説明

プリンタ

【課題】 ロール状に巻かれたプリントペーパPを用いるプリンタにおいて、作業者が手や鋏で切断したプリントペーパPを使用しても、突っ掛かる等のトラブルを生じ難くするとともに、作業者のプリント後の切断作業を不要にする。
【解決手段】 プリントペーパPの幅方向に並ぶ複数のペーパ先端通過検出センサ(第2ペーパ検出センサ58)によるプリントペーパPの先端通過の検出タイミングにより、ペーパ幅方向に渡るプリントペーパP先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっているか否かを判定し、プリントペーパP先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっていないと判定したときに、カッターによりプリントペーパPの先端部を切り落とす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーパセット部にロール状に巻かれた状態でセットされた長尺状のプリントペーパをペーパセット部から引き出してプリント部へ搬送し、このプリント部でプリントペーパに対しプリントを行うようにしたプリンタに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、写真プリントシステム等に用いられるプリンタは、プリントペーパがセットされるペーパセット部と、このペーパセット部にセットされたプリントペーパを該ペーパセット部から引き出してプリント部へ搬送するための搬送路とを備えている。このプリント部では、プリントペーパに対しプリントヘッドよりインクを吐出する等してプリントが行われ、プリント部でプリントされたプリントペーパは外部へ排出される。
【0003】
上記のようなプリンタにおいては、ロール状に巻かれた長尺状ペーパが用いられており、プリントペーパがロール状に巻かれてマガジンに収容保持された状態でペーパセット部にセットされることになる。このような長尺状ペーパを用いる場合には、例えば特許文献1に示されているように、固定刃と可動刃とからなる切断手段によりプリントペーパをペーパ幅方向に真っ直ぐに切断して所定長さ(プリントサイズにより決まる長さ)にするようになっている。
【特許文献1】特開平7−40286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなプリンタにおいて、プリントペーパの先端が突っ掛かる等してペーパジャムが生じたり、プリンタが何らかの不具合により停止したりした場合には、ペーパセット部から引き出されたプリントペーパを搬送路から取り除く必要がある。このとき、作業者は、ペーパセット部(マガジン)から引き出されたプリントペーパを手や鋏で適当に切断してロール部から切り離し、ロール部から切り離されたプリントペーパは廃棄されるが、マガジンに収容されたロール部は、通常、プリンタのトラブルが解消した後に再び使用される。
【0005】
しかしながら、上記のように作業者が切断した後のプリントペーパの先端は、通常、上記切断手段により切断したときのようにペーパ幅方向に真っ直ぐに延びてはおらず、このようなプリントペーパをそのまま用いたのでは、再び突っ掛かる等のトラブルが生じる要因になるとともに、たとえトラブルが生じなくても、その先端に対応する部分を、プリンタから排出された後に作業者が手作業で丁寧に切断しなければならず、煩わしい作業が必要となる。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のようにロール状に巻かれたプリントペーパを用いるプリンタにおいて、作業者が手や鋏で切断したプリントペーパを使用しても、突っ掛かる等のトラブルを生じ難くするとともに、作業者のプリント後の切断作業を不要にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、プリントペーパの幅方向に並ぶ複数のペーパ先端通過検出センサによるプリントペーパの先端通過の検出タイミングにより、ペーパ幅方向に渡る該プリントペーパ先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっているか否かを判定し、プリントペーパ先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっていないと判定したときに、切断手段によりプリントペーパの先端部を切り落とすように構成した。
【0008】
具体的には、請求項1の発明では、長尺状のプリントペーパがロール状に巻かれた状態でセットされるペーパセット部と、該プリントペーパに対しプリントを行うプリント部と、上記ペーパセット部にセットされたプリントペーパを該ペーパセット部から引き出して上記プリント部へ搬送するための搬送路と、該搬送路の途中に設けられ、上記ペーパセット部から引き出されたプリントペーパを所定長さに切断する切断手段とを備えたプリンタを対象とする。
【0009】
そして、上記搬送路における上記切断手段の上流側又は下流側において上記ペーパセット部から引き出されたプリントペーパの幅方向に並ぶように配設され、該プリントペーパの先端が当該配設位置を通過したことを検出するための複数のペーパ先端通過検出センサと、上記複数のペーパ先端通過検出センサによる上記プリントペーパの先端通過の検出タイミングに応じて、ペーパ幅方向に渡る該プリントペーパ先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっているか否かを判定する判定手段とを備え、上記判定手段により上記プリントペーパ先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっていないと判定されたときに、上記切断手段により上記プリントペーパの先端部を切り落とすように構成されているものとする。
【0010】
上記の構成により、プリントペーパの先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっていない場合には、複数のペーパ先端通過検出センサによるプリントペーパの先端通過の検出タイミングが互いに大きくずれるため、それによって判定手段がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっていないと判定し、切断手段によりプリントペーパの先端部が切り落とされる。これによりプリントペーパの先端は、ペーパ幅方向に真っ直ぐに延びることとなる。この結果、作業者が手や鋏で切断したプリントペーパを使用しても、突っ掛かる等のトラブルが生じ難くなるとともに、作業者のプリント後の切断作業が不要になる。
【0011】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、2つの先端通過検出センサが、プリントペーパの幅方向両端部に対応する位置にそれぞれ設けられているものとする。
