説明

プリンタ及びロール体

【課題】サーマルヘッドにてインクリボンを被印字媒体に転写させることで印字を行うプリンタにおいて、印字に使用するインクリボンや被印字媒体の種類、又はインクリボン及び被印字媒体の組み合わせを考慮して良好な印字品質を得ること。
【解決手段】端部に複数のスリットを有する軸と当該軸に巻き回された帯状体とからなるロール体を回転可能に保持するロール体保持部と、前記ロール体保持部に保持された前記ロール体の軸端部を含む領域に対して光を照射して、前記光の反射光を受光するセンサ部とを備えるとともに、このセンサ部により得た受光結果から前記ロール体を識別するための識別情報を決定部が決定し、制御部が決定部により決定された前記識別情報に基づいて所定の印字条件を設定し、この所定の印字条件に基づいて前記帯状体の被印字媒体にサーマルヘッドにて印字を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プリンタ及びロール体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール状に巻き回された帯状体のインクリボンや被印字媒体を保持して被印字媒体に印字するプリンタが存在する(例えば、特許文献1)。プリンタに使用されるインクリボンや被印字媒体は、それぞれ特有の材料特性を有している。例えば、耐熱・耐摩耗性に優れたインクリボンや、紙のコシが強い又は弱い被印字媒体等、が存在する。
【0003】
優れた印字品質を得るためには、これらのインクリボンや被印字媒体の材料の特性を考慮して、印字条件(例えば、通電時間、電圧値等を変化させることでサーマルヘッドに印加する熱エネルギー)を設定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−284807公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクリボンや被印字媒体は、複数の種類が存在するため、操作者は、使用の都度、印字に使用するインクリボンの種類、被印字媒体の種類、又はインクリボン及び被印字媒体の組み合わせを考慮してサーマルヘッドに印加すべき熱エネルギー等の印字条件の設定を行わなければならず、その設定作業は煩雑であり、時間がかかるものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態にかかるプリンタは、端部に複数のスリットを有する軸に巻かれた帯状体を有するロール体を回転可能に保持するロール体保持部と、前記ロール体保持部に保持された前記ロール体の軸端部に対して光を照射し、前記光の反射光を受光するセンサ部と、前記センサ部により得た受光結果から前記ロール体を識別するための識別情報を決定する決定部と、前記決定部により決定された前記識別情報に基づいて印字条件を設定する制御部と、前記制御部にて設定された前記印字条件に基づいて前記帯状体の被印字媒体に印字する印字部と、を備えることを特徴とする。また、本発明の実施形態にかかるロール体は、上記のプリンタに用いられるロール体であって、当該ロール体は、端部に複数のスリットを有する軸と当該軸に巻かれた帯状体とを有し、前記軸の端部に設けられた複数のスリットに光を照射して得られる反射光の受光結果と前記ロール体を識別するための識別情報とが対応付けられていることを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明の実施形態にかかるプリンタは、端部に光の反射を変更する部材を設けた軸と当該軸に巻かれた帯状体とを有するロール体を回転可能に保持するロール体保持部と、前記ロール体保持部に保持された前記ロール体の軸端部に対して光を照射し、前記光の反射光を受光するセンサ部と、前記センサ部により得た受光結果から前記ロール体を識別するための識別情報を決定する決定部と、前記決定部により決定された前記識別情報に基づいて印字条件を設定する制御部と、前記制御部にて設定された前記印字条件に基づいて前記帯状体の被印字媒体に印字する印字部と、を備えることを特徴とする。また、本発明の実施形態にかかるロール体は、上記のプリンタに用いられるロール体であって、当該ロール体は、光の反射を変更する部材を端部に設けた軸と当該軸に巻かれた帯状体とを有し、前記軸の端部に設けられた前記光の反射を変更する部材に光を照射して得られる反射光の受光結果と前記ロール体を識別するための識別情報とが対応付けられていることを特徴とする、
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係るプリンタの内部構成を示す図。
