説明

プレスフィット端子

【課題】はんだ付け無しで基板に接続できるプレスフィット端子に関し、挿入荷重が比較的小さく且つスルーホールに対して高い位置精度で挿入できるようにする。
【解決手段】先端連結部26側からスルーホール42に挿入される際に、幅変化部36がそのスルーホール42と係合させられて弾性変形させられることにより、先端側拡幅部32がそのスルーホール42に達する前に先端連結部26に設けられた破断部(ノッチ50部分)が破断する。これにより、プレスフィット端子10の弾性変形が容易になって、幅寸法が大きい先端側拡幅部32をスルーホール42内に挿入する際の挿入荷重が軽減される。また、スルーホール42に挿入する前は、先端部分が先端連結部26によって一体に連結されているため、加工の際の残留応力等による変形などが抑制されて高い形状精度が得られ、スルーホール42に対する位置精度が向上して挿入不良が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレスフィット端子に係り、特に、挿入(圧入)荷重が比較的小さく且つスルーホールに対して高い位置精度で挿入できるプレスフィット端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の電気部品や電源等を電気的に接続するターミナル装置の接続端子として、はんだ付けを必要としないプレスフィット端子が提案されている。例えば特許文献1には、(a) 端子突出方向の中間部分に設けられ、幅方向の両端が基板のスルーホールの内周面に押圧されるスルーホール接触部と、(b) 端子突出方向において前記スルーホール接触部の両側に設けられ、前記基板を板厚方向の両側で挟んで位置決めするように前記幅方向の両側へ突き出している先端側拡幅部および基端側拡幅部と、(c) その先端側拡幅部から端子突出方向の先端側へ向かうに従って前記幅方向の両端までの幅寸法が徐々に小さくなる幅変化部と、(d) その幅変化部、前記先端側拡幅部、前記スルーホール接触部、および前記基端側拡幅部に跨がって設けられた長手形状の貫通穴と、(e) その貫通穴によって分断された前記幅変化部を端子突出方向の先端側で一体に連結している先端連結部と、を有し、(f) 前記先端連結部側から前記スルーホール内に挿入され、前記幅変化部の途中でそのスルーホールと係合させられることにより、前記貫通穴の存在で前記幅方向の内側へ弾性変形させられるとともに、前記先端側拡幅部がそのスルーホールを通過させられて幅方向の外側へ弾性的に復帰させられることにより、前記スルーホール接触部がスルーホールの内周面に押圧されて電気的に接続されるプレスフィット端子が記載されている。また、特許文献2には、上記先端側拡幅部および基端側拡幅部を備えていないものの、貫通穴が端子突出方向に開口しているプレスフィット端子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−294331号公報
【特許文献2】特開2005−174654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のプレスフィット端子は、先端側拡幅部をスルーホールに押し込む際に大きな挿入荷重が必要であるため、プレスフィット端子自体やスルーホール、或いは挿入装置に関して、その挿入荷重に耐える強度を確保する必要があり、製造コストが高くなる。一方、特許文献2記載のプレスフィット端子は、貫通穴が端子突出方向に開口しているため弾性変形し易くなり、特許文献1記載のように先端側拡幅部を備えている場合でも、その挿入荷重を小さくできるが、端子先端が開口しているため加工の際の残留応力等による変形などで十分な形状精度を確保することが難しく、スルーホールに対する挿入不良を生じ易くなる。特に、多数のプレスフィット端子が互いに近接して配置され、多数のスルーホールに対して同時に挿入されて接続されるターミナル装置の場合、僅かな形状誤差で挿入不良が発生する。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、はんだ付け無しで基板に接続できるプレスフィット端子に関し、挿入荷重が比較的小さく且つスルーホールに対して高い位置精度で挿入できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 端子突出方向の中間部分に設けられ、幅方向の両端が基板のスルーホールの内周面に押圧されるスルーホール接触部と、(b) 