説明

プリンターの記録紙搬送状態の監視方法およびプリンター

【課題】繰り出し機構を備えたプリンターにおいて、紙送りローラーによる記録紙の搬送不良を簡単な構成により検出可能にすること。
【解決手段】ロール紙プリンター1では、紙送りローラー対26による記録紙8aの搬送中に、記録紙張力が予め定めた設定張力に達したか否かを、テンションガイド19の位置を検出するセンサー24の出力に基づき監視し(ST4)、センサー24がオンすると、繰り出しローラー対25による記録紙の繰り出し動作を行う。紙送りローラー対26による記録紙8aの搬送開始時点からの紙送り量を紙送りモーター32の駆動ステップ数をカウントすることによる監視し(ST3)、所定量の紙送りを行ってもセンサー24がオフに変わらない場合には、紙送りローラー対26の紙送り不良が発生したと判定する(ST4、ST7)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長尺状の記録紙を搬送する紙送りローラーに作用する紙送り負荷の変動を抑制するために、記録紙を所定の緊張状態に保持するテンションガイドおよび記録紙を紙送りローラーに向けて繰り出す繰り出しローラーを備えたプリンターに関する。さらに詳しくは、この種のプリンターにおいて紙送りローラーによる記録紙の搬送動作に不良が発生したか否かを監視する記録紙搬送状態の監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テンションガイドおよび繰り出しローラーを備えたロール紙プリンターは、特許文献1、2、3に提案されている。これらの特許文献に開示されているように、テンションガイドは記録紙に対して接近および離れる方向に変位可能に支持されていると共に、ばね力によって記録紙に押し付けられている。テンションガイドが変位することにより、記録紙に作用する張力の変動が抑制される。また、テンションガイドの近傍に配置したセンサーによってテンションガイドが大きく変位したことが検出されると、記録紙に作用している大きな張力を緩和するために繰り出しローラーによる記録紙の繰り出し動作が行われる。これにより、記録紙の張力変動が効果的に抑制される。すなわち、紙送りローラーに作用する紙送り負荷の変動が抑制され紙送り動作が精度良く行われる。さらに、特許文献3においては、センサー出力に基づき、繰り出しローラーにより記録紙の繰り出し動作に不良が発生したか否かを判定している。
【0003】
ここで、長尺状の記録紙に印刷を行うロール紙プリンターなどのプリンターでは、紙送りローラーの回転駆動源として、ステッピングモーター(パルスモーター)が一般的に使用されている。ステッピングモーターは通常は開ループ制御により駆動制御が行われるので、モーター回転位置を検出するためのエンコーダーは付設されていない。このため、紙送り量などは、ステッピングモーターの駆動ステップ数によって算出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−203563号公報
【特許文献2】特開2007−203564号公報
【特許文献3】特開2009−269399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テンションガイドおよび繰り出しローラーを用いて記録紙の負荷変動を抑制する繰り出し機構を備えたプリンターにおいて、繰り出しローラーによる記録紙の繰り出し動作不良の他に、紙送りローラーによる記録紙の搬送不良が発生することがある。例えば、ロール紙の破れ、紙送りローラーの摩耗などが原因となって、紙送りローラーによる紙送り位置においてロール紙の部分が穴あき状態に陥り、紙送りローラーによって紙送りができなくなることがある。また、紙送りモーターとして用いているステッピングモーターの脱調、紙送りモーターの回転力を紙送りローラーに伝達する伝達機構の不良(例えば伝達機構を構成している歯車の空転、駆動ベルトの外れ等)によって、紙送りが正常に行われないことがある。
【0006】
