし、インク滴の大きさによって調整しても良く種々の調整法を採用可能である。
【0013】
さらに、単位面積あたりのインクの記録密度を調整することによって主走査の回数毎のインク量を調整するための構成例として、画素毎のインク量を示すデータが同一であってもNmax回目の主走査ではNmax−1回目以前の主走査よりも印刷媒体に印刷されるインクの記録密度が大きくなるように印刷ヘッドを制御するように構成してもよい。印刷媒体上の記録密度を変動させるための構成としては、種々の構成を採用可能であり、例えば、主走査の回数に応じて主走査方向の印刷解像度を変更し、同じ階調値に応じて印刷媒体に記録されるインク滴の数を増減させることによってインクの記録密度を調整しても良い。
【0014】
主走査の回数に応じて主走査方向の印刷解像度を変更するための構成としては、種々の構成を採用可能であり、例えば、印刷ヘッドを単位距離移動させる度にインク滴を吐出する主走査において、単位距離を増減させて1ラインあたりに吐出可能なインク滴の数を増減させる構成を採用可能である。
【0015】
さらに、インク滴の大きさによって主走査の回数毎のインク量を調整するための構成例として、画素毎のインク量を示すデータが同一であってもNmax回目の主走査ではNmax−1回目以前の主走査よりも複数のノズルから吐出されるインク滴の大きさが大きくなるように印刷ヘッドを制御するように構成してもよい。インク滴の大きさを変動させるための構成としては、種々の構成を採用可能であり、例えば、インク滴を吐出するノズルにおいてインク滴の吐出を制御するための素子(例えば、ピエゾ素子や抵抗素子)に与える電圧の大きさを変動させることによってインク滴の大きさを変動させてもよい。むろん、当該電圧の波形を変動させることによってインク滴の大きさを変動させてもよい。
【0016】
さらに、本発明のように、複数のラインで構成される印刷単位をNmax回の主走査で印刷する場合に、Nmax回目の主走査ではそれ以前の主走査よりも同じ階調値に基づいて吐出されるインク量が多くなるようにインク量を制御する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような装置、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、複合的な機能を有する装置において共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態にかかるプリンターのブロック図である。
【図2】(2A),(2B)はプリンターの概略構成、(2C)は印刷ヘッドの概略構成、(2D)は印刷媒体上に印刷される画素を示す図である。
【図3】印刷制御処理のフローチャートである。
【図4】印刷制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)プリンターの構成:
(2)印刷制御処理:
(3)他の実施形態:
【0019】
(1)プリンターの構成:
図1は、本発明にかかるプリンターの制御系の構成を示すブロック図である。プリンター40は、RAM,ROM,CPU等を備える制御部45とキャリッジドライバー46とピエゾドライバー47と印刷ヘッド41とを備えており、ROMに記録されたプログラムを制御部45で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとしてコンピューター10の印刷データ生成プログラム21が生成する印刷データを取得し、当該印刷データに基づいて印刷を実行する機能を実行可能である。当該印刷を実行する機能は、印刷媒体の伸びを防止してライン形成位置のずれを抑制しながら印刷を実行させる機能を含んでいる。
【0020】
図2A,2Bはプリンター40の概略構成を示す側面図および上面図である。本実施形態において、プリンター40は2つのロール部43,44を備えており、印刷媒体Pを一方のロール部43で蓄積し、他方のロール部44で巻き取ることによって印刷媒体Pをプラテン42上に搬送することができる。プラテン42の上方には印刷ヘッド41が備えられており、印刷ヘッド41は、プラテン42上の印刷媒体Pに対して平行な面内で印刷媒体Pの搬送方向と平行(図2A,2Bに示す実線の矢印方向)および垂直(図2Bに示す破線の矢印方向)な方向に移動可能である。
【0021】