端子突出方向において前記スルーホール接触部の両側に設けられ、前記基板を板厚方向の両側で挟んで位置決めするように前記幅方向の両側へ突き出している先端側拡幅部および基端側拡幅部と、(c) その先端側拡幅部から端子突出方向の先端側へ向かうに従って前記幅方向の両端までの幅寸法が徐々に小さくなる幅変化部と、(d) その幅変化部、前記先端側拡幅部、前記スルーホール接触部、および前記基端側拡幅部に跨がって設けられた長手形状の貫通穴と、(e) その貫通穴によって分断された前記幅変化部を端子突出方向の先端側で一体に連結している先端連結部と、を有し、(f) 前記先端連結部側から前記スルーホール内に挿入され、前記幅変化部の途中でそのスルーホールと係合させられることにより、前記貫通穴の存在で前記幅方向の内側へ弾性変形(撓み変形)させられるとともに、前記先端側拡幅部がそのスルーホールを通過させられてその幅方向の外側へ弾性的に復帰させられることにより、前記スルーホール接触部がそのスルーホールの内周面に押圧されて電気的に接続されるプレスフィット端子において、(g) 前記先端連結部には、前記スルーホールを通過させられる際に前記幅変化部がそのスルーホールと係合させられて弾性変形させられることにより、前記先端側拡幅部がそのスルーホールに達する前に破断する脆弱な破断部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
第2発明は、第1発明のプレスフィット端子において、前記先端連結部の前記幅方向の略中央に最小板厚部もしくは最小板幅部が形成されて前記破断部とされていることを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第2発明のプレスフィット端子において、前記最小板厚部もしくは前記最小板幅部は、前記先端連結部に設けられたV字状のノッチにより形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このようなプレスフィット端子においては、先端連結部側からスルーホールに挿入される際に、幅変化部がそのスルーホールと係合させられて弾性変形させられることにより、先端側拡幅部がそのスルーホールに達する前に先端連結部に設けられた破断部が破断する。このため、その破断された先端部分の変形や移動の自由度が高くなり、プレスフィット端子の弾性変形が容易になって、幅寸法が大きい先端側拡幅部をスルーホール内に挿入する際の挿入荷重が軽減される。これにより、プレスフィット端子自体やスルーホール、或いは挿入装置に要求される必要強度が緩和されて製造コストが低減される。
【0010】
一方、このプレスフィット端子をスルーホールに挿入する前には、貫通穴によって分断された幅変化部が先端連結部によって一体に連結されているため、加工の際の残留応力等による変形などが抑制されて高い形状精度が得られ、スルーホールに対する位置精度が向上して挿入不良が抑制される。これにより、例えば多数のプレスフィット端子が互いに近接して配置されたターミナル装置においても、その多数のプレスフィット端子を多数のスルーホールに対して同時に安定して適切に挿入できるようになる。
【0011】
第2発明では、先端連結部の幅方向の略中央に、破断部として最小板厚部もしくは最小板幅部が形成されているため、その破断部に確実に応力集中が生じ易くなって破断し易くなる。また、第3発明では、上記最小板厚部もしくは最小板幅部がV字状のノッチにより形成されているため、そのノッチの深さを変更することで破断強度のチューニングを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が適用された多数のプレスフィット端子を有するターミナル装置の一例を示す図で、(a) は全体の斜視図、(b) はプレスフィット端子の正面図、(c) はそのプレスフィット端子が基板のスルーホールに挿入されて接続された状態を示す断面図、(d) は(c) におけるID−ID断面の拡大図である。
【図2】図1の(b) のII部を拡大して示す図で、(a) は(b) の上方から見た平面図、(b) は図1(b) に相当する正面図、(c) は(b) の右側から見た側面図である。
【図3】図2のプレスフィット端子の先端連結部に設けられるノッチをプレス加工によって形成する工程を説明する図である。
【図4】図1のプレスフィット端子を基板のスルーホールに挿入する際の端子の形状変化を説明する図である。
【図5】本発明の他の実施例を示す図で、図2に対応する三面図である。
【図6】本発明の更に別の幾つかの実施例を示す図で、何れも図5の(b) に対応する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のプレスフィット端子は、例えば複数のプレスフィット端子が互いに近接して配置され、複数のスルーホールに対して同時に挿入されて接続されるターミナル装置に好適に適用されるが、単一のプレスフィット端子にも適用され得る。プレスフィット端子は、例えば導電性金属板材などを用いてプレスによる打ち抜き加工等を主体として製造できるが、切削加工や研削加工を用いて製造しても良い。必要に応じて表面にSn(錫)メッキ等の導電性被膜を設けることも可能である。