【図2】本実施形態に係るプリンタの電気ブロック図。
【図3(a)】本実施形態に係るロール体(被印字媒体又はインクリボン)の外観図。
【図3(b)】本実施形態に係るロール体を構成する軸の図。
【図4】本実施形態に係るロール体を構成する軸の展開図。
【図5】本実施形態に係るロール体を構成する軸から得られる波形。
【図6】本実施形態に係る被印字媒体とインクリボンとに応じた印字条件を記憶した印字条件テーブル。
【図7】本実施形態に係るロール体(被印字媒体4)がロール体保持部に保持された状態を示す外観図。
【図8】本実施形態に係るロール体(インクリボン7)がロール体保持部に保持された状態を示す外観図。
【図9】本実施形態に係る印字条件設定のためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係るプリンタ及びロール体の一実施形態を詳細に説明する。本実施形態では、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドにて、被印字媒体であるラベル用紙にインクリボンを転写することでラベル用紙の印字面に印字を行う熱転写プリンタを例として説明を行う。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。例えば、サーマルヘッドを用いて感熱紙に印字する印字方式のプリンタなどに採用することも可能である。
【0010】
図1は、本実施形態に係るプリンタの内部構成を示す図である。同図に示すプリンタ1は、筐体2を有し、筐体2の内部は、帯状体の被印字媒体4(例えば、ラベル用紙)が軸(紙管等から形成される)に巻き回されて構成されたロール体を保持する用紙保持軸3と、帯状体のインクリボン7が巻き回されて構成されたロール体を保持するとともに当該インクリボン7を繰り出し可能に保持する供給軸8と、当該供給軸8から繰り出されたインクリボン7を巻き取る巻取軸9と、センサ部27a、27bと、搬送機構と、印字部と、を備えている。なお、用紙保持軸3及び供給軸8はロール体保持部に相当する。
【0011】
用紙保持軸3は、被印字媒体4のロール体を回転可能に保持する。また、用紙保持軸3は、被印字媒体4(例えば、ラベル用紙)を印字部であるサーマルヘッド10に送り出し可能に保持する。被印字媒体4は帯状用紙であり、例えば、台紙と当該台紙にラベルが貼り付けられて構成されるラベル用紙や台紙を有していない、いわゆるライナレスラベルである。
【0012】
用紙保持軸3から送り出された被印字媒体4(例えば、ラベル用紙)は、搬送機構により、後述する印字部に搬送される。
【0013】
搬送ローラ5およびプラテンローラ11は、モータ等(図2参照)によって回転駆動される。搬送ローラ5は、サーマルヘッド10やプラテンローラ11からみて上流側に配置されている。また、ピンチローラブロック6は、搬送ローラ5と平行な姿勢で当該搬送ローラの上方に隣接して配置されるピンチローラ(図示せず)を有している。ピンチローラは、適宜な押圧力で搬送ローラ5に向けて付勢されている。そして、搬送ローラ5とピンチローラとでラベル用紙が挟持され、搬送ローラ5の回転によって、ラベル用紙が搬送される。これら、搬送ローラ5や、プラテンローラ11、モータ、ピンチローラブロック6等が、搬送機構を構成する。図の矢印Fは、ラベル用紙が搬送される搬送方向を示す。
【0014】
インクリボン7の供給軸8は、インクリボン7のロール体を繰り出し可能に保持する。供給軸8にセットされるインクリボン7のロール体は、紙管などにより形成された軸と当該軸に巻き回された帯状体のインクリボン7とから構成される。巻取軸9がモータの駆動を受けて回転すると、供給軸8に保持されたインクリボン7のロール体から帯状体のインクリボン7が引き出される。供給軸8から引き出されたインクリボン7は、被印字媒体4と共に、後述するサーマルヘッド10とプラテンローラ11との間で挟持される。サーマルヘッド10の発熱素子が発熱することでインクリボン7のインクを溶解または昇華させて、被印字媒体4に印字が行われる。なお、インクリボン7の供給軸8はロール体保持部に相当する。
【0015】
センサ部27a、27bは、光学式のセンサであって、用紙保持軸3に取り付けられたロール体に対して光を照射し、ロール体の軸端部のスリットから反射される光を読み取る。センサ部27aはプリンタ1の筐体2に取り付けられている。または、ロール体の移動を規制する用紙ガイドに取り付けられていてもよい(図1、図8参照)。なお、センサ部27aは用紙保持軸3にロール体の軸端部に光を照射可能に埋設されて備えられる形態であってもよい。また、インクリボンの供給軸8に取り付けられたロール体に対して光を照射するセンサ27bは、ピンチローラブロック6の上部に設けられる形態や、サーマルヘッド10を有する印字部の上部にセンサ部27bが設けられている形態であってもよい。すなわち、センサ部27aは、ロール体の軸端部を読み取り可能な位置に設けられているものであればよい。センサ部27a、27bは、例えば、発光素子及び受光素子からなる反射型センサなどにより構成される。
