説明

プレキャストカルバート運搬装置と運搬方法。

【課題】上床部と下床部と、両床を連結する壁面とで構成したプレキャストカルバートであって、下床部の中央のみ、あるいは下床部に加え上床部の中央が欠けている形状のプレキャストカルバートを、所定の位置まで運搬することができる装置と方法を提供する。
【解決手段】床部と下床部と、両床を連結する壁面とで構成したプレキャストカルバートであって、下床部の中央のみ、あるいは下床部に加え上床部の中央が欠けている形状のプレキャストカルバートを、所定の位置まで運搬することができる装置である。下床部の中央空間に敷設した軌条2に搭載する台車1と、台車1の両側に設けたピン挿入台3と、台車1の上部に設けた、台車1の上部から上側に向けて伸縮自在の載荷装置13とより構成する。ピン挿入台3から押し出したピン33を、側壁Aの水平面に挿入して連結できる。載荷装置13で、プレキャストカルバートの上床部Bを下から支持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完全な閉空間を形成していないプレキャストカルバートの一部を運搬するための装置に関するものである。
ここで、完全な閉空間を形成していないとは、プレキャストカルバートの下床部の中央のみが欠けている形状や、下床部に加え上床部の中央が欠けている形状のことである。
この中央空間には現場でコンクリートを打設して連結して閉空間のトンネル状の構造物を構築する。
【背景技術】
【0002】
下水道工事などで、断面が貫通した箱状のプレキャストカルバートを連結してトンネルを構築する方法が採用されている。
これらのプレキャストカルバートを運搬する方法として、特許文献に記載したような工法が開発されている。
これらの工法は、図10に示すように地盤に設けた収納溝aにパチンコ玉大の鋼球bを並べて低摩擦帯4を形成し、その上に例えばボックス状のボックスカルバートdを搭載して移動させる構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−273938号公報。
【特許文献2】特開2002−332684号公報。
【特許文献3】特開2007−262848号公報。
【特許文献4】特開2007−332711号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来のプレキャストカルバート運搬装置にあっては、次のような問題点が存在した。
<1> プレキャストカルバートを、収納溝内の鋼球群の上に搭載して移動させるために、プレキャストカルバートは全方向に自由に移動することができてしまう。そのために方向性の正確な確保が困難であった。
<2> 左右の2台のウインチでプレキャストカルバートを牽引する場合に、ウインチのけん引にわずかでも差が生じると、プレキャストカルバートは鋼球群の上に乗っているだけであるために、平面的に傾斜しやすく、収納溝とせったり、収納溝を破損させる可能性があった。
<3> プレキャストカルバートを滑らせる収納溝として既成の鋼材を寝かせて使用しているので、その幅を広げることは困難であった。そのために直線の設置しかできず、曲線に対応することは難しかった。
<4> 鋼球群を散布した収納溝において、左右の高さに不一致があると低い側の鋼球の一部に過剰な重量が加わり、鋼球やそれを収納している収納溝を破損する可能性があった。
<5> 工法の手順上で、収納溝内に散布した多数の鋼球を回収することができず、不経済なものであった。
<6> 特にプレキャストカルバートが大型化した場合には、プレキャストカルバートを箱状に形成せず、下床部の中央だけを現場でコンクリートを打設する構成や、さらに大型化した場合は、下床部に加え上床部の中央を現場でコンクリートを打設する構成が開発されているが、そのような中央が欠けたような形状のプレキャストカルバートを運搬する工法は存在しなかった。
<7> 特に問題になるのは、中央が欠けている形状のプレキャストカルバートを運搬する場合に、側壁を従来の低摩擦帯に搭載すると、移動方向と直交する左右方向に妄動する可能性があり、両側の側壁間の間隔が正確に保持できない、という点であった。
<8> 特に、下床部の中央のみが欠けている形状の両側の側壁は、その上端で上床部に固定してあるが、もし側壁が勝手に左右方向に移動してしまうと、側壁上端と上床部との接続部に亀裂や破損が生じする可能性があるからである。
<9> 中央が欠けている形状の側壁は、一体として一定離隔を保って精度よく運搬できず、個々別々に運搬することとなり、運搬効率が悪く、組み立て後の精度が十分でなく品質が悪いという問題があった。

