説明

プレス機械

【課題】ミス検出時にスライドを設定停止位置に確実に強制停止できるようにする。
【解決手段】停止位置設定手段とミス検出位置設定手段と減速開始位置設定手段と減速制御手段と強制停止制御手段と増速制御手段とを設け、モーション情報に基づき下降中のスライドが減速開始位置P3に到達した場合に減速制御を開始可能で、ミス検出位置P2でミス検出された場合は強制停止制御により停止位置P1に強制停止可能で、ミス検出されなかった場合には増速制御により減速された速度を元の下降速度に戻し可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
モーション情報に基づきモータを回転駆動制御可能かつスライド駆動機構を介してモータの回転運動をスライドの昇降運動に変換しつつ設定領域内でプレス成形可能に形成されたプレス機械に関する。
【背景技術】
【0002】
サーボモータを用いたプレス機械では、各種スライドモーションを容易に設定(選択)変更することができる(例えば、特許文献1)。スライドを一時停止、低速下降さらには昇降反転等もできるから、プレス成形態様に対する適応性を拡大できかつ高品質製品を生産できる。
【0003】
かかるプレス機械は、モータ回転制御部が、予め設定(乃至選択)されたモーション情報(モーション指令信号)にしたがってモータを回転制御する。スライド駆動機構部は、モータ回転により発生されるモータ回転動力を入力として、スライドを駆動する。スライド駆動機構部としては、クランク機構、リンク機構あるいはねじ機構が知られているが、いずれのスライド駆動機構の場合でも、モーション情報は、工程(時間、角度等)ごとのスライド位置として規定(作成)される。
【0004】
図4はクランク機構の場合で、スライドはモーション(軌跡Rprs…図3では点線で示した。)にしたがってスライド下降(上昇)される。
【0005】
実際プレス運転においては、材料の搬送動作との関係を検出し、材料と金型との干渉が発生するか否かを予測判別している。下降中のスライドの位置が、例えば図3(A)に示す設定ミス検出位置P2に到達した時点で、材料が正常に搬送済みであるか否かを検出する。搬送未了乃至不完全な場合、これを放置すると、スライドが最下位置になった場合に金型損傷を生じる虞が強い。
【0006】
そこで、設定ミス検出位置P2でミス検出された場合には、図3(A)に実線で示した軌跡Rstpに従い強制的に下降させるのが望ましい。つまり、スライドを最下位置(下死点)P0の手前の位置P1に強制停止させて破損防止する。材料がコイル材でありパイロットピンがパイロット孔に嵌入しているか否かを検出するプレス機械の場合も同様に強制停止される。
【0007】
ところで、ミス検出位置を位置P2よりも一段と高い位置(上流側)に改めて設定したとすれば、ミス検出時のスライド強制停止動作時間は長くとれるが、材料搬送動作用時間は短くなる。これとは逆に、ミス検出位置を位置P2よりも一段と低い位置(下流側)に設定すれば、材料搬送動作用時間に余裕ができるので搬送動作上は有利であるが、スライドを強制停止させるために許される動作時間は短縮される。
【0008】
かくして、運用の実際上は、試運転による調整作業において、材料搬送事情と金型保護事情とを比較考量しつつ、慎重かつ正確にミス検出位置が吟味されかつ設定されている。検出位置P2をソフトウエア的に設定する場合よりも、ロータリーカムスイッチを用いて設定する場合の方が面倒で調整時間も掛かる。いずれにしても、一旦設定(決定)されたミス検出位置は、安易に設定変更すべきでないと理解されている。
【0009】
しかしながら、生産速度(スライド速度)が高速に変化した場合、あるいは高速側に設定変更された場合には、折角設定したミス検出位置が不適化する。つまり、生産速度が一定の下に、固定化されたミス検出位置においてミス検出しかつ図3(A)に示す固定化された停止モーション(軌跡Rstp)にしたがって停止させるシステムでは、スライドを安全な位置P1に停止することができない事態が生じる。
【0010】
この速度変化の点に関しては、生産速度つまり時間当たりのストローク数(spm)を検出しかつ当該ストローク数に対応するデータ(すべり角度等)を用いて干渉検出角度を修正するワーク干渉防止装置が提案(特許文献2)されている。つまり、修正した干渉検出角度(ミス検出位置)において材料送りが完了していない場合は、判断手段が干渉が発生するものと判断する。すると、制御手段がプレスを停止制御を開始する。
【特許文献1】特開2003−205395号公報