【0014】
基板のスルーホールとしては、円形穴が広く用いられているが、長方形や正方形、楕円形等の円形穴以外のスルーホールであっても良い。このスルーホールの内周面には、Cu(銅)メッキや銅箔、Sn(錫)メッキ等の導電性被膜、或いは導電性筒部材が設けられ、基板の表面に設けられたプリント配線等の電気回路に接続されているとともに、プレスフィット端子のスルーホール接触部が押圧されることにより電気的に接続される。スルーホール接触部の幅方向の両端でスルーホールに接触させられる部分は、スルーホールの内周面に面接触させられるように、その内周面形状に対応する円弧等とすることもできるが、例えば円形穴のスルーホールに対して断面矩形のスルーホール接触部を採用し、その矩形断面の角部がスルーホールの内周面に対して点接触乃至は線接触させられるものでも良い。スルーホール接触部の両端までの幅寸法は、基板のスルーホールに接続する前の自然状態において、例えば円形のスルーホールの径寸法よりも大きくされ、接続状態ではプレスフィット端子自身の弾性でスルーホールの内周面に押圧される。
【0015】
プレスフィット端子の先端連結部に設けられる脆弱な破断部は、例えば先端連結部の幅方向における略中央に板厚方向の一方或いは両側からV字状のノッチ等が設けられた最小板厚部分や、先端連結部の板幅方向(端子突出方向)にV字状のノッチ等が設けられた最小板幅部分、或いは長手形状の貫通穴とは別個に先端連結部に板厚方向または板幅方向に貫通穴を設けるなど、部分的に断面積を小さくしたものが適当である。幅変化部がスルーホールと係合させられて内側へ弾性変形させられることにより、先端連結部には圧縮荷重が加えられるため、この圧縮荷重によってせん断されるクランク形状等の形状的に破断され易い部分を破断部として設けるようにしても良い。
【0016】
本発明の実施に際しては、例えば(a) 前記幅変化部、前記先端側拡幅部、前記スルーホール接触部、および前記基端側拡幅部の幅方向の両端の形状は、端子中心線Oに対して略対称形状とされ、(b) 前記貫通穴は前記端子中心線Oに対して略対称形状とされているとともに、該貫通穴の内幅寸法は、前記幅変化部、前記先端側拡幅部、前記スルーホール接触部、および前記基端側拡幅部の前記幅方向の両端の形状変化に対応して変化していることが、弾性変形させる上で望ましい。すなわち、幅方向の両端の形状だけでなく、貫通穴の形状によって定まる内側の形状も幅方向両端の形状に対応して変化しているのである。但し、貫通穴の形状は必ずしも幅方向両端の形状に対応して変化させる必要はなく、例えば単純な細長いスリット状の穴などでも良い。
【0017】
また、例えば(a) 前記貫通穴の両側に端子中心線Oに対して略対称的に設けられるとともに、該貫通穴の長手方向の両端で互いに連結されることにより、端子突出方向の先端側に前記先端連結部が設けられている弾性変形可能な長手状の一対のアームを備えており、(b) 該一対のアームに前記幅変化部、前記先端側拡幅部、前記スルーホール接触部、および前記基端側拡幅部が設けられるように構成される。この場合には更に、(c) 前記スルーホール接触部では、前記一対のアームは互いに平行に延びており、(d) 前記先端側拡幅部および前記基端側拡幅部では、前記一対のアームは互いに離間するように前記スルーホール接触部から外側へ曲がっており、(e) 前記幅変化部では、前記一対のアームは互いに接近するように傾斜乃至は湾曲しているように構成することが望ましい。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1の(a) は、本発明が適用された多数(実施例では5つ)のプレスフィット端子10を備えている車両の電気装置用のターミナル装置8を示す斜視図で、プレスフィット端子10は、それぞれL字形に折り曲げられた長手板状の導電プレート12の一端部に一体に設けられている。導電プレート12は、一定の間隔で互いに近接して横に並んだ状態で、合成樹脂製基台14に一体的に固設されている。合成樹脂製基台14はL字形状を成していて、多数の導電プレート12の角部をそれぞれ埋設した状態で一体的にインサート成形されており、合成樹脂製基台14から上方へ突き出している部分がプレスフィット端子10で、他端部側は一方の表面(上面)が合成樹脂製基台14の表面に露出させられ、所定の接続端子が振動溶着などで一体的に接続されるボンディング部16として用いられる。
【0019】
