説明

プリント・カッティング装置

【課題】演算処理負担を低減させつつ印刷位置とカット位置との位置精度を確保可能なプリント・カッティング装置を提供する。
【解決手段】プリント・カッティング装置は、プリンタヘッドにより印刷を施すときの印刷データ、およびカッタ刃によりカット加工を施すときのカットデータが格納されたコントローラを有し、コントローラが、入力された画像E,F,Gのデータを左右および前後に配列して画像群8E,8F,8Gに合成する手段と、左右および前後の少なくともいずれかの方向にカットデータをずらす補正を行うときの左右補正比率および前後補正比率を取得するための補正作動H1,H2,H3のデータを、画像群8E,8F,8Gに対して前側に配列する手段と、画像群8E,8F,8Gおよび補正作動H1,H2,H3に基づいた印刷データおよびカットデータを生成する補正値演算部、メモリとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体に対して印刷およびカット加工を施すプリント・カッティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラテンに支持されたシート状の印刷媒体に対して、インクを吐出するプリンタヘッドを搭載した印刷ユニットを左右に往復移動させる作動と印刷媒体を前後に送る作動とを組み合わせて行うことにより、印刷媒体に所望画像を印刷可能なプリンタ装置が知られている。一方で、プラテンに支持されたシート状の印刷媒体に対して、カッタ刃を搭載したカッティングユニットを左右に往復移動させる作動と印刷媒体を前後に送る作動とを組み合わせて行うことにより、印刷媒体に所望のカット加工を施すことが可能なカッティング装置も知られている。例えば、台紙とシール紙とが貼り合わされた印刷媒体を用いて上記プリンタ装置により所望画像を印刷し、その印刷媒体に対して上記カッティング装置により所望画像の輪郭に沿ってカット加工を施すことで、様々な模様および形状のシールを作成することができる。また、上記プリンタ装置にカッティングユニットを追加して搭載し、印刷およびカット加工が1台の装置(プリント・カッティング装置)で行えるように構成されたものも開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、上記のようなシールを作成する場合、印刷位置とカット位置との位置精度が要求されるが、この要求に応えるべく例えば前後方向へ一律に送り補正を行うと所望画像が前後に伸縮することがあり、カット位置の精度を十分に確保することが難しい。また、印刷ユニットとカッティングユニットとでは、装置固有の製造精度および作動精度に基づく誤差等により、印刷媒体に対して同一距離だけ移動させた場合であっても、僅かながら移動位置がずれて異なっていることがある。このような問題を解決するために、従来のプリント・カッティング装置においては、所望画像に対応させたトンボ(目印)を印刷しておき、カット時にトンボの位置を読み込んでトンボに対する所望画像の印刷位置を検出することによりカット位置データを補正し、印刷位置に対するカット位置の位置精度を確保していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−266377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のトンボを印刷する構成では、検出されたトンボの位置は、そのトンボに対応した所望画像のカット位置データにしか反映されない構成となっており、例えば一旦算出した補正基準値を各所望画像に適用してカット位置データを算出する構成と比較して、演算処理に対する負担が大きい。一方、一旦算出した補正基準値を全ての所望画像に適用してカット位置データを算出しようとすると演算処理に対する負担は軽減されるが、各所望画像での誤差を十分に補正基準値に反映させることが難しく、印刷位置とカット位置との位置精度の確保が困難になる。このように、演算処理に対する負担の軽減と、印刷位置とカット位置との位置精度の確保とを両立させることが難しいという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、演算処理負担を低減させつつ印刷位置とカット位置との位置精度を確保可能なプリント・カッティング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明に係るプリント・カッティング装置は、平面状のプリント面を有したプリント媒体(例えば、実施形態における印刷媒体8)を支持する媒体支持手段(例えば、実施形態におけるプラテン30)と、前記媒体支持手段に支持された前記プリント媒体のプリント面と対向して走査方向に延びたガイドレールと、前記ガイドレールに前記走査方向に移動可能に設けられて前記プリント面に印刷を施すプリンタヘッドと、前記ガイドレールに前記走査方向に移動可能に設けられて前記プリント媒体にカット加工を施すカッティングヘッド(例えば、実施形態におけるカッタ刃53)と、前記ガイドレールに対して、前記走査方向に直交する搬送方向に前記プリント媒体を相対移動させる媒体搬送機構(例えば、実施形態における媒体送り機構20)と、前記プリンタヘッドにより印刷を施すときの印刷データ、および前記カッティングヘッドによりカット加工を施すときのカットデータが格納されたデータ格納手段(例えば、実施形態におけるコントローラ9)とを有し、前記印刷データに基づいて前記プリンタヘッドを前記走査方向に移動させる作動と前記プリント媒体を前記搬送方向に相対移動させる作動とを組み合わせて行い前記プリント面に所望画像(例えば、実施形態における画像E,F,G)を印刷し、前記カットデータに基づいて前記カッティングヘッドを前記走査方向に移動させる作動と前記プリント媒体を前記搬送方向に相対移動させる作動とを組み合わせて行い前記所望画像に対応したカット加工を施すプリント・カッティング装置であって、前記データ格納手段が、入力された単位画像データ(例えば、実施形態における画像E,F,G)を前記走査方向および前記搬送方向の少なくともいずれかの方向に配列して画像データ群(例えば、実施形態における画像群8E,8F,8G)に合成する配列合成手段と、前記少なくともいずれかの方向に前記カットデータをずらす補正を行うときの補正基準値(例えば、実施形態における前後補正倍率X4、左右補正倍率Y4)を取得するための作動に対応した基準値取得作動用データ(例えば、実施形態における補正作動H1,H2,H3)を、前記画像データ群に対する前記搬送方向上流側に前記画像データ群に対応させて配列する取得作動用データ配列手段と、前記画像データ群および前記基準値取得作動用データに基づいた前記印刷データおよび前記カットデータを生成するデータ生成手段(例えば、実施形態における補正値演算部9a、メモリ9b)とを備える。
【0008】