また、印刷ヘッド41には、複数のノズルが形成されており、各ノズルからインク滴を吐出することができる。図2Cは、印刷ヘッド41の上面図を模式的に示す図であり、破線によって印刷ヘッド41の下面で開口するノズル41aを模式的に示している。印刷ヘッド41には、同図2Cに示すように、印刷ヘッド41が延びる方向に沿って複数のノズル41aが形成されている。複数のノズル41aはインクタンクに連結されたインク室の開口部であり、インク室の壁面はピエゾ素子の伸縮に応じて移動可能に構成され、インク室の壁面の変動に連動してインク室の容積が変動し、インク室内のインクがノズルから吐出されるように構成されている。複数のノズル41aに対応する複数のピエゾ素子には、図1に示すピエゾドライバー47が接続されている。
【0022】
当該ピエゾドライバー47は、所定の波形の電圧を複数のピエゾ素子に対して印加することが可能であり、本実施形態においては、予め決められた波形の中から印加する電圧の波形を選定してピエゾ素子に印加することにより、同一のノズルから3段階の大きさのインク滴を吐出することが可能である。また、制御部45は、ピエゾドライバー47に制御信号を出力することにより、任意のタイミングで任意のノズルから所望の大きさのインク滴を吐出させるように指示を行うことができる。
【0023】
さらに、本実施形態において印刷ヘッド41は、図示しないキャリッジによって少なくとも2方向に移動可能に構成されている。すなわち、キャリッジは、キャリッジドライバー46の制御によって、印刷ヘッド41上でノズル41aが並ぶ方向に対して垂直な方向(図2A,2Bに示す実線の矢印方向)に印刷ヘッド41を単位距離だけ移動させることが可能である。また、ノズル41aが並ぶ方向に対して垂直な方向に移動可能な範囲の端部まで印刷ヘッド41が達した場合、キャリッジは、キャリッジドライバー46の制御によってノズル41aが並ぶ方向に対して平行な方向(図2Bに示す破線の矢印方向)に印刷ヘッド41を単位距離だけ移動させることが可能である。
【0024】
なお、キャリッジドライバー46による印刷ヘッド41の移動の方向や移動量は、制御部45が出力するキャリッジドライバー46への制御信号によって特定される。本実施形態において制御部45は、キャリッジドライバー46に対して制御信号を出力することにより、ノズル41aが並ぶ方向に対して垂直な方向に印刷ヘッド41を単位距離だけ移動させ、当該単位距離だけ移動させる度に、ピエゾドライバー47に対して制御信号を出力してノズル41aからインクを吐出させる。本明細書においては、当該ノズル41aが並ぶ方向に対して垂直な方向に印刷ヘッド41を移動させる動作を主走査と呼ぶ。また、ノズル41aが並ぶ方向に対して平行な方向に印刷ヘッド41を移動させる動作を副走査と呼ぶ。
【0025】
本実施形態にかかるプリンター40の印刷ヘッド41の全長(印刷媒体Pの搬送方向に対して垂直な方向の長さ)は、図2Bに示すように印刷媒体Pの全幅(印刷媒体Pの搬送方向に対して垂直な方向の幅)よりも長く、上述の主走査と副走査を繰り返すことにより破線で示す矩形の印刷範囲Rにインクを印刷することができる。また、印刷ヘッド41を副走査させる際の距離をノズル41aの間隔の1/4の距離とすることによって、副走査方向にノズル41aのピッチの4倍の解像度の印刷物を得ることができる。
【0026】
以上のように、本実施形態にかかるプリンター40においては、印刷ヘッド41を主走査方向に単位距離移動させる度に印刷媒体P上にインクを印刷することが可能であり、主走査方向に複数の画素を印刷可能である。また、印刷ヘッド41に複数のノズル41aが並んでおり、印刷ヘッド41が副走査方向に移動することが可能であるため、副走査方向にも複数の画素を印刷可能である。本実施形態においては、印刷媒体P上で主走査方向に並ぶ複数の画素をラインと呼ぶ。また、印刷媒体Pに印刷される画像を示す後述する画像データにおいても、印刷媒体P上でのラインと同方向に並ぶ複数の画素をラインと呼ぶ。
【0027】
図2Dは、丸によって印刷媒体P上の画素を模式的に示しており、横方向に並ぶ複数の画素によって各ラインが構成され、複数のラインが縦方向に並ぶ様子を示している。本実施形態においては、上述のように印刷ヘッド41を副走査させる際の距離をノズル41aの間隔の1/4の距離とすることによって、副走査方向にノズル41aのピッチの4倍の解像度の印刷物を得ることができる。図2Dにおいては、副走査方向にノズル41aのピッチの4倍の解像度の印刷物を得る際の主走査の順序を例示している。すなわち、図2Dにおいては、主走査の順序を丸内の数値によって示しており、同図2Dにおいては、上方に位置するラインから順に印刷をしていく例を示している。
