プログラム可能な分子バーコード
本開示は、分子バーコードを作製および/または使用する方法に関する。本発明の特定の態様において、バーコードは、1つまたは複数の分岐構造を含んでもよいポリマー骨格を含む。タグは、骨格および/または分岐構造に付着してもよい。バーコードはまた、タンパク質、核酸および他の生体分子または凝集体のような標的に結合できるプローブを含んでもよい。異なるバーコードは、タグの型および位置により識別されうる。他の態様において、バーコードは、コンテナ部およびプローブ部を含む鋳型への1つまたは複数のタグ付きオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより作製されうる。タグ付きオリゴヌクレオチドは、異なる標的に特異的な異なるバーコードを形成するように、モジュラーコード部として設計されてもよい。代替の態様において、バーコードは、モノマーユニットの重合により調製されうる。結合したバーコードは、表面プラズモン共鳴、蛍光またはラマン分光法のような様々なイメージング様式により検出されうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本方法、組成物および装置は、分子バーコードの分野に関する。本発明の具体的な態様は、有機ポリマー骨格から分子バーコードを作製する方法に関する。複数の分子バーコードは、骨格上の異なる部位にタグを付着させることにより同じ骨格を用いて作製されうる。他の態様において、分子バーコードは、プローブ領域および1つまたは複数のコード構成要素を含んでもよい。他の態様において、分子バーコードは、標的分子の検出のための1つまたは複数のプローブに付着したポリマーラマン標識を含んでもよい。
【背景技術】
【0002】
背景
生体分子の検出および/または同定は、医学的診断学、法科学、毒物学、病理学、生物戦、公衆衛生学および多数の他の分野における様々な適用として利用される。研究される生体分子の原則クラスは、核酸およびタンパク質であるが、炭水化物、脂質、多糖、脂肪酸などのような他の生体分子が対象となる。迅速で、信頼性があり、且つ費用効率が高い生体分子の同定の方法、類似した生体分子間を識別する方法、ならびに病原性胞子または微生物のような巨大分子複合体の分析についての必要性が存在している。
【0003】
サザンブロッティング、ノーザンブロッティングまたは核酸チップへの結合のような核酸検出のための標準的方法は、蛍光、化学ルミネセンスまたは放射性のプローブ分子の、標的核酸分子とのハイブリダイゼーションに頼っている。オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションに基づいたアッセイ法において、標的核酸と配列において相補的である標識オリゴヌクレオチドプローブが、核酸に結合かつ検出するために用いられる。より最近では、標的核酸に結合するための何百個または何千個という付着したオリゴヌクレオチドプローブを含みうる、DNA(デオキシリボ核酸)チップが設計された。感度および/または特異性に関する問題は、完全には相補的ではない配列間の核酸ハイブリダイゼーションに起因する可能性がある。または、試料における標的核酸の低レベルの存在は、検出されない可能性がある。
【0004】
様々な技術を、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの同定に利用することができる。一般的に、これらは、抗体の結合および検出を含む。抗体に基づいた同定は、かなり迅速であるが、そのようなアッセイは、時々、高レベルの偽陽性または偽陰性を示す場合がある。これらのアッセイの費用は高く、1つより多い標的の同時アッセイは困難である。さらに、方法は、アッセイが行われうる前に、抗体が、対象となる標的タンパク質に対して調製されていることを必要とする。
【0005】
分子生物学、遺伝学、疾患診断、および薬物応答性の予測における多数の適用は、核酸配列変異体の同定を含む。サンガーのジデオキシシーケンシング法およびハイブリダイゼーションによるシーケンシング法を含む核酸シーケンシングのための方法は、比較的遅く、高価で、大きな労働力を要する傾向があり、放射性タグまたは他の毒性化学物質の使用を含む場合がある。既存の方法はまた、1反応において得ることができる配列情報の量に関して制限され、典型的には、約1000塩基またはそれ未満までである。より迅速で、費用効率が高く、自動化された核酸シーケンシング法の必要性が存在している。
【0006】
図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の開示された態様の特定の局面をさらに実証するために含まれる。態様は、本明細書に提示された詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つまたは複数への参照によってより良く理解されうる。
【発明の開示】
【0007】
例示的態様の説明
以下の詳細な説明は、本発明の開示された態様のより完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細を含む。しかしながら、態様は、これらの特定の詳細なしに実施されうることは、当業者に明らかであると思われる。他の例では、当技術分野において周知である装置、方法、手順および個々の構成要素が、本明細書に詳細に記載されている。
【0008】
定義
本明細書に用いられる場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つまたは1つより多いものを意味しうる。
【0009】
本明細書に用いられる場合、「複数」のものとは、2つまたはそれ以上のものを意味する。
【0010】
本明細書に用いられる場合、「核酸」は、DNA、RNA(リボ核酸)、それらの一本鎖、二本鎖または三本鎖、および任意の化学修飾を含む。事実上、核酸の任意の修飾が企図される。「核酸」は、2塩基以上のオリゴヌクレオチドから完全長染色体DNA分子までのほとんど任意の長さでありうる。核酸は、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0011】
「プローブ」分子は、1つまたは複数の標的への選択的および/または特異的結合を示す任意の分子である。本発明の様々な態様において、各異なるプローブ分子は、異なるプローブの集団からの特定のプローブの結合が検出されるように、識別可能なバーコードに付着しうる。態様は、用いられうるプローブ分子の型に関して制限されない。限定されるわけではないが、オリゴヌクレオチド、核酸、抗体、抗体断片、結合タンパク質、受容体タンパク質、ペプチド、レクチン、基質、インヒビター、アクチベーター、リガンド、ホルモン、サイトカインなどを含む、当技術分野において公知の任意のプローブ分子を用いることができる。特定の態様において、プローブは、異なる標的を同定するために、1つまたは複数のバーコードに、共有結合性にまたは非共有結合性に付着した、抗体、アプタマー、オリゴヌクレオチドおよび/または核酸を含んでもよい。
【0012】
例示的態様
開示された方法、組成物および装置は、核酸およびタンパク質のような生体分子の検出、同定ならびに/またはタグ付けに利用される。本発明の特定の態様において、方法、組成物および装置を、骨格の様々な修飾を行うことにより単一の有機骨格から複数のバーコードを作製するために用いることができる。態様は、単一の骨格に限定されず、1つまたは複数の異なる骨格を利用してもよい。利点には、骨格に沿ってタグの付着部位を変えることにより、同じ骨格で異なるバーコードを作製する能力が含まれる。他の態様は、生体分子の迅速な同定のための、または生体分子にタグを付けるための、ポリマーラマン標識を作製することに関する。他の利点には、感度が高くかつ正確な、ポリペプチドの検出および/または同定が含まれる。
【0013】
合成によるバーコード
本発明の一つの態様において、図1に示されているが、バーコード骨格110は、核酸、ペプチド、多糖および/または化学的に誘導されたポリマーの配列の任意の組み合わせを含む、有機的構造を含むポリマー鎖から形成されうる。特定の態様において、骨格110は、一本鎖または二本鎖核酸を含みうる。いくつかの態様において、骨格は、オリゴヌクレオチド、抗体またはアプタマーのようなプローブ部分150に付着しうる。骨格110は、追加の形態的多様性およびタグ付着部位を生じるために、1つまたは複数の分岐構造120で修飾されうる。分岐構造120は、当技術分野において周知の技術を用いて形成されうる。例えば、バーコード100が二本鎖核酸を含む場合、分岐構造120は、オリゴヌクレオチドの合成および一本鎖鋳型核酸へのハイブリダイゼーションにより形成されうる。オリゴヌクレオチドは、配列の一部(例えば、5'末端)は鋳型と相補的であり、かつ一部(例えば、3'末端)はそうではないように、設計されうる。従って、バーコード100は、二本鎖配列のセグメントおよび一本鎖分岐構造120の短いセグメントを含む。図1に開示されているように、タグ130は、例えば、分岐構造120の一本鎖部分と配列において相補的である標識130オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより、バーコードに付加されうる。
【0014】
オリゴヌクレオチド模倣体を、有機骨格110を作製するために用いてもよい。ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間結合、すなわち骨格の両方は、新規な群で置換されうる。プローブ150を、適切な核酸標的化合物とハイブリダイズするために用いることができる。優れたハイブリダイゼーション性質をもつことが示されたオリゴマー化合物またはオリゴヌクレオチド模倣体の一つの例は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれている。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、例えばアミノエチルグリシン骨格で置換される。この例において、核酸塩基は、保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子へ直接的にまたは間接的に結合される。PNA化合物の調製を開示するいくつかの米国特許は、例えば、米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;および第5,719,262号を含む。さらに、PNA化合物は、Nielsen et al. (Science, 1991, 254, 1497-15)に開示されている。
【0015】
一つのバーコード100をもう一つから識別するために、タグ130を、骨格110へ、または1つもしくは複数の分岐構造120へ、直接的に付加してもよい。バーコード100は、1つまたは複数のタグ130にもう一つの分子140(例えば、抗体)を付着させることによりさらに修飾されてもよい。かさ高な群が用いられる場合、分枝部位120に付着したタグ部分130の修飾は、標的分子とのプローブ150の相互作用にとって、立体障害をより低く与える。タグ130を、イメージング様式、例えば、蛍光顕微鏡法、FTIR(フーリエ変換赤外)分光法、ラマン分光法、電子顕微鏡法、および表面プラズモン共鳴法により読み取ることができる。イメージングの異なる変形型は、限定されるわけではないが、伝導率、トンネル電流、容量性電流などを含む、タグ130の形態学的、トポグラフィー的、化学的および/または電気的性質を検出することが知られている。用いられるイメージング様式は、タグ部分130および発生したその結果としてのシグナルの性質に依存する。限定されるわけではないが、蛍光、ラマン、ナノ粒子、ナノチューブ、フラーレンおよび量子ドットタグ130を含む、公知のタグ130の異なる型を、それらのトポグラフィー的、化学的、光学的および/または電気的性質によりバーコード100を同定するために用いることができる。そのような性質は、用いられるタグ部分130の型、および骨格110または分岐構造120上のタグ130の相対的位置の両方の機能として変化し、結果として、各バーコード100について発生する識別可能なシグナルを生じる。
【0016】
図2に示されているように、特定の標的を認識する異なるプローブ210、220、230は、識別可能なバーコード201、202、203に付着しうる。この例示的態様において、複数のタグ240、250、260は、異なる部位においてバーコード201、202、203に付着しうる。タグ240、250、260は、例えば、ラマンタグまたは蛍光タグを含みうる。隣接したタグは、例えば、蛍光共鳴エネルギー移転(FRET)または他の機構により互いに相互作用できるため、タグ部分240、250、260の同じセットから得られるシグナルは、タグ240、250、260間の位置および距離に依存して変化しうる(実施例1参照)。従って、類似したまたは同一の骨格をもつバーコード201、202、203は、識別可能に標識されうる。標的分子結合の特異性は、抗体、アプタマーまたはオリゴヌクレオチドのようなプローブ210、220、230の、バーコード201、202、203への付着により付与されうる。所定のプローブ210、220、230特異性に対応するバーコード201、202、203シグナルは知られているため、どのプローブ210、220、230が試料における標的に結合しているかを測定することにより、分子の複雑な混合物を分析すること、および個々の種を検出することが可能である。
【0017】
本発明の特定の態様において、図1および図2に示されているが、バーコード100、201、202、203の骨格110は、ホスホジエステル結合、ペプチド結合および/またはグリコシド結合から形成されうる。例えば、標準ホスホラミダイト化学作用が、DNA鎖を含む骨格110を作製するために用いられうる。ホスホジエステル結合された骨格110を作製するための他の方法は知られており、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR(商標))増幅である。骨格110の末端は、異なる官能基、例えば、ビオチン、アミノ基、アルデヒド基またはチオール基を有してもよい。官能基を、プローブ150、210、220、230に結合するために、またはタグ130、240、250、260を付着させるために、使用することができる。タグ130、240、250、260を、検出を容易にするために、異なるサイズ、電気的または化学的性質を得るようにさらに修飾することができる。例えば、抗体は、ジゴキシゲニンまたはフルオレセインタグ130、240、250、260に結合するように用いられうる。ストレプトアビジンは、ビオチンタグ130、240、250、260に結合するように用いられうる。金属原子は、例えば、酵素タグ130、240、250、260を用いる金属イオン溶液の触媒還元により、バーコード100、201、202、203上に沈着しうる。バーコード100、201、202、203がペプチド部分を含む場合、ペプチドは、タグ130、240、250、260修飾140のためにリン酸化されうる。修飾140タグ130、240、250、260は、当技術分野において公知の様々な技術により検出されうる。
【0018】
本発明の特定の態様において、1つまたは複数のバーコード100、201、202、203を含む溶液を、セキュリティ追跡目的として物体に適用してもよい。そのような方法は、当技術分野において公知である。例えば、英国の会社(Smart Water Ltd.)は、デジタルDNAの鎖を含む流動体で貴重品に印を付ける方法を開発した。DNAは、事実上、品物から洗い落とすことは不可能であり、高価な品物または家宝を一意的に同定するために用いられうる。DNAは、任意の法医学研究所により検出されうる。そのような方法はまた、本明細書に開示された分子バーコード100、201、202、203で品物に印を付けるために利用されうる。そのような適用において、バーコード100、201、202、203の検出は、DNA配列に基づいた法医学的分析を必要としない。
【0019】
ハイブリダイゼーションによるバーコード
本発明の他の態様は、図5に示されているが、ハイブリダイゼーションによりバーコード530を作製する方法に関する。この態様において、バーコード530は、オリゴヌクレオチド520にハイブリダイズした核酸500を含む。1つまたは複数のタグ部分510は、例えば、公知の化学合成技術により作製された、既知の配列のオリゴヌクレオチド520に付着しうる。タグ付きオリゴヌクレオチド520を作製するための様々な方法は、当技術分野において周知である。バーコード530は、一連のタグ付きオリゴヌクレオチド520の、一本鎖DNA鋳型500へのハイブリダイゼーションにより形成される。鋳型500は、コンテナ部540およびプローブ部550を含む。プローブ部550は、相補的な標的核酸配列にハイブリダイズするように設計される。または、プローブ部550は、タンパク質、ペプチドまたは他の標的生体分子に結合できるアプタマー配列を含んでもよい。様々な態様において、プローブ領域540は、2〜30、4〜20または14〜15ヌクレオチド長の間でありうる。プローブ550の長さは、制限はなく、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、200、250ヌクレオチドまたはより長いプローブ部550が企図される。
【0020】
図3は、本発明の様々な態様において使用される例示的なラマンタグ付きオリゴヌクレオチドを示している。ラマンタグ310、320、330は、異なるスペクトルを生じるように同じオリゴヌクレオチド配列の異なるヌクレオチドに付着しうる(図4)。例えば、オリゴヌクレオチド302、303および304は、タグ330の位置が変化している同じオリゴヌクレオチド配列を示す。図4に示されているように、図3に開示されたタグ付きオリゴヌクレオチド301、302、303、304についてのラマンスペクトルは、識別可能である。図4は、同じオリゴヌクレオチド配列302、303、304に付着した同じラマンタグ330の位置における小さな変化が、ラマンスペクトルの異なるパターンを生じうることを実証している(より詳しくは、以下の実施例1および2を参照のこと)。
【0021】
図5に示された本発明の態様において、バーコード530は、1つまたは複数のタグ付きオリゴヌクレオチド520を鋳型分子500のコンテナ部540にハイブリダイズさせておく時、形成されうる。タグ付きオリゴヌクレオチド520の配列は、プローブ部550とではなく、コンテナ部540と相補的であるように設計される。鋳型500へのハイブリダイゼーションにより結合されたタグ部分510の組み合わせは、識別可能なシグナルを与えるように選択される。使用可能なシグナルの型への制限はなく、限定されるわけではないが、ラマン分光法、FTIR、表面プラズモン共鳴を含む任意の公知の検出技術が利用されうる。ハイブリダイゼーション後、バーコード530は、限定されるわけではないが、限外濾過、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、ヒドロキシルアパタイトカラムクロマトグラフィー、超遠心分離などを含む公知の方法により、ハイブリダイズしていないオリゴヌクレオチド520および鋳型鎖500から分離されうる。バーコード530作製のためのこの方法は、標準技術に対して、高い標識効率をもち、作製されるために減少した数のタグ付きオリゴヌクレオチド520を必要とし、各タグ付きオリゴヌクレオチド520は、別々かつ同定可能なバーコード530を構成する。当業者には明らかなように、図5に示された方法は、ずっと少ない数のタグ付きオリゴヌクレオチド520を用いて多数の識別可能なバーコード530の形成を可能にする、バーコード530作製のための組み合わせ方法を示している。
【0022】
図5に示された本発明の特定の態様において、鋳型500配列の長さは、プローブ部550、およびコンテナ部540にハイブリダイズするべきタグ付きオリゴヌクレオチド520のサイズから決定されうる。例えば、「n」塩基長のプローブ部550および「m」塩基長の個々のタグ付きオリゴヌクレオチド520について、鋳型500の長さは、(1+m)×n(または(n×m)+n)と等しい。例えば、9塩基長のプローブ部550および5塩基長のタグ付きオリゴヌクレオチド520とすれば、すべての可能な9-マーのプローブ配列について固有のバーコードを与えるために必要とされる鋳型500の長さは、(1+5)×9、すなわち54塩基である。
【0023】
部分的配列重複を許すと、所定の54塩基鋳型は、完全ハイブリダイゼーションを想定する50個までの異なる5-マー配列を含みうる(すなわち、5-マーは、鋳型500の最後の4塩基にのみ結合することができない)。そのような鋳型に含まれる可能な異なるm-マーの数はまた、(n+(n×m)−m+1)に等しいとして計算されうる。他方、5-マーの各位置は4個の可能な塩基のうちの1個を含んでもよく、かつ5つの位置があるから、合成されうる5-マーの45個(すなわち、1024個)の可能な配列がある。これは、コード構成要素として用いられうる5-マーの4m−(n+(n×m)−m+1)個の型があることを意味する。この例においては、コード構成要素として用いられうる5-マーの974(1024−50)個の型がある。コンテナ部540は、利用可能な974個の型から、一連の固有5-マーにハイブリダイズするように設計される。適切なコード配列を含むタグ付きオリゴヌクレオチド520は、導入され、コンテナ部540にハイブリダイズしうる。各タグ付きオリゴヌクレオチド520は、それが他のコード構成要素から同定されうるように、固有のシグナルを与えるタグを含む。
【0024】
原理は、例示的図解の参照により説明することができる。プローブ部550が4塩基長(n=4)であり、かつタグ付きオリゴヌクレオチド520が3塩基配列(m=3)を含む場合、鋳型500の長さは、16塩基長((1+3)×4)である。これは、結果として、12塩基のコンテナ部540および4塩基(4-マー)のプローブ部550を生じる。m=3であるから、利用できる64(43)個の可能な3-マー配列がある。各16塩基の鋳型500は、3-マーの14個の型まで含むことができる(4+(3*4)−3+1=14)。任意の鋳型500配列は、下の配列番号:1に示されており、左側にプローブ部550(下線の引かれた)および右側にコンテナ部540を含む。
【0025】
この例において、16-マーは、3-マーのいずれも同一ではないため、14個の異なる3-マー配列(AGA GAA AAA AAG AGT GTA TAC ACA CAT ATA TAT ATG TGT GTC)を含む。誤った位置でのコード構成要素の結合を防ぐために、一意的にタグを付けられた3-マーのコード配列の少なくとも18個の異なる型(=14+4)が、すべての可能な4-マーのプローブ配列550に識別可能にタグを付けるために必要とされる。(必要とされる固有のコード構成要素の数は、((2×n)+(n×m)−m+1)に等しいとして計算されうる。)配列番号:1に開示された特定のコンテナ配列540に関して、たった4個のタグ付き3-マー(TCA、TGT、ATGおよびCAG)が必要とされる。各タグ付き3-マーは、鋳型500上の唯一の部位において結合できる。タグ付きオリゴヌクレオチド520はコンテナ部540と配列において相補的であるため、コンテナ部540における「A」は、オリゴヌクレオチド520における「T」に結合し、「G」は「C」に結合し、および逆の場合も同じである。プローブ部550の配列における任意の変化は、対応する変化がコンテナ部540配列においてなされることを必要とする。例えば、プローブ配列550が、AGAAからAGTAへ変化させられる場合には、プローブ550におけるAGTはコンテナ540におけるAGTと重複するため、コンテナ配列540もまた変化されなければならない。可能な新しい鋳型500配列は、下の配列番号:2に示されている。
【0026】
対応するオリゴヌクレオチド520配列は、TCT TGT ATAおよびCAGである。この場合もやはり、それぞれは、コンテナ部540における唯一の部位において結合し、プローブ部550に結合することができない。すべての可能な4-マーのプローブ配列の固有のタグ付けを可能にするために、540は、18個の異なる3-マーのタグ付きオリゴヌクレオチド520を必要とし、それは、完全プローブライブラリーを用いるハイブリダイゼーションによるシーケンシング法のような、公知の方法を用いるすべての可能な3-マーの配列を作製するために必要とされる64個のタグ付き3-マーの520よりはるかに少ない。64個の可能な3-マーの中からの18個のみの使用はまた、互いにハイブリダイズすることができる可能性があるオリゴヌクレオチド520配列を用いることに関する問題を避ける。
【0027】
タグ付きオリゴヌクレオチド520(またはコード構成要素)を、バーコード530合成の前に前もって調製してもよく、精製および保存してもよい。m-マーの所定のセットを、任意の必要とされるプローブ550配列についてのバーコード530を調製するために用いることができる。これは、各タグ付きプローブ550分子が別々に調製されかつ個々に標識および精製される既存の方法と比較して、プローブ550調製の効率を非常に向上させる。本明細書に開示されたモジュラーシステムは、公知の方法と比較して、標識化の大きな効率の良さを示している。
