説明

プレス成形用セラミックス顆粒、およびセラミックス顆粒の充填方法

【課題】
プレス成形で複雑な形状を持つ製品を成形するに割れや、密度ムラがない成形体が得られ、その結果良好なセラミック製品を得る。また、本粉末の充填時に壁などからの帯電を制御することでさらに安定したセラミックス製品を得る。
【解決手段】
有機成分とセラミックス粉末とを含有するプレス成形用セラミックス顆粒において、該プレス成形用セラミックス顆粒の平均顆粒径が40〜100μmであり、かつ該プレス成形用セラミックス顆粒中の水分含有量が0.6〜1.5重量%であることを特徴とするプレス成形用セラミックス顆粒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性に優れたプレス用セラミックス顆粒と、その粉末を使用して静電荷の帯電を少なくすることでより良好な成形体を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、セラミックス製品は、電子部品や機械部品、工具などさまざまな用途で使用されている。セラミックスを製品は、主に原料粉末を成形し、焼結・研磨加工して製造される。成形方法としては、プレス成形、射出成形、押し出し成形などさまざまな手法で工業的に実施されている。
【0003】
最も汎用的な成形方法としては、セラミックス微粉を球状に加工したセラミックス顆粒を型に入れて、圧力をかけて成形するプレス成形がある。その中で金属型に粉末を充填し、ダイスで一軸方向に圧力をかけて成形する金型成形法や、ゴム型に粉末を充填し水中などで全方向から圧力をかける水中等圧成形法などがある。
【0004】
このようなプレス成形において、型への充填時の粉末の流動性や均一な充填性が製品品質に影響を与え、特に複雑な形状になればなるほど、その傾向が強くなる。
【0005】
成形性を高め、顆粒に流動性を与えるひとつの方法として、セラミックス粉末を溶媒に分散させ、それにバインダーとなる有機成分を添加して噴霧乾燥法などで顆粒状にする方法は一般的に知られている。ただし、セラミックスの成形に用いられる有機物はほとんどが非導電性であり、その顆粒が流動することで発生する静電荷により顆粒が帯電し、この静電荷の量により電位(いわゆる静電気)が発生し、粉体同士の流動や充填を妨げてしまう。その結果、充填された状態で顆粒のブリッジングによる充填密度ムラや、成形時の圧力伝達への悪影響が発生し、成形体やその後の焼結体の変形や割れの原因となっている。
【0006】
本件について検討された数少ない例として特許文献1が挙げられる。ここでは0.5〜5wt%の帯電防止剤を使用して、静電気の発生を少なくしたとの知見がある。
また、型への充填時にセラミックス顆粒の静電荷を減らす方法として、発生した静電荷の量を感知し、その反対の符号のイオンを発生させて除電する除電装置や微弱なX線装置を使用して、除電する方法もある。
【特許文献1】特開平05−330826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1で用いられた帯電防止剤についてはセラミックスのバインダーとしての効果があまり期待できず、添加量が多い場合は逆にセラミックス製品の品質を低下させる恐れがあるため好ましくない。またここに挙げた帯電防止有機物の効果としては、ロート通過中の閉塞を防ぐ程度の効果であり、帯電防止の効果としては不十分を言わざるをえない。
【0008】
またフィルムや繊維といった有機物を取り扱う分野では、帯電しにくい有機物を研究開発しさまざまなところで使用されているが、そのほとんどが無機物を含有するものであることや、熱分解後の灰分の残存が多いことが挙げられる。プレス成形用のセラミックス顆粒は、熱分解時の無機物や灰分の残存を最も嫌うため、上述の帯電しにくい有機物は使用することができない。
【0009】
一方、型への充填時に除電装置を使用して除電する方法については、型への充填後に使用した場合は表層部だけの除電のみしか行うことができず静電荷の影響による充填ムラは防止できない。一方、充填時の粉体顆粒の流動中に除電装置を使用する場合は、粉塵が除電イオンやX線の発生部に付着してしまい、除電の効果がすぐに見られなくなり、最終的には装置を破損することとなるため好ましくない。
【0010】
