説明

プレス機械

【課題】 簡素な構成でありながら、ラムを左右傾斜させた場合でもラムを上下方向に直進させることができ、ラムを昇降させるためのボールねじ機構の進退部品が回転部品に対して供回りするのを防ぐことができるプレス機械を提供する。
【解決手段】 プレス機械は、本体フレーム1に対し左右両端で昇降ガイド機構7Aを介して昇降可能に支持されたラム6と、ラム6の左右両端部を個別に昇降させる左右一対のボールねじ機構11を備える。昇降ガイド機構7Aは、ラム6の左右傾斜を許容する。ボールねじ機構11の進退部品であるねじ軸12とラム6とを、ねじ軸12の軸心回りの相対回転を阻止した状態、かつラム6の左右傾斜を許容した状態で連結する回転阻止・傾斜許容連結機構19を設ける。本体フレーム1とラム6との間に、ラム6の左右方向の移動を規制する直進ガイド機構48を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、左右一対のボールねじ機構により、ラムの左右両側部をそれぞれ個別に昇降させるプレスブレーキ等のプレス機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にプレスブレーキは、下端で上型を支持するラムが昇降自在に設けられ、このラムの左右両側部を左右一対の昇降駆動機構で昇降駆動させることで、上型とこの上型の下方に位置固定で設けた下型との協働で板材に曲げ加工を行う(例えば特許文献1)。曲げ加工の種類等によりラムに作用する荷重が左右でアンバランスになることがあり、この荷重のアンバランスを補正するために、ラムを左右傾斜させられるようになっているものが多い。しかし、ラムの昇降を案内する昇降ガイド機構は、ラムが左右傾斜していない中立姿勢の状態を基準にして設けられているため、ラムを左右傾斜させた場合、昇降時にラムが傾斜に沿って斜めに移動する可能性がある。よって、ラムが左右傾斜している場合でも、ラムを上下方向に直進させるように案内する手段を設ける必要がある。また、昇降駆動機構が、回転駆動源の回転動作をボールねじ機構で上下方向の進退動作に変換する構成である場合、ボールねじ機構のねじ軸とナットのうち進退動作を行う進退部品が、回転動作を行う回転部品と共に回転するのを防ぐ手段を設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−119519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプレスブレーキにも、ラムを直進させるように案内する手段を設けたものがあるが、その構造が複雑で、部品点数が多かった。また、ボールねじ機構の進退部品の供回りを防止する手段を設けたものもあるが、供回りを確実に防ぐことの信頼性が乏しかった。さらに、ラムの位置調整をした場合、上記供回りを防止する手段を調整する必要があるが、その調整が難しかった。
【0005】
この発明の目的は、簡素な構成でありながら、ラムを左右傾斜させた場合でもラムを上下方向に直進させることができ、ラムを昇降させるためのボールねじ機構の進退部品が回転部品に対して供回りするのを防ぐことができるプレス機械を提供することである。
この発明の他の目的は、ラムを直進させるための直進ガイド機構の部品点数を少なくすることである。
この発明のさらに他の目的は、ラムを左右傾斜させてもボールねじ機構の進退部品とラムとの連結を良好な状態に保つことができ、ラムの位置調整をしたときに行う調整が容易で、ボールねじ機構の進退部品の供回りを確実に防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のプレス機械は、左右方向に延びた下型が設置された本体フレームと、この本体フレームに対して左右両端で昇降ガイド機構を介して昇降可能に支持されて下端に前記下型に対向する左右方向に延びた上型が取付けられたラムと、前記本体フレームに設けられた左右一対の昇降用回転駆動源と、各昇降用回転駆動源の回転動作を上下方向の進退運動に変換して前記ラムの左右両端部を個別に昇降させる左右一対のボールねじ機構とを備え、前記昇降ガイド機構は、前記ラムの左右傾斜を許容する。