【0028】
通常、シグナル(標識)構成要素を核酸鎖へ付着させることは、標識ヌクレオチドの使用または合成後標識工程を含み、その両方は、問題を引き起こす可能性がある。DNAポリメラーゼは、典型的には、オリゴヌクレオチド520または核酸への取り込みのための標識ヌクレオチドを効率的には処理することができない。複数のシグナル構成要素が単一の核酸鎖に付加されることになっている場合、取り込みの効率は、劇的に減少する。1つまたは2つより多い標識をもつDNA鎖は、多量の出発物質、および低い取り込み効率のために標識されていないまたは部分的に標識された分子から分離するための標識分子の実質的な精製を必要とする。本明細書に開示された複数の短いタグ付きオリゴヌクレオチド520の使用は、そのような問題を避ける。
【0029】
バーコード530分子が特定の標的分子について設計される場合、バーコード530の構造およびシグナル構成要素は固定化され、バーコード530は、一つの目的のためにのみ適している。バーコード530が他の標的について必要とされる場合には、それぞれは、出発から調製されなければならない。前もって調製されかつ保存されうる短いタグ付きオリゴヌクレオチド520を用いる本モジュラーシステムは、任意の標的についてのバーコード530作製の順応性、簡単さおよびスピードを非常に向上させる。必要とされる一意的にタグを付けられたコード構成要素の数の低減もまた、調製および同定されなければならない識別可能なタグ付きプローブ550の数を低減させるため、費用を減少させ、かつ検出の効率を向上させる。
【0030】
図6は、上記で考察されたバーコードのようなバーコードを作製するための例示的方法を示している。例えば、コード構成要素601 602 603 604は、短いオリゴヌクレオチド(例えば、3-マー)を合成し、かつタグをオリゴヌクレオチドに連結させること、またはタグによりすでに修飾されたヌクレオチドを取り込むことにより、作製されうる。オリゴヌクレオチドに連結されたタグは、ラマンタグに限定されない。例えば、蛍光、ナノ粒子、ナノチューブ、フラーレンおよび量子ドットタグもまた、オリゴヌクレオチドに付着しうる。オリゴヌクレオチドへの付着の様式は変化しうる。タグは、オリゴヌクレオチドへ直接的に付着してもよく、または分岐構造を通して付着してもよい。コード構成要素601 602 603 604としての使用のタグ付きオリゴヌクレオチドを作製するための様々な方法は、当技術分野において周知である。タグ付きコード構成要素601 602 603 604と配列において相補的である、延長プローブ領域を有する鋳型606が、作製されうる。タグ付き構成要素601 602 603 604は、個々にかまたは混合物としてかのいずれかで、鋳型606とハイブリッド形成605をする。結果生じたバーコード607は、検出可能なタグをもつ二本鎖領域、および標的分子に結合するための一本鎖プローブ領域を含む。
【0031】
図7は、バーコードの作製および使用のための概略図を示している。バーコードは、上記で考察されているように鋳型分子およびコード構成要素を創出することにより作製されうる。コード構成要素は、上記で考察されているように鋳型にハイブリダイズすることができ、バーコードを生じる。一旦、バーコードが作製されたならば、それは、試料においてオリゴヌクレオチド、核酸もしくは他の標的分子を検出するため、または核酸分子をシーケンシングするためのような、様々な目的のために用いられうる。図7に示されているように、核酸標的は、1つまたは複数のバーコードを含む溶液への標的分子の繰り返し曝露によりシーケンシングされうる。バーコードの標的へのハイブリダイゼーションは、標的鎖における相補配列の存在を示す。その工程は、繰り返されてもよく、異なるバーコードへの曝露は、異なる相補配列の存在を示している。「ショットガン」シーケンシング法の工程と同様に、相補配列の一部は、重複する場合がある。重複している相補配列は、集合して完全な標的核酸配列へと構築されうる。
【0032】
バーコードは、試料へ導入され、標的分子への結合は、任意の公知のイメージング様式、例えば、蛍光顕微鏡法、FTIR(フーリエ変換赤外)分光法、ラマン分光法、表面プラズモン共鳴法、および/または電子顕微鏡法、により検出されうる。
【0033】
共有結合によるポリマーラマン標識バーコード
本発明の特定の態様において、ポリマーラマン標識バーコードが作製されうる。一般的に、ポリマーラマン標識は、ラマンタグが直接的にまたはスペーサー分子を介して付着している骨格部分を含む。骨格部分は、限定されるわけではないが、ヌクレオチド、アミノ酸、単糖、またはビニル、スチレン、カーボネート、アセテート、アクリルアミドなどのような様々な公知のプラスチックモノマーのいずれかを含む、ポリマー化に適した任意の型のモノマーから構成されうる。ポリマーラマン標識は、オリゴヌクレオチド、抗体、レクチンまたはアプタマープローブのようなプローブ部分に付着しうる。ポリマー骨格がヌクレオチドモノマーから構成されている場合、抗体プローブへの付着は、プローブおよび骨格の両方の構成要素の異なる標的分子への結合の可能性を最小限にする。または、骨格についてヌクレオチドモノマーを用いる本発明の特定の態様において、ポリマーラマン標識へ取り込まれたヌクレオチドの配列を、標的核酸と相補的であるように設計さしてもよく、プローブ機能がポリマーラマン標識へ組み入れられることを可能にする。ヌクレオチドに基づいた骨格は、それ自身、付着したラマンタグの検出に干渉しうる可能性があるラマン発光スペクトルを生じるため、いくつかの態様において、有るか無しかのラマン発光シグナルを生じる骨格構成要素が、シグナル検出を最適化し、かつシグナル対ノイズ比を最小限にするために用いられうる。以下の段落は、概して、ポリマーラマン標識に関するものであるが、非限定的に、使用されるモノマーユニットの特定の型についてである。
【0034】
ポリマーラマン標識バーコードは、上記で考察されているように、標的分子検出、同定および/またはシーケンシングのために用いられうる。プローブ標識および検出のための現行の方法は、様々な不都合を示す。例えば、有機蛍光タグに付着したプローブは、高い検出感度を提供するが、多重検出能力が低い。蛍光タグは、幅広い発光ピークを示し、蛍光共鳴エネルギー移転(FRET)は、単一プローブ分子に付着しうる異なる蛍光タグの数を制限し、一方、自己消光は、蛍光シグナルの量子収量を低減させる。蛍光タグは、プローブが発色団の1つより多い型を含む場合には、複数の励起源を必要とする。それらはまた、光退色のために不安定である。可能性のあるプローブタグのもう一つの型は量子ドットである。量子ドットタグは、複数の層をもつ比較的大きな構造である。作製するのに複雑であることに加えて、量子ドット上のコーティングは、蛍光発光に干渉する。量子ドットタグを用いて発生されうる識別可能なシグナルの数について制限がある。プローブ標識の第三の型は、色素含浸ビーズからなる。これらは、サイズが非常に大きく、しばしば、プローブ分子のサイズ範囲より大きくなりがちである。色素含浸ビーズの検出は、定量的ではなく、定性的である。
【0035】
ラマン標識は、鋭いスペクトルピークを生じるという利点を提供し、プローブに付着されるより多数の識別可能な標識を可能にする。表面増強ラマン分光法(SERS)または類似した技術の使用は、蛍光タグに匹敵する検出の感度を可能にする。例示的なラマンタグ分子の発光スペクトルは、図8に示されている。図から見てもわかるように、ラマンタグ分子は、様々な識別可能なスペクトルを与える。図8は、以下のラマンタグ分子のスペクトルを示す:NBU(オリゴヌクレオチド5'-(T)20-デオキシネブラリン-T-3');ETHDA(オリゴヌクレオチド5'-(T)20-(N-エチルデオキシアデノシン)-T-3');BRDA(オリゴヌクレオチド5'-(T)20-(8-ブロモアデノシン)-T-3');AMPUR(オリゴヌクレオチド5'-(T)20-(2-アミノプリン)-T-3');SPTA(オリゴヌクレオチド5'-ThiSS-(T)20-A-3');およびACRGAM(オリゴヌクレオチド5'-アクリダイト-(G)20-アミノ-C7-3')。図13は、核酸スペクトル自身と比較した、1核酸、アデニンの核酸類似体の一部のSERSスペクトルを示す;2-Fアデニン、4-Am-6-HS-7-デアザ-8-アザ-アデニン;キネチン;N6-ベンゾイル-アデニン;DMAA-A;8-アザ-アデニン;アデニンチオール、およびプリン誘導体、6-メルカプロプリン。表1は、ラマン分光法において使用される可能性のある他のタグ分子を列挙している。当業者は、使用されるラマンタグは本明細書に開示されたものに限定されず、プローブに付着かつ検出されうる任意の公知のラマンタグを含みうることを認識しているものと思われる。多くのそのようなラマンタグは、当技術分野において公知である(例えば、www.glenres.comを参照)。
【0036】
(表1)ラマンタグ分子の例
2',3'-ddA-5'-CEホスホラミダイト
2'-デオキシアデノシンa-チオトリホスフェート(15 mM)(2'dATTPaS)
2'-フルオロ-アデノシンa-チオトリホスフェート(10 mM)(2'-F-ATTPaS)
2'-OMe-A-CEホスホラミダイト
2'-OMe-A-Meホスホラミダイト
2'-OMe-A-RNA
2'-OMe-アデノシンa-チオトリホスフェート(20 mM)(2'-O-Me-ATTPaS)
2'-OMe-Pac-A-CEホスホラミダイト
2-アミノ-dA-CEホスホラミダイト
2-アミノプリンリボシドa-チオトリホスフェート(20 mM)(2-AP-TTPaS)
2-F-dA-CEホスホラミダイト
3'-A-TOM-CEホスホラミダイト
3'-dA-CEホスホラミダイト
3'-dA-CPG
7-デアザ-アデノシンa-チオトリホスフェート(1 mM)(7-DATTPaS)
7-デアザ-dA-CEホスホラミダイト
8-アミノ-dA-CEホスホラミダイト
8-Br-dA-CEホスホラミダイト
8-オキソ-dA-CEホスホラミダイト
A-TOM-CEホスホラミダイト
A-RNA-TOM-CPG
アデノシンa-チオトリホスフェート(0.5 mM)(ATTPaS)
Bz-A-CEホスホラミダイト
Bz-A-RNA-CPG
dA-5'-CEホスホラミダイト
dA-5'-CPG
dA-CEホスホラミダイト
dA-CPG 1000
dA-CPG 2000
dA-CPG 500
dA-高荷重-CPG
dA-Meホスホラミダイト
dA-Q-CPG 500
ジアミノプリンリボシドa-チオトリホスフェート(0.25 mM)(DTTPaS)
【0037】
図9は、ポリマーラマン標識を形成するように2つまたはそれ以上のラマンタグ付きモノマーユニット901、902を数珠繋ぎにすることによりバーコードを作製するための例示的方法を示している。ポリマーラマン標識は、標的分子への結合および検出のためのプローブ部分に付着しうる。ポリマーラマン標識は、第二モノマーユニット902へ共有結合906により付着した第一モノマーユニット901を含みうる。より大きなシグナル複雑性が必要とされる場合、追加のモノマーユニット903が付着しうる。モノマーユニット901 902は、骨格909へ直接的に付着した、またはスペーサー905により付着した、1つまたは複数のラマンタグ部分907a、907bを含みうる。スペーサー905は、例えば、5個以上の炭素原子を含みうる。スペーサー905の長さは、例えば、2〜30、2〜20、または3〜15炭素原子長の間で変わりうる。最も効果的なスペーサー905は、脂肪族炭素(例えば、アミノカプロン酸を通して)、ペプチド鎖(例えば、リシンの側鎖を通して連結される)、またはポリエチレングリコール(例えば、ホスホラミダイト)のように可撓性である。スペーサー905は、炭素、窒素、イオウおよび/または酸素原子を含みうる。タグ付きモノマーユニット901 902を作製および架橋結合するための様々な方法は、当技術分野において公知である。様々なタグ付きモノマーユニットはまた、商業的供給元(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)から入手可能である。
【0038】
図9に示されているように、バーコードは、1つのモノマーユニット901をもう1つのモノマーユニット902へ官能基904、908を通して共有結合することにより形成されうる。官能基904、908は、例えば、ビオチン、アミノ基、アルデヒド基、チオール基、または当技術分野において公知の任意の他の反応性基を含みうる。各モノマーユニット901、902は、少なくとも2つの官能基904、908を有し、1つがモノマーの各末端に付着している。架橋結合の前に、1つの官能基904、908は、もう1つのモノマーユニット901、902へ付着するように活性化(脱保護化)されうるが、一方、第二官能基904、908は、相互作用から保護された、またはブロックされた(例えば、化学修飾により)ままである。モノマーユニット901、902の各末端は、活性化された場合、もう一つのモノマーユニット901、902に結合することができる。様々な態様において、ポリマーラマン標識は、2〜30、4〜20、または5〜15個のモノマーユニット901、902(例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、プラスチックモノマーなど)を含みうる。共有結合906により数珠繋ぎにされた2個のモノマーユニット901、902から構成されるポリマーラマン標識910の例が図示されている。骨格909にスペーサー分子905を介して付着したラマンタグ907a 907bが、示されている。モノマーユニット901、902は、共有結合906により、この場合には、例えば、カルボキシル基の第1級アミノ基とのカルボジイミド触媒反応により形成されたアミド結合により、互いに付着している。
【0039】
ラマンタグ907a 907bは、1つまたは複数の二重結合、例えば、炭素から窒素への二重結合を含むことが企図される。ラマンタグ907a 907bは、側基が環構造に付着している、環構造を含むことも企図される。側基は、限定されるわけではないが、炭素原子および水素原子だけでなく、窒素原子、酸素原子、イオウ原子、およびハロゲン原子も含まれうる。検出のためにラマンシグナル強度を増加させる側基は、特に役に立つ。効果的な側基は、プリン、アクリジン、ローダミン色素およびシアニン色素のような共役環構造をもつ化合物を含む。ポリマーラマン標識の全体的な極性は、親水性であることが企図されるが、疎水性側基も含まれうる。
【0040】
ポリマーラマン標識を作製するための例示的方法は図10に示されている。固体支持体1001は、増加するポリマーラマン標識を繋ぎとめるために用いられうる。支持体1001は、例えば、多孔性ガラスビーズ、プラスチック、多糖、ナイロン、ニトロセルロース、複合材料、セラミック、プラスチック樹脂、シリカ、シリカ系物質、ケイ素、改質ケイ素、炭素、金属、無機ガラス、光ファイバー束、または公知の固体支持体の任意の他の型を含みうる。1つまたは複数のリンカー分子1010(炭素原子鎖のような)は、支持体1001に付着しうる。リンカー分子1010の長さは変わりうる。例えば、リンカー1010は、長さが2〜50原子でありうる。使用されるリンカー1010の様々な型は、上記で考察されている。1つより多い長さまたは型のリンカー分子1010が固体支持体1001に付着していることが、企図される。リンカー1010は、モノマーユニット1009の段階的付着によりポリマーラマン標識を増加させるための付着部位としての役割を果たす。図10は、2つのモノマーを含むポリマーラマン標識の付着した構成要素1005を示す。
【0041】
付着される各モノマーユニット1009は、2つの官能基1006、1007を含み、1つがモノマーユニット1009の各末端にある。モノマーユニット1009の付加は、モノマーユニット1009の先端の官能基1006の選択的活性化により生じる。活性化された官能基1006は、構成要素1005の増加していく末端におけるもう一つの活性化官能基1004に付着しうる。ポリマーの化学合成の方法は、当技術分野において公知であり、例えば、オリゴヌクレオチドのホスホラミダイト合成および/またはペプチドの固相合成を含みうる。官能基1004、1006、1007を保護および脱保護する方法も、オリゴヌクレオチドまたはペプチド合成の技術においてのような、当技術分野において周知である。
【0042】
各連続するモノマーユニット1009は、溶液に導入されうる、例えば、アセトニトリルまたは他の溶媒に懸濁されうる。第一モノマーユニット1009の先端の官能基1006は、リンカー分子1010に結合することができる。一旦第一モノマーユニット1009がリンカー分子1010に付着したならば、モノマーユニット1009の他方の末端に付着した官能基1007は、もう一つのモノマーユニット1009が結合するために、化学的処理(例えば、水酸化アンモニウム)により脱保護されうる。付加されうる第二モノマーユニット1009は、活性化された官能基1006および保護された官能基1007を含んでもよく、モノマーユニット1009の指向性付着を可能にする。ポリマーラマン標識の増加していく構成要素1005へのモノマーユニット1009の取り込み後、保護された官能基1004は脱保護され、もう一つのモノマーユニット1009が付加されうる。この工程の追加ラウンドは、適切な長さのポリマーラマン標識が作製されるまで継続されてもよい。
【0043】
いくつかの異なるモノマーユニット1009は、異なるポリマーラマン標識を作製するために、いつでも固体支持体1001に付加していることが企図される。後者の場合、異なるポリマーラマン標識は、適切ならば、合成後、分離されうる。ポリマーラマン標識の長さは、取り込まれたモノマーユニット1009の数に依存して変わるが、各ポリマー標識は、2個以上のモノマーユニット1009を含む。
【0044】
本発明の様々な態様において、ポリマーラマン標識は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個またはそれ以上のラマンタグ1002、1003、1008を含んでもよい。単一のポリマーラマン標識に付着した個々のラマンタグ1002、1003、1008は、それぞれ異なっていてもよい。または、ポリマーラマン標識は、同じラマンタグ1002、1003、1008の2つまたはそれ以上のコピーを含んでもよい。識別可能なポリマーラマン標識の数を最大にするために、複数のラマンタグ1002、1003、1008が、単一のポリマーラマン標識に取り込まれている場合、それらは一般的に異なるであろうことが熟考される。上記で考察されているように、ラマンタグ1002、1003、1008は、ポリマーラマン標識1009の骨格1011に直接的に付着してもよく、またはスペーサー分子を介して付着してもよい。
【0045】
ポリマーラマン標識は、ラマン分光検出の感度を考慮しながらも、モノマー標識より、スペクトル区別化のためのより幅広い種類を提供する。単一のポリマーラマン標識に付着した複数のラマンタグ1002、1003、1008の使用は、非常に多数の作製される識別可能なポリマーラマン標識を可能にする。10個の異なる可能なタグ付きモノマーユニット1009から作製された4-マーのポリマーラマン標識は、5000個を超える識別可能なラマン特性を生じると考えられる。15個の異なるタグ付きモノマーユニット1009については、30,000個を超える識別可能なラマン特性が結果として生じると考えられる。50,000個を超える識別可能なラマン特性は、たった10〜20個の異なるタグ付きモノマーユニット1009で生じうる。モノマーユニット1009のサイズは、ヌクレオチド(およそ1000ダルトン)とほぼ同じであるため、4-マーのラマン標識の平均サイズは約4000ダルトンである。それゆえに、ポリマーラマン標識は、ほとんど立体障害をもたずにプローブと標的の結合を可能にすると考えられる。
【0046】
本発明のいくつかの態様において、ポリマーラマン標識へ取り込まれたモノマーユニット1009は、骨格に付着したスペーサー分枝を有し、もう一つの反応性基1004、1006、1007は、スペーサー分枝に付着している。反応性基1004、1006、1007は、ポリマーの合成中に保護または脱保護されうる。ラマンタグ1002、1003、1008は、ポリマー合成後、または増加するポリマー1005へのモノマーユニット1009の取り込み後、脱保護されたスペーサー分枝に付着しうる。
【0047】
本発明の特定の態様において、図11Aに示されているが、ポリマーラマン標識1105を支持体なしに作製してもよい。ラマンタグ1101a 1101bは、官能性を持たせたラマンタグ(モノマーユニット)1103a 1103bを作製するために、官能基1102a 1102b、例えば、ビオチン、アミノ基、アルデヒド基、チオール基、または反応性基の任意の他の型を付加するように化学的に変化されてもよい。モノマーユニット1103a 1103bは、その後、重合にかけられて、サブポリマーユニット1104a 1104bを生じる可能性があり、それぞれは、モノマーユニットの所定の数を含む。サブポリマーユニット1004a 1004bは、予め決められた比(例えば、1:1、1:2、1:10など)でいっしょに混合され、さらなる重合にかけられて、最終のポリマーラマン標識1105を生じうる。示された例において、ポリマーラマン標識1105は、一つの型のモノマーユニット1103aの「n」コピーおよび第二型のモノマーユニット1103bの「m」コピーを含む。
【0048】
図11Bは、支持体なしで、ポリマーラマン標識1111を作製するための代替方法を示している。この場合、1つまたは複数のポリマー1109は、骨格から伸びているスペーサーに付着した反応性側基1112を含みうる。反応性側基1112は、1つまたは複数の異なるラマンタグ1110に付着して、ポリマーラマン標識1111を生じうる。反応性側基1112は、アミン側鎖をマレイミド残基(ポリ無水マレイン酸)へ変換するように処理されたポリリシンを含んでもよく、HS(硫酸水素)の官能性を持たせたラマンタグ1110と反応することができる。または、側基1112は、ポリ(アリルアミン)のアミン基を含んでもよく、NHSエステルの官能性を持たせたラマンタグ1110と反応することができる。側基1112はまた、スクシニル化ポリリシンのカルボン酸基、またはアミノ基もしくはカルボン酸基をもつ合成オリゴヌクレオチドを含みうる。カルボン酸側基1112は、ラマンタグ1110に、例えば、カルボジイミド媒介架橋を用いて付着しうる。
【0049】
ポリマー骨格は、有機構造、例えば、核酸、ペプチド、多糖および/または化学的に誘導されたポリマーの任意の組み合わせから形成されうる。ポリマーラマン標識1111の骨格は、ホスホジエステル結合、ペプチド結合および/またはグリコシド結合により形成されうる。例えば、標準ホスホラミダイト化学作用は、DNA鎖を含む骨格を作製するために用いられうる。ホスホジエステル結合骨格を作製するための他の方法は、公知であり、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR(商標))増幅がある。骨格の末端は、異なる官能基、例えば、ビオチン、アミノ基、アルデヒド基またはチオール基を有してもよい。これらの官能性を持たせた基を、2つまたはそれ以上のサブポリマーユニットを数珠繋ぎにするために用いてもよい。例えば、ポリマーラマン標識1111は、第一モノマーユニットの「m」コピー、第二モノマーユニットの「k」コピー、および第三モノマーユニットの「l」コピーを含んでもよい。一旦ポリマー骨格が所望の長さまで合成されたならば、2つまたはそれ以上の異なるラマンタグ1110が、反応性側基1112に結合するように逐次的にまたは同時に導入され、それにより、ポリマーラマン標識を生じうる。モノマーユニットは、ラマンタグ1110に限定されない。他のタグ、例えば、蛍光、ナノ粒子、ナノチューブ、フラーレンまたは量子ドットタグが、ポリマーラマン標識1111を多様化するために1つまたは複数のモノマーユニットに付着しうる。一般的に、モノマーユニットのタグ1110の大部分は、ラマンタグ1110である。1つより多いポリマーラマン標識1111は、より長い生成物を作製するために連結されうる。
【0050】
本発明の特定の態様において、図12に示されているが、上記で開示されたポリマーラマン標識のいずれもプローブ1206に連結されうる。プローブ分子1206の例は、限定されるわけではないが、オリゴヌクレオチド、核酸、抗体、抗体断片、結合タンパク質、受容体タンパク質、ペプチド、レクチン、基質、インヒビター、アクチベーター、リガンド、ホルモン、サイトカインなどを含みうる。ポリマーラマン標識1204の様々な例示的構造1201 1202は、骨格および骨格に直接的にもしくはスベーサー分子を介して付着した1つまたは複数のラマンタグを有する、共有結合しているモノマーユニットを含みうる。ポリマー1204は、リンカー1205または直接的共有結合1205を通してプローブ1206に付着しうる。または、ポリマーラマン標識1204は、1つまたは複数のプローブ部分1206に、間接的に、ナノ粒子1207への付着を介して、付着しうる。分子をナノ粒子へ架橋するための様々な方法は、当技術分野において公知であり、任意のそのような公知の方法が用いられうる。例えば、EDAC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)の存在下で、カルボキシル基をアミン基と架橋することによる。例示的構造1202に示されているように、1つより多いポリマーラマン標識1204は、単一のナノ粒子1207に付着しうる。ナノ粒子1207は、その後、1つまたは複数のプローブ分子1206に付着しうる。構造のこの型の利点は、1つより多い標的分子が、単一のポリマーラマン標識1204を用いて同定されうることである。または、ナノ粒子1207が同じプローブ分子1206の複数のコピーに付着している場合には、同じ標的分子の複数のコピーが結合しうる。他の利点は、ラマン標識に付着したより多くのプローブ分子1206が存在するために、標的分子を捕獲するより多くの機会を含み、遊離のおよびラマン標識結合の標的分子の分離は、ラマン標識1202が遠心分離、濾過または電気泳動により単離可能であるため、溶液検出適用においてより容易である。