本発明は、プレス成形で複雑な形状を持つ製品を成形するに割れや、密度ムラがない成形体を得、その結果良好なセラミック製品を得ることを課題とする。また、本粉末の充填時に壁などからの帯電を制御することでさらに安定したセラミックス製品を得ることも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のプレス成形用セラミックス顆粒は、以下の構成からなる。
【0012】
(1)有機成分とセラミックス粉末とを含有するプレス成形用セラミックス顆粒において、該プレス成形用セラミックス顆粒の平均顆粒径が40〜100μmであり、かつ該プレス成形用セラミックス顆粒中の水分含有量が0.6〜1.5重量%であることを特徴とするプレス成形用セラミックス顆粒。
(2)プレス成形用セラミックス顆粒の単位重量当たりの静電荷量が0.06〜0.6nC/gであるプレス成形用セラミックス顆粒。
(3)プレス成形用セラミックス顆粒中の有機成分の含有量が1〜5重量%であり、かつ該セラミックス顆粒中に重量平均分子量が8万〜15万のポリエチレンオキサイドを0.1〜1重量%含有するプレス成形用セラミックス顆粒。
(4)セラミックス粉末が、ジルコニア化合物、アルミナ化合物、またはジルコニア化合物とアルミナ化合物の混合物であるプレス成形用セラミックス顆粒。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のプレス成形用セラミックス顆粒を用いて成形型にプレス成形用セラミックス顆粒を充填する方法であって、該顆粒と接触する部分が導電性の材料で構成されており、該接触部をアースしながら該顆粒を充填するセラミックス顆粒の充填方法。
これにより、除電装置を使用することなく型への充填時の顆粒の帯電量を0.06〜0.6nC/gとなり、この状態で成形・焼結することで成形体に割れがなく、焼結時に変形の少ないセラミックス焼結体製品を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセラミックス顆粒を使用することにより、プレス成形で複雑な形状を持つ製品を成形するに割れや、密度ムラがない成形体が得られ、その結果良好なセラミック製品を得ることができる。また、本粉末の充填時に壁などからの帯電を制御することでさらに安定したセラミックス製品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】

本発明のセラミックス顆粒は金型プレス法、CIP法、ラピットプロトタイプ法など様々なプレス成形法に使用され、特に複雑形状の成形体について割れも密度ムラも無いもの得るために使用される。構成するセラミックス粉体の種類は特に限定しないが、緻密かつ高強度な性能を必要とするアルミナ、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素、炭化タングステン、窒化チタン、ムライト、サイアロン、珪酸カルシウム、コーディエライト、スポジュメン、ゼオライト、ジルコン等についてそれぞれ単独または複合した構造材料用セラミックスが選択される。中でも汎用性の高くかつ、絶縁体である酸化アルミニウムや酸化ジルコニウムおよびその混合物に使用されることがさらに好ましい。ここで言う酸化ジルコニウムは酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の安定化剤単独または混合物で一部または全部が安定化されているものを含む。
【0015】
また、プレス成形に用いることから保型性を高めるために有機物をバインダーとして使用する。有機物バインダーの種類としては、一般にセラミックスのプレス成形用バインダーとして使用されるポリビニルアルコール、酢酸ビニル、アクリル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、水溶性セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、水溶性ポリエステル、エチレン/酢酸ビニル共重合体等から選ばれるものを使用すればよいが、顆粒を造粒する際にセラミックス粒子が水に分散したスラリー状態で添加することから、水溶性であることが好ましい。
【0016】