このプレス機械において、前記各ボールねじ機構のねじ軸とナットのうち進退動作を行う進退部品と前記本体フレームまたはラムとを、前記進退部品の軸心回りの相対回転を阻止した状態、かつ前記ラムの左右傾斜を許容した状態で連結する回転阻止・傾斜許容連結機構を設け、前記本体フレームと前記ラムとの間に、前記ラムの左右方向の移動を規制する直進ガイド機構を設けた。
【0007】
この構成によると、左右一対の昇降用回転駆動源を駆動すると、それぞれの回転動作がボールねじ機構により上下方向の進退操作に変換されて、ラムの左右両端部を個別に昇降させる。このとき、ラムは昇降ガイド機構により案内される。昇降ガイド機構はラムの左右傾斜を許容するため、左右のボールねじ機構の動作位置を異ならせることで、ラムを左右傾斜させることができる。直進ガイド機構によりラムの左右方向の移動を規制しているため、ラムを左右傾斜させた場合でも、ラムが真っ直ぐ上下に移動させられる。回転阻止・傾斜許容連結機構により、ボールねじ機構の進退部品と本体フレームまたはラムとを、進退部品の軸心回りの相対回転を阻止した状態で連結しているため、ボールねじ機構の進退部品が回転部品に対して供回りするのを防ぐことができる。また、回転阻止・傾斜許容連結機構により、ボールねじ機構の進退部品とラムとを、ラムの左右傾斜を許容した状態で連結しているため、ラムを左右傾斜させても、ボールねじ機構の進退動作をラムに良好に伝達できる。
【0008】
この発明において、前記昇降ガイド機構は、前記ラムの左右両端部にそれぞれ対向させて前記本体フレームに固定して設けられた左右一対の昇降ガイドと、前記ラムの左右両端部にそれぞれ設けられ、前記昇降ガイドにより前後方向に規制されてラムと共に昇降自在な昇降部材とを有し、前記直進ガイド機構は、前記左右一対の昇降ガイドと、前記ラムの左右両端部にそれぞれ設けられて、各昇降ガイドにより左右方向に規制されてそれぞれ移動する左右一対の移動体とを有するのが良い。
この構成であると、昇降ガイド機構の昇降ガイドを直進ガイド機構の一部として利用するため、直進ガイド機構の部品点数を減らすことができる。
【0009】
この発明において、前記回転阻止・傾斜許容連結機構は、前記ボールねじ機構の前記進退部品に前後および左右方向に位置変更可能に取付けられ、中心軸が前後方向に沿った円筒面または球面の一部からなる案内面を有する傾斜案内部材と、前記ラムに形成され前記案内面に摺動自在に接する被案内面を含む被案内面形成部と、前記傾斜案内部材の回転を規制する規制部材とを有していても良い。
【0010】
ボールねじ機構の進退部品に取付けられた傾斜案内部材とラムの被案内面形成部とが、円筒面または球面の一部からなる案内面と被案内面とで互いに接しているため、ラムの左右傾斜を変更しても傾斜案内部材とラムが互いに接触した状態のままに保たれる。このため、ボールねじ機構の進退部品の進退動作がラムに良好に伝達される。本体フレームに対するラムの取付位置や姿勢を調整すると、ボールねじ機構の進退部品と傾斜案内部材の位置関係が変わるが、傾斜案内部材はボールねじ機構の進退部品に前後および左右方向に位置変更可能に取付けられているため、ラムの取付位置や姿勢を容易に調整することができる。