説明

プレスブレーキ用下型装置

【課題】 長手方向c2の寸法の短い下型103Aであってもその前後方向c1の一対の側面部を挟圧してクランプするものであって下型の着脱を容易化に行えるものとしたプレスブレーキ用下型装置106を提供する。
【解決手段】 下型を第1ホルダ部材112Aと第2ホルダ部材113Aとでクランプするプレスブレーキ用下型装置106であって、第1ホルダ部材の透孔g2のそれぞれに連係部材3が挿通され、この連係部材は一端部が第2ホルダ部材に第1弾性部材5を介して係合され他端部には摺接部3cを形成されたものとされ、また第1ホルダ部材の後面f2には摺接部のそれぞれに圧接される傾斜面部j1を形成された摺動棒2が装設され、この摺動棒は第1ホルダ部材に回転可能に装設された入力部材4にピニオンラック機構jmを介して連動連結され、また第2ホルダ部材の後面f20に第2弾性部材6が付設され、入力部材がクランプ位置に回動操作されたとき、下型が第1弾圧部材及び第2弾性部材の弾圧力を介して挟圧される構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスブレーキの下部テーブルに下型としてのダイを固定するプレスブレーキ用下型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板状ワークの折り曲げ加工などを行うプレスブレーキとして、例えば図8に示すようなものが知られている(特許文献1)。
【0003】
このプレスブレーキは、上部テーブル(ラム部材)100に固定された上型としてのダイ101と、下部テーブル102上に固定された下型としてのダイ103を有し、上型101の下端と、下型103の上面に形成された断面V形の溝部a1を噛み合わせることによって板状ワークwの加工を行なうものである。
【0004】
上部テーブル100は図示しない駆動装置で上下動されるものであり、上型101は締め金104及び中間板105などを介して上部テーブル100に固定されている。そして下型103はこれの固定された下型ホルダ部107と共に下型装置106を形成しており、下型ホルダ部107は下部テーブル102に締め金108及びボルト109を介して装着されている。そして下型103の下型ホルダ部107への装着は、下型103の下面に垂下状に螺合された縦向きのボルト110aとこのボルト110aに螺合されたナット110bからなる垂下締付部110を、下型ホルダ部107の切欠部b1に嵌め合わせた後に、ナット110bを締め付けることによって行われている。図1中、c1はプレスブレーキの前後方向を示し、c2はその左右方向を示している。
【0005】
一方、小さな板状ワークwに対する曲げ加工を行うため、図10に示すような新たな形態の下型装置106が実用されている。
【0006】
図9は上記下型装置106を示し、Aは正面図でBはx01−x01部を示す断面図である。この下型装置106に使用される下型ホルダ部107は、上記下部テーブル102に固定されるホルダベース111上にボルトで固定されている第1ホルダ部材112と、この第1ホルダ部材112の前面に正対され当接された第2ホルダ部材113とからなっている。第1ホルダ部材112は下型103Aの下面を支持する水平面部d1と下型103Aの脚部e0のうち前後方向c1と直交した一方の側面部e1に密接される垂直面部d2とを具備し、長手方向c2の寸法は800mm程度である。また第2ホルダ部材113は帯板状であり、下型103Aの脚部e0のうち前後方向c1と直交した他方の側面部e2に密接される垂直面部d3を具備する。第2ホルダ部材113は、複数枚、第1ホルダ部材112の長手方向c2へ一線状に並べて配置されている。第1ホルダ部材112にはこれの長手方向c2へ離隔して多数のネジ孔d4が一列状に形成されており、また第2ホルダ部材113にはこれらネジ孔d4に対応した位置にスリットd5が形成されており、各スリットd5に挿通されたボルト114がその対応するネジ孔d4に螺合されて第2ホルダ部材113を第1ホルダ部材112に固定している。ホルダベース111は下部テーブル102に図1中の締め金108及びボルト109などで固定されている。