【特許文献2】特開平9−295197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、この提案(特許文献2)装置は、高速化要求に対して搬送速度の方は追従容易だがスライド速度の方が追従困難である装置(例えば、コイル材の水平搬送方式)に限られる。検出したspmの大小により干渉検出角度を小さく設定変更(修正)しても、搬送装置側に無理な負担(不利)を掛けないからである。なお、修正された干渉検出時点からプレス停止制御を開始させるというものの、急減速ができないプレスであるから、安全な位置に確実に停止させられるという技術的根拠は見当たらない。
【0012】
すなわち、生産速度の設定が自由なプレス機械でかつ搬送速度の高速化には限度があり、あるいは搬送速度を一段の高速側に設定変更することが機械的イナーシャ等との関係から実際上は不可能である場合のように、搬送装置との密接な関係が深いプレス機械では、導入しえない。
【0013】
本発明の目的は、搬送装置側に不利を与えずにかつミス検出された場合にスライドを設定停止位置に確実に強制停止させることができるプレス機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ワーク搬送装置側にとって設定変更困難あるいは高速化追従不可能となってしまう不利を及ぼすことなく、ミス検出位置の設定変更を許しかつプレス側の対処のみによりスライドを安全位置に確実に強制停止可能に形成されたものである。
【0015】
すなわち、請求項1の発明に係るプレス機械は、モーション情報に基づきモータを回転駆動制御可能かつスライド駆動機構を介してモータの回転運動をスライドの昇降運動に変換しつつ設定領域内でプレス成形可能に形成されたプレス機械において、設定ミス検出位置よりも上方側の減速開始位置を設定可能でかつ前記モーション情報に基づく速度で下降中のスライドの位置が設定減速開始位置に到達した場合に減速制御を開始可能に形成し、設定ミス検出位置においてミス検出された場合は強制停止制御によりスライドを設定停止位置に強制停止可能で、ミス検出されなかった場合には増速制御により減速された速度を前記モーション情報に基づく元の下降速度に戻し可能に形成されている。
【0016】
請求項2の発明に係るプレス機械は、モーション情報に基づきモータを回転駆動制御可能かつスライド駆動機構を介してモータの回転運動をスライドの昇降運動に変換しつつ設定領域内でプレス成形可能に形成されたプレス機械において、スライドを確実に強制停止させるものとして決めた強制停止位置を設定する停止位置設定手段と、ミス検出する位置を設定するミス検出位置設定手段と、設定ミス検出位置よりも上方側の減速開始位置を設定する減速開始位置設定手段と、前記モーション情報に基づく速度で下降中のスライドの位置が設定減速開始位置に到達した場合に減速制御を開始する減速制御手段と、設定ミス検出位置においてミス検出された場合に強制停止制御を開始してスライドを設定停止位置に強制停止させる強制停止制御手段と、設定ミス検出位置においてミス検出がされなかった場合に増速制御して減速された速度を前記モーション情報に基づく元の下降速度に戻す増速制御手段と、を設けた構成である。
【0017】
また、請求項3の発明は、減速率算出手段に設定ミス検出位置と設定停止位置とを利用して減速率を算出させ、強制停止制御手段が算出減速率で強制停止制御を実行することができる。さらに、請求項4の発明は、減速制御手段が算出減速率で減速制御する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、搬送装置側に不利(無理)を与えずかつミス検出された場合にスライドを設定停止位置に確実に強制停止させることができるプレス機械を提供することができる。しかも、ミス検出位置を変えても確実なミス検出を行えかつミス検出時前に先行して減速制御可能であるから安全で取扱い容易である。
【0019】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の場合と同様な効果を奏することができ、さらに3つの入力手段の操作だけでよいから、一段と取扱い容易でかつ適応性が広い。
【0020】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明の場合と同様な効果を奏することができることに加え、算出した減速率でスライド強制停止制御を行なうので、安定した強制停止制御とショックレス状態でプレス停止できる。
【0021】
さらに、請求項4の発明によれば、請求項3の発明の場合と同様な効果を奏することができることに加え、強制停止制御の場合と同じ算出減速率でかつ先行した位置から減速させるので、一段と円滑かつ確実にスライドを強制停止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
