説明

プリンタ

【課題】ユーザにとっての利用価値の向上を図ることが可能なプリンタを提供する。
【解決手段】プリンタ1は、長尺状のシール紙51を搬送するための搬送機構と、サーマルヘッド2と、制御装置101と、切断機構9とを備える。サーマルヘッドは、インクリボンに付着されたインクおよび透明保護材をシール紙51の印刷面に熱転写する。制御装置101はシール紙51の印刷領域にインクおよび透明保護材が熱転写されるよう搬送機構を制御するとともに、その印刷領域がサーマルヘッド2よりも搬送方向の下流側に搬送されるように、搬送機構を制御する。切断機構9は、搬送方向と直交する方向にシール紙51を切断する。シール紙51には搬送方向に沿ってミシン目が形成される。これにより、ユーザはプリンタ1から出力されたシール紙(プリント)を、上記搬送方向に沿って容易に小分けすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリンタに関し、特に、インクリボンに予め付着されたインクおよび透明保護材を印刷媒体の印刷面に熱転写するプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクリボンに予め付着されたインクを印刷媒体に熱転写することによって印刷を行なうプリンタが知られている。このようなプリンタは一般に昇華型プリンタと呼ばれる。
【0003】
たとえば特開2008−30308号公報(特許文献1)は、用紙ロールからプリント用紙を引き出して画像をプリントする昇華型プリンタを開示する。このプリンタは、画像がプリントされたプリント用紙の部分を、カッタにより切断する機構を備える。
【0004】
また、たとえば特開2008−229907号公報(特許文献2)は、インクリボンに予め付着されたインクおよび透明保護材を順次印刷媒体に順次熱転写することによって、印刷媒体に形成された画像を透明保護パターンにより被覆するサーマルプリンタを開示する。このように、印刷用紙に形成された画像を透明保護パターンで被覆することにより、たとえば形成された画像の色の劣化を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−30308号公報
【特許文献2】特開2008−229907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2008−30308号公報に開示される昇華型プリンタでは、印刷済みのプリント用紙をロール紙から切り離すために、ロール紙の搬送方向と直交する方向にプリント用紙が切断される。したがって、ユーザがプリンタから出力されたプリント(印刷物)をロール紙の搬送方向に沿って切断する場合には、たとえばハサミ、カッタ等の道具が必要になると考えられる。
【0007】
しかしながら多くの場合、道具を用いてプリントを切断することはユーザにとって手間となる。プリンタの利用価値の向上を図るためには、このような手間が生じる機会を少なくすることが好ましい。
【0008】
本発明の目的は、ユーザにとっての利用価値の向上を図ることが可能なプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は要約すれば、インクリボンに予め付着されたインクおよび透明保護材を、搬送方向に沿ってミシン目が形成されたシール状の印刷媒体の印刷面に熱転写するプリンタである。プリンタは、長尺状の印刷媒体を搬送するための搬送機構と、サーマルヘッドと、搬送制御回路と、転写制御回路と、切断機構とを備える。サーマルヘッドは、印刷媒体の搬送方向と直交する方向に沿って配列された複数の発熱体を含み、かつ、インクリボンに付着されたインクおよび透明保護材を印刷媒体の印刷面に熱転写する。搬送制御回路は、サーマルヘッドによってインクおよび透明保護材が印刷面の印刷領域に熱転写され、さらに、インクおよび透明保護材が印刷領域に転写された後では、印刷領域がサーマルヘッドよりも搬送方向の下流側に搬送されるように、搬送機構を制御する。転写制御回路は、インクリボンに付着されたインクの熱転写によって、印刷領域内に画像が形成され、さらにインクリボンに付着された透明保護材の熱転写によって、印刷領域が透明保護材で覆われるように、サーマルヘッドを制御する。切断機構は、搬送方向に対してサーマルヘッドよりも下流側に配置され、複数の発熱体の配列方向に沿って前記印刷媒体を切断する。
【0010】
上記構成によれば、ミシン目が形成されたシール状の印刷媒体の印刷領域に画像が転写され、次にその印刷領域が透明保護材に覆われる。透明保護パターンにより覆われた印刷領域は切断機構により印刷媒体から切断される。切断された印刷媒体(プリント)には、印刷媒体の搬送方向(すなわちプリンタによる印刷媒体の切断方向と直交する方向)にミシン目が形成されているので、ユーザは、そのミシン目に沿ってプリントを分離することができる。これにより、ユーザが印刷媒体の切断方向とは直交する方向にプリントを切断する際に、ハサミなどの道具を使う機会を少なくすることができる。したがって、上記構成によれば、ユーザにとっての利用価値を高めることが可能なプリンタを実現できる。
【0011】
好ましくは、転写制御回路は、インクリボンから印刷領域に透明保護材が熱転写されるときに、印刷領域のうちミシン目が含まれる所定の範囲では透明保護材が熱転写されない一方、印刷領域のうち所定の範囲を除く残余の範囲では透明保護材が熱転写されるように、複数の発熱体の発熱状態を制御する。
【0012】
上記構成によれば、ミシン目が含まれる所定の範囲において透明保護材が熱転写されないので、ミシン目上に透明保護材を熱転写した場合の問題(たとえば転写不足の部分が粉状のゴミとなって印刷面に付着する問題)を回避できる可能性を高めることができる。
【0013】
好ましくは、転写制御回路は、さらに、インクリボンから印刷領域にインクが熱転写されるときに、所定の範囲ではインクが熱転写されないように、複数の発熱体の発熱状態を制御する。
【0014】
上記構成によれば、ミシン目が含まれる所定の範囲においてインクが熱転写されないので、ミシン目上にインクを熱転写した場合の問題(たとえば転写不足の部分が粉状のゴミとなって印刷面に付着する問題)を回避できる可能性を高めることができる。