【0028】
同図2Dに示す例は、N−1回目(Nは2以上の自然数)以前の主走査で印刷されたラインの間にN回目の主走査で他のラインを印刷することによって画像を形成していき、複数のラインで構成される印刷単位をNmax回(NmaxはNの最大値)の主走査で印刷する印刷動作の例である。すなわち、図2Dに示す例では、1回目の主走査で印刷された1と付された丸で示すラインの間に2回目の主走査で他のラインである2と付された丸で示すラインが印刷され、2回目以前の主走査で印刷された1および2と付された丸で示すラインの間に3回目の主走査で他のラインである3と付された丸で示すラインが印刷され、3回目以前の主走査で印刷された3および1と付された丸で示すラインの間に4回目の主走査で他のラインである4と付された丸で示すラインが印刷される。そして、各ノズルで4回の主走査を行うことによって副走査方向にラインが隙間なく埋められることになるため、ノズル数がMである場合、4×M個のラインによって構成される印刷単位を4回の主走査で印刷することになる。このような印刷は、例えば、図2Cに示す印刷ヘッド41において実線で示す矢印に付した数値の順序で主走査を行い、各主走査が終了した後に一点鎖線で示す副走査を行うことによって実現される。
【0029】
(2)印刷制御処理:
次に、以上のプリンター40によって印刷を実行する際の印刷制御処理を説明する。本実施形態においては、画像データが示す画像を印刷させるための印刷データがコンピューター10にて生成されてプリンター40に転送されることによってプリンター40が当該画像を印刷する。すなわち、コンピューター10は、図示しない制御部において印刷データ生成プログラム21を実行可能であり、当該印刷データ生成プログラム21の処理によりコンピューター10は、画像データに基づいて画素数の調整と色変換処理とハーフトーン処理と並べ替え処理とを実行して印刷データを生成し、プリンター40に転送する。
【0030】
具体的には、利用者が図示しないユーザーインターフェースを利用して印刷対象の画像を指定して印刷実行指示を行うと、コンピューター10は、印刷データ生成プログラム21の処理により、印刷実行指示にかかる画像データおよび印刷解像度を取得し、当該印刷解像度で印刷されるように画像データの画素数を調整する。本実施形態においては、少なくとも副走査方向にノズル41aのピッチの4倍の解像度の解像度となるように画素数の調整が行われる。
【0031】
次に、コンピューター10は、印刷データ生成プログラム21の処理により、画像データの表色系である入力表色系を、プリンター40で吐出可能なインクの色に対応した出力表色系に変換する色変換処理を実行する。具体的には、本実施形態における画像データはRGBの各色成分の階調値の組み合わせによって画素毎の色を表現したsRGB表色系のデータである。従って、入力表色系はsRGB表色系である。また、プリンター40においては、CMYKのインクを吐出可能であり、CMYKの各色成分の階調値の組み合わせによって印刷媒体P上の画素毎の色を表現している。従って、出力表色系はCMYK表色系である。そこで、コンピューター10は、予め規定された色変換テーブルを参照し、補間演算等を行って、画像データの各画素の表色系をsRGB表色系からCMYK表色系に変換する(RGB階調値をCMYK階調値に変換する)。
【0032】
次に、コンピューター10は、印刷データ生成プログラム21の処理により、ハーフトーン処理を実行する。すなわち、コンピューター10は、上述の色変換後のCMYK階調値に基づいて、インク滴の吐出の有無とともにインク滴を吐出する場合にはその大きさを画素毎に指定するデータを生成する。次に、コンピューター10は、印刷データ生成プログラム21の処理により、ハーフトーン処理後のデータを並べ替える並べ替え処理を行う。すなわち、コンピューター10は、各主走査においてインクが印刷され得る画素が早い順序に並ぶように上述のデータの順序を並べ替える。そして、コンピューター10は、並べ替え後の順序で画素毎のデータがプリンター40に転送されるように印刷データを生成し、印刷解像度を示すデータを付して当該印刷データをプリンター40に対して転送する。この結果、プリンター40には、図2Dにおいて丸内に1と示した画素のインク滴が、1回目の主走査で印刷される順に並んだデータが転送され、順次、図2Dにおいて丸内に2と示した画素のインク滴が、2回目の主走査で印刷される順に並んだデータ、図2Dにおいて丸内に3と示した画素のインク滴が、3回目の主走査で印刷される順に並んだデータ、図2Dにおいて丸内に4と示した画素のインク滴が、4回目の主走査で印刷される順に並んだデータがプリンター40に転送される。
