説明

プレス曲げ加工用下型

【課題】曲げ加工により製作されるU字形の金具の深さ寸法を拡大することができ、加工に関わる作業者にとって安全な曲げ加工を実現すること。
【解決手段】上面に左右方向に延びる凹溝を有し曲げ加工装置に固定されるブロック本体と、このブロック本体の前記凹溝内に収容され凹溝の軸の周りに回転動作により揺動運動が可能な回転ブロックとから成り、回転ブロックの上面には、板材の曲げ加工に際して、上型の刃先を受け入れる加工溝が形成されているプレス曲げ加工用下型である。ブロック本体は凹溝の前後両側に前側肩部と後側肩部を有し、前側肩部の高さ寸法は後側肩部の高さ寸法よりも小さく設定されて前側肩部と後側肩部との間で段差が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ加工装置であるベンディングマシン(他に、プレスブレーキとも呼ばれる。)に取り付けられて、金属板などの機械品の曲げ加工を行うプレス曲げ加工用工具(以下、曲げ工具という。)、特に曲げ工具の下型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種機械或いは装置の構造体にブラケットとして用いられたり、補強部材として用いられるためにL形金具やU形金具が多く政策される。このようなL形金具やU形金具を製作する従来の曲げ工具及び作業状態が特公昭58−41927号公報或いは図9に示してある。
【0003】
図9は、通常良く使われるL形金具を製作する状態を示したものであるが、この手段によればベンディングマシン本体1にボルト5などにより固定された上型に相当するL形曲げ工具(すなわち、矢弦)2と、ベンディングマシンのテーブル4に固定された下型に相当するVブロック3とを上下関係に相対向して設置し、矢弦2側又はVブロック3側或いはその両方を相手部材の方へ向けて上方または下方へ動かすことによって曲げ加工が行われていた。矢弦2は鉛直線を実質的に二等分線とするほぼ直角に尖ったくさび形の先端部を有する一方、Vブロック3もまた鉛直線を実質的に二等分線としてほぼ直角に交わる斜面を有する溝すなわちくぼみを有する。矢弦2とVブロック3とは、両部材を噛み合わせたとき矢弦2の先端部とVブロック3の溝とがずれることなく補合し合うように設定されている。よって、Vブロック3上に金属板6を置いて矢弦2をVブロック3に押し付けると、金属板6は矢弦2に押されてVブロック3の溝内に落ち込み、さらにプレス圧力の作用によって曲がり角が略直角のL形に塑性変形する。こうしてL形金具が製作される。
【0004】
U形金具を製作するには、上述のようにして金属板6をVブロック3の上に載置して所定のU形の曲げ加工位置(部位)を決め、その部位にて1回目のL形の曲げ作業を施す。これにより第1の曲げ点7aにて直角に折れ曲がったL形加工物(図9中、一点鎖線で表される)6aが出来上がる。次に出来上がったL形加工物をVブロック3の上で前後方向(図9では右側を前側、左側を後側とする。以下、この明細書において全ての場合同様である。)にずらしてU形の曲げ加工位置(部位)を決め、その部位にて2回目のL形の曲げ作業を施す。これにより第1の曲げ点7aはそのまま残してさらに第2の曲げ点7bにて直角に折れ曲がったU形金具(図9中、実線で表される)6bが出来上がる。このように、金属板6上で異なった2点でL形の曲げ作業を施すことによりU形金具6bが製作される。L形の曲げ作業を施された2点の間がU形金具6bの底辺8aとなる。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭58−41927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の曲げ工具においては、上記の通りの一定の効果或いは有用性を有する一方で、次のような課題がある。すなわち、図9に示されているように、上記従来の曲げ工具を使ってL形の曲げ作業を行うと、それまでブロック3の上に水平状態に載置されていた金属板6が矢弦2とブロック3との衝合動作により曲げ点で直角に曲げられることになり、ベンディングマシン本体1の前側においては金属板6が45度の角度だけ跳ね上がることになる。この前側位置には作業者がいて材料の設置や取り出しを行うので、上記金属板6の跳ね上げは作業者にとって危険である。
