説明

プレカット装置およびプレカット方法

【課題】サイディングなどの建材から正確にマーキングが施されたプレカット品を得ることが可能なプレカット装置およびプレカット方法の提供。
【解決手段】建材Tが載置されて搬送される搬送テーブル2と、搬送テーブル2上の建材Tを切断するクロスカット装置3と、建材Tをクロスカット装置3による切断位置まで搬送テーブル2上で位置決めしつつ搬送するサーボ定規4と、サーボ定規4により搬送される建材Tに搬送テーブル2の下からマーキングを行うマーキング装置5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイディングなどの建材をプレカットするプレカット装置およびプレカット方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の外壁材としてサイディングが多く用いられている。サイディングは、外壁に張る乾式の板状の外装材の総称であり、セメント(窯業)系、セラミック系、金属系や合成樹脂系など多くの種類がある。サイディングはデザインが豊富で、比較的安価なため、多くの住宅の外壁として使用されている。ところが、サイディングは産業廃棄物に指定されており、建築現場で残材が発生した場合には、このサイディングの残材処理費が必要となる。そこで、本出願人は、建築現場での残材を少なくするため、サイディングのプレカット化を推進している。
【0003】
ところで、従来、木造住宅の建築において合板製のパネル部材をプレカットする技術としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の建築用パネル部材加工システムは、規格寸法パネルを所望の長さ、形状のパネル部材に切断したり、切欠を加工したりするための加工ヘッドを備えたパネル材切断加工装置を備えたものである。また、このパネル材切断加工装置とは別に、パネル材の表面に所定の文字や記号をマーキングするためのマーキングヘッドを備えた大型のXYプロッタのようなパネル材マーキング装置を備えている。
【0004】
この建築用パネル部材加工システムでは、最初にマーキング装置に対して規格寸法パネルを投入し、当該規格寸法パネルの原点位置をマーキング装置の原点位置に合わせてセッティングを行い、マーキング装置のマーキングヘッドをXY方向に駆動して部材番号および配置情報を規格寸法パネルの表面にマーキングしていく。次に、こうしてマーキング処理が終了した規格寸法パネルをパネル材プレカット装置に移し替え、切断および切欠加工を行う。
【0005】
また、特許文献2には、建築される邸毎に、その邸の建材をプレカットするために作成されたCADデータを保存し、複数邸分のCADデータを一括してから、各邸に使用する建材を、コンピュータ上のストックヤードに登録された材料に所定の順に割り付け、割り付けに基づいてプレカット装置によりプレカットするプレカットシステムが記載されている。また、このプレカットシステムは、プレカット後の各製品に、建材識別コードと保管場所コードとを印刷するインクジェットプリンタ等の印刷装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−222971号公報
【特許文献2】特開2001−323658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載のシステムの場合、マーキング装置からプレカット装置に移し替える作業が必要であり、移し替え時にパネル材の順番や配置を誤らないようにしなければならない。パネル材の順番や配置を誤ると、マーキングされた部材番号および配置情報とプレカットされた部材とが異なることになり、正常に建築物が建築できなくなる。特に、マーキング処理が終了した後にパネルに不具合が発見された場合には、そのパネルの入れ替えや、プレカット装置での加工順序の変更等を注意深く行う必要があり、非常に煩雑な作業を伴う。
【0008】
また、特許文献2に記載のシステムについても、特許文献1と同様に、プレカット処理後のプレカット品を印刷装置に移し替える作業が必要であり、誤りのないように注意深く作業する必要がある。また、プレカット処理後のプレカット品はその形状が様々に異なっており、このように形状が異なるプレカット品を正確な位置および姿勢に保持して正しく印刷処理を行うことは困難である。
【0009】
そこで、本発明においては、サイディングなどの建材から正確にマーキングが施されたプレカット品を得ることが可能なプレカット装置およびプレカット方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のプレカット装置は、建材が載置されて搬送される搬送テーブルと、搬送テーブル上の建材を切断する切断装置と、建材を切断装置による切断位置まで搬送テーブル上で位置決めしつつ搬送する位置決め装置と、位置決め装置により搬送される建材に搬送テーブルの下からマーキングを行うマーキング装置とを含むものである。
【0011】
また、本発明のプレカット方法は、搬送テーブル上に載置されて搬送される建材を、切断装置による切断位置まで位置決め装置により搬送テーブル上で位置決めしつつ搬送すること、位置決め装置により搬送される建材に搬送テーブルの下からマーキング装置によりマーキングを行うこと、位置決め装置により位置決めされた搬送テーブル上の建材を切断することを含むことを特徴とする。
