説明

プレッツェルの製造方法

【課題】干菓子としてのプレッツェルを製造するにあたって、成型において、生地の断面積が大きくなったときに、生地表面をアルカリ液で処理する事での表面の糊化による水抜けの悪さが重なって、非常に水分が飛びにくく、非常に生産性が悪い。

太くて短いナゲット状プレッツェルの製造において割れが大量に発生し、ロスが非常に多い点で問題があった。
【解決手段】1度焼成後、切断することで、アルカリ処理されていない面を発現させ、さらに再度焼成または乾燥させることで、水分飛散の時間を短縮する方法が提供できる。
また、同製法のプレッツェルで米粉、澱粉類を小麦に対して配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレッツェルの生産時のロスを削減し、また製造時間的にも短縮することができる優れたプレッツェルの製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
焼き菓子の中でもプレッツェルとは、棒状、リング状に成型した生種をアルカリ処理した後に、焼き上げたものを言い、アメリカ、欧州、日本等において、その種類は数多く存在している。
【0003】
そして、通常の製法としては混合、醗酵、成型で一定の長さにカットして、アルカリ処理、焼成などが普通である。
また、風味付けのために、油脂、呈味成分を付けることも多い。
【0004】
通常焼成は1回のみで行われ、各製品に沿った水分まで乾燥させる。
また、いわゆる干菓子としてのプレッツェル水分は3%前後であり、通常クラッカー的な食感である。
【0005】
ただし、太い製品は焙焼後乾燥工程を通すこともある。
【非特許文献1】渡辺 長男 、鈴木 繁男、岩尾 裕之 、小原 哲二郎著「製菓辞典」 1981年 (社)全国ビスケット協会 ビスケットテキストブック H4年2月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いわゆる干菓子としてのプレッツェルを製造するにあたって、成型において、生地の断面積が大きくなったときに、生地表面をアルカリ液で処理する事での表面の糊化による水抜けの悪さが重なって、非常に水分が飛びにくく、1度の焼成では水分が飛散しにくく、1度の焼成で水分を規定以下にしようとすると、焦げが発生しやすくなり、喫食不可能なものになる。
【0007】
また、焦げないように低温度で1度で焼成する方法では非常に生産するのに時間がかかり、大変効率が悪い。このようなスナック製品において、生産効率が悪いのはコスト的に大変不利になり競争力がなくなる。
【0008】
また、成型で太いものに関しては1度焙焼後、乾燥工程を通すこともあるが、製品の表面全体がアルカリ液で処理されているため、製品表面全体の糊化があり、水分の抜け場が無く、水分飛散がひどく妨げられることになり、太くて短いナゲット状の製品を作る場合、乾燥工程を通しても、結局、非常に生産するのに時間がかかり、大変効率が悪い。
【0009】
また、太く長いロッド状で焼成させ、その後乾燥させた後に短くカットする方法によって、ナゲット状の製品を作ることも可能であるが、この方法においても乾燥時間で非常に長い時間を必要とするために生産コストの面で問題があり、さらには、カット時において割れが大量に発生してしまい、ロスが非常に多い点で問題があった。

【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、一度焼成したあとに、目的の製品形状に切断することで、アルカリ液で処理されていない部分を発生させ、水分の抜け場ができる。そのことで、水分飛散が妨げられることがなくなり、その後、もう一度焼成または乾燥させることで、水分を飛散させるのための時間が非常に短くなり効率が良くなるという知見を得た。
【0011】
また、この製法に関して、切断時、焼成または乾燥後に割れやすいという問題が生じたが、それに関しては、米粉、澱粉類を小麦に対して配合することで、硬さを出すことができ、また、それが最終乾燥または焼成時での割れ欠けをさらに減少させることが可能になった。