【0016】
図2に示すように、プリンタ1の制御回路は、CPU21(Central Processing Unit)や、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、NVRAM(Non-Volatile Memory)24、通信インタフェース(I/F)25、センサ制御回路26、センサ部27a、27b、入力部コントローラ28、入力部29、出力部コントローラ30、出力部31、ヘッドドライバ32、サーマルヘッド10、モータドライバ33、フィードモータ34、リボンモータ35等を有し、これらが、アドレスバスやデータバス等のバス36を介して接続されている。また、モータドライバ33はフィードモータ34やリボンモータ35から受け取った動作状態を示すデータをCPU21に送ることが出来る。
【0017】
CPU21は、ROM22等に記憶されたコンピュータ読み取り可能な各種プログラムを実行することにより、プリンタ1の各部を制御する。CPU21は、制御部に相当する。ROM22は、例えば、CPU21が実行する各種データや各種プログラム(BIOS(Basic Input Output System)や、アプリケーションプログラム、デバイスドライバプログラム等)等を記憶する。RAM23は、CPU21が各種プログラムを実行する際に一時的にデータやプログラムを記憶する。また、NVRAM24は、例えば、OS(Operating System)や、アプリケーションプログラム、デバイスドライバプログラム等の他、電源がOFFされても保持しておきたい各種のデータを記憶する。
【0018】
また、通信インタフェース(I/F)25は、電気通信回線等を通じて接続される他の装置(例えば、ホストPC等)とのデータ通信を制御する。
【0019】
センサ制御回路26は、センサ部27と接続され、センサ部27の動作を制御する。センサ制御回路26は、CPU21からの指示に基づいてセンサ部27を制御して光を照射対象(本実施の形態では、ロール体の軸端部の領域)に向けて照射し、照射対象から反射された光を受光素子で受光するように制御する。
【0020】
出力部コントローラ30は、CPU21からの指示に基づいて画像や音声等の出力部31(例えば、ディスプレイや、発光部、スピーカ、ブザー等)を制御する。また、入力部コントローラ28は、ユーザ等の手動操作や音声等の入力部29(例えば、押しボタンや、タッチパネル、キーボード、マイク、つまみ、ディップスイッチ等)を制御する。
【0021】
ヘッドドライバ32は、CPU21からの指示に基づいてサーマルヘッド10等を制御する。
【0022】
モータドライバ33は、CPU21からの指示に基づいて例えばステッピングモータ等として構成されるフィードモータ34やリボンモータ35を制御して回転させる。
【0023】
図3(a)は、本実施の形態に用いられるロール体を示した図である。軸40、70に巻き回されている帯状体は、被印字媒体4又はインクリボン7のいずれかである。図3(b)は、本実施の形態に用いられるロール体の帯状体が巻き回される軸(以降、被印字媒体4のロール体の軸を軸40とし、インクリボンが巻き回された軸を軸70と記載する。)を示した図である。軸40,70は、例えば、紙などの材料により構成したものである。被印字媒体4のロール体は、用紙保持軸に保持され、インクリボン7のロール体は供給軸8に保持される。すなわち、これらのロール体は用紙保持部に保持される。
【0024】
図4は、紙管などから形成される軸40,70を展開した展開図である。図4に示すように軸40,70の端部には、切り欠けの形状をしたスリットが複数設けられている。この複数のスリットにて、プリアンブル部41と、スタートビット部42と、データビット部43と、パリティビット部44と、ストップビット部45とを構成する。
【0025】
プリアンブル部41は、データの初期位置検出に用いられ、信号の同期をとるためのものである。スタートビット部42は、スタートビット部42以降に続く一まとまりのデータの先頭を通知するための目印として設けられる。データビット部43は、Bit1、Bit2、Bit3、Bit4、と4ビットのデータ系列からなる。なお、ビット数は4ビットに限られるものではない。なお、図4では、1つの切り取り部分であるスリットが1ビットに相当する。
