説明

プリンターの印刷方法およびプリンター

【課題】スキューが発生しても縁無し印刷や設定どおりの余白幅での印刷を実現でき、元の印刷データに加えた補正の効果をそのまま維持できるプリンターおよびその印刷方法を提案すること。
【解決手段】プリンター1の制御部10は、センサーユニット9の検出結果に基づき、印刷位置Aにおける記録紙3の基準通過領域Cからのはみ出し方向Dおよびはみ出し幅Eを算出する。そして、記録紙3が基準通過領域Cを通過することを前提として生成された印刷データの各印刷ドット列11を、はみ出し方向Dとは逆側の端部をはみ出し幅Eと同一長さ分だけカットして印刷する。一方、各印刷ドット列11におけるはみ出し方向D側の端部に、はみ出し幅Eと同一長さのドット列13を追加して印刷する。このドット列13は、元の印刷ドット列11のはみ出し方向D側の最も端に位置する印刷ドット14をコピーしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体が斜めに搬送される状態(いわゆるスキュー)に起因する印刷の不具合を抑制できるプリンターおよびその印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体の搬送精度が悪くスキューが発生するプリンターにおいては、スキューが発生すると、印刷データを想定どおりのレイアウトで印刷できないという問題点がある。例えば、記録媒体の幅と同一幅の領域に印刷する印刷データを用いて縁無し印刷を行った場合に、印刷が行われた領域の外側に斜行量に応じた形状の余白が残ってしまい、目標とする縁無し印刷を行うことができない。また、印刷領域の外側に余白を設けた印刷データの印刷においても、スキューが発生すると、余白の幅が設定した幅と異なってしまう。また、余白の幅を一定にすることもできない。
【0003】
また、スキューにより、記録媒体から印刷領域がはみ出すという問題点もある。この場合には、記録媒体から外れた位置に印刷が行われるため、ラベル紙の場合にラベルから外れた台紙部分が汚れたり、プラテンがインクで汚れるなどの不具合が発生する。このような印刷領域のはみ出しを防止する方法としては、予め、スキューによる印刷領域のはみ出し寸法を想定し、この寸法に応じた余白を確保できるように、印刷領域のサイズを記録媒体よりも小さめに設定することが行われている。
【0004】
また、特許文献1には、スキューによる記録媒体の位置ずれ量および位置ずれ方向を検出し、検出した位置ずれ量および位置ずれ方向に応じて、印刷データにおける各桁(各画素)の印刷位置をシフトさせるプリンターが開示されている。この方法によれば、スキューが発生していても縁無し印刷や設定どおりの余白幅の印刷を行うことができる。また、印刷内容の欠落を防止するために、想定されるスキュー量に応じた余白を確保しておく必要がないので、印刷領域を拡大できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−230071公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、多数のノズルや発熱体などの印刷ドット形成手段を備える記録ヘッドにおいては、記録ヘッドの製造誤差や取り付け誤差などによって、異なるノズルや発熱体などを用いて形成した場合の印刷ドット間に濃度ムラなどが発生してしまう。そこで、このような濃度ムラを解消するため、ノズル毎にインク吐出量に補正を加えたり、あるいは、発熱体毎に加熱量に補正を加えることによって印刷品質の向上を図っている。
【0007】
このような補正を行っている場合には、特許文献1のように各画素の印刷位置をシフトさせる処理を行うと、各画素を印刷するために用いられるノズルや発熱体などが、シフト処理によって当初の設定とずれてしまう。そのため、シフト前の印刷データが、各画素を目標どおりの濃度で印刷するための補正を加えたデータであった場合には、補正によって意図した効果を得られなくなるため、印刷品質を向上させることができないという問題点がある。
【0008】
本発明の課題は、この点に鑑みて、印刷結果へのスキューの影響を軽減でき、スキューが発生しても縁無し印刷や設定どおりの余白幅での印刷を実現できると共に、印刷品質の向上のために元の印刷データに加えた補正の効果をそのまま維持することが可能なプリンターおよびその印刷方法を提案することにある。
【0009】