なお、前記配列合成手段により、複数の前記画像データ群が互いに前記搬送方向にずれて合成され、前記取得作動用データ配列手段により、前記複数の画像データ群のそれぞれに対応させて前記基準値取得作動用データが配列され、前記複数の画像データ群におけるそれぞれのカットデータは、対応した前記基準値取得作動用データに基づいて取得された前記補正基準値を用いて補正される構成が好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るプリント・カッティング装置は、補正基準値を取得するための作動に対応した基準値取得作動用データを、前記画像データ群に対する搬送方向上流側に画像データ群に対応させて配列し、データ生成手段により画像データ群および基準値取得作動用データに基づいた印刷データおよびカットデータを生成する構成となっている。そのため、本発明に係るプリント・カッティング装置においては、基準値取得作動用データに基づいて取得された補正基準値を用いて、その基準値取得作動用データに対応した画像データ群全体のカットデータの補正を行うことができるので、検出されたトンボの位置がそのトンボに対応した所望画像のカット位置データのみに反映される従来の構成と比較して、演算処理負担を低減しつつ印刷位置とカット位置との位置精度を確保可能である。
【0010】
なお、配列合成手段により複数の画像データ群が互いに搬送方向にずれて合成され、複数の画像データ群におけるそれぞれのカットデータは、対応した基準値取得作動用データに基づいて取得された補正基準値を用いて補正される構成が好ましい。このように構成すると、画像データ群毎に画像データ群に対応した補正基準値を取得することが可能となり、そのため、各画像データ群での誤差を十分に補正基準値に反映させて印刷位置とカット位置との位置精度を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るプリント・カッティング装置の斜視図である。
【図2】図1中のII−II部分の断面図である。
【図3】上記プリント・カッティング装置のガイド部材近傍を示した斜視図である。
【図4】上記プリント・カッティング装置の制御系統図である
【図5】画像が配列された状態の印刷媒体の平面図である。
【図6】原点位置でのずれ確認時の印刷媒体の平面図であって、(a)はテスト画像に対してカット位置がずれた状態を、(b)はテスト画像に対してカット位置が一致した状態をそれぞれ示す。
【図7】左右方向および前後方向へのずれ確認時の印刷媒体の平面図である。
【図8】上記プリント・カッティング装置の作動順序の一例である。
【図9】左右方向および前後方向へのずれ確認時のフローチャートである。
【図10】図5とは異なる位置で補正値の取得を行う場合の印刷媒体の平面図である。
【図11】図5とは異なる位置で補正値の取得を行う場合の印刷媒体の平面図である。
【図12】別の実施例に係る左右方向および前後方向へのずれ確認時のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、各図面において矢印方向でプリント・カッティング装置1の前後、左右、および上下方向を示し、以下この方向を用いて説明を行う。
【0013】
図1〜4を参照しながら、本発明を適用したプリント・カッティング装置1の概要構成について説明する。プリント・カッティング装置1は、図1に示すように、左右一対の支持脚2a,2aからなる支持部2と、この支持部2に支持されて左右に延びる本体部3とから構成される。本体部3の左右端部にはそれぞれ、左本体部5および右本体部6が形成されており、これらの外周部分は本体カバー4により覆われている。左本体部5の前面側には、操作スイッチ類や表示装置類等からなる入力操作部7が設けられている。左本体部5の内部には、入力操作部7に対して信号を送受信可能に接続されたコントローラ9が設けられている。
【0014】
左本体部5と右本体部6との間には、図2に示すように、媒体送り機構20、印刷およびカット加工の対象であるシート状の印刷媒体8を支持する平板状のプラテン30、このプラテン30の上方を左右に延びて設けられたガイド部材40、カッティングユニット50、印刷ユニット60、メンテナンス装置70およびユニット駆動装置80等が配設されている。
【0015】
媒体送り機構20は、図3に示すように、ガイド部材40の下部に左右に並んで配設された複数のピンチローラ15と、プラテン30に対して上方に露出してピンチローラ15と上下に当接可能となった送りローラ16とから構成される。送りローラ16は、前後駆動モータ16aにより回転駆動されるようになっている。この構成から、送りローラ16とピンチローラ15との間に印刷媒体8を挟んだ状態で、前後駆動モータにより送りローラ16を回転させることにより、印刷媒体8を所定距離だけ前後に送ることができる。各ピンチローラ15は、送りローラ16に対して独立して押圧状態が設定可能に構成されている。
【0016】
カッティングユニット50は、図2に示すように、カッティングキャリッジ51と、カッタホルダ52とから構成される。カッティングキャリッジ51は、ガイド部材40の前面側に形成されたガイドレール40aに対して左右へ移動可能に取り付けられており、カッタホルダ52の取り付けベースとなっている。カッタホルダ52は、カッティングキャリッジ51に対して上下移動可能に搭載されており、このカッタホルダ52に対してカッタ刃53が着脱可能に取り付けられている。また、カッティングキャリッジ51は、後述する右フック14と係合可能となっている。
【0017】
印刷ユニット60は、印刷キャリッジ61と複数のプリンタヘッド62とから構成される。印刷キャリッジ61は、上記カッティングキャリッジ51と同様に、ガイドレール40aに対して左右へ移動可能に取り付けられており、プリンタヘッド62の取り付けベースとなっている。また、印刷キャリッジ61の左面側には、後述する左フック12と係合可能な係合部61aが形成されている(図3参照)。複数のプリンタヘッド62は、例えばマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの各色から構成され、それぞれ下面に吐出ノズル(図示せず)が配設されており、下方に向けてインクを吐出可能となっている。
【0018】
図2および3に示すように、左本体部5の内部には、メンテナンス装置70が設けられている。メンテナンス装置70の上面には、プリンタヘッド62の下面形状に応じて形成された4つの吸引キャップ71が配設されている。プリンタヘッド62を使用しないときにこれをメンテナンス装置70の位置まで移動させるとともに吸引キャップ71によりプリンタヘッド62の下面を覆うことで、吐出ノズルにおけるインクの乾燥(増粘)を防止可能となっている。
【0019】