また、傾斜案内部材は規制部材により回転が規制されているため、進退部品の供回りを確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明のプレス機械は、左右方向に延びた下型が設置された本体フレームと、この本体フレームに対して左右両端で昇降ガイド機構を介して昇降可能に支持されて下端に前記下型に対向する左右方向に延びた上型が取付けられたラムと、前記本体フレームに設けられた左右一対の昇降用回転駆動源と、各昇降用回転駆動源の回転動作を上下方向の進退運動に変換して前記ラムの左右両端部を個別に昇降させる左右一対のボールねじ機構とを備え、前記昇降ガイド機構は、前記ラムの左右傾斜を許容するものにおいて、前記各ボールねじ機構のねじ軸とナットのうち進退動作を行う進退部品と前記本体フレームまたはラムとを、前記進退部品の軸心回りの相対回転を阻止した状態、かつ前記ラムの左右傾斜を許容した状態で連結する回転阻止・傾斜許容連結機構を設け、前記本体フレームと前記ラムとの間に、前記ラムの左右方向の移動を規制する直進ガイド機構を設けたため、簡素な構成でありながら、ラムを左右傾斜させた場合でもラムを上下方向に直進させることができ、ラムを昇降させるためのボールねじ機構の進退部品が回転部品に対して供回りするのを防ぐことができる。
【0012】
前記昇降ガイド機構は、前記ラムの左右両端部にそれぞれ対向させて前記本体フレームに固定して設けられた左右一対の昇降ガイドと、前記ラムの左右両端部にそれぞれ設けられ、前記昇降ガイドにより前後方向に規制されてラムと共に昇降自在な昇降部材とを有し、前記直進ガイド機構は、前記左右一対の昇降ガイドと、前記ラムの左右両端部にそれぞれ設けられて、各昇降ガイドにより左右方向に規制されてそれぞれ移動する左右一対の移動体とを有する場合は、直進ガイド機構の部品点数を少なくできる。
【0013】
前記回転阻止・傾斜許容連結機構は、前記ボールねじ機構の前記進退部品に前後および左右方向に位置変更可能に取付けられ、中心軸が前後方向に沿った円筒面または球面の一部からなる案内面を有する傾斜案内部材と、前記ラムに形成され前記案内面に摺動自在に接する被案内面を含む被案内面形成部と、前記傾斜案内部材の傾斜案内部材の回転を規制する規制部材とを有する場合は、ラムを左右傾斜させてもボールねじ機構の進退部品とラムとの連結を良好な状態に保つことができ、ラムの位置調整をしたときに行う調整が容易で、ボールねじ機構の進退部品の供回りを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態にかかるプレス機械の正面図である。
【図2】同プレス機械の一部破断側面図である。
【図3】(A)は同プレス機械のボールねじ機構の進退部品とラムとの連結部の正面図、(B)はその一部の断面図、(C)は同連結部の破断側面図である。
【図4】(A)は同プレス機械の昇降ガイド機構の上昇降ガイド部の側面図、(B)はその平面図、(C)はその背面図である。
【図5】(A)は同昇降ガイド機構の下昇降ガイド部の側面図、(B)はその平面図、(C)はその背面図である。
【図6】(A)は異なる実施形態にかかるプレス機械の正面図、(B)はその一部の平面図である。
【図7】(A)は参考例としてのプレス機械のボールねじ機構の進退部品とラムとの連結部の正面図、(B)はその破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1はこの実施形態にかかるプレス機械の正面図、図2はその一部破断側面図である。このプレス機械はプレスブレーキであって、本体フレーム1の前面側に、固定側の金型である下型2を支持するテーブル3と、可動側の金型である上型4を支持するラム6とが設けられている。テーブル3は、本体フレーム1に対し位置固定である。よって、下型2は、テーブル3を介して本体フレーム1に設置されている。ラム6は、本体フレーム1に対し左右両側部で昇降ガイド機構7により昇降可能に支持され、左右一対の昇降駆動機構8により左右両側部がそれぞれ個別に昇降駆動される。本体フレーム1は、左右一対の側板1aと、これら左右の側板1aの上部同士を連結する連結フレーム部1bとで構成され、連結フレーム部1bに前記左右の昇降駆動機構8が設けられている。
【0016】