【0015】
好ましくは、印刷媒体は、台紙と、台紙から剥離可能に貼付されたシール紙本体とを含む。ミシン目は、搬送方向に沿って配置された複数の孔によって構成される。複数の孔の各々は、印刷媒体の印刷面とは反対側に位置する台紙の裏面から印刷面への向きに向かうにつれて、搬送方向に沿った幅が小さくなり、かつ少なくとも台紙を貫通するよう形成される。台紙の裏面における複数の孔の各々の搬送方向の幅は、0.55mmである。台紙の裏面における複数の孔の間隔は、0.15mmである。
【0016】
上記構成によれば、ミシン目に沿ってユーザがプリントを分割する際に、少ない回数の動作(たとえば1度の山折り)によって、プリントを分割することができる。
【0017】
好ましくは、切断機構は、複数の発熱体の配列方向における印刷媒体の一方端を基準とした、印刷媒体の切断長を調整可能に構成される。プリンタは、切断機構を制御することによって切断長を制御するための切断制御回路をさらに備える。
【0018】
上記構成によれば、切断制御回路が切断機構による印刷媒体の切断長を制御することで、たとえば、印刷媒体の一方端からミシン目までを切断することができる。これによりユーザの要望に対応したサイズでユーザが切り分け可能なプリントをプリンタから出力させることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ユーザにとっての利用価値を高めることが可能なプリンタを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタの一例を示す概略構成図である。
【図2】インクリボンの平面図である。
【図3】サーマルヘッドの構成を説明するための図である。
【図4】制御装置の構成を説明するための機能ブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るプリンタが備える切断機構の構成例を示した図である。
【図6】シール紙の一部を示す平面図である。
【図7】図6のVII−VII方向の断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII方向の断面図である。
【図9】プリンタがシール紙から印刷領域を切り離すときの切断位置を説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るシール紙を用いた印刷を説明する図である。
【図11】プリントをミシン目に沿って折り曲げたときに生じうる問題の一例を説明するための図である。
【図12】本発明の実施の形態に係るプリントを山折りした場合の状態を説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態による、印刷領域へのインク層およびラミネート層の熱転写を説明する平面図である。
【図14】図13のXIV−XIV方向の断面図である。
【図15】ミシン目上にラミネート層を転写した場合に生じ得る課題を説明するための図である。
【図16】本発明の実施の形態による効果を説明するための図である。
【図17】本発明の実施の形態に係るプリンタの処理を説明するためのフローチャートである。
【図18】本発明の実施の形態に従うプリンタおよびシール紙を用いることで得られるプリントの応用例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0022】
[プリンタの構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るプリンタの一例を示す概略構成図である。図1を参照して、本発明の実施の形態に係るプリンタ1は、サーマルヘッド2と、プラテンローラ3と、剥離プレート4と、一対の給紙ローラ5と、インクリボン供給ローラ6aと、インクリボン回収ローラ6bと、ガイドローラ7a,7bと、一対の排紙ローラ8と、カッタ9aおよびカッタ台9bを含む切断機構9と、制御装置101とを備える。
【0023】
本発明の実施の形態では、プリンタ1は印刷媒体としてシール紙を印刷可能である。印刷媒体であるシール紙51は長尺状のものであり、ロール紙50から引き出されてプリンタ1に供給される。一対の給紙ローラ5は、ロール紙50から引き出された長尺状のシール紙51を挟持する。さらに一対の給紙ローラ5は、図示しないモータに駆動されることによって、図中の矢印Aの向きにシール紙51を搬送する。給紙ローラ5により搬送されたシール紙51は、サーマルヘッド2とプラテンローラ3との間を通過する。
【0024】
インクリボン供給ローラ6aは、未使用のインクリボン10をサーマルヘッド2に供給するためのものである。未使用のインクリボン10は巻かれた状態でインクリボン供給ローラ6aに取り付けられる。インクリボン回収ローラ6bは、図示しないモータに駆動されることによって、使用済みのインクリボン10を巻き取る。インクリボン回収ローラ6bがインクリボン10を巻き取ることにより、インクリボン10がサーマルヘッド2とプラテンローラ3との間を通過し、かつ図中の矢印Bの向きに搬送される。ガイドローラ7aは、インクリボン10がサーマルヘッド2とプラテンローラ3との間を通過するようにインクリボン10を案内するためのものである。
【0025】
サーマルヘッド2とプラテンローラ3との間において、インクリボン10はシール紙51に密着する。さらに、インクリボン10およびシール紙51は互いに密着した状態でサーマルヘッド2とプラテンローラとによって挟持される。後述するように、サーマルヘッド2がインクリボン10に熱を与えることによって、インクリボン10に予め付着されたインクが転写されてシール紙51の印刷面に画像が形成される。なお、本明細書では、「画像」との用語を、絵、写真、文字等を包括する名称として用いる。
【0026】
インクリボン10は、サーマルヘッド2とプラテンローラ3との間を通過した後に、剥離プレート4の端部と接触する。これにより、インクリボン10の搬送方向が変化する。ガイドローラ7bは、剥離プレート4とインクリボン回収ローラ6bとの間に存在するインクリボン10に一定の張力を与える。インクリボン10に作用する張力によって、シール紙51の印刷面に密着していたインクリボン10がシール紙51から剥離される。
