説明

プレス装置

【課題】 被加工物の切断加工や孔開け加工などを、確実且つ精密に行うことができ、操作も容易で効率的なプレス装置を提供する。
【解決手段】 プレス加工される被加工物が載置される一方の金型20aと、金型20aを取り付け可能なテーブル22と、テーブル22が摺動可能に設けられた一対のスライドレール16を有する。スライドレール16上を摺動するテーブル22を挟んで水平方向の両側に設けられ、テーブル22を挟んだそれぞれの側に設けられた各々2本の連結支柱54及びその間の1本のガイド支柱56を備える。片側3本ずつ設けられた支柱54,56により位置決めされて上下方向に摺動可能に跨設された金型固定板60と、金型固定板60に固定される他方の金型20bと、金型固定板60の中央に連結されたエアーシリンダ70のシリンダ軸68とを備え、エアーシリンダ70により金型固定板60が上下動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プレス加工により被加工物に対して、切断や孔開け、曲げ加工などを施すプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、電子機器や玩具などに用いる樹脂製のスイッチボタンなどの小さな部品を、射出成型により形成すると、ゲートと一体に成形体が形成されている。一般に、小さな成形体をゲートから切り離すには、特許文献1に開示されているような専用のハンドプレスを用いたり、ニッパなどの工具を用いたりして切り離されている。その他、被加工物に孔開けや曲げ、余分な箇所の切断などの加工を施す場合には、比較的扱いが容易なハンドプレスなどに加工用の金型を取り付けて、剪断加工を施している。
【特許文献1】特開平8−224741号公報
【特許文献2】特開平11−151596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の技術の場合、ゲートから成形体を切り離すには、ハンドプレスに加工用の金型を取り付けて、下型にゲート付きの成形体を載置し、ハンドプレスのレバーを手動により操作し、ゲートから成形体を切り離していた。しかし、レバーの押し下げが不十分な場合等の不正確な作業により、成形体がゲートから完全に切り離されないことがあった。このとき、成形体を無理に引きちぎると、成形体にバリが発生したり、断面に凸凹が残る問題があった。
【0004】
また、被加工物にプレス加工を施す場合は、ゲートをカットする場合に比べ、比較的強い力がプレスに必要になる。そのため、ハンドプレスでは被加工物をプレスする力が不足し、加工断面にバリが残ったり、加工時の変形により被加工物が無駄になる問題があった。さらに、ハンドプレスによるプレス加工では、高い精度に切断加工を施す場合は、操作する作業者の熟練度によりバラツキが発生しやすく、効率も良くないものであった。
【0005】
一方、エアーシリンダ等の流体圧を利用したプレス装置も多く用いられているが、一般的に装置が複雑化し高価な装置になってしまうという問題があった。また、特許文献2に開示されているような簡単な構成の装置の場合、上型の動きや位置決めにばらつきがあり、精密な駆動ができず、寸法精度が要求される部品の加工には利用できないものであった。
【0006】
この発明は、上記従来技術の問題に鑑みて成されたもので、被加工物の切断加工や孔開け加工などを、確実且つ精密に行うことができ、操作も容易で効率的なプレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、プレス加工される被加工物が載置される一方の金型と、この金型を取り付け可能なテーブルと、前記テーブルが摺動可能に設けられた一対のスライドレールと、前記スライドレール上を摺動する前記テーブルを挟んで水平方向の両側に設けられ、前記テーブルを挟んだそれぞれの側に設けられた各々2本の連結支柱及びその間の1本のガイド支柱からなる各々3本の支柱と、前記片側3本ずつ設けられた支柱により位置決めされて上下方向に摺動可能に跨設された金型固定板と、前記金型固定板に固定される他方の金型と、前記金型固定板中央に連結されたエアーシリンダのシリンダ軸とを備え、前記エアーシリンダにより前記金型固定板が上下動するプレス装置である。
【0008】
