説明

プレスブレーキのダイ支持装置

【課題】薄板用のダイと厚板用のダイに共用することのできるダイ支持装置を提供する。
【解決手段】プレスブレーキにおける下部テーブルに取付けられるベースプレート3上においてダイ5A,5Bを支持するダイ支持ブロック7を、前後の第1支持ブロック9と第2支持ブロック11とに分割して備え、前記第1支持ブロック9の上面9Aと第2支持ブロック11の上面11Bとを同一高さの支持上面に形成すると共に前記第1支持ブロック9と第2支持ブロック11との接合部に、厚さの薄いダイ5Bを係合支持するダイ係合溝21を備え、かつ前記第1,第2の支持ブロック9,11における前記支持上面9A,11Bに支持された厚さの厚いダイ5Aを締付けるための締付ジョー23を第1,第2の支持ブロック9,11にそれぞれ備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状のワークの折曲げ加工を行うプレスブレーキにおいてダイを支持するダイ支持装置に係り、さらに詳細には、薄板用のダイと厚板用のダイと交換する場合であっても容易に対応することのできるダイ支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレスブレーキによって板状のワークの折曲げ加工を行う場合は、プレスブレーキにおける下部テーブル上に装着したダイ上にワークを載置位置決めした後、相対的に上下動自在に備えた上部テーブルの下部に装着したパンチによって前記ワークを、前記ダイに備えたV溝に対して押圧下降することにより、ワークをV字形状に折曲げるものである。折曲げ加工対象としての前記ワークが薄板の場合には、前記V溝の幅寸法が比較的小さなダイが使用され、厚板の場合にはV溝の幅寸法が比較的大きなダイが使用される。
【0003】
V溝の幅寸法が小さなダイは、取り扱いの容易化,軽量化を図るためにダイ本体の厚さは比較的薄く形成してある。そして、V溝の幅寸法が大きなダイは、V溝の幅寸法に対応して、又剛性を大きくするために厚く形成してある。したがって、1つのダイ支持装置でもって薄板用のダイと厚板用のダイを支持することができなかった。なお、本発明に関係すると思われる先行例としては特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−219517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の構成は、ダイを支持するダイ本体に形成した段差部にダイを載置した後、前記段差部の一側に備えられているダイ当接面にダイを当接し、かつ前記ダイ本体に着脱可能な締め板によって前記ダイを前記ダイ当接面へ押圧固定する構成である。前記ダイは、薄いワークを対象とするものであり、前記ダイ本体には厚いワークを対象とするダイを取付けることができないものである。
【0006】
すなわち、薄い板状のワークを折曲げ対象とするダイと厚いワークを折曲げ対象とするダイを共通のホルダ本体に対して装着することができないものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、プレスブレーキにおける下部テーブルに取付けられるベースプレート上においてダイを支持するダイ支持ブロックを、前後の第1支持ブロックと第2支持ブロックとに分割して備え、前記第1支持ブロックの上面と第2支持ブロックの上面とを同一高さの支持上面に形成すると共に前記第1支持ブロックと第2支持ブロックとの接合部に、厚さの薄いダイを係合支持するダイ係合溝を備え、かつ前記第1,第2の支持ブロックにおける前記支持上面に支持された厚さの厚いダイを締付けるための締付ジョーを第1,第2の支持ブロックにそれぞれ備えていることを特徴とするものである。
【0008】
また、プレスブレーキにおけるダイを支持するダイ支持装置であって、プレスブレーキにおける下部テーブルに取付けられるベースプレート上において前記ダイを支持するダイ支持ブロックに、厚さの薄いダイの前後方向の位置決めを行うための第1当接面と厚さの厚いダイの前後方向の位置決めを行うための第2当接面を備え、前記第1当接面及び第2当接面へダイを押圧固定するための締付ジョーを、前記ダイ支持ブロックに着脱可能に備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記プレスブレーキのダイ支持装置において、前記ダイ支持ブロックは、前記第1当接面及び第2当接面を備えた第1支持ブロックと、前記第1当接