説明

プリント基板の固定構造

【目的】 電子機器12のプリント基板14をワッシャを用いないで、シールドケース13にねじ止めし、プリント基板14を接地・固定する。
【構成】 プリント基板14裏面側の取付孔8周縁のアースパターン15上に半田の盛上げ21を形成し、シールドケース13の切起し19のねじ孔11周縁に突起20を形成し、半田の盛上げ21に突起20を食込ませて取付ねじ3をねじ孔11にねじ止めする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はプリント基板の固定構造、特にプリント基板のアースパターン上に取付孔を配設し、該取付孔をシールドケースにねじ止めして、プリント基板をシールドケースに固定すると同時に、基板の電気回路をシールドケースに接地するようにしたプリント基板の固定構造に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、電子機器は多数の電子部品をプリント基板上に装着し、裏面側を半田接続して、所定の回路に組込んだ後、シールドケースに取付けて収納する構造のものである。そして、シールドケースへの取付けに際して、アースパターン上に設けた取付孔をシールドケースの取付け面に形成した取付孔に重合させて、上面にワッシャを配置して両者をねじ止めし、プリント基板の取付けと同時に、内部回路の接地をとるようにしている。
【0003】例えば、図7はデコーダ等の電子機器1のシールドケース2内におけるプリント基板3の取付け部分の分解斜視図である。即ち、図において、4は取付ねじ、5は両側に脚6を設けたワッシャである。プリント基板3の表面内方には、図示しないが、多数の電子部品が印刷配線上に実装されている。そして、四隅周縁部には、上記電子部品の内部回路のアースに接続したアースパターン7が導出され、その真中に取付ねじ4が挿通される取付孔8が設けてある。また、取付孔8の両側に、上記ワッシャ5の脚6が挿通される孔9が設けてある。一方、シールドケース2はその側板2aの四隅の、前記プリント基板3の取付孔8と対応した位置に、プリント基板の取付面となる切起し10が形成され、この切起し10の中央部に、前記取付ねじ4が螺着されるねじ孔11が設けてある。
【0004】そして、上記電子機器1のプリント基板3の固定は、通常次のようにしている。即ち、先ず、ワッシャ5の脚6を孔9に挿入して、ワッシャ5を他の電気部品と共にプリント基板3に実装し、半田槽に通して、脚6先端をプリント基板3の裏面側に半田付けして固定する。そして、電気部品およびワッシャ5を取付けたプリント基板3をシールドケース2の切起し10の面上に載置させ、四隅の取付孔8をねじ孔11上に合致させ、ワッシャ5の上方より取付ねじ4を通し、これを締付けてねじ孔11に螺着する。
【0005】このようなプリント基板3のシールドケース2への取付けは、ワッシャ5を用いて、取付ねじ4で締付ける構造のため、各部が弾性をもって固定され、緩みなく固定できる。同時に、プリント基板3のアースパターン7上にワッシャ5が配置されてこれと当接し、また、このワッシャ5は上面より締結される取付ねじ4と接続し、取付ねじ4を介してシールドケース2に接続している。従って、プリント基板3の内部回路のアースはアースパターン7ーワッシャ5ー取付ねじ4ーシールドケース2のルートでシールドケース2に接続し、接地される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように接地と固定が確実にできる上記取付け部材のワッシャ5は、両側に脚6を設けたプリント基板3装着用の特殊なワッシャであり、高価であった。また、ワッシャ5は両側の脚6をプリント基板3の細長の孔9に挿通するもので、プリント基板3への取付けが大変で、ワッシャ取付け作業が非常に面倒であった。また、ワッシャ5の脚6は他の電気部品のリードと比べて大きいため、裏面の半田付けを行うために、取付け前に脚6の先端部に予備半田をしておく必要があった。また、シールドケースに取付けられた他の組付け部品が存在するため、プリント基板3をシールドケース2内に横方向から装着しなければならない時、ワッシャ5の脚6先端部に付着した半田が、シールドケース2の切起し10の側縁に当って、装着し難いなどの問題があった。
【0007】従って、本発明は上記に鑑みなされたものであり、高価で、取付け工数のかかるワッシャ部材を用いることなく、接地と固定が確実にできるプリント基板のシャーシへの固定構造を得ることを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】このため、本発明のプリント基板の固定構造は、シールドケースのプリント基板取付け面に形成したねじ孔に、プリント基板のアースパターン上の取付孔を配置させ、両者をねじ止めし、プリント基板をシールドケースに接地・固定するようにしたプリント基板の固定構造において、前記アースパターンの取付孔の周縁に半田の盛上げを形成すると共に、前記プリント基板取付け面のねじ孔の周縁に前記半田の盛上げと当接する突起を形成したことを特徴とする。また、前記アースパターンを取付孔の周縁に放射状に形成すると共に、前記突起をプリント基板取付面のねじ孔の周縁に放射状に形成したことを特徴とする。また、前記アースパターンと前記突起とを完全に一致した放射状パターンに形成したことを特徴とする。
【0009】
【作用】取付ねじを螺回してプリント基板をシールドケースに取付ける時、プリント基板取付け面の突起が半田の盛上げに食込んで、取付ねじが緩むことなく締付けられる。従って、プリント基板の強固な固定が得られると共に、アースパターンが直接シールドケースに接地される。また、アースパターンを放射状の小面積に分離して形成すると、半田の盛上げが大きな山状に盛り上がることがなく、プリント基板取付け面の突起と当接し易くなる。また、取付け面に生じる隙間も僅かで、プリント基板が正常に取付けられる。また、アースパターンとプリント基板取付け面の突起とを完全に一致した放射状パターンに形成すると、突起頂上で両者が当接し、プリント基板の確実な接地・固定が得られる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳述する。