プレス成形用セラミックス顆粒中の有機成分の含有量としては固形分全体の1〜5重量%とすることが好ましい。5重量%を超えると、成形後の脱脂・焼結工程において有機分の熱分解・燃焼によるガスが大量に発生し、脱脂割れや焼結割れが発生しやすくなり好ましくない。また1重量%を下回ると、バインダーとしての保型性が不十分となり、成形したときに成形圧力を下げる際に発生する減圧衝撃(スプリングバック)により成形体が割れてしまう恐れがある。
【0017】
本発明のプレス成形用顆粒に含まれる水分含有量は0.6〜1.5重量%である必要がある。水分含有量が0.6重量%未満であると、発生する静電荷量が大きくなり、型への充填が阻害され、複雑形状の成形には不向きとなる。また1.5重量%を超えると水分の影響による粉末の凝集が発生してしまい。型への充填や均一な成形が阻害される。
【0018】
通常市販されているプレス成形用の粉末については、水分含有量は0.2〜0.4重量%程度である。これは水分量が多くなると水分の影響で粉末が凝集しやすくなるためである。
本発明の顆粒においては、セラミックス顆粒に対して重量平均分子量が8万〜15万のポリエチレンオキサイドを0.1〜1重量%含有させることで、40μm以上の顆粒では0.6重量%〜1.5重量%の水分含有量でも、べたつきが無く、粉末同士が凝集することが防止できることを見出した。
【0019】
ここで使用するポリエチレンオキサイドについては平均分子量が8万未満であると、顆粒が湿潤したときのべたつきによる粉末凝集を防止することができない。また15万を超えると顆粒が堅くなりすぎることで、プレス成形時に顆粒がつぶれにくくなり、内部に多数の空隙が残存してしまうため高密度の焼結体が得られなくなる。
【0020】
ポリエチレンオキサイドの含有量について、0.1重量%未満では、ポリエチレンオキサイドが持つ水分湿潤によるべたつきの防止効果がみられない。一方、1重量%を超えると、顆粒が堅くなり、成形時につぶれにくなり、高密度の焼結体が得られなくなる。
【0021】
顆粒の大きさとしては、平均顆粒径が40〜100μm、好ましくは40〜80μmである。
【0022】
平均顆粒径が40μm未満と小さくなると、本発明のプレス成形用粉末としては水分の影響が避けられなくなり、凝集してしまう。また100μmより大きいと、静電気の影響は小さく、本発明の要件を満たさなくても流動性が良好かつ複雑形状の成形体ができるが、顆粒間の粒界が大きくなることで成形後に成形体に大きなポアが多数残存し焼結体の密度が低くなり製品の強度に影響を与えるため好ましくない。
【0023】
本発明の顆粒の最大の特徴としては、顆粒が流動する際に、顆粒同士で擦れあって発生する静電気が小さいことである。通常、静電気の大きさをあらわすのには、発生する電界の電圧を用いるが、微粉末などは形状が小さすぎるため測定することができない。そこで、春日電機株式会社製のファラデーケージを用いて、粉末全体に発生した静電荷を測定し、単位重量あたりの静電荷であらわした。静電気は流動時に粉末が触る物質との間でも発生するため、容器や充填時にプラスチックやガラス製のロートや容器を使うと、粉末が流動する際に静電気が発生してしまうため、好ましくない。そこで、静電荷量を測定する際には、金属製の容器および、金属製のロートを使用してそれぞれ容器、ロートにはアースをして使用した。
【0024】
その結果、顆粒において、自己流動にて帯電する静電荷量が静電荷量が0.06〜0.6nC/gである顆粒であれば、静電気の影響を全く受けずに成形できるため、複雑形状の成形体について、クラックや密度ムラが全く発生しないことを見出した。
この帯電する静電荷量については、周囲の雰囲気や顆粒を構成する物質の種類や大きさにも影響を受けるが、トータルとして上記範囲に入っていれば何ら問題は発生しない。ここで帯電する静電荷量が0.06nC/g未満となると、水分が多くなりすぎてしまい上述のように粉末が凝集してしまいうまく成形ができなくなる。一方静電荷量が0.6nC/gを超えてしまうと、静電気の影響で複雑な成形体であるとクラックが発生したり、密度ムラで変形が大きくなってしまう。
【0025】
