説明

プリンタ

【課題】印字ヘッドにより所定の印字ライン上に印字する印字作動と、前記印字ラインと直交する方向へ用紙を送る用紙送り作動とを行うプリンタにおいて、わずかな印字精度の誤差についても容易に調整することのできるようにする。
【解決手段】前記用紙送り作動の周期を設定するタイマ11と、テスト印字による印字ライン間ピッチの実測値を入力する入力手段13とを設け、該入力手段によって入力された実測値と予め定められている基準値とに基づき前記タイマ11の設定周期を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドットで印字するプリンタにおける用紙送りの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品等の商品に貼付するラベルの印字項目数が増えつつあり、罫線や項目名が事前に印刷されたラベルを使用することが多くなってきている。このようなラベルに必要事項を印字する場合、罫線等の事前印刷物に掛からず狭い印字スペース内に綺麗に印字するには高度な印字精度が要求される。また、店舗におけるラベル発行の形態が、中央管理部で統括的に発行する形態から、各部門ごとに発行する形態へと変わってきている。後者の場合、部門ごとにラベルの印字精度が異なると、客に与える印象がよくない。しかしながら、現実には、各部門で同じ機種のプリンタを同じフォーマットで使用していても、プリンタの固体差により印字精度が異なってしまうことがある。
【0003】
プリンタの印字精度を調整する技術として、「プリンタ本体に対して着脱自在なサーマルヘッドと、このサーマルヘッドによる印字周期を設定する印字周期設定タイマと、紙送り機構と、この紙送り機構による用紙の送り周期を設定する紙送り周期設定タイマと、この紙送り周期設定タイマにより設定された周期で紙送りされる用紙に対して印字周期設定タイマにより設定された周期でサーマルヘッドにより印字データの印字を行う印字制御手段と、印字周期設定タイマおよび紙送り周期設定タイマの少なくとも一方の設定周期を変更する周期変更手段とを設け、サーマルヘッドのドット密度に応じて周期変更手段により印字周期および紙送り周期の少なくとも一方を変更することにより、各種サーマルヘッドに対して90度回転したバーコードや文字等を回転前のものと同一形状で印字できるようにした」技術が知られている。
【特許文献1】特許第2537553公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術は、「ドット密度の異なるサーマルヘッドの使用に対して紙送り機構をサーマルヘッドのドット密度に合わせて変更することなく対処」できるようにすることを目的としており、プリンタの個体差を補正するような微妙な印字精度の調整をすることはできなかった。このように、プリンタの個体差によって用紙を一定量送り出しても、実際の用紙送り量がプリンタごとにばらつくことになると、用紙に印字された文字等の用紙上の位置が変わることになり、例えば、事前に印刷された罫線等との相対的な位置ずれが個体ごとに異なるという問題があった。特に、複数台を導入したときに問題となる。
【0005】
印字精度の個体差の最大要因は、用紙を送るプラテンローラ個々の直径差にある。このプラテンローラの直径差は、主に製造時の加工誤差と磨耗による経年変化とによって生じる。本発明は、このようなプラテンローラの直径差により生じうる比較的小さな印字精度の誤差についても容易に調整することのできるプリンタを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次の構成とした。すなわち、本発明にかかるプリンタは、印字ヘッドにより所定の印字ライン上に印字する印字作動と、前記印字ラインと直交する方向へ用紙を送る用紙送り作動とを行うプリンタであって、前記用紙送り作動の周期を設定するタイマと、テスト印字による印字ライン間ピッチの実測値を入力する入力手段とを設け、該入力手段によって入力された実測値と予め定められている基準値とに基づき前記タイマの設定周期を補正するように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、印字作動と用紙送り作動とを同期させずに、用紙送り作動の周期だけを補正することにより、用紙送り方向の印字位置を調整することが可能となる。また、その用紙送り作動周期の補正方法として、テスト印字による印字ライン間ピッチの実測値と予め定められている印字ライン間ピッチの基準値とを比較して、適正な用紙送り作動の周期となるよう補正する方法を採用しているので、プラテンローラの直径差によるわずかな印字精度の誤差も調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
印字ヘッドのドット密度に対応する印字精度の補正と、プラテンローラの加工精度及びプラテンローラの経年変化に対応する印字精度の補正とを併せて行う。
【実施例1】
【0009】
図1は本発明のプリンタの基本構成を示すブロック図である。このプリンタ1は、所定の印字ライン上に印字する印字ヘッド2と、前記印字ラインと直交する方向へ用紙を送る用紙送りモータ3とを備え、ROM4に格納されている制御プログラム、及びRAM5に格納されている印字データに基づき、CPU6から印字ヘッド駆動用ドライバ7及び用紙送りモータ駆動用ドライバ8に出力して、前記印字ヘッド2及び用紙送りモータ3を作動させるようになっている。ドライバ7,8の駆動周期は、クロック9が一定周期ごとに発振するクロック信号を基準にして、デジタルカウンタ式の印字タイマ10及び用紙送りタイマ11で設定されている。CPU6は外部のホストコンピュータ12に接続されており、そのホストコンピュータ12のキーボード13で入力された印字データがRAM5に一時的に格納される。