ユニット駆動装置80は、図2および3に示すように、駆動プーリ81および従動プーリ82、この駆動プーリ81を回転駆動する左右駆動モータ83、両プーリ81,82に掛け回された無端状の歯付駆動ベルト84、および歯付駆動ベルト84に連結された駆動キャリッジ85から構成される。駆動キャリッジ85には、印刷キャリッジ61と駆動キャリッジ85とを分離可能に連結する左連結機構86、およびカッティングキャリッジ51と駆動キャリッジ85とを分離可能に連結する右連結機構87が設けられている。よって、左右駆動モータ83、左連結機構86および右連結機構87の駆動を制御することにより、カッティングユニット50または印刷ユニット60を駆動キャリッジ85に連結させた状態で、ガイドレール40aに沿って左右に移動させる制御を行うことができるようになっている。
【0020】
図2に示すように、左本体部5の内部には、左フック12を上下に揺動自在に支持する左フック支持部11が固設されている。一方、右本体部6の内部には、右フック14を上下に揺動自在に支持する右フック支持部13が固設されている。
【0021】
以上ここまでは、プリント・カッティング装置1の概要構成について説明した。このプリント・カッティング装置1においては、印刷媒体に印刷のみを施す作動、カット加工のみを施す作動、および、印刷とその印刷画像に対応させたカット加工とをまとめて行う作動のうちから、目的に応じて選択された作動を実行させることが可能である。例えば、印刷とカット加工とをまとめて行う作動によれば、まず印刷ユニット60ユニットと駆動装置80とを連結して印刷対象である印刷媒体8に所望画像を印刷し、印刷ユニット60とユニット駆動装置80との連結を解除した後、カッティングユニット50とユニット駆動装置80とを連結して、所望画像の輪郭に沿ってカッティングユニット50によりカット加工を施すことができる。このため、所望画像の印刷とカット加工とを、印刷媒体8をプリント・カッティング装置1からその都度取り外すことなく連続して行うことができる。
【0022】
このときのプリント・カッティング装置1の作動は、コントローラ9に内蔵されたメモリ9bに記憶された画像に関するデータ(例えば、色彩データや位置データ)、印刷媒体8の種類、およびカッタ刃53に関するデータ(例えば、カッタ刃53の回転中心から刃先までのオフセット値)等に基づく作動信号が、各構成部分に出力されて実行される。具体的には、コントローラ9から作動信号が出力されることにより、前後駆動モータ16aの駆動、左フック12の揺動、右フック14の揺動、カッタホルダ52の上下動、プリンタヘッド62からのインクの吐出、左右駆動モータ83の駆動、左連結機構86による連結、および右連結機構87による連結が制御されて、プリント・カッティング装置1が作動するようになっている。
【0023】
このときにおいて所望画像の印刷データ(画像データおよび印刷位置データを含む)は、あらかじめ設定される原点位置を基準として設定されている。このため、この原点位置を基準として所望画像の印刷位置を表す印刷位置データから、輪郭部分を示すデータを抽出してカット位置データとし、そのカット位置データに基づいて印刷媒体8に対してカッタ刃53を相対移動させてカット加工が施される。そうすることにより、所望画像のそれぞれにおいて、輪郭に沿った位置精度の高いカット加工を実行できる。
【0024】
しかしながら、印刷ユニット60とユニット駆動装置80とを連結した場合と、カッティングユニット50とユニット駆動装置80とを連結した場合とで、組立精度、作動精度に基いた誤差等が生ずるため、同一の位置データに基づいて左右に移動させても実際に移動した位置(左右に移動した距離)に誤差(ずれ)が発生する場合がある。特にカッティングユニット50の左右への移動距離が大きい場合、この誤差が顕著に発生しやすい。
【0025】
また、印刷媒体8に対して印刷を施した後カット加工を施す場合、所望画像の印刷された部分がピンチローラ15により押圧されると印刷品質を低下させる虞があるため、印刷時には、複数のピンチローラ15のうちで下方に印刷媒体8が位置しているピンチローラ15全てを送りローラ16に押し付けておき、一方カット加工時には、印刷が施されていない印刷媒体8の左右端部に位置したピンチローラ15のみを送りローラ16に押し付けるように設定される。このようなことから、印刷時とカット時とでは、同一の駆動信号に基づいて前後駆動モータ16aにより送りローラ16を回転させて印刷媒体8を前後に移動させても、実際に印刷媒体8が前後に移動した距離に誤差が発生する場合があり、カット加工時に印刷媒体8の位置ずれが生じて印刷位置とカット位置とに誤差が生じる虞もある。特に印刷媒体8の前後への移動距離が大きい場合、この誤差が顕著に発生しやすい。このように、印刷時とカット時とで位置の誤差が発生すると、位置精度の確保されたカット加工(所望画像の輪郭に沿った正確なカット加工)が困難となる。
【0026】
さらに、印刷媒体8に対して、前後方向に数十メートルにも及ぶような範囲に印刷およびカット加工を施す場合、例えば前端部分から後端部分へと印刷が行われた後、再度前端部分に戻して前端部分から後端部分へとカット加工が行われる。カット時には上述のように、印刷が施されていない印刷媒体8の左右端部に位置したピンチローラ15のみが送りローラ16に押し付けられているため押圧状態が不安定となりやすく、例えば印刷媒体8が前後方向に対して若干斜めに送られる(蛇行する)ことがある。この蛇行が発生すると、所望画像の輪郭に沿った正確なカット加工が困難となる。
【0027】
そこで、本発明を適用したプリント・カッティング装置1は、印刷時とカット時とで上述のような原因により誤差が発生する場合であっても、その誤差を予め検出してカット位置データに反映させることにより、所望画像に対して位置精度が確保された高品質なカット加工を施すことができる構成となっている。特に前後方向に数十メートルにも及ぶような範囲に印刷およびカット加工を施す場合においても、コントローラ9における演算処理負担をなるべく軽減しつつ、所望画像に対して位置精度が確保されたカット加工が可能な構成となっている。
【0028】
以下においては、プリント・カッティング装置1を用いて、画像E,F,Gおよび補正作動の配置を行い、原点位置における印刷位置に対するカット位置の誤差を検出するとともに左右および前後方向への印刷位置に対するカット位置の誤差を検出した後、画像群8Eを印刷してその輪郭に沿ってカット加工を施し、同様にして誤差を検出した後、画像群8Fを印刷してその輪郭に沿ってカット加工を施し、同様にして誤差を検出した後、画像群8Gを印刷してその輪郭に沿ってカット加工を施す場合を図5〜9を参照しながら説明する。なお、図8に上記作動の全体のフローチャートを示しており、図8中のステップS90に対応する説明図が図6で、ステップS200およびS250のフロー内容を詳細に示したものが図9で、ステップS200およびS250に対応する説明図が図7である。
【0029】