このような紙送りローラーによる記録紙搬送動作の不良を検出するためには、紙送りローラーの回転状態あるいはステッピングモーターの回転状態を監視することが望ましい。このためには、これらの回転状態を検出するための検出機構を新たに取り付ける必要がある。しかしながら、このような検出機構を追加することは、プリンターの寸法増加、コスト高に繋がり、好ましくない。また、小型のプリンターにおいてはそのような検出機構を設置するためのスペースを確保できない場合も多い。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、新たな検出機構を追加することなく、紙送りローラーによる記録紙の搬送不良を検出できるようにしたプリンターの記録紙搬送状態の監視方法、および、プリンターを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のプリンターの記録紙の搬送状態監視方法は、
繰り出しローラーによる紙繰り出し位置と紙送りローラーによる紙送り位置との間に位置する長尺状の記録紙の部分を、所定の付勢力が付与されている変位可能なテンションガイドに架け渡し、
前記紙送りローラーによる前記記録紙の少なくとも搬送中に、当該記録紙に生ずる張力が予め定めた設定張力に達したか否かを監視し、
前記紙送りローラーによる前記記録紙の少なくとも搬送中に、前記記録紙に生ずる前記張力が前記設定張力に到達すると、当該張力が前記設定張力を下回るまで、前記繰り出しローラーによる前記記録紙の繰り出し動作を行い、
前記紙送りローラーによる前記記録紙の搬送の所定時点からの前記記録紙の搬送量が、予め定めた設定搬送量に到達すべき時点に至っても、前記記録紙に生ずる前記張力が前記設定張力に達しない場合には、前記紙送りローラーによる前記記録紙の搬送動作に不良が発生していると判定することを特徴としている。
【0009】
本発明の方法では、繰り出しローラーによる記録紙の繰り出し動作制御のために利用している監視情報、すなわち、記録紙に生ずる張力が設定張力に達したか否かの監視情報を、紙送りローラーによる記録紙搬送動作に不良が発生しているか否かを判定するために利用している。すなわち、紙送りローラーにより記録紙が正常に搬送されると、記録紙送りローラーと繰り出しローラーの間に架け渡されている記録紙の部分の緊張状態が高まり(換言すると、当該記録紙の部分の弛みが除去され)、記録紙の張力が増加して設定張力を超える。紙送りローラーによる記録紙の搬送が行われない場合には記録紙の張力が増加せず、搬送が不十分な場合には張力が設定張力に到達することがない。よって、紙送りローラーによる記録紙の少なくとも搬送動作中に、繰り出しローラーによる繰り出し制御に用いている記録紙の張力が設定張力に達しか否かの監視情報を利用することにより、新たな検出機構を取り付けることなく、紙送りローラーによる搬送不良を検出できる。また、紙送りローラーの搬送の開始時点や停止時点であっても、張力を継続して監視し、搬送不良と判定することもできる。また、記録紙の搬送量は、搬送開始から算出する場合の他、搬送時の所定時点から算出をしてもよい。
【0010】
ここで、前記記録紙に生ずる張力が前記設定張力に達したか否かは前記テンションガイドの変位量に基づき監視することが望ましい。変位量は、光学式センサーなどの位置検出用のセンサーによって簡単に検出できるからである。
【0011】
また、開ループ制御により駆動されるステッピングモーターを用いて前記紙送りローラーを回転駆動して前記記録紙の搬送を行う場合には、前記紙送りローラーによる前記記録紙の搬送量が前記設定搬送量に到達すべき時点であるか否かを、前記ステッピングモーターの駆動ステップ数に基づき判別することが望ましい。
【0012】
次に、本発明のプリンターは、
印刷ヘッドと、
印刷ヘッドによる印刷位置を経由させて長尺状の記録紙を搬送する紙送りローラーと、
前記紙送りローラーに向けて前記記録紙を繰り出す繰り出しローラーと、
前記繰り出しローラーによる紙繰り出し位置および前記紙送りローラーによる紙送り位置の間に架け渡される前記記録紙の架け渡し部分を、所定の付勢力で押し付け可能であり、当該付勢力に逆らって変位させることのできるテンションガイドと、
前記記録紙の前記架け渡し部分に生ずる張力が予め定めた設定張力に達したか否かを検出するセンサーと、
前記紙送りローラーおよび前記繰り出しローラーの駆動を制御する制御手段とを有しており、
前記制御手段は、前記記録紙の少なくとも搬送中において、前記センサーの検出信号に基づき前記記録紙の前記架け渡し部分に生ずる前記張力が前記設定張力に到達したことを検出すると、当該張力が前記設定張力を下回るまで、前記繰り出しローラーによる前記記録紙の繰り出し動作を行い、前記紙送りローラーによる前記記録紙の搬送量が予め定めた設定搬送量に到達すべき時点に至っても、前記記録紙に生ずる前記張力が前記設定張力に達しない場合には、前記紙送りローラーによる前記記録紙の搬送動作に不良が発生していると判定することを特徴としている。