【0027】
排紙ローラ8はサーマルヘッド2により画像が形成されたシール紙51を挟持する。なお本発明の実施の形態では、少なくとも、給紙ローラ5、および給紙ローラ5を駆動するモータによって、本発明の「搬送機構」が構成される。
【0028】
切断機構9は、シール紙51の搬送方向におけるサーマルヘッド2の下流側に配置される。切断機構9は、シール紙51の搬送方向に直交する方向(この方向は図1の紙面を垂直に貫く方向に対応する)に沿ってシール紙51を切断する。
【0029】
本発明の実施の形態では、切断機構9は、シール紙51の一方端からの切断長を調整可能に構成される。これにより、シール紙51の途中まで切断したり、画像が印刷された部分であるプリント(印刷物)をシール紙51から切り離したりすることができる。
【0030】
図2は、インクリボンの平面図である。図2を参照して、インクリボン10は、耐熱性を有する長尺フィルム状の基材10a上に3つのインク層(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C))と、ラミネート層(透明保護材(OP))とがインクリボン10の供給方向(すなわち矢印Bに示す方向)とは逆の方向に順に付着されることにより形成される。インクリボン10がその供給方向に搬送されることによって、インク層Y,M,Cおよびラミネート層OPがこの順でサーマルヘッド2とプラテンローラ3との間の領域に到達する。
【0031】
なお、各層の間に、たとえばその層に対応するプリントサイズを表わすための黒色のマークを付すとともに、プリンタ1に、そのマークを読み取るための読取装置と、その読取装置が読み取った情報に基づいて、その層を用いて印刷されるプリントのサイズを判別する判別手段を設けてもよい。これにより、インクリボンに複数のプリントサイズのそれぞれに対応する大きさのインク層およびラミネート層が付着されている場合に、プリンタ1はプリントサイズに応じた大きさのインク層およびラミネート層をインクリボンから選択して熱転写することができる。
【0032】
図3は、サーマルヘッドの構成を説明するための図である。図3を参照して、サーマルヘッド2は、直線状に配列された複数の発熱体R1〜Rnを含む。
【0033】
発熱体R1〜Rnの各々は通電されることにより発熱する。各発熱体への通電は、図1に示す制御装置101により制御される。発熱体が発熱することにより、発熱体と対向するインクリボン10の各インク層(Y,M,C)およびラミネート層OPがシール紙51に転写される。
【0034】
搬送機構(給紙ローラ5および給紙ローラ5を駆動するモータ)によってシール紙51が矢印Aの向きに搬送されることにより、インクリボンの各層(インク層およびラミネート層)がシール紙51の表面(印刷面)の所定の印刷領域に転写される。インク層が熱転写される場合には、ある色の層の熱転写が終了すると、シール紙51が矢印Aの向きと逆向きに搬送されるとともに、インクリボン(図3に示さず)がその供給方向に搬送される。ラミネート層の場合には、印刷面への熱転写が終了すると、シール紙51が矢印Aの向きに搬送されるとともにインクリボン(図3に示さず)がその供給方向に搬送される。
【0035】
このような処理によって、シール紙51の所定の印刷領域には、各インク層(Y,M,C)およびラミネート層OPが重なるように順次熱転写される。この結果、その印刷領域に所望のカラー画像が印刷されると共に、印刷された画像を被覆する透明保護層が形成される。透明保護層を印刷用紙表面に被覆する処理(仕上げ)は、印刷用紙表面が略均一となる光沢仕上げ、印刷用紙表面に凹凸を有するマット仕上げのいずれでもよい。
【0036】
なお、以下の説明においては、発熱体R1〜Rnの配列方向を「主走査方向」とも呼び、シール紙51の搬送方向(矢印Aの向き)を「副走査方向」とも呼ぶことにする。主走査方向はシール紙51の表面において副走査方向と直交する方向である。したがって切断機構9(図1参照)がシール紙51を切断する方向は、主走査方向と平行な方向である。
【0037】
図3に示すように、プリンタ1は、ミシン目60が形成されたシール紙51を印刷可能である。シール紙51の構造については後に詳しく説明する。なお「ミシン目」とは、紙類を切り離すために切り離し線(たとえば直線)に沿って設けられた複数の孔によって破線状に形成された線を意味する。
【0038】
図4は、制御装置の構成を説明するための機能ブロック図である。図4を参照して、制御装置101は、プリンタ制御回路110と、入力回路111と、メモリ112と、画像処理回路113と、ヘッド制御回路115と、給紙制御回路116と、インクリボン搬送制御回路117と、切断制御回路118とを備える。
【0039】
プリンタ制御回路110は、プリンタ1の動作を統括的に制御するための回路である。具体的には、プリンタ制御回路110は、用紙のサイズ、ミシン目の有無等の印刷用紙に関する用紙情報を受けて、その情報に基づいて、シール紙51の印刷面における所定の印刷領域内に画像が形成されるように、画像処理回路113、ヘッド制御回路115、給紙制御回路116、インクリボン搬送制御回路117を制御する。さらにプリンタ制御回路110は、シール紙の印刷部分をシール紙から切り離すために、切断制御回路118を制御する。
【0040】
プリンタ制御回路110が用紙情報を取得するための方法は特に限定されない。たとえばプリンタ制御回路110は、各種の記録媒体に記録された情報を読み出すことにより用紙情報を取得してもよいし、用紙の種類を設定するための手段(たとえばスイッチ)の設定を検知して、その検知結果を用紙情報として取得してもよい。
【0041】
入力回路111は、コンピュータ103から送られた画像データを受けるためのインターフェースである。本発明の実施の形態では、コンピュータ103はカメラ102が被写体(代表的には人物)を撮影することにより得られる画像データを制御装置101の入力回路111に転送する。コンピュータ103と入力回路111とを接続するための手段、あるいはコンピュータ103から入力回路111に画像データを転送するための転送方式は特に限定されるものではない。