【0026】
次に、パリティビット部44は、エラー検出のために用いられるために付与されるビットである。ストップビット部45は、データの終了位置を示すビットを示すための目印として付与されるビット情報である。
【0027】
以上のように、被印字媒体4及びインクリボン7の軸の軸端部に設けられ複数のスリットは、規則性を有して形成され、各ロール体の識別情報毎に対応付けられて形成されている。
【0028】
ここで、データビット部43に相当する箇所のスリットから読み取ったビット配列情報と被印字媒体4のロール体の識別情報とは1対1にて対応付けられており、例えば、データビット部のビット配列情報が[0001]である場合、このビット配列情報[0001]に対応する被印字媒体4としてラベルAが対応付けられている。ビット配列情報[0001]は、センサ部が受光したアナログ信号をA/D変換回路(Analog to Digital Converter)にて、デジタル信号に変換することにより得られたものである。ここで、「識別情報」は、被印字媒体4の種別を特定する固有の情報であり、例えば、被印字媒体4の名称(ラベル用紙A、ラベル用紙B等)である。また、名称に限られるものではなく、属性情報(販売者名、製造者名、型番、品番、製品コード、スペック(幅、長さ、厚さ等)、製造場所、製造日等)などであってもよい。換言すると、「識別情報」は、一つのロール体と他のロール体とを識別するための情報に相当する。
【0029】
また、ロール体がインクリボン7である場合、軸70に設けられたのスリットのデータビット部43から読み取られるビット配列情報とインクリボン7の識別情報とが1対1にて対応付けられている。
【0030】
図5は、駆動部(フィードモータ34やリボンモータ35)の動力を受けて所定の回転速度にて回転する被印字媒体4やインクリボン7のロール体に対して、センサ部27a、27bが光を照射し、その反射光から得た出力信号の波形を示している。図5は、A/D変換を行って得られたデータビット部43のビット配列情報が[1111]である場合を示しており、図4の軸40、70のスリットから得られる信号波形と対応している。軸端部においてスリットが存在する箇所の反射光と存在しない箇所の反射光とでは、光の反射量が異なるため、スリットの存在の有無により得られる波形が異なる(図5参照)。
【0031】
なお、ロール体保持部に装着されたロール体は、必ずしも一定の速度で回転するわけではないため、データビット部のビット配列情報の読み取りは、以下のような形態であることが望ましい。例えば、ロール体がほぼ一定の速度で回転している場合のプリアンブル部分のビットの長さから1ビット分のビット長を求める。当該1ビット分のビット長を特定してから、データビット部に相当するビット配列情報を求める。
【0032】
記憶部は、インクリボン7と被印字媒体4との組み合わせにおいて、サーマルヘッド10に印加すべきである熱エネルギー量を印字条件テーブル61に記憶する(図6参照)。例えば、インクリボンAとラベル用紙Aとの組み合わせにおいて、印字品質が適切となるサーマルヘッド10に印加すべき最適な熱エネルギー量の値が記憶されている。なお、記憶部に記憶されているインクリボン7と被印字媒体4との組み合わせに応じた印字条件は、サーマルヘッド10に印加すべき熱エネルギー量に限られることはなく、例えば、インクリボン7と被印字媒体4毎の組み合わせにおける、適切な通電時間が記憶されているものであってもよい。なお、NVRAM24が記憶部に相当する。
【0033】
図7にて、被印字媒体4(例えば、ラベル用紙)のロール体が、用紙保持軸3に取り付けられた状態を示す。用紙保持軸3には被印字媒体4のロール体が装着されている。被印字媒体4のロール体は、スリットを有する軸端部が筐体2の壁面2aに近接するように取り付けられている。反射型センサが被印字媒体4の軸端部に光を照射し、その反射型センサが得た信号波形から識別情報を読み取る。
【0034】
用紙保持軸3には、被印字媒体4のロール体が幅方向に移動することを規制する用紙ガイド12が装着されている。また、用紙ガイド12に、センサ部27aである反射型センサが取り付けられていてもよい。この場合は、ロール体のスリットを有する軸端部は、用紙ガイド12側に位置するように取り付けられる。
【0035】