【0013】
ここで、前記センサーとして、前記テンションガイドが所定の変位量だけ変位したか否かを検出するものを用いることができる。
【0014】
また、前記紙送りローラーを回転駆動するステッピングモーターを有している場合には、前記制御手段は、前記紙送りローラーによる前記記録紙の搬送量が前記設定搬送量に到達すべき時点を、前記ステッピングモーターの駆動ステップ数に基づき検出すればよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、繰り出しローラーによる記録紙の繰り出し動作制御に利用している記録紙の張力が設定張力に達したか否かの監視情報を、紙送りローラーによる記録紙の搬送不良を判定するために利用している。したがって、紙送りローラーによる記録紙の搬送不良を新たな検出機構などを追加することなく簡単に検出でき、プリンターのコスト高、寸法増加を招くことがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用したロール紙プリンターの外観斜視図である。
【図2】ロール紙プリンターの内部構造を示す概略構成図および部分説明図である。
【図3】ロール紙プリンターの制御系を示す概略ブロック図である。
【図4】記録紙搬送状態の監視動作を示す概略フローチャートである。
【図5】繰り出しローラー対による繰り出し動作を示す概略フローチャートである。
【図6】記録紙搬送動作、繰り出し動作のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明による記録紙の搬送状態の監視方法を適用したプリンターの実施の形態を説明する。
【0018】
(全体構成)
図1(a)は本発明の実施の形態に係るインクジェット式のロール紙プリンターの外観斜視図であり、図1(b)はその開閉蓋を全開にした状態の外観斜視図である。これらの図に示すように、ロール紙プリンター1は全体としてほぼ直方体形状をしたプリンター本体2と、このプリンター本体2の前面に取り付けた開閉蓋3とを有している。開閉蓋3は蓋フレーム3aおよび、ここに取り付けられた蓋カバー3bを備えている。プリンター本体2の外装ケース2aの前面には所定幅の記録紙排出口4が形成されている。記録紙排出口4の下側には排紙ガイド5が前方に突出しており、当該排紙ガイド5の側方には蓋開閉レバー6が配置されている。外装ケース2aにおける排紙ガイド5および蓋開閉レバー6の下側には、ロール紙出し入れ用の矩形の開口部2bが形成されており、この開口部2bが開閉蓋3によって封鎖されている。
【0019】
蓋開閉レバー6を操作すると開閉蓋3の不図示のロックが解除される。排紙ガイド5を前方に引くと、開閉蓋3が下端部を中心として、図1(a)に示す起立状態の閉じ位置3Aから、図1(b)に示す前方にほぼ水平に倒れた開き位置3Bまで開く。開閉蓋3が開くと、プリンター本体2の内部に形成されているロール紙収納部7が開放状態となる。同時に、印刷位置を規定するためのプラテン18などを備えたプラテンユニット12が開閉蓋3と一緒に移動する。この結果、ロール紙収納部7から記録紙排出口4に到る記録紙搬送経路が開放状態となり、プリンター前方からロール紙の交換作業などを簡単に行うことができる。なお、図1(b)においては、蓋カバー3bおよび蓋開閉レバー6を省略して示してある。
【0020】
(プリンターの内部構成)
図2(a)はロール紙プリンター1の内部構成を示す概略断面図であり、図2(b)はその部分断面図である。これらの図を参照して説明すると、ロール紙プリンター1は、板金製のプリンター本体フレーム11を備え、ここに各構成部品が搭載されている。プリンター本体フレーム11の前端部には蓋フレーム3aが取り付けられている。蓋フレーム3aの上端部にはプリンター後方に延びる状態にプラテンユニット12が取り付けられており、このプラテンユニット12の下側がロール紙収納部7となっている。プラテンユニット12は、当該プラテンユニット12および蓋フレーム3aを用いて構成される4節の平行リンク機構によって、その姿勢が維持された状態で開閉蓋3と共に開閉可能である。
【0021】
