説明

プロアントシアニジン抽出物を生成するためのプロセス

プロアントシアニジン抽出物を生成する方法を記載する。この方法は、(a)ある体積のプロアントシアニン含有液体供給材料を準備する工程;(b)プロアントシアニン含有液体供給材料を限外濾過供給タンクに通す工程;(c)限外濾過供給タンク内の材料を限外濾過膜システムに通して濾過して、材料をプロアントシアニンが減少した浸透液の流れおよびプロアントシアニンが濃縮された保持液の流れに分画する工程;(d)プロアントシアニンが減少した浸透液の流れを収集する工程;ならびに(e)前記体積のプロアントシアニン含有液体供給材料が無くなるまで、プロアントシアニンが濃縮された保持液の流れを限外濾過供給タンクに通し、その後に、プロアントシアニンが濃縮された保持液の流れを収集する工程を含む。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
ある特定の果実、特に、クランベリーには、他に例を見ない健康上の利益を付与する、プロアントシアニジンとして知られる(縮合タンニンまたはプロシアニジンとも呼ばれる)化合物クラスが含まれている。従って、プロアントシアニジン化合物(PAC)の選択的な捕捉および乾燥重量濃縮は、これらの化合物の他に例を見ない利益をもたらすことに関して、製品用途(例えば、小売飲料、トローチ剤など)の分野において新たな機会を広げる可能性がある。
【発明の概要】
【0002】
概要
限外濾過(UF)膜システムを用いて、PAC含有液体供給材料(例えば、クランベリージュース)を、PACが減少した浸透液の流れおよびPACが濃縮された保持液の流れに分画する方法が述べられる。基本的には、膜システムの名目分子量カットオフが適切に選択された時には、存在する高分子量PAC(および/または相対的に高い分子量のPAC凝集物)のかなりの部分が保持液に選択的に保持され、残りのいろいろな低分子量可溶性構成固体(例えば、糖、酸、アントシアニンなど)は浸透液として膜を優先的に通過する。従って、乾燥重量ベースで、液体の流れの中にあるPACを選択的に濃縮するための単純な機構が見出された。実際には、この方法を用いると、実質的に全ての、予め設定された特定のPAC乾燥重量含有率(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、および98%)まで、抽出物を製造することができる。さらに、PACが分子量に基づいて選択的に分画されると、低分子量画分は浸透液として膜を通過し、高分子量画分は保持液として保持されるので、PACの単位重量あたりの生理活性が上昇した抽出物を得ることもできる。さらに、本明細書に記載の方法はまた、苦味のある低分子量非PACフェノール化合物を大幅に除去して、PACが減少した浸透液の流れに入れることができるので、小売飲料調合物(例えば、低カロリー等張飲料)に使用するのに潜在的に適した清澄化PAC抽出物を提供するのに使用することもできる。
【0003】
PACが濃縮された果実抽出物または野菜抽出物は様々な目的に使用することができる。例えば、PACは健康上の利益を付与すると考えられているので、健康上の利益の大きい飲料を提供するために、PACの乾燥重量濃度が高い抽出物を、水、ジュース、または他の飲料と組み合わせることができる。栄養補助食品として有用な丸剤またはカプセルを提供するために、PACの乾燥重量濃度が高い抽出物を乾燥させ、他の成分と組み合わせることができる。PACが濃縮された果実抽出物または野菜抽出物はまた、様々な食品の健康上の利益を高めるのに使用することもできる。例えば、このような抽出物は、健康上の利益の大きい乾燥果実を作り出すために、乾燥果実、例えば、乾燥クランベリーに適用することができる。
【0004】
従って、(a)ある体積のプロアントシアニン含有液体供給材料を準備する工程;(b)プロアントシアニン含有液体供給材料を限外濾過供給タンクに通す工程;(c)限外濾過供給タンク内の材料を限外濾過膜システムに通して濾過して、材料をプロアントシアニンが減少した浸透液の流れおよびプロアントシアニンが濃縮された保持液の流れに分画する工程;(d)プロアントシアニンが減少した浸透液の流れを収集する工程;ならびに(e)前記体積のプロアントシアニン含有液体供給材料が無くなるまで、プロアントシアニンが濃縮された保持液の流れを限外濾過供給タンクに通し、その後に、プロアントシアニンが濃縮された保持液の流れを収集する工程を含む方法が、本明細書において述べられる。
【0005】