【0033】
印刷データがプリンター40に対して転送されると、プリンター40は図3に示す印刷制御処理を実行する。当該印刷制御処理において、制御部45は、まず、印刷データを取得する(ステップS100)。すなわち、コンピューター10から転送される印刷データを取得し、図示しないメモリに逐次記録していく。
【0034】
次に、制御部45は、主走査回数を示す変数Yを1に初期化し(ステップS105)、変数Yが4と等しいか否かを判定する(ステップS110)。すなわち、本実施形態においては、図2Dに示すように、上から順にラインを印刷して4回の主走査で4ライン分の印刷を行うことによって、M個のノズルで4×M個の印刷単位を印刷する構成となっており、実行対象となっている主走査が4回の主走査の中のいずれであるのかを判定する。
【0035】
そして、ステップS110にて、変数Yが4と等しいと判定されない場合、制御部20は、実行対象となっている主走査が1回目〜3回目の主走査のいずれかであるとみなし、基準の記録密度よりも低い密度でY回目の主走査による印刷を行う(ステップS115)。一方、ステップS110にて、変数Yが4と等しいと判定された場合、制御部20は、実行対象となっている主走査が4回目の主走査であるとみなし、印刷データに基づいて4回目の主走査による印刷を行う(ステップS120)。
【0036】
本実施形態において、プリンター40は、利用者が指示した印刷解像度を印刷データに基づいて特定し、当該印刷解像度で印刷を実行する。すなわち、制御部45は、当該印刷解像度での画素のピッチと等しい単位距離だけ印刷ヘッド41を主走査方向に移動させるための制御信号をキャリッジドライバー46に対して出力する。この結果、印刷ヘッド41は、利用者が指示した印刷解像度でドットを印刷できる状態で主走査を行う。
【0037】
この構成において、印刷ヘッド41が単位距離だけ移動される度に、印刷データに基づいてインク滴の吐出を行えば、印刷データ通りの印刷を実行することができる。しかし、本実施形態において、ステップS115では印刷データ通りにインクを印刷した場合の記録密度(基準の記録密度)よりも低い記録密度となるように、制御部45は、間引き処理を行う。すなわち、制御部45は、主走査方向に並ぶ各画素についての印刷を行うために、通常は、印刷データがいずれかのインク滴の大きさの吐出を示している場合には当該大きさのインク滴を吐出させるための制御信号をピエゾドライバー47に対して出力する構成とする。しかし、制御部45は、n画素(nは2以上の自然数)あたりに1個の割合で、印刷データによらず、インク滴を吐出させるための制御信号をピエゾドライバー47に対して出力しない構成とする。この構成により、n画素あたりに1個の割合で画素が間引かれ、1〜3回目の主走査では、基準の記録密度よりも低い記録密度で印刷が行われる。
【0038】
一方、ステップS120においては、印刷データ通りにインクを印刷する。すなわち、制御部45は、主走査方向に並ぶ各画素についての印刷を行うために、印刷データがいずれかのインク滴の大きさの吐出を示している場合には当該大きさのインク滴を吐出させるための制御信号をピエゾドライバー47に対して出力する。以上の構成によれば、画素毎のインク量を示すデータが同一であっても4回目の主走査では1〜3回目以前の主走査よりも印刷媒体に印刷されるインクの記録密度が大きくなるように印刷ヘッドが制御される。
【0039】
以上のステップS115あるいはS120にて印刷が行われると、制御部20は、変数Yをインクリメントし(ステップS125)、変数Yの値が最大値4より大きいか否かを判定する(ステップS130)。そして、ステップS130にて、変数Yの値が最大値4より大きいと判定されるまで、ステップS110以降の処理を繰り返す。以上の処理によれば、画素毎のインク量を示すデータが同一であっても4回目の主走査では1〜3回目以前の主走査よりも画像データの同じ階調値に基づいて吐出されるインク量が多くなるように印刷を行うことができる。