【0012】
このことにより、最小の数のセンサで、プリントペーパ先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっているか否かの判定を的確に行うことができ、コストアップを抑制することができる。
【0013】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、判定手段は、2つの先端通過検出センサによるプリントペーパの先端通過の検出タイミングが互いに所定時間以上ずれたときに、該プリントペーパ先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっていないと判定するように構成されているものとする。
【0014】
このことで、プリントペーパ先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっているか否かの判定を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明のプリンタによると、プリントペーパの幅方向に並ぶ複数のペーパ先端通過検出センサによるプリントペーパの先端通過の検出タイミングにより、ペーパ幅方向に渡るプリントペーパ先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっているか否かを判定し、プリントペーパ先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっていないと判定したときに、切断手段によりプリントペーパの先端部を切り落とすようにしたことにより、作業者が手や鋏で切断したプリントペーパを使用しても、突っ掛かる等のトラブルが生じ難くなるとともに、作業者のプリント後の切断作業が不要になり、作業者の利便性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタを示す。このインクジェットプリンタは、写真プリントシステムに用いられるものであって、画像データの取得及びオーダ情報の取得を行いかつ必要な補正処理等を行う受付ブロック100(図8参照)と通信ケーブルを介して接続されており、この受付ブロック100から通信ケーブルを介して伝送される画像データをオーダ情報に基づきプリントペーパPに対してプリントを行うようになされている。
【0018】
上記インクジェットプリンタは、筐体1と、この筐体1内の下部に配設されたマガジン収容部2と、筐体1内の上下方向略中央部に配設されたカセット収容部3と、筐体1内の上部に配設され、プリントペーパPに対して画像データのプリントを行うプリント部4と、プリントペーパPをマガジン収容部2からプリント部4へ搬送するための第1搬送路と、プリントペーパPをカセット収容部3からプリント部4へ搬送するための第2搬送路と、プリント部4でプリントされたプリントペーパPを該プリント部4から筐体1の外部へ排出するための第3搬送路と、筐体1の外部に設けられ、第3搬送路により筐体1の外部へ排出されたプリントペーパPを受け止める排出トレイ5とを備えている。尚、筐体前後方向は図1の左右方向であり、筐体前側は図1の右側であり、筐体後側は図1の左側である。また、筐体左右方向は図1の紙面に垂直な方向である。
【0019】
上記マガジン収容部2には、ロール状に巻かれた長尺状ペーパであるプリントペーパPがペーパマガジン8に収容保持された状態でセットされるようになっている。このプリントペーパPは、プリントされるプリント面が外側となるように巻かれている。このことで、マガジン収容部2は、長尺状のプリントペーパがプリント面を外側にしてロール状に巻かれた状態でセットされるペーパセット部を構成することになる。一方、上記カセット収容部3には、単票紙である複数枚のプリントペーパPが矩形箱状の給紙カセット9内に収容保持された状態でセットされるようになっている。この給紙カセット9内のプリントペーパPは、プリント面を上向きにして厚み方向(上下方向)に重ねられているとともに、押付け板10により、上側に位置する後述の送出しローラ35に押し付けられている。そして、マガジン収容部2又はカセット収容部3にセットされたプリントペーパPが、後述の如くプリント部4へと搬送されて該プリント部4でプリントされ、上記排出トレイ5へ排出されるようになっている。尚、マガジン収容部2には、幅寸法が小さいプリントペーパPを2つ筐体左右方向に並列にセットすることも可能になっており、このように2つ並列にセットした場合には、そのセットされた2つのプリントペーパPがマガジン収容部2から同時に引き出されて2列で搬送され、プリント部4において2つのプリントペーパPにプリントが行われ、排出トレイに同時に排出されることになる。
【0020】
上記筐体1内には、上記第1〜第3搬送路を構成すべく、第1供給ユニットU1、カッターユニットU2、第2供給ユニットU3、スイッチバックユニットU4及びプリントユニットU5が設けられている。第1搬送路は、マガジン収容部2から順に、第1供給ユニットU1、カッターユニットU2、スイッチバックユニットU4及びプリントユニットU5で構成されている。また、第2搬送路は、カセット収容部3から順に、第2供給ユニットU3、スイッチバックユニットU4及びプリントユニットU5で構成されている。さらに、第3搬送路はプリントユニットU5で構成されている。
【0021】
上記第1供給ユニットU1は、マガジン収容部2(ペーパマガジン8)内に設けられている。この第1供給ユニットU1は、ロール状のプリントペーパPを支持する3つの支持ローラ15と、プリントペーパPをカッターユニットU2へと導くガイド部材16と、このガイド部材16の途中に設けられかつプリントペーパPをカッターユニットU2へ搬送するための、駆動及び従動ローラ17a,17bからなる圧着型の供給ローラ17と、ガイド部材16の上流側に設けられ、プリントペーパPが巻き掛けられるガイドローラ18とを備えている。上記3つの支持ローラ15のうち筐体前側に配設されたローラは、不図示の電動モータによって回転駆動されて、プリントペーパPに対しロール中心回りに回転力を付与するようになっている。また、供給ローラ17の駆動ローラ17aは、カッターユニットU2に配設された電動モータ30により、伝動ベルト31及びギヤ列19を介して、同じくカッターユニットU2に配設された後述の送出しローラ25の駆動ローラ25aと共に回転駆動されるようになっている。この第1供給ユニットU1の下流側端には、第1ペーパ検出センサ20が設けられており、この第1ペーパ検出センサ20により、プリントペーパPがマガジン収容部2から全て引き出された場合の該プリントペーパPの後端が検出されるようになっている。このプリントペーパPの後端が検出された場合には、その旨をディスプレイ等を介してオペレータに知らせるようになっている。
【0022】