【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するために本発明のプレキャストカルバート運搬装置は、上床部と下床部と、両床を連結する壁面とで構成したプレキャストカルバートであって、下床部の中央のみ、あるいは下床部に加え上床部の中央が欠けている形状のプレキャストカルバートを運搬する装置であって、下床部の中央空間に敷設した軌条に搭載する台車と、台車の両側に設けたピン挿入台と、台車の上部に設けた、台車の上部から上側に向けて伸縮自在の載荷装置とより構成し、ピン挿入台から押し出したピンを、側壁の水平面に挿入して連結でき、載荷装置で、プレキャストカルバートの上床部を下から支持できるように構成したプレキャストカルバート運搬装置を特徴としたものである。
さらに本発明のプレキャストカルバート運搬方法は、上記のプレキャストカルバート運搬装置を使用し、プレキャストカルバートの側壁と側壁の間の中央空間の地盤に敷設した案内軌条に、プレキャストカルバート運搬装置を搭載し、案内軌条の外側に案内軌条と平行に敷設した低摩擦帯に、プレキャストカルバートの側壁を搭載し、運搬装置と側壁との平面的関係を拘束して、運搬装置の移動によって、プレキャストカルバートを移動させることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のプレキャストカルバート運搬装置は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 前記したように従来の装置では、プレキャストカルバートの移動の方向性は、鋼球を散布した収納溝によっていた。そのためにプレキャストカルバートは全方向に自由に移動が可能であり、正確な移動方向を確保できなかった。その点で本願発明の装置ではその移動方向の案内を方向性の厳密な軌条によって行うから、プレキャストカルバートの正確な移動方向を確保することができる。
<2> 移動する方向が正確であると、台車を2台のウインチなどで牽引した場合にも平面的に左右に振れることがなく、正確な平行移動が可能であって、牽引トラブルが発生することがない。
<3> 台車と両側の側壁は、平面方向には移動しないように台車に確実に拘束されている。そのために、低摩擦帯の上で妄動し易い側壁であっても、移動中は正確な方向性を維持できる。さらに両側壁を固定している上床がある場合、側壁と上床の接続部に亀裂や破損が発生することがない。
<4> 台車は案内用の軌条に沿って移動する。そのために中央が接続していないプレキャストカルバートであっても、その全体が正確な中心線に沿って移動するので、高い施工精度を期待することができる。
<5> 台車自体の重量は軽いので、より重い側壁が傾いた場合などに台車が浮き上がることも考えられる。しかし本願発明の台車はその上部に載荷装置を設け、この載荷装置によってプレキャストカルバートの上床部をジャッキ、ダンパなどの載荷装置にてわずかに押し上げることによって台車の重量を得ることができる。そのために台車が浮き上がることなく、台車は姿勢制御装置としての機能を果たすことができる。
<6> 側壁の重量は台車で受けずに低摩擦帯で受ける構造である。そのために前記したように従来の構成であると、左右の鋼球収納溝の高さがわずかでも異なると一部の鋼球だけに全体の荷重が作用して、鋼球や収納溝を破損する可能性があった。しかし本願発明の側壁と台車とは平面移動だけを拘束し、鉛直方向の相対移動が可能であるように構成してある。したがって側壁の重量を受ける低摩擦帯には、過剰な重量が加わることがなく、破損する可能性がない。
<7> 前記したように左右の低摩擦帯の高さに多少の不一致があっても、側壁の移動に影響がない。したがって、低摩擦帯の施工精度を過剰に厳格に管理する必要がなく、設置が簡単で良好な施工性を得ることができる。
<8>プレキャストカルバートが大型化した場合には、前記したように、プレキャストカルバートを箱状に形成せず、下床部の中央だけを現場でコンクリートを打設する構成や、さらに大型化した場合は、下床部に加え上床部の中央を現場でコンクリートを打設する構成となる。その場合に従来はプレキャストカルバートを一体で運搬できなかったが、本発明の構造、方法によればこのような構成のプレキャストカルバートを、各側壁を一体として一定離隔を保って精度よく効率的に運搬できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のプレキャストカルバート運搬装置の実施例の説明図。
【図2】側壁にピンを挿入して拘束した状態の説明図。
【図3】台車でプレキャストカルバートを支持した状態の正面図。
【図4】低摩擦帯でプレキャストカルバートを支持している状態の断面図。
【図5】低摩擦帯と回収ジャッキの説明図。
