説明

プリント配線板の表面処理装置

【課題】液切り部を通過するプリント配線板の通過時間を短縮してプリント配線板の乾燥を防ぎ、処理液の次槽への持ち込みや前槽からの持ち出しのない液切りを行なう。
【解決手段】プリント配線板1を水平方向にコンベア搬送し、処理液の異なる第1処理槽13と第2処理槽14の処理槽間を順次移動させてプリント配線板1の表裏面に処理液をスプレーし表面処理を行なうプリント配線板の表面処理装置において、隣り合う第1と第2処理槽13、14間を仕切る槽仕切り板2にプリント配線板1が通過する開口部11を設け、この開口部11領域において通過するプリント配線板1の表裏面に圧縮エアー10を吹き付ける液切りユニット3を設け、第2処理槽14に搬送される以前にプリント配線板1上に滞留した処理液の液切りを行なうようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプリント配線板の表面処理装置に関し、特に、プリント配線板を水平方向にコンベア搬送しながら表面処理を行なう際、前処理槽と後処理槽との間でプリント配線板表面に付着した処理液の持ち込み又は持ち出しが行なわれないようにするための液切り機構の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プリント配線板の製造工程において、コンベア装置により搬送されてくるプリント配線板にソフトエッチング液を吹き付けて銅表面のソフトエッチングを行ない、次いで、液切りローラーによってプリント配線板に溜まったソフトエッチング液を排除し、次いで、水洗槽に搬送してプリント配線板を清浄化する工程がある。
【0003】
通常は、これらのエッチング液あるいは洗浄液など、処理液の異なる複数の処理槽間を順次コンベア装置により搬送し、連続的にプリント配線板の表面処理を行なっている。この従来の表面処理装置について図を用いて説明する。図7はその主要部の構成図である。
【0004】
図7において、従来の装置は、例えば特開平1−117389号公報に示されているように、プリント配線板21の搬送方向から順にソフトエッチング槽30、液切り部31、水洗槽32で構成され、ソフトエッチング槽30と液切り部31との間、液切り部31と水洗槽32との間には仕切り板33が設けられている。まず、プリント配線板21は、搬送ローラー25で構成されるローラーコンベアによりソフトエッチング槽30に搬入され、ソフトエッチング液スプレーノズル24から噴射されるソフトエッチング液22のシャワーによりプリント配線板21の上下面に対しソフトエッチングが行なわれる。このとき、プリント配線板21の上下面にはソフトエッチング液22aが被着し、また、スルーホール23内にはソフトエッチング液22bが溜まってくる。
【0005】
この状態で、プリント配線板21は液切り部31に搬送され、液切りローラー26によりプリント配線板上下面に溜まったソフトエッチング液22aの液切りが行なわれる。続いて、エアー供給部(図示省略)が起動し、エアー吹付け口28を有するエアーパイプ29を通してエアーをプリント配線板21の上面に吹き付け、スルーホール23内に溜まったソフトエッチング液22bを吹き飛ばす。続いて、このソフトエッチング液22a、22bが除去されたプリント配線板21を水洗槽32に搬送し、水洗スプレーノズル27により洗浄を行なう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の表面処理装置には次のような課題がある。第1の課題は、搬送されるプリント配線板の液切りを行なう際、プリント配線板を上下一対の円筒型液切りローラーに回転接触させて液切りを行なっているため、プリント配線基板の表裏面に擦過傷を与えたり、また、異物発生の原因となったりしているということである。
【0007】
第2の課題は、エアーでの液切り部分が、スプレー処理をしている処理槽(例えばソフトエッチング槽)と仕切り板と上下一対の液切りローラーとによって隔てられているため、スプレー処理後、液切り部に搬送されるプリント配線板にエアーを吹き付けるまでに時間がかかり、その間に搬送プリント配線板の表裏面及びスルーホール内が乾燥してしまい、乾燥の度合いに応じて次の処理槽において処理条件を変更しなければならないということである。
【0008】