本プレス機械1は、図1〜図3に示す如く、停止位置設定手段(25)とミス検出位置設定手段(25)と減速開始位置設定手段(25)と減速制御手段(21,22,23)と強制停止制御手段(21,22,23)と増速制御手段(21,22,23)とを設け、モーション情報に基づく速度(モーション…軌跡Rprs)で下降中のスライド6の現在位置Pが設定減速開始位置P3に到達した場合に減速制御を開始可能で、設定ミス検出位置P2でミス検出された場合は強制停止制御によりスライド6を設定停止位置P1に強制停止可能で、ミス検出されなかった場合には増速制御により減速された速度をモーション情報に基づく元の下降速度に戻し可能に形成されている。
【0024】
確認的に、プレス機械1は、モーション情報に基づきモータを回転駆動制御可能かつスライド駆動機構(クランク機構2)を介してモータ7の回転運動をスライド6の昇降運動に変換しつつ設定領域内でプレス成形可能に形成されている。
【0025】
図1において、スライド駆動機構は、クランク軸3(クランク部4)を含むクランク機構2から構成されている。このクランク軸3は、軸受に回転自在に支持されかつ直接連結されたAC(交流)サーボモータ7の回転制御により可逆回転(正回転,逆回転)駆動制御可能である。サーボモータ7はDC(直流)サーボモータやリアクタンスモータとしてもよい。
【0026】
なお、クランク軸3とモータ7とは、ギヤ(減速機)を介して間接的に連結させてもよい。ギヤ(減速機)を介せば、一段と高い加圧力を得ることができる。また、スライド駆動機構は、リンク機構やボールねじ機構から形成しても実施することができる。
【0027】
スライド6は、フレーム本体に上下方向に摺動自在に装着され、バランス装置に係合されている。クランク軸3を回転駆動すれば、コネクティングロッド5を介してスライド6を昇降駆動することができる。金型はスライド6側の上型とボルスタ(図示省略)側の下型とからなる。
【0028】
ACサーボモータ7に連結されたエンコーダ8は、原理的には多数の光学的スリットと光学式検出器とを有し、モータ7(クランク軸3)の回転角度(クランク角度)θを出力するが、この実施形態では、回転角度θ(パルス信号)をスライド6の上下方向位置(パルス信号)に変換して出力する信号変換器(図示省略)を含むものとされている。
【0029】
図1に示すプレス制御盤20は、CPU21,不揮発性のメモリ(ROMやHDD等)22,電源断でもデータを記憶保持可能なメモリ(フラッシュRAM等)23,タッチパネル24(操作部25および表示部26)およびインターフェース27・28を含み、メモリ22に格納された実際プレス運転プログラムによりモータ回転制御部30にモーション指令信号Smtnを生成出力してサーボモータ7を回転制御し、スライド6を昇降運動させることができる。なお、図1ではワーク搬送装置等に関する事項は記載省略している。
【0030】
スライド6のモーション軌跡(モーション情報)は、経過時間t(あるいは角度θ)とスライド位置Pとを対応させたデータであり、操作部25を用いて設定できる。設定されたモーション情報は、不揮発性メモリ22内のモーション情報エリア22mtnに後で選択利用できるように記憶される。実際プレス運転に先立ち選択されたモーション情報は、記憶保持可能なメモリ23に展開される。
【0031】
ミス検出器9は、プレス本体のコラム近辺に取り付けられ、材料搬送装置(図示省略)により搬送された材料を検出する。この実施の形態では、スライド6がミス検出位置P2に到達(図2のST16)するまでに、材料検出ができれば搬送が正常で、検出できない場合は搬送ミスとする。
【0032】
実際プレス運転に際して、操作部25を用いて希望のモーション情報を選択すると、位置パルスの払出し方式構造のモーション指令部(21,22,23)は、格納された実際プレス運転プログラム(モーション指令信号生成出力制御プログラム)に従い図1に示すモーション指令信号Smtnをモータ回転制御部30に出力する。例えば、モータ回転速度が120RPMで、エンコーダ8から1回転(360度)当りに出力されるパルス数が100万パルスで、払出しサイクルタイムが5mSである場合は、1サイクル(5mS)毎に出力されるパルス数は、10000パルス[=(1000000×120)/(60×0.005)]となる。
【0033】
なお、急激なトルク変化を防止する策として、起動直後に加速区間(出力パルス数を漸次増加)を、停止直前に減速区間(出力パルス数を漸次減少)を設けることが好ましい。
