説明

プリーツ型エアフィルタパック及びそれを用いたエアフィルタ

【課題】 フィルタパックの質量を増加させず、しかも、有効ろ材面積を減少させず、かつ圧力損失が十分低いフィルタパックを提供する。
【解決手段】 本発明のプリーツ型エアフィルタパックは、不織布からなるろ材の表裏面にドット状のエンボス突起部を設け、ジグザグ状に折り畳むとともに、畳まれた際に向かい合う該エンボス突起部どうしを接触させて該ろ材の間隔を保持するようにしたことを特徴とするもので、このエアフィルタパックを用いてプリーツ型エアフィルとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ材をジグザグ状に折り畳んだプリーツ型エアフィルタパック及びそれを用いたエアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ろ材をジグザグ状に折り畳んだプリーツ型エアフィルタパックの製造方法としては、特許文献1に開示されており、少なくともろ材の両側部の両面のそれぞれに間隔保持材となる樹脂層を一定の厚さに塗布して樹脂層を形成した後、一定間隔でジグザグ状に折り畳んで、樹脂層を固化してろ材の折り畳み幅を一定間隔とする方法が提案されている。
上記方法では、得られたジグザグ状エアフィルタ用ろ材は空気を通過させるろ材が一定間隔で折り畳まれているので、ろ材の一方の側から入った空気は、ろ材の他方の側から排出される際に気流方向がろ材に対して直交することになり、通過させる空気の圧を高くしなければ所定の気流圧が得られなかった。
この課題を解決するために、特許文献2には、ホットメルトを重ねて塗布し、折筋の頂部から谷部にかけて勾配をつけることにより、プリーツにテーパ形状を持たせる方法が提案されている。
また、特許文献3には、エンボス加工により形成された突出部によりプリーツの間隔を保持する方法が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特公昭54−30144号公報
【特許文献2】特開2003−284914号公報
【特許文献3】特許第2935432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の製造方法の場合は、フィルタパックのプリーツの間隔保持のためにホットメルトを使用するため、フィルタパックの質量が増加して取扱いづらく、有効ろ材面積が減少し寿命が短くなるといった問題があった。また、特許文献3では、エンボス突起部の接する部分に発泡プラスチックなどの接着剤を塗布することでフィルタパックを補強していることから、有効ろ材面積の減少は避けられず、所定の気流圧を得るために通過させなければならない空気の圧を、本来期待されるより高くする必要があった。
そこで、本発明は、フィルタパックの質量を増加させず、しかも、有効ろ材面積を減少させず、かつ圧力損失が十分低いフィルタパックを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決すべく、本発明者等は鋭意検討の結果、以下の構成を見出した。
即ち、本発明のプリーツ型エアフィルタパックは、請求項1に記載のとおり、不織布からなるろ材の表裏面にドット状のエンボス突起部を設け、ジグザグ状に折り畳むとともに、畳まれた際に向かい合う該エンボス突起部どうしを接触させて該ろ材の間隔を保持するようにしたことを特徴とする。
また、請求項2に記載のプリーツ型エアフィルタパックは、請求項1記載のプリーツ型エアフィルタパックにおいて、前記ドット状エンボス突起部は、ろ材のMD及びCD方向ともに形成され配列されており、ろ材のMD方向に直線状に並んだ複数個のドット状エンボス突起部が、プリーツの折筋の頂部から谷部に向けて漸次低くなるように、高さ方向に勾配を有し、CD方向に直線状に並んだ複数個のドット状エンボス突起部が列ごとに一定の高さを有することを特徴とする。
また、請求項3記載のプリーツ型エアフィルタパックは、請求項2記載のプリーツ型エアフィルタパックにおいて、前記ドット状エンボス突起部は、ろ材面に平行な上面を有することを特徴とする。
また、請求項4記載のプリーツ型エアフィルタパックは、請求項2記載のプリーツ型エアフィルタパックにおいて、前記MD方向に並んだ複数個のドット状エンボス突起部が、プリーツの折筋の谷部から頂部へ向かうにつれて、その幅が広くなることを特徴とする。