【0042】
メモリ112は、入力回路111に入力された画像データを記憶するためのものである。入力回路111に入力された画像データはイエロー、マゼンタ、シアンの各色の画像データに分離され、これら3つの画像データがメモリ112に格納される。
【0043】
画像処理回路113は、プリンタ制御回路110の制御により、コンピュータ103から制御装置101に入力された画像データをシール紙51に印刷するために必要な画像処理を実行する。具体的には、画像処理回路113は、メモリ112に記憶される画像データ(たとえばシアンの画像データ)を、インクリボンの色(シアン)に対応した画像データに変換する。さらに、画像処理回路113は、インクリボン10に予め付着されているラミネート層OPをシール紙51の印刷面の所定の印刷領域に熱転写するための転写パターンデータを生成する。
【0044】
ヘッド制御回路115は、サーマルヘッド2を制御するための制御信号を生成してサーマルヘッド2に送出する。具体的には、ヘッド制御回路115は、画像処理回路113によって生成された各色の画像データをインクリボンに付着されたインク層によってシール紙51に熱転写するために、サーマルヘッド2の制御信号を生成する。さらにヘッド制御回路115は、画像処理回路113によって生成された転写パターンデータに従って、インクリボン10に予め付着しているラミネート層OPをシール紙51に熱転写するために、サーマルヘッド2の制御信号を生成する。
【0045】
ヘッド制御回路115は、各制御信号を生成する際に、各発熱体の特性及び各発熱体の発熱状態を考慮して、サーマルヘッド2に含まれる複数の発熱体の各々の発熱状態が所望の状態となるように各発熱体の通電時間を調整する。
【0046】
なお、画像処理回路113およびヘッド制御回路115は、本発明の「転写制御回路」を構成する。
【0047】
給紙制御回路116は、プリンタ制御回路110の制御により、給紙ローラ5を駆動するモータ21を制御する。具体的には、給紙制御回路116は、インクリボン10に付着されているインク層Y,M,Cをシール紙51の印刷面に熱転写させるときは、シール紙51が所定の速度で副走査方向(図1および図3に示す矢印Aの向き)に搬送されるようにモータ21を制御する。そして、給紙制御回路116は、各インク層の転写が完了するごとに、シール紙51が巻き戻されるようモータ21を制御する。これにより、各インク層Y,M,Cの熱転写が完了するごとに、サーマルヘッド2は印刷領域の印刷開始位置まで相対的に戻される。
【0048】
さらに給紙制御回路116は、インクリボン10に付着されているラミネート層OPを当該印刷領域に熱転写させるときは、シール紙51が所定の速度で副走査方向に搬送されるようにモータ21を制御する。ラミネート層OPの熱転写が完了すると、シール紙51がさらに副走査方向に搬送されるように給紙制御回路116は、モータ21を制御する。
【0049】
インクリボン搬送制御回路117は、インクリボン回収ローラ6bを駆動するモータ22を制御するものである。モータ22がインクリボン回収ローラ6bを駆動することにより、シール紙51の印刷領域とインクリボン10に付着したインク層Y,M,C及びラミネート層OPとが、サーマルヘッド2とプラテンローラ3との間において密着するとともに、使用済みのインクリボン10がシール紙51から剥離されて回収される。
【0050】
シール紙のうち画像が形成された印刷領域の部分は、給紙ローラ5、モータ21および排紙ローラ8(図1参照)によって、サーマルヘッド2よりもシール紙51の搬送方向の下流側に搬送される。この搬送された部分は、カッタ9aによって切断される。
【0051】
切断制御回路118は、カッタ9aを移動させるモータ23を制御するためのものである。カッタ9aは、主走査方向に沿って移動可能に構成される。カッタ9aが主走査方向に沿ってシール紙51の一方端から移動することにより、シール紙51には主走査方向に沿った切れ目が入る。カッタ9aが主走査方向に沿ってシール紙51の一方端から他方端まで移動した場合には、印刷領域の部分がシール紙51から切り離される。
【0052】
位置検出部24はカッタ9aの主走査方向の位置を検出し、その検出された位置を切断制御回路118に送る。切断制御回路118は、位置検出部24により検出されたカッタ9aの位置に基づいて、シール紙51の切断長を制御する。なお、位置検出部24はシール紙51の切断開始時点からのモータ23の回転数を検出することによりカッタ9aの位置を検出してもよい。
【0053】
図5は、本発明の実施の形態に係るプリンタが備える切断機構の構成例を示した図である。図5を参照して、カッタ9aは円形の刃であり、図4に示したモータ23により回転し、主走査方向に沿って、切断開始位置であるシール紙51の一方端からシール紙51の他方端に向かって進む。
【0054】
シール紙51の主走査方向に沿った長さを以下では「幅」と呼ぶことにする。カッタ9aの停止位置がP1であるときには、カッタ9aの移動量L1がシール紙51の幅Wより大きくなるので、所望の画像が形成された印刷領域はシール紙51から切り離される。その一方、カッタ9aの停止位置がP2であるときには、カッタ9aの移動量L2がシール紙51の幅Wより小さいため、当該印刷領域はシール紙51から分離されていない。このようにカッタ9aの停止位置を変えることによってシール紙51の切断長を変えることができる。
【0055】
[シール紙]
図6は、シール紙の一部を示す平面図である。図6を参照してシール紙51にはミシン目60が形成される。シール紙51(ロール紙50)がプリンタ1に装填された状態では、ミシン目60の方向は、副走査方向となる。言い換えればミシン目60は、ロール紙50の搬送方向に沿うようにシール紙51に形成される。なお、図6に示したシール紙51においては、ミシン目60は、シール紙51の幅の中央の位置に形成される。
【0056】
