説明

プレス成形性とプレス成形時の被膜密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板

【課題】プレス成形性とプレス時の被膜密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。
【解決手段】 質量%にて、C:0.0005〜0.0014%、Si:0.03%以下、Mn:0.2%以下、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Nb:0.02%〜0.03%、N:0.0030%以下、O:0.01〜0.02%、を含有し、残部がFe、および不可避不純物から成り、フェライト単相のミクロ組織を有する冷延鋼板の表面に、付着量:25〜80g/m、Fe含有量:8〜13%、の合金化された亜鉛めっき層を有するプレス成形性とプレス時の被膜密着性に優れた鋼板

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車などの輸送機器用や家電製品用など、プレス成形して用いられる合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの輸送機器や家電製品には、プレス成形性に優れた軟質の鋼板が広く用いられている。中でも、含有炭素量を抑制した極低炭素鋼板は、延性やr値などの機械的性質に優れることから成形が容易であり多くの部品に採用されている。
【0003】
こうした用途のうち、鋼板が表面処理されることなく用いられる例は極めて稀で、大部分の用途では化成処理後に塗装されて最終製品の表面を為す。特に自動車のように野外での使用が通常である用途や、家電分野でも水周りで使用される製品などでは、更なる耐食性が求められることから鋼板表面に亜鉛などのめっき被膜を形成した上で上記の処理をして製品とされる。
【0004】
めっき被膜の形成方法には、電気めっき法と溶融めっき法があるが、製造コストの優位性から溶融めっき法が主流であり、また、めっき種も同様の理由から、亜鉛を主たる構成成分とする被膜が選択されることが多い。このように、プレス成形性からの要求と、耐食性からの要求とに同時に応えるものとして、溶融亜鉛めっき処理を施した極低炭素鋼板が製造されるに至った。
【0005】
ただし、鋼板と被膜層の機械的性質は大きく異なることから、プレス成形時に被膜層が鋼板から剥離することは想像に難くなく、解決策も多く提案されている。
【0006】
そのうち最も一般的なものは、鋼板上に溶融亜鉛を付着させた後、所定の温度まで加熱して両者を相互に拡散させる「合金化」と呼ばれる方法である。こうすることで被膜の密着性が一層高まることが知られている。
【0007】
ただし、合金化された溶融亜鉛めっき鋼板であれば被膜の密着性に全く問題がないわけではない。厳しい成形が為された場合には、めっき層が粉末状に剥離するパウダリングと呼ばれる現象が起こることも知られている。この現象が起こると、剥離した粉末がいわゆる押し疵の原因となるばかりか、最も重要な耐食性が損なわれる恐れがあり、対策が求められている。
【0008】
これに対して様々な解決策が提示されている。
【0009】
その主たる思想は、(i)合金化された亜鉛めっき層中に存在する鉄と亜鉛の金属間化合物の一つであり、硬質で脆弱なΓ相がパウダリング発生の根源であり、これを制御することで解決を図ろうとするもの。(ii)Γ相自体も問題であるが、むしろΓ相の不均一な生成こそが有害であり、その解消を如何にして図るかを提案したものである。
【0010】
主に(i)の考え方に立ったものでは、C、Ti、N、Sなどの鋼板の化学成分や亜鉛めっき浴の化学成分、めっき条件を限定したもの(特許文献1)、それに加えて鋼板の熱延条件とめっき浴中のAl濃度を規定したもの(特許文献2)、更には鋼板にCrの添加を提案したもの(特許文献3)などがある。
【0011】
一方、主に(ii)の考え方に立ったものには、鋼板の化学成分、めっき層の化学成分と層の厚さを規定したもの(特許文献4)、めっき浴組成とめっき条件などを限定したもの(特許文献5)などがある。
【特許文献1】特開平5−106003号公報
【特許文献2】特開平5−331612号公報
【特許文献3】特開平10−17983号公報
【特許文献4】特開平6−256903号公報
