説明

プリンタ

【課題】グリップローラを用いなくても印刷時の用紙搬送を安定して行わせて、常に印刷条件を適切に保つことができるプリンタを提供する。
【解決手段】プラテンローラ4と印刷ヘッド3との間で設定される印刷位置Pに、給紙ロール1aから繰り出された用紙1をインクリボン2と重合させた状態で送り込みながら、印刷ヘッド3に印刷ヘッド制御部36より信号を与えて印刷動作を行わせることで印刷を行うプリンタであって、給紙ロール駆動手段5を備え、給紙ロール駆動手段5によって駆動される給紙ロール1aの回転速度が印刷位置における用紙1の搬送速度を規定するように構成するとともに、用紙1の搬送速度と印刷ヘッド3の印刷動作速度との相対関係を同一に保ちつつ印刷するための速度補正を給紙ロール1aの回転速度または印刷ヘッド3の印刷動作速度の少なくとも何れか一方に対して行うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙ロールより用紙を繰り出しつつ印刷を行うプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷ヘッドをプラテンローラに対して弾接させて、これらの間にインクリボンと用紙とを重合させて送り込みつつ印刷を行うプリンタについて多数のものが知られている。こうしたプリンタでは画像等の高精細な印刷を行うために、印刷ヘッドによる動作と連動して用紙の搬送速度を高精度に制御することが必要であり、そのための技術も数多く開示されている。その中でも、下記特許文献1に示すように、表面に微小突起を有するグリップローラと当該グリップローラに対向するピンチローラとの間で用紙を挟持することによってグリップローラの円周面上に用紙を把持させた上で、当該グリップローラの回転速度を制御することによって用紙の搬送速度を制御する技術が知られている。
【0003】
こうした技術を、用紙を連続した給紙ロールとして形成したプリンタに導入した場合、一般的には図4に模式的に示すような形態になる。用紙501は給紙ロール501aより給紙方向(図中の矢印で示すX方向)に引き出され、リボンロール502A、502Bの間を走行するインクリボン502と重合されて、プラテンローラ504と印刷ヘッド503との間で形成される印刷位置Pに送り込まれる。当該プリンタがサーマルプリンタである場合には、印刷ヘッド503の用紙501との接触面には用紙501の搬送方向と垂直方向に図示しない複数の発熱素子を並べて配置し、これらの発熱素子にそれぞれ所定のパターンで通電し発熱させることによって印刷を行うことになる。用紙1はグリップローラ521とピンチローラ524によって挟持され、プーリ521a、522aおよびベルト523を介してステッピングモータ522によりグリップローラ521が駆動されることによって搬送方向に位置規制される。また、用紙1の繰り出し量および張力を制御するためにモータ512も設けられ、エンコーダ543により回転量を監視しつつ、プーリ512a、511、ベルト513を介して給紙ロール501aを駆動することもできる。
【0004】
以上のような装置構成を採りつつ、印刷時の用紙501の搬送方向を給紙方向とは逆の方向(図中の矢印で示すY方向)にした場合、次のように制御を行って印刷動作を行わせることになる。まず、印刷指令部531より目的の印刷を行うための基準指令を各部に出力する。当該基準指令を受けて、回転パターン設定部532では印刷時の用紙501の搬送距離および搬送速度を決定して出力し、ステッピングモータ制御部533ではその出力値を基に具体的な制御信号に変換してステッピングモータ522に出力して動作させ、グリップローラ521を駆動させる。さらに、回転パターン設定部532からの出力値を基にモータ制御部534では、給紙ロール501aの回転量および回転速度を決定し、給紙ロール501aが最大径または最小径近くの場合でも常に用紙501のパスラインを図中501C、501Dで示すようにわずかに弛ませるように制御することで、印刷位置Pにある用紙501への影響が生じないようにする。このようにして、印刷位置Pにおける用紙501の搬送速度はグリップローラ521の回転によってのみ決定され、印刷時にはグリップローラ521を一定の回転速度で回転させることにより一定速度で用紙501を搬送できる。
【0005】