図7は、図6のVII−VII方向の断面図である。図8は、図6のVIII−VIII方向の断面図である。図7は、シール紙51のミシン目60に沿った断面を示している。図8は、ミシン目60の方向と直交する方向のシール紙51の断面を示している。シール紙51(ロール紙50)がプリンタ1に装填された状態では、ミシン目60の方向と直交する方向は、主走査方向に対応する。
【0057】
図7および図8を参照して、シール紙51はシール紙本体52および台紙53を含む。シール紙本体52は台紙53に貼付けされ、かつシール紙本体52より剥離可能である。
【0058】
シール紙本体52は印刷面54と粘着面55とを有する。台紙53は、シール紙本体の粘着面55と接する面56(表側の面)と、面56と反対側の面57(裏側の面)とを有する。なお図示の便宜上、図7および図8では、台紙53の表側の面56とシール紙本体52の粘着面55とは略同一の面として示されている。他の図においても同様である。
【0059】
図6から図8に示すように、ミシン目60は、シール紙本体52および台紙53を貫通するよう形成された複数の貫通孔61がシール紙51の副走査方向に沿って所定の間隔で配置されることにより構成される。言い換えると、貫通孔61と非貫通部62とがシール紙51の副走査方向に沿って交互に配置されることによりミシン目60が構成される。なお、複数の貫通孔61は、少なくとも台紙53を貫通するように形成されていればよい。
【0060】
図7に示すように、貫通孔61は、台紙53の裏面(面57)からシール紙本体52の印刷面54に向かうにつれて、その幅が小さくなるように形成される。ミシン目60の方向における貫通孔61の幅aは約0.55mmであり、貫通孔61の間隔bは、約0.15mmである。貫通孔61の間隔bとは非貫通部62のミシン目60の方向の長さに対応する。
【0061】
同様に、図8に示すように、貫通孔61は、台紙53の裏面(面57)からシール紙本体52の印刷面54に向かうにつれて、その幅が小さくなるように形成される。なお、ミシン目60の方向と直交する方向に沿った貫通孔61の径cは、図7に示した貫通孔61の間隔bよりも大きく、かつ貫通孔61の幅aよりも小さい。
【0062】
本発明の実施の形態では、プリンタ1は、副走査方向に沿ってミシン目60が形成されたシール紙51に画像を形成する。これによりユーザは、プリンタ1から出力されたプリントを副走査方向に沿って容易に切り分けることができる。この点について説明する。
【0063】
図9は、プリンタがシール紙から印刷領域を切り離すときの切断位置を説明するための図である。図9(a)を参照して、シール紙51の先端部分に印刷領域65が設けられ、その印刷領域65内に画像が印刷される。印刷領域65のサイズ、すなわち印刷サイズはプリンタ1による印刷の実行時に指定される。ただしシール紙51の幅Wは固定されているため、選択された印刷サイズに応じて副走査方向の長さLが変更される。その長さLに応じた位置でシール紙51が切断されることで、規定サイズ(L×W)のプリント66が出力される。
【0064】
図9(b)を参照して、規定サイズのプリントを3枚に小分けにするために、規定サイズの印刷領域が印刷領域65a〜65cに等分されている。上述のように、プリンタは主走査方向にのみシール紙を切断可能である。したがって図9(b)に示すように、プリンタ1が規定サイズのプリントを小分けにすると、プリンタから出力されるプリント66a〜66cの幅はシール紙51の幅Wのままであるが、副走査方向の長さはL/3となる。
【0065】
このように、プリンタが規定サイズ(L×W)のプリントを小分けにした場合には、プリンタは細長いプリントしか出力できない。その一方で、財布あるいはカバン等にプリントを保管しやすい等の理由により、ユーザがプリントを副走査方向に沿って切断する場合が生じ得る。
【0066】
この場合には、ユーザがプリントを副走査方向に沿って切断する必要がある。たとえばユーザはハサミ、カッタ等の道具を用いてプリントを切断することとなる。しかし、ユーザがハサミ、カッタ等を常に携帯しているとは限らない。また、ハサミ、カッタ等の道具によりプリントを小分けにすることは、ユーザにとって手間となる可能性がある。
【0067】
図10は、本発明の実施の形態に係るシール紙を用いた印刷を説明する図である。図10(a)を参照して、本発明の実施の形態によれば、シール紙51には、その副走査方向に沿ってミシン目60が形成される。なお、図9(b)と同様に、規定サイズのプリントを3枚に小分けにするために、規定サイズの印刷領域が印刷領域65a〜65cに等分されている。
【0068】
また、図10(b)に示すように、プリンタによってプリントが小分けにされた段階では、プリント66a〜66cは細長い形状をしている。しかし、図10(c)に示すように、本発明の実施の形態によれば、ユーザがたとえばプリント66aの両端を引っ張ることによって、ミシン目60でプリント66aを2分割することができる。プリント66b,66cについても同様である。
【0069】
このように本発明の実施の形態によれば、プリンタから排出されたプリント(印刷物)をユーザが副走査方向に沿って小分けにする際に、ハサミ等の道具を必要とする機会を少なくすることができる。したがって本発明の実施の形態によれば、プリントを小分けにするための手間が生じる機会を少なくすることができるので、プリンタの利用価値の向上を図ることができる。
【0070】
ミシン目でプリントを分割するためのユーザの動作としては(1)ミシン目に沿ってプリントを山折りにする、(2)ミシン目に沿ってプリントを谷折りにする、(3)プリントを引きちぎる、等が考えられる。しかしながら、ミシン目の貫通孔の大きさあるいは貫通孔の間隔が適切でない場合には、上記の動作ではプリントを容易に小分けできないことも起こりうる。この点について図11を参照しながら説明する。ここでは、「山折り」とはプリントの印刷面が外側に向けられるようにプリントを折り曲げることを意味し、「谷折り」とは、プリントの印刷面が内側に向けられるようにプリントを折り曲げることを意味する。
【0071】
図11は、プリントをミシン目に沿って折り曲げたときに生じうる問題の一例を説明するための図である。図11(a)は、プリントを山折りにした場合に生じうる問題点を説明するための図である。図11(b)は、プリントを谷折りにした場合に生じうる問題点を説明するための図である。