【0007】
この下型ホルダ部107に保持される下型103Aは、その長さは最長のものが835mmであり、最短のものが10mmである。中間長のものとしては、400mm、200mm、100mm、50mm、40mm、20mm、及び、15mmのものが用意されている。
【0008】
また、第2ホルダ部材113の材質による撓みが下型103Aの保持に影響を与えない締め付け力を得るために、隣接したネジ孔d4、d4間の距離は一定間隔に設定されており、1つの第2ホルダ部材113について2つ以上設けられている。この結果、下型103Aの交換にさいしては、多数のボルト114を締め付け或いは緩める作業をしなければならず、多大な手間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平7−26010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した新規な形態の下型装置106の場合と同様に下型103Aの一対の側面部e1、e2を挟圧するようにクランプするものであって、下型103Aの着脱を容易化させることを可能としたプレスブレーキ用下型装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るプレスブレーキ用下型装置は、下型の脚部の前後方向で対向した一対の側面部を、下部テーブルに固定された第1ホルダ部材と、この第1ホルダ部材の前面に正対され前後方向の変位可能に保持された第2ホルダ部材とで挟圧するように下型をクランプする下型装置であって、前記第1ホルダ部材には前記前後方向に直交した水平な長手方向上の複数箇所に前後向きの透孔が形成されると共にこれら透内孔のそれぞれに連係部材が挿通され、この連係部材は一端部が前記第2ホルダ部材に第1弾性部材を介して係合され他端部には前記第1ホルダ部材の後面から後方へ離れた状態に摺接部を形成されており、また前記第1ホルダ部材の後面には前記長手方向へ変位自在に係合され前記摺接部のそれぞれに前記第1弾圧部材の弾力により圧接される傾斜面部を形成された摺動棒が装設されると共に、この摺動棒は前記第1ホルダ部材に前後方向線回りの回動可能に装設された入力部材にピニオンラック機構を介して連動連結され、また前記第2ホルダ部材の後面箇所には第2弾性部材が付設されてなり、前記入力部材がクランプ位置に回動操作されたとき、前記脚部が前記第1弾圧部材及び前記第2弾性部材の弾圧力を介して挟圧される構成とされている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1つの入力部材が例えば一回転未満の範囲内でアンクランプ側からクランプ側へ回動操作されることにより、摺動棒の傾斜面部及び摺接部による楔作用を介して複数の連係部材が同期して後方へ変位され、第1ホルダ部材と第2ホルダ部材とが近接される結果、下型の脚部が第1弾圧部材及び第2弾性部材の弾圧力を介して挟圧されるのであり、逆に、1つの入力部材がクランプ側からアンクランプ側へ回動操作されることにより、摺動棒の傾斜面部及び摺接部による楔作用を介して複数の連係部材が同期して前方へ変位され、第1ホルダ部材と第2ホルダ部材とが離反される結果、下型の脚部が第1弾圧部材及び第2弾性部材の弾圧力による挟圧から解放されるようになる。
【0013】
したがって、1つの入力部材を前後方向線回りへ回動操作するという比較的少ない手間により、下型をクランプさせて下部テーブルに固定化させたり或いはアンクランプさせて取り外し可能状態とすることができるのであり、これにより多品種少量生産を能率的且つ高精度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例であるプレスブレーキ用下型装置の使用状態を示す斜視図である。
【図2】上記下型装置の下型ホルダ部を示しAは正面図、Bは平面図、Cはx1−x1部の断面図、そしてDはx2−x2部の断面図である。