ステップS89において、ユーザーは必要個数(例えば三角形の画像Eが500個、四角形の画像Fが200個、丸形状の画像Gが100個)を基にして、データ上において印刷媒体8に画像E,F,Gを配列して画像群8E,8F,8Gを形成するとともに、画像群8E,8F,8Gに対して後述する補正比率を算出するための補正作動を実行させる位置を決定する。画像E,F,Gの配列および補正作動位置の決定は、ユーザーが入力操作部7の表示装置に対して行い、その結果がコントローラ9に入力される。図5には入力結果の一例を示しており、ここでは印刷媒体8の前端から順に補正作動H1、画像群8E、補正作動H2、画像群8F、補正作動H3および画像群8Gが配置され、補正作動H1〜H3はそれぞれ左端部分に配置されている。また、図5には、画像群8Eとして500個の画像Eを左右に10個且つ前後に50個並べ、画像群8Fとして200個の画像Fを左右に10個且つ前後に20個並べ、画像群8Gとして100個の画像Gを左右に10個且つ前後に10個並べた状態を例示している。
【0030】
なお、画像E,F,Gの配列および補正作動位置は、ユーザーが任意に決定可能であるが、複数種類の画像を配置する場合、図5のように画像の種類毎にまとめて画像群として配置すると、データ上での演算処理負荷が低減できる。また、前後方向の途中に補正作動H2,H3を配置すると、後述するようにこの位置において印刷媒体8の蛇行等に起因する印刷位置に対するカット位置のずれを検出できる。
【0031】
次にステップ90に進み、ここでは図5に示す補正作動H1のうちの原点ずれの確認が行われる。まず、プラテン30の上面に印刷媒体8を載置した状態で、ユーザーが入力操作部7の表示装置を操作し、印刷ユニット60とユニット駆動装置80とを連結させるとともに、ユニット駆動装置80に設けられた切り替えレバー(図示せず)により、下方に印刷媒体8が位置したピンチローラ15の全てを送りローラ16に押し付け、ピンチローラ15と送りローラ16との間に印刷媒体8を挟持させる。
【0032】
そして、メモリ9bからテスト画像91に関するデータが読み出され、それに基づいてプリンタヘッド62からインクを吐出させながら印刷ユニット60を左右に移動(走査方向の移動)させる作動と、印刷媒体8を前方(搬送方向)に送る作動とを組み合わせて行い、例えば正方形のテスト画像91が印刷される(図6(a)参照)。
【0033】
印刷ユニット60とユニット駆動装置80との連結が解除された後、カッティングユニット50とユニット駆動装置80とが連結される。そして、ユニット駆動装置80の切り替えレバーにより、印刷媒体8の左右端部に位置したピンチローラ15のみが送りローラ16に押し付けられ、その他のピンチローラ15は送りローラ16に対して離間した状態に設定される。この状態で、テスト画像91の印刷位置データから抽出したテスト画像91の輪郭を示すカット位置データに基づいて、テスト画像91の輪郭にカット加工を施す。
【0034】
このようにしてテスト画像91の輪郭にカット加工を施したときに、上述した誤差がなければテスト画像91の輪郭に沿って重なるようにカット加工されるはずである。しかし、上述した誤差がある場合には、例えば図6(a)に示すように、実線で示したテスト画像91の輪郭に対して、点線で示した実際のカット位置91aが右側後方にずれてカット加工される。このときユーザーは、印刷位置に対するカット位置の左右および前後へのおおよそのずれ量を目視で読み取り、その値(右側へm、後側へk)を入力操作部7の表示装置に入力する。そうすることにより、テスト画像91に対応したカット位置データが、左側へm、前側へkだけずらして設定される。
【0035】
そして、再度テスト画像91を印刷し、ずらして設定されたカット位置データに基づいてカット加工を施すと、図6(b)に示すように、テスト画像91の輪郭に重なるようにカット加工される。ここでは、正確なずれ量を読み取った場合を説明したが、再度テスト画像91を印刷しカット加工してもずれている場合(ずれ量を読み間違った場合)にはさらにそのときのずれ量を読み取り、テスト画像91の輪郭に重なるまで繰り返して行う。テスト画像91の輪郭とカット加工の位置が重なったときのずらし量は、メモリ9bに記憶され、後述する印刷位置データからカット位置データを抽出する際にその分だけずらして抽出される。
【0036】
続いてステップS200に進む。このステップS200では、図5に示す補正作動H1のうちの左右ずれの確認が行われる。ステップS200について、図7および9を参照しながら説明すると、まずステップS201において、メモリ9bからテスト画像101〜111に関するデータが読み出される。それに基づいて、例えば正方形のテスト画像101〜111が印刷される。図7には、原点を示すテスト画像101に対して右方に5つのテスト画像102〜106が等間隔で印刷され、また、テスト画像101に対して後方に5つのテスト画像107〜111が等間隔で印刷された場合を例示している。
【0037】
テスト画像101とテスト画像102との左右間隔Y1、およびテスト画像101とテスト画像107との前後間隔X1は、例えば画像Eの大きさに応じて設定される構成が好ましい。また、左右間隔Y1および前後間隔X1は、誤差を精度良く検出するためになるべく大きく(例えば300mm以上に)設定されることが好ましい。なお、テスト画像101〜111は、印刷媒体8自体の表面の色とは異なる色により印刷される。
【0038】
次にステップS202に進み、印刷媒体8の左右端部に位置したピンチローラ15のみが送りローラ16に押し付けられた状態に設定された後、テスト画像102の印刷位置データから抽出したテスト画像102の輪郭を示すカット位置データに基づいて、テスト画像102の輪郭にカット加工を施す。このとき、一旦カッタ刃53をテスト画像101の上方に位置させ、その状態からカッティングユニット50を右動させてテスト画像102の上方に位置させて、カット加工を開始する。このようにすることで、左右間隔Y1を移動する間に発生する誤差を、テスト画像102に対する実際のカット位置に忠実に反映させることができる。なお、このときに用いるテスト画像102は他のテスト画像、例えば、テスト画像103を用いても良い。
【0039】
上述のステップS90においてテスト画像91(図7のテスト画像101に相当)における印刷位置とカット位置とが一致するようにカット位置データがずらして設定されているので、印刷ユニット60とユニット駆動装置80とを連結した場合と、カッティングユニット50とユニット駆動装置80とを連結した場合とで、組立精度、作動精度に基いた誤差等がなければ、このようにしてテスト画像102の輪郭にカット加工を施したときに、テスト画像102の輪郭に沿って重なるようにカット加工されるはずである。しかし、上記の組立精度、作動精度に基いた誤差等がある場合には、例えば図7に示すように、実線で示したテスト画像102の輪郭に対して、点線で示した実際のカット位置102aが左側にずれてカット加工される。
【0040】
続いてステップS203において、ユーザーは、テスト画像102の輪郭に対するカット位置102aの左右方向へのずれ量が、カット加工の位置精度を確保するための限界値である左右許容ずれ量Y2(例えば、約0.2mm)よりも大きいか否かを目視で判断する。また、テスト画像102に対してカット位置102aが、左右どちら側にずれているかを目視で判断する。このとき、テスト画像102は、印刷媒体8自体の色とは異なる色で印刷されているので、台紙からシール部分を剥がすことにより、おおよそのずれ量およびずれ方向を簡単に判断できる。