【図6】プレキャストカルバート運搬装置の使用状態の説明図。
【図7】牽引装置の説明図。
【図8】運搬対象の他のプレキャストカルバートの説明図。
【図9】2台の運搬装置を使用した運搬方法の説明図。
【図10】従来のプレキャストカルバートの運搬方法の一例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>運搬する対象。
本発明の装置の運搬対象は、水平の上床部と下床部と、両床を連結する鉛直の壁面とで構成したトンネル形状のプレキャストカルバートであるが、特に下床部の中央が欠けて空間となっている形状のプレキャストカルバートを対象とする。
下床部はその中央部分が欠けている形状であるから、壁面の下端には下床部の一部が接続しており、その断面はL状となる。
上床部Bのみをプレキャスト化し、側壁Aと側壁Aの間の下床部の中央空間は現場でコンクリートを打設して製作する。
なお、図の実施例ではボックス状のカルバートを示しているが、矩形断面に限らず、両側の端面が貫通している楕円型、卵型、上半円弧型などの形状のプレキャストカルバートの場合や、側壁Aと側壁Aの間の下床部の中央空間は現場でコンクリートを打設して製作する構造のものであれば、本発明の運搬の対象とすることができる。
また、下床部の中央だけでなく、さらに上床部の中央も開放してある構成のプレキャストカルバートも運搬の対象とすることができるが、詳細は後述する。
【0010】
<2>運搬中の拘束。
プレキャストカルバートは、移動中は、側壁Aと上床部Bをボルト締結で接合して行う場合と、締結しない場合がある。
両者をボルト締結する場合には、後述する台車1上床部のジャッキ、ダンパなどの載荷装置13にて、一部の重量のみ台車1で受けつつ、上下移動を許容する状態で拘束しておく。
側壁Aと上床部Bとを一体化しない場合は、両者間に鉛直方向の鋼棒を挿入するだけで、上下移動を許容する状態で拘束しておく。
したがって運搬中に側壁Aが上下動しても、側壁Aは鋼棒に沿ってスライドするだけであって、その上下動によって上床部Bと側壁Aの出合う隅角部に変形や影響を与えることがない。
【0011】
<3>台車。
台車1は鋼材を組み立てた枠状の支持部材である。
台車1の下面には複数の車輪11を設ける。
一方、図6に示すように、軌条2をプレキャストカルバートの下床部の中央空間の地表面に敷設する。
そして車輪11を、プレキャストカルバートの下床部の中央空間の地表面に敷設した案内軌条2に搭載して台車1を移動する。
台車1の移動手段の例は後述する。
台車1の両側には、台車1の側面から外側に向けて起倒自在のピン挿入台3を設置する。
また台車1の上部には、台車1から上側に向けて伸縮自在の載荷装置13を設ける。
【0012】
<4>ピン挿入台。
台車1の両側には、ジャッキ31によって台車1から外側に向けて起倒が自在である腕材32を、台車1の支柱14に回転自在に軸支する。
そしてこの腕材32の先端には、ピン挿入台3を設置する。
このピン33は、ピン挿入台3から押し出しが自在であり、後述するようにこのピン33を、側壁Aの水平面に挿入すれば、台車1と側壁Aとを一体に連結することができる。
【0013】
<5>ピンの機能。
断面がL字状の側壁Aは、垂直部A1と水平部A2で構成する。
その水平部A2の上面には、前記のピン33の外径に近い内径を備えた貫入孔A21を開口してある。
そして、ピン挿入台3を倒して水平姿勢にした場合に、ピン33は鉛直方向に上下動する。
そしてピン33を下降させると、側壁Aの水平部A2に開口した貫入孔A21にピン33を挿入することができる。
複数本のピン33を1基の側壁Aの貫入孔A21に挿入すれば、台車1と側壁Aの位置関係を拘束することができる。
ただしピン33で拘束した側壁Aは平面的な位置関係は拘束するが、両者の上下方向の位置関係は拘束しない。
そのために移動中の側壁Aに多少の上下動があっても、側壁Aの上下動は許容されており、台車1に外力として作用することがない。
【0014】
<6>載荷装置。
台車1の上部にはジャッキ、ダンパなどの載荷装置13を設置する。
前記したように本発明の装置では、プレキャストカルバートの上床部Bの荷重は両側の側壁Aで受けており、その側壁Aは後述する低摩擦帯4に搭載しているから、台車1に上から重量が加わることはなく、台車1が破損することがない。
それなのに、あえて載荷装置13を設けてプレキャストカルバートの上床部Bを押し上げる機能を与えるのは、その荷重を利用して移動時の反力を取るためである。
すなわち、台車1は後述する牽引装置などによって前方から牽引するので、台車1にある程度の重量がないと車輪11が浮き上がり軌条2に反力が取れない現象が生じる。