【図3】上記下型ホルダ部の一部である、ホルダベース及び第1ホルダ部材の結合体を示しAは正面図、Bは平面図、そしてCはx3−x3部の断面図である。
【図4】上記下型ホルダ部の一部である第2ホルダ部材を示しAは正面図、Bは平面図、そしてCは側面図である。
【図5】上記下型ホルダ部の一部である摺動棒を示しAは正面図、Bは平面図、そしてCは側面図である。
【図6】上記下型ホルダ部の一部である連係部材を示しAは平面図そしてBは側面図である。
【図7】上記下型ホルダ部の一部である入力部材を示しAは平面図そしてBは側面図である。
【図8】従来のプレスブレーキを示す斜視図である。
【図9】従来の下型装置を示し、Aは正面図でBはx4−x4部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を次の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は本発明の一実施例であるプレスブレーキ用下型装置106の使用されたプレスブレーキの一部を示す斜視図であり、図2は下型装置106の一部である下型ホルダ部107を示しAは正面図、Bは平面図、Cはx1−x1部の断面図、そしてDはx2−x2部の断面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施例のプレスブレーキ用下型装置106は、従来と同様な下型103Aと、新規な構造の下型ホルダ部107とからなっている。下型ホルダ部107は、プレスブレーキの下部テーブル102に従来と同様に締め金108やボルト109を介して長手方向を左右方向c2へ向けて固定されるホルダベース111と、このホルダベース111の上面に縦向きのボルト1を介して固定される第1ホルダ部材112Aと、この第1ホルダ部材112Aの前面f1に正対され当接される第2ホルダ部材113Aとを備えている。
【0018】
2は第1ホルダ部材112A上に左右方向c2の摺動変位自在に配置された摺動棒であり、3は第1ホルダ部材112A及び摺動棒2の長手方向c2の一定間隔位置に配設された前後向きの連係部材であり、4は第1ホルダ部材112Aの長手方向c2途中に前後方向線回りの回動可能に装設された入力部材であり、5は第1弾性部材(座バネ)であり、6は第2弾性部材である。
【0019】
各部について、さらに詳細に説明する。
図3はホルダベース111及び第1ホルダ部材112Aの結合体を示しAは正面図、Bは平面図、そしてCはx3−x3部の断面図である。
【0020】
第1ホルダ部材112Aは、前面f1上部の全長範囲に断面形状が四角形の直状溝g1が形成されると共に、直状溝g1の底面g01の長手方向c2一定間隔位置に前後方向c1の透孔g2が形成されている。長手方向c2途中の1箇所で直状溝g1の下側近傍には前後方向c1の段付透孔g3が形成されている。また、直状溝g1の下側の幅方向c1途中箇所に長手方向c2へ長い長形透孔g4が形成されると共に、この長形透孔g4の下部の長さ中央部には下方へ開口された開口部g04が前後方向c1の全幅に渡って形成されている。そして第1ホルダ部材112Aの後面f2上部の長手方向c2上の離間した複数箇所には前後方向c1へ穿設された有底孔g5が形成されており、さらに第1ホルダ部材112Aの上部には従来同様に水平面部d1及び垂直面部d2が形成されている。
【0021】
この第1ホルダ部材112Aはホルダベース111の上面の幅中央位置に配置されており、各長形透孔g4内にはボルト1の頭部1aが配置され、軸部1bが開口部g04を経てホルダベース111のネジ孔h1に螺合されており、ボルト1の締結によりホルダベース111と同体状に固定された状態となっている。ボルト1が弛緩及び締結されることにより、第1ホルダ部材112Aのホルダベース111に対する前後方向c1の位置が調整可能となっている。
【0022】
図4は第2ホルダ部材113A及び第2弾性部材6を示しAは正面図、Bは平面図、そしてCは側面図である。
【0023】