上記のようにして用紙501が搬送される一方で、印刷ヘッド503は次のようにして制御される。まず、印刷指令部531からの基準指令を受けて、印刷動作パターン設定部535においてラインごとの印刷動作パターンを作成し、当該印刷動作パターンに従って印刷ヘッド制御部536によって印刷ヘッド503の各発熱素子に通電される。そして、通電量に応じて各発熱素子が発熱することで、インクリボン502の染料が用紙501に転写され、印刷が行われる。このような印刷ヘッド503の印刷動作としての発熱パターン変化も一定速度で行われるようになっている。
【0006】
以上のように、印刷時には用紙501の搬送速度と、印刷ヘッド503による印刷動作としての発熱パターン変化とはそれぞれ一定速度で行っていることから、常に同一の条件で印刷を行うことができる。そのため、用紙503の同一の印刷領域に対して複数の色を重ねて印刷するような場合でも、印刷位置にズレを生じることなく安定して高品質な印刷を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−161423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のように表面に微小突起を有するグリップローラを使用する場合には当該微小突起による突起痕が用紙表面に残るため、近年、より高画質が望まれる印刷において改善が必要とされてきている。
【0009】
こうした突起痕の抜本的対策には、プリンタ構成要素の中で、上記のような微小突起のあるグリップローラを用いないようにすることが必要となるが、そうすると用紙の把持力が不足するために用紙を搬送するためのローラ(搬送ローラ)との間で滑りが生じて用紙の搬送速度が変動し、高精度な印刷を行うことができなくなることが考えられる。
【0010】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、具体的には微小突起のあるグリップローラを用いず突起痕を生じさせないとともに、印刷時の用紙搬送を安定して行わせつつ印刷条件を適切に保つことができ、高精度な印刷を実現可能なプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0012】
すなわち、本発明のプリンタは、プラテンローラと当該プラテンローラに弾接する印刷ヘッドとの間で設定される印刷位置に、給紙ロールから繰り出された用紙をインクリボンと重合させた状態で送り込みながら、前記印刷ヘッドに印刷ヘッド制御部より信号を与えて印刷動作を行わせることで印刷を行うものであって、前記給紙ロールを駆動するための給紙ロール駆動手段を備え、当該給紙ロール駆動手段によって駆動される給紙ロールの回転速度が印刷位置における用紙の搬送速度を規定するように構成するとともに、当該用紙の搬送速度と前記印刷ヘッドの印刷動作速度との相対関係を同一に保ちつつ印刷するための速度補正を前記給紙ロールの回転速度または前記印刷ヘッドの印刷動作速度の少なくとも何れか一方に対して行うことを特徴とする。
【0013】
このように構成すると、印刷時の用紙速度を給紙ロールの回転速度によって決定しながら、印刷中の用紙の搬送速度と印刷ヘッドにおける印刷動作速度の相対関係からなる印刷条件を常に同一に保つことができるために、微小突起を有するグリップローラを用いなくても精度良く印刷を行うことができる。
【0014】
また、印刷時の用紙の搬送速度を一定に保つことによって、上記の効果を得ようとする場合には、前記給紙ロールが所定量の回転を行う間に搬送される用紙の搬送距離を検出する搬送距離検出手段と、前記給紙ロールの回転量および当該給紙ロールの回転量に対応する前記用紙の搬送距離の検出値を基に前記給紙ロールの印刷時の回転速度を前記用紙の搬送速度がほぼ一定となるように補正する回転速度補正手段とを備えるように構成することが好適である。
【0015】
さらに、次の印刷時に備えて、印刷中に用紙搬送速度の補正に必要となる検出を行うことで時間短縮を行うとともに、同一領域に対して複数色を重ねて印刷する場合に印刷ズレが生じないようにするためには、印刷時の前記給紙ロールの回転量および当該給紙ロールの回転量に対応する前記用紙の搬送距離の検出値を基にして、次の印刷領域に対する印刷の開始前に前記給紙ロールの回転速度を補正するとともに、同一の印刷領域に対する印刷を行う間は前記給紙ロールの回転速度を同一に保持するように構成することが好適である。
【0016】
また、給紙ロールの巻径に応じて変化する印刷時の用紙速度に対応して印刷動作速度を変えることによって印刷条件を同一に保たせ、高品質の印刷を得るためには、前記給紙ロールが所定量の回転を行う間に搬送される用紙の搬送距離を検出する搬送距離検出手段と、前記給紙ロールの回転量および当該給紙ロールの回転量に対応する前記用紙の搬送距離の検出値を基に前記印刷ヘッドの印刷動作速度を前記用紙の搬送速度の変化に対応するように補正する印刷速度補正手段とを備えるように構成することが好適である。
