説明

プリンター

【課題】印字ヘッドにプラテンローラーを圧接させるプリンターであって、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に単票用紙が無い状態になっても、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に発生している摩擦力の変動を抑えるプリンターを提供すること。
【解決手段】バネ20でプラテンローラー16をサーマル式印字ヘッド17に向かわせる下方向の圧接圧F1が発生する。一方、サーマル式印字ヘッド17とプラテンローラー16の間の摩擦力L1が大きくなると、駆動ギヤ機構13にもかかる大きな駆動負荷L2が、駆動ギヤ機構13からプラテンギヤ14に伝達されるが、単票用紙Sの搬送方向D2の下流側から駆動ギヤ機構13をプラテンギヤ14に隣接させているため、その伝達された力はプラテンギヤ14を上方向に押し上げる力F2となる。そして、各力F1,F2,L1,L2の釣合関係が形成され、摩擦力L1は大きくなっても一瞬にして収まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字ヘッドに対してプラテンローラーを圧接させるプリンターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリンターでは、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に挟まれた印刷用紙が、回転中のプラテンローラーとの摩擦により搬送される。その印刷用紙が連続用紙(ウエブ)でなく単票用紙(シート)である場合には、プラテンローラーの回転中には、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に印刷用紙(単票用紙)が有る状態と、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に印刷用紙(単票用紙)が無い状態とが交互に繰り返される。また、印刷用紙(単票用紙)がセットされていない場合には、プラテンローラーの回転中に、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に印刷用紙(単票用紙)が無い状態が続く。
【0003】
そのように、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に印刷用紙(単票用紙)が無い状態では、印字ヘッドとプラテンローラーとが印刷用紙(単票用紙)を挟むことなく直接に圧着されるので、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に発生している摩擦力がとても大きくなる。
【0004】
そこで、下記特許文献1記載の「サーマルプリンタのヘッド圧接機構」では、プラテンローラーに対して圧接させたサーマルヘッドの圧接圧を、印刷時と印刷を行わない時とで切り換えており、記録用紙に印刷しない時は、圧接圧が弱圧接または無負荷状態になるように切り換えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−280017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、印字ヘッドに対してプラテンローラーを圧接させるプリンターでは、印字ヘッドとプラテンローラーとの間において圧接する側と圧接される側との関係が上記特許文献1記載の「サーマルプリンタのヘッド圧接機構」とは全く逆なので、上記特許文献1記載の「サーマルプリンタのヘッド圧接機構」を適用することはできない。また、上記特許文献1記載の「サーマルプリンタのヘッド圧接機構」では、圧接機構が複雑で、圧接動作のためのギアや、動力源が必要となり、装置が大型化する。
【0007】
従って、印字ヘッドに対してプラテンローラーを圧接させるプリンターにおいては、プラテンローラーの回転中に、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に印刷用紙(単票用紙)が無い状態になると、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に発生している摩擦力が大きくなって、大きな駆動負荷がかかるため、プラテンローラーを回転させ続けるには、その回転の駆動力となるモータを大型のものしなければならなかった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した点を鑑みてなされたものであり、印字ヘッドに対してプラテンローラーを圧接させるプリンターであって、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に単票用紙が有る状態から無い状態になっても、装置を複雑化、大型化することなく、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に発生している摩擦力の変動を抑えることを可能にしたプリンターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するためになされた請求項1に係る発明は、駆動モータと、前記駆動モータの駆動力を伝達するための一又は複数の駆動ギヤで構成された駆動ギヤ機構と、前記駆動ギヤ機構に隣接し、前記駆動ギヤを構成するいずれか一つの駆動ギヤと組み合わされたプラテンギヤと、前記プラテンギヤの回転軸であるプラテン軸と、前記プラテン軸によって軸着されたプラテンローラーと、前記プラテンローラーと向かい合う位置に配設された印字ヘッドと、前記印字ヘッドに対して前記プラテンローラーを圧接させるための圧接機構と、を有するプリンターであって、前記印字ヘッドと前記プラテンローラーとの間に挟まれた単票用紙が前記プラテンローラーの回転により搬送される方向の下流側から前記駆動ギヤ機構を前記プラテンギヤに隣接させたこと、を特徴とする。
【0010】
そのような特徴を有する請求項1に係る発明のプリンターでは、圧接機構によって、印字ヘッドに対してプラテンローラーを圧接させているので、プラテンローラーから印字ヘッドに向かった方向(以下、「圧接方向」という)の圧接圧(の力)が、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に発生している。一方、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に挟まれた単票用紙は、回転中のプラテンローラーとの摩擦により搬送されるが、その搬送方向の下流側から駆動ギヤ機構をプラテンギヤに隣接させている。そのため、駆動ギヤ機構とプラテンギヤとがかみあう部分では、上記「圧接方向」とは逆方向において、駆動モータの駆動力が駆動ギヤ機構からプラテンギヤに伝達される。
【0011】
従って、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に単票用紙が有る状態から無い状態になり、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に発生している摩擦力が大きくなると、駆動ギヤ機構にも大きな駆動負荷(の力)がかかるけれども、その大きな駆動負荷(の力)は、上記「圧接方向」とは逆方向において、駆動ギヤ機構からプラテンギヤに伝達される。そのため、プラテンギヤの回転軸であるプラテン軸によって軸着されたプラテンローラーには、上記「圧接方向」とは逆方向に戻される力が作用する。そして、上述した各力の釣り合い関係が形成され、印字ヘッドとプラテンローラーとの間で大きくなった摩擦力は一瞬にして収まり安定した状態となる。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載するプリンターであって、前記駆動ギヤ機構と前記プラテンギヤとを前記プラテンローラーの両側に配設させたこと、を特徴とする。
【0013】
そのような特徴を有する請求項2に係る発明のプリンターでは、駆動ギヤ機構とプラテンギヤとをプラテンローラーの両側に配設させたことで、プラテンローラーの回転軸としてプラテンローラーを軸着させたプラテン軸は、プラテンローラーと向かい合う位置に配設された印字ヘッドの両側で支持される。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、本発明では、印字ヘッドに対してプラテンローラーを圧接させるプリンターであって、プラテンローラーの回転中に、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に単票用紙が有る状態から無い状態になっても、装置を複雑化、大型化することなく、印字ヘッドとプラテンローラーとの間に発生している摩擦力の変動を抑えることが可能である。
【0015】