また、請求項5記載のプリーツ型エアフィルタパックは、請求項2記載のプリーツ型エアフィルタパックにおいて、向かい合うドット状エンボス突起の形状が対称形ではなく、接する突起部の各々にさらに凸部と凹部が形成されていることを特徴とする。
また、請求項6記載のプリーツ型エアフィルタパックは、請求項1乃至5の何れかに記載のプリーツ型エアフィルタパックにおいて、前記ろ材に形成されるドット状エンボス突起部分の総面積の割合が、ろ材全体の20%未満であることを特徴とする。
また、本発明のエアフィルタは、請求項7記載のとおり、請求項1乃至6の何れかのフィルタパックを使用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フィルタパックの質量を増加させず、しかも、有効ろ材面積を減少させず、かつ圧力損失が十分低いフィルタパックと、これを用いたエアフィルタが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のプリーツ型エアフィルタパックは、不織布からなるろ材の表裏面にドット状のエンボス突起部を設け、ジグザグ状に折り畳むとともに、畳まれた際に向かい合う該エンボス突起部どうしを接触させて該ろ材の間隔を保持するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
前記エンボス突起部は、ジグザグ状に折り畳んだときに隣接するろ材の間隔を保持できるように表裏面ともに形成される。
ドットは様々な形状に形成することができる。ここで、ろ材に対して、手前側に突出したエンボス突起を凸突起、その逆側に突出したエンボス突起を凹突起と呼ぶことにする。すなわち、ろ材のある一方の面から見た場合の凹突起は、もう一方の面から見れば凸突起となるわけである。
【0009】
前記ドットの形状は、エンボス突起部が凸突起である場合で規定することにする。凸突起をろ材平面に対する鉛直線状から眺めた場合、凸突起が立ち上がる部分の輪郭が見えるが、その輪郭において、ろ材のCD方向における最大幅をドット状エンボス突起の幅、ろ材のMD方向における最大長さをドット状エンボス突起の長さ、とここでは呼ぶことにする。
また、ろ材平面に平行な仮想平面が凸突起の最も高い部分と接したときに、その仮想平面とろ材面との間隔をドット状エンボス突起の高さ、またその点を含む平面のことを上面と呼ぶことにする。
【0010】
ドット状エンボスの形状は、例えば直方体、立方体、角柱、円柱、半球、球帯、角錘台、円錐、角錐、切頭円錐など種々の形状から選択することができる。
また、向かい合うドット状突起の形状が必ずしも対称形である必要はなく、接する突起部の各々にさらに凸部と凹部が形成されている鍵と鍵穴の関係になるような形状でもよい。この形状の場合、接するエンボス突起部がずれにくくなり、より強固なフィルタパックとすることができる。
突起部の上面は直方体や立方体などのように平坦であってもよいし、半球や円柱のようにアールがついていても差し支えない。
【0011】
ドット状エンボス突起の高さは0.5mm〜5.0mmであることが好ましく、1.0mm〜3.0mmであることがさらに好ましい。高さが5.0mmより高い場合はエンボス加工に伴いろ材の破損が生じるおそれがあり、また高さが0.5mmより低い場合はろ材の間隔保持が困難になるからである。
また、ドット状エンボス突起の幅は、1.0mm〜10mmが好ましく、2.0mm〜6.0mmがさらに好ましい。幅が10mmより広い場合はフィルタパックにして風を流した場合に構造抵抗となり圧力損失上昇のおそれがあり、また幅が1.0mmより狭い場合はプリーツに折り畳んだ場合にエンボス突起部どうしがずれて間隔を保持できないおそれがあるからである。
また、ドット状エンボス突起の長さは、1.0mm〜15mmであることが好ましく、3.0mm〜10mmであることがさらに好ましい。15mmより長い場合は、ろ材の有効ろ材面積が減少することで圧力損失上昇のおそれがあり、1.0mmより短い場合はプリーツに折り畳んだ場合にエンボス突起部どうしがずれて間隔を保持できないおそれがあるからである。
【0012】
ドット状エンボス突起の形状として、幅と長さについては以下の通りとする。
一つのドット状エンボス突起について、長さと幅の比率(長さ/幅)すなわちアスペクト比が0.5〜3であることが好ましく、1〜2であることがさらに好ましい。アスペクト比が0.5より小さい場合は、プリーツに折り畳んだ場合にエンボス突起部どうしがずれて間隔を保持できないおそれがあり、3より大きい場合はろ材の有効ろ材面積が減少することで圧力損失上昇のおそれがあるためである。