【特許文献5】特開平11−286766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これらの技術は、何れも優れた着眼点に立脚し、一定の工業的価値を有するものであるが、本発明者らの検討によれば必ずしも十分なものとは言えない。
【0013】
特許文献1の技術は、C、Ti、N、S、Nbの各量に加えてそれらの間の関係を細かく規定しており要件を満たす鋼の製造が容易ではなく、また、めっき処理条件にも高い技術が必要で、それを可能ならしめる設備を有さないと利用することが困難である。
【0014】
特許文献2の技術は、鋼板のP、およびTi量に応じてめっき浴中のAl量を調整することを必須とするものであり、それらの元素量(の変動)に応じて頻繁なめっき浴成分の変更あるいは管理が求められ製造コストの上昇が懸念される。
【0015】
特許文献3の技術は、Crの添加を必須とした技術であるから、熱延時のデスケーリング性に影響する可能性や、原料コストの増加が危惧される。
【0016】
特許文献4には、めっき層中のFe濃度を制御することによってΓ相の発達を抑制する技術が開示されているが、めっき浴通過後の合金化過程でそれを達成するには極めて高い技術が要求されることから直ちに利用することが容易ではないと考えられる。
【0017】
特許文献5には、鋼中にP、Ti、およびNbの2種あるいは3種を所定量含有させ、かつめっき浴中Al濃度を所定の範囲内にすることで、鋼板表面の結晶粒界と粒内におけるFe−Zn合金相の生成、成長差をなくし、合金化の進行を均一化させて耐パウダリング性を確保する技術についての記載がなされているが、鋼板の機械的性質に関する記載がなく成形性との両立が為されているか不明である。
【0018】
このようにプレス成形性とプレス成形時の被膜密着性を両立させた鋼板を特殊な設備を有さない事業者が高度な技能を必須とせずに製造できる技術は確立されておらず、渇望されているところである。 本発明はこうした状況に鑑みて為されたものであり、プレス成形性とプレス成形時の被膜密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、パウダリング発生部位の観察や、当該部位のめっき層の分析を通して発生機構を推定する研究を行っていた。その過程で、パウダリングの発生は、上記の(ii)に記載の如く、Γ相の不均一な生成に起因しており、更にそれは、鋼板表面の結晶粒界と粒内とでFe−Zn間の相互拡散に差があることに由来するものであるとの確信を得た。
【0020】
そして鋼板の化学成分やめっき浴の構成成分を各種組み合わせつつ詳細な検討を続けた結果、鋼板がTiを含有している場合には、他の鋼板成分やめっき浴成分を変化させてもパウダリングの発生割合がその他の(Ti非含有の)鋼板に比べて高いことを知見した。
【0021】
Tiは固溶Cをスカベンジングして鋼板のプレス成形性を向上させる強い効果を有するものであるから望むらくは使用したい元素であるが、やむなくTiに換えてNbを用いることで解決を図る研究を継続した。その結果、条件を厳選すればそれなりに課題の解決が可能であることを見出したが、その条件範囲が広くなく十分とは言えなかった。
【0022】
一方、これとは別に本発明者らの一部は、特許文献6(特開2003−119513号公報)にてAlによる脱酸を、全く、あるいは殆ど行わず溶存酸素を高くして製造したNb添加極低炭素鋼を開発した。
【0023】
該鋼は、表面疵の抑制を意図したもので、表面処理については何らの記載もないものであるが、Nb添加極低炭素鋼であって、かつ酸素濃度が高いと言う余鋼にはない特徴を有しており、亜鉛めっき鋼板用の母材とした場合にパウダリング性の抑制効果を有しているのではないかと考えて研究を行った。
【0024】
その結果、Alによる脱酸を、全く、あるいは殆ど行わず溶存酸素を高くして製造したNb添加極低炭素鋼のC、Nb、N、およびO(酸素)を所定の範囲に限定することで、特殊な製造設備や技能を必要とすることなく、従来にはない耐パウダリング性を有し、かつプレス成形性にも優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の得られることを新たに見出した。
【0025】
本発明はこうした過程を経て完成されたもので、質量%にて、