【0041】
そして、ずれ量が左右許容ずれ量Y2よりも大きいと判断した場合、ユーザーは、そのずれている方向である左側を入力操作部7に入力し、ステップS204に進む。一方、ステップS203において、ずれ量が左右許容ずれ量Y2よりも小さく左右方向への補正が不要と判断した場合、ユーザーはそのことを入力操作部7に入力し、後述する左右補正倍率Y4が算出されないでステップS207に進む。すなわち、ステップS203における入力結果より、左右方向へのずれ量が左右許容ずれ量Y2より小さい場合には、ステップS204〜S206を実行することなくステップS207へ進み、一方、左右許容ずれ量Y2より大きい場合には、以下に説明するS204〜S206を実行して左右補正倍率Y4を算出する。
【0042】
このステップS203において、印刷位置データ(ステップS90で記憶されたずらし量だけ印刷位置データをずらして抽出したカット位置データ)をそのまま用いてカット加工を施すと、印刷位置に対して実際のカット位置が左側にずれることが分かる。このことに加えて、印刷位置に対して実際のカット位置が左側にどれだけずれるかが分かれば、所望画像に対して位置精度の確保されたカット加工が可能となる。但し、このずれ量を正確に測定するのは難しい。そこで、以下のステップS204およびS205においてずれ量を実際に測定することなく目視により簡単に検出でき、その測定結果を基にステップS206において左右補正倍率Y4を算出する構成としている。
【0043】
まず、ステップS204では、コントローラ9において、テスト画像103の印刷位置データを上記左右許容ずれ量Y2以下の値、例えば0.1mmだけ、ステップS203で入力された左側に対して反対の右側に移動させた上で、輪郭を示すカット位置データが抽出される。テスト画像104に対しては印刷位置データを例えば0.2mmだけ右側に移動させた上で、テスト画像105に対しては印刷位置データを0.3mmだけ右側に移動させた上で、テスト画像106に対しては印刷位置データを0.4mmだけ右側に移動させた上で、各々輪郭を示すカット位置データが抽出される。
【0044】
このように、テスト画像102からの左右方向における距離に応じて、印刷位置データの右側への移動量を0.1mmずつ増加させて設定することで、テスト画像103〜106のいずれかにおいて印刷位置とカット位置とが一致するはずである。そのテスト画像を目視で判断することにより、印刷位置とカット位置とのずれ量を実際に測定することなく、印刷位置データを右側へどれだけ移動させることにより印刷位置とカット位置とを左右方向において一致させることができるかが分かる。なお、上記0.1mmは、予めメモリ9bに設定されている値であり、ユーザーが入力操作部7を操作することにより変更することも可能である。
【0045】
そして、テスト画像103〜106のそれぞれに対して、抽出されたカット位置データに基づいてカット加工を施す。このときも上記テスト画像102と同様に、カッティングユニット50を一旦テスト画像101の位置に移動させた後、各テスト画像の位置に右動させてカット加工を施す。このようにして実際にカット加工された位置を、点線のカット位置103a、カット位置104a、カット位置105a、およびカット位置106aで示す。
【0046】
続いてステップS205において、ユーザーはテスト画像103〜106のうちから、テスト画像の輪郭に対する実際のカット位置の左右へのずれが最も小さいテスト画像を目視で選び出す。図7の場合では、テスト画像104の輪郭とカット位置105aとがほぼ一致している。そこで、ユーザーはテスト画像104におけるずれが最も小さいと判断し、テスト画像102から2つ目のテスト画像104においてずれが最も小さくなることを入力操作部7に入力する。テスト画像104において最もずれが小さくなることから、テスト画像101からテスト画像104までの印刷位置データ上での距離と、この距離に移動量分の0.2mmを加えた距離との比率を用いて、印刷媒体8の任意の位置のカット位置データをずらす補正をすることにより、左右方向に印刷位置とカット位置とを一致させることができることが分かる。一般に誤差は距離に比例するため、上記比率を以下のように左右補正倍率Y4として算出しておくことで、カット位置データの算出が容易となる。
【0047】
ステップS206に進み、コントローラ9に内蔵された補正値演算部9aにおいて、ステップS203で入力された「左側」、およびステップS205で入力された「テスト画像102から2つ目」を基に、左右補正倍率Y4を算出する。具体的には、ステップS205において最もずれが小さいと判断されたテスト画像104およびテスト画像101の印刷位置データをメモリ9bから読み出して、テスト画像101からテスト画像104までの左右距離Y3を算出する。そして、右側を正方向、左側を負方向とすると、テスト画像102から2つ目のテスト画像104において、印刷位置データを0.2(0.1×2)mmだけ右側(正方向)にずらしたときに、印刷位置と実際のカット位置とのずれが最も小さくなることより、左右補正倍率Y4は次式(1)により算出される。
【0048】
Y4=(Y3+0.1×2)/Y3 … (1)
【0049】
この左右補正倍率Y4と印刷位置データのうちの左右方向位置を示す座標とを掛け合わせることにより、印刷位置に対して左右方向へ位置ずれのないカット加工が可能なカット位置データを求めることができる。また、式(1)における「2」は、ステップS203において印刷位置データを左右へ移動させることなくそのまま用いてカット加工を施したテスト画像102を基準にして右側の何番目に、ずれが最も小さくなったテスト画像104が位置しているかを示している。なお、ステップS203から直接ステップS207に進む場合というのは、式(1)における「2」の値が「0」の場合であり、Y4=1と求まる。
【0050】
この補正倍率は印刷位置と実際のカット位置とのずれが最も小さくなるテスト画像に応じて決まる。例えば、テスト画像102から3つ目のテスト画像105において、印刷位置データを0.3(0.1×3)mmだけ左側(負方向)にずらしたときに、印刷位置と実際のカット位置とのずれが最も小さくなる場合、左右補正倍率Y4’は次式(1)’により算出される。なお、次式(1)’において、左右距離Y3’は、テスト画像101からテスト画像105までの左右距離である。
【0051】
Y4’=(Y3’−0.1×3)/Y3’ … (1)’
【0052】