プラテンユニット12の上側にはインクジェットヘッド13が配置されている。インクジェットヘッド13はヘッドキャリッジ14に搭載されており、ヘッドキャリッジ14はキャリッジガイド軸15よってプリンター幅方向にガイドされる。ヘッドキャリッジ14は、キャリッジモーター16およびタイミングベルト17を備えたキャリッジ搬送機構によって、キャリッジガイド軸15に沿って往復移動可能である。
【0022】
プラテンユニット12に搭載されているプラテン18は、インクジェットヘッド13のノズル面に対して下側から一定のギャップで対峙しており、当該プラテン18によってインクジェットヘッド13による印刷位置が規定されている。プラテンユニット12の後端部分にはプリンター下方に湾曲した形状のガイド面を備えたテンションガイド19が取り付けられている。
【0023】
テンションガイド19は、図2(b)に示すように、支軸20を中心として、実線で示す位置から想像線で示す位置までの間を上下に旋回可能であり、不図示のバネ部材によるバネ力によって常に上方(矢印21の方向)に付勢されている。プラテンユニット12には不図示のガイドストッパが形成されており、バネ力によって上方に付勢されているテンションガイド19はガイドストッパによって規定される図示の実線位置に保持され、バネ力に逆らって下方(矢印22の方向)に押し下げること(変位させること)が可能となっている。
【0024】
ロール紙収納部7に収納されているロール紙8から引き出される記録紙8aは、プリンター後方および上方に向けて引き出され、テンションガイド19を経由してプリンター前方に向きを変えて、印刷位置を経由して記録紙排出口4に至る記録紙搬送経路23に沿って配置される。図2(b)には、記録紙搬送経路23が記録紙8aを示す一点鎖線によって示されている。テンションガイド19によって、記録紙8aには所定の張力が付与されて弛みの無い緊張状態に保持される。テンションガイド19の近傍には、テンションガイド19が下側に所定量だけ移動(変位)したことを検出するセンサー24が配置されている。センサー24は例えばメカニカルスイッチなどの接触型のセンサーであるが、光学式センサーなどの非接触型のものであってもよい。
【0025】
記録紙搬送経路23には、その上流側から順に、繰り出しローラー25aおよび従動ローラー25bからなる繰り出しローラー対25と、紙送りローラー26aおよび従動ローラー26bからなる紙送りローラー対26と、搬送ローラー27aおよび従動ローラー27bからなる搬送ローラー対27が配置されている。繰り出しローラー対25と紙送りローラー対26の間にテンションガイド19が位置しており、紙送りローラー対26と搬送ローラー対27の間がインクジェットヘッド13の印刷位置となっている。
【0026】
繰り出しローラー対25は、テンションガイド19の下側の位置において、プリンター本体フレーム11によってプリンター幅方向に延びる状態に支持されている。繰り出しローラー25aには減速歯車列28を介して繰り出しモーター29から回転力が伝達される。従動ローラー25bは、プラテンユニット12に取り付けられたローラー支持レバー30の先端部(プリンター後側の端部)に回転自在の状態で支持されている。開閉蓋3を閉じた状態では、緩衝ばね31のバネ力によって、記録紙8aを介して繰り出しローラー25aに押し付けられる。
【0027】
紙送りローラー対26の紙送りローラー26aはプラテンユニット12に搭載されており、その従動ローラー26bはプリンター本体フレーム11の側に取り付けられている。開閉蓋3を閉じた状態では、紙送りローラー26aに、プリンター本体フレーム11に搭載されている紙送りモーター32から減速歯車列33を介して回転力が伝達される。また、従動ローラー26bが所定の押し付け力で、記録紙8aを介して紙送りローラー26aに押し付けられる。
【0028】
搬送ローラー対27の搬送ローラー27aはプラテンユニット12に搭載されており、その従動ローラー27bはプリンター本体フレーム11の側に取り付けられている。搬送ローラー27aは、プラテンユニット12に搭載されている不図示の歯車列を介して紙送りローラー26aに連結されており、当該紙送りローラー26aと同期して回転する。開閉蓋3を閉じた状態では、記録紙8aを挟み、従動ローラー27bが搬送ローラー27aに押し付けられる。
【0029】
ロール紙8から引き出される記録紙8aは、繰り出しローラー対25の繰り出し位置(ニップ部)、テンションガイド19、紙送りローラー対26の送り位置(ニップ部)を介して、プラテン18の表面を通り、搬送ローラー対27を介して記録紙排出口4に至る記録紙搬送経路23に沿って引き出される。繰り出しローラー対25および紙送りローラー対26の間に掛け渡されている記録紙8aの部分はテンションガイド19に架け渡されており、テンションガイド19によって上方に付勢されて、所定の張力が付与された状態となっている。