本検討に使用されるセラミックス原料としては、1次粒子径が50nm〜200nm、2次粒子径(分散径)が0.1μm〜1μmの高純度のファインセラミックス粉末を使用するのが好ましい。有機物の添加方法としては、セラミックス粉末をボールミルやアトライターで水に濃度30〜60重量%で分散させ、充分攪拌しながら有機物を所定量添加混合する。顆粒の作成方法としては、スプレードライヤーを使用するのが好ましい。スプレー方法としては、アトマイズ法、二流体ノズルなどを使用するとよい。顆粒への加湿方法としては、このスプレードライヤーの乾燥条件の排気風量を絞り、また排気の温度を60℃以下にすることで達成できる場合もあるが、排気温度80℃以上で得られた顆粒を恒温恒湿槽を使用して、湿度95%以上、温度25〜40℃の条件で5時間以上加湿する方法でもよい。
【0026】
本粉末は大気中に放置しておくと、乾燥して水分が減少してしまうため、密閉容器で保管し、使用する際も空気への暴露をなるべく少なくする必要がある。
【0027】
本発明のセラミックス顆粒を成形型に充填する際、顆粒と直接接触する部分である顆粒貯蔵ホッパ、充填ダイスまでの配管、充填ダイス、上下のパンチを金属等の導電性がある物質で構成されている必要がある。接粉部がプラスチック等の非導電性材料で構成している場合、顆粒とその非導電性材料部が接触した際、非導電性材料から静電荷が発生してしまいそれが顆粒内に滞留することで異常な静電気が発生し、成形体に異常が発生してしまう。
【0028】
また金属で構成されていたとしても、周りと絶縁されていた場合、電荷がどんどん蓄積することとなり、複数回使用すると、徐々に電荷が蓄積しそれが顆粒に波及することで静電気による影響が回避できなくなる。そこで、本粉末を使用する際にそれぞれの部品を金属線でアースして使用すると成形型による静電気の影響が全く見られなくなる。
【実施例】
【0029】
以下本発明を実施例及び比較例で具体的に説明する。ただし本発明はこれらの実施例のみにより限定されるものではない。
まず実施例の物性測定、評価の実施方法についてまとめた。
(1)平均顆粒径(Dp)
顆粒を電子顕微鏡等で数百倍に拡大して撮影し、その写真内でランダムに選択した顆粒の投影径について、画像解析装置(WinRoof;三谷商事)を用いて円相当径として統計的に算出した。処理した顆粒の個数が200個以上となるようにした。
(2)水分含有量
島津製作所製の水分率計EB−280MOCを使用し、粉末顆粒5gを秤量して300℃設定で測定した。
(3)静電荷量
春日電機(株)製のファラデーケージにクーロンメーターNK−1001を設置した。
【0030】
測定部に15gの顆粒を投入し、静電荷量を測定した。この測定を3回実施し、平均を取り、投入量で除して単位当たりの静電荷量とした。
【0031】
実施例1
BET10m2/gの3モル%のイットリアを含むジルコニア粉末をボールミルにより水中に分散させ、濃度35重量%のスラリーを作成した。
このスラリーの固体分重量に対し、有機成分として重合度500のポリビニルアルコール0.5重量%と、ガラス転移温度がマイナス8℃の水溶性アクリル共重合樹脂1.5重量%と、平均分子量10万のポリエチレンオキサイド0.5重量%を添加した。
【0032】
本スラリーをディスク型スプレードライヤーにて排気温度100℃で噴霧乾燥した。得られた顆粒の平均顆粒径は60μmであった。本顆粒を恒温恒湿乾燥機にて98%、30℃の雰囲気で15時間放置した。処理後の顆粒はビニール袋に密閉し保管した。
【0033】
本顆粒の水分含有量を水分率計で測定したところ、1.44重量%であった。本顆粒をアースをとった金属容器に15g秤量し、静電荷量を測定したところ0.08nC/gであった。上述のデータを表1の実施例1にまとめた。
【0034】
【表1】

【0035】
本粉末を、図1のようなL/Dが大きな特殊な成形体を得る金型を用いて、図2のような一端封じのタンマン管形状の成形体を成形し、図2の測定部A、B、Cの部分で寸法をマイクロメーターで測定した。この成形体を1400℃で焼結し、同じ場所について焼結体の寸法を測定し、収縮率および収縮率の(最大−最小)の差を求めた。また成形体・焼結体を通じてクラックの有無について外観検査したところ表2のようになった。表2のとおり、収縮率差が1.6%と変形が少なく、成形体・焼結体ともクラックは見られなかった。
【0036】
【表2】

【0037】
実施例2
BET10m2/gで、2.8重量%のマグネシアと0.4重量%のカルシアと1.0%のアルミナを含む酸素センサー用ジルコニア粉末をボールミルにより水中に分散させ、濃度40重量%のスラリーを作成した。
