説明

プレートコンパクタとそのエンジンオイル排出方法

【課題】エンジンオイルの排出が迅速かつ確実に行なえると共に、エンジンベースや転圧板にエンジンオイルを付着させることなく排出できるプレートコンパクタおよびエンジンオイルの排出方法を提供する。
【解決手段】エンジンのクランクケース5の背面下部に、クランクケース5内のエンジンオイルを排出する排出孔20とこの排出孔を塞ぐプラグ21を設ける。エンジンべース3に、プレートコンパクタの前方が持ち上がるように傾斜させた際に、プラグ21を外すことにより排出されるエンジンオイルを通過させて転圧板1より外側に流出させる開口部22を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装面の転圧や路面の締め固め等を行なうプレートコンパクタとそのエンジンオイルの排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレートコンパクタは、例えば特許文献1に記載のように、転圧板上に防振部材を介してエンジンベースを設置し、エンジンベース上にエンジンを載置固定し、エンジン出力軸に取付けたプーリと、転圧板上に載置した起振体の回転軸に取付けたプーリとにベルトを掛け、エンジン駆動によって起振体を回転させて転圧板を振動させることにより、アスファルト舗装面や砂利を敷き詰めた路面等の転圧を行なうものである。
【0003】
このようなプレートコンパクタにおいて、エンジンのクランクケース内の下部に収容されたエンジンオイルは、稼働時間経過により劣化するため、所定の稼働時間が経過するたびに交換する必要がある。このため、クランクケースの側面下部に排出孔とその排出孔を塞ぐプラグを設け、エンジンオイル交換時にはこのプラグを外してエンジンオイルを排出孔から外部に排出する。
【0004】
図8はこのクランクケース内のエンジンオイルの従来の排出構造を上部構造物を省略して後方上部からみた斜視図である。図8に示すように、従来はエンジンベース51上に搭載されるエンジン(図示せず)のクランクケース(52はその下部を示す。)の背面、すなわちオペレータが持つハンドル53側にエンジンオイル排出孔とその排出孔を塞ぐプラグ54を取付けており、エンジンオイルの交換を行なう際にはこのプラグ54を外してエンジンオイルを排出している。55は転圧板であり、エンジンベース51はこの転圧板55に対して防振ゴム等の防振部材(図示せず)を介して結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−129412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図8に示した従来構造によると、プラグ54を外してエンジンオイルを排出すると、このエンジンオイルがエンジンベース51や転圧板55に付着してしまい、その後の清掃作業に時間がかかってしまうという問題点があった。また、エンジンオイルの排出に時間がかかる上、路面の傾きに気づかずにエンジンオイルの排出作業を行なった場合、クランクケース52内にエンジンオイルが残ってしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、エンジンオイルの排出が迅速かつ確実に行なえると共に、エンジンベースや転圧板にエンジンオイルが付着することなく排出できるプレートコンパクタおよびエンジンオイルの排出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のプレートコンパクタは、転圧板上に起振体を設置すると共に、前記転圧板上に防振部材を介してエンジンベースを設置し、前記エンジンベースの後部にハンドルを取付け、前記エンジンベース上に前記起振体を駆動するエンジンのクランクケースを設置してなるプレートコンパクタにおいて、
前記クランクケースの背面下部に、前記クランクケース内のエンジンオイルを排出する排出孔とこの排出孔を塞ぐプラグを設け、
前記転圧板の前方が持ち上がるように前記プレートコンパクタを傾斜させた際に、前記プラグを外すことにより前記クランクケースの前記排出孔から排出されるエンジンオイルを通過させ、前記転圧板より後側に流下させる開口部を、前記エンジンべースに設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2のプレートコンパクタは、請求項1に記載のプレートコンパクタにおいて、