【0012】
また、米粉、澱粉類を配合することにより、独特の好ましい硬くて噛みごこちを有し食感もよく、かつ口溶けの良い製品をうむという知見も得ることができた。
【0013】
さらに、このようにして焼成したプレッツェルは、切断作業後の切断面が多孔質の粗雑な面となる。この多孔質の面は、アルカリ処理された面と異なり、調味油をよく吸収し、濃厚な風味のスナックとするという効果も与えた。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、太くて水分の飛散しにくいプレッツェルのタイプに関して、1度焼成後、カットすることで、アルカリ処理されていない面を発現させ、さらに再度焼成または乾燥させることで、1度のみで焼成したものと比較して、水分飛散の時間を短縮する方法が提供できる。
また、同製法のプレッツェルで米粉、澱粉類を小麦に対して配合することで、硬さを出すことができ、また、それが最終乾燥または焼成時での割れ欠けをさらに減少させることが可能になった。また、独特の好ましい硬くて噛みごこちが良い食感でかつ口溶けの良い食感のプレッツェルを提供できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で言うプレッツェルとは、ビスケット生地をアルカリ処理して焼成したものをいう。ビスケット生地は通常プレッツェルの製造に用いられる生地と同じものでよく、基本的に小麦粉を主体とした粉体
100部に水20〜50部を加え混合したものを指し、必要に応じて、糖類、食用油脂、食塩、乳製品、卵製品、イースト、酵素、膨脹剤、調味料、その他食品添加物等の原材料を加えても良い。
風味的には、甘いタイプの製品とする場合、糖類や乳製品等を、辛いタイプのスナックとする場合、食塩や調味料等を加えると、アルカリ風味と相まってより深みのある風味が形成される。
【0016】
前記の小麦粉を主体とした粉体とは小麦粉と米粉の組み合わせが挙げられ、重量比が
30:70〜95:5である事が望ましい。
米粉が70%より多くなると、生地のつながりが弱くなり成型が難しくなるし、出来上がり製品も米の風味が勝ちすぎてプレッツェルの香ばしさとは異なるものになってしまう。
また、米粉が5%より少ないと期待される効果が有意の差をもって得られない。

【0017】
また、前記の小麦粉を主体とした粉体とは小麦粉と澱粉類の組み合わせも挙げられ、重量比が30:70〜95:5である事が望ましい。澱粉類が70%より多くなると、生地のつながりが弱くなり成型が難しくなるし、出来上がり製品も澱粉の風味が勝ちすぎてプレッツェルの香ばしさとは異なるものになってしまう。
また、澱粉類が5%より少ないと期待される効果が有意の差をもって得られない。