そのために台車1の上部に載荷装置13を設けて、過剰ではない、必要とするだけの鉛直荷重を得られるように構成したものである。
【0015】
<7>牽引装置。
この台車1を前進させるには各種の公知の方法を採用することができるが、その一つとして台車1にセンターホールジャッキ15を取り付け、台車1の前方には反力台5を配置する構成を採用することができる。
このセンターホールジャッキ15は、例えば台車1の両側に2基、水平に、かつ台車1の進行方向に平行に取り付ける。
反力台5は、各軌条2を強固に把持するクランプ51を設けた架台、または車輪11付きの架台である。
この反力台5に取り付けた鋼線、鋼棒をセンターホールジャッキ15で把握して盛りかえながら引き寄せて台車1の前進を行う。
軌条2を曲線状に敷設した場合には、軌条2のほぼ接線方向に台車1を牽引することができ、移動時の姿勢制御を精度高く維持することができる。
このセンターホールジャッキ15は、台車1自体に取り付けることも、側壁Aに取り付けることも、あるいは反力台5自体に取り付けることもできる。
【0016】
<8>低摩擦帯。(図4)
案内軌条2は、地盤に敷設した軌条2であるが、その敷設位置は側壁Aと側壁Aの間の中央空間の地盤である。
この案内軌条2に平行に、案内軌条2の外側に、低摩擦帯4を敷設する。
この低摩擦帯4の設置精度が、側壁Aの牽引時の姿勢制御の精度や牽引効率にかかわってくる。
そのために低摩擦帯4として例えば基礎コンクリート41に鉛直方向に埋め込んだレベル調整ボルト42と、そのボルト42群の上に敷設した鋼材43で構成することができる。
その場合には基礎コンクリート41にナットを鉛直に埋め込み、このナットにレベル調整ボルト42をねじ込み、レベル調整をしたのちに、ボルト42群の上に鋼製のチャンネル材43をかぶせた状態で配置する。
そして、チャンネル材43に空気穴を開口して、その下にモルタル44を充填して強度を確保する。
このような構成を採用すれば、簡単な施工で低摩擦帯4の精度と強度を得ることができる。
低摩擦帯4は案内軌条2の外側に2列づつ配置すると、運搬がより容易で確実である。
低摩擦帯4の低摩擦性を確保するために、鋼球を使用する他、フッ素樹脂の板や精密樹脂MLEベアリング板などの低摩擦部材47を介在させる。
ここで精密樹脂MLEとは、バックメタルの鋼板に青銅粉末を焼結した多孔質焼層に特殊充填剤入りの四ふっ化エチレン樹脂を含浸させた三層構造の部材である。
【0017】
<9>低摩擦部材の回収。(図5)
低摩擦帯4は、プレキャストカルバートを設置する位置にまで敷設しておかなければならない。
そのために従来はプレキャストカルバートの設置の際に、その下に位置する収納溝や鋼球群は埋め殺しにしていた。
そのような不経済な手段を採用せず、本発明では低摩擦帯4に敷設した低摩擦部材47を回収する。
そのためには、本来の設置位置に到達する前に、プレキャストカルバートを回収ジャッキ45で持ち上げる。
この回収ジャッキ45は、鉛直方向に伸縮する通常の油圧ジャッキの下に、移動が容易なように摩擦低減板46を取り付けた装置である。
この回収ジャッキ45でプレキャストカルバートを持ち上げておき、最終設置位置までの敷設してある低摩擦帯4の低摩擦部材47を引き抜く。
その後、引抜いた空間に急硬モルタルを打設して高さを確保する。
プレキャストカルバートはこの回収ジャッキ45で荷重に負担させた状態で基礎コンクリート面を滑らせて、最終位置まで移動させて設置する。
その後に回収ジャッキ45をダウンさせて、回収ジャッキ45をプレキャストカルバートの下から引き抜く。
このようにプレキャストカルバートの最終移動工程を、それ自体が水平方向にスライドが容易な回収ジャッキ45に負担させ、低摩擦帯4に依存しない移動を可能としたことによって、低摩擦帯4に使用した低摩擦部材47の回収が可能となった。
【0018】
<10>運搬方法の説明。
以上の装置を使用して行う、プレキャストカルバートの運搬方法を説明する。
【0019】
<11>準備工程。
プレキャストカルバートの中央空間に敷設した軌条2に台車1を搭載する。
そして外部のクレーンなどによって、台車1の上に上床部Bを搭載する。
一方、側壁Aはクレーンなどによって、軌条2の両側に設置した低摩擦帯4の上に搭載する。
そして台車1の両側のピン挿入台3を水平に倒してピン33を、側壁Aの水平部A2の挿入孔A21に挿入する。
複数本のピン33を挿入することによって、台車1と側壁Aとの平面的な位置関係を拘束することができる。
この上床部Bと側壁Aとは、側壁Aと上床部Bをボルト締結で接合する場合は、上床下部のジャッキ31、ダンパなどの載荷装置13によって一部の重量のみ台車1で受けつつ、上下移動を許容する状態で拘束しておく。