第2ホルダ部材113Aは、後面上部i1が第1ホルダ部材112Aの垂直面部d2と正対される垂直面部d3の一部となっており、この垂直面部d3の高さ中央位置の全長範囲に断面形状が四角形の直状溝i01が形成されている。後面下部i2と後面上部i1との間である後面中間範囲部i3は、僅かな凹み状態となっている。そして、後面中間範囲部i3の高さ略中央の長手方向c2上の一定間隔位置に前後方向c1の段付透孔i4が形成されており、また各第2ホルダ部材113Aの下部で第1ホルダ部材112Aの長形透孔g4に対応した位置には下縁側が開放された切欠部i5が形成されている。
【0024】
図4に示す第2ホルダ部材113Aは図2中の入力部材4の正面視左側に隣接して配置されたものであり、したがって正面視の右端縁下部に入力部材4との干渉を回避するための切欠部i6が形成されている。また入力部材4の正面視右側に隣接して配置される第2ホルダ部材113Aは正面視の左端縁下部に入力部材4との干渉を回避するための切欠部を形成されるのであり、その他の2つの第2ホルダ部材113Aには切欠部i6に対応した切欠箇所は不要であり形成されない。
【0025】
各第2ホルダ部材113Aの直状溝i01内には第2弾性部材6が嵌着されている。この第2弾性部材6は中実のゴム質材からなる線状体とされ、第2ホルダ部材113Aの上部の後面f20から後方へ0.2mmだけ張り出した状態とされている。
【0026】
図5は摺動棒2を示しAは正面図、Bは平面図、そしてCは側面図である。
図5にも示すように、摺動棒2は、断面が四角形とされ長さが第1ホルダ部材112Aに略合致されており、長手方向c2の一定間隔範囲で第1ホルダ部材112Aの透孔g2に対応した前面箇所を正面視右側を高くされた傾斜面部j1が形成されると共にこの傾斜面部j1のそれぞれの全長範囲で高さ中央箇所に直状の長形透孔j2が形成され、また隣接した傾斜面部j2、j2間の範囲を前方c101へ突出された等厚板部j3とされると共に全長範囲の左右各端縁を前方へ突出された突起部j4とされると共に入力部材4の真上に位置される1つの等厚板部j3の下縁にラック部j5が形成されている。このさい、傾斜面部j1の後面j6の、左右方向c2に沿った垂直面に対する傾斜角度は、例えば1.2度〜2.0度の範囲内に設定される。この傾斜角度が該範囲よりも小さいと、必要とされる摺動棒2の左右方向移動量が大きくなり、逆にそれが該範囲よりも大きいと、摺動棒2に作用する前方c101向きの外力により連係部材3との間で発生する摩擦力による摺動棒2の位置保持性が損なわれるようになる。
【0027】
図6は連係部材3とこれに外嵌された第1弾性部材5を示しAは平面図そしてBは側面図である。
【0028】
連係部材3は、図6に示すように、軸部材3A、ナット3B、及び、摺接部として機能するピン部材3Cからなっている。軸部材3Aは直状の棒状となっており、前端から順にナット3Bを螺合される雄ネジ部k1、平滑な外周面を具備した円柱部k2、円柱体の上下部を切除され上下に水平面k03を形成された欠円部k3を同心状に形成されている。このさい、欠円部k3の上方視やや後端寄り位置に縦向きのピン孔k04が形成されており、このピン孔k04にピン部材3Cが内挿されている。ピン部材3Cは第1ホルダ部材112Aの直状溝g1の上下方向幅よりも僅かに短い円柱体とされている。
【0029】
また第1弾性部材5は板バネの一種で外径がナット3Bのそれに略合致された皿バネとされており、下型103Aの保持に必要な前後方向c1の圧縮力が作用したとき、前後方向c1の全長が0.5mmだけ短縮されるように弾性変形するものとされている。
【0030】
図7は入力部材4を示しAは平面図そしてBは側面図である。
入力部材4は、図7に示すように、外周面が段付とされた円柱体とされており、前端面m1に操作レバーとしての6角レンチTの嵌合されるレンチ嵌合穴m2を形成されると共に外周面の前後方向c1各端部寄り位置に環状溝m3、m4を形成され、また前後の環状溝m3、m4間に円柱部m5を形成されると共に、後側の環状溝m4より後方の外周面に、摺動棒2のラック部j5に噛み合されるピニオン部m6を形成された構成である。