【0013】
ドット状エンボス突起の形状として、ろ材平面から仰ぎ見たエンボス突起部の立ち上がり角度については以下の通りとする。
ドット状エンボス突起部の立ち上がりの輪郭の線の中で最も折筋の頂部に近い側の点と、ドット状エンボス突起部の最も高い点とを結ぶ直線が、ろ紙平面となす角度を立ち上がり角度とする。
ドット状エンボス突起の上面が平面である場合、前述の最も高い点は、折筋の頂部に最も近い点とする。
立ち上がり角度は、形成されるドット状エンボス突起の高さに応じて適した角度が異なる。高さが2.0mm以上の場合、立ち上がり角度が小さいと突起部の上面の面積も小さくなり、向かい合うドット状エンボス突起との接触面積が稼げず、プリーツの間隔保持に支障をきたすおそれがある。一方、エンボス突起の高さが2.0mm未満の場合は、立ち上がり角度が低くとも上面の面積が小さくなることもない。
よって、立ち上がり角度は、ドット状エンボス突起部の高さが2.0mm以上の場合は、30度〜90度であることが好ましく、30度〜60度であることがさらに好ましい。90度をこえる場合、ろ紙への負担が著しく大きくなり、30度未満の場合は上述のように、上面の面積が小さくなるためである。
また、ドット状エンボス突起部の高さが2.0mm未満の場合は、立ち上がり角度が90度以下であることが好ましく、60度以下であることがさらに好ましい。
【0014】
ドット状エンボス突起部は、ろ材のMD方向に複数個配列しており、その各々の高さは折筋の頂部から谷部へ次第に低くなることにより、プリーツ形状をV字に保つことができる(V字は圧損が低いことが特許文献2で示されている。)。
また、ろ材のCD方向に複数個配列したエンボス突起部は、その列ごとに一定の高さを有することで、フィルタパックを均一にすることができる。
【0015】
MD方向の一列に含まれるドット状エンボス突起の数は、3個以上15個以下であることが好ましく、5個以上10個以下であることがさらに好ましい。3個未満の場合はドット状エンボスではプリーツの間隔を保持するのが困難であり、通風時に突起以外の部分の向かい合うろ材が接してしまい圧力損失上昇につながるおそれがある。一方、ドット状エンボス突起の数が16個以上の場合は、エンボス部の割合が多くなり、ライン状エンボスと比較した場合の有効ろ材面積が多いことのメリットが出せなくなることがある。
MD方向に配列しているドット状エンボス突起の間隔は、5mm〜25mmであることが好ましく、7mm〜20mmであることがさらに好ましい。5mmよりも狭い場合はプリーツに折り畳んだ場合にエンボス突起部どうしがずれて間隔を保持できないおそれがあり、25mmよりも広い場合は通風時にプリーツの膨らみが生じて、隣り合うろ材面が接してしまうおそれがあるからである。
【0016】
CD方向に配列しているドット状エンボス突起の間隔は、隣り合う凸突起列と凸突起列の間隔が15mm〜60mmであることが好ましい。凸突起列と凸突起列の間には凹突起列が含まれるが、凹突起列は凸突起列と凹突起列の中間に形成されることが好ましい。偏って配列されると、フィルタパックにして風を流したときに風の流れが不均一になり、圧力損失上昇のおそれがあるためである。
【0017】
ろ材の折り幅は30mmから280mmであることが好ましい。折り幅が30mm未満の場合は、フィルタの寿命の観点からプリーツの山数を多く入れる必要があり、プリーツの間隔を十分に保てないおそれがある。一方、折り幅が280mmを超える場合は、プリーツの間隔を広げる必要があり、すなわちドット状エンボス突起部の高さを高くする必要があるため、ろ材の破れを生じる可能性が高くなる。
【0018】
ドット状エンボス突起部は、ろ材面に平行な上面を有すようにした方が好ましい。これは以下の理由による。不織布ろ材をフィルタパックにするためには、適度な剛軟度が必要であるが、剛軟度の影響でロールに巻いたろ材には巻き癖が残る傾向にある。巻き癖が残るとプリーツ加工した際にプリーツがきれいなV字とならず、圧力損失の上昇を招く。そこで、プリーツ加工後にパックを圧縮加熱することにより、ろ材の巻き癖を除去するとともに、プリーツの折筋をシャープにすることができる。ところで、圧縮加熱を十分にしても、巻き癖は多少残る場合があるのに加え、フィルタの使用中はパックに空気が流れるため、V字が広がり、あたかも巻き癖が残ったような状態になる場合がある。そこで、ドット状エンボス突起内では高さ勾配を持たないようにすることで、巻き癖が多少残った場合でもその影響をできる限り抑制することができる。