また、本発明の他の課題は、スキューに起因する記録媒体からの印刷のはみ出しを確実に防止できるプリンターおよびその印刷方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、印刷ヘッドによる印刷位置を経由する搬送路に沿って記録媒体を搬送しながら、前記印刷位置を通過する前記記録媒体の部分に印刷を行うプリンターの印刷方法であって、
前記印刷位置における前記記録媒体の幅方向の基準通過領域を設定し、
前記記録媒体を前記搬送路に沿って搬送しながら、前記記録媒体の前記搬送路における幅方向の通過位置を検出し、
当該検出した通過位置に基づき、前記印刷位置にある前記記録媒体の部分の前記基準通過領域からのはみ出し方向およびはみ出し幅を判定し、
前記印刷位置において前記記録媒体が前記基準通過領域にあることを前提とした印刷データから、前記印刷位置にある前記記録媒体の部分への印刷画素列を抽出し、当該印刷画素列における前記はみ出し方向側の端部に、前記はみ出し幅に応じた長さの画素列を追加して印刷することを特徴としている。
【0011】
本発明は、このように、印刷データに含まれる元の印刷画素列の印刷位置を変更しない。このため、印刷データについて行われた濃度補正等の効果をそのまま維持できる。また、スキュー等によって基準通過領域からはみ出てしまう部分、すなわち、従来は新たに余白となってしまっていた部分にまで印刷画素列を延長できる。このようにすれば、スキューが発生しても、印刷領域の端のラインを記録媒体の縁のラインに対して傾けないようにすることができるので、印刷結果へのスキューの影響を軽減できる。特に、追加する画素列の長さを適切に設定すれば、縁無し印刷や設定どおりの余白幅を確実に実現できる。
【0012】
このとき、前記印刷画素列における前記はみ出し方向側の最も端に位置する1画素を抽出し、当該1画素と同一の画素を前記はみ出し幅に応じた長さに並べた画素列を、前記印刷画素列における前記はみ出し方向側の端部に追加することが望ましい。このようにすれば、追加した画素列が元の印刷画素列に違和感なく接続され、追加した画素列を元の印刷画素列から判別し難くなる。よって、印刷結果が不自然にならない。また、画素を追加したことをユーザーが気づき難くなる。
【0013】
また、前記はみ出し幅と同一長さの画素列を、前記印刷画素列における前記はみ出し方向側の端部に追加することにより、縁無し印刷や設定どおりの余白幅を確実に実現することができる。
【0014】
本発明において、前記印刷画素列における前記はみ出し方向とは逆側の部分を、前記はみ出し幅に応じた長さ分だけ削除して印刷することが望ましい。このようにすれば、削除した部分が記録媒体から外れた位置へ印刷されることを確実に防止でき、スキューに起因する記録媒体からの印刷のはみ出しを抑制できる。特に、前記印刷画素列における前記はみ出し方向とは逆側の部分を、前記はみ出し幅と同一長さ分だけ削除して印刷する場合には、スキューに起因する記録媒体からの印刷のはみ出しを完全に防止できる。よって、ラベル紙を記録紙とした場合のラベルから外れた位置への印刷のはみ出しを防止でき、台紙部分の汚れやプラテンの汚れを防止できる。
【0015】
次に、本発明のプリンターは、
印刷位置を経由する搬送路に沿って記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記印刷位置を通過する前記記録媒体の部分に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記記録媒体の前記搬送路における幅方向の通過位置を検出する検出手段と、
上記のプリンターの印刷方法により、前記記録媒体への印刷を行う制御部とを有することを特徴としている。
【0016】
また、本発明のプリンターにおいて、前記印刷ヘッドは、ライン方式のものであり、前記検出手段は、前記記録媒体の幅方向の端を検出する構成とすることができる。このように、印刷データをシフトレジスタによりシフトさせながら転送するライン方式の印刷ヘッドを用いれば、印刷データの先頭または最後をコピーして追加したり、空白を追加して印刷しないようにすることが簡単にできる。また、記録紙の端を検出することで、容易にスキューを検出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、元の印刷データについて行われた濃度補正等の効果をそのまま維持できる。また、スキュー等によって基準通過領域からはみ出てしまう部分、すなわち、従来は新たに余白となってしまっていた部分にまで印刷画素列を延長できるので、印刷結果へのスキューの影響を軽減できる。特に、追加する画素列の長さを適切に設定すれば、縁無し印刷や設定どおりの余白幅を確実に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用したプリンターの主要部分の概略構成図である。