【0007】
また、図9に示されているように、U形金具6bを製作するに当って上記従来の曲げ工具を使ってL形の曲げ作業を2回行うと、2回目のL形の曲げ作業を実行したときに、当該2回目のL形の曲げ作業で出来た第2の曲げ点7bからは、U形金具6bの底辺8aが水平面に対して45度の角度方向に延び、この底辺8aの先端(すなわち、第1の曲げ点7a)で一方の垂直辺(U形の脚に相当する)8bがさらに90度の角度方向に延びる。このため、垂直辺8bは底辺8aの先端からプラス135度の角度方向(言い換えれば、45度の逆戻り角度方向)へ延びることになる。垂直辺8bが45度の逆戻り角度方向へ延びるとしても、必要とする垂直辺8bの寸法が充分小さければなんら問題はないが、製作したいU形金具6bについて、垂直辺8bの寸法をある程度大きくしたい場合(すなわち、底辺8aの寸法に対して深い寸法のU形金具6bが必要である場合)は、図9に示されるように、垂直辺8bの先端8cがベンディングマシン本体1の面に突き当たってしまう。したがって、垂直辺8bはそれ以上大きな寸法に設定することができなくなる。これは、とりもなおさず、従来の曲げ工具では底辺8aとの比において比較的深さ寸法の小さいU形金具6bしか製作できないということを示す。ちなみに図9に示されるU形金具6bの例では、
底辺:垂直辺=1:0.55
程度である。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するもので、この種の曲げ工具において、曲げ加工し得るU形金具の深さ寸法を拡大することができ、(通常の標準的な長さの加工材料に比べて)長い加工物でも加工機械やその直近周囲に衝突することなしに、確実に曲げ加工すること、加工に関わる作業者にとって安全な曲げ加工を実現すること、などを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の曲げ工具は、下型を改良した点に特徴を有する。この下型は、上面に左右方向に延びる凹溝を有し曲げ加工装置に固定されるブロック本体と、このブロック本体の前記凹溝内に収容され凹溝の軸の周りに揺動運動可能な回転ブロックとから成り、回転ブロックの上面には上型の刃先を受け入れる加工溝が形成されていることを特徴とするものである。下型について、ブロック本体は凹溝の前後両側に前側肩部と後側肩部を有する。これらの肩部において、前側肩部の高さ寸法は後側肩部の高さ寸法よりも小さく設定されている。すなわち、前側肩部と後側肩部との間では前側肩部の方が低くなるような段差が設定されている。凹溝の形状は、基本的には断面が半円形状の筒空洞形状であり、回転ブロックはこの凹溝に当てはまるような断面が半円形状の筒状構造であることが好ましい。凹溝の形状及び回転ブロックの構造には幾つかのバリエーションが考えられる。他方、加工溝は回転ブロックの上面に、当該回転ブロックの長手方向に延びて形成されており、その断面形状について厳密な制限はないが、加工溝の前側壁は上面から略垂直に下がる一方、後側壁は上面から前側に傾斜して延びる面に形成されることが好ましい。加工溝の底面は上型の先端部を充分に受け入れ得る深さ位置にあればよい。また、上型と下型を衝合させたとき、回転ブロックが前側に回転する動作を確実にするために、加工溝の配置位置を回転ブロックの断面でみて中心軸位置よりも幾分前側の位置(すなわち、偏心位置)に設定してもよい。なお、上型には従来からある曲げ加工用の矢弦を使用可能である。矢弦の刃先部分は上記回転ブロックの回転作動に合わせて回転させた形に設定されている。
【0010】