【0038】
このスラリーの固体分重量に対し有機成分として重合度1000のポリビニルアルコール2重量%と平均分子量7万のポリエチレンオキサイド0.9重量%を添加した。本スラリーをディスク型スプレードライヤーにて排気温度100℃で噴霧乾燥した。得られた顆粒の平均顆粒径は50μmであった。本顆粒を恒温恒湿乾燥機にて95%、30℃の雰囲気で7時間放置した。処理後の顆粒はビニール袋に密閉し保管した。
【0039】
本顆粒の水分含有量を測定したところ、1.17重量%であった。本顆粒をアースをとった金属容器に15g秤量し、静電荷量を測定したところ0.2nC/gであった。上述のデータを表1の実施例2にまとめた。
本粉末を実施例1と同様なタンマン管を成形し、1700℃で焼結した。実施例1と同様に寸法を測定したところ、表2のとおり、収縮率差が0.9%と変形が少なく、成形体・焼結体ともクラックは見られなかった。
【0040】
実施例3
BET10m2/gの3モル%のイットリアを含むジルコニア粉末とBET7m2/gのアルミナが重量比で3:7の割合の粉末をボールミルにより水中に分散させ、濃度40重量%のスラリーを作成した。このスラリーの固体重量に対し有機成分として重合度500のポリビニルアルコール1.3重量%と平均分子量13万のポリエチレンオキサイド0.5重量%を添加した。本スラリーをディスク型スプレードライヤーにて排気温度60℃で噴霧乾燥した。得られた顆粒の平均顆粒径は75μmであった。本粉末の水分含有量を測定したところ、0.88重量%であった。本顆粒をアースをとった金属容器に15g秤量し、静電荷量を測定したところ0.5nC/gであった。上述のデータを表1の実施例3にまとめた。
本粉末を実施例1と同様なタンマン管を成形し、1550℃で焼結した。実施例1と同様に寸法を測定したところ表2のとおり、収縮率差が1.8%と変形が少なく、成形体・焼結体ともクラックは見られなかった。
【0041】
比較例1
BET10m2/gの3モル%のイットリアを含むジルコニア粉末をボールミルにより水中に分散させ、濃度35重量%のスラリーを作成した。
このスラリーの固体重量に対し有機成分として重合度500のポリビニルアルコール0.5重量%とガラス転移温度がマイナス8℃の水溶性アクリル共重合樹脂1.5重量%と、平均分子量10万のポリエチレンオキサイド0.5重量%を添加した。本スラリーをディスク型スプレードライヤーにて排気温度100℃で噴霧乾燥した。得られた顆粒の平均顆粒径は60μmであった。
本粉末の水分含有量を測定したところ、0.32重量%であった。本顆粒をアースをとった金属容器に15g秤量し、静電荷量を測定したところ0.85nC/gであった。上述のデータを表1の比較例1にまとめた。
本粉末を実施例1と同様なタンマン管を成形し、1400℃で焼結した。実施例1と同様に寸法を測定したところ表2のとおり、収縮率差が4.2%と大きく焼結体は変形したが、成形体・焼結体ともクラックは見られなかった。
【0042】
比較例2
BET10m2/gの3モル%のイットリアを含むジルコニア粉末とBET7m2/gのアルミナをボールミルにより水中に分散させ、濃度40重量%のスラリーを作成した。
このスラリーの固体重量に対し有機成分として重合度500のポリビニルアルコール1.5重量%を添加した。本スラリーをディスク型スプレードライヤーにて排気温度100℃で噴霧乾燥した。得られた顆粒の平均顆粒径は35μmであった。本顆粒を恒温恒湿乾燥機にて99%、35℃の雰囲気で10時間放置した。処理後の顆粒はビニール袋に密閉し保管した。
本顆粒の水分含有量を測定したところ、1.95重量%であった。本顆粒をアースをとった金属容器に15g秤量し、静電荷量を測定したところ0.01nC/gであった。上述のデータを表1の比較例2にまとめた。
本粉末を図1の金型に充填させようとしたところ、粒子同士が凝集して流動性が悪く、型への充填に失敗した。無理やり充填して成形したところ、先端に孔のいあいた成形体となった。
【0043】
比較例3
BET10m2/gで、2.8重量%のマグネシアと0.4重量%のカルシアと1.0%のアルミナを含む酸素センサー用ジルコニア粉末をボールミルにより水中に分散させ、濃度40重量%のスラリーを作成した。
