説明

プレカット加工機が備える空気圧駆動機器のための圧縮空気の供給システム

【課題】加工機の空気圧駆動機器への圧縮空気を低・高圧の2系統に分けて電力消費量を削減する圧縮空気の供給システムの提供。
【解決手段】プレカット加工機11の複数の空気圧駆動機器21に対しコンプレッサ31を介して駆動制御用の圧縮空気を供給する圧縮空気の供給システムにおいて、コンプレッサ31は、低圧設定の第1コンプレッサと高圧設定の第2コンプレッサとの2系統で配置され、プレカット加工機11の空気圧駆動機器21は、低圧動作向け駆動機器22,25と高圧動作向け駆動機器23,26とに分別され、低圧動作向け駆動機器22,25に対しては、第1コンプレッサ32から供給される圧縮空気をその使用圧力まで減圧して供給可能とし、高圧動作向け駆動機器23,26に対しては、第2コンプレッサ33から供給される圧縮空気をその使用圧力まで減圧して供給可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサの消費電力を削減できるようにしたプレカット加工機が備える空気圧駆動機器のための圧縮空気の供給システムに関する技術である。
【背景技術】
【0002】
通常、プレカット加工機は、例えば特許文献1に示されているように加工ユニットを所定方向へと移動させるためのX軸シリンダー、Y軸シリンダーおよびZ軸シリンダーなど、その多くの駆動手段にエアシリンダーを中心とした空気圧駆動機器が採用されている。該空気圧駆動機器は、通常、約0.5MPaに設定された空気圧のもとでその駆動が制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−58318号公報
【0004】
一方、空気圧駆動機器に対し駆動空気圧を供給するコンプレッサは、空気圧駆動機器に対する供給圧力が不足しないように該空気圧駆動機器側の設定圧よりも高い、例えば約0.7MPaに設定するなどして駆動させている。
【0005】
ところで、プレカット加工機が備える空気圧駆動機器には、ワークの加工精度や品質が基準レベルを確保できるようにするため、必ず設定圧力のもとで動作させることが求められている箇所のものと、ワークの搬送手段として用いる場合などのように駆動圧力の多少の増減は許容できる箇所のものとが混在している。さらに、エアーシリンダーの多くは、動作方向での一方が待機状態に移行するための復帰動作であることから、必ずしも供給圧力を必要としていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、空気圧駆動機器は、通常、設定圧力のもとで常時動作させることになるが、そのうちのある空気圧駆動機器にはその使用状況によって減圧または増圧して動作させているものもあるにも拘わらず、プレカット加工機の供給口で設定されたままの圧力状態のもとでの画一的な動作を強いられる不都合があった。
【0007】
つまり、従来システムのもとで空気圧駆動機器に対し圧縮空気を供給するコンプレッサにあっては、例えば設定圧を0.1MPa下げることにより約5〜8%の省エネ効果があるとされているなど、設定圧を下げることによる省エネ効果が大きいとされているにも拘わらず、空気圧駆動機器が必要とする以上の空気圧の圧縮空気のもとで画一的に供給して動作させることから、消費電力換算の消費エネルギーも多大なものとなって時代の要請である省エネルギーに逆行するばかりでなく、それだけ無駄な電気を消費して加工コスト増を招く不都合があった。
【0008】
本発明は、従来手法にみられた上記課題に鑑み、プレカット加工機が備える空気圧駆動機器が必要とする圧縮空気の空気圧を低圧と高圧との2系統に仕分けて、空気圧駆動機器の別に適合する系統の圧縮空気を供給してコンプレッサの電力消費量を削減できるようにした圧縮空気の供給システムを提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたものであり、プレカット加工機が複数箇所に備える空気圧駆動機器に対しコンプレッサを介して駆動制御用の圧縮空気を供給する圧縮空気の供給システムにおいて、前記コンプレッサは、低圧設定されている第1コンプレッサと高圧設定されている第2コンプレッサとの2系統として各別に配置され、前記プレカット加工機が備える前記空気圧駆動機器は、低圧動作向け駆動機器と高圧動作向け駆動機器とに分別配置され、前記低圧動作向け駆動機器に対しては、前記第1コンプレッサから供給される圧縮空気をその使用圧力まで減圧して供給可能とし、前記高圧動作向け駆動機器に対しては、前記第2コンプレッサから供給される圧縮空気をその使用圧力まで減圧して供給可能としたことを最も主要な特徴とする。この場合、前記プレカット加工機は、用途別に配置される複数台で構成するのが望ましい。