また、本発明において、駆動ギヤ機構とプラテンギヤとをプラテンローラーの両側に配設させれば、印字幅の大きな印字ヘッドであっても本発明を適用することが可能であるし、2つの各駆動ギヤ機構にかかる大きな駆動負荷(の力)を半減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンターが有するサーマル式印字ヘッドの周辺の概略を示した正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るプリンターが有するサーマル式印字ヘッドの周辺の概略を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るプリンターが有するサーマル式印字ヘッド17の周辺の概略を示した正面図である。
【0018】
本実施形態に係るプリンターは、図1に示すように、駆動モータ11と、駆動モータ11のシャフトに嵌め込まれたギヤ12と、ギヤ12にかみ合わされた駆動ギヤ機構13と、駆動ギヤ機構13にかみ合わされたプラテンギヤ14とを有している。従って、駆動モータ11の駆動力は、ギヤ12と駆動ギヤ機構13とを介して、プラテンギヤ14に伝達される。
【0019】
尚、駆動ギヤ機構13は、1個のギヤで構成されても良いし、2個以上のギヤで構成されても良い。
【0020】
さらに、本実施形態に係るプリンターは、図1に示すように、プラテンギヤ14の回転軸であるプラテン軸15と、プラテン軸15によって軸着されたプラテンローラー16と、プラテンローラー16と向かい合う位置に配設されたサーマル式印字ヘッド17とを有している。サーマル式印字ヘッド17は、取付板18に固定されている。取付板18は、搬送経路19の一部を構成する。搬送経路19上では、印刷用紙である単票用紙Sが移動する。
【0021】
さらに、本実施形態に係るプリンターは、図1に示すように、サーマル式印字ヘッド17に対してプラテンローラー16を圧接させるためのバネ20を有している。そのバネ20は、プラテン軸15を付勢しており、その付勢されたプラテン軸15は、案内部21のプレート22に設けられた案内溝23に沿って付勢方向に移動することが可能である。
【0022】
すなわち、本実施形態に係るプリンターでは、バネ20によってプラテン軸15を付勢しており、その付勢されたプラテン軸15によって軸着されたプラテンローラー16が案内溝23に沿って移動することで、プラテンローラー16がサーマル式印字ヘッド17に対して圧接している。
【0023】
つまり、バネ20やプラテン軸15や案内部21によって「圧接機構」が構成されており、その「圧接機構」によって、サーマル式印字ヘッド17に対してプラテンローラー16を圧接させている。これにより、プラテンローラー16からサーマル式印字ヘッド17に向かった下方向の圧接圧(の力)F1(とその反力F1)が、サーマル式印字ヘッド17とプラテンローラー16との間に発生している。
【0024】
一方、本実施形態に係るプリンターでは、サーマル式印字ヘッド17とプラテンローラー16との間に挟まれた単票用紙Sが、回転中のプラテンローラー16の摩擦により搬送される。プラテンローラー16の回転方向D1は、駆動ギヤ機構13とプラテンギヤ14の後述する配置関係によって、図1上では時計方向になる。そのため、単票用紙Sの搬送方向D2は、図1上では、左から右に向かっている。
【0025】
そして、本実施形態に係るプリンターでは、図1に示すように、プラテンギヤ14に対して駆動ギヤ機構13を、単票用紙Sの搬送方向D2の下流側から隣接させている配置関係を有している。図1上では、プラテンギヤ14の右側と駆動ギヤ機構13の左側とを隣接させている。そのため、駆動ギヤ機構13とプラテンギヤ14とがかみあう部分では、下方向とは逆方向である上方向において、駆動モータ11の駆動力がギヤ機構13からプラテンギヤ14に伝達される。
【0026】
従って、本実施形態に係るプリンターでは、サーマル式印字ヘッド17とプラテンローラー16との間に単票用紙Sが有る状態から無い状態になり、サーマル式印字ヘッド17とプラテンローラー16との間に発生している摩擦力L1が大きくなると、駆動ギヤ機構13にも大きな駆動負荷(の力)L2がかかる。けれども、その大きな駆動負荷(の力)L2は、下方向とは逆方向である上方向において、駆動ギヤ機構13からプラテンギヤ14に伝達され、プラテンギヤ14を上方向に押し上げる力F2となる。そのため、プラテンギヤ14の回転軸であるプラテン軸15によって軸着されたプラテンローラー16には、下方向とは逆方向である上方向に戻される力が作用する。そして、上述した各力F1,F2,L1,L2の釣り合い関係が形成され、サーマル式印字ヘッド17とプラテンローラー16との間で大きくなった摩擦力L1は一瞬にして収まり安定した状態となる。
【0027】