前記エンジンベースに設ける開口部の位置を、前記転圧板の後部に設けた傾斜縁を水平にした際に、前記排出孔から排出されるエンジンオイルが通過する位置に設定したことを特徴とする。
【0010】
請求項3のプレートコンパクタのエンジンオイル排出方法は、転圧板上に起振体を設置すると共に、前記転圧板上に防振部材を介してエンジンベースを設置し、前記エンジンベースの後部にハンドルを取付け、前記エンジンベース上に前記起振体を駆動するエンジンのクランクケースを設置してなるプレートコンパクタのエンジンオイル排出方法において、
前記クランクケースの背面下部に、前記クランクケース内のエンジンオイルを排出する排出孔とこの排出孔を塞ぐプラグを設けると共に、前記エンジンベースの後側に開口部を設けておき、
前記プレートコンパクタの前部が上がるように傾斜させ、前記プラグを外すことにより前記排出孔から前記クランクケース内のエンジンオイルを前記開口部を通して前記転圧板の後側に排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、オペレータ等がプレートコンパクタの前部が上がるように傾斜させ、前記プラグを外すことにより前記排出孔から前記クランクケース内のエンジンオイルを前記開口部を通して前記転圧板の後側の例えばオイルパン上に排出することができる。このため、エンジンベースや転圧板を汚すことなく古いエンジンオイルを排出することができ、エンジンオイル排出後のエンジンベースや転圧板の清掃が不要となる。また、エンジンオイルの排出はクランクケースの排出孔が下となるようにプレートコンパクタを傾斜させて行なうことが前提であるため、エンジンオイルが迅速かつ確実に排出される。
【0012】
請求項2の発明によれば、エンジンベースに設ける開口部を、前記転圧板の後部に設けた傾斜縁を水平にした際に、前記排出孔から排出されるエンジンオイルが流下する位置に設けたので、例えば台上に傾斜縁を水平にして載せておけば、排出孔から流出するエンジンオイルは、エンジンベースの開口部から傾斜縁の外側に至る経路で流出させることができるので、プレートコンパクタの傾斜度合の設定が容易となる。
【0013】
請求項3の発明によれば、エンジンベースや転圧板を汚すことなく古いエンジンオイルを排出することができ、エンジンオイル排出後のエンジンベースや転圧板の清掃が不要となる。また、エンジンオイルの排出はクランクケースの排出孔が下となるようにプレートコンパクタを傾斜させることが前提であるため、エンジンオイルが迅速かつ確実に排出される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるプレートコンパクタの一実施の形態を示す側面図である。
【図2】本実施の形態のプレートコンパクタの平面図である。
【図3】本実施の形態のプレートコンパクタの正面図である。
【図4】本実施の形態のプレートコンパクタの一部省略側面断面図である。
【図5】図4の部分拡大断面図である。
【図6】本実施の形態のプレートコンパクタにおけるエンジンオイル排出構造を示す斜視図である。
【図7】本実施の形態のエンジンオイルの排出作業状態の一例を示す側面断面図である。
【図8】従来のエンジンオイルの排出構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1、図2、図3はそれぞれ本発明によるプレートコンパクタの一実施の形態を示す側面図、平面図、正面図である。また、図4はこのプレートコンパクタの一部省略側面断面図である。図1ないし図4において、1は転圧板であり、この転圧板1は前後に傾斜縁1a、1bを有する底板1cと、この底板1c上に溶接された上部構造物取付け板1dとからなる。2はこの転圧板1の上部構造物取付け板1dの前部に取付けられた偏心錘を有する起振体である。
【0016】
3はエンジンベースであり、このエンジンベース3にはクランクケース5を有するエンジン4が搭載される。6は燃料タンクである。エンジンベース3の左右両側に下方に折り曲げて形成した折り曲げ片3aを有する。この左右の折り曲げ片3aにはそれぞれ前後方向に間隔を有してスリット3b(図1参照)を設ける。図1、図4に示すように、上部構造物取付け板1dには上方へ突出した防振部材取付けのための立ち上げ片1eを溶接し、各立ち上げ片1eとエンジンベース3の折り曲げ片3aとの間に防振部材として防振ゴム7を介装し、防振ゴム取付け用のボルト8を、スリット3b、防振ゴム7、および立ち上げ片1eに設けた孔に挿通してナット9に螺合し締結することにより、転圧板1にエンジンベース3を結合する。