のが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プレカット加工機が備える空気圧駆動機器が実際の使用圧力との関係で定まる低圧動作向け駆動機器と、高圧動作向け駆動機器とに分別されているので、低圧動作向け駆動機器には第1コンプレッサから設定圧の低い圧縮空気を、高圧動作向け駆動機器には第2コンプレッサから設定圧の高い圧縮空気を2系統に分けて供給することで、第1コンプレッサの消費電力をそれだけ削減して省エネルギー化の実現に有効に寄与させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のシステム構成例を示すブロック図。
【0012】
図1は、本発明のシステム構成例を示すブロック図であり、その全体は、プレカット加工機11が複数箇所に備える空気圧駆動機器21に対し、コンプレッサ31を介して駆動制御用の圧縮空気の供給を可能にして図示しないプレカット工場内等に配置されている。
【0013】
この場合、空気圧駆動機器21は、図示は省略してあるが、例えば複数種類の加工具を備える加工ユニットをX軸方向やY軸方向やZ軸方向に移動させたり、木材を所定位置に移動させるために用いられるエアシリンダーを含めて構成されている。
【0014】
また、図示例によれば、プレカット加工機11は、例えばルータや丸鋸ノコなどというような用途別の加工ユニットを備えて配置される第1加工機12と第2加工機15とで構成されている。
【0015】
そして、プレカット加工機11を構成している第1加工機12は、その空気圧駆動機器21として分別配置された低圧動作向け駆動機器22と高圧動作向け駆動機器23とを備えている。
【0016】
さらに、第2加工機15は、第1加工機12と同様に、その空気圧駆動機器21として分別配置された低圧動作向け駆動機器25と高圧動作向け駆動機器26とを備えている。
【0017】
一方、コンプレッサ31は、例えば0.3〜0.5MPa程度の低圧の吐き出し圧力のもとで減圧弁36へと管路35を介して圧縮空気を圧送する第1コンプレッサ32と、例えば0.5〜0.7MPa程度の高圧の吐き出し圧力のもとで減圧弁38へと管路37を介して圧縮空気を圧送する第2コンプレッサ35との2系統として各別に配置されている。
【0018】
そして、第1コンプレッサ32から供給される圧縮空気は、減圧弁36を介在させた第1管路35を介して、第1加工機12の低圧動作向け駆動機器22と第2加工機15の低圧動作向け駆動機器25とのそれぞれに対し、その使用圧力である例えば0.2〜0.4MPa程度にまで減圧して供給できるようになっている。
【0019】
また、第2コンプレッサ33から供給される圧縮空気は、減圧弁38を介在させた第2管路37を介して、第1加工機12の高圧動作向け駆動機器23と第2加工機15の高圧動作向け駆動機器26とのそれぞれに対しその使用圧力である例えば0.4〜0.6MPa程度にまでにまで減圧して供給できるようになっている。
【0020】
次に、上記構成からなる本発明の作用・効果を図示例に基づいて説明すれば、加工作業開始時には、プレカット加工機11を構成している第1加工機12と第2加工機15とのほか、コンプレッサ31を構成している第1コンプレッサ32と第2コンプレッサ33とにも電源が投入されて、それぞれが駆動を開始する。
【0021】
この場合、第1加工機12の低圧動作向け駆動機器22と第2加工機15の低圧動作向け駆動機器25のそれぞれには、第1管路35を介して0.3〜0.5MPa程度の低圧の圧縮空気が送られ、それぞれの減圧弁36を経ることでその使用圧力である例えば0.2〜0.4MPa程度にまで減圧されて低圧動作向け駆動機器22,25に供給される。
【0022】
各低圧動作向け駆動機器22,25は、それぞれの使用圧力である例えば0.2〜0.4MPa程度の空気圧の圧縮空気の供給を受けてそのエアシリンダを駆動させ、該エアシリンダの動きに応じて所定の作業をさせることができる。
【0023】
この場合、第1加工機12の低圧動作向け駆動機器22と第2加工機15の低圧動作向け駆動機器25のそれぞれには、第1管路35を介して0.3〜0.5MPa程度の低圧の圧縮空気が送られ、それぞれの減圧弁36を経ることでその使用圧力である例えば0.2〜0.4MPa程度にまで減圧されて低圧動作向け駆動機器22,25に供給される。
【0024】
また、各高圧動作向け駆動機器23,26は、それぞれの使用圧力である例えば0.2〜0.4MPa程度の空気圧の圧縮空気の供給を受けてそのエアシリンダを駆動させ、該エアシリンダの動きに応じて所定の作業をさせることができる。
【0025】