【0017】
さらに、次の印刷時に備えて、印刷中に印刷動作速度の補正に必要となる検出を行うことで時間短縮を行うとともに、同一領域に対して複数色を重ねて印刷する場合に印刷ズレが生じないようにするためには、印刷時の前記給紙ロールの回転量および当該給紙ロールの回転量に対応する前記用紙の搬送距離の検出値を基にして、次の印刷領域に対する印刷の開始前に前記印刷ヘッドの印刷動作速度を補正するとともに、同一の印刷領域に対する印刷を行う間は前記印刷ヘッドの印刷動作速度を同一に保持するように構成することが好適である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した本発明によれば、給紙ロールの回転によって印刷時の用紙速度を決定して、速度変動を生じさせることなく安定して用紙を搬送させつつ、用紙の搬送速度と印刷ヘッドの印刷動作速度とからなる印刷条件を常に同一に保つことが可能となるため、微小突起を有するグリップローラを用いなくても精度良く印刷を行うことができるプリンタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの構成を示す模式図。
【図2】図1に係るプリンタを変形した例を示す模式図。
【図3】本発明の第2実施形態に係るプリンタの構成を示す模式図。
【図4】従来の技術を用いた仮のプリンタの構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の幾つかの実施形態を、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
【0021】
この実施形態のプリンタは、図1に模式的に示したような装置構成を採る。
【0022】
本実施形態のプリンタは、熱転写方式の昇華型プリンタとして構成しており、インクリボン2にはY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、OP(オーバーコート)の各色の染料が印刷領域の大きさに対応してそれぞれ順番に繰り返すようにして設けられおり、用紙1の同一の印刷領域に対してこれら4色の染料を用いた印刷が個別に行われる。印刷ヘッド3の用紙1と接触する面には、用紙1が搬送される方向とは垂直に図示しない複数の発熱素子を並べて配置しており、これらの発熱素子の各々に対して印刷画像に応じた所定のパターンで通電することにより、発熱素子が発熱してインクリボン2の染料が溶融状態となって用紙2の表面に転写される。以下においては、こうした個々の発熱素子の発熱作用による用紙2への染料の転写を総じて、印刷ヘッド3の印刷動作と称する。
【0023】
上述のような印刷ヘッド3による印刷動作は、用紙1が給紙方向(図中の矢印で示すX方向)とは逆の向き(図中の矢印で示すY方向)に搬送されている時に行うものであり、この方向を印刷方向と称す。
【0024】
用紙1は給紙ロール1aより給紙方向に引き出され、リボンロール2A、2Bの間を走行するインクリボン2と重合された状態で、プラテンローラ4と当該プラテンローラ4に弾接させた印刷ヘッド3との間で形成される印刷位置Pに送り込まれる。用紙1は対向する一対の搬送ローラ21、24の間で挟持され、給紙ロール1aから印刷位置Pに至るまでのパスラインが形成される。ここで、本実施形態においては用紙1の搬送を行うために使用されるローラを、駆動源の有無とは無関係に広く搬送ローラと称する。片方の搬送ローラ21には軸端にプーリ21aが取り付けられており、ベルト23を介してDCモータ22の軸端に取り付けたプーリ22aからの駆動力を入力できるようにしている。また、他方の搬送ローラ24は接触する用紙1の動作に応じて従動回転するようにしているとともに、ロータリーエンコーダ41を取り付けてあるため、回転量すなわち用紙1の搬送距離に応じたパルス信号を発することができる。このパルス信号の数は、カウンタ42によって数えられパルス数として出力される。これらロータリーエンコーダ41とカウンタ42とは、協働して用紙1の搬送距離を検知するための搬送距離検出手段6として機能する。なお、搬送ローラ24とロータリーエンコーダ41とは、一体に構成されたローラ型のエンコーダを用いてもよい。
【0025】