【0017】
図1に示すように、エンジンの出力軸10に取付けられた駆動プーリ11と、起振体2の中心軸2aに取付けられた従動プーリ12との間にベルト13が掛け回され、エンジン4を作動させることにより、起振体2が回転し、これにより振動が発生し、転圧板1が振動する。なお、この実施の形態においては、起振体2の上面の回転方向が後方(後述のハンドル16側)から前方へ移動する方向とすることにより、この起振体2による振動発生と同時にプレートコンパクタを前方へ走行させる力を発生させる構成としている。
【0018】
前記ベルト13はその張力を好適な度合に調整するため、クランクケース5を含めたエンジン4は、エンジンベース3に対して前後位置調整可能に装着された不図示の位置調整板上に設置されているが、その詳細構造については説明を省略する。15はこのプレートコンパクタをトラック等に積み込み、積み下ろしする際に持ち上げるためにエンジンベース3に設けた運搬用のパイプである。16はエンジンベース3の後部に取付けられたハンドルであり、このハンドル16は、オペレータが把持してこのプレートコンパクタの移動、位置および姿勢の制御を行なうものである。
【0019】
17は不図示の前記位置調整板と共にエンジンベース3の前後方向に位置調整可能に取付けられたボックス状のフレームであり、このフレーム17の下面には防振ゴム18をボルト19により取付けている。この防振ゴム18は、例えばこのプレートコンパクタが地面に落下する等の事態の発生により、防振ゴム7が過度に変形して防振ゴム7やボルト8、ナット9などが破損することを防止するために設けられるものであり、防振ゴム7が過度に変形する前に防振ゴム18を転圧板1の上部構造物取付け板1dに先行して当接させるものである。
【0020】
図5はエンジンオイルの排出構造を示す図4の部分拡大断面図、図6はその斜視図、図7はクランクケース5からエンジンオイルを排出している状態を示す側面断面図である。図4ないし図7に示すように、クランクケース5の背面下部にはエンジンオイルの排出孔20とその排出孔20を閉塞するプラグ21が取付けられている。また、エンジンベース3にはプラグ21を外した際にエンジンオイルを通過させる開口部22が設けられている。
【0021】
図7に示すように、この開口部22は、オペレータがハンドル16を把持してこのプレートコンパクタをその後方が下がるように傾斜させた際に、排出孔20から流出するエンジンオイルがこの開口部22を通過し、転圧板1の外側に流下する位置に設けられている。したがって、オペレータがこのプレートコンパクタをその後部が下がるように傾斜させ、プラグ21を外すことにより、矢印25に示すように、クランクケース5内のエンジンオイルを転圧板1の外側に排出させることができる。ここで、エンジンオイルの排出の際に転圧板1の後端にエンジンオイルが接触することなく転圧板1の外側にエンジンオイルを排出可能とするプレートコンパクタの傾斜角度は、位置調整板がエンジンベース3に対して最も前方にあるときに、転圧板1の転圧面積との兼ね合いから、好ましくは20度以上、さらに好ましくは30度以上とする。
【0022】
この実施の形態においては、図7に示すように、転圧板1の後部の傾斜縁1bを水平にして例えば台23上に載せた際に、プラグ21により閉塞されたクランクケース5の排出孔20の位置が傾斜縁1bより外側に位置するように設定されている。また、この実施の形態においては、オイルパン24が開口部22の下に位置するようにオイルパン24を地面上に置き、プラグ21を外した際に、このオイルパン24に流下したエンジンオイルが溜まるようにしている。なお、エンジンベース3に設ける開口部22の位置は、クランクケース5を設置する位置調整板が前後方向に限界位置まで位置調整された場合であっても、エンジンオイルはこの開口部22を通して傾斜縁1bの後側から流下するような前後の広がりを持って設けられている。
【0023】