上記カッターユニットU2は、上下方向に延びる縦フレーム6に固定された状態で第1供給ユニットU1の筐体後側に配設されていて、プリントペーパPをスイッチバックユニットU4へ送り出す圧着型の送出しローラ25と、この送出しローラ25の下流側に配設され、プリントペーパPを切断するための、固定刃26a及び可動刃26bからなるカッター26(切断手段)と、該可動刃26bを駆動する駆動機構等が収容されたカッター駆動部27と、水平方向に延び、プリントペーパPを送出しローラ25からカッター26による切断位置へ案内するガイド部材28とを備えている。上記カッター26により、マガジン収容部2から引き出されたプリントペーパPが、受付ブロック100からのオーダ情報に基づいて予め決められた長さに切断されるようになっている。上記送出しローラ25は、プリントペーパPを挟持する1つの駆動ローラ25aと2つの従動ローラ25bとからなり、これら従動ローラ25bが1つの圧縮コイルばね29により駆動ローラ25aに押し付けられている。この駆動ローラ25aは、上述の如く、電動モータ30により、第1供給ユニットU1における供給ローラ17の駆動ローラ17aと共に、伝動ベルト31を介して回転駆動されるようになっている。そして、プリントペーパPは、送出しローラ25及びガイド部材28により水平方向で筐体後向きに移動してスイッチバックユニットU4へと送り出され、後述の如くスイッチバックユニットU4のローラ対41に受け取られて把持された後に、カッター26により切断されるようになっている。
【0023】
上記第1供給ユニットU1の支持ローラ15(電動モータによって回転駆動されるもの)及び供給ローラ17並びにカッターユニットU2の送出しローラ25は、マガジン収容部2にセットされたプリントペーパPをマガジン収容部2から引き出すことに加えて、引き出し時とは逆方向に回転することでマガジン収容部2に巻き戻すことも可能になっている。
【0024】
上記第2供給ユニットU3は、カセット収容部3にセットされた複数枚のプリントペーパP(単票紙)の最上部に位置するプリントペーパPのプリント面に当接する送出しローラ35と、この送出しローラ35を、ギヤ列37を介して駆動する電動モータ36とを備えており、送出しローラ35の駆動により、最上部に位置するプリントペーパPが1枚だけ水平方向で筐体後向きに移動してスイッチバックユニットU4へと送り出されるようになっている。
【0025】
上記スイッチバックユニットU4は、第1搬送路及び第2搬送路の途中に設けられたスイッチバック装置を構成している。このスイッチバックユニットU4は、該スイッチバックユニットU4の上流側に位置する上流側搬送路(つまり第1供給ユニットU1及びカッターユニットU2、又は第2供給ユニットU3)より搬送されてきたプリントペーパPを受け取って、該プリントペーパPを受取り時のプリントペーパ移動方向とは逆向きに、スイッチバックユニットU4の下流側に位置する下流側搬送路(つまりプリントユニットU5)に送り出すようになっている。すなわち、上流側搬送路では、プリントペーパPがプリント面を上向きにした状態で筐体後側に向かって搬送され、該上流側搬送路よりも上側位置に設けられた下流側搬送路では、プリントペーパPがプリント面を上向きにした状態で上流側搬送路とは逆向きの筐体前側に向かって搬送されるが、スイッチバックユニットU4で、プリントペーパPの進行方向が、プリント面を上向きにした状態のまま逆転され、上流側搬送路から下流側搬送路へのプリントペーパPの移行が、プリントペーパPを曲げずにスムーズに行えるようになっている。
【0026】
具体的には、スイッチバックユニットU4は、上流側搬送路より搬送されてきたプリントペーパPを受け取って把持する把持部材を備えている。本実施形態では、この把持部材は、それぞれ中心軸回りに正逆回転自在に構成されかつ互いに上下方向に対向してその間にプリントペーパPを挟持するローラ対41とされ、このローラ対41のうち一方(本実施形態では、プリントペーパPの裏面に接触するローラ)は駆動ローラ41aであり、他方(プリントペーパPのプリント面に接触するローラ)は従動ローラ41bである。そして、駆動ローラ41aは、駆動機構としての電動モータ42及び伝動ベルト43(図2及び図3参照)により、中心軸回りに正逆に回転駆動されるようになっており、この駆動ローラ41aの正転及び逆転により、上流側搬送路からのプリントペーパPの受取り及び引込みと、下流側搬送路へのプリントペーパPの送出しとをそれぞれ行うようになっている。尚、ローラ対41の両方のローラを駆動するようにしてもよく、上下で駆動及び従動の機能を逆にしてもよい。
【0027】
上記ローラ対41は、移動機構によって、カッターユニットU2、第2供給ユニットU3及びプリントユニットU5の筐体後側位置において上下方向に直線移動するようになっている。この移動機構は、図2及び図3に示すように、縦フレーム6に固定されかつ上下及び筐体左右方向に延びるレール架台45と、このレール架台45の筐体左右方向一端部に上下方向に延びるように取り付けられた走行レール46と、この走行レール46の上下両端部近傍にそれぞれ設けられた2つのプーリ47に巻き掛けられ、該走行レール46に沿って延びる駆動ベルト48と、レール架台45に取付固定されかつ下側のプーリ47に直結された電動モータ49とを備えている。この電動モータ49により駆動ベルト48が正逆駆動されるようになっている。そして、駆動ベルト48にはブラケット50が取付固定され、このブラケット50には、走行レール46と嵌合してスライドするスライド部材51が固定されており、電動モータ49による駆動ベルト48の正逆駆動により、ブラケット50が上下方向に往復移動するようになっている。尚、このブラケット50の上下位置は、ブラケット50を検出するセンサ等が設けられた基準位置(例えば最下端)からの移動量(例えばモータの回転量)を計測することで分かるようになっている。
【0028】
上記ブラケット50には、支持板52が固定され、この支持板52に上記ローラ対41における駆動ローラ41a及び従動ローラ41bの各一端部が回転可能に支持されており、このことで、ブラケット50の移動に伴ってローラ対41が上下方向に直線移動することになる。尚、図示は省略するが、駆動ローラ41a及び従動ローラ41bの各他端部は、レール架台45の筐体左右方向他端部に形成された支持部に上下方向にスライド可能に支持されている。
【0029】
上記支持板52に、上述の、駆動ローラ41aを駆動するための電動モータ42が固定されている。この電動モータ42の回転軸及び駆動ローラ41aの一端部には、プーリ54がそれぞれ固定されており、この両プーリ54に上記伝動ベルト43が巻き掛けられて、この伝動ベルト43を介して駆動ローラ41aが駆動されることになる。
【0030】