図1の(b) は、上記導電プレート12に一体に設けられたプレスフィット端子10を拡大して示す正面図で、端子中心線Oに対して対称的に設けられた弾性変形可能な長手状の一対のアーム20、22を備えている。一対のアーム20、22の長手方向の両端は互いに一体に連結されており、その内側に貫通穴24が形成されているとともに、端子突出方向(図1(b) の上方)の先端側に先端連結部26が設けられている。この一対のアーム20、22には、端子突出方向の中間部分に互いに略平行なスルーホール接触部30が略一定の板幅で設けられており、図1(b) の左右方向である幅方向の外側に位置する両端が、図1の(c) および(d) に示す接続状態においてアーム20、22の弾性により基板40のスルーホール42の内周面に押圧される。
【0020】
図1の(d) は(c) におけるID−ID断面の拡大図で、スルーホール接触部30は矩形断面である一方、スルーホール42は円形穴で、各スルーホール接触部30の外側の2箇所の角部の稜線がスルーホール42の内周面に線接触させられるようになっている。プレスフィット端子10は導電プレート12の一部で導電性金属板材にて構成されているが、必要に応じてSnメッキ等の導電性被膜が設けられる。また、スルーホール42の内周面には、Cuメッキや銅箔、Snメッキ等の導電性被膜、或いは導電性円筒部材が設けられ、基板40の表面に設けられたプリント配線等の電気回路に接続されているとともに、プレスフィット端子10のスルーホール接触部30が押圧されることにより電気的に接続される。一対のスルーホール接触部30の幅方向の両端までの幅寸法は、このように一対のアーム20、22の弾性によりスルーホール42の内周面に押圧されて確実に電気的に接続される寸法に設定されており、本実施例では図1(b) に示す状態でスルーホール42の径寸法よりも大きい幅寸法を有する。
【0021】
上記スルーホール接触部30は、端子突出方向において基板40の板厚と略同じ長さ寸法を有し、一対のアーム20、22のうち端子突出方向においてスルーホール接触部30の両側に位置する部分には、互いに離間するようにそのスルーホール接触部30から外側へ曲がって幅方向の両側へ突き出す先端側拡幅部32および基端側拡幅部34が設けられている。したがって、図1(c) に示す接続状態では、それ等の先端側拡幅部32および基端側拡幅部34が基板40を板厚方向(図1(c) の上下方向)の両側で挟んで一定の高さ位置(離間位置)に位置決めするとともに、スルーホール42からプレスフィット端子10が相対的に抜け出して基板40が脱落することが適切に防止される。スルーホール42への挿入、引抜きを許容しつつ車両の振動等による意に反した抜け出しを防止する上で、先端側拡幅部32の幅方向両端までの幅寸法Aは、スルーホール径の1.05〜1.30倍程度が適当で、本実施例ではスルーホール径=0.85mmに対して幅寸法A=1.0±0.1mmに設定されている。また、先端側拡幅部32の傾斜角度Bは120°〜150°程度の範囲内が適当で、本実施例では傾斜角度B=135±10°とされている。なお、これ等の幅寸法Aや傾斜角度Bは、プレスフィット端子10の板厚t(図2参照)、すなわち導電プレート12の板厚によっても異なり、本実施例では板厚t=0.4mmである。
【0022】
一対のアーム20、22にはまた、上記先端側拡幅部32から端子突出方向の先端側へ向かうに従って互いに接近するように傾斜させられ、幅方向の両端までの幅寸法が徐々に小さくなる幅変化部36が略一定の板幅で設けられており、この幅変化部36の先端部分は前記先端連結部26により一体に連結されている。先端連結部26の幅寸法は、スルーホール42内に所定の遊びを持って挿入できる寸法であり、その先端連結部26側からスルーホール42内に挿入されると、幅変化部36の途中でスルーホール42の開口端に係合させられ、幅変化部36の傾斜によりアーム20、22が内側へ弾性変形(撓み変形)させられる。
【0023】
前記基端側拡幅部34は、端子突出方向において所定の長さ寸法を有するとともに、その基端側拡幅部34よりも基端側には、前記スルーホール接触部30と略同じ間隔を隔てて互いに平行な平行部38が所定の長さ寸法で設けられている。これ等の基端側拡幅部34および平行部38の存在で、アーム20、22の弾性変形の許容量が大きくなり、上記幅変化部36とスルーホール42との係合によるアーム20、22の弾性変形で先端側拡幅部32がスルーホール42内に挿入可能とされる。
【0024】
プレスフィット端子10は、このように端子中心線Oに対して対称形状の一対のアーム20、22を有して構成されており、そのアーム20、22に設けられた幅変化部36、先端側拡幅部32、スルーホール接触部30、基端側拡幅部34、および平行部38の形状に応じて、幅方向の両端間の幅寸法が端子突出方向において変化している。一対のアーム20、22は、幅変化部36の板幅が他の部分に比べて狭くなっているが、上記幅方向の両端間の幅寸法の変化に対応して形状が変化しており、これ等のアーム20、22の内側に形成される貫通穴24の内幅寸法も、その幅方向の両端間の幅寸法の変化に対応して変化している。