なお、上記の搬送ローラ21、24は円周面をフラットに構成しており、グリップローラ521(図4参照)のような微小突起を有さない。そのため、グリップローラ521(図4参照)のように用紙1の把持を行い、積極的に搬送力を付与する機能を有するものではなく、こうした機能はもっぱら以下に説明する給紙ロール1aによって与えられる。
【0026】
給紙ロール1aに対しては、これを回転させるための給紙ロール駆動手段5が設けられている。給紙ロール駆動手段5は、給紙ロール1aを取り付け一体的に回転する図示しない取付軸の軸端部に設けたプーリ11と、当該プーリ11に対してベルト13を介して駆動力を与えるステッピングモータ12およびその軸に設けたプーリ12とから構成されている。当該ステッピングモータ12としては、上記プーリ11、12による減速比と相俟って、印刷中に用紙1に発生する摩擦抵抗等に比して十分大きな搬送力を用紙1に与えられるだけの駆動トルクを有するものを使用しており、給紙ロール1aの巻径に関わらず脱調することなく駆動させることができる。そのため、当該給紙ロールの1aの回転量を制御することによって、用紙1の搬送速度および搬送量を正確に制御することができるようになっている。
【0027】
インクリボン2は、供給側リボンロール2Bより巻き出され、ガイドローラ25a、25bによってパスラインを規定されながらY・M・C・OPの各色領域が印刷に応じて使用され、その後に巻取側リボンロール2Aによって巻き取られる。本実施形態のプリンタにおいては、各色の印刷に先立って図示しないセンサによってインクリボン2の各色領域を判別しつつ、各色領域の先頭位置を印刷位置Pに合わせることができるよう位置制御するとともに、印刷動作中には用紙1の搬送と連動してインクリボン2を供給側リボンロール2Bから巻取り側リボンロール2Aへと搬送できるように構成されている。
【0028】
各色の印刷が行われた用紙1はX方向に搬送され、図示しないカッターユニットによって切断された後にプリンタの外部に排出される。
【0029】
上記のような基本的構成を有する装置に対して、次のような制御ブロックから構成されるシステムによって各部の制御が行われる。
【0030】
まず、印刷指令部31において目的の画像を印刷させるための基準指令を作成し、当該基準指令を回転パターン設定部32と印刷動作パターン設定部35とに出力する。回転パターン設定部32は基準指令に基づき、給紙ロール1aの回転パターンを設定する。すなわち、与えられた基準指令に基づいて、印刷ヘッド3の動作に同期させるための回転開始タイミングと、回転量と、回転速度等からなる回転パターンを設定してステッピングモータ制御部33に出力する。ステッピングモータ制御部33では入力された上記回転パターンに応じて、ステッピングモータ12に制御指令を与えて給紙ロール1aを駆動する。
【0031】
他方、印刷動作パターン設定部35では、上記基準指令に基づき印刷ヘッド3の印刷動作を制御するための印刷動作パターンを設定する。すなわち、給紙ロール1aの回転に同期させるための印刷動作開始タイミングと、ラインごとの発熱パターン等からなる印刷動作パターンを設定して印刷ヘッド制御部36に出力する。印刷ヘッド制御部36では入力された上記印刷動作パターンに応じて、印刷ヘッド3の各発熱素子に通電して発熱させる。
【0032】
上記のように構成することで、用紙1を搬送させつつ印刷ヘッド3の各発熱素子を発熱させて印刷を行わせることができるが、給紙ロール1aは用紙1を使用するたびに巻径が減少していく(図中のパスライン1A、1Bを参照)ために、同じ回転速度で回転させていると周速が低下して用紙1の搬送速度が低下していく。そのため、印刷ヘッド3における印刷動作との相対関係が変化して、同じ画像でも異なる印刷結果が生じることになる。具体的には、印刷ヘッド3の各発熱素子に与える通電パターンの変化速度、すなわち印刷ヘッド3の印刷動作速度に対して用紙1の搬送速度が低下することになり、印刷方向に圧縮された形態で印刷が行われることになる。
【0033】
これを解消するため、本実施形態では給紙ロール1aの巻径変化に伴って速度補正を行うことで周速の変化を抑えて用紙速度をほぼ同一に保つことで、印刷ヘッド3の印刷動作速度との相対関係を同一に保つようにしている。
【0034】
具体的には、回転パターン設定部32によって決定された給紙ロール1aの回転量と、当該制御に従って給紙ロール1aが回転を行っている間に搬送距離検出手段6によって検出された用紙1の搬送距離とを回転速度補正手段34に入力して、当該回転速度補正手段34によって給紙ロール1aの巻径変化を相殺するための回転速度補正量を作成し、回転パターン設定部32に出力するようにしている。回転パターン設定部32では、上記回転速度補正量の入力があった場合には、その値に応じてステッピングモータ12の回転速度指令値を補正してステッピングモータ制御部33に出力するように構成してある。