【0031】
次に上記した下型ホルダ部107の組立構造について説明する。
入力部材4が第1ホルダ部材112Aの段付透孔g3に内挿されると共に、一方の環状溝m3が第1ホルダ部材112Aの前側近傍に位置され、他方の環状溝m4が第1ホルダ部材112Aの段付透孔g3の段部円形垂直面g03の後側近傍に位置され、この状態の下で、それぞれの環状溝m3、m4に図示しない開放形係止リング(スナップリングなど)が弾着される。これら一対の開放形係止リングは第1ホルダ部材112Aを密状に挟み付けるように位置されるため、入力部材4は第1ホルダ部材112A上にて前後方向線回りの回転のみ許容された状態となる。
【0032】
また第1ホルダ部材112Aの各透孔g2に連係部材3の一部である軸部材3Aが内挿され、これら軸部材3Aの後端部である欠円部k3が摺動棒2の長形透孔j2に内挿される。この状態では、欠円部3Aの水平面k03が長形透孔j2の上下の側面部に前後方向線回りの変位を規制され第1ホルダ部材112Aの長手方向c2に沿った状態に保持される。ピン部材3Cは、摺動棒2が第1ホルダ部材112Aの直状溝g1内に嵌め込まれる前に、摺動棒2の後面f21より後方c102に位置された縦向きのピン孔k04に挿通され、この状態が保持されつつ摺動棒2は直状溝g1内に嵌合され、この嵌合時に、ラック部j5が入力部材4のピニオン部m6に連動可能に噛み合わされる。そして摺動棒2が図2に示す正規位置に嵌合されたとき、ピン部材3Cも直状溝g1内に位置した状態となり、その上下方向の変位を直状溝g1の上下の側面に規制されるため、格別な抜け止め手段を設けることなく、ピン孔k04からの抜け出しを規制される。
【0033】
一方では、第1ホルダ部材112Aの有底孔g5のそれぞれに自由長が有底孔g5の前後方向c1長さよりも大きい図示しないスプリングが前後向きとして内装され、この状態を保持しつつ、各軸部材3Aの前端部にこれに対応した第2ホルダ部材113Aの透孔i4が外嵌される。これにより第2ホルダ部材113Aは各軸部材3Aの円柱部k2を介して第1ホルダ部材112Aに前後方向c1の変位自在に支持され近接された状態となる。この状態の下で、第1弾性部材5である皿バネが軸部材3Aの前方から外嵌されると共にナット3Bが雄ネジ部k1に螺合される。これにより、皿バネ5は透孔i4の前部である径大部i04内でナット3Bに押圧されて第2ホルダ部材113Aの前面f10側に当接され、また前記スプリングはナット3Bの押し力で第2ホルダ部材113Aの後面f20で押圧され圧縮された状態となる。このとき、第2ホルダ部材113Aは前記スプリングの弾力で第1ホルダ部材112Aから僅かに離れた状態に保持されるのであり、また雄ネジ部k1に対するナット3Bの位置は、第2ホルダ部材113Aの後面上部i1が下型103Aであるダイの脚部の前側の側面部に当接し且つ第2ホルダ部材113Aの後面下部i2が第1ホルダ部材112Aの前面f1に当接した時点からの、皿バネ5の前後方向c1の最大弾性変形量が0.5mmとなるように決定される。そして、このときのナット3Bと雄ネジ部k1との相対位置は図示しない適宜な係止部材を介して固定される。
【0034】
次に上記した下型装置106の使用例及び各部の作用について説明する。
上型101としてのダイは従来同様にラム部材100と同体状に固定させる。
下型装置106は図1に示すように下部テーブル102に固定するのであり、この状態の下で、着脱式の操作用レバーである六角レンチTの要部を入力部材4の前端面のレンチ嵌合穴m2に嵌合させて六角レンチTを前後方向線回りの左回りへ揺動させることにより、入力部材4をアンクランプ位置まで回動変位させる。六角レンチTは、レンチ嵌合穴m2(図7)が第2ホルダ部材113Aの前側の面より後ろの位置に開口しており、レンチ嵌合穴m2から六角レンチTを取り外し可能とすることで、折り曲げ加工作業に支障を起こさない。
【0035】