本発明は、これらの課題を解決するためになされたもので、液切りローラーの使用を廃止してエアー吹出しによる液切りのみとし、液切りローラーによるプリント配線板への擦過傷の発生や異物発生を防止すると同時に液切り部の距離を短くし、それによって液切り部を通過するプリント配線板の通過時間を短縮してプリント配線板の乾燥を防ぎ、処理液の次槽への持ち込みや前槽からの持ち出しのない液切りを行なうことができるプリント配線板の表面処理装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、プリント配線板を水平方向にコンベア搬送し、処理液の異なる複数の処理槽間を順次移動させて前記プリント配線板の表裏面に処理液をスプレーし表面処理を行なうプリント配線板の表面処理装置において、隣り合う前記処理槽間を仕切る槽仕切り板にプリント配線板が通過する開口部を設け、この開口部領域において通過するプリント配線板の表裏面に圧縮エアーを吹き付ける液切りユニットを設け、次槽に搬送される以前にプリント配線板上に滞留した処理液の液切りを行なうことができるようにしている。
【0010】
また、本発明における液切りユニットは、前記開口部領域を中心にして前記槽仕切り板の両側を覆うように設けられた仕切りカバーを含めて構成され、この仕切りカバーには、前処理槽側に液切りユニットへの入口となる開口部と、後処理槽側に液切りユニットからの出口となる開口部がそれぞれ設けられている。
【0011】
また、本発明における液切りユニットは、搬送されるプリント配線板を開口部において上下に挟むようにして槽仕切り板に取り付けられた一対のヘッダーを有し、このヘッダーには圧縮エアーが送り込まれる空洞部と、空洞部から圧縮エアーをプリント配線板に垂直に吹き付けるための複数のエアースプレー孔が設けられ、
このエアースプレー孔は、開口部の上下にそれぞれ一列に配列されており、また、
液切りユニットには、液切りの際に発生した処理液ミストを吸引除去するための吸引口が仕切り板を挟んで両側に設けられている。
【0012】
また、本発明において、スプレー用の処理液を貯留する処理液タンクに処理液の粘度を測定する粘度計を設置し、一方、液切りユニットに圧縮エアーを供給する圧縮エアー配管の途中に空気圧調整ユニットを設け、空気圧調整ユニットは前記粘度計からの信号によって圧縮エアーの圧力を調整し、処理液の粘度に応じた圧縮エアー圧力で液切りを行なうようにし、液切りの際は、プリント配線板の表裏両面の液切りと同時にスルーホール内の液切りを行なうようにしている。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態を示すプリント配線板の表面処理装置の構成図である。本発明の表面処理装置は、図1に示すように、搬送ローラー12によってプリント配線板1を水平にコンベア搬入し、まず、第1の処理槽13(例えばソフトエッチング槽)に入り、処理液スプレーノズル16から噴射されるエッチング液シャワーでソフトエッチングを行なう。続いて、第2の処理槽14(例えば水洗槽)に搬送される前に、プリント配線板1は第1処理槽13と第2処理槽14とを仕切る槽仕切り板2に設けられた液切りユニット3を通過する。そして、第2の処理槽14に送られたプリント配線板1に水洗スプレーノズル17から洗浄液のシャワーが噴射され、プリント配線板1の表面処理を行なうようになっている。
【0014】
本発明において、第1処理槽と第2処理槽の間に設けられた液切りユニットは、従来のような上下一対の円筒形液切りローラーをプリント配線板の表面に回転接触させて液切りを行なうのではなく、槽仕切り板の開口部から噴出する圧縮エアーのみで液切りを行なうようになっている。次に、この本発明の特徴である液切りユニットの具体的な構造について、図2、図3、図4を参照して説明する。
【0015】
図2は、図1に示した液切りユニットの構成図である。図2に示すように、液切りユニット3は、第1処理槽13と第2処理槽14とを垂直に仕切る槽仕切り板2とプリント配線板1の水平搬送面とが直交する交差部分に設けられ、仕切りカバー15によって囲まれている。仕切りカバー15は、この交差部分を中心にして槽仕切り板2を左右両側から、また、プリント配線板1の水平搬送面を上下方向から囲むように設けられ、液切りユニット3を構成している。
【0016】
また、槽仕切り板2には、水平搬送されるプリント配線板1が通過できる大きさの開口部11が設けられている。この開口部11には、通過するプリント配線板1の表裏両面に向けて垂直に上下方向から圧縮エアー10を噴出する小口径のエアースプレー孔5が多数設けられている。そして、このエアースプレー孔5に圧縮エアー10を供給するための圧縮エアー配管9が接続され、また、仕切りカバー15内には、圧縮エアー10の噴射による処理液のミストを排出するための吸引口6が槽仕切り板2を挟んで第1処理槽13側と第2処理槽14側のそれぞれに設けられ、処理液のミストは吸引口6から仕切りカバー15の外に設けられたミストキャッチャー7を介して回収され、それぞれスプレー処理液の異なる処理槽間同士における処理液の拡散を防止している。
【0017】