【0051】
代替の構造1203において、モノマーラマンタグ1208は、ナノ粒子1207に、直接的にかまたはスペーサー分子1205を介してかのいずれかで、付着しうる。1つまたは複数のプローブ分子は、同じナノ粒子1207に、直接的にまたはスペーサー1205により付着しうる。これは、ポリマー1204の予備的な合成の必要なしに、プローブ1206に付着した複数のラマンタグ1208の形成を可能にする。この構造1203の利点は、ナノ粒子1207がより大きな表面積をもち、より多くのプローブ分子1206およびラマンタグ1208が、分子間の立体障害の減少を与えながら結合するのを可能にすることである。
【0052】
幅広い種類のポリマーラマン標識バーコードは、比較的少ないモノマーユニットを用いて作製されうる。ポリマーラマン標識の作製は、比較的少ないラマンタグを利用しながら、バーコード作製においてより高い柔軟性および感度を可能にする。
【0053】
核酸
シーケンシングされうる核酸分子は、任意の標準技術により調製されうる。一つの態様において、核酸は、天然に存在するDNAまたはRNA分子でありうる。RNAが用いられる場合、RNAを相補的cDNAに変換することが望ましい可能性がある。事実上、非限定的に、染色体、ミトコンドリアもしくは葉緑体DNA、またはメッセンジャー、ヘテロ核、リボソームもしくはトランスファーRNAを含む、任意の天然に存在する核酸が、本発明の方法により、調製され、かつシーケンシングされうる。様々な型の細胞の核酸を調製および単離する方法は公知である(例えば、Guide to Molecular Cloning Techniques, eds. Berger and Kimmel, Academic Press, New York, NY, 1987; Molcecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, eds. Sambrook, Fritsch and Maniatis, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989参照)。天然に存在しない核酸もまた、開示された方法および組成物を用いてシーケンシングされうる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR(商標))増幅のような標準的増幅技術により調製された核酸は、本発明の範囲内でシーケンシングされうる。核酸増幅の方法は、当技術分野において周知である。
【0054】
核酸は、限定されるわけではないが、ウイルス、細菌、真核生物、哺乳動物、およびヒト、プラスミド、M13、λファージ、P1人工染色体(PAC)、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、および他のクローニングベクターを含む幅広い種類の供給源から単離されうる。
【0055】
核酸固定化の方法
様々な態様において、核酸分子は、固体表面への付着により固定化されうる。核酸分子の固定化は、支持体または表面への非共有結合性かまたは共有結合性のいずれかの付着を含む様々な方法により達成されうる。例示的態様において、固定化は、固体表面をストレプトアビジンまたはアビジンでコーティングすること、およびビオチン化ポリヌクレオチドの結合により達成されうる。固定化はまた、ポリスチレン、ガラスまたは他の固体表面をポリ-L-LysまたはポリL-Lys、Pheでコーティングし、続いて、二官能性架橋試薬を用いるアミノ修飾かまたはスルフヒドリル修飾のいずれかの核酸の共有結合性付着により、生じうる。アミン残基は、アミノシランの使用を通して表面上へ導入されうる。
【0056】
固定化は、5'-リン酸化核酸の化学修飾されたポリスチレン表面への直接的共有結合性付着により起こりうる。核酸と固体表面の間の共有結合は、水溶性カルボジイミドでの縮合により形成されうる。この方法は、核酸のそれらの5'リン酸を介しての優性の5'付着を促進する。
【0057】
DNAは、一般的に、最初、ガラス表面をシラン処理し、その後、カルボジイミドまたはグルタルアルデヒドで活性化することにより、ガラスに結合しうる。代替の手順は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたはアミノプロピルトリメトキシシラン(APTS)のような試薬を用いて、DNAが、DNA合成中にその分子の3'または5'末端のいずれかに取り込まれたアミノリンカーを介して連結されうる。DNAは、紫外線を用いて膜へ直接的に結合しうる。核酸を固定化する他の方法は公知である。
【0058】
核酸の固定化のために使用される表面の型は制限されない。様々な態様において、固定化表面は、その物質が核酸のプローブライブラリーへのハイブリダイゼーションを可能にする限り、磁気ビーズ、非磁気ビーズ、平面表面、尖った表面、または固体表面の任意の他の構造でありうる。
【0059】
二官能性架橋試薬を、様々な態様において役立てることができる。例示的架橋試薬は、グルタルアルデヒド、二官能性オキシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドのようなカルボジイミドを含む。
【0060】
特定の態様において、捕獲オリゴヌクレオチドは表面に結合しうる。捕獲オリゴヌクレオチドは、核酸鋳型の特定の核酸配列とハイブリダイズする。核酸は、制限酵素消化、エンドヌクレアーゼ活性、温度上昇、塩濃度の低減、またはこれらおよび類似した方法の組み合わせにより表面から遊離されうる。
【0061】
タンパク質精製
特定の態様において、タンパク質またはペプチドは、単離または精製されうる。一つの態様において、これらのタンパク質は、図示されたバーコード(例えば、ポリマーラマン標識)のいずれかでのタグ付けのための抗体を作製するために用いられうる。タンパク質精製技術は当業者に周知である。これらの技術は、あるレベルにおける、細胞、組織または器官のポリペプチドおよび非ポリペプチド画分へのホモジナイゼーションおよび粗分画を含む。対象となるタンパク質またはポリペプチドは、部分的または完全な精製(または均一性への精製)を達成するためにクロマトグラフィーおよび電気泳動の技術を用いてさらに精製されうる。純粋なペプチドの調製に特に適した分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル排除クロマトグラフィー、HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)FPLC(AP Biotech)、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、および等電点電気泳動である。アフィニティークロマトグラフィーによる受容体タンパク質精製の例は、米国特許第5,206,347号に開示されており、その全本文は、参照により本明細書に組み入れられている。ペプチドを精製するより効率的な方法の1つは、高速液体クロマトグラフィー(AKTA FPLC)、すなわちHPLCである。
【0062】
精製されたタンパク質またはペプチドは、他の成分から単離できる組成物を指すことを意図され、タンパク質またはペプチドが、それの天然で得ることができる状態に対して任意の程度まで精製されている。それゆえに、単離または精製されたタンパク質またはペプチドはまた、それが天然に存在しうる環境を含まないタンパク質またはペプチドを指す。一般的に、「精製された」とは、様々な他の成分を除去するように分画にかけられたタンパク質またはペプチド組成物を指し、その組成物がそれの発現される生物活性を実質的に保持している。用語「実質的に精製された」が用いられる場合、この意味は、そのタンパク質またはペプチドが、組成物におけるタンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれ以上を構成するような、組成物の主成分を形成している、組成物を指す。
【0063】
タンパク質またはペプチドの精製の程度を定量化するための様々な方法は、本開示に照らせば、当業者にとって公知である。これらは、例えば、活性画分の特定の活性を測定すること、またはSDS/PAGE分析による画分内のポリペプチドの量を評価することを含む。画分の純度を評価するための好ましい方法は、画分の特定の活性を計算すること、それを最初の抽出物の特定の活性と比較すること、およびそれに従って、「〜倍精製の数」により評価される、そこにおける純度の程度を計算することである。活性の量を表すために用いられる実際のユニットは、もちろん、精製を追跡するために選択された特定のアッセイ技術、および発現されたタンパク質またはペプチドが、検出可能な活性を示すかどうかに依存するものである。
【0064】
タンパク質精製での使用に適した様々な技術は、当業者に周知である。これらは、例えば、硫酸アンモニウムでの沈殿、PEG、抗体など、または熱変性の後に、遠心分離;イオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイトおよびアフィニティークロマトグラフィーのようなクロマトグラフィー段階;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;ならびにこれらを始めとする技術の組み合わせを含む。当技術分野に一般的に知られているように、様々な精製段階を行う順序を変更、またはある特定の段階を省略してもよく、依然として実質的に精製されたタンパク質またはペプチドの調製のための適切な方法となると考えられている。
【0065】
タンパク質またはペプチドは、常に、それらの最も精製された状態で提供されているという一般的な要求はない。実際、あまり実質的には精製されていない産物が、特定の態様において有用性をもつことが企図される。部分的精製は、組み合わせにおいてより少ない精製段階を用いることにより、または同じ一般的な精製スキームの異なる型を利用することにより、達成されうる。例えば、HPLC装置を利用して行われる陽イオン交換カラムクロマトグラフィーは、一般的に、低圧クロマトグラフィーシステムを利用する同じ技術より「〜倍」も高い精製を生じる。より低い程度の相対的精製を示す方法は、タンパク質産物の全回収において、または発現されたタンパク質の活性を維持するにおいて有利である。
【0066】
アフィニティークロマトグラフィーは、単離されるべき物質と、それが特異的に結合することができる分子との間の特異的親和性に頼るクロマトグラフィーの手順である。これは、相互作用の受容体-リガンド型である。カラム材料は、結合パートナーの1つを不溶性マトリックスへ共有結合することにより合成される。その後、カラム材料は、溶液から物質を特異的に吸着することができる。溶出は、条件を、結合が起こらないものへ変化させること(例えば、変化したpH、イオン強度、温度など)により生じる。マトリックスは、それ自身、分子をどのような有意な程度までも吸着しない、かつ幅広い範囲の化学的、物理的および熱的安定性をもつ物質であるべきである。リガンドは、それの結合性質に影響を及ぼさないように結合されるべきである。リガンドはまた、比較的堅い結合を提供するべきである。そして、試料またはリガンドを破壊することなく、物質を溶出することが可能であるべきである。
【0067】
タンパク質またはペプチドは、標準分子生物学的技術によるタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドの発現、天然源からのタンパク質もしくはペプチドの単離、またはタンパク質もしくはペプチドの化学合成を含む、当業者に公知の任意の技術により作製されうる。様々な遺伝子に対応するヌクレオチドならびにタンパク質、ポリペプチドおよびペプチド配列は、以前に開示されており、当業者に公知のコンピュータ化されたデータベースに見出されうる。1つのそのようなデータベースは、National Center for Biotechnology Information's Genbank and GenPeptデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)である。既知の遺伝子についてのコード領域は、本明細書に開示された、または当業者に公知であるような技術を用いて、増幅および/または発現されうる。または、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの様々な市販調製物は、当業者に公知である。
【0068】
ペプチド模倣体
本発明によるポリペプチドの調製についてのもう一つの態様は、モノクローナル抗体産生のためのペプチド模倣体の使用である。模倣体は、タンパク質二次構造の要素を模倣するペプチド含有分子である。例えば、参照により本明細書に組み入れられている、Johnson et al., "Peptide Turn Mimetics" in BIOTECHNOLOGY AND PHARMACY, Pezzuto et al., Eds., Chapman and Hall, New York (1993)を参照のこと。ペプチド模倣体の使用の基礎をなす理論的根拠は、タンパク質のペプチド骨格は、主として、抗体と抗原のもののような分子相互作用を促進するような様式でアミノ酸側鎖を配向するように存在することである。ペプチド模倣体は、天然分子と類似した分子相互作用を可能にすることが期待される。これらの原理は、本明細書に開示されたターゲティングペプチドの天然の性質の多くを有するが、変化したおよび改善までもされた特性をもつ、第二世代分子を操作するために用いられうる。
【0069】
融合タンパク質
本発明の他の態様は融合タンパク質に関する。これらの分子は、一般的に、第二ポリペプチドもしくはタンパク質の全部または部分へN末端またはC末端において連結した、ターゲティングペプチドの全部または実質的部分を有する。例えば、融合は、異種性宿主においてタンパク質の組換え発現を可能にするために他の種由来のリーダー配列を用いうる。もう一つの有用な融合は、融合タンパク質の精製を容易にするために、抗体エピトープのような免疫学的活性ドメインの付加を含む。融合接合部における、または近くの切断部位の含有は、精製後、外来性ポリペプチドの除去を容易にする。他の有用な融合は、酵素由来の活性部位、グリコシル化ドメイン、細胞ターゲティングシグナルまたは膜貫通領域のような機能性ドメインの連結を含む。特定の態様において、融合タンパク質は、治療タンパク質またはペプチドに連結したターゲティングペプチドを含む。本発明の範囲内において、事実上、任意のタンパク質またはペプチドが、ターゲティングペプチドを含む融合タンパク質へ組み入れられうる。融合タンパク質を作製する方法は、当業者に周知である。そのようなタンパク質は、例えば、二官能性架橋試薬を用いる化学的付着により、完全な融合タンパク質の新たな合成により、またはターゲティングペプチドをコードするDNA配列の第二ペプチドもしくはタンパク質をコードするDNA配列への付着、続いて無傷の融合タンパク質の発現により、生成されうる。
【0070】
合成ペプチド
比較的小さなサイズのため、真菌の選択過程後に同定されたペプチドは、通常の技術に従って溶液中または固体支持体上で合成されてもよい。様々な自動シンセサイザーが市販されており、公知のプロトコールに従って使用されうる。例えば、参照として本明細書に組み入れられるStewart and Young, (1984); Tam et al., (1983); Merrifield, (1986);およびBarany and Merrifield (1979)を参照されたい。短いペプチド配列(通常には約6アミノ酸から約35〜50アミノ酸まで)はそのような方法により容易に合成されうる。または、組換えDNAテクノロジーを用いてもよく、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列が発現ベクターへ挿入され、適切な宿主細胞へ形質転換またはトランスフェクションされ、発現に適した条件下で培養される。
【0071】
例示的適用
核酸シーケンシング
特定の態様において、本明細書に開示されているように形成されたバーコードを、標的核酸分子をシーケンシングするために使用することができる。ハイブリダイゼーションによりシーケンシングする方法は、当技術分野において公知である。既知の配列のプローブを含む1つまたは複数のタグ付きバーコードを、標的核酸配列にハイブリダイズするようにさせておいてもよい。タグ付きバーコードの標的への結合は、標的鎖における相補配列の存在を示す。複数の標識バーコードを、標的分子に同時にハイブリダイズするようにさせておき、同時に検出してもよい。代替の態様において、結合したプローブは、個々の標的分子に付着して同定されてもよい、または特定の標的分子の複数コピーをプローブ配列の重複セットに同時に結合するようにさせておいてもよい。個々の分子は、例えば、検出様式と連結された公知の分子コーミング技術を用いてスキャンされうる。(例えば、Bensimon et al., Phys. Rev. Lett. 74:4754-57, 1995; Michalet et al., Science 277:1518-23, 1997;米国特許第5,840,862号;第6,054,327号;第6,225,055号;第6,248,537号;第6,265,153号;第6,303,296号および第6,344,319号を参照。)
【0072】
所定の標的核酸が、標的配列を完全に網羅する連続したプローブ配列にハイブリダイズする可能性は低い。むしろ、標的の複数のコピーが、タグ付きオリゴヌクレオチドのプールにハイブリダイズして、部分的配列データがそれぞれから収集されうる。部分的配列は、公的に利用可能なショットガン配列編集プログラムを用いて完全な標的核酸配列へ編集されうる。部分的配列はまた、例えば液相において、バーコードプローブのライブラリーへ同時に結合するようにさせられる標的分子の集団から編集されうる。
【0073】
標的分子検出、同定および/または定量化
特定の態様において、試料における標的分子は、バーコードに結合することにより検出、同定および/または定量化されうる。特定の標的に結合するように設計されたタグ付きバーコードは、上記で考察されているように調製されうる。標的は、核酸に限定されず、タンパク質、ペプチド、脂質、糖、糖脂質、糖タンパク質、または特異的なプローブが調製されうる任意の他の可能性のある標的も含みうる。上記で考察されているように、抗体またはアプタマープローブは、バーコードへ組み入れられ、アプタマーまたは抗体が調製されうる任意の標的を同定するために用いられうる。試料における複数の標的の存在は、各バーコードが識別可能に標識および検出されうるため、同時にアッセイされうる。標的の定量化は、分光学的分析において周知の標準技術により行われうる。例えば、タグ付きバーコードに結合した標的の量は、結合したバーコードのシグナル強度を測定すること、およびバーコード標準の既知の量から作成された検量線との比較により決定されうる。そのような定量化方法は、当技術分野における日常的技術内で十分である。
【0074】
アレイ化学
異なる化学的機能性(例えば、異なる結合特異性)を有するビーズ(例えば、ミクロスフェア)は共に混合されてもよい。各ビーズの機能性を同定する能力は、光学的に質問可能な符号化スキーム(「光学シグネチャー」)を用いて達成されうる。例えば、光学シグネチャーは、上記で考察されているようなポリマーラマン標識を用いて作製されうる。チップまたはマイクロタイタープレートのような基板は、個々のビーズに結合できる個々の部位を含むパターン化された表面を含みうる。これは、プローブ(すなわち、核酸、アプタマーまたは抗体)の合成が、アレイ上のそれらの配置から分離されるのを可能にする。プローブは、合成され、ビーズに付着し、ビーズは、パターン化された表面上に無作為に分布されうる。ビーズは、最初、光学シグネチャーでコードされるので、その結果生じたアレイは、後で「解読」されうる。すなわち、アレイ上の個々の部位の位置と、その特定の部位に位置したビーズまたはプローブの間の相関が作成されうる。ビーズは、アレイ上に無作為に分布されうるため、これは、結果として、アレイ作製についてのインサイチュー合成かまたはスポッティング技術と比較して、速くかつ費用のかからない工程を生じる。
【0075】
アレイ組成物は、個々の部位を含む表面をもつ少なくとも第一の基板を含みうる。アレイのサイズは、アレイの最終用途に依存する。約2個の異なる作用物質(すなわち、異なるビーズ)から何百万個という異なる作用物質までを含むアレイが作製されうる。一般的に、アレイは、ビーズおよび基板のサイズに依存して、2個の異なるビーズから10億個またはそれ以上ほどまでを含む。従って、非常に高密度、高密度、中位の密度、低密度、または非常に低密度のアレイが作製されうる。非常に高密度のアレイについてのいくつかの範囲は、アレイあたり約10,000,000個の部位から約2,000,000,000個の部位までである。高密度アレイは、約100,000個の部位から約10,000,000個の部位までの範囲である。中位の密度アレイは、約10,000個の部位から約50,000個の部位までの範囲である。低密度アレイは、一般的に、10,000個未満の部位である。非常に低密度のアレイは、1,000個未満の部位である。
【0076】
本発明のいくつかの態様において、異なるまたは同一の組成物のいずれかの複数の基板を用いることができる。従って、例えば、大きなアレイは、より小さな基板の複数を含みうる。「基板」または「固体支持体」とは、ビーズの付着または会合に適切で、かつ少なくとも1つの検出方法を受け入れられる別々の個々の部位を含むように修飾されうる任意の物質を意味する。一般的に、基板は、光学的検出を可能にし、シグナル発光を認めうるほどには干渉しない。
【0077】
部位は、パターン、すなわち、規則的なデザインもしくは配置、を含む、または無作為に分布されうる。部位の規則的なパターンは、部位がX-Y座標面にアドレス指定されうるように用いられうる。基板の表面は、個々の部位においてミクロスフェアの付着を可能にするように修飾されうる。従って、基板の表面は、単一の会合したビーズを有しうるのみである別々の部位が形成されるように、修飾されうる。一つの態様において、基板の表面は、ウェル、すなわち基板の表面における窪み、を含むように改変されうる。これは、限定されるわけではないが、フォトリソグラフィー、スタンピング技術、成形技術およびマイクロエッチング技術を含む様々な公知の技術を用いることによりなされうる。当業者に認識されているように、用いられる技術は、基板の組成物および形に依存する。または、基板の表面は、ミクロスフェアおよび/またはビーズを基板上の別々の位置へ付着させるために用いられうる化学的に誘導された部位を含むように改変されうる。アミノ基、カルボキシ基、オキソ基およびチオール基のような化学的官能基のパターンの付与は、一般的に対応する反応性官能基またはリンカー分子を含むミクロスフェアを共有結合性に付着させるために用いられうる。
【0078】
適切なビーズ組成物は、限定されるわけではないが、プラスチック、セラミック、ガラス、ポリスチレン、メチルスチレン、アクリルポリマー、常磁性物質、トリアゾル、カーボングラファイト、二酸化チタン、ラテックスを含む、ペプチド、核酸および有機部分合成に用いられるものを含む、またはセファロース、セルロース、ナイロン、架橋ミセル、およびTeflon(登録商標)のような架橋デキストランはすべて使用され得る。ビーズサイズは、約0.2ミクロンから約200ミクロンまで、および約0.5ミクロンから約5ミクロンまでのビーズを含む、ナノメートル(すなわち100 nm)からミリメートル(すなわち1 mm)までの範囲でありうるが、いくつかの態様において、より小さなビーズが用いられうる。
【0079】
組成物は、特定の標的分析物、例えば、核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質、酵素、抗体または抗原の存在を検出するために用いられうる。組成物はまた、特定の標的への結合について生理活性物質、すなわち薬物候補、をスクリーニングするために、または汚染物質のような原因物質を検出するために、用いられうる。上記で考察されているように、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたはアプタマーのようなプローブ部分が設計されうる任意の分析物が、開示されたバーコードと組み合わせて用いられうる。
