説明

プレフィルドシリンジ装置

【課題】 従来装置においては、連通針を回転を伴って刺通する場合には、薄膜と連通針との間に隙間ができ、薬液が漏れる恐れがあるから、回転させることなく直進させて薄膜を刺通する構成であった。注射針を装着すべき連通針とキャップとの一体化に不安が生じると共に、連結構造を複雑にする課題があった。
【解決手段】 薄膜2で閉鎖されたノズル部3を有するシリンジ本体1に、外筒部12と内筒部14とを一体に有するノズルキャップ10を螺合し、前記ノズルキャップ10を前記ノズル部3の注射可能位置にセットする間に薄膜2を切り離すことなく突き抜けて破断するように前記内筒部14の先端に連通用切り刃16を設けてなるプレフィルドシリンジ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め薬剤をシリンジ本体に収納して、アンプルやバイアルから薬剤をシリンジ本体に吸引する作業を不要とし、雑菌や汚染の危険を大幅に軽減し、薬剤の識別も容易にし、作業効率や安全性を確保して使用することができるプレフィルドシリンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来装置としては、薄膜で閉鎖されたノズル部を有するシリンジ本体に、回転することなく薄膜を突き破る中空針状の薄膜穿刺部を有する種々の形状の連通針を、前記ノズル部の外周に装着するフード部材に回転自在且つ交換可能に設け、ノズル部に嵌着したフード部材を直線的に移動して薄膜を破り、その後、連通針を回転することなくフード部材をノズル部にねじ込み固定し、連通針の他端部に注射針を装着して使用するものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−99435公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来装置においては、連通針はプラスチック製の薄膜を確実に刺し通すことができるように、鋭利な切り刃を周囲に有する断面形状が円形ではない形状であるから、連通針を回転を伴って刺通する場合には、薄膜と連通針との間に隙間ができ、薬液が漏れる恐れがあるから、回転させることなく直進させて薄膜を刺通する構成であった。そのため、フード部材をシリンジ本体のノズル部に固定するためねじ込み装着する場合には、連通針を回転しないように回転自在に支持する必要があり、注射針を装着すべき連通針とフード部材との一体化に不安が生じると共に、連結構造を複雑にする課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載の通り、薄膜で閉鎖されたノズル部を有するシリンジ本体と、前記ノズル部の外周に装着する外筒部とノズル部内に挿入する内筒部とを一体に有するノズルキャップと、前記シリンジ本体のノズル部の外周に設けた雄ねじと、前記ノズルキャップの外筒部の内周に前記雄ねじに螺合してノズルキャップを注射可能位置にセットする雌ねじと、前記ノズルキャップを前記シリンジ本体のノズル部に螺合し注射可能位置にセットする間に前記ノズル部に設けた薄膜を切り離すことなく突き抜けて破断するように前記内筒部の先端に設けた連通用切り刃と、前記内筒部に連通しノズル部の延長部となるようにノズルキャップの先端に設けた注射針装着部とからなるプレフィルドシリンジ装置を提供するものである。
【0005】
本発明によれば、ノズルキャップをシリンジ本体のノズル部にねじ込んで注射可能位置にセットする間に連通用切り刃で薄膜を破断することができるから、ノズルキャップを注射可能位置にセットすると同時にノズル部を容易且つ確実に開封することができると共に、前記薄膜をノズル部から切り離すことなくねじ込み回転しながら破断するから、破断した薄膜がシリンダー内に充填された薬剤に混入することを防止することができると共に、破断した薄膜が内筒部の裏側に入り込むから内筒部を塞ぐことを防止することができる。
【0006】
また、本発明は、請求項2に記載のように、請求項1に記載のプレフィルドシリンジ装置において、前記ノズルキャップを前記ノズル部に螺合し連通用切り刃が薄膜に接触する位置から注射可能位置にセットするまでの間にほぼ2/5乃至4/5回転するように設定してなるプレフィルドシリンジ装置を提供するものである。
本発明によれば、ノズルキャップを1回転以内のほぼ2/5乃至4/5回転するだけで、連通用切り刃が薄膜を破断して注射可能位置にセットすることができるから、ノズルキャップの操作が迅速にできる。
【0007】