【0035】
上記の補正は、次式のような関係に基づいて行う。説明を簡単にするために、ステッピングモータ33に対する指令値としてのパルス信号の個数や、エンコーダ41からのパルス信号のカウント値を、それぞれ給紙ロール1aおよび搬送ローラ24の各回転量(回転回数)に変換して表すと、次のような関係にある。
L1=π・d・n1=π・D1・N1 …………数式(1)
【0036】
ここで、D1は時刻t1における給紙ロール1aの巻径(外径)、N1はt1の直前に設定した給紙ロール1aの回転量、dは搬送ローラ24の外径、n1は給紙ロール1aがN1回転する間に検出された搬送ローラ24の回転量、L1は給紙ロール1aがN1回転する間の用紙1の搬送距離を示す。この数式(1)を変形すると、次式のように巻径D1が算出される。
D1=d・(n1/N1) ………………………数式(2)
【0037】
給紙ロール1aの巻径がD1である時、その周速は基準巻径D0の時のD1/D0倍になる。そのため、周速が一定になるように補正する場合には、上式を用いて回転速度をD0/D1倍に補正すれば良いことになる。
【0038】
本実施形態において、回転速度補正手段34では、回転パターン測定部32およびカウンタ42からの入力値を基に、上記のような考え方を用いて回転速度の補正量を演算して、回転パターン測定部32にフィードバックするように構成している。
【0039】
上述のように装置および制御システムを構成した本実施形態のプリンタは、具体的には次のように動作を行う。
【0040】
プリンタを起動した際には、用紙1の端部Eを図示しない端部検出センサによって検出して位置合わせし、そこから所定の回転量分ステッピングモータ11を回転させて用紙1をY方向に巻き戻す。この際には、搬送ローラ21は駆動せず用紙1に対して従動させるとともに、これと対向する搬送ローラ24に設けた搬送距離検出手段6としてのエンコーダ41およびカウンタ42から得られるパルス数より実際の搬送距離を検出する。そして、当該給紙ロール1aの回転量と、用紙1の搬送距離とから回転速度補正手段34によって給紙ロール1aの巻径を演算する。その巻径が基準巻径D0と異なる場合には、印刷時の回転速度を補正すべく回転パターン設定部32に補正命令として出力する。
【0041】
このようにして、印刷時の回転速度を適正化した後に、再度、用紙1の端部Eが上記端部検出センサ位置に到達するまで、給紙ロール1aを回転させて用紙1を送り出す。この際には、搬送ローラ21はDCモータ22によって駆動しており、用紙1は弛むことなく給紙方向に送り込まれる。端部Eがセンサ位置に到達した後は、上述のようにして補正した巻径より換算して所定の搬送距離が得られるように給紙ロール1aを巻き戻し、印刷開始位置Sを印刷位置Pに合わせる。この際にも搬送ローラ21は従動にしておく。
【0042】
以後は、上記演算により求めた巻径による回転速度補正量を加味して印刷時の用紙1の搬送速度が一定となるようにして給紙ロール1aの回転速度を決定し、当該回転速度で用紙1を搬送しつつ印刷ヘッド3によってY・M・C・OPの各色の印刷を行う。各色の印刷を行う間は、上記のように給紙ロール1aを一定の回転速度で駆動し、搬送ローラ21、24は従動としているために、用紙1の搬送速度は給紙ロール1aの周速によって決定される。印刷領域に対して最初にY(イエロー)の印刷を行った後、M(マゼンタ)の印刷を行う前には給紙ロール1aを同じ量だけ逆回転させるとともに、搬送ローラ21を駆動することで、用紙1の印刷開始位置Sを再度印刷位置Pにまで合わせ、M(マゼンタ)の印刷を開始する。このようにして、同一の印刷領域に対して各色の印刷を繰り返して行うことで、目的の印刷画像を得ることができる。
【0043】
さらに、同一の印刷領域に対して各色の印刷を行っている間に、搬送ローラ1aの回転量と搬送量検出手段6より検出する搬送距離とから、回転速度補正手段34では、新たに給紙ロール1aの巻径を演算して回転速度補正量の指令値を作成する。当該回転速度補正量は、同一の印刷領域に対する印刷が完了するまでは同一の値を使用するが、印刷完了した後に回転パターン設定部32に出力され、次の印刷領域に対する位置合わせ等の印刷準備段階から給紙ロール1aの回転速度に反映される。
【0044】