【0012】
これらの発明によれば、建材を切断装置による切断位置まで位置決め装置により搬送テーブル上で位置決めしつつ搬送する際、搬送テーブルの下からマーキング装置によりマーキングを行い、この搬送テーブル上で切断装置により切断するので、マーキングの内容とプレカット品とは必ず一致する。
【0013】
ここで、位置決め装置は、一方向に移動して建材を切断位置まで押し動かす定規であることが望ましい。これにより、定規を一方向に移動させるという簡単な機構で、建材を切断位置まで押し動かして、建材を切断装置による切断位置まで搬送テーブル上で位置決めしつつ搬送することができる。
【0014】
また、マーキング装置は、位置決め装置の移動方向に対して直交する方向に移動してマーキングするものであることが望ましい。これにより、マーキング装置を位置決め装置の移動と連動させて直交する方向に移動させるだけで、搬送テーブルの平面内で自在にマーキングすることができる。
【0015】
また、マーキング装置は、建材からプレカットされるプレカット品を識別するための識別情報とともに、プレカット品を現場加工するための罫書き線をマーキングするものであることが望ましい。これにより、プレカットだけでは対応できず、現場加工が必要なプレカット品であっても、プレカット品の識別情報とともに現場加工のための罫書き線がマーキングされているため、現場ではこの罫書き線に従って容易に加工することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
(1)搬送テーブル上に載置されて搬送される建材を、切断装置による切断位置まで位置決め装置により搬送テーブル上で位置決めしつつ搬送し、位置決め装置により搬送される建材に搬送テーブルの下からマーキング装置によりマーキングを行い、位置決め装置により位置決めされた搬送テーブル上の建材を切断する構成により、マーキングの内容とプレカット品とは必ず一致し、建材から正確にマーキングが施されたプレカット品を得ることが可能となる。
【0017】
(2)位置決め装置が一方向に移動して建材を切断位置まで押し動かす定規であることにより、定規を一方向に移動させるという簡単な機構で、建材を切断位置まで押し動かして、建材を切断装置による切断位置まで搬送テーブル上で位置決めしつつ搬送することが可能となるため、低廉なプレカット装置を実現できる。
【0018】
(3)マーキング装置が位置決め装置の移動方向に対して直交する方向に移動してマーキングするものであることにより、マーキング装置を簡単な移動機構により移動させて自在なマーキングを行うことが可能となるため、低廉なプレカット装置を実現できる。
【0019】
(4)マーキング装置が建材からプレカットされるプレカット品を識別するための識別情報とともに、プレカット品を現場加工するための罫書き線をマーキングするものであることにより、プレカットだけでは対応できず、現場加工が必要なプレカット品であっても、上記のように正確にマーキングが施されたプレカット品を罫書き線に従って正確かつ容易に現場加工することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態におけるプレカット装置の平面図である。
【図2】図1のプレカット装置により製造されたプレカット品の斜視図である。
【図3】図2のプレカット品を裏面からみた平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の実施の形態におけるプレカット装置の平面図、図2は図1のプレカット装置により製造されたプレカット品の斜視図、図3は図2のプレカット品を裏面からみた平面図である。
【0022】
図1において、本発明の実施の形態におけるプレカット装置1は、建材Tが載置されて搬送される搬送テーブル2と、搬送テーブル上の建材Tを切断する切断装置としてのクロスカット装置3と、建材Tをクロスカット装置3による切断位置まで搬送テーブル2上で位置決めしつつ搬送する位置決め装置としてのサーボ定規4と、サーボ定規4により搬送される建材Tに搬送テーブル2の下からマーキングを行うマーキング装置5とを有する。
【0023】
また、このプレカット装置1は、搬送テーブル2上へ投入する建材Tを載置するテーブル6と、テーブル6上に載置された建材Tを搬送テーブル2上へ移動するための移動装置としてのローラコンベア7と、建材Tから製造されたプレカット品P(図2参照。)を搬送テーブル2上から押し出す押し出し装置8と、製造後のプレカット品Pを載置するテーブル9とを有する。
【0024】
搬送テーブル2には、建材Tの左右方向(サーボ定規4の移動方向に対して直交する方向、以下同じ。)の移動を規制するガイドローラ20が設けられている。マーキング装置5は、この搬送テーブル2の下に設けられており、サーボ定規4の移動方向に対して直交する方向に移動しながらマーキングするようになっている。サーボ定規4は、一方向(本実施形態においては水平方向)に移動して建材Tを切断位置まで押し動かす定規である。本実施形態においては、サーバ定規4はサーボモータにより駆動されるものであり、正確に位置決めすることが可能となっている。
【0025】