上下の金型2,4はいずれも左右方向に長く、下型2は成形用の凹部2a(図2)を有し、上型4は前記凹部2aに進入する先端部分4a(図2)を有する。図例では、上型4は、左右方向に並ぶ複数の上型ホルダ5を介してラム6に取付けられている。左右の昇降駆動機構8の駆動でラム6を下降させ、下型2の凹部2aに上型4の先端部分4aを進入させることで、下型2の上に載置された板材ワークWをV字状に曲げ加工する。
【0017】
図2に示すように、昇降駆動機構8は、正逆両方向に選択的に回転可能な回転駆動源10と、この回転駆動源10により駆動されるボールねじ機構11とを有する。回転駆動源10は、例えばサーボモータである。ボールねじ機構11は、上下方向に沿うねじ軸12と、このねじ軸12に、内蔵のボール(図示せず)を介して螺合するナット13とでなる。ナット13は、連結フレーム部1bに固定の軸受ハウジング14に、複数の軸受15により回転自在に支持されており、ベルト伝動装置16を介して回転駆動源10の駆動力で回転させられる。ナット13が回転することにより、ねじ軸12が上下に進退する。すなわち、この例では、ねじ軸12がボールねじ機構11の進退部品であり、ナット13が回転部品である。ねじ軸12を回転部品、かつナット13を進退部品としても良い。
【0018】
図3に、ボールねじ機構11のねじ軸12とラム6との連結部を示す。この連結部は、ボールねじ機構11の進退部品であるねじ軸12とラム6とを、ねじ軸12の軸心回りの相対回転を阻止した状態、かつラム6の左右傾斜を許容した状態で連結する回転阻止・傾斜許容連結機構19を構成する。
【0019】
ねじ軸12の下端には、ブロック状の下端部材20が一体に取付けられている。下端部材20も、ボールねじ機構11の進退部品とみなされる。ラム6の左右両側部の上端には上方に開口する切欠き21が形成され、この切欠き21内に上記下端部材20が位置している。切欠き21は形成されてなくてもよい。ラム6の切欠き21の周辺部は、他の部分よりも肉厚の薄い薄肉部22とされている。そして、薄肉部22の下方でねじ軸12の軸心上に位置する箇所に、正面側と背面側とに連通する円形孔23が形成され、この円形孔23に連結ピン24が前後に貫通して設けられている。連結ピン24は、前後両端部の下部に平面状の欠如部24aが形成された円柱形状をしており、前記欠如部24aから上方に抜ける前後一対の貫通孔25を有する。各貫通孔25には連結ボルト26が上向きに挿通され、その連結ボルト26の先端ねじ部26aが下端部材20のねじ孔20aにねじ込まれている。連結ピン24の欠如部24aと連結ボルト26の頭部26bとの間には、座金27と皿ばね28とを介在させてある。これにより、下端部材20とラム6とが、連結ピン24、連結ボルト26等を介して互いに連結される。
【0020】
また、下端部材20の下端には、下面がラム6を案内する案内面30になった傾斜案内部材31が取付けられている。図例の案内面30は、中心軸が前後方向に沿った円筒面の一部からなり、下に凸形状である。案内面30は上に凸形状の円筒面であってもよい。また、案内面30は球面であってもよい。一方、ラム6の切欠き21の底部には、前記案内面30に対応して、中心軸が前後方向に沿った円筒面の一部からなり上に凹形状の被案内面32が形成されている。下端部材20とラム6が連結された状態では、案内面30と被案内面32が互いに摺動自在に接している。傾斜案内部材31と、被案内面32を含むラム6の被案内面形成部6aとで、ラム6の左右傾斜を調整する傾斜調整手段33を構成する。
【0021】
下端部材20への傾斜案内部材31の取付けは、下端部材20の上下貫通孔20bに上から挿通された取付ボルト35の先端ねじ部35aを、傾斜案内部材31のねじ孔31aにねじ込むことで行う。上下貫通孔20bは内径が取付ボルト35の外径よりも大きいルーズ孔であり、上下貫通孔20b内での取付ボルト35の水平方向位置をずらすことにより、下端部材20に対する傾斜案内部材31の前後方向および左右方向の位置を変更することができる。
【0022】