【0080】
生理活性物質を、合成または天然の化合物のライブラリーを含む幅広い種類の源から得ることができる。例えば、ランダム化オリゴヌクレオチドの発現を含む、幅広い種類の有機化合物および生体物質のランダムならびに定方向合成について多数の手段が利用できる。または、細菌、真菌、植物および動物の抽出物の形をとった天然化合物のライブラリーが入手可能であり、または容易に作製される。さらに、天然のまたは合成的に作製されたライブラリーおよび化合物は、通常の化学的、物理的および生化学的手段により容易に修飾される。既知の薬理学的作用物質は、構造的類似体を生成するようにアシル化、アルキル化、エステル化および/またはアミド化のような、定方向またはランダム化学修飾にかけられうる。
【0081】
生理活性物質は、天然に存在するタンパク質または天然に存在するタンパク質の断片を含みうる。従って、例えば、タンパク質を含む細胞抽出物、またはタンパク性細胞抽出物のランダムもしくは定方向消化物が用いられうる。このようにして、原核生物および真核生物のタンパク質のライブラリーは、本明細書に記載された系をスクリーニングするために作製されうる。例えば、細菌、真菌、ウイルスおよび哺乳動物タンパク質のライブラリーは、スクリーニング目的として作製されうる。
【0082】
生理活性物質は、約5アミノ酸から約30アミノ酸まで、または約5アミノ酸から約15アミノ酸までのペプチドでありうる。ペプチドは、天然に存在するタンパク質の消化物またはランダムペプチドでありうる。一般的にランダムペプチド(またはランダム核酸)は、化学合成されるため、それらは、任意の位置に任意のヌクレオチドまたはアミノ酸を組み入れうる。合成過程は、配列の長さに渡る可能な組み合わせの全部または大部分の形成を可能にするために、ランダム化されたタンパク質または核酸を作製し、それに従って、ランダム化生理活性物質のライブラリーを形成するように設計されうる。
【0083】
または、生理活性物質は核酸でありうる。核酸は、一本鎖または二本鎖、またはそれらの混合物でありうる。核酸は、DNA、ゲノムDNA、cDNA、RNAまたはハイブリッドであってよく、核酸は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの任意の組み合わせ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンタニン、イソシトシン、イソグアニンを含む塩基の任意の組み合わせ、ならびにニトロピロールおよびニトロインドールなどのような塩基対類似体を含む。
【0084】
本明細書に開示されたバーコードの適用は、前記の使用に限定されず、標的検出、同定および/または定量化が含まれうる任意の使用を含みうる。非限定的適用は、一塩基多型(SNPs)の検出、遺伝子突然変異の検出、疾患診断、法医学分析、環境的汚染物質および/または病原体の検出、臨床診断検査、ならびに当技術分野において公知の幅広い種類の他の適用を含む。
【0085】
プローブ調製
オリゴヌクレオチドプローブ
オリゴヌクレオチド合成の方法は、当技術分野において周知であり、任意のそのような公知の方法を用いることができる。例えば、オリゴヌクレオチドを、市販のオリゴヌクレオチドシンセサイザー(例えば、Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて調製してもよい。様々なタグに付着したヌクレオチド前駆体は商業的に入手されて(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)、オリゴヌクレオチドへ取り込まれうる。または、ビオチン、ジゴキシゲニン、スルフヒドリル、アミノまたはカルボキシル基のような様々な反応性基を含むヌクレオチド前駆体が購入されうる。オリゴヌクレオチド合成後、タグは、標準的化学作用を用いて付着しうる。タグ付着のための反応性基を含むまたは含まない、任意の望ましい配列のオリゴヌクレオチドもまた、幅広い種類の供給元(例えば、Midland Certified Reagents, Midland, TX)から購入されうる。オリゴヌクレオチドプローブはまた、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR(商標))増幅を用いる標準酵素的過程により調製されうる(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harobor Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989;米国特許第5,279,721号;第4,683,195号;第4,683,202号;第4,800,159号;第4,883,750号)。
【0086】
アプタマープローブ
アプタマーは、SELEXと呼ばれるインビトロの進化的過程により引き出されたオリゴヌクレオチドである(例えば、Brody and Gold, Molecular Biotechnology 74:5-13, 2000)。SELEX過程は、可能性のあるアプタマー(核酸リガンド)を標的に曝露する段階、結合を生じるようにさせておく段階、結合したものを遊離核酸リガンドから分離する段階、結合したリガンドを増幅する段階、およびその結合過程を繰り返す段階の繰り返しサイクルを含む。多数のサイクル後、事実上、任意の型の生物学的標的に対して高い親和性および特異性を示すアプタマーが調製されうる。それらの小さなサイズ、相対的安定性および調製の容易さのために、アプタマーは、プローブとしての使用によく適しうる。アプタマーはオリゴヌクレオチドから構成されるため、それらは、核酸型バーコードへ容易に組み入れられうる。アプタマーの作製の方法は周知である(例えば、米国特許第5,270,163号;第5,567,588号;第5,670,637号;第5,696,249号;第5,843,653号)。または、特定の標的に対する様々なアプタマーは、商業的供給元(例えば、Somalogic, Boulder, CO)から入手されうる。アプタマーは、約7 kDa〜50 kDaの比較的小さな分子である。
【0087】
抗体プローブ
抗体の産生の方法もまた、当技術分野において周知である(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1988)。プローブとしての使用に適したモノクローナル抗体はまた、多数の商業的供給元から入手されうる。そのような市販の抗体は、幅広い種類の標的に対して有効である。抗体プローブは、下に考察されているように、標準的化学作用を用いてバーコードに結合されうる。
【0088】
開示された方法および組成物は、用いられるプローブの型に関して制限はなく、当技術分野において公知のプローブ部分の任意の型が、バーコードに付着し、開示された方法に用いられうる。そのようなプローブは、限定されるわけではないが、抗体断片、アフィボディ、キメラ抗体、一本鎖抗体、リガンド、結合タンパク質、受容体、インヒビター、基質などを含みうる。
【0089】
タグ
本発明の様々な態様において、バーコードは、検出および/または同定を容易にするために1つまたは複数のタグ部分に付着しうる。当技術分野において公知の任意の検出可能なタグが用いられうる。検出可能なタグは、限定されるわけではないが、電気的、光学的、分光光度的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的技術により検出できる任意の組成物を含みうる。タグは、限定されるわけではないが、導電性、ルミネセンス、蛍光、化学ルミネセンス、生物ルミネセンスおよびリン光性の部分、量子ドット、ナノ粒子、金属ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、色原体、抗体、抗体断片、遺伝子操作された抗体、酵素、基質、補因子、インヒビター、結合タンパク質、磁気粒子、ならびにスピン標識化合物を含みうる。(米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;および第4,366,241号。)
【0090】
ラマンタグ
使用されるラマンタグの非限定的例は、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBD(7-ニトロベンズ-2-オキザ-1,3-ジアゾール)、テキサスレッド色素、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファストバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラ-アミノ安息香酸、エリトロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン、5-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン、TET(6-カルボキシ-2',4,7,7'-テトラクロロフルオレセイン)、HEX(6-カルボキシ-2',4,4',5',7,7'-ヘキサクロロフルオレセイン)、Joe(6-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン)5-カルボキシ-2',4',5',7'-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、Tamra(テトラメチルローダミン)、6-カルボキシローダミン、Rox(カルボキシ-X-ローダミン)、R6G(ローダミン6G)、フタロシアニン、アゾメチン、シアニン(例えば、Cy3、Cy3.5、Cy5)、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、N,N-ジエチル-4-(5'-アゾベンゾトリアゾリル)-フェニルアミン、およびアミノアクリジンを含む。これらを始めとするラマンタグは、商業的供給元(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)から入手されうる。
【0091】
一般的な多環式芳香族化合物は、ラマンタグとして機能しうる。使用されうる他のタグは、シアン化物、チオール、塩素、臭素、メチル、リンおよびイオウを含む。特定の態様において、カーボンナノチューブは、ラマンタグとして使用されうる。ラマン分光法におけるタグの使用は公知である(例えば、米国特許第5,306,403号および第6,174,677号)。
【0092】
ラマンタグは、バーコードへ直接的に付着しうる、または様々なリンカー化合物を介して付着しうる。ラマンタグへ共有結合性に付着しているヌクレオチドは、標準的な商業的供給元から入手できる(例えば、Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN; Promega Corp., Madison, WI; Ambion, Inc., Austin, TX; Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)。他の分子、例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸、と共有結合性に反応するように設計された反応性基を含むラマンタグは、市販されている(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)。
【0093】
蛍光タグ
使用される可能性のある蛍光タグは、限定されるわけではないが、フルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、2'7'-ジメトキシ-4'5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、ローダミン、6-カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N',N',-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、4-(4'-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)、および5-(2'-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)を含む。他の可能性のある蛍光タグは当技術分野において公知である(例えば、米国特許第5,866,336号)。幅広い種類の蛍光タグは、Molecular Probes(Eugene, OR)のような商業的供給元から入手されうる。タグ付き分子の蛍光検出の方法もまた、当技術分野において周知であり、任意のそのような公知の方法が用いられうる。
【0094】
使用されるルミネセンスのタグは、限定されるわけではないが、希土類金属クリプタート、ユーロピウムトリスビピリジンジアミン、ユーロピウムクリプタートまたはキレート、Tbトリビピリジン、ジアミン、ジシアニン、ラホーヤ青色色素、アロピコシアニン、アロコシアニンB、フィコシアニンC、フィコシアニンR、チアミン、フィコエリトロシアニン、フィコエリトリンR、アップコンバーティングまたはダウンコンバーティングリン光体、ルシフェリン、またはアクリジニウムエステルを含む。
【0095】
ナノ粒子タグ
ナノ粒子は、例えば、バーコードが様々な様式により検出されることになっている場合、タグとして使用可能である。ナノ粒子を調製する方法は公知である(例えば、米国特許第6,054,495号;第6,127,120号;第6,149,868号; Lee and Meisel, J. Phys. Chem. 86:3391-3395, 1982)。ナノ粒子はまた、商業的に入手されうる(例えば、Nanoprobes Inc., Yaphank, NY; Polysciences, Inc., Warrington, PA)。金または銀ナノ粒子は、タグとして最も一般的に用いられるが、ナノ粒子の任意の型または組成物は、バーコードに付着してタグとして使用可能である。
【0096】
使用されるナノ粒子は、ナノ粒子のランダム凝集体(コロイドナノ粒子)でありうる。または、ナノ粒子は、二量体、三量体、四量体、または他の凝集体のようなナノ粒子の特定の凝集体を生じるように架橋されうる。ナノ粒子の選択された数を含む凝集体(二量体、三量体など)は、ショ糖溶液中での超遠心分離のような公知の技術により濃縮または精製されうる。
【0097】
バーコードへの付着に適した修飾ナノ粒子は、Nanoprobes, Inc. (Yaphank, NY)からのNanogold(登録商標)ナノ粒子のように、市販されている。Nanogold(登録商標)ナノ粒子は、単一もしくは複数のいずれかのマレイミド、アミンまたは他の基がナノ粒子ごとに付着した状態で入手可能である。そのような修飾ナノ粒子は、様々な公知のリンカー化合物を用いてバーコードに付着しうる。
【0098】
金属性タグ
タグは、1マイクロメートル未満のサイズの金属性タグを含みうる(例えば、Nicewarner-Pena et al., Science 294:137-141, 2001)。Nicewarner-Pena et al. (2001)は、異なる型の金属から構成された、1マイクロメートル未満のストライプでコードされたマルチメタルマイクロロッドを調製する方法を開示している。この系は、非常に多数(金属の2つの型を用いて4160個まで、および金属の3つの異なる型で8x105個)の識別可能なタグの作製を可能にする。そのようなタグは、バーコードに付着し、検出されうる。金または銀のような金属粒子をオリゴヌクレオチドおよび他の型の分子へ付着させる方法は、当技術分野において公知である(例えば、米国特許第5,472,881号)。
【0099】
フラーレンタグ
フラーレンも、バーコードタグとして用いられうる。フラーレンを作製する方法は公知である(例えば、米国特許第6,358,375号)。フラーレンは、誘導体化され、カーボンナノチューブについて以下に開示されたものに類似した方法により、他の分子へ付着しうる。フラーレンタグ付きバーコードは、例えば、様々なテクノロジーを用いて同定されうる。
【0100】
バーコードに付着し、検出される公知のタグの他の型が企図されている。可能性のあるタグの非限定的例は、量子ドットを含む(例えば、Schoenfeld, et al., Proc. 7th Int. Conf. on Modulated Semiconductor Structures, Madrid, pp. 605-608, 1995; Zhao, et al., 1st Int. Conf. on Low Dimensional Structures and Devices, Singapore, pp. 467-471, 1995)。量子ドットおよびタグの他の型もまた、商業的供給元(例えば、Quantum Dot Corp., Hayward, CA)から入手されうる。
【0101】
カーボンナノチューブタグ
単層カーボンナノチューブ(SWNT)のようなカーボンナノチューブもまた、タグとして用いられうる。ナノチューブは、例えば、ラマン分光法により検出されうる(例えば、Freitag et al., Phys. Rev. B 62:R2307-2310, 2000)。電気的または光学的性質のようなカーボンナノチューブの特徴は、ナノチューブのサイズに少なくとも一部、依存する。
【0102】
カーボンナノチューブは、限定されるわけではないが、炭素アーク放電、触媒熱分解炭化水素による化学蒸着、プラズマ支援化学蒸着、触媒金属含有グラファイト標的のレーザーアブレーション、または凝縮相電気分解を含む、当技術分野において公知の様々な技術により作製されうる。(例えば、米国特許第6,258,401号、第6,283,812号および第6,297,592号参照。)異なる長さのカーボンナノチューブの混合物を含む組成物は、当技術分野において公知の任意の方法を用いて、ナノチューブの長さおよび直径により別個のサイズクラスへ分離されうる。例えば、ナノチューブは、質量分析法によりサイズ分類されうる(Parker et al., "High yield synthesis, separation and mass spectrometric characterization of fullerene C60-C266," J. Am. Chem. Soc. 113:7499-7503, 1991)。カーボンナノチューブはまた、CarboLex(Lexington, KY)、NanoLab(Watertown, MA)、Materials and Electrochemical Research(Tucson, AZ)またはCarbon Nano Technologies Inc.(Houston, TX)から購入されうる。
【0103】
カーボンナノチューブは、バーコードへの付着を促進するように反応性基で誘導体化されてもよい。例えば、ナノチューブは、カルボジイミド架橋剤を用いてアミンへ結合されうるカルボン酸基を含むように誘導体化されてもよい(米国特許第6,187,823号)。
【0104】
ヌクレオチドタグ
ヌクレオチドまたは塩基(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、もしくはチミン)は、オリゴヌクレオチドおよび核酸以外の分子バーコードにタグを付けるために用いられうる。例えば、ペプチドに基づいた分子バーコードは、ヌクレオチドまたはプリンもしくはピリミジン塩基でタグを付けてもよい。ウラシル、イノシン、2,6-ジアミノプリン、5-フルオロ-デオキシシトシン、7デアザ-デオキシアデニン、または7-デアザ-デオキシグアニンのような、プリンもしくはピリミジンの他の型またはそれらの類似体もまた、タグとして使用可能である。他のタグは塩基類似体を含む。塩基は、糖またはリン酸を含まない窒素含有環構造である。そのようなタグは、ラマンまたは蛍光分光法のような光学技術により検出されうる。ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体タグの使用は、検出される標的分子が核酸またはオリゴヌクレオチドである場合、バーコードのタグ部分が、プローブ部分とは異なる標的分子にハイブリダイズする可能性がありうるため、適切ではない可能性がある。
【0105】
アミノ酸タグ
アミノ酸もまたタグとして使用されうる。タグとして使用される可能性のあるアミノ酸は、限定されるわけではないが、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、アルギニン、システインおよびメチオニンを含む。
【0106】
架橋剤
二官能性架橋試薬は、タグをバーコードへ付着させるような様々な目的のために用いられうる。二官能性架橋試薬は、それらの官能基、例えば、アミノ、グアニジノ、インドール、またはカルボキシルの特定の基の特異性により分類されうる。これらのうち、遊離アミノ基に向けられる試薬は、それらの商業的入手性、合成の容易さ、およびそれらが適用されうる穏やかな反応条件のために、人気がある(米国特許第5,603,872号および第5,401,511号)。使用される可能性のある架橋試薬は、グルタルアルデヒド(GAD)、二官能性オキシラン(OXR)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)、および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のようなカルボジイミドを含む。
【0107】
バーコード検出
バーコードは、当技術分野において公知の任意の様式を用いて検出されうる。例えば、蛍光分光法は、バーコードを検出するために用いられうる。いくつかの蛍光色素は、単一のバーコードに付着しうる。バーコードにおける色素の量および色素の化学的性質は、バーコードの蛍光発光プロファイルを決定する。所定のバーコード組成物について、シグナルはまた、可能性のある共鳴エネルギー移転によるタグ間の相対的距離により影響を及ぼされることがある。
【0108】
他の態様において、ラマン分光法は、バーコードを検出するために用いられうる。様々なラマンタグは、SERS(表面増強ラマン分光法)のような公知のラマン分光法技術による検出のためにバーコードへ付着しうる。付着したラマンタグに加えて、バーコード骨格それ自身が、ラマンタグとして使用されうる。DNA分子の異なる塩基組成物は、DNAに基づいたバーコードを同定するために使用してもよい異なるラマンシグナルを生じる。様々な特定の検出様式は下に考察されている。
【0109】
ラマン分光法
ラマン分光法のための表面
ラマン分光法の様々な様式は、タグ付き(バーコード)分子の表面への近接によるラマンシグナルの増強を利用する。特定の様式において、表面増強ラマン分光法(SERS)または表面増強共鳴ラマン分光法(SERRS)のように、金、銀、アルミニウム、白金、銅または他の金属のようなラマン活性金属表面への近接が、ラマンシグナルを6桁または7桁まで増強させうる。
【0110】
他の型の化合物もまた、SERSにおいてシグナルを増強させるために用いてよく、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、NaCl、KCl、LiBr、NaBr、KBr、Lil、NaI、およびKIがある。特に、LiClは、特定の分析物(例えば、dAMP、デオキシアデノシン、アデノシンおよびアデニン)の強度の相対的シグナルを2倍と100倍の間で増加させることが実証されている。LiClは、対象となる分析物に依存して、一般的に用いられるNaClと比較して2倍を超えて相対的強度を増加させる。他の態様において、NaBrまたはNaIは、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)のような分析物について、LiClより良い場合がある。
【0111】
ラマン検出器
ラマン検出の様々な方法は、当技術分野において公知である。使用されるラマン検出ユニットの一つの例は、米国特許第6,002,471号に開示されている。開示されているように、励起ビームは、532 nm波長におけるNd:YAGレーザーかまたは365 nm波長におけるTi:サファイアレーザーかのいずれかにより発生される。パルスレーザービームまたは連続レーザービームが用いられうる。励起ビームは、共焦点光学および顕微鏡対物を通過し、標的領域上に集束させられる。ラマン標識からのラマン放出光は、顕微鏡対物および共焦点光学により集められ、スペクトル解離のためにモノクロモネーターに連結される。共焦点光学は、バックグラウンドシグナルを低減させるための、二色性フィルター、バリアーフィルター、共焦点ピンホール、レンズおよびミラーの組み合わせを含む。標準全視野光学は、共焦点光学と同様に用いられうる。シグナルは、任意の公知のラマン検出器により検出されうる。
【0112】
検出ユニットの代替例は、例えば、単一光子計数様式で操作されるガリウム砒素(GaAs)光電子増倍管(RCA Model C31034またはBurle Industries Model C3103402)を備えたSpex Model 1403二重回折格子分光光度計を含む米国特許第5,306,403号に開示されている。