一方、第1加工機12の高圧動作向け駆動機器23と第2加工機15の高圧動作向け駆動機器26のそれぞれには、第2管路35を介して0.5〜0.7MPa程度の高圧の圧縮空気が送られ、それぞれの減圧弁36を経ることでその使用圧力である例えば0.4〜0.6MPa程度にまで減圧されて高圧動作向け駆動機器23,26に供給される。
【0026】
各高圧動作向け駆動機器23,26は、それぞれの使用圧力である例えば0.4〜0.6MPa程度の空気圧の圧縮空気の供給を受けてそのエアシリンダを駆動させ、該エアシリンダの動きに応じて所定の作業をさせることができる。
【0027】
したがって、本発明によれば、プレカット加工機11が備える空気圧駆動機器21が実際の使用圧力との関係で定まる低圧動作向け駆動機器22,25と、高圧動作向け駆動機器23,26とに分別されているので、低圧動作向け駆動機器22,25には第1コンプレッサ32から設定圧を例えば0.3〜0.5MPa程度とした低圧な圧縮空気を、高圧動作向け駆動機器23,26には第2コンプレッサ33から設定圧を例えば0.5〜0.7MPa程度とした高圧な圧縮空気を、それぞれ各別に供給することができる。
【0028】
すなわち、プレカット加工機11が備える空気圧駆動機器21には、ワークの加工精度や品質が基準レベルを確保できるようにするため、必ず設定圧力のもとで動作させることが求められている箇所の高圧動作向け駆動機器23,26と、ワークの搬送手段として用いる場合などのように駆動圧力の多少の増減は許容できる箇所の低圧動作向け駆動機器22,25とが混在しているという状況を前提に、空気圧を異にする2系統からそれぞれの設定圧のもとで圧縮空気を供給することで、コンプレッサ11の消費電力をそれだけ削減して省エネルギー化の実現に有効に寄与させることができる。
【0029】
因みに、コンプレッサ31は、設定圧を0.1MPa下げることにより約5〜8%の省エネルギー効果があるとされていることからすれば、第1コンプレッサ32の設定圧(0.3〜0.5MPa)は、第2コンプレッサ33の設定圧である0.5〜0.7MPaよりも0.2MPa程度下げることで、第1コンプレッサ32側に約10〜16%程度の省エネルギー効果を実現することができることになる。
【0030】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その具体的な内容はこれに限られるものではない。例えば、プレカット加工機11は、1台であってもよく、3台以上であってもよい。また、各プレカット加工機11は、必要に応じて複数箇所に空気圧駆動機器21としての低圧動作向け駆動機器22,25と高圧動作向け駆動機器23,26とを備えるものであってもよい。しかも、このようにプレカット加工機11の設置台数を増やしたり、低圧動作向け駆動機器22,25を増設することで、省エネルギー効果もより一層高めてやることができる。
【符号の説明】
【0031】
11 プレカット加工機
12 第1加工機
15 第2加工機
21 空気圧駆動機器
22 低圧動作向け駆動機器
23 高圧動作向け駆動機器
25 低圧動作向け駆動機器
26 高圧動作向け駆動機器
31 コンプレッサ
32 第1コンプレッサ
33 第2コンプレッサ
35 第1管路
36 減圧弁
37 第2管路
38 減圧弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレカット加工機が複数箇所に備える空気圧駆動機器に対しコンプレッサを介して駆動制御用の圧縮空気を供給する圧縮空気の供給システムにおいて、
前記コンプレッサは、低圧設定されている第1コンプレッサと高圧設定されている第2コンプレッサとの2系統として各別に配置され、
前記プレカット加工機が備える前記空気圧駆動機器は、低圧動作向け駆動機器と高圧動作向け駆動機器とに分別配置され、
前記低圧動作向け駆動機器に対しては、前記第1コンプレッサから供給される圧縮空気をその使用圧力まで減圧して供給可能とし、
前記高圧動作向け駆動機器に対しては、前記第2コンプレッサから供給される圧縮空気をその使用圧力まで減圧して供給可能としたことを特徴とするプレカット加工機が備える空気圧駆動機器のための圧縮空気の供給システム。
【請求項2】
前記プレカット加工機は、用途別に配置される複数台である請求項1に記載のプレカット加工機が備える空気圧駆動機器のための圧縮空気の供給システム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−226586(P2011−226586A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97827(P2010−97827)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(596008231)株式会社トーアエンジニアリング (11)
【Fターム(参考)】