このように左右補正倍率Y4が算出されてステップS206が終了すると、ステップS250に進む。このステップS250では、図5に示す補正作動H1のうちの前後ずれの確認が行われる。ステップS250について、図7および9を参照しながら説明すると、まずステップS207において、ステップS202と同様にして、テスト画像101の後方に位置したテスト画像107の輪郭にカット加工を施す。ここで、例えば印刷時とカット時とでピンチローラ15の押圧設定が異なることに起因して、印刷媒体8の前後への移動量に誤差が発生する場合があり、その場合には例えば図7に示すように、実線で示したテスト画像107の輪郭に対して、点線で示した実際のカット位置107aが後側にずれてカット加工される。このように、上記左右方向へのずれとは異なる原因により前後方向へのずれが発生するために、ステップS250において前後方向へのずれを確認する必要がある。一方、このような誤差がない場合には、テスト画像107の輪郭に沿って重なるようにカット加工されるはずである。
【0053】
続いてステップS208において、ユーザーは、テスト画像107の輪郭に対するカット位置107aの前後方向へのずれ量が、カット加工の位置精度を確保するための限界値である前後許容ずれ量X2(例えば、約0.2mm)よりも大きいか否かを目視で判断する。また、テスト画像107に対してカット位置107aが、前後どちら側にずれているかを目視で判断する。ずれ量が前後許容ずれ量X2よりも大きいと判断した場合、ユーザーは、そのずれている方向である後側を入力操作部7に入力し、ステップS209に進む。一方、ステップS208において、ずれ量が前後許容ずれ量X2よりも小さく前後方向への補正が不要と判断した場合、ユーザーはそのことを入力操作部7に入力しステップS251へと進む。
【0054】
まずステップS209では、コントローラ9において、テスト画像108の印刷位置データを上記前後許容ずれ量X2以下の値、例えば0.1mmだけ、ステップS208で入力された後側に対して反対の前側に移動させた上で、輪郭を示すカット位置データが抽出される。テスト画像109に対しては印刷位置データを例えば0.2mmだけ前側に移動させた上で、テスト画像110に対しては印刷位置データを0.3mmだけ前側に移動させた上で、テスト画像111に対しては印刷位置データを0.4mmだけ前側に移動させた上で、各々輪郭を示すカット位置データが抽出される。このように、テスト画像107からの前後方向における距離に応じて、印刷位置データの前側への移動量を0.1mmずつ増加させて設定することで、テスト画像108〜111のいずれかにおいて印刷位置とカット位置とが一致するはずである。そのテスト画像を目視で判断することにより、印刷位置とカット位置とのずれ量を実際に測定することなく、印刷位置データを前側へどれだけ移動させることにより印刷位置とカット位置とを前後方向において一致させることができるかが分かる。
【0055】
そして、上記のテスト画像103〜106の場合と同様にして、テスト画像108〜111のそれぞれに対して抽出されたカット位置データに基づいてカット加工を施す。このようにして実際にカット加工された位置を、点線のカット位置108a、カット位置109a、カット位置110a、およびカット位置111aで示す。
【0056】
続いてステップS210において、ユーザーはテスト画像108〜111のうちから、テスト画像の輪郭に対する実際のカット位置の前後へのずれが最も小さいテスト画像を目視で選び出す。図7の場合では、テスト画像110の輪郭とカット位置110aとがほぼ一致している。そこで、ユーザーはテスト画像110におけるずれが最も小さいと判断し、テスト画像107から3つ目のテスト画像110においてずれが最も小さくなることを入力操作部7に入力する。テスト画像110において最もずれが小さくなることから、テスト画像101からテスト画像110までの印刷位置データ上での距離と、この距離に移動量分の0.3mmを加えた距離との比率を用いて、印刷媒体8の任意の位置のカット位置データをずらす補正をすることにより、前後方向に印刷位置とカット位置とを一致させることができることが分かる。一般に誤差は距離に比例するため、上記比率を以下のように前後補正倍率X4として算出しておくことで、カット位置データの算出が容易となる。
【0057】
ステップS211に進み、コントローラ9の補正値演算部9aにおいて、ステップS208で入力された「後側」、およびステップS210で入力された「テスト画像107から3つ目」を基に、前後補正倍率X4を算出する。具体的には、ステップS210において最もずれが小さいと判断されたテスト画像110およびテスト画像101の印刷位置データをメモリ9bから読み出して、テスト画像101からテスト画像110までの前後距離X3を算出する。そして、後側を正方向、前側を負方向とすると、テスト画像107から3つ目のテスト画像110において、印刷位置データを0.3(0.1×3)mmだけ前側(負方向)にずらしたときに、印刷位置と実際のカット位置とのずれが最も小さくなることより、前後補正倍率X4は次式(2)により算出される。
【0058】
X4=(X3−0.1×3)/X3 … (2)
【0059】
この前後補正倍率X4と印刷位置データのうちの前後方向位置を示す座標とを掛け合わせることにより、印刷位置に対して前後方向へ位置ずれのないカット加工が可能なカット位置データを求めることができる。また、式(2)における「3」は、ステップS208において印刷位置データを前後へ移動させることなくそのまま用いてカット加工を施したテスト画像107を基準にして後側の何番目に、ずれが最も小さくなったテスト画像110が位置しているかを示している。なお、ステップS208からステップS251へと進む場合は、式(2)における「3」の値が「0」の場合であり、X4=1と求まる。
【0060】
このように前後補正倍率X4が算出されてステップS250が終了し、図8に示すステップS251に進む。
【0061】
ステップS251において、画像群8E(500個の画像E)を印刷媒体8に印刷する。図7には、1つの画像Eを抜き出して図示しているが、この画像Eの各頂点の印刷位置データ上での座標がA(Ya,Xa)、B(Yb,Xb)、C(Yc,Xc)であるとすると、この座標A、B、Cに基づいて印刷を施す。ここで、Ya,Yb,Ycは左右方向の座標を示し、Xa,Xb,Xcは前後方向の座標を示す。
【0062】
ステップS252に進み、画像群8E(500個の画像E)の輪郭に沿ってカット加工を施すのであるが、仮に上記の印刷位置データ上での座標A、B、Cをそのまま用いてカット加工を施すと、印刷位置に対してカット位置が全体的に左側後方にずれてしまうことになり、カット品質の低下に繋がる虞がある。そこで、本発明を適用したプリント・カッティング装置1においては、座標A、B、Cにおける左右方向の座標を示すYa,Yb,Ycの各々に左右補正倍率Y4を、前後方向の座標を示すXa,Xb,Xcの各々に前後補正倍率X4を掛け合わせることにより、カット用座標A’(Ya・Y4,Xa・X4)、B’(Yb・Y4,Xb・X4)、C’(Yc・Y4,Xc・X4)を求める。このカット用座標A’を基に移動されたカッティングユニット50と、座標Aを基に移動された印刷ユニット60とは、印刷媒体8上の同一位置に移動している。
【0063】
そのため、カット用座標A’、B’、C’の3点を直線で結ぶように、印刷媒体8に対してカッタ刃53を移動させることにより、500個の画像Eの各々に対して輪郭に沿った位置精度の高いカット加工を施すことができる。