【図2】記録紙に形成される印刷ドット列の説明図である。
【図3】記録紙の斜行(スキュー)が発生したときの状態を示す説明図である。
【図4】本発明を適用した印刷方法のフローチャートである。
【図5】スキューが発生した場合に印刷する印刷ドット列の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したプリンターおよびその印刷方法の実施の形態を説明する。
【0020】
(プリンターの全体構成)
図1はプリンターの主要部分の概略構成図であり、図1(a)は側面構成、図1(b)は平面構成、図1(c)はプリンターの制御系のブロック図である。プリンター1はインクジェットプリンターであり、プリンター1の内部に設けられた搬送路2に沿って長尺の記録紙3を搬送する記録紙搬送機構4(搬送手段)を備えている。搬送路2に沿ってプラテン5が配置され、このプラテン5によって搬送路2上の印刷位置Aが規定されている。搬送路2を横断する方向にキャリッジガイド軸6が架け渡されており、このキャリッジガイド軸6に沿って往復移動するキャリッジ7が設けられている。キャリッジ7にはインクジェットヘッド8が搭載されている。インクジェットヘッド8は、プラテン5側にインクノズル面を向けて配置されている。
【0021】
搬送路2における印刷位置Aの搬送方向上流側には、記録紙3の幅方向の通過位置を検出するための検出位置Bが設定されており、この検出位置Bにセンサーユニット9(検出手段)が設けられている。本実施形態では、センサーユニット9として、搬送路2上の記録紙3に検査光を照射するLED光源と、記録紙3からの反射光を検出するためのCCD素子と、反射光をCCD素子に結像させるためのレンズアレイ等を備えたCIS(コンタクトイメージセンサー)を用いている。センサーユニット9は、搬送路2を横断する方向にLED光源およびCCD素子を配列して構成されているため、各CCD素子の受光量に基づき、記録紙3の左端および右端の各位置を検出できる。
【0022】
図2は記録紙に形成される印刷ドット列の説明図である。プリンター1の制御部10は、印刷データを受信すると、記録紙搬送機構4を制御して記録紙3を搬送しながら、この搬送動作と連動させてキャリッジ駆動機構7aを制御し、キャリッジ7を往復移動させる。そして、キャリッジ7に搭載したインクジェットヘッド8を印刷位置Aにおいて搬送路2を横断する方向に走査しながら、インクジェットヘッド8の各ノズルからインクを吐出する。これらの動作により、記録紙3を所定ピッチずつ搬送する毎に、印刷位置Aに到達している記録紙3の部分である印刷対象部分3aに、キャリッジ7の走査方向に並ぶ印刷ドット列11(印刷画素列)が形成される。
【0023】
図2では、記録紙3の例として、剥離紙からなる長尺の台紙に定型のラベルを貼り付けたラベル紙を図示している。ラベル紙の場合、ラベル3bの領域内に各印刷ドット列11を形成するように、印刷データが作成される。
【0024】
図3は、記録紙の斜行(スキュー)が発生したときの状態を示す説明図である。記録紙搬送機構4は、記録紙3の各部分を予め設定した搬送基準位置、例えば、搬送路2の中央位置あるいは左端位置などに位置合わせした状態を維持しながら搬送するように構成されている。しかしながら、記録紙3を搬送路2に対して傾けてセットしてしまったり、あるいは、何らかの原因により紙送りが左右均等に行われない場合などに、記録紙3が搬送路2に対して傾いた方向に搬送されてしまい、図3に示すように、印刷位置Aにおいて搬送基準位置から記録紙3が幅方向に位置ずれしてしまう場合がある。
【0025】
図3に搬送基準位置から位置ずれしていない状態における記録紙3の通過領域(基準通過領域C)を示す。記録紙3の斜行が発生すると、この基準通過領域Cに対して、記録紙3の各部分が、斜行量に応じた寸法だけ幅方向に位置ずれする。本実施形態では、印刷位置Aに到達する直前の検出位置Bにおいて、センサーユニット9により、記録紙3の実際の通過位置を検出する。そして、検出結果に基づき、印刷位置Aにおける記録紙3の実際の通過位置の、基準通過領域Cからのはみ出し方向Dおよびはみ出し幅Eを算出する。例えば、本実施形態のように印刷位置Aと検出位置Bを十分近接させた場合には、検出位置Bにおける位置ずれ方向と、印刷位置Aにおける記録紙3のはみ出し方向Dが一致する。また、検出位置Bにおける位置ずれ量と、印刷位置Aにおける記録紙3のはみ出し幅Eが一致するものとして取り扱うことができる。