【0040】
以上の処理によれば、主走査を行うタイミングが1回目〜4回目のように遅くなるにつれ、インクが印刷媒体Pに対して浸透することによる伸びが発生することが抑制され、主走査を行うタイミングが異なることに起因するライン形成位置のずれを抑制することが可能である。
【0041】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、複数のラインで構成される印刷単位をNmax回の主走査で印刷する場合に、Nmax回目の主走査ではそれ以前の主走査よりも同じ階調値に基づいて吐出されるインク量が多くなるようにインク量を制御することができる限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、印刷データは、プリンター40にて生成しても良い。
【0042】
また、上述の実施形態においては、Nmax−1回目以前の主走査(1〜3回目の主走査)において間引き処理を行うことによって基準の記録密度よりも低い記録密度で印刷を行う構成を採用していたが、基準の記録密度よりも低い記録密度で印刷を行うための構成は、他にも種々の構成を採用可能である。例えば、Nmax−1回目以前の主走査(1〜3回目の主走査)において間引き処理を行うとともに、Nmax回目の主走査(4回目の主走査)において印刷データがインクを吐出しないことを示している画素においてもインクを吐出するように構成してもよい。
【0043】
さらに、主走査の回数毎に主走査方向の印刷解像度を変更し、同じ階調値に応じて印刷媒体に記録されるインク滴の数を増減させることによってインクの記録密度を調整しても良い。例えば、印刷データによって指定された印刷解像度でNmax回目の主走査での印刷を実行し、Nmax−1回目の主走査においては、当該指定された印刷解像度よりも低解像度で印刷を行うとともに印刷解像度の変更に伴ってインク滴の数が印刷データにて指示された数より減少するように構成してもよい。
【0044】
さらに、Nmax回目の主走査においては、印刷データによってある印刷解像度が指定された場合、当該指定された印刷解像度よりも高解像度で印刷を行うとともに印刷解像度の変更に伴ってインク滴の数が印刷データにて指示された数より増加するように構成し、かつ、Nmax−1回目の主走査においては、当該指定された印刷解像度よりも低解像度で印刷を行うとともに印刷解像度の変更に伴ってインク滴の数が印刷データにて指示された数より減少するように構成してもよい。なお、ここでは、インク滴の数の増減によって画像の色の変動が抑制されるようにインク滴の数を調整することが好ましい。
【0045】
なお、主走査の回数毎に主走査方向の印刷解像度を変更するための構成としては、種々の構成を採用可能であり、例えば、印刷ヘッドを単位距離移動させる度にインク滴を吐出する主走査において、単位距離を増減させて1ラインあたりに吐出可能なインク滴の数を増減させる構成を採用可能である。なお、印刷ヘッドの移動速度は維持しても良いし、増減させても良い。印刷ヘッドの移動速度を維持する場合にはインクを吐出する間隔(インク滴を吐出するための素子を駆動する際の駆動周波数)を変動させることになる。印刷ヘッドの移動速度を変動させる場合には、移動速度に合わせて必要に応じてインクを吐出する間隔を調整する。
【0046】
さらに、インク滴の大きさによって主走査の回数毎のインク量を調整する構成としても良い。図4は、インク滴の大きさによって主走査の回数毎のインク量を調整する場合の印刷制御処理を示すフローチャートである。当該印刷制御処理は図1に示すプリンター40にて実行され、図3に示す印刷制御処理と同様の処理を含んでいる。図4に示す印刷制御処理において、図3に示す印刷制御処理と同様の処理については同様の符号で示している。図4に示す印刷制御処理においては、主走査の回数に応じて実行される印刷処理であるステップS115aおよびS120aが図3に示す印刷制御処理と異なっている。
【0047】
具体的には、本例におけるピエゾドライバー47は、各ノズルから複数段階のインク滴を吐出させるための駆動電圧として2種類の駆動電圧を出力することができる。例えば、3種類(大中小)の各インク滴を基準のインク量でノズルから吐出させるための基準の駆動電圧と、3種類の各インク滴の量を基準のインク量よりも抑制してノズルから吐出させるための駆動電圧であって基準の駆動電圧よりも小さい振幅の駆動電圧が予め定義される。そして、ピエゾドライバー47は、制御部45が出力する制御信号に基づいて駆動電圧を、基準の駆動電圧と基準の駆動電圧よりも小さい振幅の駆動電圧とのいずれかから選択してノズル41aに対して印加することができる。