このようにして、印刷領域毎に給紙ロール1aの巻径変化に応じて回転速度補正量を更新することにより、毎回印刷時の用紙1の搬送速度をほぼ同一にすることができる。そのために、用紙1の搬送速度と印刷ヘッド3の印刷動作との相対関係を同一に保ち、常に高品質な印刷を行うことができる。また、同一の印刷領域に対しては同一の回転速度補正量を保持するように構成することで、用紙1を給紙方向、印刷方向に繰り返し搬送させても検出誤差によって各色の印刷位置にズレが生じないようにしている。さらには、回転速度補正量を作成するための搬送距離の検出等を、起動時以外には印刷と同時に行うことで補正量の設定にかかる時間短縮を図ることが可能となっている。
【0045】
以上のように、本実施形態におけるプリンタは、プラテンローラ4と当該プラテンローラ4に弾接する印刷ヘッド3との間で設定される印刷位置Pに、給紙ロール1aから繰り出された用紙1をインクリボン2と重合させた状態で送り込みながら、前記印刷ヘッド3に印刷ヘッド制御部36より信号を与えて印刷動作を行わせることで印刷を行うものであって、前記給紙ロール1aを駆動するための給紙ロール駆動手段5を備え、当該給紙ロール駆動手段5によって駆動される給紙ロール1aの回転速度が印刷位置における用紙1の搬送速度を規定するように構成するとともに、当該用紙1の搬送速度と前記印刷ヘッド3の印刷動作速度との相対関係を同一に保ちつつ印刷するための速度補正を前記給紙ロール1aの回転速度行うように構成したものである。
【0046】
このように構成しているため、印刷時の用紙1の搬送速度を給紙ロール1aによって決定しつつ、印刷中の用紙1の搬送速度と印刷ヘッド3における印刷動作速度との関係を同一に保つことができ適切な印刷条件を保持することができるため、微小突起を有するグリップローラ521(図4参照)を用いなくても高品質な印刷を精度良く行うことができる。
【0047】
また、前記給紙ロール1aが所定量の回転を行う間に搬送される用紙1の搬送距離を検出する搬送距離検出手段6と、前記給紙ロール1aの回転量および当該給紙ロール1aの回転量に対応する前記用紙1の搬送距離の検出値を基に前記給紙ロール1aの印刷時の回転速度を前記用紙1の搬送速度がほぼ一定となるように補正する回転速度補正手段34とを備えるように構成しているため、給紙ロール1aの回転量および用紙1の搬送距離によって把握できる給紙ロール1aの巻径の変化に応じて給紙ロール1aの回転速度を補正することで、印刷時に用紙1の搬送速度をほぼ一定に保つことができるため、適切な印刷条件を保ちつつ常時高品質な印刷を行うことができる。
【0048】
さらに、印刷時の前記給紙ロール1aの回転量および当該給紙ロール1aの回転量に対応する前記用紙1の搬送距離の検出値を基にして、次の印刷領域に対する印刷の開始前に前記給紙ロール1aの回転速度を補正するとともに、同一の印刷領域に対する印刷を行う間は前記給紙ロール1aの回転速度を同一に保持するように構成しているため、印刷を行っている間に次の印刷に向けて回転速度補正量を作成しておき、次の印刷開始時に当該補正量を反映させることで、時間短縮になるとともに常に誤差の少ない条件で印刷を行うことができる。また、同一の印刷領域に対して複数の色を重ねて印刷を行う場合でも、回転速度を一定に保っていることから制御上の誤差を生じることがないため、印刷ズレを生じることがなく高品質な印刷を行うことができる。
<変形例>
【0049】
上述の第1実施形態は、図2に模式的に示したような形態に変形して使用することができる。図1と同じ部分については同じ符号を用いて説明を省略する。
【0050】
この変形例においては、給紙ロール1aの駆動手段105が有する駆動源として、一般的なモータとしてDCモータ112を使用するものである。この場合には、当該モータ112の回転数を判別するため、プーリ112aの回転量を検知するエンコーダ143を備えており、モータ制御部133は上記エンコーダ143より発せられるパルス数および当該パルス数の増加速度を監視しつつ、給紙ロール1aの回転量および回転速度が回転パターン設定部32によって設定された回転パターンに合致するよう上記モータ112を制御する。
【0051】
以上のように、駆動手段105を構成しても、図1に示す場合と同様にして給紙ロールの回転速度を補正することができ、上記と同様の効果を得ることができる。
<第2実施形態>
【0052】
この実施形態のプリンタは、図3に模式的に示したような装置構成を採る。図中においては、図1と共通する部分には同一符号を付している。
【0053】
本実施形態のプリンタは、用紙1の搬送速度と印刷ヘッド3の印刷動作との相対関係を同一に保つために、給紙ロール1aの回転速度を変えることなく、巻径の変化に伴って変化する用紙1の搬送速度に応じた速度補正を印刷ヘッド3の印刷動作速度に対して行うものである。