下型が上記のような構成を有するため、下型の上に金属板を載置して上型である矢弦と下型とを衝合動作させると、矢弦の刃先が金属板を折り曲げながら回転ブロックの加工溝に進入する。このとき、ブロック本体では前側肩部と後側肩部との間では前側肩部の方が低くなるような段差が設定されているため、回転ブロックは前記曲げ加工装置の前側へ傾くように回転し、回転ブロックの前側部分は降下する一方後側部分はせり上がる。このため、L形加工物は曲げ点において、前記曲げ加工装置の前側へ傾斜した回転ブロックに合わせて前傾することになり、前記曲げ加工装置の前側においてはL形加工物の前側部分は水平面に対して45度より小さな角度起き上がるだけである。これにより、曲げ加工作業時における金属板の跳ね上がりを最小に抑えることが出来、作業者の安全が確保される。また、U形金具を製作するときは、このU形金具も曲げ点(上記第2の曲げ点7bに相当する)において、前記曲げ加工装置の前側へ傾斜した回転ブロックに合わせて前傾することになり、前記曲げ加工装置の前側においてはU形金具の底辺の前側部分は水平面に対して45度より小さな角度起き上がるだけである。これにより、U形金具の垂直辺の逆戻り角度は45度より小さな角度となり、垂直辺は鉛直線により一層近い方向へ延びるから、垂直辺の寸法を大きくしてもその先端が曲げ加工装置の本体に突き当たることは少ない。
【発明の効果】
【0011】
本発明の曲げ工具は、上記各構成により、次のような効果を奏する。
(1) 下型の上に金属板を載置して上型と下型とを衝合動作させると、上型の刃先が金属板を折り曲げながら回転ブロックの加工溝に進入し、回転ブロックは前傾方向に回転するため、L形加工物は曲げ点において、前記曲げ加工装置の前側へ傾斜した回転ブロックに合わせて前傾することになり、前記曲げ加工装置の前側においてはL形加工物の前側部分は水平面に対して45度より小さな角度起き上がるだけである。これにより、曲げ加工作業時における金属板の跳ね上がりを最小に抑えることが出来、作業者の安全が確保される。
(2)また、U形金具を製作するときは、このU形金具も曲げ点(上記第2の曲げ点7bに相当する)において、前記曲げ加工装置の前側へ傾斜した回転ブロックに合わせて前傾することになり、前記曲げ加工装置の前側においてはU形金具の底辺の前側部分は水平面に対して45度より小さな角度起き上がるだけである。これにより、U形金具の垂直辺の逆戻り角度は45度より小さな角度となり、垂直辺は鉛直線により近い方向へ延びるから、垂直辺の寸法を大きくしてもその先端が曲げ加工装置の本体に突き当たることは少ない。よって、深さ寸法の大きなU形金具を曲げ加工により製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 本発明の一実施の形態におけるプレス曲げ加工用工具の下型を示す分解斜視図である。
【図2】 前記実施の形態におけるプレス曲げ加工用工具の下型を示す左側面図である。
【図3】 前記実施の形態におけるプレス曲げ加工用工具を用いた曲げ加工動作手順を示す左側面図である。
【図4】 前記実施の形態におけるプレス曲げ加工用工具を用いた曲げ加工完了状態を拡大して示す左側面図である。
【図5】 前記実施の形態におけるプレス曲げ加工用工具を用いたU形金具の曲げ加工完了状態を示す左側面図である。
【図6】 前記実施の形態におけるプレス曲げ加工用工具を用いたU形金具の曲げ加工理論的可能性を示す左側面図である。
【図7】 本発明のプレス曲げ加工用工具の下型の他の実施の形態を示す左側面図である。
【図8】 本発明のプレス曲げ加工用工具の下型のさらに他の実施の形態を示す左側面図である。
【図9】 従来のプレス曲げ加工用工具を用いたU形金具の曲げ加工完了状態を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の第1の実施の形態について図を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態におけるプレス曲げ加工用工具の下型を示す分解斜視図であり、図2はその左側面図である。図1及び図2に示すように、この下型10はブロック本体11と回転ブロック12とから成る。ブロック本体11は、上面に左右方向に延びる凹溝13を有し曲げ加工装置14に固定される。下型10のブロック本体11は凹溝13の前後両側に前側肩部15と後側肩部16を有する。これらの肩部15,16において、前側肩部15の高さ寸法は後側肩部16の高さ寸法よりも小さく設定されている。すなわち、前側肩部15と後側肩部16との間では前側肩部15の方が低くなるような段差Dが設定されている。凹溝13の形状は、断面が半円形状の筒空洞形状である。回転ブロック12はこの凹溝に当てはまるような断面が半円形状の筒状構造であることが好ましい。