【0113】
もう一つの例示的ラマン検出ユニットは、レーザーおよびラマン検出器を含む。励起ビームは、近赤外波長におけるチタニウム:サファイアのレーザー(Spectra-PhysicsによるTsunami)または785 nmもしくは830 nmにおけるガリウムアルミニウム砒素ダイオードレーザー(Process InstrumentsによるPI-ECLシリーズ)により発生される。パルスレーザービームまたは連続ビームが用いられうる。励起ビームは、集められたビームとの共線幾何学へと、二色性ミラー(Kaiser OpticalによるホログラフィックノッチフィルターまたはChromaもしくはOmega Opticalによる干渉フィルター)により反射される。反射されたビームは、顕微鏡対物(Nikon LUシリーズ)を通過し、バーコード結合標的が位置している領域上に集束される。ラマン散乱光は、同じ顕微鏡対物により集められ、二色性ミラーを通ってラマン検出器へ通過する。ラマン検出器は、集束レンズ、分光器およびアレイ検出器を含む。集束レンズは、分光器の入射スリットを通してラマン散乱光を集束させる。分光器(RoperScientific)は、それの波長により光を分散させる回折格子を含む。分散した光は、アレイ検出器(RoperScientificによる背面照射の深い空之型CCDカメラ)上へイメージングされる。アレイ検出器は、データ転送および検出器機能の制御のためのコンピュータへ接続されているコントローラ回路に接続されている。
【0114】
代替励起源は、窒素レーザー(Laser Science Inc.)およびヘリウム-カドミウムレーザー(Liconox)を含む(米国特許第6,174,677号)。励起ビームは、バンドパスフィルター(Corion)でスペクトル的に精製されてもよく、6X対物レンズ(Newport, Model L6X)を用いて集束されてもよい。対物レンズは、対象となる分子を励起すること、およびラマンシグナルを集めることの両方のために用いられうる(Kaiser Optical Systems, Inc., Model HB 647-26N18)。ホログラフィックノッチフィルター(Kaiser Optical Systems, Inc.)は、レイリー散乱放射線を低減するために用いられうる。電荷注入装置、フォトダイオードアレイまたはフォトトランジスタアレイのような他の型の検出器が用いられうる。
【0115】
多重バーコードに関する代替の検出システムは、重複しているバーコードにおける違いを解読することを含みうる。これらのバーコードを区別しうる1つの方法は、例えば、単一ユニットにおける異なるバーコード要素間の距離(波長吸光度または励起からのシフト、物理的距離、トンネリング伝導率など)が識別されうるように、標準DSP方法でありうる。
【0116】
ラマン分光法または当技術分野において公知の関連技術の任意の適切な形式または構造を用いることができ、例えば、標準ラマン散乱、共鳴ラマン散乱、SERS、表面増強共鳴ラマン散乱、コヒーレントアンチストークスラマン分光法(CARS)、誘導ラマン散乱、逆ラマン分光法、誘導利得ラマン分光法、ハイパーラマン散乱、分子光学レーザー検査器(MOLE)またはラマンマイクロプローブまたはラマン顕微鏡法または共焦点ラマン顕微分光測定法、3次元またはスキャニングラマン、ラマンサチュレーション分光法、時間分解共鳴ラマン、ラマンデカップリング分光法またはUV-ラマン顕微鏡法である。
【0117】
微小電気機械システム(MEMS)
バーコード調製、使用および/または検出のための装置を、より大きな装置および/またはシステムへ組み入れてもよい。特定の態様において、装置は、微小電気機械システム(MEMS)を含みうる。MEMSは、機械的要素、センサー、アクチュエータおよび電子機器を含む集積システムである。それらの構成要素のすべては、シリコンベースまたは等価の基板の一般的なチップ上における微細加工技術により製造されうる(例えば、Voldman et al., Ann. Rev. Biomed. Eng. 1:401-425, 1999)。MEMSのセンサー構成要素は、バーコードを検出するために機械的、熱的、生物学的、化学的、光学的および/または磁気的現象を測定するのに用いられうる。電子機器は、センサー、およびポンプ、バルブ、ヒーターなどのような制御アクチュエータ構成要素からの情報を処理することができる。
【0118】
MEMSの電子的構成要素は、集積回路(IC)プロセス(例えば、CMOSまたはバイポーラプロセス)を用いて組み立てられてもよい。それらは、コンピュータチップ製造のためのフォトリソグラフィーおよびエッチング方法を用いてパターン化されうる。微小機械構成要素は、機械的および/または電気機械的構成要素を形成するために、選択的に、シリコンウエハーの部分をエッチングして取り除く、または新しい構造層を加える、適合性の「微小機械加工」プロセスを用いて組み立てられてもよい。
【0119】
MEMS製造における基本技術は、物質の薄膜を基板上に蒸着する段階、いくつかのリソグラフィー方法により膜の上にパターン化マスクを貼り付ける段階、および選択的に膜をエッチングする段階を含む。薄膜は、数ナノメートル〜100マイクロメートルの範囲でありうる。使用される蒸着技術は、化学蒸着(CVD)、電着、エピタキシーおよび熱酸化のような化学的手順、ならびに物理蒸着(PVD)および鋳造のような物理的手段を含みうる。ナノ電気機械システムの製造の方法もまた使用することができる(例えば、Craighead, Science 290:1532-36, 2000を参照)。
【0120】
いくつかの態様において、装置および/または検出器は、様々な液体で満たされたコンパートメント(例えば、微小流体チャネルまたはナノチャネル)に接続されうる。これらを始めとする装置の構成要素は、例えば、チップ(例えば、半導体チップ)および/またはマイクロキャピラリーまたは微小流体チップの形をとって、単一ユニットとして形成されうる。または、個々の構成要素は、別々に組み立てられて、合わせて取り付けらてもよい。そのようなチップにおける使用として公知の任意の物質を、開示された装置に用いることができ、例えば、ケイ素、二酸化ケイ素、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、プラスチック、ガラス、水晶などである。
【0121】
チップの一括製造のための技術は、コンピュータチップ製造および/またはマイクロキャピラリーチップ製造において周知である。そのようなチップは、フォトリソグラフィーおよびエッチング、レーザーアブレーション、射出成形、鋳造、分子ビームエピタキシー、ディップペンナノリソグラフィー、化学蒸着(CVD)製造、電子ビームまたは集束イオンビームテクノロジーまたはインプリンティング技術によるような、当技術分野において公知の任意の方法により製造されうる。非限定的例は、通常の成形、二酸化ケイ素のドライエッチング;および電子ビームリソグラフィーを含む。ナノ電気機械システムの製造方法は、特定の態様について使用されうる。例えば、Craighead, Science 290:1532-36, 2000参照。)微細加工チップの様々な型は、例えば、Caliper Technologies Inc. (Mountain View, CA)およびACLARA BioSciences Inc. (Mountain View, CA)から市販されている。
【0122】
特定の態様において、装置の一部または全部は、例えば、ラマン分光法によるバーコード検出に用いられる励起および発光周波数における電磁放射には透明であるように選択されうる。適した構成要素は、ガラス、ケイ素、水晶または任意の他の光学的に透明な物質のような物質から製造されうる。様々な分析物、例えば、核酸、タンパク質など、に曝されうる液体で満たされたコンパートメントについて、そのような分子に曝される表面は、例えば、表面を疎水性から親水性表面へと変換させるため、および/または分子の表面への吸着を減少させるためにコーティングすることにより修飾されうる。ガラス、ケイ素、水晶および/またはPDMSのような一般的なチップ材料の表面修飾は、公知である(例えば、米国特許第6,263,286号)。そのような修飾は、例えば、市販されているキャピラリーコーティング剤(Supelco, Bellafonte, PA)、様々な機能(例えば、ポリエチレンオキシドまたはアクリルアミドなど)をもつシランでのコーティングを含みうる。
【0123】
特定の態様において、そのようなMEMS装置は、分子バーコードを調製するために、組み込まれていない構成要素から形成された分子バーコードを分離するために、分子バーコードを標的に曝すために、および/または標的に結合した分子バーコードを検出するために、使用されうる。
【0124】
実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために含まれる。後に続く実施例において開示された技術は、本発明の実施において十分に機能するように本発明者らにより発見された技術を提示し、従って、それの実施にとって好ましい様式を構成すると考えられうることは、当業者により認識されるべきである。しかしながら、開示されている特定の態様において多くの変更がなされ、かつ本発明の真意および範囲から逸脱することなく、同様なまたは類似した結果をなお得ることができることを、本開示に照らせば、当業者は認識するものと思われる。
【0125】
実施例1. 分子バーコードのラマン検出
図3は、例示的な、付着したラマンタグをもつ一本鎖バーコードを示す。例示的オリゴヌクレオチド配列301、302、303、304は、標準ホスホラミダイト化学作用により合成された。光学的検出のためのタグが、オリゴヌクレオチドに付着しており、蛍光色素ROX(カルボキシ-X-ローダミン)310;FAM(6-カルボキシフルオレセイン)320;およびTAMRA(テトラメチルローダミン)330を含んだ。各バーコードに付着した色素タグの位置および同定は、図3に示されているとおりである。アミン基は、合成中に、3つのオリゴヌクレオチド302、303、304の5'末端に付着した。
【0126】
実施例2. 分子バーコードのラマンスペクトル
図3に示された分子バーコードはSERSにかけられた。SERS発光スペクトルは、図4に示されている。銀コロイドおよびLiClの存在下における示されたバーコード301、302、303、304の1 μM溶液の220 μlを含む試料は、100 ms、レーザービームに曝露され、表面増強ラマンスペクトルが記録された。スペクトルは、約1000 CCDカウントユニットによりオフセットされた。図4に示されているように、4つの分子バーコード301、302、303、304のそれぞれは、3つの分子バーコード302、303、304が、同じヌクレオチド配列302、303、304上の異なる位置に付着した同じラマンタグ330を含んでいるにしても、識別可能なラマン発光スペクトルを生じた。これは、開示された方法を用いて識別可能な分子バーコードを作製することの実行可能性を実証している。
【0127】
実施例3.
ヌクレオチドに付着したいくつかの例示的ラマンタグにより発生したSERSスペクトル801 802 803 804 805 806は、図8に示されている。各ラマンタグから生じたスペクトルパターン801 802 803 804 805 806は、容易に識別できる。銀コロイドおよびLiClの存在下における1 μM バーコード溶液の220 μlを含む試料は、100 ms、レーザービームに曝露され、表面増強ラマンスペクトルが記録された。SERS発光スペクトルは、ポリT[NeBu]T 801;ポリT[EthdA]T 802;ポリT[8Br-dA]T 803;ポリT[2AmPur]T 804;[ThiSS]ポリTdA 805および[5Acrd]ポリdG[AmC7]806について示されている。
【0128】
実施例4.
本発明の1つの例示的態様が例示される。核酸配列を、図5および図6/7に示されているように、解読方法を用いることにより決定することができる。コード構成要素ライブラリー(図6 601 602 603 604)は、ライブラリーの各構成要素が、構成要素(例えば、3-マー)を具体的かつ一意的に同定する結合した標識(例えば、ラマンタグ)を有するように、作製されうる。核酸は、プローブの標的配列605へのハイブリダイゼーションを可能にするように構成要素ライブラリーとインキュベートされる。ハイブリダイズした核酸は、それらが励起源および検出器を流れ過ぎる、微小流体チャネルを通して操作される。コード構成要素の発光スペクトルは、検出され、データ処理システムへ中継されうる。核酸の配列は、発光スペクトルおよび発光スペクトルが検出される順序を、標識と結合したコード構成要素についてのスペクトルのデータベースと比較することにより決定される。
【0129】
例えば、組織試料を、疾患の疑いがある対象から得てもよい(例えば、生検試料、または場合により血液試料により)。単細胞懸濁液は、当技術分野において公知の技術により作製され、細胞は、細胞の内容物を放出するためにいくつかの膜破壊の1つにより溶解されうる。核酸は、当技術分野において公知の方法(例えば、フェノール/クロロホルム抽出、ゲル精製など)により単離される。精製された核酸分子は、ナイロン膜、96ウェルのマイクロタイタープレートまたは他の固定化基板への付着により固定化される。コード構成要素は、例えば、1個ずつまたは数個ずつ、固定化核酸へ導入され、予め決められたストリンジェンシー(NaCl含有量)の緩衝液において分子と相互作用するようにされてもよい。コードされたプローブは、標的核酸にハイブリダイズするようにさせられる。第一の1つまたは複数のコード構成要素のハイブリダイゼーション後、追加のコードされた構成要素が添加されうる。ハイブリダイズしていないコード構成要素および互いにハイブリダイズしたコード構成要素は、徹底的な洗浄により除去され、固定化核酸にハイブリダイズしているコード構成要素のみを残す。その後、コード構成要素は、逐次的に取り出され、コード構成要素にマッチする核酸配列を解読することにより読み取られる。配列の全部または一部は、所望の終点に依存して決定されうる。この情報を、検査されることになっている疾患について知られている情報と比較してもよく、特定の配列の存在または非存在によって、問題になっている疾患に関して対象の状態が決定され得る。一つの例において、疾患と相互に関連しているSNPs(一塩基多型)が同定され得、従って、固定化核酸の完全なシーケンシングは必要ではない。
【0130】
または、1つまたは複数のコード構成要素を、96ウェルのプレートのような表面上に固定化してもよく、これらを、特定の遺伝子型などについてのマーカーである、既知のSNP、挿入または欠失のような標的配列を含む対応する核酸分子を捕獲するために用いることができる。ラマン標識のようなタグの感度により、標的配列の迅速な同定が可能でありうる。
【0131】
実施例5.
本発明の1つの例示的態様が示される。タンパク質またはペプチド(例えば、まれな制御タンパク質など)は、前に考察されているように精製されうる。精製されたタンパク質/ペプチドは、当技術分野において周知の技術により抗体(モノクローナル抗体もまた当技術分野において公知の技術により作製されうる)を作製するために用いられる(Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York, 1988)。抗原の反応性は、フロイントの完全または不完全アジュバントのようなアジュバントを同時投与することにより増加しうる。抗原性は、ウシ血清アルブミンまたはキーホールリンペットヘモシアニンのような担体に抗原を付着させることにより増加しうる。動物の免疫応答は、抗原のブースター注射を定期的に施すことにより増加しうる。抗体1206は、動物の循環へ分泌され、出血または心臓の穿刺により得られうる。抗体1206は、血液凝固、遠心分離、濾過および/またはイムノアフィニティー精製(例えば、抗ウサギ抗体を用いる)もしくはアフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテイン-Aセファロースカラムクロマトグラフィー)のような周知の方法により他の血液成分から分離されうる。その後、これらの抗体は、図12に示されたポリマーラマン標識のいずれか1つに連結(例えば、共有結合性に)されうる。その後、ポリマーラマン標識抗体は、多くの分子の抽出物からそのタンパク質を同定するために用いられうる。または、ポリマーラマン標識抗体は、同定を目的として、対象となるタンパク質のさらなる研究のために、そのタンパク質の活性をブロックするために、疾患に関連したタンパク質を同定するためになど、分子の抽出物からいくつかの同じタンパク質を単離するのに用いられうる。ポリマーラマン標識分子は容易に検出されるため、それはまた、疾患の存在および/または程度を評価する診断目的のために使用されうる。
【0132】
実施例6. 図5〜7に示された技術を用いる核酸配列同定
一つの態様において、核酸は、1つまたは複数のラマンタグを用いて修飾されうる。多くの小さくかつ独特なラマンタグが利用できる。一つの例において、強くかつ独特なラマンシグネチャーを有するいくつかのアデニン類似体が図13に示されている(他のものは図8に示されている)。一つの例において、ラマンタグを、1つまたは複数の塩基修飾を通して核酸に連結してよく、その後、これらの修飾塩基を、オリゴヌクレオチドの化学合成のためのホスホラミダイトを作製するために用いてもよい。修飾塩基のホスホラミダイトを、当技術分野において公知の技術により作製することができる(McBride, L.J. and Caruthers, M.H. (1983) "An investigation of several deoxynucleoside phosphoramidites useful for synthesizing deoxyoligonucleotides." Tetrahedron Lett. 24:245-248)。
【0133】
一つの態様において、コード構成要素は、約10〜20塩基の長さからなりうる。10-マーについて、これは、4^10個の可能な配列であり、20-マーについて、これは、4^20個の可能な配列である。実践的適用において、標的配列は既知である、または配列は、配列のサブセットへ分割されうる。従って、オリゴヌクレオチドは、例えば、1つまたは複数のラマンタグにより標識かつ同定されうる。一つの例において、10個の異なるホスホラミダイトが用いられうる場合(それぞれ、異なるラマンタグをもつ);合成されたオリゴヌクレオチド配列あたり1つのラマンタグがあるならば、10個の異なるオリゴが合成されうる;合成されたオリゴヌクレオチドあたり2つのラマンタグがあるならば、55個のオリゴヌクレオチドが合成されうる、およびオリゴヌクレオチドあたり3つのタグがあるならば、175個のオリゴが合成されうる。例えば、オリゴヌクレオチド(コード構成要素)合成のためのホスホラミダイトを用いることができ、これらの方法は、当技術分野において公知である。一つの例において、1つの構成要素は、タグとしてキネチン(KN)(図13)を有する
であってもよく、およびもう一つは、タグとしてベンゾイル-アデニン(BA)(図13)を有する
であってもよい。バーコード構成要素の多くは、予め作製されて、後の使用のために保存されてもよい。
【0134】
一つの態様において、バーコードは以下の方法により調製されうる。バーコードは、いくつかのコード構成要素から構築されうる。バーコード鋳型は、標準ホスホラミダイト化学作用により合成されうる、比較的長いポリヌクレオチド、例えば40ヌクレオチドのDNA断片でありうる:
【0135】
この例における下線部分は、コンテナ部であり得、その他の配列は、プローブ部であり得る。バーコード構成要素
および
は、標準条件(例えば、200 mM NaCl、10 mM トリスHCl、pH 7.5および1 mM EDTAの存在下において1〜10 μMのオリゴヌクレオチド濃度)下でコンテナ部にハイブリダイズしうる。それゆえに、この例において、プローブ部は、2-バーコード構成要素により表され、それのラマンシグネチャーは、ラマンタグとしてのキネチンおよびベンゾイル-アデニンの両方により決定される。異なるバーコード鋳型を合成するために、プローブ部およびコンテナ部は、相応じて変化させられる;異なるバーコード構成要素(予め作製された)は、新しいバーコードを形成するようにいっしょにハイブリダイズしうる。
【0136】
この技術は、例えば、感染性原因物質に対応するDNAまたはRNAの存在を分析することにより感染性原因物質を検出するために用いられうる。試料を収集し、当技術分野において公知の技術により試料から核酸を抽出した後、核酸は消化され(例えば、制限酵素、限定デオキシリボヌクレアーゼ消化などにより)、ビオチン化ddNTP(Perkin Elmer Life Sciences)の存在下においてターミナルトランスフェラーゼ(New England Biolabsから入手可能)によりビオチンで末端標識されうる。ゲル濾過カラム(Amersham-Pharmacia Biotech)により遊離のヌクレオチドを除去した後、ビオチン化DNAは、ストレプトアビジンコーティング化磁気ビーズ(Roche)上に捕獲されうる。核酸は、その後、2つの相補鎖を分離するために0.1 N NaOH(DNAについて)で変性される。標的分子を中和した後、バーコード分子を、相補配列を結合するために導入してもよい。結合/洗浄緩衝液の1つの例は、200 mM NaCl、10 mM トリスHCl、pH 7.5および1 mM EDTAでありうる。磁石(Dynal Corp)を、当技術分野において公知の方法による粒子操作のために用いてもよい。
【0137】
一つの例において、バーコードのプローブ部は、標的配列に相補的である、例えば、
バーコード分子は、標的配列に結合し、それに従って、この例においては磁石により保持される(Dyna beads, Dynal)。ビーズは、銀コロイド(1 mM AgNO3から調製され、水で1:2に希釈された)および0.1 M LiCl(最終濃度)と混合されうる。粒子がラマン検出器を通過する時、バーコード分子に特異的に結合したラマンシグナル(KNおよびBA)は、このようにして検出されうる。この例において、情報は、1つまたは複数の試料において特定の感染性原因物質の存在または非存在を確認するために使用されうる。
【0138】
実施例7. タンパク質検出のためのバーコード-抗体
もう一つの態様は、実施例6においてのようにラマンタグ付きバーコードの調製を含みうるが、バーコードは、その後、抗原検出(例えば、タンパク質)のために抗体へ付着する。それゆえに、バーコード調製物は生じており、そして、DNAタグ付き抗体が作製されうる。例えば、IgG抗体(例えば、200 μg(1.33 nmoles))は、0.1x PBS(Ambionから入手できる、10x PBSから希釈された)の200 μlにおいてスルホ-GMBS(Pierceカタログ番号22324)の20 μg(52 nmoles)で、37℃で30 min、およびその後、室温で30 min、活性化されうる。溶液は、その後、PD-10カラム(Amersham-Pharmacia)を通過させられ、抗体含有画分は収集される。チオール修飾オリゴは、商業的ベンダー(Qiagen-Operon)により合成されうる。ベンダーからの指示に従ってジスルフィド結合を還元した(例えば、DTT処理)後、DNAオリゴ(例えば、13 nmoles)は、精製かつ活性化された抗体と混合されうる。反応は、室温で2時間、および4℃で一晩、進行するようにさせておく。DNA-抗体は、その後、例えば、0〜2 M NaCl勾配を用いるイオン交換カラム(Amersham-Pharmacia)により精製されうる。DNAおよびタンパク質の両方を含む画分が収集される。試料は、当技術分野において公知の技術を用いる脱塩および濃縮処理後、抗原結合(タンパク質検出)の準備ができている。
【0139】
固体支持体上に抗原(例えば、タンパク質)を固定化するためにいくつかの方法が用いられうる。好ましくは、ラマン検出について、捕獲抗体(捕獲抗体および検出抗体は、同じ抗原を認識するべきであり、R&D SystemおよびBD Biosciencesのような商業的ベンダーから入手できる)は、EDC化学により金表面上に固定化されうる(Benson et al., Science, 193, (2001), 1641-1644)。標的抗原(例えば、タンパク質)を含む試料は、1x PBSに希釈され、その後、特異的結合のために固体表面に適用されうる。例えば、DNAタグ付き抗体は、捕獲される抗原(例えば、タンパク質標的)に結合するようにさせておく。その後、標準イムノアッセイ手順に従いうるが、典型的には、1x PBSおよび0.05% ツイーン-20を用いる。一旦結合事象が起きたならば、相補的ラマンタグ付きDNAは、検出抗体に付着した固定化DNAオリゴに結合するようにさせておく。典型的には、バーコード分子は、2x PBSおよび1□g/ml 酵母tRNA(Sigma)において10 nM 濃度でありうる。1x PBSでの洗浄後、銀コロイド(1 mM AgNO3から調製され、水で1:2に希釈された)を、結合表面に添加してもよく、LiClを、その後、0.1 Mまで添加し、続いて、ラマン測定が行われる。抗体に付着しているDNAオリゴは、バーコードのプローブ部に相補的であるため、バーコードシグネチャーの存在は、抗体およびそれに従って標的抗原(タンパク質)の存在を示す。いくつかの異なる抗原は、異なる捕獲抗体およびDNAタグ付き検出抗体が同じ系に用いられる場合、この方法により同時に検出されうる。