【0025】
一方、前記先端連結部26には、プレスフィット端子10がスルーホール42内に挿入されて前記幅変化部36がスルーホール42と係合させられ、一対のアーム20、22が互いに接近するように弾性変形させられることにより、前記先端側拡幅部32がスルーホール42に達する前に破断する脆弱な破断部が設けられている。図2は、この先端連結部26を含む図1の(b) のII部を拡大して示す図で、(b) は図1(b) に相当する正面図、(a) は(b) の上方から見た平面図、(c) は(b) の右側から見た側面図であり、先端連結部26の幅方向の中央には、図2(a) の上下方向である板厚方向の両側からV字状のノッチ50が設けられている。この一対のノッチ50の深さdは互いに等しく、本実施例では約0.1mmであり、図3に示すように一対の金型52、54を両側から押し付けることによって形成することができる。そして、このようにノッチ50が設けられると、その部分の板厚が薄くなって断面積が局部的に小さくなるとともに、応力集中が生じ易くなって破断し易くなり、一対のアーム20、22が互いに接近するように弾性変形させられる際に、図2の(a) 、(b) の左右方向である幅方向から所定の圧縮荷重が加えられることにより破断する。本実施例では、ノッチ50が設けられた最小板厚部が破断部に相当し、その破断強度すなわちノッチ50の深さdは、先端側拡幅部32がスルーホール42内に挿入される前に破断するように定められている。
【0026】
このようなプレスフィット端子10によれば、図4の(a) に示すように、図示しない挿入装置(圧入装置など)により先端連結部26側から基板40のスルーホール42内に相対的に挿入すると、幅変化部36の途中でスルーホール42と係合させられ、貫通穴24の存在で一対のアーム20、22が内側へ弾性変形させられるようになる。この弾性変形により先端連結部26には圧縮荷重が加えられるようになり、弾性変形の進行に伴って圧縮荷重が所定値を超えると、(b) に示すようにノッチ50が設けられた破断部で破断する。これにより、その破断された先端部分の変形や移動の自由度が高くなり、一対のアーム20、22の弾性変形が容易になる。すなわち、弾性率が小さくなって小さな挿入荷重で挿入できるようになり、幅寸法が大きい先端側拡幅部32がスルーホール42内に容易に挿入されるようになる。
【0027】
図4の(c) は、上記先端側拡幅部32がスルーホール42内に挿入され、そのスルーホール42内を通過させられる過程である。そして、その先端側拡幅部32がスルーホール42を通過させられると、図4の(d) に示すように一対のアーム20、22は自身の弾性により互いに離間する方向へ回動させられる。これにより、スルーホール接触部30がアーム20、22の弾性によりスルーホール42の内周面に押圧されて電気的に接続される一方、先端側拡幅部32および基端側拡幅部34の間で基板40が位置決めされるとともに、スルーホール42からプレスフィット端子10が相対的に抜け出して基板40が脱落することが防止される。
【0028】
このように、本実施例のプレスフィット端子10においては、先端連結部26側からスルーホール42に挿入される際に、幅変化部36がそのスルーホール42と係合させられて弾性変形させられることにより、先端側拡幅部32がそのスルーホール42に達する前に先端連結部26に設けられた破断部(ノッチ50部分)が破断する。このため、その破断された先端部分の変形や移動の自由度が高くなり、プレスフィット端子10の弾性変形が容易になって、幅寸法が大きい先端側拡幅部32をスルーホール42内に挿入する際の挿入荷重が軽減される。これにより、プレスフィット端子10自体やスルーホール42、或いは挿入装置に要求される必要強度が緩和されて製造コストが低減される。
【0029】
また、このプレスフィット端子10をスルーホール42に挿入する前には、貫通穴24によって分断された幅変化部36が先端連結部26によって一体に連結されているため、加工の際の残留応力等による変形などが抑制されて高い形状精度が得られ、スルーホール42に対する位置精度が向上して挿入不良が抑制される。これにより、多数のプレスフィット端子10が互いに近接して配置されたターミナル装置8においても、その多数のプレスフィット端子10を多数のスルーホール42に対して同時に安定して適切に挿入できるようになる。
【0030】
また、本実施例では、先端連結部26の幅方向の略中央にV字状のノッチ50が設けられ、板厚が局部的に小さくなる最小板厚部が破断部として形成されているため、その破断部(ノッチ50部分)に確実に応力集中が生じ易くなって破断し易くなるとともに、ノッチ50の深さdを変更することで破断強度のチューニングを容易に行うことができる。