ボールねじ機構11が正しく動作するために、進退部品であるねじ軸12とラム6とが、ねじ軸12の軸心回りに相対回転するのを規制する回転規制手段36が設けられている。この例では、回転規制手段36は、傾斜案内部材31を前後両側から挟んで傾斜案内部材31の回転を規制する板状の規制部材37からなる。規制部材37は、固定ボルト38によりラム6の薄肉部22に固定されている。
【0023】
図1の正面図に示すように、左右の昇降ガイド機構7は、それぞれ上昇降ガイド部7Aと下昇降ガイド部7Bとでなる。図4(A),(B),(C)はそれぞれ右側の上昇降ガイド部7Aの側面図、平面図、および背面図、図5(A),(B),(C)はそれぞれ右側の下昇降ガイド部7Bの側面図、平面図、および背面図である。また、図3(A)には、右側の上昇降ガイド部7Aが主に破線で示されている。
【0024】
上下の昇降ガイド部7A,7Bはいずれも、ラム6の左右両端縁にそれぞれ対向させて本体フレーム1に固定して設けられた上下に長い断面矩形の板状の昇降ガイド40と、ラム6の左右端に設けられ、前記昇降ガイド40を前後両側から挟んだ状態でラム6と共に昇降可能な前後一対の昇降部材41とを有する。この例では、昇降部材41はローラであり、左右方向に沿うローラ支持軸42のローラ支持軸部42aに回転自在に支持されている。ローラ支持軸42は、その嵌合軸部42bが、ラム6の背面にボルト43で固定された支持部材44に回転拘束状態で嵌合している。
【0025】
上昇降ガイド部7Aの前後の昇降部材41を支持する各ローラ支持軸42(1),42(2)、および下昇降ガイド部7Bの後側の昇降部材41を支持するローラ支持軸42(3)は、ローラ支持軸部42aと嵌合軸部42bとが互いに偏心している。つまり、ローラ支持軸部42aの軸心42aaと嵌合軸部42bの軸心42baとがずれている。よって、これらローラ支持軸42については、支持部材44に対する嵌合軸部42bの位相を変えることにより、ローラ支持部42aの前後位置、すなわち昇降部材41の前後位置が変更される。このように昇降部材41の前後位置を調整することで、ラム6の前後傾斜を微調整することができる。なお、下昇降ガイド部7Bの前側の昇降部材41を支持するローラ支持軸42(4)は、ローラ支持軸部42aと嵌合軸部42bとが互いに同心である。
【0026】
さらに、上昇降ガイド部7Aの支持部材44には小支持部材45が取付ボルト46で取付けられ、この小支持部材45に、ローラからなる移動体47が前後方向の軸心回りに回転自在に支持されている。移動体47は、前記昇降ガイド40の左右方向の内側面に接している。ラム6が左右傾斜していない中立姿勢にあるとき、移動体47の軸心O1(図3(A))は、前記傾斜案内部材31の円筒状案内面31の中心O2(図3(A))と同じ高さに設定してある。移動体47と昇降ガイド40とで、ラム6の左右方向の移動を規制してラム6を真っ直ぐ上下方向に移動するように案内する直進ガイド機構48を構成する。
【0027】
前記小支持部材45は、支持部材44の上面に形成された左右方向の溝50に沿って摺動自在で、位置決めボルト51の先端を小支持部材45の昇降ガイド40と反対側の端面に押し当てることで、小支持部材45の左右方向の位置決めをする。位置決めボルト51は、支持部材44に固定の位置決めボルト取付部材52に取付けられている。前記取付ボルト46が挿通される小支持部材45の孔45aはルーズ孔であり、小支持部材45の左右方向の位置の変化に対応できる。
【0028】
このプレス機械は、左右一対の昇降駆動機構8によりラム6の左右両側部をそれぞれ個別に昇降駆動して、ラム6を昇降させる。各昇降駆動機構8は、回転阻止・傾斜許容連結機構19の回転規制手段36により、ボールねじ機構11のねじ軸12とラム6とがねじ軸12の軸心回りに相対回転するのを規制しているため、昇降用回転駆動源10の回転を確実に進退動作に変換して、ラム6を昇降させることができる。
【0029】