【0140】
本明細書に開示および主張された方法、組成物および装置のすべては、本開示に照らせば、過度の実験なしに作製および使用されうる。主張された内容の概念、真意および範囲から逸脱することなく、変化が、本明細書に記載された方法、組成物および装置に適用可能であることは、当業者に明らかであると思われる。より具体的には、化学的および生理学的の両方に関連している特定の作用物質が、本明細書に記載された作用物質の代わりに使用可能であると同時に、同じまたは類似した結果が達成されるだろうことは、明らかであると思われる。当業者に明らかなすべてのそのような類似した置換および改変は、主張された内容の真意、範囲および概念内であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】分枝120およびタグ130で修飾された有機骨格110をもつバーコード100を作製するための例示的方法を示す。バーコード100は、標的に結合するプローブ部分を含みうる。タグ130は、例えば、抗体140に結合することによる、追加の修飾を受ける場合がある。
【図2】同じ骨格を利用する異なるバーコード201、202、203を作製するための例示的方法を示す。タグ240、250、260を、識別可能なバーコード201、202、203を作製するために異なる位置に置いてもよい。バーコード201、202、203の標的への結合は、バーコード201、202、203に付着したプローブ部分210、220、230により仲介されてもよい。
【図3】一本鎖核酸骨格をもついくつかのバーコード301、302、303、304の例を示す。タグ310、320、330は、例えば、ラマン分光法により同定されうる異なるスペクトルを生じるように、骨格上の様々な部位に付加される。バーコード302、303、304上の異なる部位に付着した同じタグ330をもつバーコードは、識別可能なラマンスペクトルを生じうる。
【図4】図3に開示されたバーコードにより生じたラマンスペクトルの例を示す。バーコード301、302、303および304は、グラフに表されている。
【図5】1つまたは複数のタグ510に付着した既知の配列の様々な短いオリゴヌクレオチド520を用いてバーコードを作製するための例示的方法を示す。オリゴヌクレオチド-タグ分子は、鋳型分子500へのハイブリダイゼーションにより、集合してバーコードを構築しうる。鋳型500は、オリゴヌクレオチド-タグハイブリダイゼーションのためのコンテナ部540、および核酸のような標的分子への結合のためのプローブ部550を含みうる。代替の態様において、プローブ550は、例えば、タンパク質、ペプチドまたは標的の他の型に結合可能なアプタマー配列を含みうる。
【図6】コード構成要素601、602、603、604を作製することを含む、タグ部分をオリゴヌクレオチドまたは核酸に付着させ、鋳型606を作製し、コード構成要素を鋳型605へハイブリダイズさせて、バーコード607を生じることによる、バーコードを作製するための例示的方法の概略図を表す。
【図7】相補標的鎖の存在または非存在を同定するために、図6の方法により作製されたバーコードを利用する例示的方法の概略図を表す。
【図8】いくつかのラマンタグ801、802、803、804、805、806により生じたSERS(表面増強ラマン分光法)スペクトルのプロットの例を表す。
【図9】ポリマーラマン標識910の例を示す。モノマーユニット901、902は、骨格909に付着した官能基904、908と、増加するポリマー鎖の末端におけるもう一つの官能基904、908との相互作用から生じた共有結合906により連結される。任意で、追加のユニット903が付加してもよい。
【図10】ポリマーラマン標識を作製するための例示的方法の概略図を示す。固体支持体1001は、構成要素1005(例えば、ポリマーラマン標識の部分)を付着させるために用いられる。構成要素1005の開放端1104は、脱保護され、モノマーユニット1010が、モノマーユニット1010の脱保護された官能基1006を介して構成要素1005に付着する。ラマンタグ1002、1003、1008は、ポリマーラマン標識に付着している。
【図11A】ポリマーラマン標識1105を作製するためのもう一つの例示的方法を表す。第1反応は、官能基1102a、1102bをラマンタグ1101a、1101bに付着させ、官能性を持たせたラマンタグ1103a、1103bを生成するために用いられる。第2反応は、官能性を持たせたラマンタグ1103a、1103bを重合させて、サブポリマーラマン標識1104a、1104bを形成するために用いられる。各サブポリマーラマン標識1104a、1104bは、予め決められた数のモノマーラマンタグ1103a、1103bを含む。この例において、第一サブポリマー1104aは、第一モノマー1103aの「n」コピーを含み、第二サブポリマー1104bは、第二モノマー1103bの「m」コピーを含む。予め決められた比率のサブポリマーラマン標識1104a、1104bが、混合され、架橋されて、ポリマーラマン標識1105を形成しうる。
【図11B】ポリマーラマン標識を作製するためのさらにもう一つの例示的方法を示す。官能基1112をもつポリマー分子1109は、異なるラマンタグ1110と組み合わされて、ポリマーラマン標識1111を形成しうる。ラマンタグ1110の各型の数を、特定された分光学的性質をもつポリマーラマン標識1111を生じるように予め決めることができる。
【図12】標的分子を同定するための1つまたは複数のプローブ1206に連結されたポリマーラマン標識のいくつかの例を示す。第一の例1201は、リンカー1205を介してプローブ1206に付着したポリマーラマン標識1204を示す。第二の例1202は、リンカー1205を介してナノ粒子1207に連結された2つのポリマーラマン標識1204、およびナノ粒子1207を2つのプローブ1206に付着させる追加のリンカー1205を示す。第三の例1203は、リンカー1205を介してナノ粒子に付着した複数のプローブ1206、およびナノ粒子1207に付着した複数のラマンタグ1208を示す。
【図13】修飾核酸、アデニンのいくつかのラマンタグにより生じたSERS(表面増強ラマン分光法)スペクトルのプロットの例を示す。
【技術分野】
【0001】
分野
本方法、組成物および装置は、分子バーコードの分野に関する。本発明の具体的な態様は、有機ポリマー骨格から分子バーコードを作製する方法に関する。複数の分子バーコードは、骨格上の異なる部位にタグを付着させることにより同じ骨格を用いて作製されうる。他の態様において、分子バーコードは、プローブ領域および1つまたは複数のコード構成要素を含んでもよい。他の態様において、分子バーコードは、標的分子の検出のための1つまたは複数のプローブに付着したポリマーラマン標識を含んでもよい。
【背景技術】
【0002】
背景
生体分子の検出および/または同定は、医学的診断学、法科学、毒物学、病理学、生物戦、公衆衛生学および多数の他の分野における様々な適用として利用される。研究される生体分子の原則クラスは、核酸およびタンパク質であるが、炭水化物、脂質、多糖、脂肪酸などのような他の生体分子が対象となる。迅速で、信頼性があり、且つ費用効率が高い生体分子の同定の方法、類似した生体分子間を識別する方法、ならびに病原性胞子または微生物のような巨大分子複合体の分析についての必要性が存在している。
【0003】
サザンブロッティング、ノーザンブロッティングまたは核酸チップへの結合のような核酸検出のための標準的方法は、蛍光、化学ルミネセンスまたは放射性のプローブ分子の、標的核酸分子とのハイブリダイゼーションに頼っている。オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションに基づいたアッセイ法において、標的核酸と配列において相補的である標識オリゴヌクレオチドプローブが、核酸に結合かつ検出するために用いられる。より最近では、標的核酸に結合するための何百個または何千個という付着したオリゴヌクレオチドプローブを含みうる、DNA(デオキシリボ核酸)チップが設計された。感度および/または特異性に関する問題は、完全には相補的ではない配列間の核酸ハイブリダイゼーションに起因する可能性がある。または、試料における標的核酸の低レベルの存在は、検出されない可能性がある。
【0004】
様々な技術を、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの同定に利用することができる。一般的に、これらは、抗体の結合および検出を含む。抗体に基づいた同定は、かなり迅速であるが、そのようなアッセイは、時々、高レベルの偽陽性または偽陰性を示す場合がある。これらのアッセイの費用は高く、1つより多い標的の同時アッセイは困難である。さらに、方法は、アッセイが行われうる前に、抗体が、対象となる標的タンパク質に対して調製されていることを必要とする。
【0005】
分子生物学、遺伝学、疾患診断、および薬物応答性の予測における多数の適用は、核酸配列変異体の同定を含む。サンガーのジデオキシシーケンシング法およびハイブリダイゼーションによるシーケンシング法を含む核酸シーケンシングのための方法は、比較的遅く、高価で、大きな労働力を要する傾向があり、放射性タグまたは他の毒性化学物質の使用を含む場合がある。既存の方法はまた、1反応において得ることができる配列情報の量に関して制限され、典型的には、約1000塩基またはそれ未満までである。より迅速で、費用効率が高く、自動化された核酸シーケンシング法の必要性が存在している。
【0006】
図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の開示された態様の特定の局面をさらに実証するために含まれる。態様は、本明細書に提示された詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つまたは複数への参照によってより良く理解されうる。
【発明の開示】
【0007】
例示的態様の説明
以下の詳細な説明は、本発明の開示された態様のより完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細を含む。しかしながら、態様は、これらの特定の詳細なしに実施されうることは、当業者に明らかであると思われる。他の例では、当技術分野において周知である装置、方法、手順および個々の構成要素が、本明細書に詳細に記載されている。
【0008】
定義
本明細書に用いられる場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つまたは1つより多いものを意味しうる。
【0009】
本明細書に用いられる場合、「複数」のものとは、2つまたはそれ以上のものを意味する。
【0010】
本明細書に用いられる場合、「核酸」は、DNA、RNA(リボ核酸)、それらの一本鎖、二本鎖または三本鎖、および任意の化学修飾を含む。事実上、核酸の任意の修飾が企図される。「核酸」は、2塩基以上のオリゴヌクレオチドから完全長染色体DNA分子までのほとんど任意の長さでありうる。核酸は、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0011】
「プローブ」分子は、1つまたは複数の標的への選択的および/または特異的結合を示す任意の分子である。本発明の様々な態様において、各異なるプローブ分子は、異なるプローブの集団からの特定のプローブの結合が検出されるように、識別可能なバーコードに付着しうる。態様は、用いられうるプローブ分子の型に関して制限されない。限定されるわけではないが、オリゴヌクレオチド、核酸、抗体、抗体断片、結合タンパク質、受容体タンパク質、ペプチド、レクチン、基質、インヒビター、アクチベーター、リガンド、ホルモン、サイトカインなどを含む、当技術分野において公知の任意のプローブ分子を用いることができる。特定の態様において、プローブは、異なる標的を同定するために、1つまたは複数のバーコードに、共有結合性にまたは非共有結合性に付着した、抗体、アプタマー、オリゴヌクレオチドおよび/または核酸を含んでもよい。
【0012】
例示的態様
開示された方法、組成物および装置は、核酸およびタンパク質のような生体分子の検出、同定ならびに/またはタグ付けに利用される。本発明の特定の態様において、方法、組成物および装置を、骨格の様々な修飾を行うことにより単一の有機骨格から複数のバーコードを作製するために用いることができる。態様は、単一の骨格に限定されず、1つまたは複数の異なる骨格を利用してもよい。利点には、骨格に沿ってタグの付着部位を変えることにより、同じ骨格で異なるバーコードを作製する能力が含まれる。他の態様は、生体分子の迅速な同定のための、または生体分子にタグを付けるための、ポリマーラマン標識を作製することに関する。他の利点には、感度が高くかつ正確な、ポリペプチドの検出および/または同定が含まれる。
【0013】
合成によるバーコード
本発明の一つの態様において、図1に示されているが、バーコード骨格110は、核酸、ペプチド、多糖および/または化学的に誘導されたポリマーの配列の任意の組み合わせを含む、有機的構造を含むポリマー鎖から形成されうる。特定の態様において、骨格110は、一本鎖または二本鎖核酸を含みうる。いくつかの態様において、骨格は、オリゴヌクレオチド、抗体またはアプタマーのようなプローブ部分150に付着しうる。骨格110は、追加の形態的多様性およびタグ付着部位を生じるために、1つまたは複数の分岐構造120で修飾されうる。分岐構造120は、当技術分野において周知の技術を用いて形成されうる。例えば、バーコード100が二本鎖核酸を含む場合、分岐構造120は、オリゴヌクレオチドの合成および一本鎖鋳型核酸へのハイブリダイゼーションにより形成されうる。オリゴヌクレオチドは、配列の一部(例えば、5'末端)は鋳型と相補的であり、かつ一部(例えば、3'末端)はそうではないように、設計されうる。従って、バーコード100は、二本鎖配列のセグメントおよび一本鎖分岐構造120の短いセグメントを含む。図1に開示されているように、タグ130は、例えば、分岐構造120の一本鎖部分と配列において相補的である標識130オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより、バーコードに付加されうる。
【0014】
オリゴヌクレオチド模倣体を、有機骨格110を作製するために用いてもよい。ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間結合、すなわち骨格の両方は、新規な群で置換されうる。プローブ150を、適切な核酸標的化合物とハイブリダイズするために用いることができる。優れたハイブリダイゼーション性質をもつことが示されたオリゴマー化合物またはオリゴヌクレオチド模倣体の一つの例は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれている。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、例えばアミノエチルグリシン骨格で置換される。この例において、核酸塩基は、保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子へ直接的にまたは間接的に結合される。PNA化合物の調製を開示するいくつかの米国特許は、例えば、米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;および第5,719,262号を含む。さらに、PNA化合物は、Nielsen et al. (Science, 1991, 254, 1497-15)に開示されている。
【0015】
一つのバーコード100をもう一つから識別するために、タグ130を、骨格110へ、または1つもしくは複数の分岐構造120へ、直接的に付加してもよい。バーコード100は、1つまたは複数のタグ130にもう一つの分子140(例えば、抗体)を付着させることによりさらに修飾されてもよい。かさ高な群が用いられる場合、分枝部位120に付着したタグ部分130の修飾は、標的分子とのプローブ150の相互作用にとって、立体障害をより低く与える。タグ130を、イメージング様式、例えば、蛍光顕微鏡法、FTIR(フーリエ変換赤外)分光法、ラマン分光法、電子顕微鏡法、および表面プラズモン共鳴法により読み取ることができる。イメージングの異なる変形型は、限定されるわけではないが、伝導率、トンネル電流、容量性電流などを含む、タグ130の形態学的、トポグラフィー的、化学的および/または電気的性質を検出することが知られている。用いられるイメージング様式は、タグ部分130および発生したその結果としてのシグナルの性質に依存する。限定されるわけではないが、蛍光、ラマン、ナノ粒子、ナノチューブ、フラーレンおよび量子ドットタグ130を含む、公知のタグ130の異なる型を、それらのトポグラフィー的、化学的、光学的および/または電気的性質によりバーコード100を同定するために用いることができる。そのような性質は、用いられるタグ部分130の型、および骨格110または分岐構造120上のタグ130の相対的位置の両方の機能として変化し、結果として、各バーコード100について発生する識別可能なシグナルを生じる。
【0016】
図2に示されているように、特定の標的を認識する異なるプローブ210、220、230は、識別可能なバーコード201、202、203に付着しうる。この例示的態様において、複数のタグ240、250、260は、異なる部位においてバーコード201、202、203に付着しうる。タグ240、250、260は、例えば、ラマンタグまたは蛍光タグを含みうる。隣接したタグは、例えば、蛍光共鳴エネルギー移転(FRET)または他の機構により互いに相互作用できるため、タグ部分240、250、260の同じセットから得られるシグナルは、タグ240、250、260間の位置および距離に依存して変化しうる(実施例1参照)。従って、類似したまたは同一の骨格をもつバーコード201、202、203は、識別可能に標識されうる。標的分子結合の特異性は、抗体、アプタマーまたはオリゴヌクレオチドのようなプローブ210、220、230の、バーコード201、202、203への付着により付与されうる。所定のプローブ210、220、230特異性に対応するバーコード201、202、203シグナルは知られているため、どのプローブ210、220、230が試料における標的に結合しているかを測定することにより、分子の複雑な混合物を分析すること、および個々の種を検出することが可能である。
【0017】
本発明の特定の態様において、図1および図2に示されているが、バーコード100、201、202、203の骨格110は、ホスホジエステル結合、ペプチド結合および/またはグリコシド結合から形成されうる。例えば、標準ホスホラミダイト化学作用が、DNA鎖を含む骨格110を作製するために用いられうる。ホスホジエステル結合された骨格110を作製するための他の方法は知られており、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR(商標))増幅である。骨格110の末端は、異なる官能基、例えば、ビオチン、アミノ基、アルデヒド基またはチオール基を有してもよい。官能基を、プローブ150、210、220、230に結合するために、またはタグ130、240、250、260を付着させるために、使用することができる。タグ130、240、250、260を、検出を容易にするために、異なるサイズ、電気的または化学的性質を得るようにさらに修飾することができる。例えば、抗体は、ジゴキシゲニンまたはフルオレセインタグ130、240、250、260に結合するように用いられうる。ストレプトアビジンは、ビオチンタグ130、240、250、260に結合するように用いられうる。金属原子は、例えば、酵素タグ130、240、250、260を用いる金属イオン溶液の触媒還元により、バーコード100、201、202、203上に沈着しうる。バーコード100、201、202、203がペプチド部分を含む場合、ペプチドは、タグ130、240、250、260修飾140のためにリン酸化されうる。修飾140タグ130、240、250、260は、当技術分野において公知の様々な技術により検出されうる。
【0018】
本発明の特定の態様において、1つまたは複数のバーコード100、201、202、203を含む溶液を、セキュリティ追跡目的として物体に適用してもよい。そのような方法は、当技術分野において公知である。例えば、英国の会社(Smart Water Ltd.)は、デジタルDNAの鎖を含む流動体で貴重品に印を付ける方法を開発した。DNAは、事実上、品物から洗い落とすことは不可能であり、高価な品物または家宝を一意的に同定するために用いられうる。DNAは、任意の法医学研究所により検出されうる。そのような方法はまた、本明細書に開示された分子バーコード100、201、202、203で品物に印を付けるために利用されうる。そのような適用において、バーコード100、201、202、203の検出は、DNA配列に基づいた法医学的分析を必要としない。
【0019】
ハイブリダイゼーションによるバーコード
本発明の他の態様は、図5に示されているが、ハイブリダイゼーションによりバーコード530を作製する方法に関する。この態様において、バーコード530は、オリゴヌクレオチド520にハイブリダイズした核酸500を含む。1つまたは複数のタグ部分510は、例えば、公知の化学合成技術により作製された、既知の配列のオリゴヌクレオチド520に付着しうる。タグ付きオリゴヌクレオチド520を作製するための様々な方法は、当技術分野において周知である。バーコード530は、一連のタグ付きオリゴヌクレオチド520の、一本鎖DNA鋳型500へのハイブリダイゼーションにより形成される。鋳型500は、コンテナ部540およびプローブ部550を含む。プローブ部550は、相補的な標的核酸配列にハイブリダイズするように設計される。または、プローブ部550は、タンパク質、ペプチドまたは他の標的生体分子に結合できるアプタマー配列を含んでもよい。様々な態様において、プローブ領域540は、2〜30、4〜20または14〜15ヌクレオチド長の間でありうる。プローブ550の長さは、制限はなく、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、200、250ヌクレオチドまたはより長いプローブ部550が企図される。
【0020】
図3は、本発明の様々な態様において使用される例示的なラマンタグ付きオリゴヌクレオチドを示している。ラマンタグ310、320、330は、異なるスペクトルを生じるように同じオリゴヌクレオチド配列の異なるヌクレオチドに付着しうる(図4)。例えば、オリゴヌクレオチド302、303および304は、タグ330の位置が変化している同じオリゴヌクレオチド配列を示す。図4に示されているように、図3に開示されたタグ付きオリゴヌクレオチド301、302、303、304についてのラマンスペクトルは、識別可能である。図4は、同じオリゴヌクレオチド配列302、303、304に付着した同じラマンタグ330の位置における小さな変化が、ラマンスペクトルの異なるパターンを生じうることを実証している(より詳しくは、以下の実施例1および2を参照のこと)。
【0021】
図5に示された本発明の態様において、バーコード530は、1つまたは複数のタグ付きオリゴヌクレオチド520を鋳型分子500のコンテナ部540にハイブリダイズさせておく時、形成されうる。タグ付きオリゴヌクレオチド520の配列は、プローブ部550とではなく、コンテナ部540と相補的であるように設計される。鋳型500へのハイブリダイゼーションにより結合されたタグ部分510の組み合わせは、識別可能なシグナルを与えるように選択される。使用可能なシグナルの型への制限はなく、限定されるわけではないが、ラマン分光法、FTIR、表面プラズモン共鳴を含む任意の公知の検出技術が利用されうる。ハイブリダイゼーション後、バーコード530は、限定されるわけではないが、限外濾過、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、ヒドロキシルアパタイトカラムクロマトグラフィー、超遠心分離などを含む公知の方法により、ハイブリダイズしていないオリゴヌクレオチド520および鋳型鎖500から分離されうる。バーコード530作製のためのこの方法は、標準技術に対して、高い標識効率をもち、作製されるために減少した数のタグ付きオリゴヌクレオチド520を必要とし、各タグ付きオリゴヌクレオチド520は、別々かつ同定可能なバーコード530を構成する。当業者には明らかなように、図5に示された方法は、ずっと少ない数のタグ付きオリゴヌクレオチド520を用いて多数の識別可能なバーコード530の形成を可能にする、バーコード530作製のための組み合わせ方法を示している。
【0022】