【0034】
このモーション指令信号Smtnを受けたモータ回転制御部30では、位置比較器31が目標値であるモーション指令信号Smtnとエンコーダ8で検出された実際のスライド位置信号(フィードバック信号f)とを比較して位置偏差信号を生成出力する。
【0035】
位置速度制御部(位置制御部)32は、入力された位置偏差信号を累積し、それに位置ループゲインを乗じ、速度信号を生成出力する。速度比較器(図示省略)は速度信号と速度検出器(エンコーダ8)からの速度信号(この場合は信号fの速度成分)とを比較して速度偏差信号を生成出力する。速度制御部は、入力された速度偏差信号に速度ループゲインを乗じ電流指令信号を電流制御部(アンプ33)に生成出力する。この電流指令信号は、実質的にはトルク信号である。
【0036】
アンプ33は、各相目標電流信号を生成しかつ電流偏差信号を生成出力する。引続き、PWM制御、パルス幅変調により各相の電流偏差信号からPWM信号が生成される。最終的には、各PWM信号でスイッチング(ON/OFF)制御され、各相モータ駆動電流U,V,Wを出力することができる。かくして、サーボモータ7を回転駆動制御することができる。
【0037】
このモータ回転制御部30は、モーション指令部(21,22,23)から入力されるモーション指令信号Smtnのみならず、減速制御指令信号Srd、増速制御指令信号Sicおよび強制停止制御指令信号Sstpが切換え入力された場合にも、当該各制御動作を実行することができる。
【0038】
さて、停止位置設定手段は、操作部25のキー等から形成され、スライド6を確実に強制停止させるものとして決めた強制停止位置(図3のP1)を設定する手段である。設定停止位置P1は、メモリ23のエリアP1に記憶保持される。停止位置P1は、金型破損を防止するための位置であるから、最下位置(下死点)P0の直前とされる場合が多い。
【0039】
同様に、ミス検出位置設定手段は、操作部25のキー等から形成され、ミス検出する位置(図3のP2)を設定する手段である。設定ミス検出位置P2は、メモリ23のエリアP2に記憶保持される。
【0040】
一般的に、ミス検出位置P2は、搬送装置側の搬送速度追従性とプレス機械1側の生産性確保乃至非常時のスライド確実強制停止の観点から、慎重に決められているから頻繁に設定変更されるものではない。
【0041】
しかし、この発明(実施の形態)では、サーボプレス(1)の特性から、強制停止制御用の減速率を一律(一定)とするのでなく、2つの位置(P1、P2)関係から算出可能に形成しかつ算出された減速率で強制停止制御する。つまり、スライドを確実に強制停止できる減速率を採用している。かくして、設定ミス検出位置P2も、従来例の場合に比べて、比較的に自由に設定することができるわけである。
【0042】
さらに、この実施の態様では、一段と余裕ある減速率で強制停止制御可能とするため、さらには一段の生産速度の高速化や装置大型化に備えて、減速率を他の2つの位置(P1、P3)関係から算出可能に形成してある。したがって、図3(B)に示すように、減速制御時の減速率(軌跡Rrd)と強制停止制御時の減速率(軌跡Rstp)とを同一とすることができる。このようにすれば、ミス検出された場合にミス検出位置P2において減速率を切換えなくてもよくなる。円滑な制御引継ぎができる。
【0043】
減速開始位置設定手段は、操作部25のキー等から形成され、設定ミス検出位置P2よりも上方側の減速開始位置(図3のP3)を設定する手段である。設定減速開始位置P3は、メモリ23のエリアP3に記憶保持される。但し、生産速度によっては、減速開始位置P3は固定値として設定しておくこともできる。
【0044】
なお、この減速開始位置設定手段は、ミス検出位置設定手段で設定されたミス検出位置P2よりも予め決めた分だけ上方側に先行させた位置を自動的に設定可能に形成してもよい。このようにすれば、位置設定手段を2つにすることができる。
【0045】
減速制御手段は、減速制御プログラムを格納させたメモリ22(エリアRrd)とそのプログラムを実行するCPU21,メモリ23から形成されている。第1の判断手段(22、21,23)によってモーション情報に基づく速度で下降中のスライド6の位置が、図3(A)に示す設定減速開始位置P3に到達したと判断された場合(図2のST14でYES)に、図3(B)示す現在速度V2からV1に向けて減速制御を開始する(ST15)。減速中の速度軌跡は、図3(B)の軌跡Rrdである。
【0046】