【0018】
ひとつの実施形態としては、小麦粉を主体とした粉体の合計100重量部に対して、糖類1〜30重量部、油脂類1〜50重量部および呈味原料0〜100重量部の範囲である。
【0019】
ビスケット生地の成型は、ロールシーター、エクストルーダー等を用いる。丸型で成型する場合、外径が7〜35mmの範囲で成型し、最終的に焼き上げ後10〜40mmの範囲の製品が作ることができる。また、角型の場合、生地の断面積が50〜1300平方ミリメーターの範囲で成型し、最終的に焼き上げ後断面積が70〜1600平方ミリメーターの範囲になる。
なお、ここでいう断面積とは、生地の押し出し方向に対して垂直に切断したときの片側の断面の面積のことを言う。
【0020】
本発明で言うアルカリ液とは、通常のプレッツェルの製造に用いられるアルカリ基剤を水溶液としたもので良く、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム等のうち、1種又は2種以上を水に溶解したものが挙げられる。アルカリ液の濃度は、目的とする最終製品の香ばしさ等に代表されるアルカリ風味の強さや外観の褐色程度に応じて任意であり、また使用するアルカリ基剤や使用する際のアルカリ液温度によっても異なるが、代表的には水酸化ナトリウム溶液の場合0.3〜2.0%程度のものが広く用いられる。
【0021】
アルカリ処理の方法としては、成型生地をアルカリ液に浸漬、或いはそれに準ずるような方法、例えばスプレー等が適当である。アルカリ処理を行わない場合、或いはアルカリ液が付着しなかった部分は、プレッツェル特有の褐色の外観や風味がしない、またばらつきが生じる可能性があるため、アルカリ液は成型生地に均一にコートすることが望ましい。
【0022】
アルカリ液の温度は、製品に特有の香ばしさを付与するために、60℃以上とすることが望ましい。
【0023】
アルカリ処理の時間は、具体例として挙げると、成型生地の外径がφ13〜φ15では、60℃以上のアルカリ液に2〜15秒間の浸漬、好ましくは80℃以上のアルカリ液に6〜9秒間の浸漬を挙げる事ができる。
【0024】
アルカリ処理後の成型済み生地に1次焼成を行うが、この際の焼成条件は、製品が焦げることがなく、また火脹れなどが起きない条件で生地表面をかためる。
【0025】
1次焼成のためには、例えば、固定オーブン、連続オーブン、ダイレクトオーブン、熱風循環オーブンなどいずれも使用可能である。成型済み生地は、必要に応じて、スチールベルト、ヘビーメッシュ、ライトメッシュなどを任意に用いて焼成され得る。
【0026】
1次焼成にかかる時間は成型済み生地の大きさによって異なるが、通常120℃〜300℃の範囲において5分〜30分である。1次焼成後の水分は7%〜16%が望ましい。
水分については、7%以下に1度の焼成で下げるには非常に時間がかかるし、表面が焦げてしまう。また16%以上では、生地が軟らかいため、カット時に潰れてしまい最終製品の体をなさなくなる。
【0027】
次にその1次焼成された生地の切断を行う。切断は、生地に対して垂直、または斜めで行われる。切断に使用する機械は、通常はのこぎり刃のような鋭利な金属の刃を持ち、生地を押さえながら、刃を高速度で回転させて切断するような機構になっており、連続仕様のものが多い。
【0028】
1次焼成された生地の切断の長さであるが、5mm〜30mmが望ましい。5mmより短ければ、非常に生地に負荷がかかり、割れが非常に多くなりロスになる。また30mmより長ければ、切断面のアルカリ液で処理されていない部分の割合が、アルカリ液で処理された水分の飛散しにくい部分と比較して非常に少ないため、その後の再焼成または乾燥時において水が飛散しにくくなり、結果として非常に時間がかかり非効率になってしまう。
【0029】
その後切断した後に、再焼成または乾燥を行うが、この際の焼成条件は、製品が焦げることがなく、水分を飛散させることが目的となるので、85℃〜150℃での条件設定となる。かかる時間は生地の大きさによって異なるが、通常5分〜30分である。
再焼成または乾燥直後の水分は好ましくは5%以下に、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下である。
いわゆる干菓子のプレッツェルにおいて再焼成または乾燥直後の水分が多すぎる場合得られるプレッツェルの食感がねちゃついたり、口溶けが悪かったりといった場合がある。加えて、チェッキングと呼ばれる、経時変化で焼き菓子がぼろぼろ割れてしまう現象が生じやすい。
【0030】
再焼成、再乾燥のためには、例えば、固定オーブン、連続オーブン、ダイレクトオーブン、熱風循環オーブン、多種の乾燥機などいずれも使用可能である。以下実施例を記載するが、実施例において「部」は「重量部」を意味する。
【実施例1】
【0031】
小麦粉100部からなる主原料に、糖類として砂糖10部、食塩0.7部、呈味原料として、チキンエキスパウダー3部を加えて、縦型のケーキミキサーで1分間粉体混合し、均一化した。これに油脂類としてショートニング7部を加え、さらに水50重量部を加えながら、20分間混合し、弾力のある生地を得た。生地を押し出し機で外径11.5mmのノズルから押し出し成型し、やや引っ張りながら 80℃のアルカリ液(1%水酸化ナトリウム)に6秒間浸漬した後、ヘビーメッシュの連続オーブンに並べ、オーブン温度上火、下火ともに200℃で1次焼成を行った。1次焼成は火脹れ、表面の焦げなども無く15分で行い、水分は12%であった。その後、連続式カッターで15mmに切断し、再度乾燥機にて110℃で15分間乾燥させた。得られたプレッツェルは、焦げることもなく、表面も火脹れが無く、最終水分値は1.8%であった。
【比較例1】
【0032】