次に、図3及び図4を用いて液切りユニットの構造を詳細に説明する。図3はその正面図、図4はその側面図である。図3、図4において、槽仕切り板2に形成された開口部11は、幅及び高さともに通過するプリント配線板1の支障にならない程度にできるだけ接近させた寸法としている。そして、開口部11は、槽仕切り板2とほぼ同じ厚さの直方体形状のヘッダー8を上下に設けることによって構成されている。一対の上下のヘッダー8はそれぞれ内部に空洞部4が形成され、この空洞部4には圧縮エアーを送り込むための圧縮エアー配管9が接続され、また、プリント配線板1の表裏両面に向けて垂直に圧縮エアー10を噴出するための複数のエアースプレー孔5が、上下ヘッダー8の開口部11側の面にそれぞれ一列に開けられている。このような構造を有するヘッダー8を、搬送プリント配線板1に対し上下に設置することによって液切りユニット3が構成されている。
【0018】
次に、液切りユニットの動作について説明する。図2に示すように、搬送ローラー12によって第1処理槽13内を搬送されるプリント配線板1は、処理液スプレーノズル16からの処理液の噴射により表裏両面のエッチングが行なわれる。処理液は、図示していない処理液タンクからポンプを介して圧縮エアー配管9に送られ、処理液スプレーノズル16から噴射される。従来は、ここで直ちに液切りローラーを通し、回転接触によりプリント配線板表面に付着したエッチング液の液切りを行なっていたが、本発明では、液切りローラーを設けていないので、プリント配線板1はエッチング後そのまま槽仕切り部2に設けられた液切りユニット3に搬送される。
【0019】
液切りユニット3では、ヘッダー8のエアースプレー孔5からプリント配線板1の表裏両面に向けて、かつ搬送面に対し直角方向に一直線に圧縮エアー10が噴射され、プリント配線板1が槽仕切り板2の極めて短い間隙を通過する短時間の間に非接触で液切りが行なわれる。液切りは、プリント配線板の表裏両面に付着した処理液に対してだけでなく、スルーホール内に溜まった処理液に対しても同時に行なわれる。また、液切りの際は、圧縮エアー10によって飛散する処理済のエッチング液(ミスト)が吸引口6からミストキャッチャー7を介して常に吸引されており、仕切りカバー15内のミストを全て排出することによって第1処理槽13からのミストの持ち出しを防ぎ、同時に第2処理槽14への持ち込みを防いでいる。次いで、液切りユニット3を通過したプリント配線板1は第2処理槽14の水洗槽に搬送され、水洗スプレーノズル17で洗浄される。
【0020】
次に、本発明における他の実施の形態について説明する。本実施の形態は、その基本構成は前記一実施の形態と同じであるが、表面処理の異なるスプレー処理槽間を仕切る槽仕切り板に設けたヘッダーの空洞部へ供給する圧縮エアーの圧力・流量の制御ができるように、さらに工夫を施したものである。図5はその制御系の構成図である。
【0021】
図5に示すように、処理液タンク19内の処理液は、ポンプPにより加圧されて処理液スプレーノズル16から搬送中のプリント配線板1の表裏両面に向けて噴射される(図では上面側のみ示す)。また、一次側圧縮エアーの配管は、空気圧調整ユニット18及び圧縮エアー配管9を介して液切りユニット3のヘッダー8に接続され、空気圧調整ユニット18によって圧力調整された圧縮エアー10をヘッダー8のエアースプレー孔5からプリント配線板1の表裏両面に向けて噴射し(図では上面側のみ示す)、プリント配線板1に付着している処理液及びスルーホール内に溜まった処理液の液切りを行なう。
【0022】
また、処理液タンク19には粘度計20が設置されており、この粘度計20からの信号により空気圧調整ユニット18で空気圧が制御される。空気圧調整ユニット18は、図6に示すように通常の電磁弁、レギュレーターなどで構成され、処理液タンク19内の処理液の粘度変化に応じて液切りユニット3から噴き出す圧縮エアー10の圧力や流量を調整することができる。こうすることによって、処理槽内でのスプレー処理の際にプリント配線板上に滞留した処理液に対し、その処理液特性に応じた最適条件の空気圧のもとで液切りを行なうことができるので、最大限の液切り効果が得られる。なお、処理液の特性をチェックする測定機器は粘度計に限らず、その他の特性を検知できる測定器を用いてもよい。
【0023】
【発明の効果】
以上述べてきたように、本発明の表面液処理装置によれば、搬送されるプリント配線板の液切りを行なう際、プリント配線板を上下一対の円筒型液切りローラーに回転接触させて液切りを行なう必要がなくなったので、プリント配線基板の表裏面に擦過傷を与えたりすることがなく、また、異物発生の原因をなくすことができたことである。
【0024】
また、プリント配線板が液切り部を通過する際、通過する時間が極めて短い時間で済むようになったため、その間に搬送プリント配線板の表裏面及びスルーホール内が乾燥するということがなくなり、乾燥の度合いに応じて次の処理槽において処理条件を変更する必要がなくなったことである。