【0030】
紙送りローラー対26を経由してプラテン18上の印刷位置を搬送される記録紙8aの表面にインクジェットヘッド13により印刷が行われる。記録紙8aの幅方向への一連の行印刷が終了した後は、紙送りローラー対26が回転駆動されて1行分の所定ピッチだけ記録紙8aが送り出され、次の行印刷が行われる。記録紙8aは、所定ピッチで間欠的に送り出されながらインクジェットヘッド13によって記録紙8aに印刷が施される。印刷後の記録紙8aが排出される記録紙排出口4には記録紙切断装置、例えば鋏式の記録紙切断装置(図示せず)が配置されている。記録紙切断装置によって、これらの間に位置する記録紙8aが幅方向に切断される。
【0031】
(制御系)
図3はロール紙プリンター1の制御系を示す概略ブロック図である。制御系は、マイクロコンピューターを備えた駆動制御部40を中心に構成されており、この駆動制御部40は、ホストコンピューターなどの上位機器41からの印刷データの供給を受けて、紙送り動作および印刷動作を実行する。駆動制御部40には、キャリッジ位置を示す検出信号などの各種の不図示のセンサーからの検出信号が入力され、これらに基づき、駆動制御部40は、繰り出しモーター29、紙送りモーター32およびキャリッジモーター16を、モータードライバー42、43、44を介して駆動制御し、インクジェットヘッド13をヘッドドライバー45を介して駆動制御する。繰り出しモーター29、紙送りモーター32にはステッピングモーターが用いられているが他の形式のモーターであってもよい。
【0032】
駆動制御部40は、テンションガイド19の移動位置を検出するセンサー24からの検出信号24S(記録紙8aの張力状態)、紙送りモーター32のオンオフ(紙送り動作の開始および停止)、および、紙送りモーター32の回転速度(紙送りローラー26aによる記録紙の送り速度)、紙送りモーター32の駆動ステップ数(紙送り量)に基づき、繰り出しモーター29の駆動を制御して、繰り出しローラー25aによる記録紙の繰り出し動作および引き戻し動作を制御する。
【0033】
駆動制御部40の記憶領域46には、各部の駆動制御に必要な各種のパラメーターが記憶保持されている。例えば、紙送りローラー対26による紙送り動作不良を検出するために用いる設定紙送り量が、当該設定紙送り量に対応する紙送りモーター32の駆動ステップ数として記憶保持されている。これらのパタメーターに基づき駆動制御が行われる。
【0034】
(記録紙搬送状態の監視動作)
図4はロール紙プリンター1における記録紙搬送状態の監視動作を示す概略フローチャートであり、図5は繰り出しモーターによって駆動される繰り出しローラー対25による記録紙の繰り出し動作を示す概略フローチャートであり、図6はそのタイミングチャートである。
【0035】
まず、図4および図6を参照して、紙送りローラー対26による紙送り動作を説明する。記録紙8aは、繰り出しローラー対25による繰り出し位置および紙送りローラー対26による紙送り位置の間に位置する長尺状の記録紙8aの部分が、テンションガイド19に架け渡した状態に引き出されている。この状態においては、紙送りローラー対26に供給される記録紙8aにはテンションガイド19によって所定の張力が付与されている。
【0036】
例えば、記録紙8aの先頭がインクジェットヘッド13の印刷位置に位置しているものとし、この状態において上位機器41から印刷データを受信して印刷動作が開始されると(図4のステップST1)、記録紙8aはその先頭部分の印刷開始位置が印刷位置まで送り出される。まず、紙送りモーター32が駆動され、紙送りローラー対26および搬送ローラー対27が順送り方向に記録紙8aの搬送を開始する(図4のステップST2、図6の時点t1)。記録紙8aが紙送りローラー対26によって引き出されるので、記録紙8aの張力が増加し、張力の増加に応じてテンションガイド19が下方に押し込まれる。
【0037】
記録紙8aの張力が増加して予め設定されている許容上限値(設定張力)に達すると、テンションガイド19がセンサー24による検出領域まで下がり、センサー24の検出信号24Sがオフからオンに立ち上がる(図4のステップST4、図6の時点t2)。駆動制御部40は、検出信号24Sがオンに切り替わったことにより張力が許容上限値を超えたと判断する。