入力部材4の回動変位はピニオン部m6とラック部j5との噛み合わせからなるピニオンラック機構jmを介して摺動棒2を第1ホルダ部材112A上で右方向へ変位させ、この結果、摺動棒2はアンクランプ位置に位置される。この時点では、各ピン部材3Cはその対応する傾斜面部j1の左右方向範囲のうち前後方向厚さの最も小さい位置である左端位置に相対変位された状態となるのであり、このとき、皿バネ5の弾性変形は殆どゼロになり、有底孔g5内の図示しないスプリングは自身の弾力で第2ホルダ部材113Aを前方c01へ押し変位させ第1ホルダ部材112Aから僅かに離間させる。
【0036】
この状態で、曲げ加工に必要な下型103Aとしてのダイの脚部を第1ホルダ部材112Aの垂直面部d2と第2ホルダ部材113Aの垂直面部d3との間に差し込みダイ103Aの下面を第1ホルダ部材112Aの水平面部d1に密接させる。このさい、対向した一対の垂直面部d2、d3が最大限に離れた状態となっているためダイ103Aの差し込み処理が容易に行える。またダイ103Aは、一般には、曲げ加工される板状ワークwの左右方向幅に略合致した左右方向長さのものが使用される。このさい、ダイ103Aは予め任意に決定した種々の左右方向長さのものが用意されている。
【0037】
この後、六角レンチTを前とは逆の右回りへ揺動させ、入力部材4を前後方向線回りのクランプ位置に向け回動変位させる。これにより摺動棒2はピニオンラック機構jmを介して第1ホルダ部材112A上を左方向c201へ変位され、これに関連して、各ピン部材3Cはその対応する傾斜面部j1の左右方向範囲上で前後方向厚さが漸次大きくなる側へ相対変位される。この相対変位過程で、連係部材3は傾斜面部j1とピン部材3Cとによる楔作用により後方c102へ変位され第2ホルダ部材113Aを第1ホルダ部材112Aに近接させるように変位させる。
【0038】
先に記したように、第1弾性部材5の前後方向c1の最大弾性変形量が0.5mmである。一方、第2弾性部材6は、第2ホルダ部材113Aの上部の後面f20から後方へ0.2mmだけ張り出した状態であって、最大弾性変形量は0.2mmである。両者を足し合わせると、全部で0.7mmの変形を許容することができる。摺動棒2のアンクランプ位置とクランプ位置とでは、0.7mmよりもやや大きくなるように設定されており、これはアンクランプ位置時に下型103Aを挿入するためである。
【0039】
摺動部材2がクランプ位置にあるとき、ピン部材3Cはクランプ力により傾斜面部j1上で前方c101へ押圧された状態となり、このさいピン部材3Cが傾斜面部j1に付与する前向きの反力である押圧力はピン部材3Cを傾斜面部j1の傾斜方向に沿って移動させる第1分力を生じさせるが、これと同時に第1分力と逆向きで第1分力よりも大きい摩擦抵抗力が生じる。この結果、ピン部材3Cは下型ホルダ部107がダイ103Aの脚部をクランプした状態では何ら外力の付与されない自由状態の下でセルフロック機能を奏するのであり、板状ワークwを繰り返し曲げ加工しても、ピン部材3Cの緩み変位は阻止され、クランプ力が不用意に低下することは生じない。
【0040】
ダイ103Aを締結した状態において、上型101であるダイに対し、ダイ103Aの芯が合致していないときは、ボルト1を弛緩して、ホルダベース111上での第1ホルダ部材112Aの前後移動を可能にし、ダイ101とダイ103Aの芯合わせ調整を行った後、ボルト1を再び締め付けるようにする。縦向きの開口部g04がホルダベース111上での第1ホルダ部材112Aを前後移動を可能とすることにより、芯合わせ調整が行われる。
【0041】
下型ホルダ部107でクランプされたダイ103Aを取り外すさいは、ダイ103Aをクランプさせるときの逆の手順を実行すればよい。またプレスブレーキによる板状ワークwの曲げ加工中には六角レンチTは入力部材4から抜き外され、作業の邪魔になることはない。
【0042】