【0025】
このように本発明は、液切りローラを使用せずにエアー吹出しによる液切りのみとしたことによって、処理液の次槽への持ち込みや前槽からの持ち出しのない液切りを行なうことを可能としている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】本発明に係る液切りユニットの構成図である。
【図3】本発明に係る液切りユニットの詳細を示す正面図である。
【図4】本発明に係る液切りユニットの詳細を示す側面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態における空気圧制御系の構成図である。
【図6】図5の空気圧調整ユニットの説明図である。
【図7】従来の表面処理装置の主要部を示す構成図である。
【符号の説明】
1  プリント配線板
2  槽仕切り板
3  液切りユニット
4  空洞部
5  エアースプレー孔
6  吸引口
7  ミストキャッチャー
8  ヘッダー
9  圧縮エアー配管
10  圧縮エアー
11  開口部
12  搬送ローラー
13  第1処理槽
14  第2処理槽
15  仕切りカバー
16  処理液スプレーノズル
17  水洗スプレーノズル
18  空気圧調整ユニット
19  処理液タンク
20  粘度計
21  プリント配線板
22、22a、22b  ソフトエッチング液
23  スルーホール
24  エッチング液スプレーノズル
25  搬送ローラー
26  液切りローラー
27  水洗スプレーノズル
28  エアー吹付け口
29  エアーパイプ
30  ソフトエッチング槽
31  液切り部
32  水洗槽
33  仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板を水平方向にコンベア搬送し、処理液の異なる複数の処理槽間を順次移動させて前記プリント配線板の表裏面に処理液をスプレーし表面処理を行なうプリント配線板の表面処理装置において、隣り合う前記処理槽間を仕切る槽仕切り板にプリント配線板が通過する開口部を設け、この開口部領域において通過するプリント配線板の表裏面に圧縮エアーを吹き付ける液切りユニットを設け、次槽に搬送される以前にプリント配線板上に滞留した処理液の液切りを行なうことを特徴とするプリント配線板の表面処理装置。
【請求項2】
前記液切りユニットは、前記開口部領域を中心にして前記槽仕切り板の両側を覆うように設けられた仕切りカバーを含めて構成されていることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板の表面処理装置。
【請求項3】
前記仕切りカバーには、前処理槽側に液切りユニットへの入口となる開口部と、後処理槽側に液切りユニットからの出口となる開口部がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2記載のプリント配線板の表面処理装置。
【請求項4】
前記液切りユニットは、搬送されるプリント配線板を開口部において上下に挟むようにして槽仕切り板に取り付けられた一対のヘッダーを有し、このヘッダーには圧縮エアーが送り込まれる空洞部と、空洞部から圧縮エアーをプリント配線板に垂直に吹き付けるための複数のエアースプレー孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板の表面処理装置。
【請求項5】
前記エアースプレー孔は、開口部の上下にそれぞれ一列に配列されていることを特徴とする請求項4記載のプリント配線板の表面処理装置。
【請求項6】
前記液切りユニットには、液切りの際に発生した処理液ミストを吸引除去するための吸引口が槽仕切り板を挟んで両側に設けられていることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板の表面処理装置。
【請求項7】
前記スプレー用の処理液を貯留する処理液タンクに処理液の粘度を測定する粘度計を設置し、一方、液切りユニットに圧縮エアーを供給する圧縮エアー配管の途中に空気圧調整ユニットを設け、空気圧調整ユニットは前記粘度計からの信号によって圧縮エアーの圧力を調整し、処理液の粘度に応じた圧縮エアー圧力で液切りを行なうことを特徴とする請求項1記載のプリント配線板の表面処理装置。
【請求項8】
前記液切りユニットで液切りを行なう際、プリント配線板の表裏両面の液切りと同時にスルーホール内の液切りを行なうことを特徴とする請求項1または7記載のプリント配線板の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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