ミス検出前に減速制御を先行させる理由は、強制停止制御時で採り得る減速率の範囲に余裕を持たせるためである。位置P2時の速度V1と位置P0の速度V0との差分から減速率を計算するからである。この意味において、上記の通り位置P3のV2との関係で減速率を計算させれば、一段と余裕ある安定(ショックレス)した強制停止制御を行える。
【0047】
強制停止制御手段(22、21,23…減速制御手段の場合と同様である。以下、同様。)は、第2の判断手段(22、21,23)によって設定ミス検出位置P2においてミス検出されたと判断された場合(ST16でYES、ST17でYES)に、強制停止制御を開始してスライド6を設定停止位置P1に強制停止させる。強制停止制御中の速度軌跡は、図3(B)の軌跡Rstpである。強制停止制御プログラムはメモリ22(エリアRstp)に格納されている。
【0048】
戻す増速制御手段(22、21,23)は、設定ミス検出位置(ST16でYES)においてミス検出がされなかった場合(ST17でNO)に、減速された速度をモーション情報に基づく元の下降速度V2に到達するめで増速制御する(ST20、ST21でYES)。戻し増速制御プログラムは、メモリ22(エリアRin)に格納されている。増速軌跡は図3(B)に示すRicである。
【0049】
この戻し増速制御工程があるので、先行した減速制御工程を設けても、生産性に大きな悪影響を及ぼすことがない。プレス速度の選択切換自由性を有効活用していると理解される。この意味において、増速度は可能な限りにおいて高速化するのが好ましい。
【0050】
減速率算出手段(22、21,23)は、設定ミス検出位置P2(またはP3)時の速度V1(またはV2)と設定停止位置P1時の速度(V0=0)とを利用して、スライド6を設定停止位置P1に確実に強制停止させるために必要な減速率を算出(ST13)する。算出制御プログラムはメモリ22(エリアCal)に格納されている。
【0051】
強制停止制御手段(22、21,23)は、算出された減速率で強制停止制御する。この際の速度軌跡は、上記の図3(B)の軌跡Rstpである。この実施の形態では、減速制御手段(22、21,23)による減速制御も算出された減速率で行なわれる。
【0052】
かかる構成の実施の形態では、実際プレス運転に際して、操作部25を用いて希望のモーション情報を選択すると、モーション指令部(21,22,23)がモーション指令信号生成出力制御プログラムに従い図1に示すモーション指令信号Smtnをモータ回転制御部30に出力する。これにより、スライド6は図3(A)に示すモーション(軌跡Rprs)で下降する。
【0053】
すると、減速率算出手段(22、21,23)が、メモリ23から読み込んだ設定停止位置P1、設定ミス検出位置P2および設定減速開始位置P3の2つ(予めP3・P1またはP2・P1を指定しておく。)を用いて、減速率を算出する(図のST10〜ST13)。
【0054】
スライド6が設定減速開始位置P3に到達する(ST14でYES)と、減速制御手段(22、21,23)が先行して減速制御を実行(ST15)する。図3(B)の軌跡Rrdで減速する。
【0055】
スライド6が設定ミス検出位置P2に到達する(ST16でYES)と、ミス検出制御手段(22、21,23)がミス検出器9の検出信号を監視してミス検出(ST17でYES)する。
【0056】
すると、強制停止制御手段(22、21,23)が、算出減速率で強制停止制御を開始する。図3(B)の軌跡Rstp(=Rrd)で減速する。設定停止位置P1に到達する(ST19でYES)と強制停止制御は終了され、スライド6はその位置P1にロックされる。金型保護ができる。
【0057】
ミス検出されない場合(ST17でNO)は、戻す増速制御手段(22、21,23)が、増速制御する(ST20)。軌跡Ricで増速される。元の下降速度に到達した場合(ST21でYES)は、選択モーション情報に基づく運転に戻る。
【0058】
しかして、この実施の形態によれば、停止位置設定手段(25)とミス検出位置設定手段(25)と減速開始位置設定手段(25)と減速制御手段(21,22,23)と強制停止制御手段(21,22,23)と増速制御手段(21,22,23)とを設け、モーション情報に基づく速度(軌跡Rprs)で下降中のスライド6が設定減速開始位置P3に到達した場合に減速制御を先行開始させ、設定ミス検出位置P2でミス検出された場合は強制停止制御により設定停止位置P1に強制停止させ、ミス検出されなかった場合には増速制御により元の下降速度に戻すことができるように形成されているので、搬送装置側に不利(無理)を与えずかつミス検出された場合にスライドを設定停止位置に確実に強制停止させることができる。しかも、ミス検出位置を変えても確実なミス検出を行えかつミス検出時前に先行して減速制御可能であるから安全で取扱い容易である。