また、本発明は、請求項3に記載のように、請求項1又は2に記載のプレフィルドシリンジ装置において、前記薄膜の設置位置より下方のノズル部の内径を前記設置位置の内径より大きく設けてなるプレフィルドシリンジ装置を提供するものである。
本発明によれば、連通用切り刃の切り残し部分が薄膜直下の大径部に入り込んでノズル部内周部と内筒部の外周部との間に挟まれて、破断した薄膜が内筒部の裏側に入り込む余地を確保でき、内筒部を塞ぐことをより確実に防止することができる。
【0008】
また、本発明は、請求項4に記載のように、請求項1乃至3のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ装置において、シリンジ本体の吐出部の外周部とノズルキャップの外筒部の内周部との間に位置決めストッパー機構を設けてなるプレフィルドシリンジ装置を提供するものである。
【0009】
本発明によれば、シリンジ本体のノズル部にノズルキャップを螺合して装着する際に、位置決めストッパー機構によって、連通用切り刃が薄膜に接触する位置の手前で位置決めすることができ、若しくは、注射可能位置にセットする位置に位置決めすることができるから、安心してシリンジ本体のノズル部にノズルキャップを螺合して装着することができ、作業の安全性と迅速性が確保できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るプレフィルドシリンジ装置によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載の通り、薄膜で閉鎖されたノズル部を有するシリンジ本体と、前記ノズル部の外周に装着する外筒部とノズル部内に挿入する内筒部とを一体に有するノズルキャップと、前記シリンジ本体のノズル部の外周に設けた雄ねじと、前記ノズルキャップの外筒部の内周に前記雄ねじに螺合してノズルキャップを注射可能位置にセットする雌ねじと、前記ノズルキャップを前記シリンジ本体のノズル部に螺合し注射可能位置にセットする間に前記ノズル部に設けた薄膜を切り離すことなく突き抜けて破断するように前記内筒部の先端に設けた連通用切り刃と、前記内筒部に連通しノズル部の延長部となるようにノズルキャップの先端に設けた注射針装着部とからなる構成を有することにより、ノズルキャップの構造をプラスチックで一体成形可能な簡素な構造にすることができるのみならず、ノズルキャップをシリンジ本体のノズル部にねじ込んで注射可能位置にセットする間に連通用切り刃で薄膜を破断することができるから、ノズルキャップを注射可能位置にセットすると同時にノズル部を容易且つ確実に開封することができると共に、前記薄膜をノズル部から切り離すことなくねじ込み回転しながら破断するから、破断した薄膜がシリンダー内に充填された薬剤に混入することを防止することができると共に、破断した薄膜が内筒部の裏側に入り込むから内筒部を塞ぐことを防止することができる効果がある。
【0011】
また、本発明は、請求項2に記載のように、請求項1に記載のプレフィルドシリンジ装置において、前記ノズルキャップを前記ノズル部に螺合し連通用切り刃が薄膜に接触する位置から注射可能位置にセットするまでの間にほぼ2/5乃至4/5回転するように設定してなる構成を有するから、ノズルキャップを1回転以内のほぼ2/5乃至4/5回転するだけで、連通用切り刃が薄膜を破断して注射可能位置にセットすることができるから、ノズルキャップの操作が簡単に迅速にできる効果がある。
【0012】
また、本発明は、請求項3に記載のように、請求項1又は2に記載のプレフィルドシリンジ装置において、前記薄膜の設置位置より下方のノズル部の内径を前記設置位置の内径より大きく設けてなる構成を有するから、連通用切り刃の切り残し部分が薄膜直下の大径部に入り込んでノズル部内周部と内筒部の外周部との間に挟まれて、破断した薄膜が内筒部の裏側に入り込む余地を確保でき、内筒部を塞ぐことをより確実に防止することができる効果がある。
【0013】
また、本発明は、請求項4に記載のように、請求項1乃至3のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ装置において、シリンジ本体の吐出部の外周部とノズルキャップの外筒部の内周部との間に位置決めストッパー機構を設けてなる構成を有するから、シリンジ本体のノズル部にノズルキャップを螺合して装着する際に、位置決めストッパー機構によって、連通用切り刃が薄膜に接触する位置の手前で位置決めすることができ、若しくは、注射可能位置にセットする位置に位置決めすることができるから、安心してシリンジ本体のノズル部にノズルキャップを螺合して装着することができ、作業の安全性と迅速性が確保できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るプレフィルドシリンジ装置を図に示す実施例により説明する。