C:0.0005〜0.0014%、
Si:0.03%以下、
Mn:0.2%以下、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Nb:0.02%〜0.03%、
N:0.0030%以下、
O:0.01〜0.02%、
を含有し、残部がFe、および不可避不純物から成り、フェライト単相のミクロ組織を有する冷延鋼板の表面に、
付着量:25〜80g/m
Fe含有量:8〜13%、
の合金化された亜鉛めっき層を有することを特徴とするプレス成形性とプレス成形時の被膜密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の鋼板であれば、特殊な製造設備や技能を必要とすることなく、従来にはない耐パウダリング性を有し、かつプレス成形性にも優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明を完成するに至った実験について説明する。
本発明者らは、まず、Nbを添加した複数の極低炭素鋼(C:0.0020%以下)を、Al脱酸を行わず作製し、熱延、酸洗後に厚さ0.8mmの冷延鋼板とした。それらの鋼板を、実験用溶融亜鉛めっき処理装置を用いてめっき処理し、評価用試験片を得た。
【0028】
各鋼板の熱延、酸洗、冷延、およびめっき処理条件は同一とし、機械的性質(強度、延性、およびr値)と耐パウダリング性を評価した。ここで耐パウダリング性の指標として、20mm四方の領域に単位方眼長さ2mmの罫書きを碁盤目状に刃物で入れ、当該領域を外側にして高さ10mmまで20mmφの球頭パンチで張り出し成形し、被成形部にテープを貼り剥がす前後の質量減少量を採用した。
【0029】
機械的性質の評価の結果、鋼板のC、Nb、N量を所定の範囲内で適切に組み合わせれば優れたプレス成形性(伸び:50%以上、r値:2.0以上)が得られ、一方、耐パウダリング性は上記の化学成分には依存せず、O量が所定の範囲の時に極めて優れることを見出した。
【0030】
本発明はこうした知見に立脚し、更に詳細な検討を加えて完成されたものである。
以下に限定理由を述べる。まず化学成分について説明する。
【0031】
C:0.0005〜0.0014%
Cは、強度と延性に最も影響する元素で、含有量を低く抑える必要がある。特に、本発明の鋼はスカベンジングのためにNbを用い、かつ後述するようにNbは再結晶温度を上昇させるため、できれば含有量を抑制したい元素であるから、汎用的な極低炭素鋼より一層の抑制が求められる。後述の実施例に示す実験に基づいて決定された上限は0.0014%である。一方、脱炭工程への過剰な負荷を避ける理由から0.0005%を下限とする。
【0032】
Si:0.03%以下
Siは、延性とr値の何れをも低下させる元素であるから抑制されるべきであるが、0.03%までは許容される。
【0033】
Mn:0.2%以下
Mnは、SとMnSを形成してSを無害化する機能を有するものの、0.2%を超えて含有されていると延性とr値の何れをも低下させる。従って0.2%を上限とする。
【0034】
P:0.02%以下
Pは、鋼中に固溶して延性とr値の何れをも低下させる。プレス成形性に優れた鋼板を得るためには0.02%以下にする必要がある。
【0035】
S:0.01%以下
Sは、鋼中に固溶して延性とr値の何れをも低下させる。許容される上限は0.01%である。
【0036】
Nb:0.02%〜0.03%
Nbは、C、およびNを炭化物、窒化物として固定し、プレス成形性を向上させる元素である。そうした機能を発現させて十分なプレス成形性を確保するためには、C、およびNを限定範囲内にしても0.02%以上を含有させる必要がある。一方、過剰に含有されていると、延性が低下し、r値の異方性が大きくなり成形性を損なう。また再結晶温度を上昇させるので生産性を損ねる恐れもある。そこで0.03%を上限とする。
【0037】
N:0.0030%以下
鋼板が優れた延性とr値をえるためには、Nの含有量は低い程望ましく、0.0030%以下とする必要がある。
【0038】
O:0.01〜0.02%