【0038】
ここで、駆動制御部40では、紙送りローラー対26による記録紙8aの送り動作が開始されると、当該記録紙8aの送り量のカウントを開始する。紙送りモーター32としてステッピングモーターが用いられているので、その駆動ステップ数をカウントする。正常に紙送り動作が行われると、上記のように、回転している紙送りローラー対26と、静止している繰り出しローラー対25の間の記録紙8aの部分の長さが短くなり、張力が徐々に増加し(記録紙8aの弛みが徐々に無くなり)、これに伴ってテンションガイド19が押し下げられてセンサー24がオンする。
【0039】
しかしながら、駆動制御部40によって紙送り動作が指示されているにも拘わらず、紙送り動作が行われない場合、紙送り量が不十分な場合には、記録紙8aの張力が増加せず、あるいは増加量が少ない。この場合には、センサー24がオンになる筈の紙送り量分の紙送りが行われるべき時点、換言すると、紙送りモーター32の駆動ステップ数が当該紙送り量に相当する設定ステップ数Nだけ出力された時点(図6の時点t3)においても、センサー24がオフ状態のままになる。
【0040】
駆動制御部40では、センサー24がオンに切り替わる紙送り量を、紙送りモーター32の駆動ステップ数をカウントすることにより監視している(図4のステップST3)。駆動ステップ数が予め設定した設定数Nに到達した時点において、センサー24がオンに切り替わっていない場合には、紙送りローラー対26による紙送り動作に不具合が発生したものと判断して、紙送りモーター32を強制的に停止すると共に、エラーが発生した旨のメッセージをロール紙プリンター1の表示ランプ(図示せず)を介して表示し、あるいは、上位機器41にエラーメッセージを送信し、上位機器41のモニター画面上にエラーメッセージを表示させる(図4のステップST4→ST7)。
【0041】
例えば、記録紙8aの破れ、紙送りローラー26aの摩耗などが原因となって、紙送りローラー対26による紙送り位置において記録紙8aの部分が穴あき状態に陥り、紙送りローラー対26によって紙送りができなくなることがある。また、紙送りモーター32として用いているステッピングモーターの脱調、紙送りモーター32の回転力を紙送りローラー26aに伝達する伝達機構の不良(例えば歯車33の空転など)によって、紙送りが正常に行われないことがある。本実施の形態では、このような場合に直ちに紙送りモーター32が停止され、紙送りローラー対26による紙送り動作が停止してエラーメッセージが表示される。よって、操作者に対して、紙送り動作に不具合が発生したことを迅速に警告できる。また、次に述べるように繰り出しローラー対25による繰り出し動作制御に用いるセンサー24の検出信号24Sを利用して、紙送り動作を監視しているので、紙送り動作の監視のための新たな検出機構を設ける必要がない。
【0042】
次に、図5および図6を参照して、駆動制御部40による記録紙8aの繰り出し動作制御を説明する。駆動制御部40は、上記のように、センサー24の出力に基づき、張力が許容上限値を超えたか否かを監視している。本例では、設定張力を超えたことが検出された時点(図6の時点t2)から、所定の動作開始遅延時間DLSをカウントし(図5のステップST11、ST12)、この時間だけ遅延させた後の時点において、繰り出しモーター29を起動し、繰り出しローラー25aによる記録紙8aの繰り出し動作を開始する(図5のステップST13、図6の時点t4)。ここで、繰り出しモーター29によって回転駆動される繰り出しローラー25aによる記録紙8aの繰り出し速度V(25)は、紙送りモーター26によって回転駆動されている紙送りローラー26aによる記録紙8aの送り速度V(26)よりも速い速度に設定される。
【0043】
繰り出しローラー対25による記録紙8aの繰り出し速度が速いので、繰り出しローラー対25による記録紙8aの繰り出し量の方が紙送りローラー対34による紙送り量よりも多くなり、記録紙8aに弛みが生じ、張力が緩和される。これに伴ってテンションガイド19がバネ力によって上方に押し戻される。記録紙8aの張力が許容上限値以下に戻ると、テンションガイド19がセンサー24の検出領域から上方に外れ、検出信号24Sが再びオフに戻る(図5のステップST15、図6の時点t5)。
【0044】