図1は、本発明装置の一実施例の中央縦断正面図であり、図2は、図1の実施例の上部の拡大図であり、図3は、その一使用態様を図2と同様に拡大して示す拡大図である。
図において、1は、薄膜2で閉鎖されたノズル部3を有するシリンジ本体で、ノズル部3の外周には雄ねじ4が設けてある。
【0015】
10はノズル部3に装着し上端部に注射針装着部11を有するノズルキャップで、前記ノズル部3の外周の雄ねじ4に螺合する雌ねじ13を有する外筒部12と、ノズル部3内に密封状態で嵌着する内筒部14とを一体に具備している。
内筒部14はその上端部の注射針装着部11と一体に連通孔15を具備すると共に、その下端部には前記ノズルキャップ10を前記シリンジ本体1のノズル部2に螺合し注射可能位置にセットする間に薄膜2を切り離すことなく突き抜けて破断する連通用切り刃16を具備している。連通用切り刃16は、実施例の場合、円筒状の内筒部14の下端部を斜めに切り取った楕円形状の外周を有している。
【0016】
また、ノズル部3の下部には、シリンジ本体1の肩部5の上方に位置して、外周上向きに滑り面6a、7aを有する2段のフランジ状のストッパー6,7が設けてあり、ノズルキャップ10をノズル部3にねじ込む際に、図1,2に記載のように、ノズルキャップ10の外筒部12のスカート部の内側に突設したストッパー突起部17が、一段目のストッパー6をクリック感を伴って乗り越えたところで第2段目のストッパー7に当接して停止するように構成してある。
【0017】
このストッパー突起部17が2段目のストッパー7で停止した位置において、内筒部14の連通用切り刃16が薄膜2に当接する直前位置に位置するように構成してあり、このシリンジ本体1にノズルキャップ10を装着した状態で使用者に提供されることになる。
上記ストッパー6,7とストッパー突起部17が本発明に係るストッパー機構の一つを構成している。
【0018】
次いで、使用者が、シリンジ本体1を片手でもってもう一方の手でノズルキャップ10を更にねじ込むと、ストッパー突起部17が2段目のストッパー7を乗り越えて、図3に記載のように、外筒部12のスカート部がシリンジ本体1の肩部5に当接して停止した位置において、内筒部14の連通用切り刃16が薄膜2を切断することなく破断する注射可能位置にセットすることができるように構成してある。
【0019】
このとき、図3に記載のように、外筒部3の雌ねじ部13の下方に設けた段部18が前記ストッパー6に当接し、前記同様に内筒部14の連通用切り刃16が薄膜2を切断することなく破断する注射可能位置にセットすることができるように構成してある。
従って、外筒部12のスカート部がシリンジ本体1の肩部5に当接しない構成の場合にも、これら段部18とストッパー6によって注射可能位置を設定することができる。
【0020】
また、外筒部3の前記段部18の直下に設けたストッパー19が前記ストッパー6の下側に当接して、戻り止めを構成すると共に、ストッパー19がストッパー6をクリック感を伴って乗り越えるように構成してある。従って、クリック感を伴ってノズルキャップ10を注射可能位置にセットすることができる。また、ストッパー19が前記ストッパー6の下側に当接して戻り止めとなるから、注射位置が確実に維持されることとなる。
【0021】
また、本発明は、前記ノズルキャップ10を前記ノズル部3に螺合し連通用切り刃16が薄膜2に接触する図2の位置からから図3の注射可能位置にセットするまでの間に、ほぼ2/5乃至4/5回転するように設定してあり、ノズルキャップ10を1回転以内のほぼ2/5乃至4/5回転するだけで、連通用切り刃16が薄膜2を切り離すことなく破断して注射可能位置にセットすることができるから、ノズルキャップ10の操作が迅速にできる。
【0022】
図3の実施例では、ノズルキャップ10は、図1又は図2の連通用切り刃16が薄膜2に相対している状態から、ほぼ1/2(ほぼ180度)回転して薄膜2を突き抜けるように、ノズル部3の雄ねじ部4とノズルキャップ10の雌ねじ部13は大きなピッチで螺合しており、一部が切り取られ、残部が連結した状態の薄膜2は内筒部14の外周とノズル部3の内周との間に挟まれて、破断した薄膜2がシリンジ内に充填された薬剤に混入することを防止することができると共に、破断した薄膜2が内筒部14の裏側に入り込むから連通孔15を塞ぐことを防止することができる。