【0026】
基準通過領域Cは、使用する記録紙3の種類および位置合わせ基準に応じて予め設定しておくことができる。あるいは、印刷データにおいて基準通過領域Cを指定してもよい。なお、上記のように、記録紙3としてラベル紙を用いる場合、センサーユニット9によって検出する記録紙3の端位置を、台紙部分の端位置としてもよいし、ラベル部分の端位置としてもよい。台紙部分の端位置を検出する場合には、図3に示すように、台紙部分の通過領域を基準通過領域Cとして設定することができる。また、ラベル部分の端位置を検出する場合には、ラベル部分の通過領域を基準通過領域Cとして設定してもよい。
【0027】
(スキュー発生時の印刷方法)
本実施形態では、センサーユニット9の検出結果に基づき、記録紙3の実際の通過位置が基準通過領域Cからずれている場合にはそのことを判別する。そして、検出したはみ出し方向Dおよびはみ出し幅Eに基づき、印刷位置Aに到達している記録紙3の部分(印刷対象部分3a)に印刷する印刷ドット列11について、そのはみ出し方向D側の端部をはみ出し幅Eに応じた長さ分だけ延長すると共に、はみ出し方向Dとは逆の側の端部を、はみ出し幅Eに応じた長さ分だけ印刷しないように処理して、印刷動作を行う。
【0028】
図4は本発明を適用した印刷方法のフローチャートである。プリンター1の制御部10は、記録紙3を所定量搬送する毎に、ステップS1〜S4の処理を行う。まず、ステップS1において、センサーユニット9による記録紙3の実際の通過位置の検出を行う。続いて、ステップS2において、ステップS1の検出結果および予め設定されている基準通過領域Cに基づき、印刷位置Aにおける記録紙3の基準通過領域Cからのはみ出し方向Dおよびはみ出し幅Eを算出して、スキューの発生の有無を判定する。具体的には、ステップS2において、はみ出し幅Eが所定の閾値以上か否かを判定する。閾値の値は適宜設定することができる。例えば、1ドットの幅とすることもできるし、印刷データの解像度に応じて設定することもできる。
【0029】
制御部10は、はみ出し幅Eが閾値以上であると判定した場合には(ステップS2:Yes)、スキューが発生したと判定し、ステップS3に進む。一方、はみ出し幅Eが閾値未満であると判定した場合には(ステップS2:No)、スキューが発生していないと判定し、ステップS4に進む。ステップS4では、制御部10は、記録紙3が基準通過領域Cにあることを前提として生成されている印刷データをそのまま展開して、印刷ドット列11を、印刷データにおいて指示されている位置に、指示されているとおりの内容で形成する。
【0030】
図5(a)はスキューが発生した場合に印刷する印刷ドット列の説明図である。ステップS3に進んだ場合には、制御部10は、記録紙3が基準通過領域Cにあることを前提として生成されている印刷データを用いて、印刷対象部分3aに印刷される印刷ドット列11について、その一部については印刷データで指示されているとおりの位置に印刷する。具体的には、この印刷ドット列11におけるはみ出し方向Dとは逆側の端部の印刷ドットをはみ出し幅Eと同一長さ分だけ削除して、残りの部分を印刷データどおりに印刷する。図5(a)における符号12は、印刷を行わなかった削除部分のドット列である。そして、この印刷ドット列11におけるはみ出し方向D側の端部に、はみ出し幅Eと同一長さのドット列を追加して印刷する。図5(a)における符号13は、追加したドット列である。
【0031】
以上のような印刷方法により形成された印刷ドット列11Aは、元の印刷ドット列11におけるはみ出し方向D側の端部がはみ出し幅Eと同一長さだけ延長されると共に、はみ出し方向Dとは逆側の端部がはみ出し幅Eと同一長さ分だけカットされている。このため、印刷ドット列11Aは、記録紙3がスキューによって基準通過領域Cから幅方向に位置ずれしているにもかかわらず、印刷データにおいて指示されたとおりのレイアウトで記録紙3に印刷される。よって、スキューが発生しても、縁無し印刷用の印刷データを用いて記録紙3の一端から他端まで(図5(a)の例では、ラベル3bの一端から他端まで)の区間に配置された印刷ドット列を形成できる。これにより、確実に縁無し印刷を行うことができる。また、余白付きのデータにおいても、印刷データの指定どおりの余白幅を実現できる。
【0032】