【0054】
そのために、回転パターン設定部232より得られる給紙ロール1aの回転量と、その際に搬送距離検出手段6によって得られる搬送距離とを印刷速度補正手段237に入力し、当該印刷速度補正手段において印刷動作パターンを変更するための印刷動作補正量を作成し、印刷動作パターン設定部235に出力するものである。印刷動作パターン設定部235では、その補正量に応じて印刷ヘッド3が有する図示しない発熱素子に対する通電の変化速度と、単位時間あたりの通電量とを変化させた印刷動作パターンを作成し、印刷ヘッド制御部36に出力し、この印刷動作パターンに応じて印刷ヘッド制御部36より具体的な印刷ヘッド3への通電が行われる。
【0055】
こうした印刷動作速度の補正量の作成は、上述の第1実施形態の場合と同様に、プリンタの起動時と印刷時に行う。そして、次の印刷領域への印刷が開始する前に当該印刷速度補正量を反映させることで、給紙ロール1aの巻径の変化に即した印刷動作速度とすることができる。
【0056】
このように印刷動作速度を変更することによっても、用紙速度と印刷ヘッド3の印刷動作との相対関係を同一に保つことができるため、上記第1の実施形態と同様に、印刷条件を適正に保ち常に高品質な印刷を行うことができる。
【0057】
以上のように、本実施形態におけるプリンタは、プラテンローラ4と当該プラテンローラ4に弾接する印刷ヘッド3との間で設定される印刷位置Pに、給紙ロール1aから繰り出された用紙1をインクリボン2と重合させた状態で送り込みながら、前記印刷ヘッド3に印刷ヘッド制御部36より信号を与えて印刷動作を行わせることで印刷を行うものであって、前記給紙ロール1aを駆動するための給紙ロール駆動手段5を備え、当該給紙ロール駆動手段5によって駆動される給紙ロール1aの回転速度が印刷位置における用紙1の搬送速度を規定するように構成するとともに、当該用紙1の搬送速度と前記印刷ヘッド3の印刷動作速度との相対関係を同一に保ちつつ印刷するための速度補正を前記印刷ヘッド3の印刷動作速度に対して行うように構成したものである。
【0058】
このように構成しているため、上述の第1実施形態と同様に、印刷時の用紙1の搬送速度を給紙ロール1aによって決定しつつ、印刷中の用紙1の搬送速度と印刷ヘッド3における印刷動作速度との関係を同一に保つことができ適切な印刷条件を保持することができるため、微小突起を有するグリップローラ521(図4参照)を用いなくても高品質な印刷を精度良く行うことができる。
【0059】
また、前記給紙ロール1aが所定量の回転を行う間に搬送される用紙1の搬送距離を検出する搬送距離検出手段6と、前記給紙ロール1aの回転量および当該給紙ロール1aの回転量に対応する前記用紙1の搬送距離の検出値を基に前記印刷ヘッド3の印刷動作速度を補正する印刷速度補正手段237とを備えるように構成しているため、給紙ロール1aの巻径に応じて変化する印刷時の用紙1の搬送速度に対応して印刷動作速度を変えて、両者の相対関係を同一にして印刷条件を適正に保つことができるため、常に高品質な印刷を行うことができる。
【0060】
また、印刷時の前記給紙ロール1aの回転量および当該給紙ロール1aの回転量に対応する前記用紙1の搬送距離の検出値を基にして、次の印刷領域に対する印刷の開始前に前記印刷ヘッド3の印刷動作速度を前記用紙1の搬送速度の変化に対応するように補正するとともに、同一の印刷領域に対する印刷を行う間は前記印刷ヘッド3の印刷動作速度を同一に保持するように構成しているため、印刷を行っている間に次の印刷に向けて回転速度補正量を作成しておき、次の印刷開始時に当該補正量を反映させることで、時間短縮になるとともに常に誤差の少ない条件で印刷を行うことができる。また、同一の印刷領域に対して複数の色を重ねて印刷を行う場合でも、印刷動作速度を一定に保っていることから制御上の誤差を生じることがないため、印刷ズレを生じることがなく高品質な印刷を行うことができる。
【0061】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0062】
例えば、上述の第1実施形態および第2実施形態においては、用紙の搬送速度と前記印刷ヘッドの印刷動作速度との相対関係を同一に保つために、いずれか一方の速度に対しては補正を加えることなく、他方の速度にのみ補正を加えることで両者の相対関係が同一になるようにしているが、両者の相対関係を同一にすることができる限り双方ともに補正を加えるように構成することも可能であり、上記と同じ効果を得ることができる。