Oは、本発明において最も重要な役割を果たす元素である。本発明鋼は、AlやTiのような強い脱酸力を有する元素を用いないため、鋼板中のO濃度はそれらの元素を用いた場合に比べて高くなるが、Oの大部分はFeの酸化物として微細に分散しており、機械的性質には殆ど影響を与えないものと考えられる。しかし、その濃度が高過ぎる場合には、酸化物同士が合体粗大化して鋼板の欠陥の原因となり得る。その上限は後述の実施例にて示すように0.02%である。
【0039】
一方、鋼板中に分散している微細なFe酸化物は、めっき浴への浸漬中、および合金化過程においてFeとZnの相互拡散に大きく影響するものと考えられる。
【0040】
前述のように、鋼板表面の結晶粒界と粒内とでの相互拡散の相違がΓ相の生成の不均一を招きパウダリング発生の原因となっていると推定される。そこで結晶粒界と粒内とでの相互拡散の相違を抑制する目的で、めっき浴への浸漬前の焼鈍時にNb炭化物を再溶解させて粒界に偏析させ粒界での反応を抑制する提案(特許文献1)や、めっき浴中のAl濃度を制御して全体として反応速度を下げて相互拡散の相違を小さくする提案(特許文献5)が為されているが何れも十分とは言えない。
【0041】
しかし、本発明者らの検討によれば、Fe酸化物が所定量以上に微細に分散していると、Feの拡散を抑制する効果を有し、しかも粒内、粒界を問わず機能するため上記の提案(特許文献1及び5)に比べて相互拡散の相違を抑制する作用が強く、Γ相生成の不均一も大幅に改善されることが明らかとなった。この作用はO濃度が0.01%以上の時に明瞭となるのでこの濃度を下限とする。
【0042】
なお、本発明において上記以外の成分はFeとなるが、スクラップなどの溶解原料や耐火物などから混入する不可避的不純物は許容される。
【0043】
本発明の鋼板はフェライト単相のミクロ組織を有するものである。軟質かつ高延性とするために、残留オーステナイト相、マルテンサイト相、パーライト組織、およびベーナイト組織はこれを含まない。
【0044】
ところで、本発明の鋼板の、化学成分の特徴の一つは、上記のように、0.0005〜0.0014%のCと0.02〜0.03%のNbを含有することである。化学成分がこれらを包括し、かつそのめっきの密着性を改善した鋼板が、特許文献7(特開2003−55751号公報)、および特許文献8(特開2003−171752号公報)に開示されている。
【0045】
しかし、両文献に記載の鋼板は、体積分率で、70〜97%のフェライトを主相とし、第2相として、同3〜30%のオーステナイトおよび/またはマルテンサイトを含むものであるから、本発明とは異なったものである。
【0046】
次にめっき層の付着量とFe含有量について説明する。
付着量:25〜80g/m
付着量の下限は耐食性を確保する要請から定められるもので、25g/m未満では耐食性不足となる恐れがある。一方、80g/mを越える厚目付けでは、合金化に時間がかかり、Γ相の厚さも厚くなる。その結果、本発明の素材鋼板を用いたとしてもΓ相の不均一が顕著になり、パウダリングの抑制効果が弱まる。従って80g/mを上限の付着量とする。
【0047】
Fe含有量:8〜13%
めっき層中のFe含有量が8%未満であると合金化していないめっき部分が存在し、耐食性や密着性が不均一となると同時に耐食性や密着性自体も低下する。従って、Fe含有量を8%以上にして、合金化を進めることが必要である。一方、Fe含有量を13%以上にして、合金化を進めると、本発明の鋼板であってもΓ相の不均一が顕著になり耐パウダリング性が劣るようになる。そこで13%以下とする。
【0048】
本発明の鋼板の製造方法について説明する。
本発明の鋼板は、製鋼過程でAlやTiを用いた脱酸を行わないことを除き通常の方法で鋳片とする。
【0049】
再加熱温度は1200℃以下、望ましくは1150℃以下とする。圧延前の結晶粒を過剰に粗大にしないためである。下限は、オーステナイト域で圧延が完了できるように設備の仕様に応じて決定すればよい。
【0050】
圧延率は、60〜90%、圧延仕上げ温度は900℃以上、望ましくは930℃以上とする。これらは何れもオーステナイト域で圧延を完了させるとともに、粒径の粗大化を避けるためである。
【0051】
圧延後、10〜40℃/秒で冷却し、450〜750℃で巻き取る。冷却速度と巻き取り温度は、酸洗工程への負荷と冷延工程への負荷を勘案して決めることができる。すなわち、酸洗工程の負荷を低くすることを重視すれば高冷却速度、冷温巻き取りを選択し、冷延工程への負荷を低くするためには、低冷却速度、高温巻き取りを選択する。