ここで、図5(a)では、印刷ドット列11を1列だけ示しているが、インクジェットヘッド8には、記録紙3の搬送方向に複数のノズルを所定のノズルピッチで配列したノズル列が設けられている。そのため、記録紙3を所定ピッチずつ搬送する毎に、印刷ドット列11を複数列形成することができる。印刷ドット列11を複数列形成する場合には、各印刷ドット列11について、上記と同様のドット列13の追加およびドット列12の削除を行う。
【0033】
図5(b)は、印刷ドット列11Aにおけるドット列13を追加した部分の拡大図である。追加したドット列13は、元の印刷ドット列11におけるはみ出し方向D側の最も端に位置する印刷ドット14と同一内容の印刷ドットを、はみ出し幅Eと同一長さに配列したものである。このため、追加したドット列13は、元の印刷ドット列11の端部に違和感なく接続されており、元の印刷ドット列11との境界を認識し難くなっている。よって、印刷結果が不自然にならず、印刷データに加工を加えたことをユーザーが気づき難くなる。
【0034】
このように、本実施形態の印刷方法によれば、元の印刷データから抽出した印刷ドット列のうち、カットされずに印刷される部分は全て指示どおりの位置に印刷される。つまり、カットされずに印刷される部分のドットは、全て、元の印刷データで指示されているとおりのノズルを用いて印刷される。よって、元の印刷データにおいて、印刷ドット間の濃度ムラの解消などのために各ノズルからのインクの吐出量に補正が加えられていた場合には、この補正の効果が意図したとおりに得られる。よって。補正による印刷品質の向上効果を損なわずに、スキューによる印刷結果の不具合を抑制できる。
【0035】
また、本実施形態の印刷方法では、元の印刷データのうち、スキュー状態の記録紙3と重なる位置にあるドットを印刷するためのデータについてはそのまま利用し、はみ出し幅Eに応じた長さの追加のドット列13だけを新たに生成すれば良いので、データ量の増加がわずかで済む。例えば、スキュー状態のラベル3bを全て含む寸法に元の印刷データの印刷領域を拡大する方法に比べて、データ量の増大が少なくて済むという利点がある。
【0036】
(改変例)
(1)上記実施形態のプリンターおよびその印刷方法は、本発明をインクジェットプリンターに適用したものであったが、本発明は、記録紙3を搬送しながら印刷位置Aにおいて記録紙3の幅方向に延びる印刷ラインを順次形成してゆく各種のラインプリンターに適用することができる。すなわち、この種のラインプリンターにおいて、各印刷ラインにおける記録紙3のはみ出し方向D側の端部をはみ出し幅Eに応じた寸法だけ延長すると共に、各印刷ラインにおけるはみ出し方向Dとは逆側の端部を、はみ出し幅Eに応じた寸法だけカットして印刷を行えば良い。例えば、ライン方式のインクジェットヘッド8の場合、印刷データはノズルの数分用意されたシフトレジスタによりシフトさせながら転送する。従って、このとき、印刷データの先頭または最後をコピーして追加したり、空白を追加して印刷しないようにする処理を簡単に行うことができる。
【0037】
(2)上記実施形態では、記録紙3の通過位置を検出するためのセンサーユニット9としてCISを用いていたが、ミラーを用いた縮小光学系を備えるCCD方式のイメージセンサーなどを用いることもできる。また、複数のフォトセンサーを記録紙3の幅方向に所定ピッチで配列し、各フォトセンサーの検出結果に基づき、記録紙3の端位置を検出することもできる。
【0038】
(3)上記実施形態では、印刷位置Aの直前の搬送位置において記録紙3の左端および右端を検出してスキューに起因する記録紙3の位置ずれ量および位置ずれ方向(はみ出し方向Dおよびはみ出し幅E)を算出していたが、スキュー量を他の検出位置および検出方法で検出して、はみ出し方向Dおよびはみ出し幅Eを算出してもよい。例えば、記録紙3の裏面に位置検出用および傾き検出用のマークを印刷しておき、このマークの読取結果に基づいて検出位置における記録紙3の傾き角度および幅方向の位置ずれ量を算出する。そして、この算出結果に基づいて、印刷位置Aにおけるはみ出し方向Dおよびはみ出し幅Eを算出してもよい。また、記録紙3がラベル紙である場合には、搬送路2の幅方向に並ぶ2つのフォトセンサーを検出位置に設けておき、各ラベルの先端の左端部分と右端部分の通過タイミングの差に基づき、各ラベルの搬送方向に対する傾き角度を検出できる。
【0039】
(4)上記実施形態では、はみ出し幅Eと同一長さのドット列を追加および削除しているが、センサーユニット9による記録紙3の通過位置の検出誤差などを考慮して、はみ出し幅Eよりもやや長いドット列もしくは短いドット列を追加あるいは削除するようにしてもよい。