また、前記片側2本の連結支柱は、前記金型固定板を貫通して両端が固定され、前記ガイド支柱は下端部が基台に固定され、前記金型固定板の摺動に抗すように配置されたコイルバネが嵌挿されているものである。
【0009】
前記エアーシリンダは、エアーの供給を開始させる起動ボタンに接続され、前記起動ボタンの押し下げにより、動作確認弁や動作を遅延させる遅延装置を介して、前記金型固定板の下降からプレス、上昇までを自動的に一連動作するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明のプレス装置によれば、被加工物に対して孔開け加工や切断、曲げなどを行う場合でも、精密に加工を施すことができる。また、起動ボタン操作によりプレス加工が自動的に行われるため、操作も容易であり、操作する作業者の熟練度に関係なくバラツキも発生しない効率のよいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明のプレス装置の一実施形態について、図1〜図4を基にして説明する。この実施形態のプレス装置10は、樹脂製のスイッチ部品など射出成型した成形体のゲートからの切り離しや、被加工物の孔開けや曲げなどのプレス加工を施す際に使用されるものである。
【0012】
この実施形態のプレス装置10は、図1に示すように、高さ調整可能に4本の脚12が螺設された長方形の基台14の上に、長手方向に平行な一対のスライドレール16が設けられている。スライドレール16は、レール台18を介してそれぞれ基台14に固定されている。このスライドレール16上には、矩形に形成され下型である金型20aを取付可能なテーブル22がレール把持部24を介して摺動可能に載置されている。
【0013】
テーブル22の手前側一側面には、図2等に示すように、取っ手26が設けられ、スライドレール16に平行な一側面には、貫通孔28が設けられたサイドロック部材30が取り付けられている。また、サイドロック部材30近傍の基台14上には、内部に切替弁を備えた押しボタン式の起動ボタン32が設けられている。テーブル22のサイドロック部材30が取り付けられた側面の反対側にある側面には、図2に示すように、押さえ受け部36が設けられている。さらに、押さえ受け部36に当接状態にある押さえ金具38aが基台14に取り付けられ、押さえ受け部36の手前側端部は、前側ストッパ37に当接して位置決めされる。
【0014】
テーブル22には、図1に示すように、テーブル22の後方側面に突き当てボルト44が設けられている。そして、基台14には、テーブル22を載置位置aからスライドレール16の後端部であるプレス位置bまで摺動させた際に、突き当てボルト44と当接する突き当て調整ボルト46が設けられている。
【0015】
また、テーブル22がプレス位置bにあるとき、サイドロック部材30の貫通孔28に嵌合可能な、サイドロックピン48を設けたサイドロックエアーシリンダ50が、基台14に取付金具を介して取り付けられている。さらに、テーブル22の押さえ受け部36に当接可能な押さえ金具38bが、基台14に取り付けられている。また、テーブル22がプレス位置bまで摺動した際、図2に示すように、テーブル22の端部に当接可能なローラ付き後退端リミット弁52が設けられている。
【0016】
さらに、基台14の短手方向両端部のスライドレール16両側近傍には、それぞれの側に設けられた2本の連結支柱54及びその間の1本のガイド支柱56からなる各々3本の支柱が設けられている。この連結支柱54は、各々下端が基台14に固定され、上端には一枚の連結板58が固定されている。連結板58の固定は、その両側に各々2本の連結支柱58が貫通して、先端部に雄ねじが切られナットにより固定されている。そして、ガイド支柱56は、下端部のみ基台14に固定されて立設されている。
【0017】
基台14の両側の4本の連結支柱54には、連結板58の下面と平行に上下摺動可能に、金型固定板60が4隅に挿通されている。金型固定板60の4隅には、ガイド筒61が挿入固定され、このガイド筒61に各連結支柱54が挿通している。また、連結支柱54間のガイド支柱56には、金型固定板60に固定されたガイド筒64が嵌合している。金型固定板60に設けられたガイド筒64は、精密なベアリング62を備え、ガイド支柱56の先端部に、ベアリング62を介してガイド筒64が嵌合し、抵抗無く摺動可能に設けられている。さらに、ベアリング62に一端が当接した圧縮状態のコイルバネ66がガイド支柱56に嵌挿されている。そして、この金型固定板60は、図3に示すように、上型である金型20bが取付可能に形成されている。