【0052】
熱延鋼板は、酸洗後、60〜90%の冷間圧延を行ってめっき用の素材鋼板とする。
【0053】
素材鋼板を700〜850℃に加熱後、460〜480℃まで冷却し、めっき浴に浸漬する。めっき浴は、Al濃度:0.10〜0.12%とし、付着量をガスワイピングなどで所定量に調整後、再加熱して合金化させる。その温度は490〜530℃とし、炉中の滞在時間を調整してFe含有量を制御する。
【0054】
なお、これらの製造方法のうち熱延以降は、Ti添加極低炭素鋼やTi−Nb添加極低炭素鋼を素材としためっき鋼板の製造条件と特段に相違は無く、本発明の鋼板についてのみ行うような特殊な条件は含まれていないので、製造の難易度が上がったり、生産性が下がったりする恐れは極めて少ない。
【0055】
本発明の鋼板は、自動車、二輪車などの車両や家電製品などに用いることが出来る。
【実施例】
【0056】
表1に記載の化学成分を有する複数の鋼スラブを製造し、熱延、酸洗、冷延工程を経て0.8mmのめっき用素材鋼板を作製した。スラブの再加熱温度:1150℃、熱延仕上げ温度:930℃、仕上げ板厚4.0mm、巻き取り温度650℃、平均冷却速度:30℃/秒、は全鋼板について共通とした。
【0057】
【表1】

【0058】
めっき条件は、焼鈍温度:800℃、雰囲気:窒素(5%水素を含む)、露点:−40℃、めっき浴進入温度:470℃、浴温度:460℃、浴組成:Zn−0.13%Al、付着量:50g/m、合金化温度:500℃、とした。
【0059】
得られた合金化亜鉛めっき鋼板について、強度、延性(伸び)、r値(平均値)、めっき中Fe含有量、および耐パウダリング性指標を調べた。
【0060】
強度、延性は圧延方向と平行に採取したJIS−5号試験片を用いて、r値は、JIS−13号B試験片を用いて15%の引張歪に対してそれぞれ測定した。
【0061】
めっき中Fe含有率は、鉄溶解防止剤を添加した塩酸にてめっき部分を溶解し、溶解液のICP分析によって測定した。また、耐パウダリング性指標は既述した通りである。
【0062】
表2に、評価結果を示す。
【0063】
【表2】

【0064】
プレス成形性は、伸び:50%以上、かつr値:2.0以上を「優」と判定した。それらは、Cを0.0014%以下、かつNbを0.02〜0.03%とした場合に得られることがわかった。これらを満たさない鋼a〜d、i、およびmは伸び、またはr値が「優」の基準に達しなかった。
【0065】
耐パウダリング性は、同指標として採用した質量減少量が0.01g以上の場合を「劣」と判定した。O量が0.01%未満の、鋼e、f、およびmが「劣」であることがわかった。
【0066】
一方、鋼n、およびsは、耐パウダリング性は「劣」には該当しないが、めっき後の表面に線状の疵が認められ、調査の結果、該疵はめっき前の鋼板に既に存在していたものであることが判明した。そして更に詳細に調査したところ、該疵は、粗大なFe系の酸化物の存在と関係していることを強く示唆する結果が得られた。両鋼中のO量が適切な範囲を超えたためであると考えられるので、適切な値の上限を0.02%と結論した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%にて、
C:0.0005〜0.0014%、
Si:0.03%以下、
Mn:0.2%以下、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Nb:0.02%〜0.03%、
N:0.0030%以下、
O:0.01〜0.02%、
を含有し、残部がFe、および不可避不純物から成り、フェライト単相のミクロ組織を有する冷延鋼板の表面に、
付着量:25〜80g/m
Fe含有量:8〜13%、
の合金化された亜鉛めっき層を有することを特徴とするプレス成形性とプレス成形時の被膜密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。

【公開番号】特開2006−206954(P2006−206954A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19790(P2005−19790)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】