上記移動機構によって、上記ローラ対41は、上流側搬送路よりプリントペーパPを受け取る受取り位置と該受取り位置に対して上側に所定距離だけ離れた位置に設けられかつ該プリントペーパPを下流側搬送路に送り出す送出し位置との間で直線移動するようになっている。すなわち、上記カッターユニットU2の下流端と略同じ高さ位置(走行レール46の下端近傍位置)が、カッターユニットU2よりプリントペーパPを受け取る受取り位置(以下、第1受取り位置という)とされ、上記第2供給ユニットU3の下流端と略同じ高さ位置(走行レール46の上下方向略中央位置)が、第2供給ユニットU3よりプリントペーパPを受け取る受取り位置(以下、第2受取り位置という)とされている。一方、プリントユニットU5の上流端と略同じ高さ位置(走行レール46の上端近傍位置)が、プリントペーパPをプリントユニットU5に送り出す送出し位置とされている。このように上流側搬送路の下流端と下流側搬送路の上流端とが所定距離(各ユニットU1〜U5の配置により決まる値であり、出来る限り小さい値に設定される)だけ離れており、これに対応してローラ対41が移動することになる。
【0031】
そして、スイッチバックユニットU4は、第1受取り位置においてローラ対41により上流側搬送路(カッターユニットU2)よりプリントペーパPを受け取って把持した後でかつカッター26によりプリントペーパPが切断された後に、又は第2受取り位置においてローラ対41により上流側搬送路(第2供給ユニットU3)よりプリントペーパPを受け取って把持した後に、上記移動機構により、該プリントペーパPを把持したローラ対41を、該プリントペーパPが上流側搬送路から切り離された状態で送出し位置に移動させ、該送出し位置において該プリントペーパPを受取り時のプリントペーパPの移動方向とは逆向きに下流側搬送路に送り出すように構成されている。この下流側搬送路に送り出されるプリントペーパPの移動方向は、水平方向で受取り時の移動方向とは逆向き(筐体前向き)となる。
【0032】
図2に示すように、上記支持板52におけるローラ対41の筐体前後部には、ローラ対41により把持されたプリントペーパPの下側に位置して該プリントペーパPを支持する第1及び第2支持部材56,57がそれぞれ固定されている(図3では図示を省略している)。この第1支持部材56は、プリントペーパPをカッターユニットU2から水平状態でローラ対41に導く役割を有している。この第1支持部材56には、プリントペーパPを検出するための第2ペーパ検出センサ58が設けられている。
【0033】
一方、上記第2支持部材57の筐体後部には、下側に曲げられた曲げ部が形成され、この曲げ部には、押えローラ59が当接している。この押えローラ59は、支持板52に回動自在に支持されたアーム60の先端部に回動自在に取り付けられており、該押えローラ59の自重により第2支持部材57の曲げ部に当接している。そして、この第2支持部材57の曲げ部及び押えローラ59により、ローラ対41により把持されたプリントペーパPが下側に垂れて筐体1の後部内壁面に当接しないようになされている。すなわち、筐体1内におけるスイッチバックユニットU4の筐体後側(ローラ対41に対して上流側搬送路及び下流側搬送路とは反対側における該ローラ対41の移動範囲に対応する部分)には、ローラ対41により把持されるプリントペーパP用の空間スペース12が設けられているが、上記の如くプリントペーパPを下側に垂らすようにすることで、その空間スペース12の筐体前後方向(上流側搬送路の延長方向)に沿った長さを出来る限り小さくすることができる。一方、プリントペーパPを下側に垂らすことで、ローラ対41により把持されるプリントペーパP用の空間スペース12を、上記移動範囲に対応する部分の下方(第1受取り位置よりも下側)に延長する必要があるが、本実施形態では、第1搬送路に関して、スイッチバックユニットU4の上流側に位置する上流側搬送路及び第1受取り位置が、マガジン収容部2にセットされたプリントペーパPのロール中心よりも上側位置に設けられており、このことで、筐体1の高さを大きくすることなく上記空間スペース12を下方に容易に延長することができる。
【0034】
尚、図示は省略するが、上記第1及び第2支持部材56,57におけるペーパ幅方向両端部には、プリントペーパPの幅方向への移動を規制する規制部材がそれぞれ設けられており、この両規制部材は、ペーパ幅(ペーパマガジン8に設けた識別コード部を検出することでペーパ幅が分かるようになっている)に応じてその間隔を変化可能に構成されている。上述の如くプリントペーパPが2列で搬送される場合には、上記両規制部材間の中央部に更にもう1つの規制部材が搬送路上に進入して、これら3つの規制部材により2列で搬送される各プリントペーパPの幅方向への移動を規制するようになっている。
【0035】
図9に示すように、上記第2ペーパ検出センサ58は2つ設けられている。これら2つの第2ペーパ検出センサ58は、上記第1搬送路におけるカッター26の下流側において上記マガジン収容部2から引き出されたプリントペーパPの幅方向に並ぶように(本実施形態では、プリントペーパPの幅方向両端部に対応する位置に)配設されていて、プリントペーパPの先端が当該配設位置を通過したことを検出するペーパ先端通過検出センサを構成している。すなわち、第2ペーパ検出センサ58は、投光した光の反射光量を検出する反射型の光センサであって、その上側にプリントペーパPが位置すると、検出信号を後述のマイクロプロセッサ101(以下、CPUという;図8参照)に対し出力するようになっており、該検出信号の出力開始時がプリントペーパPの先端通過時となる。
【0036】
上記2つの第2ペーパ検出センサ58によるプリントペーパPの先端通過の検出タイミングは、ペーパ幅方向に渡るプリントペーパP先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっている場合(図9の二点鎖線で示すように、プリントペーパP先端は、通常、ペーパ幅方向に真っ直ぐに延びており、所定幅内に収まっている)には、所定時間よりも短いずれ時間となるが、プリントペーパP先端が所定幅内に収まっていない場合(図9の実線参照)には、検出タイミングが互いに所定時間以上ずれることになる。このように所定幅内に収まっていないのは、プリンタに何らかのトラブルが生じて、作業者が、マガジン収容部2から引き出されたプリントペーパPを搬送路から取り除くときに、該プリントペーパPを手や鋏で適当に切断してロール部から切り離したからである。
【0037】