【0018】
両側の連結支柱54に跨設された連結板58には、金型固定板60の中央に位置するように、シリンダ軸68を介して連結されたエアーシリンダ70が設けられ、このエアーシリンダ70により金型固定板60が上下摺動可能に設けられている。金型固定板60の一端部には、下死点確認部材72が取り付けられ、被加工物のプレス完了に至るまで降下した状態で、下死点確認部材72が当接して揺動するローラ付き検知片を備えた下死点検出弁74が、基台14に取付金具を介して取り付けられている。
【0019】
プレス位置bにあるテーブル22の、基台14側のスライドレール16の間には、図3に示すように、プレス加工の際にレール変形を防止する一対のテーブル受け金具76がレールに平行に設けられている。また、基台14裏側のちょうどテーブル受け金具76の裏手位置には、一対の基台補強材78が基台14の短手方向に平行に設けられている。
【0020】
連結板58の端部には、図1に示すようにL字取付金具80を介してフィルタレギュレータ88等を含むエア供給部材が取り付けられている。エア供給部材は、加圧エアが接続される配管接続部82、図2、図3に示すようにレバー付きの残圧抜き弁86等を備え、図示しない配管が設けられている。残圧抜き弁86近傍には、下死点検出弁74が位置し、図示しない絞り等を備えた作動遅延装置が取り付けられている。そして、エアーシリンダ70及びサイドロックエアーシリンダ50は、5ポート切替弁90に接続され、5ポート切替弁90は、図示しない着座検知弁や後述するカバー確認弁94を介して、起動ボタン32の切替弁に接続されている。
【0021】
また、図1に示すように、このプレス装置10を構成する連結支柱54やガイド支柱56及び供給調節部82付近を覆うように、カバー92が設けられている。そして、図4に示すように、カバー確認弁94が、カバー92の内側に接触可能な位置であって基台14の上部に取付金具を介して取り付けられている。
【0022】
次に、この実施形態のプレス装置10の動作について説明する。まず、図示しないエアーコンプレッサからエアーを供給する配管を配管接続部82に接続する。そして、図3に示すようにテーブル22及び金型固定板60に金型20a,20bをそれぞれ固定する。このとき、金型固定板60の図示しない金型固定ボルトは、金型20aが若干動く程度に締めておく。次に、テーブル22を載置位置aからスライドレール16上をプレス位置bまで摺動移動させ、適宜フィルタレギュレータ88を調整して弱めのエアーを供給するように調整する。続いて、起動ボタン32を押し下げ金型固定板60を降下させて、金型20a,20bが嵌合した状態にする。これにより上下の金型20a,20bの位置が互いに正確に決められるので、金型固定ボルトを締めて金型20bの取付位置を固定する。
【0023】
次に、プレス動作について説明する。まず、載置位置20にあるテーブル22に取り付けられた金型20aに、図示しない被加工物を載置する。そして、テーブル22の取っ手26を押して、プレス位置bまでテーブル22を摺動させる。続いて、起動ボタン32を押す。すると、配管接続部82から供給されたエアーは、残圧抜き弁86、起動ボタン32内の弁、カバー確認制御弁94、及び後退端リミット弁52を経て、5ポート切替弁90からサイドロックエアーシリンダ50とエアーシリンダ70を動作させる。このとき、供給されるエアー圧が同圧のため、内径の小さいサイドロックエアーシリンダ50が先にサイドロック部材30にサイドロックピン48を嵌合させ、続いてエアーシリンダ70が金型固定板58を降下させる。
【0024】
エアーシリンダ70により金型固定板60が下降すると、適宜な位置で下死点確認部材72が下死点検出弁74のローラ部を押して作動させる。そして、図示しない遅延装置により、あらかじめ決められた遅延時間を経て、サイドロックピン48の嵌合解除及び金型固定板60を上昇方向に動作するように、遅延装置の切替弁を切り替える。この切り替えにより、5ポート切替弁90はエアーの流れが切り換えられ、サイドロックエアーシリンダ50を待避させ、エアーシリンダ70を上昇させる。そして、取っ手26を持ってテーブル22をプレス位置bから載置位置aに摺動させて、被加工物のプレス加工が完了する。