次に、図8を用いて供給軸8に取り付けられたインクリボン7のロール体の装着された状態およびセンサ部27bの位置関係を示す。供給軸8に装着されたインクリボン7は、巻取軸9のインクリボン7の巻取動作に連動してほぼ一定の速度にて回転する。センサ部27bは、供給軸8に取り付けられたインクリボン7のロール体がほぼ一定の速度で回転している間、このロール体の軸を含む領域に対して光を照射し、その反射型センサが得た信号波形から識別情報を読み取る。図8に示すセンサ部27bはピンチローラを有して構成されるピンチローラブロック6の上部に設けられている例を示している。また、供給軸8そのものに、センサ部27bである反射型センサが取り付けられる形態であってもよい。
【0036】
なお、当該センサ部27a、27bは、発光素子と受光素子とが一体として構成されていてもよいし、別体として構成されていてもよい。すなわち、軸70の端部に設けられた複数のスリットに対して光を照射することにより、識別情報を検知することが可能な部材であればよい。
【0037】
図9を用いて印字条件の設定フローについて説明する。まず、プリンタ1は、CPU21にて電源がオンされたことを検知すると、起動する(Act1)。プリンタ1は起動時の初期動作において、被印字媒体4(例えば、ラベル用紙)を強制的に搬送することにより用紙保持軸3に装着された被印字媒体4であるラベル用紙のロール体を回転させる(Act2)。モータなどに接続されたプラテンローラを回転させ、被印字媒体4を強制的に搬送させ、連動して被印字媒体4のロール体を回転させる。
【0038】
また、プリンタ1は、リボンモータ35によって、供給軸8に装着されたインクリボン7のロール体を回転させる(Act2)。詳細には、供給軸8に保持されたインクリボン7のロール体から繰り出されたインクリボン7は、サーマルヘッド10とプラテンローラとの間を経由して、巻取軸9にて巻き取られる構成となっている。このため、リボンモータ35に接続する巻取軸9を一定の速度で回転させることで、供給軸8に装着されたインクリボン7のロール体は一定の速度で回転することとなる。
【0039】
Act2において、巻取軸9が一定の速度にて回転駆動すると、供給軸8に保持されたインクリボン7のロール体は、一定の方向(ラベル用紙の搬送方向Fと同方向)に、ほぼ一定の速度にて回転する。
【0040】
インクリボン7のロール体が供給軸8を中心として、回転動作を行っている時に、センサ部27がインクリボン7のロール体の軸70端部を含んだ領域に向けて光を照射し、ロール体の軸端部に照射された光の反射光を受光する(Act3)。
【0041】
この受光結果をもとにCPU21の決定部がインクリボン7のロール体の識別情報を決定する。なお、受光結果は、図5に示すような出力信号の波形である。
【0042】
なお、被印字媒体4のロール体の識別情報の読み取りについても、上記のインクリボン7の識別情報の決定方法と同様である。すなわち、被印字媒体4を強制的に搬送することにより、用紙保持軸3に装着された被印字媒体4のロール体を回転させ(Act2)、ロール体が回転している間にセンサ部27にて識別情報の読み取りを試みる(Act3)。
【0043】
次に、CPU21の決定部は識別情報を決定できたか否かを判断する(Act4)。被印字媒体4とインクリボン7との識別情報を決定すると(Act4のYes)、この決定部により決定した識別情報を元にNVRAMの記憶部に記憶されている印字条件テーブル61(図6参照)に問い合わせを行い(Act5)。T当該印字条件テーブル61を参照してサーマルヘッド10に印加すべき熱エネルギー量を取得する(Act6)。
【0044】
なお、印字条件テーブル61には、予め、特定のインクリボン7と特定のラベル用紙との組み合わせとなった場合の最適な印字を得るためのサーマルヘッド10に印加すべき熱エネルギー量の値がそれぞれ記憶されている。当該設定値は実測値等から得られるものである。CPUが設定値に対応して、所定の通電時間や電圧値を変更することにより、設定値に対応する所定の熱エネルギーとなるようにサーマルヘッド10に与えることとなる。
【0045】
次に、CPU21は取得した被印字媒体4とインクリボン7の識別情報及びサーマルヘッド10に印加すべき熱エネルギー量をディスプレイ(図示せず)上に表示する。例えば、「インクリボン:リボンA、用紙:ラベル用紙A、サーマルヘッド10に印加すべき熱エネルギー量xxxx」と表示する(Act7)。
【0046】
ディスプレイ上に取得した識別情報、印字条件(例えば、サーマルヘッドに印加すべき熱エネルギー量)を表示させることにより、操作者に、用紙保持軸3に装着されている被印字媒体4のロール体と、インクリボン7の供給軸8に装着されているインクリボン7の識別情報を目視にて確認させることが出来る。
【0047】