面との間にダイ係合溝を形成すると共に厚さの厚い前記ダイを支持する支持上面を備えた第2支持ブロックとに分割してあることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記プレスブレーキのダイ支持装置において、前記ダイ支持ブロックは、前記ベースプレートに前後方向へ位置調節可能に備えられていることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記プレスブレーキのダイ支持装置において、前記締付ジョーは、前記第1支持ブロックと前記第2の支持ブロックにそれぞれ着脱可能に備えられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るダイ支持装置によれば、ダイ係合溝に厚さの薄いダイを係合して装着することができ、また、第1支持ブロック、第2支持ブロックの上面でもって厚さの厚いダイを支持することができ、薄板加工用のダイと厚板加工用のダイに容易に対応し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るダイ支持装置の主要部を示す正面説明図である。
【図2】図1のII−II線断面説明図である。
【図3】使用形態の1例を示す説明図である。
【図4】第2の実施形態に係るダイ支持装置の正面説明図である。
【図5】図4におけるV−V線に沿った断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1,図2を参照するに、本発明の実施形態に係るダイ支持装置1は、プレスブレーキ(図示省略)の下部テーブル上に取付けるベースプレート3を備えている。このベースプレート3は、左右方向(X軸方向)に長く形成してあり、前後方向(Y軸方向)の幅寸法は、プレスブレーキにおける下部テーブルの前後方向の幅寸法に対応した寸法である。
【0015】
前記ベースプレート3上には、折曲げ加工対象としての板材(ワーク)が厚板の場合のダイ5Aを上面で支持するダイ支持ブロック7が備えられている。このダイ支持ブロック7は、前記ベースプレート3の左右方向の長さに等しく、左右方向に長く構成することも可能である。しかし、本実施形態においては、加工の容易性等を考慮して左右方向に複数に分割してある。すなわち、複数のダイ支持ブロック7を左右方向に直列に接続することにより、左右方向に長くすることができるものである。
【0016】
さらに、ダイ支持ブロック7は、後側(図2において左側)の第1支持ブロック9と前側の第2支持ブロック11とに分割してあり、第1支持ブロック9は、ボルト、ナット等のごとき取付具13(図1参照)を介して、前記ベースプレート3に対して前後方向に位置調節可能に取付けてある。上記取付具13の頭部13A(ボルトの頭部又はアンカーボルトに螺合したナット等)は、前記第1支持ブロック9に形成した凹部10に位置しており、この凹部10は後側に開口してある。そして、前記第2支持ブロック11は、ボルト等のごとき取付具15を介して前記第1支持ブロック9の前面に着脱可能に取付けてある。
【0017】
前記第1支持ブロック9は、前後方向の幅寸法(厚さ)の大きな前記ダイ5Aを上面9Aで支持するもので、この第1支持ブロック9の後面には、前記ダイ5Aの前後方向の位置決めを行うための当接面17Aを備えた締付ジョー17がボルト等のごとき取付具19を介して着脱可能に取付けてある。前記締付ジョー17は、前記ダイ5Aの前後方向の位置決め機能を奏するものであるから、前記第1支持ブロック9に一体に設けることも可能である。
【0018】
しかし、第1支持ブロック9の上面9Aと締付ジョー17の当接面17Aを精度の良い直角面に形成するには、前記上面9A,当接面17Aの加工性を考慮すると、第1支持ブロック9と締付ジョー17とを別体に構成して別々に加工し、組合せたときに前記上面9Aと当接面17Aとが直角面を形成する構成とすることが望ましいものである。また、前記締付ジョー17は、左右方向に複数に分割してあることが望ましいものである。
【0019】
前記第1支持ブロック9の上部であって前記第2支持ブロック11との接合部には、薄いワークを折曲げ加工対象とする厚さの薄い(前後方向の幅寸法が小さい)ダイ5B(図3参照)を係合支持するダイ係合溝21が備えられている。より詳細には、前記第1支持ブロック9の上部で前側(前記第2支持ブロック11に対応する側)には段差部が形成してあり、この段差部には、前記ダイ5Bの前後方向の位置決めを行う当接面9B及びダイ5Bを支持する水平な支持面9Cが形成してある。そして、前記第2支持ブロック11の上部後面11Aと前記第1支持ブロック9の前記当接面9Bとの間に前記ダイ係合溝21が形成されるものである。