【0014】
回転ブロック12は、ブロック本体11の凹溝13内に収容される。回転ブロック12は上記凹溝13に当てはまるような断面が半円形状の筒状構造をしている。また回転ブロック12は上記凹溝13の軸の周りに揺動運動可能である。他方回転ブロック12の上面17には、加工溝18が、当該回転ブロック12の長手方向に延びて形成されておいる。加工溝18の断面形状について厳密な制限ないし限定はないが、加工溝18の前側壁19は上面17から略垂直に下がって延びる一方、後側壁20は上面17から前側下方に傾斜して延びる面に形成されることが好ましい。加工溝18の底面21は上型(後出の25)の先端部を充分に受け入れ得る深さ位置にあればよい。この実施の形態では、上記前側壁19、後側壁20、底面21の関係を次のように設定している。すなわち、後側壁20は上面17から角度45度で前側下方へ傾斜して延び、上面17と平行な底面21に接続する。図2でみて、底面21の長さ寸法(つまり、幅寸法)は前側壁19の高さ寸法に等しい。前側壁19の上端コーナー部には面取りが施されている。また、上型25と下型10を衝合させたとき、回転ブロック12が前側に回転する動作を確実にするために、加工溝18の配置位置を回転ブロック12の断面でみて中心軸位置よりも幾分前側の位置(すなわち、偏心位置)に設定してもよい。
【0015】
なお、上型25には従来からある曲げ加工用の矢弦が用いられる。ただし、矢弦25の刃先部分は上記回転ブロック12の回転作動(或いは回転量)に適合するように前傾方向に回転させた形に成形されている。すなわち、矢弦25の刃先部分は、刃先角度は90度に設定されているが、その刃先の2等分割線は鉛直方向を向いておらず、回転ブロック12が回転作動したときの回転量の分だけ前傾させた形に成形されている。
【0016】
かかる構成を有する曲げ工具による曲げ動作を説明する。図3は本実施の形態におけるプレス曲げ加工用工具を用いた曲げ加工動作手順を(a)、(b)、(c)の段階に分けて示す左側面図である。この図において、符号25は上型としての矢弦である。この矢弦25は下型10の上方位置で曲げ加工装置14に固定取り付けされる。図3(a)においては下型10の上に金属板6が設置される。このとき下型10の回転ブロック12は上面17がほぼ水平になるように設定されている。この状態から矢弦25が矢印A1の方向、すなわち、下方へ移動せしめられる。図3(b)は下方へ移動せしめられた矢弦25が下型10の上に設置された金属板6に到達した状態を示す。矢弦25の刃先26は回転ブロック12の加工溝18の中央部に対応するよう位置調整されている。ブロック本体11の前側肩部15と後側肩部16との間では前側肩部15の方が低くなるような段差Dが設定されているから、金属板6と後側肩部16との間には殆ど隙間は存在しないが、金属板6と前側肩部15との間には段差Dに対応する隙間が存在している。図3(c)は下方へ移動せしめられた矢弦25が下型10の上に設置された金属板6に当ってこれを折り曲げながらさらに下方へ移動した状態を示す。これにより矢弦25の刃先26は回転ブロック12の加工溝18の中に進入する。このとき、ブロック本体11の後側部分では後側肩部16により金属板16が完全に支えられるのに対し、ブロック本体11の前側部分では金属板6と前側肩部15との間には隙間が存在して金属板6を支えるものがないため、上記矢弦25の刃先26の進入により回転ブロック12が矢印A2の方向へ回転しその上面17が前傾状態となる。そして、矢弦25の刃先26が回転ブロック12の加工溝18の中に進入することにより、金属板6は曲げ点7cにおいて曲げ作用を受け、当該曲げ点7cを境にした前側、後側の両部分がそれぞれ矢印A3,A4の方向へ回転移動して略直角に曲げられたL形加工物となる。
【0017】