【0072】
図11(a)を参照して、プリント66をミシン目60に沿って山折りすることによって、シール紙本体52はミシン目で2つに分かれる。しかし台紙53はミシン目60で分かれない。プリントを2つに分けるためには台紙53を2つに分ける必要が生じる。よってプリントを2つに分けるためには、少なくとも2回の動作が必要になる。
【0073】
図11(b)を参照して、プリント66をミシン目60に沿って谷折りすることにより、シール紙本体52のミシン目周辺部分68が台紙53から浮き上がる。また、シール紙本体52および台紙53のいずれも分割されていない。この場合にはプリントを2分割するために、たとえば、山折りと谷折りとを繰返すこと、あるいは、プリント66を引きちぎることが行なわれる。したがって、プリントを2つに分けるためには、少なくとも2回の動作が必要になる。さらに、ミシン目周辺部分68が台紙53から浮き上がった状態でプリント66を谷折りすることにより、浮き上がったミシン目周辺部分68に折り目が付く可能性も考えられる。
【0074】
図12は、本発明の実施の形態に係るプリントを山折りした場合の状態を説明するための図である。図12を参照して、本発明の実施の形態によれば、ミシン目(貫通孔61および非貫通部62)の寸法(幅a,cおよび間隔b)および貫通孔61の形状を上記のように定めることによって、プリント66を1度山折りするだけで、シール紙本体52および台紙53が同時にミシン目60で分割することが可能になる。
【0075】
なお、図12では、山折りの例を示しているが、ユーザが谷折りあるいは引きちぎりを行なった場合でもシール紙本体52および台紙53を同時にミシン目60で分割することが可能である。
【0076】
また、このようにユーザが容易にプリントを分割できる場合、ロール紙50をプリンタ1に装填したとき、あるいは、シール紙が搬送されるときにミシン目でシール紙が分割される可能性も考えられる。本発明の実施の形態によれば、ミシン目(貫通孔61および非貫通部62)の寸法(幅a,cおよび間隔b)および貫通孔61の形状を上記のように定めることによって、ユーザがプリントを副走査方向に沿って容易に小分けすることができる一方で、プリンタでシール紙が搬送されるときにシール紙がミシン目で分割することを防ぐことができる。
【0077】
[印刷領域へのインク層およびラミネート層の熱転写]
図13は、本発明の実施の形態による、印刷領域へのインク層およびラミネート層の熱転写を説明する平面図である。図14は、図13のXIV−XIV方向の断面図である。なお図14は、インク層およびラミネート層が熱転写されたシール紙の主走査方向の断面を示す。
【0078】
図13および図14を参照して、本実施の形態では、印刷領域は、転写領域71,72および非転写領域73とを含む。
【0079】
転写領域71,72は、インク74およびラミネート層OPが重ねられた領域である。非転写領域73は、ミシン目60が含まれるように予め定められた範囲である。非転写領域73の主走査方向の長さは、たとえばミシン目加工をシール紙51に行なう際のミシン目の位置の精度、ミシン目の蛇行の程度等を考慮して予め定められる。たとえば非転写領域73の主走査方向の長さは、数mmに定められる。
【0080】
本発明の実施の形態では、プリンタ1は、非転写領域73にラミネート層OPを熱転写しない。より好ましくは、図14に示すように、プリンタ1は、非転写領域73にインク74およびラミネート層OPのいずれも熱転写しない。
【0081】
図15は、ミシン目上にラミネート層を転写した場合に生じ得る課題を説明するための図である。図15(a)を参照して、インクリボン10に付着されたラミネート層OPをサーマルヘッド2によりシール紙51の印刷面に転写する場合、ミシン目(貫通孔61)以外の部分では、サーマルヘッド2が転写にとって十分な圧力を加えることができる。したがってサーマルヘッド2の発熱体が発生する熱により、インクリボン10に付着されたラミネート層がシール紙51の印刷面に転写される。
【0082】
しかしながらミシン目(貫通孔61)の上では、サーマルヘッド2がインクリボン10に十分な圧力を加えることができない。しかし、サーマルヘッド2は全体が発熱しているので、ミシン目(貫通孔61)の上の部分のラミネート層OPにも熱が加わる。
【0083】
さらに、図15(a)ではミシン目(貫通孔61)の周囲部分が平坦なよう示されているが、たとえば台紙53の裏面から刃を入れることによって、シール紙にミシン目が形成された場合、ミシン目(貫通孔61)の周辺には起伏が生じる可能性がある。この起伏によって、サーマルヘッド2が転写にとって十分な圧力をインクリボン10に加えることができない。
【0084】
この結果、ミシン目(貫通孔61)の周辺部分においてラミネート層OPの転写が不足することが起こりうる。この場合には図15(b)に示されるように、インクリボン10がシール紙51から離れると、ラミネート層OPのうちミシン目に対応する部分が他の部分から引きちぎられる。これによりミシン目の周囲の部分の見映えが低下する可能性がある。
【0085】
またミシン目の周囲のラミネート層の一部が粉状のゴミとなってプリンタ1の部品あるいはシール紙の印刷面に付着する可能性が考えられる。この場合、印刷品質の低下、プリンタのメンテナンスの頻度の増加などが生じる可能性がある。
【0086】
図16は、本発明の実施の形態による効果を説明するための図である。図16(a)を参照して、本実施の形態では、サーマルヘッド2は、非転写領域73に対応する領域2bを除いた領域2aで、ラミネート層OPをシール紙51に転写させるための熱を発生させる。一方、領域2bで発生する熱はラミネート層OPをシール紙51に転写させるほどではない。サーマルヘッド2は、領域2aに対応して配置される発熱体と領域2bに対応して配置される発熱体とで発熱量が異なるように、制御装置101(図1参照)によって制御される。
【0087】