このように、この実施の形態のプレートコンパクタは、プレートコンパクタの前部が上がるように傾斜させてプラグ21を外すことにより、プラグ21により閉塞されていた排出孔20を開き、この排出孔20からクランクケース5内のエンジンオイルを排出し、エンジンベース3に設けた開口部22を通して転圧板1の後部縁1bより外側の例えばオイルパン24等のオイル受け上にエンジンオイルを排出するようにしたものである。このため、エンジンベース3や転圧板1を汚すことなく古いエンジンオイルを排出することができ、エンジンオイル排出後のエンジンベース3や転圧板1の清掃が不要となる。また、エンジンオイルの排出はクランクケース5の排出孔20が下となるようにプレートコンパクタを傾斜させて行なうことが前提であるため、エンジンオイルを迅速かつ確実に排出させることができる。
【0024】
またこの実施の形態によれば、転圧板1の後部に設けた傾斜縁1bを水平にした際に、クランクケース5の排出孔20から排出されるエンジンオイルが開口部22を通過するように開口部22の位置を設定したので、図7に示したように台23上に傾斜縁1bを水平にして載せておけば、排出孔20を通して流下するエンジンオイルは、エンジンベース3の開口部22から傾斜縁1bの外側に至る経路で流出させることができる。また、底板1cと台23の間に木片等を嵌め込んで、図7のようなプレートコンパクタの姿勢を保持できれば、オペレータは台23上にプレートコンパクタを載置したまま放置しておくだけでエンジンオイルの排出を行なうことができ、プレートコンパクタの傾斜度合の設定やエンジンオイルの排出作業が容易となる。
【0025】
なお、プレートコンパクタを傾斜させてエンジンオイルをオイルパンなどの受け具に排出させる場合、転圧板1は段差部の高い側におき、受け具を低い側に置いてエンジンオイルの排出作業を行なうこともできる。その他、本発明を実施する場合、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0026】
1:転圧板、1a,1b:傾斜縁、2:起振体、3:エンジンベース、4:エンジン、5:クランクケース、6:燃料タンク、7:防振ゴム、10:エンジンの出力軸、11:駆動プーリ、12:従動プーリ、13:ベルト、15:運搬用のパイプ、16:ハンドル、17:フレーム、19:防振ゴム、20:エンジンオイルの排出孔、21:プラグ、22:開口部、23:台、24:オイルパン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転圧板上に起振体を設置し、前記転圧板上に防振部材を介してエンジンベースを設置すると共に、前記エンジンベースの後部にハンドルを取付け、前記エンジンベース上に前記起振体を駆動するエンジンのクランクケースを設置してなるプレートコンパクタにおいて、
前記クランクケースの背面下部に、前記クランクケース内のエンジンオイルを排出する排出孔とこの排出孔を塞ぐプラグを設け、
前記転圧板の前方が持ち上がるように前記プレートコンパクタを傾斜させた際に、前記プラグを外すことにより前記クランクケースの前記排出孔から排出されるエンジンオイルを通過させ、前記転圧板より後側に流下させる開口部を、前記エンジンべースに設けたことを特徴とするプレートコンパクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプレートコンパクタにおいて、
前記エンジンベースに設ける開口部の位置を、前記転圧板の後部に設けた傾斜縁を水平にした際に、前記排出孔から排出されるエンジンオイルが通過する位置に設定したことを特徴とするプレートコンパクタ。
【請求項3】
転圧板上に起振体を設置し、前記転圧板上に防振部材を介してエンジンベースを設置すると共に、前記エンジンベースの後部にハンドルを取付け、前記エンジンベース上に前記起振体を駆動するエンジンのクランクケースを設置してなるプレートコンパクタのエンジンオイル排出方法において、
前記クランクケースの背面下部に、前記クランクケース内のエンジンオイルを排出する排出孔とこの排出孔を塞ぐプラグを設けると共に、前記エンジンベースの後側に開口部を設けておき、
前記プレートコンパクタの前部が上がるように傾斜させ、前記プラグを外すことにより前記排出孔から前記クランクケース内のエンジンオイルを前記開口部を通して前記転圧板の後側に排出することを特徴とするプレートコンパクタのエンジンオイル排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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