駆動制御部40は、張力が許容上限値以下に戻ったことが検出された時点から、所定の動作停止遅延時間DLEをカウントし(図5のステップST16)、この時間だけ遅延させた後の時点において、繰り出しモーター29を停止し、繰り出しローラー対25による記録紙8aの繰り出し動作を停止する(図5のステップST17、図6の時点t6)。以後、センサー24のオンオフに応じて所定の遅延時間の経過後に繰り出しモーター29の起動、停止を行って、繰り出しローラー対25による記録紙8aの繰り出し動作の開始および停止を制御し、紙送りローラー対26による記録紙8aの送り動作を補助して、記録紙8aに作用する張力の増加を抑制すると共に張力の変動を抑制する。
【0045】
次に、駆動制御部40では、繰り出しローラー対25による記録紙繰り出し動作を開始した後は、紙送りローラー対26による記録紙の送り動作が停止した時点から繰り出しローラー対25による記録紙8aの繰り出し量をカウントしている。繰り出しモーター29がステッピングモーターの場合にはその駆動ステップ数をカウントする。紙送り動作が停止した後からの繰り出しローラー対25による記録紙8aの繰り出し量が予め設定された量を超えた場合には、紙詰まりなどのエラーが発生したものと判断して、繰り出しモーター29を強制的に停止すると共に、エラーが発生した旨のメッセージをロール紙プリンター1の表示ランプ(図示せず)を介して表示し、あるいは、上位機器にエラーメッセージを送信し、上位機器のモニター画面上にエラーメッセージを表示させる(図5のステップST14、ST18)。
【0046】
正常な搬送動作においては、繰り出しローラー対25の下流側に位置している紙送りローラー対26による記録紙8aの送り動作が終了すると、繰り出しローラー対25によって繰り出される記録紙8aに弛みが生じ、張力が低下してテンションガイド19がバネ力によって押し上げられてセンサー24がオフに切り替わり、繰り出しローラー対25の記録紙繰り出し動作が停止する筈である。
【0047】
紙送りローラー対26による送り動作が停止した後に、繰り出しローラー対25による繰り出し動作が継続している場合には、これらのローラー対26、25の間に位置する記録紙8aの部分が紙詰まり状態に陥って、テンションガイド19に架け渡されている記録紙8aの部分に作用している張力が解除されないことが考えられる。紙詰まり状態において繰り出しローラー対25によって記録紙8aの繰り出し動作を継続すると、繰り出しローラー対25と紙送りローラー対26の間の部分に多量の記録紙8aが繰り出され、この部分に記録紙8aが詰まり、記録紙8aに折り目が付く、破れが生ずる状態などの状態に陥り、回復作業が大変になる。このような場合に直ちに繰り出しモーター29を停止して、繰り出しローラー対25による繰り出し動作を停止してエラーメッセージを表示しているので、操作者に対して、紙詰まりなどのエラー状態に迅速に警告できる。
【0048】
また、紙送りローラー対26の搬送の開始時点や停止時点であっても、張力を継続して監視し、搬送不良と判定することもできる。また、記録紙の搬送量は、搬送開始から算出する場合の他、搬送時の所定時点から算出をしてもよい。
【0049】
(その他の実施の形態)
なお、上記の例は、シリアル型のロール紙プリンターに本発明を適用したものであるが、ライン型のロール紙プリンターに対しても本発明を同様に適用可能である。また、上記の例は、インクジェット式のロール紙プリンターに本発明を適用したものであるが、サーマルヘッドなど各種の印刷ヘッドを備えたロール紙プリンターに対しても本発明を同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 ロール紙プリンター、2 プリンター本体、2a 外装ケース、2b 開口部、3 開閉蓋、3A 閉じ位置、3B 開き位置、3a 蓋フレーム、3b 蓋カバー、4 記録紙排出口、5 排紙ガイド、6 蓋開閉レバー、7 ロール紙収納部、8 ロール紙、8a 記録紙、11 プリンター本体フレーム、12 プラテンユニット、13 インクジェットヘッド、14 ヘッドキャリッジ、15 キャリッジガイド軸、16 キャリッジモーター、17 タイミングベルト、18 プラテン、19 テンションガイド、21・22 矢印、23 記録紙搬送経路、24 センサー、24S 検出信号、25 繰り出しローラー対、25a 繰り出しローラー、25b 従動ローラー、26 紙送りローラー対、26a 紙送りローラー、26b 従動ローラー、27 搬送ローラー対、27a 搬送ローラー、27b 従動ローラー、28 