【0059】
また、3つの入力手段(25)の操作で3つの位置P3、P2、P1を設定するだけでよいから、一段と取扱い容易でかつ適応性が広い。
【0060】
減速率算出手段に設定ミス検出位置P2と設定停止位置P1とを利用して減速率を算出させ、強制停止制御手段が算出減速率で強制停止制御を実行するので、安定した強制停止制御と確実なプレス停止を行なえる。
【0061】
また、減速率算出手段を、切換により設定減速開始位置P3と設定停止位置P1とを利用して減速率を算出させ、減速制御手段および強制停止制御手段が算出減速率でそれぞれに制御するように形成されているので、一段と安定した制御の下にショックレス状態でプレス停止できる。さらに、適応性が広い。
【0062】
さらに、減速制御手段が算出減速率で減速制御する。つまり、強制停止制御の場合と同じ算出減速率でかつ先行した位置から減速させるので、一段と円滑かつ確実にスライドを強制停止できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、搬送装置側に不利を与えずにかつ金型保護を確実とする必要がある、プレス機械に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態を説明するためのブロック図である。
【図2】同じく、作用動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】同じく、作用動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】従来例とその問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
【0065】
1 プレス機械
2 クランク機構
6 スライド
7 サーボモータ
9 ミス検出器
20 プレス制御盤
21 CPU(減速制御手段、強制停止制御手段、増速制御手段)
22 不揮発性メモリ(減速制御手段、強制停止制御手段、増速制御手段)
23 記憶保持可能なメモリ(減速制御手段、強制停止制御手段、増速制御手段)
25 操作部(停止位置設定手段、ミス検出位置設定手段、減速開始位置設定手段)
26 表示部
30 モータ回転制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーション情報に基づきモータを回転駆動制御可能かつスライド駆動機構を介してモータの回転運動をスライドの昇降運動に変換しつつ設定領域内でプレス成形可能に形成されたプレス機械において、
設定ミス検出位置よりも上方側の減速開始位置を設定可能でかつ前記モーション情報に基づく速度で下降中のスライドの位置が設定減速開始位置に到達した場合に減速制御を開始可能に形成し、
設定ミス検出位置においてミス検出された場合は強制停止制御によりスライドを設定停止位置に強制停止可能で、ミス検出されなかった場合には増速制御により減速された速度を前記モーション情報に基づく元の下降速度に戻し可能に形成された、プレス機械。
【請求項2】
モーション情報に基づきモータを回転駆動制御可能かつスライド駆動機構を介してモータの回転運動をスライドの昇降運動に変換しつつ設定領域内でプレス成形可能に形成されたプレス機械において、
スライドを確実に強制停止させるものとして決めた停止位置を設定する停止位置設定手段と、
ミス検出する位置を設定するミス検出位置設定手段と、
設定ミス検出位置よりも上方側の減速開始位置を設定する減速開始位置設定手段と、
前記モーション情報に基づく速度で下降中のスライドの位置が設定減速開始位置に到達した場合に減速制御を開始する減速制御手段と、
設定ミス検出位置においてミス検出された場合に強制停止制御を開始してスライドを設定停止位置に強制停止させる強制停止制御手段と、
設定ミス検出位置においてミス検出がされなかった場合に増速制御して減速された速度を前記モーション情報に基づく元の下降速度に戻す増速制御手段と、
を設けたプレス機械。
【請求項3】
設定ミス検出位置と設定停止位置とを利用してスライドを設定停止位置に確実に強制停止させるために必要な減速率を算出する減速率算出手段を設け、強制停止制御手段が算出された減速率で強制停止制御するものとされている、請求項2記載のプレス機械。
【請求項4】
前記減速制御手段が、算出された減速率で減速制御する請求項3記載のプレス機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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