図4は図3(c)における曲げ加工完了状態を拡大して示す左側面図である。この図から明らかなように、金属板6は曲げ点7cを境にした前側、後側の両部分がそれぞれ矢印A3,A4の方向へ回転移動して略直角に曲げられたところで、前側部分は回転ブロック12の上面17と加工溝18の前側壁19との角部と矢弦25とに挟持され、後側部分は加工溝18の後側壁20と矢弦25とに挟持される。そして、回転ブロック12が前側に傾斜していることにより金属板6の前側部分は水平面に対してわずかな角度θ1しか起き上がらず、その起き上がり量(寸法)は最小に抑えられている。
【0018】
次に本発明の曲げ工具を使ってU形金具を製作する場合について図5及び図6を参照して説明する。この場合の曲げ作業は図9を参照して既に説明したのと同様に行われる。すなわち、金属板6を下型10の上に載置して所定のU形の曲げ加工位置(部位)を決め、その部位にて1回目のL形の曲げ作業を施す。本発明では従来例よりも深さ寸法の大きなU形金具を製作することを意図するため、金属板6の端部から上記加工部位までの長さは図9の事例よりも大きく設定してある。上記曲げ作業により第1の曲げ点7dにて直角に折れ曲がったL形加工物(図5中、一点鎖線で表される)6cが出来上がる。次に出来上がったL形加工物6cを下型10の上で前後方向にずらしてもう一方のU形の曲げ加工位置(部位)を決め、その部位にて2回目のL形の曲げ作業を施す。これにより第1の曲げ点7dはそのまま残してさらに第2の曲げ点7eにて直角に折れ曲がったU形金具(図5中、実線で表される)6dが出来上がる。このように、金属板6上で異なった2点でL形の曲げ作業を施すことによりU形金具6bが製作される。L形の曲げ作業を施された2つの曲げ点7dと7eの間がU形金具6dの底辺8aとなる。ここで図5に示された本発明のU形金具6dと、図9に示された従来例のU形金具6bとの違いを明らかにするため、いずれのU形金具6b、6dについても、底辺8aについては同じ構成、すなわち、同じ長さ寸法に設定されている。
【0019】
U形金具6dを製作するに当って上記本発明の曲げ工具を使ってL形の曲げ作業を2回行うと、2回目のL形の曲げ作業を実行したときに、当該2回目のL形の曲げ作業で出来た第2の曲げ点7eからは、回転ブロック12が前側に傾斜していることによりU形金具6dの底辺8aはその起き上がり量(寸法)が最小に抑えられており、水平面に対して45度よりも大幅に小さなわずかな角度θ1の角度方向に延び、この底辺8aの先端(すなわち、第1の曲げ点7d)で一方の垂直辺(U形の脚に相当する)8dがさらに90度の角度方向に延びる。このため、垂直辺8dは底辺8aの先端からθ1プラス90度の角度方向(言い換えれば、角度θ1だけの逆戻り角度方向)へ延びることになる。垂直辺8dが角度θ1だけしか逆戻りしないため、垂直辺8dの寸法を充分大きくしても当該垂直辺8dの先端(8eとする)が曲げ加工装置14の面へは容易に突き当たらない。このことは、本発明の曲げ工具では底辺8aとの比においてきわめて深さ寸法の大きなU形金具6dを製作することができるということを示す。図6は本発明における理論上の突き当たり点を図解して示す図であり、この図中、一点鎖線は曲げ加工装置14の面の位置を示す。図6から明らかなように、U形金具6dの垂直辺8dの逆戻り角度θ1は45度より大幅に小さな角度となり、垂直辺8dは鉛直線により一層近い方向へ延びてその先端8eで始めて曲げ加工装置14の本体に突き当たる。ちなみに図6に示されるU形金具6dの例では、
底辺:垂直辺=1:5.5
である。これにより、先に従来例に関して求めた底辺と垂直辺との対比結果に比べて垂直辺の長さの許容量が大幅に増えていることがわかる。
【0020】
以上から、U形金具6dを製作するに当っては、底辺8aが曲げ加工装置14の前側へ傾斜した回転ブロック12に合わせて前傾することになり、曲げ加工装置14の前側においてはU形金具の底辺の前側部分は水平面に対してわずかな角度θ1起き上がるだけである。これにより、U形金具6dの垂直辺8dの逆戻り角度θ1は45度より小さな角度となり、垂直辺8dは鉛直線により一層近い方向へ延びるから、垂直辺8dの寸法を大きくしてもその先端8eが曲げ加工装置14の本体に突き当たることは少ない。よって、深さ寸法の大きなU形金具6dをプレス曲げ加工により製作することができる。
【0021】