昇降ガイド機構7により、上記ラム6の昇降時、左右一対の昇降ガイド40を昇降部材41で前後両側から挟んで、前後位置を規制しながらラム6の昇降を案内する。このとき、直進ガイド機構48の左右の移動体47がそれぞれ昇降ガイド40の左右内側面に沿って転動することにより、ラム6の左右両側部の左右方向の位置ずれを規制する。そのため、ラム6を左右傾斜させた場合でも、ねじ軸12の進退方向である上下方向にラム6を直進させることができる。移動体47の軸心O1と傾斜案内部材31の円筒状案内面30の中心O2との水平距離は短く、かつラム6が左右傾斜していない中立姿勢にあるとき軸心O1と中心O2とが同じ高さに設定してあるため、円筒状案内面30の中心O2に対し移動体47の軸心O1が円運動するとき、移動体47が昇降ガイド40から逃げる方向に動き、移動体47に無理な力がかからない。また、ラム6が傾斜しても、軸心O1の左右方向の変位は極めて小さい。よって、ラム6が傾斜しても、移動体47と昇降ガイド40との相対的位置関係がほとんど変わることがなく、直進性に影響を与えない。なお、ラム6が中立姿勢にあるとき、移動体47の軸心O1と円筒状案内面30の中心O2とが完全に同じ高さでなくても良く、若干であればずれていても良い。
【0030】
ボールねじ機構11の下端部材20に取付けられた傾斜案内部材31とラム6とが、円筒状の案内面30と被案内面32とで互いに接しているため、ラム6の左右傾斜を変更しても傾斜案内部材31とラム6とが互いに接触した状態に保たれる。傾斜案内部材31は取付ボルト35によって下端部材20に前後および左右方向に位置変更可能に取付けられているため、ラム6の位置調整をした場合でも、傾斜案内部材31の左右方向位置を容易に変更することができ、またラム6の前後傾斜を調整した場合にも、傾斜案内部材31の前後方向位置を容易に変更することができる。なお、ラム6の左右傾斜を変更した場合でも、左右のボールねじ機構11のねじ軸12間の距離に比べ傾斜量の比率が小さく、左右の被案内面32間の距離の変化は極めて小さいため、傾斜案内部材31の左右方向位置は変更しなくても良い。
【0031】
このプレス機械は、直進ガイド機構48および回転規制手段36をラム6側にまとめて設けた構成とした。そのため、これらがラム6側と本体フレーム1側とに分散している場合に比べ、構成を簡略にできる。また、昇降ガイド機構7の昇降ガイド40を直進ガイド機構48の一部として利用しているため、直進ガイド機構48の部品点数を減らすことができる。
【0032】
上記実施形態の直進ガイド機構48は、ラム6を上下方向に直進させるために、ラム6の左右両側部の左右方向の位置ずれを規制しているが、ラム6の左右中央部の左右方向の位置ずれを規制するようにしてもよい。例えば図6に示すように、本体フレーム1の左右中央部に上下方向の溝60を有するガイドレール61を固定して設け、ラム6に前記溝60に沿って回転自在なローラ62を設けた構成とすることができる。
【0033】
[参考例]
図7は、本発明の課題を本発明とは別の手法で解決したプレス機械の、昇降駆動機構の進退部品とラムとの連結部を示す。このプレス機械も、本発明の実施形態と同様に、動作変換機構としてボールねじ機構11を備えた左右一対の昇降駆動機構(図示せず)により、ラム6の左右両側部がそれぞれ個別に昇降駆動する。また、昇降ガイド機構7は、左右それぞれ上昇降ガイド部7Aと下昇降ガイド部7B(図示せず)とでなる。図7には、右側の上昇降ガイド部7Aだけが図示されている。各昇降ガイド部7A,7Bは、前記発明の実施形態と同様に、本体フレーム1に固定して設けられた昇降ガイド40と、ラム6に設けられた前後一対の昇降部材41とを有する。
【0034】
このプレス機械が本発明の実施形態と異なる点は、前記回転規制手段36および直進ガイド機構48の両方の機能を持たせた回転規制・直進ガイド機構70を設けたことである。回転規制・直進ガイド機構70は、ラム6の背面側で上下方向に延びるリニアガイド71を本体フレーム1に設置し、このリニアガイド71の可動部71aから前方に延ばした連結用プレート72の先端部を、ボールねじ機構11の進退部品であるねじ軸12の下端部材20の下側に重ね合わせて、下端部材20およびラム6に連結してある。