【0048】
そこで、制御部45は、ステップS115aにおいて、基準の駆動電圧よりも小さい振幅の駆動電圧でピエゾ素子を駆動して印刷を行う。すなわち、制御部45は、基準の駆動電圧よりも小さい振幅の駆動電圧でピエゾ素子を駆動するようにピエゾドライバー47に対して制御信号を出力して印刷を行う。また、制御部45は、ステップS120aにおいて、基準の駆動電圧でピエゾ素子を駆動して印刷を行う。すなわち、制御部45は、基準の駆動電圧でピエゾ素子を駆動するようにピエゾドライバー47に対して制御信号を出力して印刷を行う。
【0049】
以上の処理によれば、画素毎のインク量を示すデータが同一であっても4回目の主走査では1〜3回目の主走査よりも複数のノズルから吐出されるインク滴の大きさが大きくなるように印刷ヘッドを制御することができる。なお、インク滴の大きさを変動させるための構成としては、種々の構成を採用可能であり、例えば、駆動電圧の波形を変動させることによってインク滴の大きさを変動させてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…コンピューター、20…制御部、21…印刷データ生成プログラム、21a…画像データ取得部、21b…色変換処理部、21c…ハーフトーン処理部、21d…並べ替え処理部、30…HDD、30a,30b…色変換テーブル、40…プリンター、41…印刷ヘッド、41a…ノズル、42…プラテン、43,44…ロール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが形成された印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを所定方向に移動させるとともに前記複数のノズルからインクを吐出させる主走査と前記所定方向に垂直な方向に移動させる副走査を前記印刷ヘッドに実行させる印刷ヘッド制御手段であって、
N−1回目(Nは2以上の自然数)以前の前記主走査で印刷されたラインの間にN回目の前記主走査で他のラインを印刷するとともに、複数のラインで構成される印刷単位をNmax回(NmaxはNの最大値)の主走査で印刷し、かつ、画素毎のインク量を示すデータが同一であってもNmax回目の前記主走査ではNmax−1回目以前の前記主走査よりも吐出されるインク量が多くなるように前記印刷ヘッドから吐出されるインク量を制御する印刷ヘッド制御手段と、
を備えるプリンター。
【請求項2】
前記印刷ヘッド制御手段は、
前記画素毎のインク量を示すデータが同一であってもNmax回目の前記主走査ではNmax−1回目以前の前記主走査よりも印刷媒体に印刷されるインクの記録密度が大きくなるように前記印刷ヘッドを制御する、
請求項1に記載のプリンター。
【請求項3】
前記印刷ヘッド制御手段は、
前記画素毎のインク量を示すデータが同一であってもNmax回目の前記主走査ではNmax−1回目以前の前記主走査よりも前記複数のノズルから吐出されるインク滴の大きさが大きくなるように前記印刷ヘッドを制御する、
請求項1に記載のプリンター。
【請求項4】
複数のノズルが形成された印刷ヘッドを備えるプリンターの制御方法であって、
前記印刷ヘッドを所定方向に移動させるとともに前記複数のノズルからインクを吐出させる主走査と前記所定方向に垂直な方向に移動させる副走査を前記印刷ヘッドに実行させ、かつ、N−1回目(Nは2以上の自然数)以前の前記主走査で印刷されたラインの間にN回目の前記主走査で他のラインを印刷するとともに、複数のラインで構成される印刷単位をNmax回(NmaxはNの最大値)の主走査で印刷し、かつ、画素毎のインク量を示すデータが同一であってもNmax回目の前記主走査ではNmax−1回目以前の前記主走査よりも吐出されるインク量が多くなるように前記印刷ヘッドから吐出されるインク量を制御する、
プリンターの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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