【0011】図1は本発明の電子機器12の分解斜視図であり、図7に示した従来の電子機器1と同様に、シールドケース13内のプリント基板14の取付け部分の固定構造を示している。
【0012】本発明に於いて、従来と異なる点は、プリント基板14の取付け部材に、プリント基板装着用の特殊なワッシャ5などは一切用いず、取付ねじ4だけで、プリント基板14を固定する点である。このため、本発明の電子機器12はプリント基板14およびシールドケース13の取付け部の構造を従来にない新規な構造を採用したものである。
【0013】即ち、このプリント基板14は、図示しないが、従来同様に、基板3の表面内方に多数の電子部品が実装され、裏面側を半田付けして電子回路を構成している。そして、プリント基板14裏面の四隅周縁部に、上記電子回路のアースと接続したアースパターン15が形成され、その真中に、取付ねじ4が挿通される取付孔8が設けてある。このアースパターン15は、図2に拡大図示するように、内方の電子回路のアースと接続した印刷配線の導電ランド16上に、導電部17が放射状に露出するように、絶縁被膜18を被着したものである。
【0014】また、シールドケース13は、その側板13aの四隅の、前記プリント基板14の取付孔8と対応した位置に、プリント基板の取付面を構成する切起し19が形成され、この切起し19の中央部に前記取付ねじ3が螺着されるねじ孔11が設けてある。そして、ねじ孔11周縁の切起し19の表面上には、図3に拡大図示するように、前記アースパターン15と同じ放射状パターンで、切起し19の裏面側より突起して形成した突起20が設けてある。
【0015】上記構成において、プリント基板14は次のようにしてシールドケース13に組付けられる。即ち、先ず、プリント基板14の裏面側のアースパターン15は、プリント基板14に装着された電気部品の半田付け時、半田槽を通過中に半田が被着し、図4に示すように、アースパターン15の表面上に、半田の盛上げ21が形成されている。
【0016】そして、裏面側を半田付けしたプリント基板14は、図5に示すように、取付孔8をねじ孔11に一致させて、シールドケース13の切起し19上に載置する。すると、アースパターン15表面の半田の盛上げ21部が切起し19の面上に形成した突起20の頂上に当接して配置される。後は、取付ねじ4をプリント基板14の取付孔8に通して、これをねじ孔11に締付ける。
【0017】このように、取付ねじ4で締付けたプリント基板14は、図6に示すように、切起し19の突起20の先端がアースパターン15表面上の半田盛上げ21に食込んだ状態で、取付けねじ3で締付けられる。
【0018】ここで、特に注目すべき点は、半田自体は板金のワッシャ5のように弾性を有しないものであるが、突起20が半田盛上げ21に食込んだ状態で、取付ねじ3で締付けられており、食込部の抵抗で、取付ねじ3が緩むことがない。また、プリント基板14が、従来のプリント基板3のように、切起し10の平坦な面上でねじ止めするものではなく、切起し19の突起20上に配置してねじ止めするため、取付ねじ3の緩み止めの作用がかかる。
【0019】なお、本発明は、上記実施例において、アースパターン15は放射状に形成し、半田盛上げの高さを規制するようにしたが、必ずしもその必要はなく、円、四角などに形成することもできる。また、アースパターン15と切起し19の突起20とを同じ放射状のパターンに形成し、両者の頂上を当接するよう構成したが、たとえば、アースパターン15側を4分割、切起し19の突起20を8分割に構成し、何れかの突起20がアースパターン15の半田盛上げ21に食込むようにしても、同様の効果が得られる。また、アースパターン15はプリント基板14の四隅の取付孔8に適用したが、それ以外の部所に適用して、同様の効果を奏する。
【0020】
【発明の効果】以上のように、本発明はプリント基板のアースパターンに取付孔を形成し、シールドケースの取付け面にねじ締めして、プリント基板をシールドケースに接地するようにした電子機器において、アースパターンに半田の盛上げを形成すると共に、シールドケースの取付け面側に突起を形成して、突起が半田の盛上げ部を食込むように形成したから、高価で、取付け工数のかかるワッシャ部材を用いることなく、プリント基板をシールドケースに確実に接地し固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子機器のプリント基板取付部の分解斜視図である。
【図2】図1のプリント基板の取付部の一部破断正面図である。
【図3】図1のシールドケースの取付部の一部破断正面図である。
【図4】図1のプリント基板の取付部の一部破断側断面図である。
【図5】図1のプリント基板取付け過程で、プリント基板載置時の一部破断側断面図である。
【図6】図1のプリント基板取付け過程で、ねじ締め後の一部破断側断面図である。
【図7】従来の電子機器のプリント基板取付部の分解斜視図である。
【符号の説明】
4 取付けねじ
8 取付孔
11 ねじ孔
13 シールドケース
14 プリント基板
15 アースパターン
19 切起し
20 突起
21 半田の盛上げ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 シールドケースのプリント基板取付け面に形成したねじ孔に、プリント基板のアースパターン上の取付孔を配置させ、両者をねじ止めし、プリント基板をシールドケースに接地・固定するようにしたプリント基板の固定構造において、前記アースパターンの取付孔の周縁に半田の盛上げを形成すると共に、前記プリント基板取付け面のねじ孔の周縁に前記半田の盛上げと当接する突起を形成したことを特徴とするプリント基板の固定構造。
【請求項2】 前記アースパターンを取付孔の周縁に放射状に形成すると共に、前記突起をプリント基板取付面のねじ孔の周縁に放射状に形成したことを特徴とする請求項1記載のプリント基板の固定構造。
【請求項3】 前記アースパターンと前記突起とを完全に一致した放射状パターンに形成したことを特徴とする請求項1記載のプリント基板の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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