CPU101は、上記検出タイミングが所定時間よりも短いときには、プリントペーパ先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっていると判定する一方、検出タイミングが所定時間以上であるときには、プリントペーパP先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっていないと判定するようになっている。このことで、CPU101は、2つの第2ペーパ検出センサ58によるプリントペーパPの先端通過の検出タイミングに応じて、ペーパ幅方向に渡る該プリントペーパ先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっているか否かを判定する判定手段を構成する。上記所定幅は、プリントペーパ先端がペーパ幅方向に完全に真っ直ぐに延びていなくても、その所定幅内に収まっていれば、突っ掛かり等が生じ難いとされる値、又は作業者のプリント後の切断作業を不要にできる値に設定される。そして、CPU101によりプリントペーパP先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっていないと判定されたときには、カッター26によりプリントペーパPの先端部を切り落とすようになっている。つまり、プリントペーパPにおいて検出タイミングが遅い方の第2ペーパ検出センサ58に対応する側の先端から所定量だけ後端側の部分(例えば、図9の一点鎖線で示す部分)を切断する。上記所定量は、切断後のプリントペーパP先端が確実にペーパ幅方向に真っ直ぐに延びるような値に設定される。
【0038】
本実施形態では、上記第2ペーパ検出センサ58は、工場等におけるカッター26の組付調整用にも用いられる。すなわち、カッター26は、固定刃26a及び可動刃26bがプリントペーパPの幅方向に延びるように組み付けられるが、固定刃26a及び可動刃26bが正確にプリントペーパPの幅方向に延びるように調整を行うようにしている。
【0039】
具体的には、固定刃26a及び可動刃26bの一端部が他端部に対してプリントペーパPの搬送方向に移動可能になっており、この移動により固定刃26a及び可動刃26bの延びる方向とプリントペーパPの幅方向との間の角度が変化するようになっている。そして、マガジン収容部2から引き出したプリントペーパPの先端部を切り落とした後、該プリントペーパPを、その先端が第2ペーパ検出センサ58の配設位置を通過するまで搬送して、2つの第2ペーパ検出センサ58によるプリントペーパPの先端通過の検出タイミングのずれを計測し、このずれ時間(上記角度が大きいほどずれ時間は大きくなる)に基づいて、固定刃26a及び可動刃26bの一端部の他端部に対する移動量を決定し、この決定した移動量だけ移動させることで調整を行う。
【0040】
上記プリントユニットU5は、上記縦フレーム6の上端位置において水平方向に延びる横フレーム7に固定された固定台65と、この固定台65の上下方向中間部に設けられ、プリント時にプリントペーパPを支持するプリント台66と、このプリント台66上に位置するプリントペーパPと対向し、該プリントペーパPに対しインクを吐出してプリントを行うプリントヘッド67とを備えている。このプリント台66及びプリントヘッド67が上記プリント部4を構成する。
【0041】
上記プリント台66は、プリントペーパPをファン等によりプリント台66の下側から吸引して吸着保持する構成にはなっておらず、図4に示すように、吸引用孔等を有していない。このプリント台66のペーパ幅方向(図4に示すX方向)両端部には、ペーパ搬送方向(Y方向)に延びる複数(本実施形態では、片側6つずつ)の溝66aがペーパ幅方向に所定間隔をあけて並ぶように形成されている。これら各溝66aは、種々のサイズのプリントペーパPの幅方向両端位置に対応して設けられており、各溝66a内には、上記プリントヘッド67から吐出されたインクがプリントペーパPの幅方向両端から外側に外れた場合(特に縁なしプリントを行う際に外側に外れ易い)に、該インクを吸収するためのインク吸収材68が嵌め込まれている。また、プリント台66のペーパ幅方向中央部には、後述の3つのヘッドユニット67aの各位置にそれぞれ対応して凹部66bが形成されており、この各凹部66b内には、プリントペーパPを2列で搬送してプリントする際に、プリントヘッド67の各ヘッドユニット67aより予備吐出(プリントを行う前の試し打ち)されたインクを吸収するインク吸収材69が嵌め込まれている。
【0042】
本実施形態では、上記プリントヘッド67は、図4に示すように、その底面(プリント台66と対向する面)に複数のインク吐出ノズル67bが副走査方向(ペーパ搬送方向(Y方向))に列をなすように設けられた3つのヘッドユニット67aを有しており、これら3つのヘッドユニット67aが互いに副走査方向に間隔をあけて並んでいる。尚、各ヘッドユニット67aのノズル列は、図4では1列しか記載していないが、実際には、複数色のインクにそれぞれ対応してペーパ幅方向に複数並ぶように設けられる。また、ヘッドユニット67aは3つである必要はなく、1つや2つであってもよく、4つ以上であってもよい。
【0043】
上記プリントヘッド67の上面は、該プリントヘッド67を主走査方向(図1の紙面に垂直な方向(図4に示すX方向))に往復移動させるための駆動ベルト70に取付固定されている。この駆動ベルト70は、主走査方向に延びていて、その両端部にそれぞれ配設されかつ固定台65の上部に回転自在に支持された2つのプーリ71(図1では1つのみ示す)に巻き掛けられている。この一方のプーリ71は、不図示の電動モータにより回転駆動されるようになっている。また、固定台65の上部には、駆動ベルト70に沿って主走査方向に延びるガイドレール72が取付固定されており、プリントヘッド67は、このガイドレール72に案内されながら、駆動ベルト70によって主走査方向に往復移動するようになっている。そして、プリント台66上のプリントペーパPは、プリント台66の上流側に設けられた搬送ローラ75により一定の単位搬送量で間欠的に(ステップ状に)副走査方向に搬送され、この間欠搬送時におけるプリントペーパPの各停止時に、プリントヘッド67が主走査方向に一走査(一往動作又は一復動作)されて、この走査時に、主走査方向の各位置で、各ヘッドユニット67aのインク吐出ノズル67bからインクが吐出される。つまり、プリントヘッド67の一走査後に、プリントペーパPが単位搬送量だけ搬送され、その後、再びプリントヘッド67が一走査され、この動作が繰り返し行われて、所望の画像がプリントされることになる。
【0044】
上記搬送ローラ75は、プリントユニットU5の上流側端部(つまり下流側搬送路の上流側端部であって、送出し位置に位置するローラ対41(図5参照)の近傍)に設けられており、送出し位置に位置するローラ対41により送り出されたプリントペーパPを受け取ってプリント部4へ搬送する役割を有している。この搬送ローラ75は、カッターユニットU2における送出しローラ25と同様に、プリントペーパPを挟持する1つの駆動ローラ75aと2つの従動ローラ75bとからなり、2つの従動ローラ75bが1つの圧縮コイルばね76により駆動ローラ75aに押し付けられている。この駆動ローラ75aは、電動モータ77により伝動ベルト78を介して回転駆動されるようになっている。
【0045】
上記搬送ローラ75により挟持されたプリントペーパPにおける該挟持部分の高さ位置は、上記プリント台66の上面よりも高くされており、プリントペーパPは、駆動ローラ75aに巻き掛けられながらプリント台66に対して斜め上方から進入し、プリント台66の上流側端部において該上流側端部に対して上方に隙間があくように支持された案内ローラ79によって、駆動ローラ75aに巻き掛けられた部分とは反対側に曲げられて、プリントペーパPの裏面がプリント台66の上面に略接触した状態で搬送されることになる。