ディスプレイに表示を行った後(Act7)、印字条件の設定がされ(Act8)、設定が完了すると(Act9)、CPU21は、搬送方向Fと逆方向にインクリボン7及びロール紙を巻き取る処理を行う(Act10)。Act11の処理にて、ロール体保持部に装着されたロール体の識別情報の読み取りのために強制的に搬送を行ったインクリボンまたは、被印字媒体をロール体に巻き戻すことが可能となり、インクリボンや被印字媒体の無駄にしないことができる。
【0048】
その後、印字動作開始の命令を待機する(Act11)。プリンタ1は印字動作開始の命令を受けると印字が開始される。
【0049】
一方、Act4において、識別情報を決定できなかった場合(Act4のNo)、CPU21は、リボンモータ35aとリボンモータ35bとを同期させてインクリボン7の巻取軸9と供給軸8を回転させることでインクリボン7を搬送方向とは逆向きにバックフィードさせる(Act12)。これにより、インクリボン7が無駄になることを防止することができる。
【0050】
次に、再度、CPU21は入力部を介してインクリボン7または被印字媒体4の識別情報の読み込みを行う旨の信号が入力させることを待機する(Act13)。読込みを行う旨の入力を受信すると(Act13のYes)、再度Act2に戻り、ロール体を回転動作させ、センサ部27を動作させることにより識別情報の読み取り動作を実行する(Act3)。一方、CPU21は入力部を介して、再読込みを行わない旨の信号を受信した場合(Act13のNo)、通信I/Fを介して図示しないホストコンピュータから印字条件が送信され、この印字条件を受信して設定した後(Act14)、印字動作開始を待機する(Act11)。その後、プリンタ1は印字開始命令を受信すると、記憶部に設定された設定値に対応した熱エネルギーにて被印字媒体4に対して印字を行う。
【0051】
以上、本実施の形態のプリンタ1によれば、インクリボン7又は被印字媒体4のロール体の軸端部をスリット形状とし、当該スリットの配列とロール体(被印字媒体4又はインクリボン7)の識別情報とを対応付けたロール体をロール体保持部に取り付け、ロール体を回転させ、センサ部である反射型センサが当該スリット箇所に光を照射し、その反射光を受光することで、その受光結果から、ロール体保持部に取り付けられたロール体の識別情報を得る。そして、当該識別情報を元に、予め、特定のインクリボン7と特定のラベル用紙との組み合わせにおいて、適切な印字濃度となるように設定されたサーマルヘッドに印加すべき熱エネルギーを記憶した記憶部を参照してプリンタ1に印字条件を設定することが出来ることができる。これにより、プリンタ使用の際の印字条件設定の煩わしさをなくすことができる。なお、記憶部に記憶されている印字条件はインクリボン7とラベル用紙との組み合わせに対応したものに限られるものではなく、特定の被印字媒体4を使用する場合の適切な印字濃度となるように設定されたサーマルヘッドに印加すべき熱エネルギーが記憶されていてもよい。なお、インクリボン7においても同様である。
【0052】
また、従来のプリンタにおいては、インクリボンや被印字媒体の種別に応じて、手動にて、適切な印字濃度となるようにサーマルヘッド10に印加すべき熱エネルギー量を設定していたため、設定操作時間に多くの時間を要していた。しかし、本実施の形態によれば、インクリボンや被印字媒体のロール体の識別情報が決定されると印字条件が設定されることとなるため、設定操作に要する時間を大幅に短縮することが出来る。また、設定作業に伴う煩雑な操作を行う必要がなくなるため、操作者の負担を軽減することが可能となる。
【0053】
また、インクリボンや被印字媒体の種別に応じて、印加すべき熱エネルギー量の設定を手動で行う必要がないため、操作者の入力ミスなどに起因した誤設定を予防することが出来る効果を奏する。
【0054】
また、本実施の形態のプリンタによれば、新しい被印字媒体等のロール体を用紙保持軸に取り付けてロール体端部のスリットを読取るだけで、用紙保持軸に取り付けられたロール体の識別情報を読み取り、かつ印字条件を設定することができるので、印字条件設定の手間を省くことができる効果を奏する。
【0055】
さらに、本実施の形態のプリンタによれば、センサ部27a、27bが検出した識別情報をディスプレイ等の表示部に表示する形態としたので、ロール体保持部に取り付けられているロール体の種類やプリンタに設定される印字条件を目視にて確認することができる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲での種々の変更、置換、追加等が可能である。