様々な態様において、プロアントシアニン含有液体供給材料は、果実ジュースまたは果実ジュース画分である。果実ジュースまたは果実ジュース画分は不溶性果実固体を実質的に含まない。果実ジュースまたは果実ジュース画分はクランベリージュースまたはクランベリージュース画分である。前記方法は、プロアントシアニンが減少した浸透液の流れを濃縮して、プロアントシアニンが減少した浸透液の濃縮物を作り出す工程をさらに含む。プロアントシアニンが減少した浸透液の流れは逆浸透によって濃縮される。プロアントシアニンが減少した浸透液の流れは蒸発によって濃縮される。プロアントシアニンが減少した浸透液の流れは逆浸透および蒸発によって濃縮される。前記方法は、プロアントシアニンが濃縮された保持液の流れを収集したものを濃縮して、プロアントシアニンが濃縮された保持液の濃縮物を作り出す工程をさらに含む。プロアントシアニンが濃縮された保持液の流れは逆浸透によって濃縮される。プロアントシアニンが濃縮された保持液の流れは蒸発によって濃縮される。プロアントシアニンが濃縮された保持液の流れは逆浸透および蒸発によって濃縮される。プロアントシアニン含有粉末を作り出すために、プロアントシアニンが濃縮された保持液の濃縮物が乾燥される。前記方法は、プロアントシアニンが減少した浸透液の少なくとも一部を処理して、アントシアニンおよび/またはフェノール類が相対的に濃縮され、糖および酸が相対的に減少した第1の画分、ならびに糖および酸が相対的に濃縮され、アントシアニンおよび/またはフェノール類が相対的に減少した第2の画分を作り出す工程をさらに含む。さらなる処理は、プロアントシアニンが減少した浸透液の少なくとも一部を樹脂カラムに通す工程を含む。さらなる処理は、プロアントシアニンが減少した浸透液の少なくとも一部を膜に通す工程を含む。
【0006】
本発明の1つまたは複数の態様の詳細を添付の図面および下記の説明において示す。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図面は、本発明の一態様を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
図面を見ると、PACが濃縮された果実抽出物または野菜抽出物を調製するための、UF膜システムによって改良された回分法の一態様の流れ図が示されている。このプロセスは、清澄化(<5NTU)PAC含有液体供給材料(例えば、2 Brixクランベリージュース)から始まる。図面の態様において、清澄化PAC含有液体供給材料20が、清澄化PAC含有液体供給材料の供給物10からUF供給タンク30に送られる。次いで、UF供給タンク内にある清澄化PAC含有液体供給材料は、UF膜システム40(Koch Membrane Systemsモデル番号3838K328-5000分子量カットオフのNYTスパイラルUF膜を使用する)にポンプで注入される。PACが減少した浸透液の流れ50は、PACが減少した浸透液のサージタンク60に移され、PACが濃縮された保持液の流れ70はUF供給タンクに再循環される。次いで、PACが減少した浸透液は、半濃縮(例えば、18 Brixまで)のために逆浸透(RO)システム80(Koch Membrane Systemsモデル番号TFC3838HRN1スパイラルRO膜を使用する)に、最終濃縮(例えば、50 Brixまで)のために蒸発器90に、最後に、PACが減少した濃縮物の貯蔵タンク100にポンプで注入される。従って、清澄化PAC含有液体供給材料の供給物を連続処理すると、UF供給タンクおよびUF膜システムの液体内容物中にPACが連続して蓄積する(PACが濃縮された保持液の流れの凝集物)。
【0009】
清澄化PAC含有液体供給材料の供給物が無くなったら、次に、浸透液として残っている低分子量可溶性固体(例えば、糖、酸など)を系統的に除去することによって、PACが濃縮された保持液の流れの凝集物を水110でダイアフィルトレーションして、液体抽出物のPAC乾燥重量含有率をさらに高めることができる。PACが濃縮された液体保持液の凝集物120(PAC乾燥重量含有率が少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%)を、PACが濃縮された保持液の保持タンク130に入れて収集し、濃縮機140、次いで、乾燥機150に連続してポンプで注入する。最後に、結果として得られた、PACが濃縮された抽出物粉末を構成する生成物を、PACが濃縮された原末の貯蔵容器160に移す。
【0010】