この結果、図16(b)に示すように、インクリボン10がシール紙51から離れたときに、非転写領域73に対応するラミネート層が印刷面から除去される。さらに、転写領域71,72との境界でラミネート層OPを印刷面から取り除くことができる。したがって、プリンタから出力されたプリントにおいて、ミシン目の周囲の部分の見映えが低下することを防止できる。また、印刷面に転写されないラミネート層の一部がプリンタ1の部品あるいはシール紙の印刷面に付着する可能性を小さくできる。これによって、印刷品質を高い水準に保つことができる期間を長くすることができる。
【0088】
なお、非転写領域には少なくともラミネート層が転写されなければよい。ただし、本発明の実施の形態では、非転写領域にはインクおよびラミネート層のいずれも転写されない。ラミネート層の転写の場合と同様に、インクリボンに付着されたインクをシール紙の印刷面に転写する際にも、ミシン目およびその周囲部分では、インクリボン10およびシール紙51に対して転写に十分な圧力が加わらない可能性がある。この状態でインクリボンに付着したインク層に熱転写のための熱が加わった場合、インク層の一部はシール紙本体の表面に染み込むと考えられる。しかしながら、転写されなかったインク層の一部が粉状のゴミとなる可能性も考えられる。本発明の実施の形態では、非転写領域にインクを転写しないことにより、印刷品質等に影響を与えるゴミが発生する可能性をより小さくすることができる。
【0089】
図17は、本発明の実施の形態に係るプリンタの処理を説明するためのフローチャートである。図17および図4を参照して、処理が開始されると、ステップS1において、インク転写処理が実行される。
【0090】
具体的には、プリンタ制御回路110は、画像処理回路113に対して、インク転写用の画像データを生成するよう指示する。画像処理回路113は、プリンタ制御回路110の指示に応じて、メモリ112に記憶される画像データを、インクリボンの色に対応した画像データに変換する。ヘッド制御回路115は、サーマルヘッド2が各色の画像データをシール紙51に熱転写するための制御信号を生成する。ヘッド制御回路115からの制御信号に応じて、サーマルヘッド2の発熱体が発熱する。
【0091】
また、給紙制御回路116は、プリンタ制御回路110の制御により、シール紙51が所定の速度で副走査方向(図1および図3に示す矢印Aの向き)に搬送されるようにモータ21を制御する。そして、給紙制御回路116は、各インク層の転写が完了するごとに、シール紙51が巻き戻されるようモータ21を制御する。さらにインクリボン搬送制御回路117は、インクリボン回収ローラ6bを駆動するモータ22を制御する。これにより、インク層Y,M,Cが印刷領域における転写領域に順次熱転写される。
【0092】
印刷領域におけるミシン目周辺の領域、すなわち非転写領域にはインク層Y,M,Cのいずれも転写されない。非転写領域にインク層Y,M,Cのいずれも転写しないため、たとえばコンピュータ103が印刷領域に対応する画像データを作成するときに、非転写領域に対応する部分を除いて画像データを生成する。ヘッド制御回路115は、画像処理回路113からの画像データに基づき、サーマルヘッド2に含まれる複数の発熱体の発熱量を制御するための制御信号を生成する。この制御信号によって、転写領域に対応する位置にある発熱体の発熱量はインクが転写されるに十分な発熱量となる一方で、非転写領域に対応する位置にある発熱体の発熱量は、インクが転写されない程度の大きさとなる。
【0093】
次にステップS2において、ラミネート層転写処理が実行される。ラミネート層を転写するための処理はステップS1における処理と同様である。また、ステップS2においても、非転写領域にはラミネート層OPが転写されない。このような処理は、たとえば画像処理回路113がラミネート層OPの転写パターンを生成する際に、非転写領域に対応する画像エリアには転写を行なわないようパターンを形成することによって実現される。ヘッド制御回路115は、画像処理回路113からの画像データに基づき、サーマルヘッド2の複数の発熱体の発熱量を制御するための制御信号を生成する。この制御信号によって、転写領域に対応する位置にある発熱体の発熱量はラミネート層が転写されるに十分な発熱量となる一方で、非転写領域に対応する位置にある発熱体の発熱量は、ラミネート層が転写されない程度の量となる。
【0094】
ステップS3において、印刷領域をシール紙51から切断するための切断処理が実行される。この場合、プリンタ制御回路110は、切断制御回路118に対して、シール紙51の切断長を指示する。切断制御回路118は、モータ23を制御することによりカッタ9aを移動させる。さらに、切断制御回路118は、位置検出部24により検出されたカッタ9aの位置に基づいて、カッタ9aの移動量が指示された切断長となるようにカッタ9aの移動量を制御する。
【0095】
ステップS3において印刷領域を切断するための処理は1回のみ実行されるよう限定されるものではない。たとえばシール紙の副走査方向に沿った複数の箇所で切断処理が行なわれてもよい。その複数の箇所の一部において、シール紙が途中まで切断されるように切断処理が行なわれてもよい。ステップS3の処理が終了すると全体の処理が終了する。
【0096】
また、プリンタ制御回路110は、用紙情報に基づいて、シール紙51がミシン目の形成された用紙であることを予め認識する。したがってミシン目の形成されていないシール紙にインクリボンに付着されたインクおよびラミネート層を熱転写する場合には、用紙情報を予め変更することにより、プリンタ制御回路110は、プリンタ1に装填された印刷用紙がミシン目の形成されていないシール紙であることを認識できる。
【0097】
この場合のプリンタ1の処理は、基本的には、図17のフローチャートに示した処理と同様である。ただし、ステップS1,S2では、非転写領域にインクおよびラミネート層を転写しない処理が省略される。
【0098】