【0064】
次にステップS253に進み、補正作動H2を実行する。この補正作動H2は上述の補正作動H1と同一であり、補正作動H2が実行されることで、画像群8E分だけ印刷媒体8が前方に送られた位置での左右補正倍率Y5および前後補正倍率X5が算出される。例えば、印刷媒体8の前端部分と画像群8Eの分だけ印刷媒体8が前方に送られた位置とでは(補正作動H1と補正作動H2とでは)、ピンチローラ15の押圧状態が微妙に異なっている場合があり、その場合にはその押圧状態の差異を前後補正倍率X5に反映させて検出することができる。また、画像群8Eに対するカット加工が終了してから画像群8Fの印刷へ移行するとき、カッティングユニット50とユニット駆動装置80との連結が解除されて、印刷ユニット60とユニット駆動装置80とが連結されるが、このような連結および解除の際に左右方向への誤差が発生しやすい。そこで、画像群8Eから画像群8Fへと移行する際に補正作動H2を実行することにより、このような誤差を検出して左右補正倍率Y5に反映させることができる。
【0065】
ステップS254において、画像群8F(200個の画像F)を印刷媒体8に印刷する。続いてステップS255に進み、上記ステップS252と同様に、画像Fの座標に左右補正倍率Y5および前後補正倍率X5を掛け合わせてカット用座標を求め、そのカット用座標に基づいて画像群8Fにカット加工を施す。そうすることにより、補正作動H2で検出された画像群8Eと画像群8Fとの間における誤差を画像群8Fのカット加工位置に反映させて、位置精度の確保されたカット加工が可能となる。
【0066】
続いてステップS256に進み、補正作動H3を実行する。この補正作動H3も上述の補正作動H1と同一であり、補正作動H3が実行されることで、画像群8Eおよび画像群8F分だけ印刷媒体8が前方に送られた位置での左右補正倍率Y6および前後補正倍率X6が算出される。
【0067】
ステップS257において、画像群8G(100個の画像G)を印刷媒体8に印刷する。続いてステップS258に進み、上記ステップS252と同様に、画像Gの座標に左右補正倍率Y6および前後補正倍率X6を掛け合わせてカット用座標を求め、そのカット用座標に基づいて画像群8Gにカット加工を施す。そうすることにより、補正作動H3で検出された画像群8Fと画像群8Gとの間における誤差を画像群8Gのカット加工位置に反映させて、位置精度の確保されたカット加工が可能となる。このようにして、画像群8E,8F,8Gの各々に対する印刷およびカット加工が完了し、このフローは終了する。
【0068】
このように、本発明を適用したプリント・カッティング装置1においては、左右補正倍率Y4および前後補正倍率X4を取得位置に隣接した画像群8Eに、左右補正倍率Y5および前後補正倍率X5を取得位置に隣接した画像群8Fに、左右補正倍率Y6および前後補正倍率X6を取得位置に隣接した画像群8Gにそれぞれ反映させるので、例えばトンボを用いた構成と比較して演算負担(コントローラ9に対する負荷)を低減させつつ、印刷位置とカット位置との位置精度を確保できる。
【0069】
なお、補正作動の配設位置は、図5に示す位置に限定されない。例えば図10に示すように、画像E,F,Gの各々について画像を前後に例えば5列並べたものを1つの画像群(画像群8E'、8F')とし、この画像群と画像群との間に補正作動を配置する構成でも良い(一部省略)。図10には、画像群8E'に対して補正作動H1〜3が配置され、画像群8F'に対して補正作動H11,12が配置された状態を示している。このように構成すると、各画像での誤差を細かく左右補正倍率および前後補正倍率に反映させることが可能で、印刷位置とカット位置との位置精度を十分に確保できる。そのため、位置精度を十分に確保したい場合、ユーザーはこのように補正作動の配置個数を増やす設定を行うことで対応可能である。
【0070】
また、補正作動を、例えば図11に示すように画像群8Eの前端部分に1つだけ配置する構成でも良い。例えば印刷およびカット加工の途中で誤差が大きく変化しないことが予め分かっているプリント・カッティング装置においては、このように補正作動H1を設定することで、コントローラ9における演算負担をさらに軽減させつつ印刷位置とカット位置との位置精度を確保できる。
【0071】
上述のようにして取得された左右補正倍率Y4〜6および前後補正倍率X4〜6は、印刷媒体8の種類(例えば材質)、およびカッタ刃53の種類(例えばオフセット値)等と関連付けられてメモリ9bに記憶される。そのため、印刷媒体8を別の材質のものに交換して印刷を行う場合や、オフセット値の異なるカッタ刃53に交換して印刷を行う場合には、再度左右補正倍率Y4および前後補正倍率X4を取得して新たに記憶する必要がある。なお、以前に同一の印刷媒体8およびカッタ刃53を使用したときにおける左右補正倍率Y4〜6および前後補正倍率X4〜6が記憶されていれば、再度取得することなくそれを読み出しても良い。
【0072】
本発明を適用したプリント・カッティング装置1においては、トンボを用いることなく画像同士を接近させて配列することができるので、トンボを用いた構成と比較して印刷媒体8のうちで無駄になる部分を低減できる。また、プリント・カッティング装置1においては、トンボを印刷したりトンボの位置を検出する必要がないため、トンボを用いた方法と比較してその分だけ作業効率を向上させることが可能である。
【0073】
上述の実施形態において、計算を簡単にするために、等間隔にテスト画像102〜106,107〜111を印刷する構成を説明したが、例えば異なる間隔で印刷しても良い。
【0074】
上述の実施形態において、印刷位置データを0.1mm、0.2mm、0.3mmと、テスト画像102またはテスト画像107からの距離に応じて0.1mmずつ加算してずらす設定例について説明したが、この構成に限定されない。例えば、カット位置精度を一層高めたい場合には、テスト画像103の印刷位置データを0.1mmの半分である0.05mmだけ移動させ、その他のテスト画像104〜106についても印刷位置データを上述の半分だけ移動させると良い。このときには、テスト画像101の右方に10個程度のテスト画像を印刷する構成が好ましい。
【0075】
上述の実施形態において、ユニット駆動装置80によりカッティングユニット50および印刷ユニット60が左右に移動される構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、ユニット駆動装置80を用いることなく、カッティングユニット50および印刷ユニット60の各々が駆動装置を内蔵した構成でも良い。
【0076】
上述の実施形態において、プリント・カッティング装置1の外部に設けられた外部コンピュータ150が、コントローラ9に対してデータや信号が送受信可能に接続された構成でも良い(図4参照)。このように構成すると、ユーザーは外部コンピュータ150において画像および補正作動の配置設定が可能となり、操作性が向上する。また、複数のプリント・カッティング装置1に対して外部コンピュータ150を接続することで、1台の外部コンピュータ150により複数のプリント・カッティング装置1を集中的に制御することが可能となる。