【0040】
(5)上記実施形態では、追加するドット列13を、元の印刷ドット列11の最も端の印刷ドット14をコピーしたドットで構成していたが、追加するドット列13として、端から数えて所定個数分の印刷ドットを繰り返し配列したドット列を用いてもよい。例えば、印刷データの元画像の解像度がドットピッチよりも大きい場合には、元画像の解像度に応じた数のドットを繰り返し配列してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…プリンター、2…搬送路、3…記録紙(記録媒体)、3a…印刷対象部分、3b…ラベル、4…記録紙搬送機構(搬送手段)、5…プラテン、6…キャリッジガイド軸、7…キャリッジ、7a…キャリッジ駆動機構、8…インクジェットヘッド(印刷ヘッド)、9…センサーユニット(検出手段)、10…制御部、11…印刷ドット列(印刷画素列)、11A…印刷ドット列、12…ドット列、13…ドット列、14…印刷ドット(画素)、A…印刷位置、B…検出位置、C…基準通過領域、D…はみ出し方向、E…はみ出し幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ヘッドによる印刷位置を経由する搬送路に沿って記録媒体を搬送しながら、前記印刷位置を通過する前記記録媒体の部分に印刷を行うプリンターの印刷方法であって、
前記印刷位置における前記記録媒体の幅方向の基準通過領域を設定し、
前記記録媒体を前記搬送路に沿って搬送しながら、前記記録媒体の前記搬送路における幅方向の通過位置を検出し、
当該検出した通過位置に基づき、前記印刷位置にある前記記録媒体の部分の前記基準通過領域からのはみ出し方向およびはみ出し幅を判定し、
前記印刷位置において前記記録媒体が前記基準通過領域にあることを前提とした印刷データから、前記印刷位置にある前記記録媒体の部分への印刷画素列を抽出し、当該印刷画素列における前記はみ出し方向側の端部に、前記はみ出し幅に応じた長さの画素列を追加して印刷することを特徴とするプリンターの印刷方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記印刷画素列における前記はみ出し方向側の最も端に位置する1画素を抽出し、
当該1画素と同一の画素を前記はみ出し幅に応じた長さに並べた画素列を、前記印刷画素列における前記はみ出し方向側の端部に追加することを特徴とするプリンターの印刷方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記はみ出し幅と同一長さの画素列を、前記印刷画素列における前記はみ出し方向側の端部に追加することを特徴とするプリンターの印刷方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかの項において、
前記印刷画素列における前記はみ出し方向とは逆側の部分を、前記はみ出し幅に応じた長さ分だけ削除して印刷することを特徴とするプリンターの印刷方法。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかの項において、
前記印刷画素列における前記はみ出し方向とは逆側の部分を、前記はみ出し幅と同一長さ分だけ削除して印刷することを特徴とするプリンターの印刷方法。
【請求項6】
印刷位置を経由する搬送路に沿って記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記印刷位置を通過する前記記録媒体の部分に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記記録媒体の前記搬送路における幅方向の通過位置を検出する検出手段と、
請求項1ないし5のいずれかの項に記載のプリンターの印刷方法により、前記記録媒体への印刷を行う制御部とを有することを特徴とするプリンター。
【請求項7】
請求項6において、
前記印刷ヘッドは、ライン方式のものであり、
前記検出手段は、前記記録媒体の幅方向の端を検出することを特徴とするプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−183763(P2011−183763A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54101(P2010−54101)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】