図18は、本発明の実施の形態に係るプリンタおよびシール紙を用いることで得られるプリントの応用例を説明する図である。図18(a)に示すように、シール紙の幅方向でのミシン目の位置は、シール紙の幅の中央の位置からずれている。ユーザは1つのプリントをミシン目60に沿って切り分けることによって、主走査方向の長さが異なる複数のプリント66を得ることができる。なお、このようにミシン目の位置が異なるシール紙に印刷を行なうため、プリンタ制御回路110には、そのシール紙のミシン目の位置等を含む用紙情報が入力される。この用紙情報に従ってプリンタ制御回路110は画像処理回路113等を制御する。これにより、転写領域71,72および、ミシン目60を含む非転写領域73を設定することができる。
【0099】
また、図18(b)に示すように、シール紙51からプリントを切り離す処理と、シール紙51の一端からミシン目までシール紙を切断する処理とを組み合わせることもできる。このような処理は、図17のフローチャートのステップS3の切断処理において、切断長を変えることによって実現される。この場合には、ユーザがミシン目60に沿って1枚のプリントを切り分けることで、副走査方向の長さが異なるプリント66を得ることができる。
【0100】
図18に示すように、本発明の実施の形態によれば、ユーザの要望に対応したサイズでユーザが切り分け可能なプリントをプリンタから出力させることが可能となる。これによりユーザにとってのプリンタの利用価値をさらに向上させることが可能となる。
【0101】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
1 プリンタ、2 サーマルヘッド、2a,2b 領域、3 プラテンローラ、4 剥離プレート、5 給紙ローラ、6a インクリボン供給ローラ、6b インクリボン回収ローラ、7a,7b ガイドローラ、8 排紙ローラ、9 切断機構、9a カッタ、9b カッタ台、10 インクリボン、10a 基材、21〜23 モータ、24 位置検出部、50 ロール紙、51 シール紙、52 シール紙本体、53 台紙、54 印刷面、55 粘着面、56,57 面、60 ミシン目、61 貫通孔、62 非貫通部、65,65a〜65c 印刷領域、66,66a〜66c プリント、68 ミシン目周辺部分、71,72 転写領域、73 非転写領域、74 インク、101 制御装置、102 カメラ、103 コンピュータ、110 プリンタ制御回路、111 入力回路、112 メモリ、113 画像処理回路、115 ヘッド制御回路、116 給紙制御回路、117 インクリボン搬送制御回路、118 切断制御回路、A,B 矢印、L1,L2 移動量、R1〜Rn 発熱体、S1〜S3 ステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリボンに予め付着されたインクおよび透明保護材を、搬送方向に沿ってミシン目が形成されたシール状の印刷媒体の印刷面に熱転写するプリンタであって、
長尺状の前記印刷媒体を搬送するための搬送機構と、
前記印刷媒体の前記搬送方向と直交する方向に沿って配列された複数の発熱体を含み、かつ、前記インクリボンに付着された前記インクおよび前記透明保護材を前記印刷媒体の印刷面に熱転写するためのサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドによって前記インクおよび前記透明保護材が前記印刷面の印刷領域に熱転写され、さらに、前記インクおよび前記透明保護材が前記印刷領域に転写された後では、前記印刷領域が前記サーマルヘッドよりも前記搬送方向の下流側に搬送されるように、前記搬送機構を制御するための搬送制御回路と、
前記インクリボンに付着された前記インクの熱転写によって、前記印刷領域内に画像が形成され、さらに前記インクリボンに付着された前記透明保護材の熱転写によって、前記印刷領域が前記透明保護材で覆われるように、前記サーマルヘッドを制御するための転写制御回路と、
前記搬送方向に対して前記サーマルヘッドよりも下流側に配置され、前記複数の発熱体の配列方向に沿って前記印刷媒体を切断するための切断機構とを備える、プリンタ。
【請求項2】
前記転写制御回路は、前記インクリボンから前記印刷領域に前記透明保護材が熱転写されるときに、前記印刷領域のうち前記ミシン目が含まれる所定の範囲では前記透明保護材が熱転写されない一方、前記印刷領域のうち前記所定の範囲を除く残余の範囲では前記透明保護材が熱転写されるように、前記複数の発熱体の発熱状態を制御する、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記転写制御回路は、さらに、前記インクリボンから前記印刷領域に前記インクが熱転写されるときに、前記所定の範囲では前記インクが熱転写されないように、前記複数の発熱体の発熱状態を制御する、請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記印刷媒体は、
台紙と、
前記台紙から剥離可能に貼付されたシール紙本体とを含み、
前記ミシン目は、
前記搬送方向に沿って配置された複数の孔によって構成され、
前記複数の孔の各々は、
前記印刷媒体の前記印刷面とは反対側に位置する前記台紙の裏面から前記印刷面への向きに向かうにつれて、前記搬送方向に沿った幅が小さくなり、かつ少なくとも前記台紙を貫通するよう形成され、
前記台紙の前記裏面における前記複数の孔の各々の前記搬送方向の幅は、0.55mmであり、
前記台紙の前記裏面における前記複数の孔の間隔は、0.15mmである、請求項1から3のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記切断機構は、
前記複数の発熱体の配列方向における前記印刷媒体の一方端を基準とした、前記印刷媒体の切断長を調整可能に構成され、
前記プリンタは、
前記切断機構を制御することによって前記切断長を制御するための切断制御回路をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−234711(P2010−234711A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86535(P2009−86535)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】