【0019】
また、ろ材のMD方向に複数個配列したエンボス突起部の幅は、折筋の谷部から頂部へ次第に広くなっているのが好ましい。これは、高さの高いドット状エンボス突起部を形成する場合に、突起部の幅が狭い場合は、ろ材の単位面積あたりにかかる力が大きくなるため、ろ材の破れのおそれがあるが、高さの高いドット状エンボス突起部の幅を広くすることで、ろ材の破れを防ぐことができるためである。
本発明に使用するろ材は、ポリオレフィン系、ポリエステル系等から構成されるが、濾過性能を満足する不織布であればこれらに特に限定はされない。
【0020】
また、ろ材に形成されるドット状エンボス突起部分の総面積の割合は、ろ材全体の20%未満であることが好ましい。20%以上の場合は、ろ材の有効面積が少なくなり、圧力損失の上昇、粉塵保持量の低下を招くおそれがあるためである。
【0021】
また、上記のプリーツ形エアフィルタパックを使用したエアフィルタは、高風量、低圧力損失のエアフィルタとして使用することができる。
【実施例】
【0022】
次に、本発明の実施例を、比較例、従来例とともに説明する。尚、本発明のエアフィルタ用ろ材は、以下の例に限定して解釈されるものではない。
図1は本発明のドット状エンボス突起を形成し折り畳む前のプリーツ型エアフィルタパックの斜視図、図2は図1の平面図、図3(a),(b),(c),(d),(e),(f),(g),(h)は本発明のドット状エンボス突起を形成し折り畳んだプリーツ型エアフィルタパックの側面図、図4は従来例のライン状エンボス突起9を形成し折り畳んだプリーツ型エアフィルタパックの側面図である。
10は複合ろ材、1,2,3,4,5,6はドット状エンボスを示し、前記ドット状エンボス1,2,3,4,5,6は折筋の頂部から谷部にかけてそれぞれA,B,C,D,E,Fを付与した。
【0023】
(実施例1)
ろ材層としてのポリプロピレン製の非帯電メルトブローン不織布と、補強層としてポリエステル製サーマルボンド不織布を貼り合わせた複合ろ材を用い、図3(a)に示す通り以下のような形状のドット状エンボス突起1A,1B,1C,1D,1E,1Fを形成した。
ドット状エンボスの形状は四角錘台形として、MD方向の一列には6個形成し、それらの一つ一つの高さは折筋の頂部から谷部にかけて2.0mm、1.8mm、1.5mm、1.3mm、1.0mm、0.8mmとした。CD方向の一列には片面で23列のドット状エンボス突起を形成し、それらの高さは同一の列においては意図的に変えることはしなかった。
ドット状エンボスの幅は、折筋の頂部から谷部にかけて5.0mm、4.8mm、4.6mm、4.4mm、4.2mm、4.0mmとした。このようなドット状エンボスを表裏面交互に配列した。
また、ドット状エンボスの底辺長さは7mmで全て一定にした。
ドット状エンボス突起部の立ち上がり角度は、折筋の頂部から谷部にかけて45、42、37、33、27、22度とした。
上記ろ材を125mmの折り幅でジグザグ状に折り畳み、フィルタパックを製作した。
【0024】
(実施例2)
ドット状エンボスの高さが、折筋の谷部に最も近い端を0.8mm、頂部に最も近い端を2.0mmとして、その間を連続(断続)勾配としたこと以外は実施例1と同様にして、ドット状エンボス突起2A,2B,2C,2D,2E,2Fを形成し、図3(b)に示す通りプリーツ型エアフィルタパックを製作した。
【0025】
(実施例3)
ドット状エンボスのろ材のMD方向の列における、各々のドットの幅を全て4.0mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、ドット状エンボス突起3A,3B,3C,3D,3E,3Fを形成し、図3(c)に示す通りエアフィルタパックを製作した。
【0026】
(実施例4)
ドット状エンボスのろ材のMD方向の列における、各々のドットの幅を全て4.0mmとし、かつドット状エンボスの高さが、折筋の谷部に最も近い端を0.8mm、頂部に最も近い端を2.0mmとして、その間を連続(断続)勾配としたこと以外は実施例1と同様にして、ドット状エンボス突起4A,4B,4C,4D,4E,4Fを形成し、図4(d)に示す通りエアフィルタパックを製作した。
【0027】
(実施例5)
ドット状エンボスの幅は、折筋の谷部から頂部にかけて5.0mm、4.8mm、4.6mm、4.4mm、4.2mm、4.0mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、ドット状エンボス突起5A,5B,5C,5D,5E,5Fを形成し、図3(e)に示す通りプリーツ型エアフィルタパックを製作した。