図7は本発明のプレス曲げ加工用工具の下型の他の実施の形態を示す左側面図である。この実施の形態では、下型20のブロック本体21にV形の凹溝23を形成し、この凹溝23内に上記第1の実施の形態において用いられた回転ブロック12を収容して成る。その他の構成部分は上記第1の実施の形態と同じである。この構成においては、回転ブロック12はブロック本体21の凹溝23との接触部24,25において支持されるから、回転ブロック12は支持点24,25で支持されながら揺動可能である。
【0022】
図8は本発明のプレス曲げ加工用工具の下型のさらに他の実施の形態を示す左側面図である。この実施の形態では、下型30のブロック本体としては上記第1の実施の形態において用いられたブロック本体11を用いる。他方、回転ブロック32としては、多角形状の断面を有する構造とし、多角形の角部33,34,35をブロック本体11の凹溝13の面に接触させて回転ブロック32を凹溝13内に収容して成る。その他の構成部分は上記第1の実施の形態と同じである。この構成においては、回転ブロック32はブロック本体11の凹溝13との接触部33,34,35において支持されるから、回転ブロック32は接触部33,34,35で支持されながら揺動可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
下型の上に金属板を載置して上型と下型とを衝合動作させると、上型の刃先が金属板を折り曲げながら回転ブロックの加工溝に進入し、回転ブロックは前傾方向に回転するため、L形加工物は曲げ点において、前記曲げ加工装置の前側へ傾斜した回転ブロックに合わせて前傾することになり、曲げ加工作業時における金属板の跳ね上がりを最小に抑える。これにより作業者の安全が確保される。またU形金具の製作に当って付加さ寸法の大きなU形金具を製作でき、利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0024】
10 下型
11 ブロック本体
12 回転ブロック
13 凹溝
14 曲げ加工装置
15 前側肩部
16 後側肩部
17 上面
18 加工溝
25 上型
D 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に左右方向に延びる凹溝を有し曲げ加工装置に固定されるブロック本体と、このブロック本体の前記凹溝内に収容され凹溝の軸の周りに揺動運動可能な回転ブロックとから成り、
回転ブロックの上面には上型の刃先を受け入れる加工溝が形成されており、
前記ブロック本体は曲げ加工装置の前後方向を基準として、凹溝の前後両側に前側肩部と後側肩部を有し、これらの肩部において、前側肩部の高さ寸法は後側肩部の高さ寸法よりも小さく設定され、段差が設定されている、
ことを特徴とするプレス曲げ加工用下型。
【請求項2】
凹溝の形状は、断面が半円形状の筒空洞形状であり、回転ブロックはこの凹溝に当てはまるような断面が半円形状の筒状構造であることを特徴とする請求項1記載のプレス曲げ加工用下型。
【請求項3】
加工溝は回転ブロックの上面に、当該回転ブロックの長手方向に延びて形成され、加工溝の前側壁は上面から略垂直に下がる一方、後側壁は上面から前側に傾斜して延びる面に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス曲げ加工用下型。
【請求項4】
加工溝の配置位置を回転ブロックの断面でみて中心軸位置よりも幾分前側の位置に偏心して設定していることを特徴とする請求項3記載のプレス曲げ加工用下型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−81523(P2012−81523A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−17246(P2012−17246)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【分割の表示】特願2009−183295(P2009−183295)の分割
【原出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(395017748)
【Fターム(参考)】