【0046】
一方、プリント台66の下流側には、プリントされたプリントペーパPを筐体1の外部へ排出するための第3搬送路を構成すべく、駆動及び従動ローラ81a,81bからなる2対の圧着型の排出ローラ81が互いにペーパ搬送方向に間隔をあけて設けられている。この各排出ローラ81の駆動ローラ81aは、電動モータ82により伝動ベルト83を介して同時に駆動されるようになっている。そして、下流側の排出ローラ81の高さ位置は上流側の排出ローラ81よりも高く、下流側の排出ローラ81と上流側の排出ローラ81との間には、プリントペーパPを持ち上げて下流側の排出ローラ81へと導くガイド部材84が設けられている。
【0047】
上記のように、プリントペーパPはプリント台66の上流側及び下流側でプリント台66の上面よりも高い位置に持ち上げられているため、プリントペーパPのプリント台66上の部分は、プリント台66の上面に押し付けらるようになる。これにより、プリント台66上でのプリントペーパPの平面性が確保される。特にマガジン収容部2から搬送されてきたプリントペーパPは、上記ロールによる巻き癖によって、長さ方向中央部が両端部に対してプリント面側に突出するようにカールしているが、このようにプリントペーパPがカールしていても、プリント台66に吸着させることなく平面性を確保することができるようになる。尚、本実施形態では、後述の如く、マガジン収容部2から搬送されてきたプリントペーパPは、プリント台66に供給される前に上記カールが矯正されるので、平面性をより一層向上させることができる。
【0048】
上記排出トレイ5は、筐体1の外部における上記排出ローラ81の筐体前側に設けられていて、筐体1の前方へ突出しており、その先端部には、補助トレイ5aが格納されている。この補助トレイ5aは、排出されるプリントペーパPの長さが排出トレイ5の長さよりも長い場合に、筐体1の前方へ引き出すことで、該長いプリントペーパPを受け止めることができるようになっている。
【0049】
本実施形態では、上記スイッチバックユニットU4及びプリントユニットU5の搬送ローラ75は、マガジン収容部2から搬送されてきたプリントペーパPがカッター26により切断された後において、該プリントペーパPにおける上記ロールの巻き癖によるカールを矯正するカール矯正装置を構成している。尚、カセット収容部3から搬送されてきたプリントペーパPの場合には、通常、カールしていないので、カール矯正装置は作動しない。
【0050】
具体的には、プリントユニットU5の搬送ローラ75は、送出し位置においてスイッチバックユニットU4のローラ対41により送り出されたプリントペーパPの一端部を保持する保持部材としての役割を有し、上記ローラ対41は、搬送ローラ75により保持されたプリントペーパPの幅方向に沿ってそれぞれ延びかつ互いに対向してその間に該プリントペーパPの上記一端部近傍を把持する。すなわち、搬送ローラ75は、スイッチバックユニットU4より送り出されたプリントペーパPを受け取ってその先端部(受取り時の後端部)を挟持したときに、作動を一旦停止して、該先端部を保持するようになっている。このとき、スイッチバックユニットU4のローラ対41は、搬送ローラ75により保持されたプリントペーパPの上記先端部近傍を把持していることになる。そして、図7に示すように、上記搬送ローラ75によってプリントペーパPを保持した状態で、プリントペーパPを把持したローラ対41を、スイッチバックユニットU4の移動機構により、ローラ対41の対向方向における駆動ローラ41a側に移動させる。これにより、プリントペーパPが該ローラ対41の上側の従動ローラ41bに上記カールとは反対側に曲げられた状態で巻き掛けられかつプリントペーパPの搬送ローラ75とローラ対41との間の部分にテンションが付与される。すなわち、プリントペーパPは、上記ロールによる巻き癖によって、長さ方向中央部が両端部に対してプリント面側に突出するようにカールしているため、プリント面側のローラである従動ローラ41bに巻き掛けることで、カールとは反対側に曲げるようにする。このために、ローラ対41を、プリント面とは反対側のローラである駆動ローラ41a側(つまり下側)に移動させて、プリントペーパPを従動ローラ41bに巻き掛けるようにする。このローラ対41の移動に伴って、プリントペーパPにおけるローラ対41が把持する部分は、上記先端部近傍から後端部側へ移動する。このことで、プリントペーパPが、ローラ対41によって、カールにより突出する側(プリント面側)が内側となるように曲げられた状態でしごかれることとなり、カールが矯正されることになる。尚、搬送ローラ75は、プリントペーパPのカール矯正中は、該プリントペーパPを、搬送を停止した状態で保持するように構成されている。
【0051】
上記ローラ対41は、プリントペーパPの後端部が該ローラ対41から外れても、そのまま下方移動を続けて、次のプリントペーパPを受け取るために第1受取り位置に戻る。つまり、ローラ対41が送出し位置から第1受取り位置へ移動するときに、プリントペーパPのカールを矯正するようになっている。尚、プリントペーパPの長さが、第1受取り位置と送出し位置との間の距離よりも長い場合には、ローラ対41を第1受取り位置よりも更に下方に移動させてプリントペーパP略全体に亘ってカールの矯正を行い、その後に第1受取り位置へ戻す。このようにプリントペーパPが長くても、上記の如くプリントペーパPを下方に垂らすスペースを利用することで、筐体1を上下に大きくすることなく、プリントペーパP略全体に亘ってカールの矯正を行うようにすることができる。
【0052】
本インクジェットプリンタは、制御系として、図8に示すように、CPU101と、このCPU101とデータバスを介して接続された搬送制御部102、ヘッド制御部103、プリント制御部104、半導体メモリRAM/ROM105、通信インタフェース106、上述の第1ペーパ検出センサ20及び第2ペーパ検出センサ58とを備えている。
【0053】
上記搬送制御部102は、上記各ユニットU1〜U5夫々の動作制御を行う。ヘッド制御部103は、プリントヘッド67の動作制御を行う。通信インタフェース106は、受付ブロック100との間で情報の送受信を行うためのものである。プリント制御部104は、受付ブロック100から通信インタフェース106を介して受信した画像データに基づき、プリントペーパPに対して画像データのプリントを実現するための制御を行う。
【0054】
上記搬送制御部102の制御により、上記各ユニットU1〜U5は以下のように動作する。
【0055】