本発明の方法における使用に適した限外濾過膜の分子量カットオフは、プロピレングリコール上で、約2,000〜10,000ダルトン、約3,000ダルトン、約4000ダルトン、約5000ダルトン、約6000ダルトン、約7000ダルトン、約8000ダルトン、または約9000ダルトンでもよい。
【0011】
場合によっては、非溶解固体を分離するために、PACが濃縮された保持液の保持タンク内にある材料を処理することが望ましい場合がある。これらの非溶解固体は、高分子量PACおよび/または低分子量PAC凝集物を含むことがある。これらの非溶解固体は、例えば、デカンター型遠心分離機またはディスク型遠心分離機(disk centrifuge)を用いた遠心分離によって、非溶解固体が懸濁している液体から分離することができる。
【0012】
場合によっては、樹脂技術(例えば、Amberlite(登録商標)XAD7HPまたはAmberlite(登録商標)TM FPX66樹脂)を用いて、アントシアニンおよび/またはフェノール化合物を植物化学的に異なる別の抽出物画分として選択的に取り出しかつ回収することによって、PACが減少した浸透液をさらに処理することが望ましい場合がある。場合によっては、樹脂技術を用いて、アントシアニンおよび/またはフェノール化合物を植物化学的に異なる別の抽出物画分として選択的に取り出しかつ回収することによって、PACが減少した浸透液をさらに処理することが望ましい場合がある。PAC、アントシアニン、および/またはフェノール化合物が多く、糖および酸が相対的に少ない材料を得るために、この画分は、PACが相対的に多い画分、例えば、PACが濃縮された保持液と組み合わせることができる。
【0013】
前述は本発明の方法の一態様の説明である。当業者であればプロセスを変更することができるだろう。例えば、システムは、変更可能な温度、圧力、および流れの条件下で、回分法、改良回分法、または循環式連続処理法で操作することができる。さらに、システムは、様々なポリマー組成物(例えば、PTFE、PVDFなど)の、スパイラル以外の形をした(すなわち、管状もしくは中空ファイバー)膜、または、様々な組成物(例えば、セラミック、炭素、もしくはステンレス鋼など)と支持媒体とを有する無機膜構造を備えてもよい。さらに、限外濾過膜以外の膜、例えば、逆浸透膜もしくはナノ濾過膜が用いられてもよく、荷電膜もしくは電荷特異的(charge-specific)膜が、以前に述べられた任意のやり方で用いられてもよい。さらに、酸化反応の有害な作用を最小限にするために、制御された雰囲気(例えば、N2またはCO2)の技法を使用することができる。最終抽出物の色を安定化および/または調整するために、様々なダイアフィルトレーション媒体(例えば、酸性水)も使用することができる。
【0014】
クランベリーの向流抽出によって生成された果実ジュースを、本発明の方法において以下のように使用することができる。向流抽出された果実ジュースは、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,320,861号および同第5,419,251号に記載のように調製することができる。簡単に述べると、凍っている生のホールクランベリーを、小枝、葉などの破片を取り除くために清掃ステージに供給し、次いで、果実を選択したサイズに選別する選別ステージに運ぶ。次いで、サイズが選択された果実を、ベリーをスライスして、果皮で保護されていないように果実の内部の果肉を曝露するスライスステージに運ぶ。ホールクランベリーは、好ましくは、6〜8ミリメートル幅にスライスされるように切断する。次いで、清掃、サイズ分け、およびスライスが行われた、凍っているクランベリーを、温水(例えば、約130°F)を用いて、75°F未満の温度(例えば、65°F)まで解凍し、米国特許第5,320,861号に詳述されている向流抽出機を用いる抽出ステージの固体インプット(solid input)に運ぶ。抽出機の液体インプット(liquid input)は、典型的には、果実に由来する水の供給物から得られる。抽出機ステージの液体アウトプット(liquid output)は、果実に由来する水および果実ジュースの高品質の抽出混合物であり、本発明の方法におけるさらなる処理および使用のために収集される。さらに、抽出された果実は、本発明の方法において使用可能なさらなるジュースを生成するための果実供給原料として使用することができる。
【0015】
本発明の多くの態様が説明された。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができることが理解されるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ある体積のプロアントシアニン含有液体供給材料を準備する工程;