【0028】
(実施例6)
ドット状エンボスの幅は、折筋の谷部から頂部にかけて5.0mm、4.8mm、4.6mm、4.4mm、4.2mm、4.0mmとし、かつドット状エンボスの高さが、折筋の谷部に最も近い端を0.8mm、頂部に最も近い端を2.0mmとして、その間を連続(断続)勾配としたこと以外は実施例1と同様にして、ドット状エンボス突起6A,6B,6C,6D,6E,6Fを形成し、図3(f)に示す通りエアフィルタパックを製作した。
【0029】
(実施例7)
ドット状エンボスの形状を半球とし、立ち上がり角度は、折筋の頂部から谷部にかけて39、37、33、31、25、22度とし、ドット状エンボス突起部の幅をドット状エンボス突起部の長さと等しくしたこと以外は実施例1と同様にして、ドット状エンボス突起7A,7B,7C,7D,7E,7Fを形成し、図3(g)に示す通りプリーツ型エアフィルタパックを製作した。
【0030】
(実施例8)
ドット状エンボスの形状を半球とし、向かい合う各々の突起部のうち一方の先端にさらに直径1mm、高さ1mmの凸部を形成し、もう一方の先端に直径1mm、深さ1mmの凹部を形成しこと以外は実施例7と同様にして、ドット状エンボス突起8A,8B,8C,8D,8E,8Fを形成し、図3(h)に示す通りプリーツ型エアフィルタパックを作製した。
【0031】
(従来例1)
エンボス突起部を、幅が4.0mm、高さが折筋の谷部に最も近い端を0mm、頂部に最も近い端を2.0mmとして、その間を連続勾配とした1個のライン状エンボス突起部7,7とし、ドット状エンボス突起部の立ち上がり角度を45度としたこと以外は実施例1と同様にして、図4に示す通り(配置は図1,2参照)エアフィルタパックを製作した。ドット状エンボス突起部の立ち上がり角度は45度とした。
【0032】
(従来例2)
ホットメルトを2段塗布して、幅は折筋の谷部から頂部にかけて全て4.0mmとし、高さは折筋の谷部から頂部にかけて0mm、1mm、2mmの三段階とし、特開2003−284914号公報図2に示す通り、プリーツの間隔を保ったフィルタパックを製作した。
【0033】
(従来例3)
ホットメルトを1段塗布にして、幅は折筋の谷部から頂部にかけて全て4.0mmとし、高さは折筋の谷部を0mm、頂部を2.0mmとし、中央付近から頂部にかけて一定高さとしたこと以外は従来例2と同様にして、特開2003−284914号公報図3に示す通り、フィルタパックを製作した。
【0034】
次に、本発明の実施例、従来例について、以下のようにしてフィルタの圧力損失、捕集効率、粉塵保持量(DHC)を測定し、それに加え、ろ材破れと総合評価を行った結果を表1に示す。
【0035】
圧力損失:フィルタユニットに面風速に換算して3.1m/secの空気を通風したときのフィルタ前後での圧力差を測定し、圧力損失とした。圧力損失が150Pa以上のものを×、150Pa以下のものを○とした。
【0036】
捕集効率:JIS B9908 形式2に従い測定した。捕集効率が90%以上のものを○、90%未満のものを×とした。
【0037】
粉塵保持量(DHC):上記JIS B9908 形式2に従い、最終圧力損失を294Paと定めたときの粉塵保持量とした。粉塵保持量が600g/台以上のものを○、600g/台未満のものを×とした。
【0038】
ろ材破れ:ドット状エンボス突起を加工したろ材を目視で確認し、ろ材に破れが認められたものを×、破れはないが一部に傷んだ部分が認められたものを△、破れが認められなかったものを○とした。
【0039】
質量:610mm×610mmの寸法に換算して、フィルタパックの質量3kg未満の場合を○、3kg以上のものを×とした。
【0040】
有効ろ材面積:有効ろ材面積が、80%以上のものを○、80%未満のものを×とした。
【0041】
総合評価:総合評価は、全て○のものを◎、△を一つ以上含むものを○、×を一つ以上含むものを×とした。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示すとおり、実施例1,2,7及び8では、基本性能が十分であることに加えて、質量が軽く、有効ろ材面積が多く(DHCが大きく)、そして圧力損失が十分低いフィルタパックとして使用することができることから、総合評価は◎となった。
実施例3,4,5及び6では、基本性能、質量、有効ろ材面積、圧力損失については十分であるものの、ろ材の一部に傷が認められたため、総合評価は○となった。