【0020】
前記第2支持ブロック11は、前記取付具15を介して前記第1支持ブロック9の前面に取付けたとき、上面11Bでもって前記ダイ5Aを支持すべく、第2支持ブロック11の上面11Bの高さは第1支持ブロック9の上面9Aと等しい高さに形成してある。そして、第2支持ブロック11の前面には、第1,第2の支持ブロック9,11の上面9A,11Bに支持された前記ダイ5Aを前記締付ジョー17の当接面17Aへ押圧固定する締付ジョー23がボルト等のごとき締付具25を介して着脱可能に取付けてある。なお、前記締付ジョー23の左右方向の寸法は短く形成してあり、前記第2支持ブロック11の前面に左右方向に複数取付けてある。
【0021】
以上のごとき構成において、厚板加工用の前記ダイ5Aを前記ダイ支持装置1に装着するには、前側の締付ジョー23を取り外した状態又は締付ジョー23の締付けを緩めた状態において、図2に示すように、ダイ支持ブロック7における第1,第2の支持ブロック9,11の上面9A,11Bにダイ5Aを載置し、後側の締付ジョー17の当接面17Aへダイ5Aを当接して前後方向の位置決めを行う。その後、締付具25を締付けて、前側の締付ジョー23によってダイ5Aを後側の締付ジョー17へ押圧固定することにより、予め前後方向の位置決めが行われているダイ支持ブロック7上に前後方向の位置決めを行って一体的に固定することができるものである。
【0022】
前記ダイ支持装置1に、薄板を加工対象とする前記ダイ5Bを取付けるには、図3に示すように、第2支持ブロック11を取り外し、第1支持ブロック9における段差部にダイ5Bの取付部5Cを位置決めする。この取付部5Cを上記段差部の当接面9Bに当接してダイ5Bの前後方向の位置決めを行うと共に、前記第1支持ブロック9の前面に取付具15又は締付具25を介して締付ジョー23を取付け、この締付ジョー23によってダイ5Bの前記取付部5Cを締付けることにより、ダイ支持装置1に対してダイ5Bを不動状態に一体的に取付けることができるものである。すなわち、ダイ支持装置1は、薄板用のダイ5Bと厚板用のダイ5Aとに共用できるものである。
【0023】
ところで、上記説明においては、第1支持ブロック9の段差部に係合したダイ5Bの取付部5Cを、締付ジョー23によって締付ける旨説明したが、第2支持ブロック11の上部後面11Aでもってダイ5Bの取付部5Cを締付けることも可能である。上述のように、第2支持ブロック11でもってダイ5Bを締付ける構成の場合には、ダイ支持装置1におけるベースプレート3の前後方向(図3において左右方向)の中央部に位置するダイ5Bに対して第2支持ブロック11が前側(図3において右側)へ大きく突出する態様となる。したがって、例えばワークの折曲げ角度を検出するための折曲げ角度検出装置を下部テーブル等に装着して使用するようなとき、当該折曲げ角度検出装置と第2支持ブロック11とが干渉することがあるので、第2支持ブロック11を取り外して、締付ジョー23を第1支持ブロック9に取付けて使用する形態が望ましいものである。
【0024】
既に理解されるように、ダイ支持装置1は、厚板を折曲げ対象とする、前後方向の幅寸法(厚さ寸法)の大きなダイ5A、及び薄板を折曲げ対象とする前後方向の幅寸法(厚さ寸法)の小さなダイ5Bに共通に使用することができるものである。
【0025】
図4,5は、第2の実施形態を示すもので、前述した実施形態における構成要素と同一機能を奏する構成要素には同一符号を付することとして、重複した説明は省略する。
【0026】
この第2の実施形態においては、ダイ支持ブロック7の前後方向(図5において左右方向、Y軸方向)の位置調節をより容易に行い得る構成にしてある。すなわち、前記取付具13は、第1支持ブロック9に形成した前後方向のスリット又は長穴27を貫通してベースプレート3に取付けてあり、この取付具13の頭部13Aが位置する凹部10は前側(図5において右側)に開口してある。そして、前記締付ジョー23には、前記凹部10に連通した連通穴29が形成してある。
【0027】
上記構成においては、取付具13による締付けを緩めた状態において第1支持ブロック9に締付ジョー23でもってダイ5Bを締付け固定する。そして、プレスブレーキにおける上型(図示省略)をダイ5BのV溝に係合する。この際、前記上型(パンチ)とダイ5Bとに前後方向の位置ずれが生じていると、前記パンチがダイ5BのV溝に係合するに従って、ダイ5B及び第1支持ブロック9等が前後方向に移動され、パンチの前後方向の中心に対してダイ5Bの前後方向の中心が一致することになる。