(b)プロアントシアニン含有液体供給材料を限外濾過供給タンクに通す工程;
(c)限外濾過供給タンク内の材料を限外濾過膜システムに通して濾過して、材料を、プロアントシアニンが減少した浸透液の流れおよびプロアントシアニンが濃縮された保持液の流れに分画する工程;
(d)プロアントシアニンが減少した浸透液の流れを収集する工程;ならびに
(e)前記体積のプロアントシアニン含有液体供給材料が無くなるまで、プロアントシアニンが濃縮された保持液の流れを限外濾過供給タンクに通し、その後に、プロアントシアニンが濃縮された保持液の流れを収集する工程
を含む、方法。
【請求項2】
プロアントシアニン含有液体供給材料が果実ジュースまたは果実ジュース画分である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
果実ジュースまたは果実ジュース画分が不溶性果実固体を実質的に含まない、請求項1記載の方法。
【請求項4】
果実ジュースまたは果実ジュース画分が、クランベリージュースまたはクランベリージュース画分である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
プロアントシアニンが減少した浸透液の流れを濃縮して、プロアントシアニンが減少した浸透液の濃縮物を作り出す工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
プロアントシアニンが減少した浸透液の流れが逆浸透によって濃縮される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
プロアントシアニンが減少した浸透液の流れが蒸発によって濃縮される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
プロアントシアニンが減少した浸透液の流れが逆浸透および蒸発によって濃縮される、請求項5記載の方法。
【請求項9】
プロアントシアニンが濃縮された保持液の流れを収集したものを濃縮して、プロアントシアニンが濃縮された保持液の濃縮物を作り出す工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
プロアントシアニンが濃縮された保持液の流れが逆浸透によって濃縮される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
プロアントシアニンが濃縮された保持液の流れが蒸発によって濃縮される、請求項9記載の方法。
【請求項12】
プロアントシアニンが濃縮された保持液の流れが逆浸透および蒸発によって濃縮される、請求項9記載の方法。
【請求項13】
プロアントシアニン含有粉末を作り出すために、プロアントシアニンが濃縮された保持液の濃縮物が乾燥される、請求項9記載の方法。
【請求項14】
プロアントシアニンが減少した浸透液の少なくとも一部を処理して、アントシアニンおよび/またはフェノール類が相対的に濃縮され、糖および酸が相対的に減少した第1の画分と、糖および酸が相対的に濃縮され、アントシアニンおよび/またはフェノール類が相対的に減少した第2の画分とを作り出す工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
さらなる処理が、プロアントシアニンが減少した浸透液の少なくとも一部を樹脂カラムに通す工程を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
さらなる処理が、プロアントシアニンが減少した浸透液の少なくとも一部を膜に通す工程を含む、請求項14記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−533648(P2010−533648A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516172(P2010−516172)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/069294
【国際公開番号】WO2009/012070
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(505224798)オーシャン スプレー クランベリーズ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】