マーキング装置5は、別途CAD等により作成されたCADデータに基づいて建材Tからプレカットされるプレカット品Pを識別するための識別情報C(図2、図3参照。)およびプレカット品Pを現場加工するための罫書き線L(図2、図3参照。)を、インクジェットやレーザ等により建材Tにマーキングするものである。マーキング装置5は、上記サーボ定規4と連動して移動することで、搬送テーブル2の平面内で自在にマーキングすることが可能となっている。
【0026】
上記構成のプレカット装置1では、建材Tをプレカットするために別途CAD等により作成されたCADデータに基づいて、クロスカット装置3、サーボ定規4およびマーキング装置5が自動制御される。建材Tはテーブル6からローラコンベア7により搬送テーブル2上へ投入され、サーボ定規4によりクロスカット装置3の切断位置まで一方向に押し動かされる。
【0027】
このとき、マーキング装置5はサーボ定規4の移動と連動して左右方向に移動することで、図2および図3に示すように建材T(プレカット品P)の裏面に搬送テーブル2の下側から識別情報Cおよび罫書き線Lをマーキングする。クロスカット装置3は、CADデータに基づいて建材Tを切断加工し、プレカット品Pを製造する。製造後のプレカット品Pは押し出し装置8により搬送テーブル2上から押し出される。
【0028】
以上のように、本実施形態におけるプレカット装置1では、建材Tをクロスカット装置3による切断位置までサーボ定規4により搬送テーブル2上で位置決めしつつ搬送する際、搬送テーブル2の下からマーキング装置5によりマーキングを行い、この搬送テーブル2上でクロスカット装置3により切断するので、マーキングの内容とプレカット品Pとは必ず一致し、建材Tから正確にマーキングが施されたプレカット品Pが得られる。
【0029】
特に、このプレカット装置1では、サーボ定規4を一方向に移動させるという簡単な機構で、建材Tをクロスカット装置3による切断位置まで搬送テーブル2上で位置決めしつつ搬送し、識別情報Cおよび罫書き線Lのマーキングと切断加工との両方を行うことができるので、低廉な装置を実現できている。
【0030】
また、マーキング装置5についても、サーボ定規4の移動方向に対して直交する方向に移動してマーキングするものとし、マーキング装置5をサーボ定規4の移動と連動させて直交する方向に移動させるだけで、搬送テーブル2の平面内で自在にマーキングすることを可能としており、低廉な装置を実現できている。
【0031】
また、このプレカット装置1により製造されたプレカット品Pは、識別情報Cとともに、プレカット品Pを現場加工するための罫書き線Lがマーキングされている。したがって、プレカットだけでは対応できず、現場加工が必要なプレカット品Pであっても、プレカット品Pの識別情報Cとともに現場加工のための罫書き線Lがマーキングされているため、この罫書き線Lに従って正確かつ容易に現場加工することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のプレカット装置およびプレカット方法は、サイディング等の外装材の他、柱、土台や桁等の構造材、野地材や床材等の合板材等の建材のプレカットに有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 プレカット装置
2 搬送テーブル
3 クロスカット装置
4 サーボ定規
5 マーキング装置
6,9 テーブル
7 ローラコンベア
8 押し出し装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建材が載置されて搬送される搬送テーブルと、
前記搬送テーブル上の建材を切断する切断装置と、
前記建材を前記切断装置による切断位置まで前記搬送テーブル上で位置決めしつつ搬送する位置決め装置と、
前記位置決め装置により搬送される建材に前記搬送テーブルの下からマーキングを行うマーキング装置と
を含むプレカット装置。
【請求項2】
前記位置決め装置は、一方向に移動して前記建材を前記切断位置まで押し動かす定規である請求項1記載のプレカット装置。
【請求項3】
前記マーキング装置は、前記位置決め装置の移動方向に対して直交する方向に移動してマーキングするものである請求項1または2に記載のプレカット装置。
【請求項4】
前記マーキング装置は、前記建材からプレカットされるプレカット品を識別するための識別情報とともに、前記プレカット品を現場加工するための罫書き線をマーキングするものである請求項1から3のいずれかに記載のプレカット装置。
【請求項5】
搬送テーブル上に載置されて搬送される建材を、切断装置による切断位置まで位置決め装置により搬送テーブル上で位置決めしつつ搬送すること、
前記位置決め装置により搬送される建材に前記搬送テーブルの下からマーキング装置によりマーキングを行うこと、
前記位置決め装置により位置決めされた前記搬送テーブル上の建材を切断すること
を含むプレカット方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−224930(P2011−224930A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99142(P2010−99142)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(503436845)ネットイーグル株式会社 (10)
【Fターム(参考)】