小麦粉100部からなる主原料に、糖類として砂糖10部、食塩0.7部、呈味原料として、チキンエキスパウダー3部を加えて、縦型のケーキミキサーで1分間粉体混合し、均一化した。これに油脂類としてショートニング7部を加え、さらに水50重量部を加えながら、20分間混合し、弾力のある生地を得た。生地を押し出し機で外径11.5mmのノズルから押し出し成型し、やや引っ張りながら 80℃のアルカリ液(1%水酸化ナトリウム)に6秒間浸漬した後、ヘビーメッシュの連続オーブンに並べ、オーブン温度上火、下火ともに200℃で一度に焼成を行った。オーブン調整を行い、最終水分値を2%以下にもっていくようにした。結果焼成時間40分で最終水分値は1.8%であった。ただし、表面は焦げてしまい、喫食に耐えないものであった。
【比較例2】
【0033】
小麦粉100部からなる主原料に、糖類として砂糖10部、食塩0.7部、呈味原料として、チキンエキスパウダー3部を加えて、縦型のケーキミキサーで1分間粉体混合し、均一化した。これに油脂類としてショートニング7部を加え、さらに水50重量部を加えながら、20分間混合し、弾力のある生地を得た。生地を押し出し機で外径11.5mmのノズルから押し出し成型し、やや引っ張りながら 80℃のアルカリ液(1%水酸化ナトリウム)に6秒間浸漬した後、ヘビーメッシュの連続オーブンに並べ、オーブン温度上火、下火ともに200℃から上下ともに焦げないよう焼成開始から25分でオーブンタイム上下とも130℃まで下げて1度で焼成を行った。オーブン調整を行い、最終水分値を2%以下にもっていくようにした。表面は焦げることは無く、火脹れも生じなかく、最終水分値も1.8%にすることができたが、焼成時間は60分もかかり、非常に非効率になった。
【実施例2】
【0034】
小麦粉80部と米粉20部からなる主原料に、糖類として砂糖10部、食塩0.7部、イースト3部、呈味原料として、全粉乳1部を加えて、縦型のケーキミキサーで1分間粉体混合し、均一化した。これに油脂類としてマーガリン7部を加え、さらに水50重量部を加えながら、20分間混合し、弾力のある生地を得た。生地を押し出し機で外径11.5mmのノズルから押し出し成型し、やや引っ張りながら 80℃のアルカリ液(1%水酸化ナトリウム)に6秒間浸漬した後、ヘビーメッシュの連続オーブンに並べ、オーブン温度上火、下火ともに200℃で1次焼成を行った。1次焼成は火脹れ、表面の焦げなども無く15分で行い、水分は12%であった。その後、連続式カッターで15mmに切断し、再度乾燥機にて110℃で15分間乾燥させた。得られたプレッツェルは、焦げることもなく、表面も火脹れが無く、最終水分値は1.9%であった。
【0035】
得られたプレッツェルは独特の好ましい硬くて噛みごこちが良い食感でかつ口溶けの良いものであった。
【0036】
次に、得られたプレッツェルの衝撃耐性の試験を行った。
【0037】
衝撃耐性試験には、直径70cm(口幅45cm)、奥行き55cmの筒状回転装置(装置内壁には回転時に製品を持ち上げ、衝撃を加えるために3ヶ所の突起物を有する)を用い、これに製品2kgを入れ、回転速度40rpmで10分間攪拌した後、破損していない製品の重量を測定し、破損率を測定した。
【0038】
その結果、破損率は約1%であった。
【比較例3】
【0039】
小麦粉100部からなる主原料に、糖類として砂糖10部、食塩0.7部、イースト3部、呈味原料として、全粉乳1部を加えて、縦型のケーキミキサーで1分間粉体混合し、均一化した。これに油脂類としてマーガリン7部を加え、さらに水50重量部を加えながら、20分間混合し、弾力のある生地を得た。生地を押し出し機で外径11.5mmのノズルから押し出し成型し、やや引っ張りながら 80℃のアルカリ液(1%水酸化ナトリウム)に6秒間浸漬した後、ヘビーメッシュの連続オーブンに並べ、オーブン温度上火、下火ともに200℃で1次焼成を行った。1次焼成は火脹れ、表面の焦げなども無く15分で行い、水分は12%であった。その後、連続式カッターで15mmに切断し、再度乾燥機にて110℃で15分間乾燥させた。得られたプレッツェルは、焦げることもなく、表面も火脹れが無く、最終水分値は2.1%であった。
【0040】
得られた食感はさくさくしていてクラッカー様のものであった。
【0041】
次に、得られたプレッツェルの衝撃耐性の試験を行った。
【0042】
衝撃耐性試験には、直径70cm(口幅45cm)、奥行き55cmの筒状回転装置(装置内壁には回転時に製品を持ち上げ、衝撃を加えるために3ヶ所の突起物を有する)を用い、これに製品2kgを入れ、回転速度40rpmで5分間攪拌した後、破損していない製品の重量を測定し、破損率を測定した。
【0043】
その結果、破損率は約15%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉を主体とした生地を棒状または角状に成型し、アルカリ液で処理した後、1次焼成を行い、焼成後の生地水分が7%〜16%である生地を切断、その後、再焼成または乾燥して水分値5%以下にして得られるプレッツェル
【請求項2】
前記焼き菓子の外径が10〜40mmの範囲である請求項1に記載のプレッツェル
【請求項3】
前記焼き菓子の断面積が70〜1600平方ミリメーターの範囲である請求項1または2に記載のプレッツェル。
【請求項4】
前記焼き菓子の切断した長さが5〜40mmの範囲である請求項1〜3のいずれかに記載のプレッツェル
【請求項5】
小麦粉を主体とした生地に米粉を重量比で30(小麦粉):70(米粉)〜95:5で配合したプレッツェル。
【請求項6】
小麦粉を主体とした生地にその他澱粉類を重量比で30(小麦粉):70(その他澱粉類)〜
95:5で配合したプレッツェル。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかの製法で製造している請求項5または請求項6に記載のプレッツェル。


【公開番号】特開2006−109767(P2006−109767A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301179(P2004−301179)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】