【0025】
この実施形態のプレス装置によれば、金型固定板60が、2本の連結支柱54とその間のガイド支柱56の3本の支柱により支持されているため、高精度に上下摺動が可能になる。さらに、ガイド支柱56は、ガイド筒64と精密なベアリング62により上下動するので、がたつきなく精密が摺動が可能であり、精密にプレス加工を施すことができるものである。さらに、起動ボタン32操作によりプレス加工が自動的に行われるため、操作も容易であり、プレス装置10を操作する作業者の熟練度に関係なくバラツキも発生しないものである。そのほか、プレス装置10の動力源にエアーのみ使用し、電力などを使用しないため、節電が可能であり経済的である。
【0026】
また、ガイド支柱56にコイルバネ66が嵌挿されていることにより、エアーシリンダ70にエアーが送られない時でも、金型固定板60が降下せず、上昇位置を維持するので、一対の金型20a,20bを誤って衝突させる可能性もないものである。さらに、プレス加工を施す際には、適度な緩衝性により、プレスを行う被加工物などの保護効果も有するものである。その他、カバー確認制御弁94により、カバーの取り付けが不完全な場合、誤動作しないため、安全性も高いものである。
【0027】
なお、この発明のプレス装置は上記実施形態に限定されるものではなく、テーブルに固定する金型及び金型固定板に釣止する金型は、一対に形成されていればよいため、切断加工や打ち抜き加工から曲げ加工まで、多様なプレス加工に対応可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の一実施形態のプレス装置の概略側面図である。
【図2】この実施形態のプレス装置の概略平面図である。
【図3】この実施形態のプレス装置の概略正面図である。
【図4】この実施形態のプレス装置の概略背面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 プレス装置
14 基台
16 スライドレール
20a,20b 金型
22 テーブル
32 起動ボタン
54 連結支柱
56 ガイド支柱
58 連結板
60 金型固定板
61,64 ガイド筒
62 ベアリング
66 コイルバネ
68 シリンダ軸
70 エアーシリンダ
82 配管接続部
90 5ポート切替弁
a 載置位置
b プレス位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工される被加工物が載置される一方の金型と、この金型を取り付け可能なテーブルと、前記テーブルが摺動可能に設けられた一対のスライドレールと、前記スライドレール上を摺動する前記テーブルを挟んで水平方向の両側に設けられ、前記テーブルを挟んだそれぞれの側に設けられた各々2本の連結支柱及びその間の1本のガイド支柱からなる各々3本の支柱と、前記片側3本ずつ設けられた支柱により位置決めされて上下方向に摺動可能に跨設された金型固定板と、前記金型固定板に固定される他方の金型と、前記金型固定板中央に連結されたエアーシリンダのシリンダ軸とを備え、前記エアーシリンダにより前記金型固定板が上下動することを特徴とするプレス装置。
【請求項2】
前記片側2本の連結支柱は、前記金型固定板を貫通して両端が固定され、前記ガイド支柱は下端部が基台に固定され、前記金型固定板の摺動に抗すように配置されたコイルバネが嵌挿されていることを特徴とする請求項1記載のプレス装置。
【請求項3】
前記エアーシリンダは、エアーの供給を開始させる起動ボタンに接続され、前記起動ボタンの押し下げにより、動作確認弁や遅延装置を介して、前記金型固定板の下降からプレス、上昇までを自動的に一連動作することを特徴とする請求項1または2記載のプレス装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−224155(P2006−224155A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41615(P2005−41615)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(592209087)株式会社フロンティア (8)
【Fターム(参考)】