図5に示された本発明の特定の態様において、鋳型500配列の長さは、プローブ部550、およびコンテナ部540にハイブリダイズするべきタグ付きオリゴヌクレオチド520のサイズから決定されうる。例えば、「n」塩基長のプローブ部550および「m」塩基長の個々のタグ付きオリゴヌクレオチド520について、鋳型500の長さは、(1+m)×n(または(n×m)+n)と等しい。例えば、9塩基長のプローブ部550および5塩基長のタグ付きオリゴヌクレオチド520とすれば、すべての可能な9-マーのプローブ配列について固有のバーコードを与えるために必要とされる鋳型500の長さは、(1+5)×9、すなわち54塩基である。
【0023】
部分的配列重複を許すと、所定の54塩基鋳型は、完全ハイブリダイゼーションを想定する50個までの異なる5-マー配列を含みうる(すなわち、5-マーは、鋳型500の最後の4塩基にのみ結合することができない)。そのような鋳型に含まれる可能な異なるm-マーの数はまた、(n+(n×m)−m+1)に等しいとして計算されうる。他方、5-マーの各位置は4個の可能な塩基のうちの1個を含んでもよく、かつ5つの位置があるから、合成されうる5-マーの45個(すなわち、1024個)の可能な配列がある。これは、コード構成要素として用いられうる5-マーの4m−(n+(n×m)−m+1)個の型があることを意味する。この例においては、コード構成要素として用いられうる5-マーの974(1024−50)個の型がある。コンテナ部540は、利用可能な974個の型から、一連の固有5-マーにハイブリダイズするように設計される。適切なコード配列を含むタグ付きオリゴヌクレオチド520は、導入され、コンテナ部540にハイブリダイズしうる。各タグ付きオリゴヌクレオチド520は、それが他のコード構成要素から同定されうるように、固有のシグナルを与えるタグを含む。
【0024】
原理は、例示的図解の参照により説明することができる。プローブ部550が4塩基長(n=4)であり、かつタグ付きオリゴヌクレオチド520が3塩基配列(m=3)を含む場合、鋳型500の長さは、16塩基長((1+3)×4)である。これは、結果として、12塩基のコンテナ部540および4塩基(4-マー)のプローブ部550を生じる。m=3であるから、利用できる64(43)個の可能な3-マー配列がある。各16塩基の鋳型500は、3-マーの14個の型まで含むことができる(4+(3*4)−3+1=14)。任意の鋳型500配列は、下の配列番号:1に示されており、左側にプローブ部550(下線の引かれた)および右側にコンテナ部540を含む。
【0025】
この例において、16-マーは、3-マーのいずれも同一ではないため、14個の異なる3-マー配列(AGA GAA AAA AAG AGT GTA TAC ACA CAT ATA TAT ATG TGT GTC)を含む。誤った位置でのコード構成要素の結合を防ぐために、一意的にタグを付けられた3-マーのコード配列の少なくとも18個の異なる型(=14+4)が、すべての可能な4-マーのプローブ配列550に識別可能にタグを付けるために必要とされる。(必要とされる固有のコード構成要素の数は、((2×n)+(n×m)−m+1)に等しいとして計算されうる。)配列番号:1に開示された特定のコンテナ配列540に関して、たった4個のタグ付き3-マー(TCA、TGT、ATGおよびCAG)が必要とされる。各タグ付き3-マーは、鋳型500上の唯一の部位において結合できる。タグ付きオリゴヌクレオチド520はコンテナ部540と配列において相補的であるため、コンテナ部540における「A」は、オリゴヌクレオチド520における「T」に結合し、「G」は「C」に結合し、および逆の場合も同じである。プローブ部550の配列における任意の変化は、対応する変化がコンテナ部540配列においてなされることを必要とする。例えば、プローブ配列550が、AGAAからAGTAへ変化させられる場合には、プローブ550におけるAGTはコンテナ540におけるAGTと重複するため、コンテナ配列540もまた変化されなければならない。可能な新しい鋳型500配列は、下の配列番号:2に示されている。
【0026】
対応するオリゴヌクレオチド520配列は、TCT TGT ATAおよびCAGである。この場合もやはり、それぞれは、コンテナ部540における唯一の部位において結合し、プローブ部550に結合することができない。すべての可能な4-マーのプローブ配列の固有のタグ付けを可能にするために、540は、18個の異なる3-マーのタグ付きオリゴヌクレオチド520を必要とし、それは、完全プローブライブラリーを用いるハイブリダイゼーションによるシーケンシング法のような、公知の方法を用いるすべての可能な3-マーの配列を作製するために必要とされる64個のタグ付き3-マーの520よりはるかに少ない。64個の可能な3-マーの中からの18個のみの使用はまた、互いにハイブリダイズすることができる可能性があるオリゴヌクレオチド520配列を用いることに関する問題を避ける。
【0027】
タグ付きオリゴヌクレオチド520(またはコード構成要素)を、バーコード530合成の前に前もって調製してもよく、精製および保存してもよい。m-マーの所定のセットを、任意の必要とされるプローブ550配列についてのバーコード530を調製するために用いることができる。これは、各タグ付きプローブ550分子が別々に調製されかつ個々に標識および精製される既存の方法と比較して、プローブ550調製の効率を非常に向上させる。本明細書に開示されたモジュラーシステムは、公知の方法と比較して、標識化の大きな効率の良さを示している。
【0028】
通常、シグナル(標識)構成要素を核酸鎖へ付着させることは、標識ヌクレオチドの使用または合成後標識工程を含み、その両方は、問題を引き起こす可能性がある。DNAポリメラーゼは、典型的には、オリゴヌクレオチド520または核酸への取り込みのための標識ヌクレオチドを効率的には処理することができない。複数のシグナル構成要素が単一の核酸鎖に付加されることになっている場合、取り込みの効率は、劇的に減少する。1つまたは2つより多い標識をもつDNA鎖は、多量の出発物質、および低い取り込み効率のために標識されていないまたは部分的に標識された分子から分離するための標識分子の実質的な精製を必要とする。本明細書に開示された複数の短いタグ付きオリゴヌクレオチド520の使用は、そのような問題を避ける。
【0029】
バーコード530分子が特定の標的分子について設計される場合、バーコード530の構造およびシグナル構成要素は固定化され、バーコード530は、一つの目的のためにのみ適している。バーコード530が他の標的について必要とされる場合には、それぞれは、出発から調製されなければならない。前もって調製されかつ保存されうる短いタグ付きオリゴヌクレオチド520を用いる本モジュラーシステムは、任意の標的についてのバーコード530作製の順応性、簡単さおよびスピードを非常に向上させる。必要とされる一意的にタグを付けられたコード構成要素の数の低減もまた、調製および同定されなければならない識別可能なタグ付きプローブ550の数を低減させるため、費用を減少させ、かつ検出の効率を向上させる。
【0030】
図6は、上記で考察されたバーコードのようなバーコードを作製するための例示的方法を示している。例えば、コード構成要素601 602 603 604は、短いオリゴヌクレオチド(例えば、3-マー)を合成し、かつタグをオリゴヌクレオチドに連結させること、またはタグによりすでに修飾されたヌクレオチドを取り込むことにより、作製されうる。オリゴヌクレオチドに連結されたタグは、ラマンタグに限定されない。例えば、蛍光、ナノ粒子、ナノチューブ、フラーレンおよび量子ドットタグもまた、オリゴヌクレオチドに付着しうる。オリゴヌクレオチドへの付着の様式は変化しうる。タグは、オリゴヌクレオチドへ直接的に付着してもよく、または分岐構造を通して付着してもよい。コード構成要素601 602 603 604としての使用のタグ付きオリゴヌクレオチドを作製するための様々な方法は、当技術分野において周知である。タグ付きコード構成要素601 602 603 604と配列において相補的である、延長プローブ領域を有する鋳型606が、作製されうる。タグ付き構成要素601 602 603 604は、個々にかまたは混合物としてかのいずれかで、鋳型606とハイブリッド形成605をする。結果生じたバーコード607は、検出可能なタグをもつ二本鎖領域、および標的分子に結合するための一本鎖プローブ領域を含む。
【0031】
図7は、バーコードの作製および使用のための概略図を示している。バーコードは、上記で考察されているように鋳型分子およびコード構成要素を創出することにより作製されうる。コード構成要素は、上記で考察されているように鋳型にハイブリダイズすることができ、バーコードを生じる。一旦、バーコードが作製されたならば、それは、試料においてオリゴヌクレオチド、核酸もしくは他の標的分子を検出するため、または核酸分子をシーケンシングするためのような、様々な目的のために用いられうる。図7に示されているように、核酸標的は、1つまたは複数のバーコードを含む溶液への標的分子の繰り返し曝露によりシーケンシングされうる。バーコードの標的へのハイブリダイゼーションは、標的鎖における相補配列の存在を示す。その工程は、繰り返されてもよく、異なるバーコードへの曝露は、異なる相補配列の存在を示している。「ショットガン」シーケンシング法の工程と同様に、相補配列の一部は、重複する場合がある。重複している相補配列は、集合して完全な標的核酸配列へと構築されうる。
【0032】
バーコードは、試料へ導入され、標的分子への結合は、任意の公知のイメージング様式、例えば、蛍光顕微鏡法、FTIR(フーリエ変換赤外)分光法、ラマン分光法、表面プラズモン共鳴法、および/または電子顕微鏡法、により検出されうる。
【0033】
共有結合によるポリマーラマン標識バーコード
本発明の特定の態様において、ポリマーラマン標識バーコードが作製されうる。一般的に、ポリマーラマン標識は、ラマンタグが直接的にまたはスペーサー分子を介して付着している骨格部分を含む。骨格部分は、限定されるわけではないが、ヌクレオチド、アミノ酸、単糖、またはビニル、スチレン、カーボネート、アセテート、アクリルアミドなどのような様々な公知のプラスチックモノマーのいずれかを含む、ポリマー化に適した任意の型のモノマーから構成されうる。ポリマーラマン標識は、オリゴヌクレオチド、抗体、レクチンまたはアプタマープローブのようなプローブ部分に付着しうる。ポリマー骨格がヌクレオチドモノマーから構成されている場合、抗体プローブへの付着は、プローブおよび骨格の両方の構成要素の異なる標的分子への結合の可能性を最小限にする。または、骨格についてヌクレオチドモノマーを用いる本発明の特定の態様において、ポリマーラマン標識へ取り込まれたヌクレオチドの配列を、標的核酸と相補的であるように設計さしてもよく、プローブ機能がポリマーラマン標識へ組み入れられることを可能にする。ヌクレオチドに基づいた骨格は、それ自身、付着したラマンタグの検出に干渉しうる可能性があるラマン発光スペクトルを生じるため、いくつかの態様において、有るか無しかのラマン発光シグナルを生じる骨格構成要素が、シグナル検出を最適化し、かつシグナル対ノイズ比を最小限にするために用いられうる。以下の段落は、概して、ポリマーラマン標識に関するものであるが、非限定的に、使用されるモノマーユニットの特定の型についてである。
【0034】
ポリマーラマン標識バーコードは、上記で考察されているように、標的分子検出、同定および/またはシーケンシングのために用いられうる。プローブ標識および検出のための現行の方法は、様々な不都合を示す。例えば、有機蛍光タグに付着したプローブは、高い検出感度を提供するが、多重検出能力が低い。蛍光タグは、幅広い発光ピークを示し、蛍光共鳴エネルギー移転(FRET)は、単一プローブ分子に付着しうる異なる蛍光タグの数を制限し、一方、自己消光は、蛍光シグナルの量子収量を低減させる。蛍光タグは、プローブが発色団の1つより多い型を含む場合には、複数の励起源を必要とする。それらはまた、光退色のために不安定である。可能性のあるプローブタグのもう一つの型は量子ドットである。量子ドットタグは、複数の層をもつ比較的大きな構造である。作製するのに複雑であることに加えて、量子ドット上のコーティングは、蛍光発光に干渉する。量子ドットタグを用いて発生されうる識別可能なシグナルの数について制限がある。プローブ標識の第三の型は、色素含浸ビーズからなる。これらは、サイズが非常に大きく、しばしば、プローブ分子のサイズ範囲より大きくなりがちである。色素含浸ビーズの検出は、定量的ではなく、定性的である。
【0035】
ラマン標識は、鋭いスペクトルピークを生じるという利点を提供し、プローブに付着されるより多数の識別可能な標識を可能にする。表面増強ラマン分光法(SERS)または類似した技術の使用は、蛍光タグに匹敵する検出の感度を可能にする。例示的なラマンタグ分子の発光スペクトルは、図8に示されている。図から見てもわかるように、ラマンタグ分子は、様々な識別可能なスペクトルを与える。図8は、以下のラマンタグ分子のスペクトルを示す:NBU(オリゴヌクレオチド5'-(T)20-デオキシネブラリン-T-3');ETHDA(オリゴヌクレオチド5'-(T)20-(N-エチルデオキシアデノシン)-T-3');BRDA(オリゴヌクレオチド5'-(T)20-(8-ブロモアデノシン)-T-3');AMPUR(オリゴヌクレオチド5'-(T)20-(2-アミノプリン)-T-3');SPTA(オリゴヌクレオチド5'-ThiSS-(T)20-A-3');およびACRGAM(オリゴヌクレオチド5'-アクリダイト-(G)20-アミノ-C7-3')。図13は、核酸スペクトル自身と比較した、1核酸、アデニンの核酸類似体の一部のSERSスペクトルを示す;2-Fアデニン、4-Am-6-HS-7-デアザ-8-アザ-アデニン;キネチン;N6-ベンゾイル-アデニン;DMAA-A;8-アザ-アデニン;アデニンチオール、およびプリン誘導体、6-メルカプロプリン。表1は、ラマン分光法において使用される可能性のある他のタグ分子を列挙している。当業者は、使用されるラマンタグは本明細書に開示されたものに限定されず、プローブに付着かつ検出されうる任意の公知のラマンタグを含みうることを認識しているものと思われる。多くのそのようなラマンタグは、当技術分野において公知である(例えば、www.glenres.comを参照)。
【0036】
(表1)ラマンタグ分子の例
2',3'-ddA-5'-CEホスホラミダイト
2'-デオキシアデノシンa-チオトリホスフェート(15 mM)(2'dATTPaS)
2'-フルオロ-アデノシンa-チオトリホスフェート(10 mM)(2'-F-ATTPaS)
2'-OMe-A-CEホスホラミダイト
2'-OMe-A-Meホスホラミダイト
2'-OMe-A-RNA
2'-OMe-アデノシンa-チオトリホスフェート(20 mM)(2'-O-Me-ATTPaS)
2'-OMe-Pac-A-CEホスホラミダイト
2-アミノ-dA-CEホスホラミダイト
2-アミノプリンリボシドa-チオトリホスフェート(20 mM)(2-AP-TTPaS)
2-F-dA-CEホスホラミダイト
3'-A-TOM-CEホスホラミダイト
3'-dA-CEホスホラミダイト
3'-dA-CPG
7-デアザ-アデノシンa-チオトリホスフェート(1 mM)(7-DATTPaS)
7-デアザ-dA-CEホスホラミダイト
8-アミノ-dA-CEホスホラミダイト
8-Br-dA-CEホスホラミダイト
8-オキソ-dA-CEホスホラミダイト
A-TOM-CEホスホラミダイト
A-RNA-TOM-CPG
アデノシンa-チオトリホスフェート(0.5 mM)(ATTPaS)
Bz-A-CEホスホラミダイト
Bz-A-RNA-CPG
dA-5'-CEホスホラミダイト
dA-5'-CPG
dA-CEホスホラミダイト
dA-CPG 1000
dA-CPG 2000
dA-CPG 500
dA-高荷重-CPG
dA-Meホスホラミダイト
dA-Q-CPG 500
ジアミノプリンリボシドa-チオトリホスフェート(0.25 mM)(DTTPaS)
【0037】
図9は、ポリマーラマン標識を形成するように2つまたはそれ以上のラマンタグ付きモノマーユニット901、902を数珠繋ぎにすることによりバーコードを作製するための例示的方法を示している。ポリマーラマン標識は、標的分子への結合および検出のためのプローブ部分に付着しうる。ポリマーラマン標識は、第二モノマーユニット902へ共有結合906により付着した第一モノマーユニット901を含みうる。より大きなシグナル複雑性が必要とされる場合、追加のモノマーユニット903が付着しうる。モノマーユニット901 902は、骨格909へ直接的に付着した、またはスペーサー905により付着した、1つまたは複数のラマンタグ部分907a、907bを含みうる。スペーサー905は、例えば、5個以上の炭素原子を含みうる。スペーサー905の長さは、例えば、2〜30、2〜20、または3〜15炭素原子長の間で変わりうる。最も効果的なスペーサー905は、脂肪族炭素(例えば、アミノカプロン酸を通して)、ペプチド鎖(例えば、リシンの側鎖を通して連結される)、またはポリエチレングリコール(例えば、ホスホラミダイト)のように可撓性である。スペーサー905は、炭素、窒素、イオウおよび/または酸素原子を含みうる。タグ付きモノマーユニット901 902を作製および架橋結合するための様々な方法は、当技術分野において公知である。様々なタグ付きモノマーユニットはまた、商業的供給元(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)から入手可能である。
【0038】
図9に示されているように、バーコードは、1つのモノマーユニット901をもう1つのモノマーユニット902へ官能基904、908を通して共有結合することにより形成されうる。官能基904、908は、例えば、ビオチン、アミノ基、アルデヒド基、チオール基、または当技術分野において公知の任意の他の反応性基を含みうる。各モノマーユニット901、902は、少なくとも2つの官能基904、908を有し、1つがモノマーの各末端に付着している。架橋結合の前に、1つの官能基904、908は、もう1つのモノマーユニット901、902へ付着するように活性化(脱保護化)されうるが、一方、第二官能基904、908は、相互作用から保護された、またはブロックされた(例えば、化学修飾により)ままである。モノマーユニット901、902の各末端は、活性化された場合、もう一つのモノマーユニット901、902に結合することができる。様々な態様において、ポリマーラマン標識は、2〜30、4〜20、または5〜15個のモノマーユニット901、902(例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、プラスチックモノマーなど)を含みうる。共有結合906により数珠繋ぎにされた2個のモノマーユニット901、902から構成されるポリマーラマン標識910の例が図示されている。骨格909にスペーサー分子905を介して付着したラマンタグ907a 907bが、示されている。モノマーユニット901、902は、共有結合906により、この場合には、例えば、カルボキシル基の第1級アミノ基とのカルボジイミド触媒反応により形成されたアミド結合により、互いに付着している。
【0039】
ラマンタグ907a 907bは、1つまたは複数の二重結合、例えば、炭素から窒素への二重結合を含むことが企図される。ラマンタグ907a 907bは、側基が環構造に付着している、環構造を含むことも企図される。側基は、限定されるわけではないが、炭素原子および水素原子だけでなく、窒素原子、酸素原子、イオウ原子、およびハロゲン原子も含まれうる。検出のためにラマンシグナル強度を増加させる側基は、特に役に立つ。効果的な側基は、プリン、アクリジン、ローダミン色素およびシアニン色素のような共役環構造をもつ化合物を含む。ポリマーラマン標識の全体的な極性は、親水性であることが企図されるが、疎水性側基も含まれうる。
【0040】
ポリマーラマン標識を作製するための例示的方法は図10に示されている。固体支持体1001は、増加するポリマーラマン標識を繋ぎとめるために用いられうる。支持体1001は、例えば、多孔性ガラスビーズ、プラスチック、多糖、ナイロン、ニトロセルロース、複合材料、セラミック、プラスチック樹脂、シリカ、シリカ系物質、ケイ素、改質ケイ素、炭素、金属、無機ガラス、光ファイバー束、または公知の固体支持体の任意の他の型を含みうる。1つまたは複数のリンカー分子1010(炭素原子鎖のような)は、支持体1001に付着しうる。リンカー分子1010の長さは変わりうる。例えば、リンカー1010は、長さが2〜50原子でありうる。使用されるリンカー1010の様々な型は、上記で考察されている。1つより多い長さまたは型のリンカー分子1010が固体支持体1001に付着していることが、企図される。リンカー1010は、モノマーユニット1009の段階的付着によりポリマーラマン標識を増加させるための付着部位としての役割を果たす。図10は、2つのモノマーを含むポリマーラマン標識の付着した構成要素1005を示す。
【0041】
付着される各モノマーユニット1009は、2つの官能基1006、1007を含み、1つがモノマーユニット1009の各末端にある。モノマーユニット1009の付加は、モノマーユニット1009の先端の官能基1006の選択的活性化により生じる。活性化された官能基1006は、構成要素1005の増加していく末端におけるもう一つの活性化官能基1004に付着しうる。ポリマーの化学合成の方法は、当技術分野において公知であり、例えば、オリゴヌクレオチドのホスホラミダイト合成および/またはペプチドの固相合成を含みうる。官能基1004、1006、1007を保護および脱保護する方法も、オリゴヌクレオチドまたはペプチド合成の技術においてのような、当技術分野において周知である。
【0042】
各連続するモノマーユニット1009は、溶液に導入されうる、例えば、アセトニトリルまたは他の溶媒に懸濁されうる。第一モノマーユニット1009の先端の官能基1006は、リンカー分子1010に結合することができる。一旦第一モノマーユニット1009がリンカー分子1010に付着したならば、モノマーユニット1009の他方の末端に付着した官能基1007は、もう一つのモノマーユニット1009が結合するために、化学的処理(例えば、水酸化アンモニウム)により脱保護されうる。付加されうる第二モノマーユニット1009は、活性化された官能基1006および保護された官能基1007を含んでもよく、モノマーユニット1009の指向性付着を可能にする。ポリマーラマン標識の増加していく構成要素1005へのモノマーユニット1009の取り込み後、保護された官能基1004は脱保護され、もう一つのモノマーユニット1009が付加されうる。この工程の追加ラウンドは、適切な長さのポリマーラマン標識が作製されるまで継続されてもよい。
【0043】
いくつかの異なるモノマーユニット1009は、異なるポリマーラマン標識を作製するために、いつでも固体支持体1001に付加していることが企図される。後者の場合、異なるポリマーラマン標識は、適切ならば、合成後、分離されうる。ポリマーラマン標識の長さは、取り込まれたモノマーユニット1009の数に依存して変わるが、各ポリマー標識は、2個以上のモノマーユニット1009を含む。
【0044】
本発明の様々な態様において、ポリマーラマン標識は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個またはそれ以上のラマンタグ1002、1003、1008を含んでもよい。単一のポリマーラマン標識に付着した個々のラマンタグ1002、1003、1008は、それぞれ異なっていてもよい。または、ポリマーラマン標識は、同じラマンタグ1002、1003、1008の2つまたはそれ以上のコピーを含んでもよい。識別可能なポリマーラマン標識の数を最大にするために、複数のラマンタグ1002、1003、1008が、単一のポリマーラマン標識に取り込まれている場合、それらは一般的に異なるであろうことが熟考される。上記で考察されているように、ラマンタグ1002、1003、1008は、ポリマーラマン標識1009の骨格1011に直接的に付着してもよく、またはスペーサー分子を介して付着してもよい。
【0045】
ポリマーラマン標識は、ラマン分光検出の感度を考慮しながらも、モノマー標識より、スペクトル区別化のためのより幅広い種類を提供する。単一のポリマーラマン標識に付着した複数のラマンタグ1002、1003、1008の使用は、非常に多数の作製される識別可能なポリマーラマン標識を可能にする。10個の異なる可能なタグ付きモノマーユニット1009から作製された4-マーのポリマーラマン標識は、5000個を超える識別可能なラマン特性を生じると考えられる。15個の異なるタグ付きモノマーユニット1009については、30,000個を超える識別可能なラマン特性が結果として生じると考えられる。50,000個を超える識別可能なラマン特性は、たった10〜20個の異なるタグ付きモノマーユニット1009で生じうる。モノマーユニット1009のサイズは、ヌクレオチド(およそ1000ダルトン)とほぼ同じであるため、4-マーのラマン標識の平均サイズは約4000ダルトンである。それゆえに、ポリマーラマン標識は、ほとんど立体障害をもたずにプローブと標的の結合を可能にすると考えられる。