マガジン収容部2にセットされたプリントペーパPに対してプリントを行う場合には、スイッチバックユニットU4のローラ対41を第1受取り位置に位置させておく(図1参照)。そして、第1供給ユニットU1の支持ローラ15及び供給ローラ17並びにカッターユニットU2の送出しローラ25を作動させることにより、プリントペーパPをマガジン収容部2から引き出して、第1受取り位置に位置するローラ対41へと搬送する。
【0056】
やがて、プリントペーパPの先端が第2ペーパ検出センサ58の配設位置に達すると、2つの第2ペーパ検出センサ58より検出信号がそれぞれ出力されてプリントペーパPの先端通過が検出されるが、その検出タイミングが互いに所定時間以上ずれているときには、支持ローラ15、供給ローラ17及び送出しローラ25を作動を停止し、今度はペーパ引出し時とは逆方向に作動して、プリントペーパPを、カッター26により先端部を切り落とすためにマガジン収容部2方向へ巻き戻す。そして、プリントペーパPにおいて検出タイミングが遅い方の第2ペーパ検出センサ58に対応する側の先端から所定量だけ後端側の部分を切断する。これにより、プリントペーパPの先端は、ペーパ幅方向に真っ直ぐに延びることとなる。尚、切り落とされた先端部は、カッター26の下側に設けた切り屑収容部に収容される。
【0057】
上記切断後、再び支持ローラ15、供給ローラ17及び送出しローラ25が引出し方向に作動し、プリントペーパPがローラ対41へと搬送される。尚、上記検出タイミングのずれが所定時間よりも短いときには、そのまま引出し方向に作動し続けて、プリントペーパPがローラ対41へと搬送される。
【0058】
上記ローラ対41の駆動ローラ41aは、プリントペーパPの先端がいずれか一方の第2ペーパ検出センサ58により検出されたときに駆動し始めて図1及び図2で反時計回り方向に回転(正転)し、カッターユニットU2より水平方向で筐体後向きに搬送されてきたプリントペーパPを受け取って把持する。つまり、プリントペーパPを駆動ローラ41aと従動ローラ41bとの間に挟持する。駆動ローラ41aは駆動し続けて、プリントペーパPを筐体後側の空間スペース12へと引き込む。そして、プリントペーパPの先端がいずれか一方の第2ペーパ検出センサ58により検出されてから、オーダ情報に基づいて決定された量だけ搬送した後に、カッター26の可動刃26bが作動してプリントペーパPが切断される。この切断後も駆動ローラ41aは駆動し続け、切断されたプリントペーパPの後端部がローラ対41により把持されたところで停止する。この段階で、ローラ対41により把持されたプリントペーパPは、上流側搬送路には掛かっておらず、上流側搬送路から切り離された状態となる。尚、第1供給ユニットU1の支持ローラ15及び供給ローラ17並びにカッターユニットU2の送出しローラ25の作動は、プリントペーパPの切断後に停止する。
【0059】
続いて、スイッチバックユニットU4の駆動ベルト48が作動し、ローラ対41が上方に移動して送出し位置で停止する(図5参照)。これにより、プリントペーパPが上流側搬送路(カッターユニットU2)から切り離された状態で受取り位置から送出し位置に搬送される。
【0060】
その後、ローラ対41の駆動ローラ41aが図5で時計回り方向に回転(逆転)し、切断後のプリントペーパPを水平方向で筐体前向きにプリントユニットU5の搬送ローラ75へと送り出す。
【0061】
上記プリントペーパPの送出し時に、プリントペーパPの先端(受取り時の後端)が第2ペーパ検出センサ58により検出され、いずれか一方の第2ペーパ検出センサ58の検出によりプリントユニットU5の搬送ローラ75が作動を開始し、該検出からプリントペーパPが所定量(プリントペーパPの先端部が搬送ローラ75に挟持されるまでの量)だけ送り出されたところで、搬送ローラ75の作動が一旦停止する。これにより、プリントペーパPの先端部が搬送ローラ75に挟持され保持された状態となる。その後、この保持状態で、上述の如く、プリントペーパPを把持したローラ対41を下方に移動させてプリントペーパPのカールを矯正する(図7参照)。このとき、ローラ対41の駆動ローラ41aは逆転し続けていてもよく、停止させるようにしてもよい。但し、駆動ローラ41aを逆転し続ける場合には、その回転速度とローラ対41の移動速度とを、プリントペーパPにテンションが付与されるようにそれぞれ設定する必要がある。やがて、プリントペーパPの後端部がローラ対41から外れるが、ローラ対41はそのまま下方移動を続けて第1受取り位置に戻る。
【0062】
ローラ対41が第1受取り位置に戻った後、或いは第1受取り位置に戻る前でかつプリントペーパPの後端部がローラ対41から外れる位置を通り過ぎた後に、搬送ローラ75が再び作動して、カール矯正時に保持していたプリントペーパPをプリント台66へと搬送する。そして、搬送ローラ75により単位搬送量で間欠的に搬送しながら、プリントヘッド67を主走査方向に移動させて、該プリントヘッド67の各ヘッドユニット67aのインク吐出ノズル67bよりプリント台66上のプリントペーパPに対しインクを吐出することでプリントを行う。
【0063】
上記プリントされたプリントペーパPは、排出ローラ81によって、プリント面を上向きにして筐体1の外部へ排出されて、排出トレイ5によって受け止められる。
【0064】
こうして、マガジン収容部2から引き出されたプリントペーパPはカッター26により順次切断されて、この切断されたプリントペーパPが、プリント部4へ順次搬送され、プリント部4で順次プリントされた後、筐体1の外部へ排出されて、排出トレイ5上に重ねられる。
【0065】
一方、カセット収容部3にセットされたプリントペーパPに対してプリントを行う場合には、スイッチバックユニットU4のローラ対41を第2受取り位置に位置させておく(図6参照)。そして、第2供給ユニットU3の送出しローラ35の作動により、プリントペーパPをカセット収容部2から引き出して、第2受取り位置に位置するローラ対41へと搬送する。
【0066】
続いて、マガジン収容部2から引き出されたプリントペーパPと同様に、ローラ対41がプリントペーパPの後端部を把持した後、上方に移動して送出し位置で停止する。これにより、プリントペーパPが上流側搬送路(第2供給ユニットU3)から切り離された状態で受取り位置から送出し位置に搬送される。その後、ローラ対41の駆動ローラ41aが逆転して、プリントペーパPを受取り時の移動方向とは逆向きにプリントユニットU5の搬送ローラ75へと送り出す。
【0067】
上記プリントペーパPの搬送ローラ75への送出し時に、プリントペーパPの先端が第2ペーパ検出センサ58により検出され、いずれか一方の第2ペーパ検出センサ58の検出によりプリントユニットU5の搬送ローラ75が作動を開始する。カセット収容部3にセットされたプリントペーパPの場合には、カール矯正を行う必要がないので、搬送ローラ75は停止することなく作動し続けて、スイッチバックユニットU4より送り出されたプリントペーパPを受け取って、そのままプリント台66へと搬送する。尚、スイッチバックユニットU4のローラ対41は、いずれか一方の第2ペーパ検出センサ58によりプリントペーパPの後端が検出された後に、下方に移動して第2受取り位置へ戻る。