すなわち、本実施形態に係るプリンターは、サーマル式印字ヘッド17に対してプラテンローラー16を圧接させるプリンターであって、プラテンローラー16の回転中に、サーマル式印字ヘッド17とプラテンローラー16との間に単票用紙Sが有る状態から無い状態になっても、サーマル式印字ヘッド17とプラテンローラー16との間に発生している摩擦力L1の変動を抑えることが可能である。
【0028】
つまり、本実施形態に係るプリンターでは、サーマル式印字ヘッド17とプラテンローラー16との間に発生している摩擦力L1が大きくなると、駆動ギヤ機構13にかかる駆動負荷(の力)L2も大きくなるが、このとき、プラテンローラー16がサーマル式印字ヘッド17からリリースする方向(上方向)に動くので、それに伴って、プラテンローラー16からサーマル式印字ヘッド17に向かった下方向の圧接圧(の力)F1(とその反力F1)が低下することで、サーマル式印字ヘッド17とプラテンローラー16との間で大きくなった摩擦力L1も一瞬にして収まる。その結果、上述した各力F1,F2,L1,L2が釣り合った状態の下でプラテンローラー16が回転するので、サーマル式印字ヘッド17とプラテンローラー16との間に発生している摩擦力L1の変動は少なく、また、サーマル式印字ヘッド17とプラテンローラー16との間に単票用紙Sが挟まれた状態では、サーマル式印字ヘッド17とプラテンローラー16との間に発生している摩擦力L1が大きくなることはなく、プラテンローラー16からサーマル式印字ヘッド17に向かった下方向の圧接圧(の力)F1(とその反力F1)が低下することはないので、最適な状態で印字することが可能となる。
【0029】
これにより、駆動モータ11を駆動力が大きなものに代えなくても、プラテンローラーを回転させ続けることができるので、発熱量の増加や大型化を防ぐことができる。
【0030】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0031】
例えば、図2に示すように、駆動ギヤ機構13とプラテンギヤ14とをプラテンローラー16の両側に配設させてもよい。図2は、本発明の一実施形態に係るプリンターが有するサーマル式印字ヘッド17の周辺の概略を示した平面図である。尚、図2において、図1と同一部分には同一符号を付し、それらの構成の説明を省略する。
【0032】
すなわち、図2に示した構成を有するプリンターでは、駆動ギヤ機構13とプラテンギヤ14とをプラテンローラー16の両側に配設させたことで、プラテンローラー16の回転軸としてプラテンローラー16を軸着させたプラテン軸15が、プラテンローラー16と向かい合う位置に配設されたサーマル式印字ヘッド17の両側で支持されている。
【0033】
そのため、印字幅の大きなサーマル式印字ヘッド17であっても適用することが可能であるし、2つの各駆動ギヤ機構13にかかる大きな駆動負荷(の力)L2(図1参照)を半減させることができる。尚、図2において、駆動モータ11の向かい側に位置する駆動ギヤ機構13に対して、駆動モータ11の駆動力を伝達する構成は省略している。
【符号の説明】
【0034】
11 駆動モータ
13 駆動ギヤ機構
14 プラテンギヤ
15 プラテン軸
16 プラテンローラー
17 サーマル式印字ヘッド
20 バネ
D2 単票用紙の搬送方向
S 単票用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータと、
前記駆動モータの駆動力を伝達するための一又は複数の駆動ギヤで構成された駆動ギヤ機構と、
前記駆動ギヤ機構に隣接し、前記駆動ギヤを構成するいずれか一つの駆動ギヤと組み合わされたプラテンギヤと、
前記プラテンギヤの回転軸であるプラテン軸と、
前記プラテン軸によって軸着されたプラテンローラーと、
前記プラテンローラーと向かい合う位置に配設された印字ヘッドと、
前記印字ヘッドに対して前記プラテンローラーを圧接させるための圧接機構と、を有するプリンターであって、
前記印字ヘッドと前記プラテンローラーとの間に挟まれた単票用紙が前記プラテンローラーの回転により搬送される方向の下流側から前記駆動ギヤ機構を前記プラテンギヤに隣接させたこと、を特徴とするプリンター。
【請求項2】
請求項1に記載するプリンターであって、
前記駆動ギヤ機構と前記プラテンギヤとを前記プラテンローラーの両側に配設させたこと、を特徴とするプリンター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−206969(P2011−206969A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75404(P2010−75404)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】