【0010】
上記プリンタ1は図2のフローチャートに示す順序で動作する。すなわち、プリンタ1を起動させると、まず各種データを読み込み(S1)、印字タイマ10及び用紙送りタイマ11のカウントを開始する(S2)。そして、用紙送りタイマ11がカウントアップして用紙送り周期になると(S3)、用紙送りタイマ11のカウントをリセットし(S4)、用紙送り作動を実行する(S5)。それと同時に、用紙送りタイマ11のカウントを開始する(S2)。また、用紙送りタイマ11がカウントアップする前に印字タイマ10がカウントアップして印字周期になると(S6)、印字タイマ10をリセットして(S7)、印字作動を実行する(S8)。それと同時に、印字タイマ10のカウントを開始する(S2)。このように用紙送り作動と印字作動を行うことにより、複数の印字ラインに順に印字が行われる。
【0011】
上記の構成においてドット密度の異なる印字ヘッドに交換する場合は、ホストコンピュータ12のキーボード13による入力で、用紙送りタイマ11の設定値を変更する。例えば、印字ヘッドのドット密度が1/2になるのならば、用紙送りタイマ11の設定値を2倍にして、2倍の時間をかけて印字するようにする。こうすることにより、印字ヘッドの交換前も交換後も、1印字ライン当たりのドット数が同じになり、同精度で印字される。
【0012】
また、プリンタの個体差による印字精度の誤差を補正する場合、次の方法で用紙送りタイマ11の設定値を調整する。なお、印字精度に個体差が生じることの最大の要因はプラテンローラの直径誤差であるので、下記のホストコンピュータの画面上では用紙送りの調整のことを「プラテン調整」と表示している。
【0013】
まず、ホストコンピュータ12で「プラテン調整」を選択すると、ディスプレイ14に図3に示す画面が表示される。画面の指示に従い、用紙送りの方向の長さが所定寸法(例えば80mm)のラベルをプリンタ1に装填して「テスト発行(F9)」を実行すると、画面中のフレーム20に表示されているテストパターンが印字される。その印字されたテストパターンの長さを実測し、その実測値L(例えば69.8mm)を入力手段であるキーボード13で打ち込む。打ち込んだ値は実測値表示欄21に表示される。実測値表示欄21には基準値A(例えば70mm)が表示されている。Aは7段分の印字ライン間距離であり、図示例では1印字ライン間ピッチの基準値が10mmである。
【0014】
次いで、「自動計算(F8)」を実行すると、前記実測値Lと予め定められている基準値Aとを比較し、それに基づき用紙送りタイマ11の設定周期が補正される。すなわち、補正値SがS=(A−L)/Aとして求められ、補正値Sがプリンタ制御部へ送信され、用紙送りタイマ11のテーブル値を補正値Sで計算し再セットされる。理論値の周期Tに対して補正後の周期T´がT´=T×(1+S)とされる。この補正比率はプラテン調整値表示欄22に表示される。この場合のプラテン調整値表示欄22には「0.28」%と表示されている。
【0015】
用紙送りタイマ11の補正後の設定周期T´において、プラテンローラの直径が標準より小さい時は、補正値Sが正になり周期が長くなって1ステップの送りをより短いピッチで送り出し、プラテンローラの直径が標準より大きい時は、補正値Sが負になり周期が短くなってより長いピッチで送り出すように制御される。
【0016】
上記のように用紙送りタイマの周期設定を行う場合、実際のクロック信号はきわめて短い周期で発振されているので、用紙送りタイマ11の設定周期を微細に補正することができ、加工誤差や経年変化によるプラテンローラの直径差、用紙の滑り等に起因するわずかな誤差にも対応することが可能となり、プリンタの個体差による補正を可能にして微妙な印字精度の調整を行うことが出来るようになる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、用紙送り作動の周期を設定するタイマの設定値を補正することで印字精度の調整を行うようにしているが、印字作動の周期を設定するタイマの設定値を補正することで印字精度の調整を行うようにすることも可能である。また、実施例では、テスト印字による印字ライン間ピッチの実測値を入力する入力手段として外部に設けられたホストコンピュータのキーボードを利用しているが、入力手段をプリンタに一体化した構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プリンタの基本構成を示すブロック図である。
【図2】印字作動及び用紙送り作動の制御のフローチャートである。
【図3】用紙送りタイマの設定値を調整する画面の図である。
【符号の説明】
【0019】
1 プリンタ
2 印字ヘッド
3 用紙送りモータ
6 CPU
10 印字タイマ
11 用紙送りタイマ
12 ホストコンピュータ
13 キーボード(入力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドにより所定の印字ライン上に印字する印字作動と、前記印字ラインと直交する方向へ用紙を送る用紙送り作動とを行うプリンタであって、前記用紙送り作動の周期を設定するタイマと、テスト印字による印字ライン間ピッチの実測値を入力する入力手段とを設け、該入力手段によって入力された実測値と予め定められている基準値とに基づき前記タイマの設定周期を補正するように構成したことを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−305913(P2006−305913A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132423(P2005−132423)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】