【0057】
本実施の形態ではロール体の軸端部に複数の切欠け形状のスリットを設け、このスリットに対し光を照射し、スリットからの反射光を受光し、この受光結果をもとにロール体の識別情報を特定している。しかし、軸端部から反射された光の程度を変更するために軸の端部に設ける部材は、スリット形状に限られるものではない。例えば、センサ部からロール体の軸端部に向けて光を照射した場合に、この軸端部から反射光の程度が異なるように白黒の模様を施したシート状の部材を軸の端部に貼り付けて構成するものであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 プリンタ
3 用紙保持軸(ロール体保持部)
4 被印字媒体
6 ピンチローラブロック
7 インクリボン
8 供給軸(ロール体保持部)
9 巻取軸
10 サーマルヘッド
11 プラテンローラ
27 センサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に複数のスリットを有する軸に巻かれた帯状体を有するロール体を回転可能に保持するロール体保持部と、
前記ロール体保持部に保持された前記ロール体の軸端部に対して光を照射し、前記光の反射光を受光するセンサ部と、
前記センサ部により得た受光結果から前記ロール体を識別するための識別情報を決定する決定部と、
前記決定部により決定された前記識別情報に基づいて印字条件を設定する制御部と、
前記制御部にて設定された前記印字条件に基づいて前記帯状体の被印字媒体に印字する印字部と、
を備えることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
光の反射を変更する部材を設けた軸と当該軸に巻かれた帯状体とを有するロール体を回転可能に保持するロール体保持部と、
前記ロール体保持部に保持された前記ロール体の軸端部に対して光を照射し、前記光の反射光を受光するセンサ部と、
前記センサ部により得た受光結果から前記ロール体を識別するための識別情報を決定する決定部と、
前記決定部により決定された前記識別情報に基づいて印字条件を設定する制御部と、
前記制御部にて設定された前記印字条件に基づいて前記帯状体の被印字媒体に印字する印字部と、
を備えることを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
前記ロール体の前記軸の端部に設けられた複数のスリットは規則性を有して形成されていることを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項4】
前記ロール体の識別情報と前記印字条件とを関連付けて記憶する記憶部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記決定部が決定した識別情報をもとに前記記憶部から前記印字条件を取得して、当該印字条件を設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のプリンタ。
【請求項5】
少なくともロール体に関する情報を表示する表示部と、をさらに備え
前記決定部により決定された前記ロール体の識別情報を表示することを特徴とする請求項4記載のプリンタ。
【請求項6】
請求項1に記載されたプリンタに用いられるロール体であって、
当該ロール体は、端部に複数のスリットを有する軸と当該軸に巻かれた帯状体とを有し、前記軸の端部に設けられた複数のスリットに光を照射して得られる反射光の受光結果と前記ロール体を識別するための識別情報とが対応付けられていることを特徴とするロール体。
【請求項7】
請求項2に記載されたプリンタに用いられるロール体であって、
当該ロール体は、光の反射を変更する部材を端部に設けた軸と当該軸に巻かれた帯状体とを有し、前記軸の端部に設けられた前記光の反射を変更する部材に光を照射して得られる反射光の受光結果と前記ロール体を識別するための識別情報とが対応付けられていることを特徴とするロール体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3(a)】
image rotate

【図3(b)】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−45741(P2012−45741A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187775(P2010−187775)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】