減速歯車列、29 繰り出しモーター、30 ローラー支持レバー、31 緩衝バネ、32 紙送りモーター、33 減速歯車列、40 駆動制御部、41 上位機器、42・43・44 モータードライバー、45 ヘッドドライバー、46 記憶領域、DLE 動作停止遅延時間、DLS 動作開始遅延時間、V(25) 繰り出し速度、V(26) 紙送り速度、N 設定ステップ数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り出しローラーによる紙繰り出し位置と紙送りローラーによる紙送り位置との間に位置する長尺状の記録紙の部分を、所定の付勢力が付与されている変位可能なテンションガイドに架け渡し、
前記紙送りローラーによる前記記録紙の少なくとも搬送中に、当該記録紙に生ずる張力が予め定めた設定張力に達したか否かを監視し、
前記紙送りローラーによる前記記録紙の少なくとも搬送中に、前記記録紙に生ずる前記張力が前記設定張力に到達すると、当該張力が前記設定張力を下回るまで、前記繰り出しローラーによる前記記録紙の繰り出し動作を行い、
前記紙送りローラーによる前記記録紙の搬送の所定時点からの前記記録紙の搬送量が、予め定めた設定搬送量に到達すべき時点に至っても、前記記録紙に生ずる前記張力が前記設定張力に達しない場合には、前記紙送りローラーによる前記記録紙の搬送動作に不良が発生していると判定することを特徴とするプリンターの記録紙搬送状態の監視方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記記録紙に生ずる張力が前記設定張力に達したか否かを、前記テンションガイドの変位量に基づき監視することを特徴とするプリンターの記録紙搬送状態の監視方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
開ループ制御により駆動されるステッピングモーターを用いて前記紙送りローラーを回転駆動して前記記録紙の搬送を行い、
前記紙送りローラーによる前記記録紙の搬送量が前記設定搬送量に到達すべき時点を、前記ステッピングモーターの駆動ステップ数に基づき判別することを特徴とするプリンターの記録紙搬送状態の監視方法。
【請求項4】
印刷ヘッドと、
印刷ヘッドによる印刷位置を経由させて長尺状の記録紙を搬送する紙送りローラーと、
前記紙送りローラーに向けて前記記録紙を繰り出す繰り出しローラーと、
前記繰り出しローラーによる紙繰り出し位置および前記紙送りローラーによる紙送り位置の間に架け渡される前記記録紙の架け渡し部分を、所定の付勢力で押し付け可能であり、当該付勢力に逆らって変位させることのできるテンションガイドと、
前記記録紙の前記架け渡し部分に生ずる張力が予め定めた設定張力に達したか否かを検出するセンサーと、
前記紙送りローラーおよび前記繰り出しローラーの駆動を制御する制御手段とを有しており、
前記制御手段は、前記記録紙の少なくとも搬送中に、前記センサーの検出信号に基づき前記記録紙の前記架け渡し部分に生ずる前記張力が前記設定張力に到達したことを検出すると、当該張力が前記設定張力を下回るまで、前記繰り出しローラーによる前記記録紙の繰り出し動作を行い、前記紙送りローラーによる前記記録紙の搬送量が予め定めた設定搬送量に到達すべき時点に至っても、前記記録紙に生ずる前記張力が前記設定張力に達しない場合には、前記紙送りローラーによる前記記録紙の搬送動作に不良が発生していると判定することを特徴とするプリンター。
【請求項5】
請求項4において、
前記センサーは、前記テンションガイドが所定の変位量だけ変位したか否かを検出するものであることを特徴とするプリンター。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記紙送りローラーを回転駆動するステッピングモーターを有し、
前記制御手段は、前記紙送りローラーによる前記記録紙の搬送量が前記設定搬送量に到達すべき時点を、前記ステッピングモーターの駆動ステップ数に基づき検出することを特徴とするプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−143997(P2011−143997A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5662(P2010−5662)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】