【0063】
また、上述の第1実施形態および第2実施形態においては、同一の印刷領域に対して印刷が完了するまでは、回転速度補正量または印刷動作速度補正量に同一の値を使用することで、印刷時の用紙1の搬送速度と印刷ヘッド3の印刷動作との相対関係が変わらないようにしている。こうした手法に変えて、印刷時に搬送ローラ24の搬送速度と給紙ロール1aの回転速度を常時監視することで、リアルタイムに回転速度または印刷動作速度を補正し続けることも可能である。ただし、印刷時に振動などの外部からの要因により搬送ローラ24と用紙1との間でわずかでも滑りが生じた場合、各色の印刷位置にズレが生じる恐れがあるため、上記の実施形態のように印刷領域毎に補正を行い、同一の印刷領域への印刷が完了するまでは同一の補正量を用いることが好ましい。
【0064】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…用紙
1a…給紙ロール
2…インクリボン
3…印刷ヘッド
4…プラテンローラ
5…給紙ロール駆動手段
6…搬送距離検出手段
12…ステッピングモータ
21…搬送ローラ
22…モータ
24…搬送ローラ
31…印刷指令部
32…回転パターン設定部
33…ステッピングモータ制御部
34…回転速度補正手段
35…印刷動作パターン設定部
36…印刷ヘッド制御部
41…エンコーダ
42…カウンタ
237…印刷速度補正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンローラと当該プラテンローラに弾接する印刷ヘッドとの間で設定される印刷位置に、給紙ロールから繰り出された用紙をインクリボンと重合させた状態で送り込みながら、前記印刷ヘッドに印刷ヘッド制御部より信号を与えて印刷動作を行わせることで印刷を行うプリンタであって、前記給紙ロールを駆動するための給紙ロール駆動手段を備え、当該給紙ロール駆動手段によって駆動される給紙ロールの回転速度が印刷位置における用紙の搬送速度を規定するように構成するとともに、当該用紙の搬送速度と前記印刷ヘッドの印刷動作速度との相対関係を同一に保ちつつ印刷するための速度補正を前記給紙ロールの回転速度または前記印刷ヘッドの印刷動作速度の少なくとも何れか一方に対して行うことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記給紙ロールが所定量の回転を行う間に搬送される用紙の搬送距離を検出する搬送距離検出手段と、前記給紙ロールの回転量および当該給紙ロールの回転量に対応する前記用紙の搬送距離の検出値を基に前記給紙ロールの印刷時の回転速度を前記用紙の搬送速度がほぼ一定となるように補正する回転速度補正手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
印刷時の前記給紙ロールの回転量および当該給紙ロールの回転量に対応する前記用紙の搬送距離の検出値を基にして、次の印刷領域に対する印刷の開始前に前記給紙ロールの回転速度を補正するとともに、同一の印刷領域に対する印刷を行う間は前記給紙ロールの回転速度を同一に保持することを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記給紙ロールが所定量の回転を行う間に搬送される用紙の搬送距離を検出する搬送距離検出手段と、前記給紙ロールの回転量および当該給紙ロールの回転量に対応する前記用紙の搬送距離の検出値を基に前記印刷ヘッドの印刷動作速度を前記用紙の搬送速度の変化に対応するように補正する印刷速度補正手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項5】
印刷時の前記給紙ロールの回転量および当該給紙ロールの回転量に対応する前記用紙の搬送距離の検出値を基にして、次の印刷領域に対する印刷の開始前に前記印刷ヘッドの印刷動作速度を補正するとともに、
同一の印刷領域に対する印刷を行う間は前記印刷ヘッドの印刷動作速度を同一に保持する
ことを特徴とする請求項4に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−213896(P2012−213896A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79996(P2011−79996)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】