【0031】
なお、上記実施例では板厚方向にノッチ50が形成されることによって破断部が設けられていたが、図5のように、貫通穴24の端子先端側の端部24aを延長することにより、先端連結部26の幅方向の中央の板幅hを局部的に小さくして破断し易くしても良い。この端部24aが延長して設けられた部分は、最小板幅部に相当する。図5は、前記図2に対応する図で、板幅hは例えば0.1〜0.2mm程度に設定される。
【0032】
また、図6の(a) 〜(c) は、何れも先端連結部26の板幅hを局部的に小さくして破断部(最小板幅部)を設ける別の態様で、(a) は貫通穴24の端部にV字状のノッチ60を設けた場合で、(b) はプレスフィット端子10の先端からV字状のノッチ62を設けた場合である。また、(c) は、図5の貫通穴24の端部24aを尖り三角形状に形成した場合で、前記図5の実施例に比較して応力集中が生じ易く、より破断し易くなる。この場合の端部24aは、V字状のノッチと見做すこともできる。
【0033】
図6の(d) は、両側の幅変化部36の端子先端側部分をクランク状の先端連結部64によって非対称に連結した場合で、前記図4の(b) に示すように幅変化部36がスルーホール42と係合して左右から圧縮荷重を受けると、その先端連結部64にせん断荷重が作用して中間部66が破断する。この場合は、中間部66が脆弱な破断部(最小板幅部)に相当する。なお、図2の(a) に示す先端側から見た状態で、例えば一対のノッチ50の位置を左右にずらすとともに深さdを大きくするなどしてクランク状(N字状)に形成し、左右から圧縮荷重を受けた場合にせん断荷重が作用して破断するように破断部(最小板厚部)を構成することも可能である。
【0034】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
10:ターミナル装置 10:プレスフィット端子 24:貫通穴 24a:端部(破断部、最小板幅部) 26、64:先端連結部 30:スルーホール接触部 32:先端側拡幅部 34:基端側拡幅部 36:幅変化部 40:基板 42:スルーホール 50:ノッチ(破断部、最小板厚部) 60、62:ノッチ(破断部、最小板幅部) 66:中間部(破断部、最小板幅部) O:端子中心線 d:ノッチの深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子突出方向の中間部分に設けられ、幅方向の両端が基板のスルーホールの内周面に押圧されるスルーホール接触部と、
端子突出方向において前記スルーホール接触部の両側に設けられ、前記基板を板厚方向の両側で挟んで位置決めするように前記幅方向の両側へ突き出している先端側拡幅部および基端側拡幅部と、
該先端側拡幅部から端子突出方向の先端側へ向かうに従って前記幅方向の両端までの幅寸法が徐々に小さくなる幅変化部と、
該幅変化部、前記先端側拡幅部、前記スルーホール接触部、および前記基端側拡幅部に跨がって設けられた長手形状の貫通穴と、
該貫通穴によって分断された前記幅変化部を端子突出方向の先端側で一体に連結している先端連結部と、
を有し、前記先端連結部側から前記スルーホール内に挿入され、前記幅変化部の途中で該スルーホールと係合させられることにより、前記貫通穴の存在で前記幅方向の内側へ弾性変形させられるとともに、前記先端側拡幅部が該スルーホールを通過させられて該幅方向の外側へ弾性的に復帰させられることにより、前記スルーホール接触部が該スルーホールの内周面に押圧されて電気的に接続されるプレスフィット端子において、
前記先端連結部には、前記スルーホールを通過させられる際に前記幅変化部が該スルーホールと係合させられて弾性変形させられることにより、前記先端側拡幅部が該スルーホールに達する前に破断する脆弱な破断部が設けられている
ことを特徴とするプレスフィット端子。
【請求項2】
前記先端連結部の前記幅方向の略中央に最小板厚部もしくは最小板幅部が形成されて前記破断部とされている
ことを特徴とする請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項3】
前記最小板厚部もしくは前記最小板幅部は、前記先端連結部に設けられたV字状のノッチにより形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のプレスフィット端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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