【0035】
具体的には、本発明の実施形態と同様に、ラム6の円形孔23に連結ピン24を前後に貫通して設け、この連結ピン24の前後一対の貫通孔25に連結ボルト26を上向きに挿通する。そして、連結ボルト26を連結用プレート72のねじ孔72aにねじ込んでいる。下端部材20は、この下端部材20のルーズからなる上下貫通孔20bに上側から挿通したねじ73を、連結用プレート72のねじ孔72bにねじ込むことで、連結プレート72に連結する。このため、下端部材20と連結用プレート72の相対位置変更を容易にできる。連結用プレート72の下端には、前記同様に下面がラム6を案内する案内面30になった傾斜案内部材31が取付けられ、この傾斜案内部材31とラム6の被案内面32とで、ラム6の左右傾斜を調整する傾斜調整手段33を構成する。このプレス機械の場合、本発明の実施形態における規制部材37は設けられていない。なお、本発明の実施形態と同様の構成である箇所については、同じ符号を付して表し、説明を省略する。
【符号の説明】
【0036】
1…本体フレーム
6…ラム
7…昇降ガイド機構
8…昇降駆動機構
10…昇降用回転駆動源
11…ボールねじ機構
12…ねじ軸(進退部品)
13…ナット(回転部品)
19…回転阻止・傾斜許容連結機構
30…案内面
31…傾斜案内部材
32…被案内面
33…傾斜調整手段
36…回転規制手段
40…昇降ガイド
41…昇降部材
47…移動体
48…直進ガイド機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に延びた下型が設置された本体フレームと、この本体フレームに対して左右両端で昇降ガイド機構を介して昇降可能に支持されて下端に前記下型に対向する左右方向に延びた上型が取付けられたラムと、前記本体フレームに設けられた左右一対の昇降用回転駆動源と、各昇降用回転駆動源の回転動作を上下方向の進退運動に変換して前記ラムの左右両端部を個別に昇降させる左右一対のボールねじ機構とを備え、前記昇降ガイド機構は、前記ラムの左右傾斜を許容するプレス機械において、
前記各ボールねじ機構のねじ軸とナットのうち進退動作を行う進退部品と前記本体フレームまたはラムとを、前記進退部品の軸心回りの相対回転を阻止した状態、かつ前記ラムの左右傾斜を許容した状態で連結する回転阻止・傾斜許容連結機構を設け、
前記本体フレームと前記ラムとの間に、前記ラムの左右方向の移動を規制する直進ガイド機構を設けた、
プレス機械。
【請求項2】
前記昇降ガイド機構は、前記ラムの左右両端部にそれぞれ対向させて前記本体フレームに固定して設けられた左右一対の昇降ガイドと、前記ラムの左右両端部にそれぞれ設けられ、前記昇降ガイドにより前後方向に規制されてラムと共に昇降自在な昇降部材とを有し、
前記直進ガイド機構は、前記左右一対の昇降ガイドと、前記ラムの左右両端部にそれぞれ設けられて、各昇降ガイドにより左右方向に規制されてそれぞれ移動する左右一対の移動体とを有する、
請求項1記載のプレス機械。
【請求項3】
前記回転阻止・傾斜許容連結機構は、前記ボールねじ機構の前記進退部品に前後および左右方向に位置変更可能に取付けられ、中心軸が前後方向に沿った円筒面または球面の一部からなる案内面を有する傾斜案内部材と、前記ラムに形成され前記案内面に摺動自在に接する被案内面を含む被案内面形成部と、前記傾斜案内部材の回転を規制する規制部材とを有する請求項1または請求項2記載のプレス機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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