このような下型ホルダ部107によるダイ103Aのクランプ状態では、連係部材3が左右方向c2へ比較的短い間隔で配置されていること及び各第2ホルダ部材113Aが第1ホルダ部材112Aに較べて数分の1の長さとされていることから、たとえ長さの短いダイ103Aを単独で或いは間隔を置いてクランプさせても、ダイ103Aは必要なクランプ力で安定的にクランプされる。またゴム質材の線状体からなる第2弾性部材6をダイ103Aの脚部の前側の側面部に直接に押し当てることによりダイ103Aをクランプするため、比較的長さの短い複数のダイ103Aを同時にクランプさせる場合に、たとえ各ダイ103Aの脚部に公差による製作上の寸法差があっても、各ダイ103Aを必要なクランプ力でクランプすることができるのである。こうして、種々の長さのダイ103Aを簡易迅速に交換でき安定的にクランプさせることができるため、多品種少量生産において作業の能率性や高精度化が図られるのである。
【符号の説明】
【0043】
2 摺動棒
3 連係部材
3A 軸部材
3B ナット
3C 摺接部(ピン部材)
5 第1弾性部材
6 第2弾性部材
102 下部テーブル
103A 下型
106 下型装置
112A 第1ホルダ部材
113A 第2ホルダ部材
c1 前後方向
c2 長手方向
e1 側面部
e2 側面部
f1 前面
f2 後面
f20 後面
g1 直状溝
g2 透孔
i1 溝
j1 傾斜面部
j2 長形透孔
jm ピニオンラック機構
k3 欠円部
k03 水平面
k04 ピン孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部テーブルに固定された第1ホルダ部材と、この第1ホルダ部材の前面に正対され前後方向の変位可能に保持された第2ホルダ部材とにより、下型の脚部を挟圧するクランプする下型装置であって、
前記第1ホルダ部材には前記前後方向に直交した水平な長手方向上の複数箇所に前後向きの透孔が形成されると共にこれら透内孔のそれぞれに連係部材が挿通され、この連係部材は一端部が前記第2ホルダ部材に第1弾性部材を介して係合され他端部には前記第1ホルダ部材の後面から後方へ離れた状態に摺接部を形成されており、また前記第1ホルダ部材の後面には前記長手方向へ変位自在に係合され前記摺接部のそれぞれに対して傾斜面部を形成された摺動棒が装設されると共に、この摺動棒は前記第1ホルダ部材に前後方向線回りの回動可能に装設された入力部材にピニオンラック機構を介して連動連結され、また下型の脚部を挟圧する前記第2ホルダ部材の挟圧面には第2弾性部材が付設されており、前記入力部材がクランプ位置に回動操作されたとき、前記脚部が前記第1弾圧部材及び前記第2弾性部材の弾圧力を介して挟圧されることを特徴とするプレスブレーキ用下型装置。
【請求項2】
前記傾斜面部のそれぞれに前記長手方向へ細長い長形透孔が形成され、一方では前記連係部材のそれぞれに水平面を具備した欠円部が形成されており、各欠円部がその対応する前記長形透孔に前記水平面との干渉による前後方向線回りの回転規制状態に挿通されていることを特徴とする請求項1記載のプレスブレーキ用下型装置。
【請求項3】
前記摺動棒は前記第1ホルダ部材の後面に前記長手方向に沿って形成された直状溝内に密状に嵌合されており、一方、前記摺接部は前記欠円部に形成された縦向きのピン孔に挿通されたピン部材で形成されており、このピン部材は上下方向の各端部を前記直状溝の上下の側面に正対され、これら側面により前記ピン孔からの抜け出しを規制されていることを特徴とする請求項2記載のプレスブレーキ用下型装置。
【請求項4】
前記入力部材は、取り外し可能なレバーに勘合する勘合穴を有し、前記レバーにより前後方向線回りの回動されることを特徴とする請求項1記載のプレスブレーキ用下型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−284715(P2010−284715A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142521(P2009−142521)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(599047907)株式会社 旭光製作所 (1)
【Fターム(参考)】