【0023】
前記ノズルキャップ10を前記ノズル部3に螺合する際に、前記連通用切り刃16により前記薄膜2の一部を破断し、この薄膜2片を前記内筒部14の下端の軸方向の移動により、前記ノズル部3の内壁と前記内筒部14の下端との間に折り倒して挟み込むことができるから、連通孔15を塞ぐことを確実に防止できる。
【0024】
なお、連通用切り刃16は薄膜2を破断する際に切り離さないように、斜めに設けた楕円形の切り刃の下側だけが薄膜2を破り、薄膜2とノズル部3内周との連結部を切り刃が一周しないことによって、薄膜2を確実に切り離さないで破断することができる。
従って、連通用切り刃16は一回転しないで薄膜2を突き抜けるように構成することによって、薄膜2を確実に切り離さないで破断することができる。
【0025】
また、本発明は、前記薄膜2の設置位置より下方のノズル部3の内径を前記設置位置の内径より大きくして大径部8として設け、連通用切り刃16の切り残し部分が薄膜2直下の大径部8に入り込んでノズル部3内周部と内筒部14の外周部との間に挟まれて、破断した薄膜2が内筒部14の裏側に入り込む余地を確保でき、内筒部14の連通孔15を塞ぐことをより確実に防止することができる。
【0026】
その他、図1において、20はシリンジ本体1に嵌合するピストン部で、先端部に空気抜き孔21を具備しており、薬剤を内部に収容して内部の空気を抜いたところで熱溶着等により封鎖部22を封鎖するように構成してある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明装置の一実施例の中央縦断正面図。
【図2】図1の実施例の上部の拡大図。
【図3】その一使用態様を図2と同様に拡大して示す拡大図。
【符号の説明】
【0028】
1 シリンジ本体
2 薄膜
3 ノズル部
4 雄ねじ
5 肩部
6,7 ストッパー
8 大径部
10 ノズルキャップ
11 注射針装着部
12 外筒部
13 雌ねじ
14 内筒部
15 連通孔
16 連通用切り刃
17 ストッパー突起部
18 段部
19 ストッパー
20 ピストン部
21 空気抜き孔
22 封鎖部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜で閉鎖されたノズル部を有するシリンジ本体と、前記ノズル部の外周に装着する外筒部とノズル部内に挿入する内筒部とを一体に有するノズルキャップと、前記シリンジ本体のノズル部の外周に設けた雄ねじと、前記ノズルキャップの外筒部の内周に前記雄ねじに螺合してノズルキャップを注射可能位置にセットする雌ねじと、前記ノズルキャップを前記シリンジ本体のノズル部に螺合し注射可能位置にセットする間に前記ノズル部に設けた薄膜を切り離すことなく突き抜けて破断するように前記内筒部の先端に設けた連通用切り刃と、前記内筒部に連通しノズル部の延長部となるようにノズルキャップの先端に設けた注射針装着部とからなるプレフィルドシリンジ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプレフィルドシリンジ装置において、前記ノズルキャップを前記ノズル部に螺合し連通用切り刃が薄膜に接触する位置から注射可能位置にセットするまでの間にほぼ2/5乃至4/5回転するように設定してなるプレフィルドシリンジ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプレフィルドシリンジ装置において、前記薄膜の設置位置より下方のノズル部の内径を前記設置位置の内径より大きく設けてなるプレフィルドシリンジ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ装置において、シリンジ本体の吐出部の外周部とノズルキャップの外筒部の内周部との間に位置決めストッパー機構を設けてなるプレフィルドシリンジ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−110216(P2006−110216A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302390(P2004−302390)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000234627)シロウマサイエンス株式会社 (40)
【出願人】(000112680)フジタ製薬株式会社 (2)
【Fターム(参考)】