【0077】
上述の実施形態において、左右および前後の両方向における誤差を検出する構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、左右よりも前後への誤差が特に顕著に発生しやすいプリント・カッティング装置においては、左右の誤差の検出は行わず前後のみの誤差を検出して補正する構成でも良い。また逆に、前後よりも左右の誤差が顕著に発生するプリント・カッティング装置においては、左右のみの誤差を検出して補正する構成も有効である。
【0078】
上述の実施形態において、正方形のテスト画像101〜111が印刷される場合を説明したが、テスト画像の形状はこれに限定されるものではない。テスト画像の印刷位置とそれに対するカット位置とのずれを検出できれば良いので、例えば、テスト画像101の位置に左右に延びたラインおよび前後に延びたラインを印刷し、前後に伸びたラインを左右に複数並べて印刷するとともに、左右に伸びたラインを前後に複数並べて印刷する構成でも良い。
【0079】
上述の実施形態のステップS203(S208)およびステップS205(S210)では、ユーザーが目視で判断する構成を例に説明したが、本発明はこの構成に限られない。例えば、カッティングキャリッジ51に搭載したセンサにより必要な情報を検出し、この検出情報に基づきコントローラ9において判断する構成としても良い。
【0080】
上述の実施形態において、左右補正倍率Y4を算出した後、前後補正倍率X4を算出する構成を例示したが、この算出順序は逆であっても良い。
【0081】
また、上述の実施形態におけるステップS203において、ずれ量が左右許容ずれ量Y2よりも小さい場合にステップS207に進む構成を説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば図12に示すように、ステップS203'においてずれ方向を検出し、ずれ量が左右許容ずれ量Y2よりも小さい場合であっても、ステップS207に進まずステップS204'に進む構成でも良い。この場合ステップS204'においては、上述とは逆に、テスト画像102に対するカット位置102aのずれ方向に印刷位置データを例えば0.1mm、0.2mm、0.3mmと、0.1mmずつ加算してずらす設定が行われる。このようにして設定されたカット位置データを基にしてカット加工を施すことにより、テスト画像102におけるずれ量が最も小さいことが明確となる。よって、式(1)における「2」の値が「0」と求まり、左右補正倍率Y4=1と算出される。また、ステップS208'においても同様に、ずれ量が前後許容ずれ量X2よりも小さい場合であっても、ステップS300に進まずステップS209'に進む構成でも良い。
【0082】
上述の実施形態において、一軸媒体移動で一軸ユニット移動の構成のプリント・カッティング装置に本発明を適用した構成を説明したが、本発明はこの構成のプリント・カッティング装置に限定して適用されるものではない。例えば、平らなベッド上に印刷媒体を固定しておき、この印刷媒体に対して二軸方向にユニットを移動させるタイプのプリント・カッティング装置、いわゆるフラットベッドタイプのプリント・カッティング装置に対しても、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
E,F,G 画像(所望画像、単位画像データ)
H1,H2,H3 補正作動(基準値取得作動用データ)
X4,X5,X6 前後補正倍率(補正基準値)
Y4,Y5,Y6 左右補正倍率(補正基準値)
1 プリント・カッティング装置
8 印刷媒体(プリント媒体)
8E,8F,8G 画像群(画像データ群)
9 コントローラ(データ格納手段)
9a 補正値演算部(データ生成手段)
9b メモリ(データ生成手段)
20 媒体送り機構(媒体搬送機構)
30 プラテン(媒体支持手段)
40a ガイドレール
53 カッタ刃(カッティングヘッド)
62 プリンタヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状のプリント面を有したプリント媒体を支持する媒体支持手段と、
前記媒体支持手段に支持された前記プリント媒体のプリント面と対向して走査方向に延びたガイドレールと、
前記ガイドレールに前記走査方向に移動可能に設けられて前記プリント面に印刷を施すプリンタヘッドと、
前記ガイドレールに前記走査方向に移動可能に設けられて前記プリント媒体にカット加工を施すカッティングヘッドと、
前記ガイドレールに対して、前記走査方向に直交する搬送方向に前記プリント媒体を相対移動させる媒体搬送機構と、
前記プリンタヘッドにより印刷を施すときの印刷データ、および前記カッティングヘッドによりカット加工を施すときのカットデータが格納されたデータ格納手段とを有し、
前記印刷データに基づいて前記プリンタヘッドを前記走査方向に移動させる作動と前記プリント媒体を前記搬送方向に相対移動させる作動とを組み合わせて行い前記プリント面に所望画像を印刷し、前記カットデータに基づいて前記カッティングヘッドを前記走査方向に移動させる作動と前記プリント媒体を前記搬送方向に相対移動させる作動とを組み合わせて行い前記所望画像に対応したカット加工を施すプリント・カッティング装置であって、
前記データ格納手段が、
入力された単位画像データを前記走査方向および前記搬送方向の少なくともいずれかの方向に配列して画像データ群に合成する配列合成手段と、
前記少なくともいずれかの方向に前記カットデータをずらす補正を行うときの補正基準値を取得するための作動に対応した基準値取得作動用データを、前記画像データ群に対する前記搬送方向上流側に前記画像データ群に対応させて配列する取得作動用データ配列手段と、
前記画像データ群および前記基準値取得作動用データに基づいた前記印刷データおよび前記カットデータを生成するデータ生成手段とを備えたことを特徴とするプリント・カッティング装置。
【請求項2】
前記配列合成手段により、複数の前記画像データ群が互いに前記搬送方向にずれて合成され、
前記取得作動用データ配列手段により、前記複数の画像データ群のそれぞれに対応させて前記基準値取得作動用データが配列され、
前記複数の画像データ群におけるそれぞれのカットデータは、対応した前記基準値取得作動用データに基づいて取得された前記補正基準値を用いて補正されることを特徴とする請求項1に記載のプリント・カッティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−79201(P2011−79201A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232719(P2009−232719)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】