このスラリーの固体重量に対し有機成分として重合度1000のポリビニルアルコール2重量%を添加した。本スラリーをディスク型スプレードライヤーにて排気温度100℃で噴霧乾燥した。
得られた顆粒の平均顆粒径は30μmであった。本顆粒を通常乾燥機にて80℃の大気雰囲気で3時間放置した。処理後の顆粒はビニール袋に密閉し保管した。
本顆粒の水分含有量を測定したところ、0.21重量%であった。本顆粒をアースをとった金属容器に15g秤量し、静電荷量を測定したところ1.3nC/gであった。上述のデータを表1の比較例3にまとめた。
本粉末を実施例1と同様なタンマン管を成形し、1700℃で焼結した。実施例1と同様に寸法を測定したところ、表2のとおり、収縮率差が7.0%と変形が大きく、成形体の測定部Aの上部の首の部分に、クラックが発生した。
【0044】
比較例4
BET10m2/gの3モル%のイットリアを含むジルコニア粉末とBET7m2/gのアルミナが重量比で3:7の割合の粉末をボールミルにより水中に分散させ、濃度50重量%のスラリーを作成した。このスラリーの固体重量に対し有機成分として重合度500のポリビニルアルコール5.5重量%を添加した。本スラリーをディスク型スプレードライヤーにて排気温度100℃で噴霧乾燥した。得られた顆粒の平均顆粒径は150μmであった。
本顆粒の水分含有量を測定したところ、0.45重量%であった。本顆粒をアースをとった金属容器に15g秤量し、静電荷量を測定したところ0.9nC/gであった。
本粉末を実施例1と同様なタンマン管を成形し、1550℃で焼結した。実施例1と同様に寸法を測定したところ、表2のとおり、収縮率差は1.4%と変形が小さかったが、焼結体の密度が低く、造粒体間隙による100μm程度のポアが多数存在した。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本検討の評価で使用した成形型を表す図である。
【図2】金型部の形状を表す図である。
【符号の説明】
【0046】
1:充填された顆粒
2:金型
3:芯金
4:ダイス
5:下パンチ
A、B、C:測定場所
a:内径寸法3.7mm
b:外形寸法5.7mm
c:長さ約30mm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機成分とセラミックス粉末とを含有するプレス成形用セラミックス顆粒において、該プレス成形用セラミックス顆粒の平均顆粒径が40〜100μmであり、かつ該プレス成形用セラミックス顆粒中の水分含有量が0.6〜1.5重量%であることを特徴とするプレス成形用セラミックス顆粒。
【請求項2】
プレス成形用セラミックス顆粒の単位重量当たりの静電荷量が0.06〜0.6nC/gであることを特徴とする請求項1に記載のプレス成形用セラミックス顆粒。
【請求項3】
プレス成形用セラミックス顆粒中の有機成分の含有量が1〜5重量%であり、かつ重量平均分子量が8万〜15万のポリエチレンオキサイドをセラミックス顆粒に対して0.1〜1重量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載のプレス成形用セラミックス顆粒。
【請求項4】
セラミックス粉末が、ジルコニア化合物、アルミナ化合物、またはジルコニア化合物とアルミナ化合物の混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプレス成形用セラミックス顆粒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のプレス成形用セラミックス顆粒を用いて成形型にプレス成形用セラミックス顆粒を充填する方法であって、該顆粒と接触する部分が導電性の材料で構成されており、該接触部をアースしながら該顆粒を充填することを特徴とするセラミックス顆粒の充填方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−197265(P2007−197265A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18670(P2006−18670)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】