従来例1では、有効ろ材面積の減少及びライン状エンボスで横方向に拡散する流れを遮断されるに伴いDHCが少なくなったと考えられ、またろ材の一部に傷が認められたため、総合評価は△となった。
従来例2では、従来例1よりも横方向に拡散する流れは緩和されるが更に有効ろ材面積の減少に伴い圧損がやや高く、有効ろ材面積の減少に伴いDHCが少なく、そしてホットメルトの塗布で質量が大幅に増加したことから、総合評価は×となった。
従来例3では、従来例2よりも横方向に拡散する流れが遮断されるため圧損が非常に高く、有効ろ材面積の減少に伴いDHCが極端に少なく、そしてホットメルトの塗布で質量が大幅に増加したことから、総合評価は×となった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のプリーツ型エアフィルタパックによれば、フィルタパックの質量を増加させず、有効ろ材面積を減少させず、かつ圧力損失を十分低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のドット状エンボス突起を形成し折り畳む前のプリーツ型エアフィルタパックの斜視図
【図2】図1の平面図
【図3】(a),(b),(c),(d),(e),(f),(g),(h) 本発明のドット状エンボス突起を形成し折り畳んだプリーツ型エアフィルタパックの側面図
【図4】従来例のライン状エンボス突起を形成し折り畳んだプリーツ型エアフィルタパックの側面図
【符号の説明】
【0046】
1A,1B,1C,1D,1E,1F ドット状エンボス突起
2A,2B,2C,2D,2E,2F ドット状エンボス突起
3A,3B,3C,3D,3E,3F ドット状エンボス突起
4A,4B,4C,4D,4E,4F ドット状エンボス突起
5A,5B,5C,5D,5E,5F ドット状エンボス突起
6A,6B,6C,6D,6E,6F ドット状エンボス突起
7A,7B,7C,7D,7E 7F ドット状エンボス突起
8A,8B,8C,8D,8E 8F ドット状エンボス突起
9 ライン状エンボス突起
10 複合ろ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなるろ材の表裏面にドット状のエンボス突起部を設け、ジグザグ状に折り畳むとともに、畳まれた際に向かい合う該エンボス突起部どうしを接触させて該ろ材の間隔を保持するようにしたことを特徴とするプリーツ型エアフィルタパック。
【請求項2】
前記ドット状エンボス突起部は、ろ材のMD及びCD方向ともに形成され配列されており、ろ材のMD方向に直線状に並んだ複数個のドット状エンボス突起部が、プリーツの折筋の頂部から谷部に向けて漸次低くなるように、高さ方向に勾配を有し、CD方向に直線状に並んだ複数個のドット状エンボス突起部が列ごとに一定の高さを有することを特徴とする請求項1記載のプリーツ型エアフィルタパック。
【請求項3】
前記ドット状エンボス突起部は、ろ材面に平行な上面を有することを特徴とする請求項2記載のプリーツ型エアフィルタパック。
【請求項4】
前記MD方向に並んだ複数個のドット状エンボス突起部が、プリーツの折筋の谷部から頂部へ向かうにつれて、その幅が広くなることを特徴とする請求項2記載のプリーツ型エアフィルタパック。
【請求項5】
向かい合うドット状エンボス突起の形状が対称形ではなく、接する突起部の各々にさらに凸部と凹部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のプリーツ型エアフィルタパック。
【請求項6】
前記ろ材に形成されるドット状エンボス突起部分の総面積の割合が、ろ材全体の20%未満であることを特徴とする請求項1乃至5記載のプリーツ型エアフィルタパック。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかのフィルタパックを使用したことを特徴とするエアフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−11887(P2009−11887A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173512(P2007−173512)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000232760)日本無機株式会社 (104)
【Fターム(参考)】