側壁Aと上床部Bとを一体化しない場合は、両者を鉛直方向の鋼棒を挿入するだけで、上下移動を許容する状態で拘束しておく。
そのために側壁Aの位置が多少上下しても、両者の角隅部が変形することがない。
【0020】
<12>台車の移動。
台車1の前方の反力台5を設置し、この反力台5から延長した鋼線、鋼棒をセンターホールジャッキ15で引き寄せることによって台車1を前進させて移動する。
台車1の移動時には、上床部Bと側壁Aの重量は、低摩擦帯4に載荷しており、台車1は重量を負担する必要はないから、車軸が破損するような危険性はまったくない。
ただしけん引の際に車輪11が空転するのを避けるための重量が必要であれば、必要とする重量だけは、載荷装置13を伸長してプレキャストカルバートの上床部Bから得ることができる。
こうして台車1は、荷重を負担せず、しかし側壁Aの平面的な位置を拘束した状態で移動する。
その結果、断面L字状の側壁Aと、上床部Bのみをプレキャスト化し、側壁Aと側壁Aの間の下床部の中央は空間となったプレキャストカルバートを所定の位置まで運搬することができる。
【0021】
<13>現場でのコンクリートの打設。
所定の位置に到達したら、側壁Aと側壁A間の中央の空間に、現場でコンクリートを打設して、たとえばボックス状の閉空間のプレキャストカルバートを完成する。
その場合に、コンクリートによって低摩擦帯4が埋設されてしまわないように、設置位置の手前で、回収ジャッキ45に荷重を負担させて側壁Aを押し上げ、低摩擦帯4の低摩擦材を回収して最終の移動は回収ジャッキ45のスライドに負担させる工程は前記したとおりである。
【0022】
<14>他のプレキャストカルバートの形状。
上記の実施例では、上床部と下床部と、両床を連結する壁面とで構成したプレキャストカルバートであって、下床部の中央のみを開放した形状のプレキャストカルバートを運搬の対象とした。
しかし図8に示すような、下床部に加えて上床部の中央が欠けている形状のプレキャストカルバートも、本発明の装置の運搬の対象とすることができる。
【0023】
<15>平行運搬。
本発明の運搬装置を2台平行に並べて、移動を同調させれば、図9に示すように、2台の運搬装置の外側に1基づつのプレキャストカルバートを、また2台の運搬装置の間に1基のプレキャストカルバートを保持して運搬することができる。
この平行配置による運搬は、上床部の中央が欠けているプレキャストカルバートでも、欠けていないプレキャストカルバートでも対象とすることができる。
【符号の説明】
【0024】
A:側壁
1:台車
2:軌条
3:ピン挿入台
33:ピン
4:低摩擦帯
45:回収ジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上床部と下床部と、両床を連結する壁面とで構成したプレキャストカルバートであって、下床部の中央のみ、あるいは下床部に加え上床部の中央が欠けている形状のプレキャストカルバートを運搬する装置であって、
下床部の中央空間に敷設した軌条に搭載する台車と、
台車の両側に設けたピン挿入台と、
台車の上部に設けた、台車の上部から上側に向けて伸縮自在の載荷装置とより構成し、
ピン挿入台から押し出したピンを、側壁の水平面に挿入して連結でき、
載荷装置で、プレキャストカルバートの上床部を下から支持できるように構成した、
プレキャストカルバート運搬装置。

【請求項2】
ピン挿入台から側壁の水平部に挿入するピンは、
平面方向には側壁の平行移動を拘束し、
鉛直方向には側壁の上下動を拘束しない状態で挿入し得るように構成した、
請求項1記載のプレキャストカルバート運搬装置。
【請求項3】
請求項1記載のプレキャストカルバート運搬装置を使用し、
プレキャストカルバートの側壁と側壁の間の中央空間の地盤に敷設した案内軌条に、プレキャストカルバート運搬装置を搭載し、
案内軌条の外側に案内軌条と平行に敷設した低摩擦帯に、プレキャストカルバートの側壁を搭載し、
運搬装置と側壁との平面的関係を拘束して、
運搬装置の移動によって、プレキャストカルバートを移動させる、
プレキャストカルバート運搬方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−196439(P2010−196439A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45853(P2009−45853)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【出願人】(592182573)オックスジャッキ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】