【0068】
次いで、マガジン収容部2から引き出されたプリントペーパPと同様に、プリントペーパPを搬送ローラ75により単位搬送量で間欠的に搬送しながら、プリントヘッド67を主走査方向に移動させてプリントを行う。このプリントされたプリントペーパPは、排出ローラ81によって、プリント面を上向きにして筐体1の外部へ排出されて、排出トレイ5によって受け止められる。
【0069】
したがって、上記実施形態では、CPU101によりプリントペーパP先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっていないと判定されたときに、カッター26によりプリントペーパPの先端部を切り落とすようにしたので、作業者が手や鋏で切断したプリントペーパPを使用しても、突っ掛かる等のトラブルが生じ難くなるとともに、作業者のプリント後の切断作業が不要になり、作業者の利便性を向上させることができる。
【0070】
尚、上記実施形態では、2つの第2ペーパ検出センサ58をプリントペーパPの幅方向両端部に対応する位置にそれぞれ設けたが、3つ以上の第2ペーパ検出センサ58をプリントペーパPの幅方向に並ぶように配設してもよい。こうすれば、プリントペーパPの先端形状がより正確に把握できるようになって、プリントペーパPの切り落とす量を少なくすることができる。但し、作業者が手や鋏で切断したときの先端形状はある程度推定することができるので、2つの第2ペーパ検出センサ58だけでも、プリントペーパP先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっているか否かの判定を的確に行うことができ、コストアップを抑制することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、カッター26の下流側に位置する第2ペーパ検出センサ58をペーパ先端通過検出センサとして用いたが、カッター26の上流側に位置する第1ペーパ検出センサ20をペーパ先端通過検出センサとして用いてもよい。こうすれば、プリントペーパPを、先端部を切り落とすために巻き戻す必要はなくなる。また、これら第1及び第2ペーパ検出センサ20,58とは別個にペーパ先端通過検出センサを設けてもよい。
【0072】
さらに、上記実施形態では、マガジン収容部2及びカセット収容部3の両方を設けるようにしたが、マガジン収容部2のみを設けるようにしてもよい。
【0073】
さらにまた、上記実施形態では、本発明のプリンタを、写真プリントシステムに用いられるインクジェットプリンタに適用したが、長尺状のプリントペーパPがロール状に巻かれた状態でセットされるペーパセット部から、該プリントペーパPを引き出してプリント部4へ搬送するようにしたプリンタであれば、本発明はどのようなものにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、ペーパセット部にロール状に巻かれた状態でセットされたプリントペーパを該ペーパセット部から引き出してプリント部へ搬送するようにしたプリンタに有用であり、特に写真プリントシステムに用いられるインクジェットプリンタ等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの構成を示す、筐体側方から見た概略図である。
【図2】スイッチバックユニットの構成を示す、筐体側方から見た図である。
【図3】スイッチバックユニットの要部を示す、筐体後方から見た図である。
【図4】プリント台を示す平面図である。
【図5】スイッチバックユニットのローラ対が送出し位置に位置するときの状態を示す図1相当図である。
【図6】スイッチバックユニットのローラ対が第2受取り位置に位置するときの状態を示す図1相当図である。
【図7】プリントペーパのカールを矯正している状態を示す図1相当図である。
【図8】制御系の構成を示すブロック図である。
【図9】2つの第2ペーパ検出センサとプリントペーパとのペーパ幅方向の位置関係を示す平面図である。
【符号の説明】
【0076】
P プリントペーパ
2 マガジン収容部(ペーパセット部)
4 プリント部
26 カッター(切断手段)
58 第2ペーパ検出センサ(ペーパ先端通過検出センサ)
101 マイクロプロセッサ(判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のプリントペーパがロール状に巻かれた状態でセットされるペーパセット部と、該プリントペーパに対しプリントを行うプリント部と、上記ペーパセット部にセットされたプリントペーパを該ペーパセット部から引き出して上記プリント部へ搬送するための搬送路と、該搬送路の途中に設けられ、上記ペーパセット部から引き出されたプリントペーパを所定長さに切断する切断手段とを備えたプリンタであって、
上記搬送路における上記切断手段の上流側又は下流側において上記ペーパセット部から引き出されたプリントペーパの幅方向に並ぶように配設され、該プリントペーパの先端が当該配設位置を通過したことを検出するための複数のペーパ先端通過検出センサと、
上記複数のペーパ先端通過検出センサによる上記プリントペーパの先端通過の検出タイミングに応じて、ペーパ幅方向に渡る該プリントペーパ先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっているか否かを判定する判定手段とを備え、
上記判定手段により上記プリントペーパ先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっていないと判定されたときに、上記切断手段により上記プリントペーパの先端部を切り落とすように構成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1記載のプリンタにおいて、
2つの先端通過検出センサが、プリントペーパの幅方向両端部に対応する位置にそれぞれ設けられていることを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項2記載のプリンタにおいて、
判定手段は、2つの先端通過検出センサによるプリントペーパの先端通過の検出タイミングが互いに所定時間以上ずれたときに、該プリントペーパ先端がペーパ引出し方向の所定幅内に収まっていないと判定するように構成されていることを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−181834(P2006−181834A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377009(P2004−377009)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】