【0028】
したがって、前述のようにパンチとダイ5Bとが係合した状態にあるときに、締付ジョー23に形成した貫通穴29を貫通して第1支持ブロック9の凹部10内へスパナなどの工具を挿入し、この工具でもって取付具13の頭部13Aを締付けることにより、第1支持ブロック9をベースプレート3に対して一体的に固定することができるものである。
【0029】
なお、第2支持ブロック11に前記連通穴29に相当する連通穴を形成することにより、第1,第2の支持ブロック9,11上にダイ5Aを取り付けた場合であっても、同様の効果を奏し得るものである。
【0030】
ところで、前記説明においては、第1支持ブロック9と締付ジョー17とを別個に設けて一体的に固定する場合について例示したが、締付ジョー17を第1支持ブロック9に一体に形成して、第1支持ブロック9に2つの当接面9B,17Aを備えた構成とすることも可能である。また、第2支持ブロック11と締付ジョー23とを予め一体に設けて、取付具15を締付けることにより、ダイ5A又はダイ5Bを締付ける構成とすることも可能である。この場合、第2支持ブロック11は、当接面17Aと対向してダイ5Aを締付ける締付面(当接面)と当接面9Bと対向して、ダイ5Bを締付ける締付面(当接面)との2つの締付面(当接面)を備えることになるものである。
【符号の説明】
【0031】
1 ダイ支持装置
3 ベースプレート
5A,5B ダイ
7 ダイ支持ブロック
9 第1支持ブロック
9A 上面
9B 当接面
11 第2支持ブロック
13,15,19 取付具
17,23 締付ジョー
17A 当接面
21 ダイ係合溝
25 締付具
27 長穴
29 連通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスブレーキにおける下部テーブルに取付けられるベースプレート上においてダイを支持するダイ支持ブロックを、前後の第1支持ブロックと第2支持ブロックとに分割して備え、前記第1支持ブロックの上面と第2支持ブロックの上面とを同一高さの支持上面に形成すると共に前記第1支持ブロックと第2支持ブロックとの接合部に、厚さの薄いダイを係合支持するダイ係合溝を備え、かつ前記第1,第2の支持ブロックにおける前記支持上面に支持された厚さの厚いダイを締付けるための締付ジョーを第1,第2の支持ブロックにそれぞれ備えていることを特徴とするプレスブレーキのダイ支持装置。
【請求項2】
プレスブレーキにおけるダイを支持するダイ支持装置であって、プレスブレーキにおける下部テーブルに取付けられるベースプレート上において前記ダイを支持するダイ支持ブロックに、厚さの薄いダイの前後方向の位置決めを行うための第1当接面と厚さの厚いダイの前後方向の位置決めを行うための第2当接面を備え、前記第1当接面及び第2当接面へダイを押圧固定するための締付ジョーを、前記ダイ支持ブロックに着脱可能に備えていることを特徴とするプレスブレーキのダイ支持装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプレスブレーキのダイ支持装置において、前記ダイ支持ブロックは、前記第1当接面及び第2当接面を備えた第1支持ブロックと、前記第1当接面との間にダイ係合溝を形成すると共に厚さの厚い前記ダイを支持する支持上面を備えた第2支持ブロックとに分割してあることを特徴とするプレスブレーキのダイ支持装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のプレスブレーキのダイ支持装置において、前記ダイ支持ブロックは、前記ベースプレートに前後方向へ位置調節可能に備えられていることを特徴とするプレスブレーキのダイ支持装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のプレスブレーキのダイ支持装置において、前記締付ジョーは、前記第1支持ブロックと前記第2の支持ブロックにそれぞれ着脱可能に備えられていることを特徴とするプレスブレーキのダイ支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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