【0046】
本発明のいくつかの態様において、ポリマーラマン標識へ取り込まれたモノマーユニット1009は、骨格に付着したスペーサー分枝を有し、もう一つの反応性基1004、1006、1007は、スペーサー分枝に付着している。反応性基1004、1006、1007は、ポリマーの合成中に保護または脱保護されうる。ラマンタグ1002、1003、1008は、ポリマー合成後、または増加するポリマー1005へのモノマーユニット1009の取り込み後、脱保護されたスペーサー分枝に付着しうる。
【0047】
本発明の特定の態様において、図11Aに示されているが、ポリマーラマン標識1105を支持体なしに作製してもよい。ラマンタグ1101a 1101bは、官能性を持たせたラマンタグ(モノマーユニット)1103a 1103bを作製するために、官能基1102a 1102b、例えば、ビオチン、アミノ基、アルデヒド基、チオール基、または反応性基の任意の他の型を付加するように化学的に変化されてもよい。モノマーユニット1103a 1103bは、その後、重合にかけられて、サブポリマーユニット1104a 1104bを生じる可能性があり、それぞれは、モノマーユニットの所定の数を含む。サブポリマーユニット1004a 1004bは、予め決められた比(例えば、1:1、1:2、1:10など)でいっしょに混合され、さらなる重合にかけられて、最終のポリマーラマン標識1105を生じうる。示された例において、ポリマーラマン標識1105は、一つの型のモノマーユニット1103aの「n」コピーおよび第二型のモノマーユニット1103bの「m」コピーを含む。
【0048】
図11Bは、支持体なしで、ポリマーラマン標識1111を作製するための代替方法を示している。この場合、1つまたは複数のポリマー1109は、骨格から伸びているスペーサーに付着した反応性側基1112を含みうる。反応性側基1112は、1つまたは複数の異なるラマンタグ1110に付着して、ポリマーラマン標識1111を生じうる。反応性側基1112は、アミン側鎖をマレイミド残基(ポリ無水マレイン酸)へ変換するように処理されたポリリシンを含んでもよく、HS(硫酸水素)の官能性を持たせたラマンタグ1110と反応することができる。または、側基1112は、ポリ(アリルアミン)のアミン基を含んでもよく、NHSエステルの官能性を持たせたラマンタグ1110と反応することができる。側基1112はまた、スクシニル化ポリリシンのカルボン酸基、またはアミノ基もしくはカルボン酸基をもつ合成オリゴヌクレオチドを含みうる。カルボン酸側基1112は、ラマンタグ1110に、例えば、カルボジイミド媒介架橋を用いて付着しうる。
【0049】
ポリマー骨格は、有機構造、例えば、核酸、ペプチド、多糖および/または化学的に誘導されたポリマーの任意の組み合わせから形成されうる。ポリマーラマン標識1111の骨格は、ホスホジエステル結合、ペプチド結合および/またはグリコシド結合により形成されうる。例えば、標準ホスホラミダイト化学作用は、DNA鎖を含む骨格を作製するために用いられうる。ホスホジエステル結合骨格を作製するための他の方法は、公知であり、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR(商標))増幅がある。骨格の末端は、異なる官能基、例えば、ビオチン、アミノ基、アルデヒド基またはチオール基を有してもよい。これらの官能性を持たせた基を、2つまたはそれ以上のサブポリマーユニットを数珠繋ぎにするために用いてもよい。例えば、ポリマーラマン標識1111は、第一モノマーユニットの「m」コピー、第二モノマーユニットの「k」コピー、および第三モノマーユニットの「l」コピーを含んでもよい。一旦ポリマー骨格が所望の長さまで合成されたならば、2つまたはそれ以上の異なるラマンタグ1110が、反応性側基1112に結合するように逐次的にまたは同時に導入され、それにより、ポリマーラマン標識を生じうる。モノマーユニットは、ラマンタグ1110に限定されない。他のタグ、例えば、蛍光、ナノ粒子、ナノチューブ、フラーレンまたは量子ドットタグが、ポリマーラマン標識1111を多様化するために1つまたは複数のモノマーユニットに付着しうる。一般的に、モノマーユニットのタグ1110の大部分は、ラマンタグ1110である。1つより多いポリマーラマン標識1111は、より長い生成物を作製するために連結されうる。
【0050】
本発明の特定の態様において、図12に示されているが、上記で開示されたポリマーラマン標識のいずれもプローブ1206に連結されうる。プローブ分子1206の例は、限定されるわけではないが、オリゴヌクレオチド、核酸、抗体、抗体断片、結合タンパク質、受容体タンパク質、ペプチド、レクチン、基質、インヒビター、アクチベーター、リガンド、ホルモン、サイトカインなどを含みうる。ポリマーラマン標識1204の様々な例示的構造1201 1202は、骨格および骨格に直接的にもしくはスベーサー分子を介して付着した1つまたは複数のラマンタグを有する、共有結合しているモノマーユニットを含みうる。ポリマー1204は、リンカー1205または直接的共有結合1205を通してプローブ1206に付着しうる。または、ポリマーラマン標識1204は、1つまたは複数のプローブ部分1206に、間接的に、ナノ粒子1207への付着を介して、付着しうる。分子をナノ粒子へ架橋するための様々な方法は、当技術分野において公知であり、任意のそのような公知の方法が用いられうる。例えば、EDAC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)の存在下で、カルボキシル基をアミン基と架橋することによる。例示的構造1202に示されているように、1つより多いポリマーラマン標識1204は、単一のナノ粒子1207に付着しうる。ナノ粒子1207は、その後、1つまたは複数のプローブ分子1206に付着しうる。構造のこの型の利点は、1つより多い標的分子が、単一のポリマーラマン標識1204を用いて同定されうることである。または、ナノ粒子1207が同じプローブ分子1206の複数のコピーに付着している場合には、同じ標的分子の複数のコピーが結合しうる。他の利点は、ラマン標識に付着したより多くのプローブ分子1206が存在するために、標的分子を捕獲するより多くの機会を含み、遊離のおよびラマン標識結合の標的分子の分離は、ラマン標識1202が遠心分離、濾過または電気泳動により単離可能であるため、溶液検出適用においてより容易である。
【0051】
代替の構造1203において、モノマーラマンタグ1208は、ナノ粒子1207に、直接的にかまたはスペーサー分子1205を介してかのいずれかで、付着しうる。1つまたは複数のプローブ分子は、同じナノ粒子1207に、直接的にまたはスペーサー1205により付着しうる。これは、ポリマー1204の予備的な合成の必要なしに、プローブ1206に付着した複数のラマンタグ1208の形成を可能にする。この構造1203の利点は、ナノ粒子1207がより大きな表面積をもち、より多くのプローブ分子1206およびラマンタグ1208が、分子間の立体障害の減少を与えながら結合するのを可能にすることである。
【0052】
幅広い種類のポリマーラマン標識バーコードは、比較的少ないモノマーユニットを用いて作製されうる。ポリマーラマン標識の作製は、比較的少ないラマンタグを利用しながら、バーコード作製においてより高い柔軟性および感度を可能にする。
【0053】
核酸
シーケンシングされうる核酸分子は、任意の標準技術により調製されうる。一つの態様において、核酸は、天然に存在するDNAまたはRNA分子でありうる。RNAが用いられる場合、RNAを相補的cDNAに変換することが望ましい可能性がある。事実上、非限定的に、染色体、ミトコンドリアもしくは葉緑体DNA、またはメッセンジャー、ヘテロ核、リボソームもしくはトランスファーRNAを含む、任意の天然に存在する核酸が、本発明の方法により、調製され、かつシーケンシングされうる。様々な型の細胞の核酸を調製および単離する方法は公知である(例えば、Guide to Molecular Cloning Techniques, eds. Berger and Kimmel, Academic Press, New York, NY, 1987; Molcecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, eds. Sambrook, Fritsch and Maniatis, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989参照)。天然に存在しない核酸もまた、開示された方法および組成物を用いてシーケンシングされうる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR(商標))増幅のような標準的増幅技術により調製された核酸は、本発明の範囲内でシーケンシングされうる。核酸増幅の方法は、当技術分野において周知である。
【0054】
核酸は、限定されるわけではないが、ウイルス、細菌、真核生物、哺乳動物、およびヒト、プラスミド、M13、λファージ、P1人工染色体(PAC)、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、および他のクローニングベクターを含む幅広い種類の供給源から単離されうる。
【0055】
核酸固定化の方法
様々な態様において、核酸分子は、固体表面への付着により固定化されうる。核酸分子の固定化は、支持体または表面への非共有結合性かまたは共有結合性のいずれかの付着を含む様々な方法により達成されうる。例示的態様において、固定化は、固体表面をストレプトアビジンまたはアビジンでコーティングすること、およびビオチン化ポリヌクレオチドの結合により達成されうる。固定化はまた、ポリスチレン、ガラスまたは他の固体表面をポリ-L-LysまたはポリL-Lys、Pheでコーティングし、続いて、二官能性架橋試薬を用いるアミノ修飾かまたはスルフヒドリル修飾のいずれかの核酸の共有結合性付着により、生じうる。アミン残基は、アミノシランの使用を通して表面上へ導入されうる。
【0056】
固定化は、5'-リン酸化核酸の化学修飾されたポリスチレン表面への直接的共有結合性付着により起こりうる。核酸と固体表面の間の共有結合は、水溶性カルボジイミドでの縮合により形成されうる。この方法は、核酸のそれらの5'リン酸を介しての優性の5'付着を促進する。
【0057】
DNAは、一般的に、最初、ガラス表面をシラン処理し、その後、カルボジイミドまたはグルタルアルデヒドで活性化することにより、ガラスに結合しうる。代替の手順は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたはアミノプロピルトリメトキシシラン(APTS)のような試薬を用いて、DNAが、DNA合成中にその分子の3'または5'末端のいずれかに取り込まれたアミノリンカーを介して連結されうる。DNAは、紫外線を用いて膜へ直接的に結合しうる。核酸を固定化する他の方法は公知である。
【0058】
核酸の固定化のために使用される表面の型は制限されない。様々な態様において、固定化表面は、その物質が核酸のプローブライブラリーへのハイブリダイゼーションを可能にする限り、磁気ビーズ、非磁気ビーズ、平面表面、尖った表面、または固体表面の任意の他の構造でありうる。
【0059】
二官能性架橋試薬を、様々な態様において役立てることができる。例示的架橋試薬は、グルタルアルデヒド、二官能性オキシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドのようなカルボジイミドを含む。
【0060】
特定の態様において、捕獲オリゴヌクレオチドは表面に結合しうる。捕獲オリゴヌクレオチドは、核酸鋳型の特定の核酸配列とハイブリダイズする。核酸は、制限酵素消化、エンドヌクレアーゼ活性、温度上昇、塩濃度の低減、またはこれらおよび類似した方法の組み合わせにより表面から遊離されうる。
【0061】
タンパク質精製
特定の態様において、タンパク質またはペプチドは、単離または精製されうる。一つの態様において、これらのタンパク質は、図示されたバーコード(例えば、ポリマーラマン標識)のいずれかでのタグ付けのための抗体を作製するために用いられうる。タンパク質精製技術は当業者に周知である。これらの技術は、あるレベルにおける、細胞、組織または器官のポリペプチドおよび非ポリペプチド画分へのホモジナイゼーションおよび粗分画を含む。対象となるタンパク質またはポリペプチドは、部分的または完全な精製(または均一性への精製)を達成するためにクロマトグラフィーおよび電気泳動の技術を用いてさらに精製されうる。純粋なペプチドの調製に特に適した分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル排除クロマトグラフィー、HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)FPLC(AP Biotech)、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、および等電点電気泳動である。アフィニティークロマトグラフィーによる受容体タンパク質精製の例は、米国特許第5,206,347号に開示されており、その全本文は、参照により本明細書に組み入れられている。ペプチドを精製するより効率的な方法の1つは、高速液体クロマトグラフィー(AKTA FPLC)、すなわちHPLCである。
【0062】
精製されたタンパク質またはペプチドは、他の成分から単離できる組成物を指すことを意図され、タンパク質またはペプチドが、それの天然で得ることができる状態に対して任意の程度まで精製されている。それゆえに、単離または精製されたタンパク質またはペプチドはまた、それが天然に存在しうる環境を含まないタンパク質またはペプチドを指す。一般的に、「精製された」とは、様々な他の成分を除去するように分画にかけられたタンパク質またはペプチド組成物を指し、その組成物がそれの発現される生物活性を実質的に保持している。用語「実質的に精製された」が用いられる場合、この意味は、そのタンパク質またはペプチドが、組成物におけるタンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれ以上を構成するような、組成物の主成分を形成している、組成物を指す。
【0063】
タンパク質またはペプチドの精製の程度を定量化するための様々な方法は、本開示に照らせば、当業者にとって公知である。これらは、例えば、活性画分の特定の活性を測定すること、またはSDS/PAGE分析による画分内のポリペプチドの量を評価することを含む。画分の純度を評価するための好ましい方法は、画分の特定の活性を計算すること、それを最初の抽出物の特定の活性と比較すること、およびそれに従って、「〜倍精製の数」により評価される、そこにおける純度の程度を計算することである。活性の量を表すために用いられる実際のユニットは、もちろん、精製を追跡するために選択された特定のアッセイ技術、および発現されたタンパク質またはペプチドが、検出可能な活性を示すかどうかに依存するものである。
【0064】
タンパク質精製での使用に適した様々な技術は、当業者に周知である。これらは、例えば、硫酸アンモニウムでの沈殿、PEG、抗体など、または熱変性の後に、遠心分離;イオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイトおよびアフィニティークロマトグラフィーのようなクロマトグラフィー段階;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;ならびにこれらを始めとする技術の組み合わせを含む。当技術分野に一般的に知られているように、様々な精製段階を行う順序を変更、またはある特定の段階を省略してもよく、依然として実質的に精製されたタンパク質またはペプチドの調製のための適切な方法となると考えられている。
【0065】
タンパク質またはペプチドは、常に、それらの最も精製された状態で提供されているという一般的な要求はない。実際、あまり実質的には精製されていない産物が、特定の態様において有用性をもつことが企図される。部分的精製は、組み合わせにおいてより少ない精製段階を用いることにより、または同じ一般的な精製スキームの異なる型を利用することにより、達成されうる。例えば、HPLC装置を利用して行われる陽イオン交換カラムクロマトグラフィーは、一般的に、低圧クロマトグラフィーシステムを利用する同じ技術より「〜倍」も高い精製を生じる。より低い程度の相対的精製を示す方法は、タンパク質産物の全回収において、または発現されたタンパク質の活性を維持するにおいて有利である。
【0066】
アフィニティークロマトグラフィーは、単離されるべき物質と、それが特異的に結合することができる分子との間の特異的親和性に頼るクロマトグラフィーの手順である。これは、相互作用の受容体-リガンド型である。カラム材料は、結合パートナーの1つを不溶性マトリックスへ共有結合することにより合成される。その後、カラム材料は、溶液から物質を特異的に吸着することができる。溶出は、条件を、結合が起こらないものへ変化させること(例えば、変化したpH、イオン強度、温度など)により生じる。マトリックスは、それ自身、分子をどのような有意な程度までも吸着しない、かつ幅広い範囲の化学的、物理的および熱的安定性をもつ物質であるべきである。リガンドは、それの結合性質に影響を及ぼさないように結合されるべきである。リガンドはまた、比較的堅い結合を提供するべきである。そして、試料またはリガンドを破壊することなく、物質を溶出することが可能であるべきである。
【0067】
タンパク質またはペプチドは、標準分子生物学的技術によるタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドの発現、天然源からのタンパク質もしくはペプチドの単離、またはタンパク質もしくはペプチドの化学合成を含む、当業者に公知の任意の技術により作製されうる。様々な遺伝子に対応するヌクレオチドならびにタンパク質、ポリペプチドおよびペプチド配列は、以前に開示されており、当業者に公知のコンピュータ化されたデータベースに見出されうる。1つのそのようなデータベースは、National Center for Biotechnology Information's Genbank and GenPeptデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)である。既知の遺伝子についてのコード領域は、本明細書に開示された、または当業者に公知であるような技術を用いて、増幅および/または発現されうる。または、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの様々な市販調製物は、当業者に公知である。
【0068】
ペプチド模倣体
本発明によるポリペプチドの調製についてのもう一つの態様は、モノクローナル抗体産生のためのペプチド模倣体の使用である。模倣体は、タンパク質二次構造の要素を模倣するペプチド含有分子である。例えば、参照により本明細書に組み入れられている、Johnson et al., "Peptide Turn Mimetics" in BIOTECHNOLOGY AND PHARMACY, Pezzuto et al., Eds., Chapman and Hall, New York (1993)を参照のこと。ペプチド模倣体の使用の基礎をなす理論的根拠は、タンパク質のペプチド骨格は、主として、抗体と抗原のもののような分子相互作用を促進するような様式でアミノ酸側鎖を配向するように存在することである。ペプチド模倣体は、天然分子と類似した分子相互作用を可能にすることが期待される。これらの原理は、本明細書に開示されたターゲティングペプチドの天然の性質の多くを有するが、変化したおよび改善までもされた特性をもつ、第二世代分子を操作するために用いられうる。
【0069】
融合タンパク質
本発明の他の態様は融合タンパク質に関する。これらの分子は、一般的に、第二ポリペプチドもしくはタンパク質の全部または部分へN末端またはC末端において連結した、ターゲティングペプチドの全部または実質的部分を有する。例えば、融合は、異種性宿主においてタンパク質の組換え発現を可能にするために他の種由来のリーダー配列を用いうる。もう一つの有用な融合は、融合タンパク質の精製を容易にするために、抗体エピトープのような免疫学的活性ドメインの付加を含む。融合接合部における、または近くの切断部位の含有は、精製後、外来性ポリペプチドの除去を容易にする。他の有用な融合は、酵素由来の活性部位、グリコシル化ドメイン、細胞ターゲティングシグナルまたは膜貫通領域のような機能性ドメインの連結を含む。特定の態様において、融合タンパク質は、治療タンパク質またはペプチドに連結したターゲティングペプチドを含む。本発明の範囲内において、事実上、任意のタンパク質またはペプチドが、ターゲティングペプチドを含む融合タンパク質へ組み入れられうる。融合タンパク質を作製する方法は、当業者に周知である。そのようなタンパク質は、例えば、二官能性架橋試薬を用いる化学的付着により、完全な融合タンパク質の新たな合成により、またはターゲティングペプチドをコードするDNA配列の第二ペプチドもしくはタンパク質をコードするDNA配列への付着、続いて無傷の融合タンパク質の発現により、生成されうる。
【0070】
合成ペプチド
比較的小さなサイズのため、真菌の選択過程後に同定されたペプチドは、通常の技術に従って溶液中または固体支持体上で合成されてもよい。様々な自動シンセサイザーが市販されており、公知のプロトコールに従って使用されうる。例えば、参照として本明細書に組み入れられるStewart and Young, (1984); Tam et al., (1983); Merrifield, (1986);およびBarany and Merrifield (1979)を参照されたい。短いペプチド配列(通常には約6アミノ酸から約35〜50アミノ酸まで)はそのような方法により容易に合成されうる。または、組換えDNAテクノロジーを用いてもよく、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列が発現ベクターへ挿入され、適切な宿主細胞へ形質転換またはトランスフェクションされ、発現に適した条件下で培養される。
【0071】
例示的適用
核酸シーケンシング
特定の態様において、本明細書に開示されているように形成されたバーコードを、標的核酸分子をシーケンシングするために使用することができる。ハイブリダイゼーションによりシーケンシングする方法は、当技術分野において公知である。既知の配列のプローブを含む1つまたは複数のタグ付きバーコードを、標的核酸配列にハイブリダイズするようにさせておいてもよい。タグ付きバーコードの標的への結合は、標的鎖における相補配列の存在を示す。複数の標識バーコードを、標的分子に同時にハイブリダイズするようにさせておき、同時に検出してもよい。代替の態様において、結合したプローブは、個々の標的分子に付着して同定されてもよい、または特定の標的分子の複数コピーをプローブ配列の重複セットに同時に結合するようにさせておいてもよい。個々の分子は、例えば、検出様式と連結された公知の分子コーミング技術を用いてスキャンされうる。(例えば、Bensimon et al., Phys. Rev. Lett. 74:4754-57, 1995; Michalet et al., Science 277:1518-23, 1997;米国特許第5,840,862号;第6,054,327号;第6,225,055号;第6,248,537号;第6,265,153号;第6,303,296号および第6,344,319号を参照。)
【0072】
所定の標的核酸が、標的配列を完全に網羅する連続したプローブ配列にハイブリダイズする可能性は低い。むしろ、標的の複数のコピーが、タグ付きオリゴヌクレオチドのプールにハイブリダイズして、部分的配列データがそれぞれから収集されうる。部分的配列は、公的に利用可能なショットガン配列編集プログラムを用いて完全な標的核酸配列へ編集されうる。部分的配列はまた、例えば液相において、バーコードプローブのライブラリーへ同時に結合するようにさせられる標的分子の集団から編集されうる。
【0073】
標的分子検出、同定および/または定量化
特定の態様において、試料における標的分子は、バーコードに結合することにより検出、同定および/または定量化されうる。特定の標的に結合するように設計されたタグ付きバーコードは、上記で考察されているように調製されうる。標的は、核酸に限定されず、タンパク質、ペプチド、脂質、糖、糖脂質、糖タンパク質、または特異的なプローブが調製されうる任意の他の可能性のある標的も含みうる。上記で考察されているように、抗体またはアプタマープローブは、バーコードへ組み入れられ、アプタマーまたは抗体が調製されうる任意の標的を同定するために用いられうる。試料における複数の標的の存在は、各バーコードが識別可能に標識および検出されうるため、同時にアッセイされうる。標的の定量化は、分光学的分析において周知の標準技術により行われうる。例えば、タグ付きバーコードに結合した標的の量は、結合したバーコードのシグナル強度を測定すること、およびバーコード標準の既知の量から作成された検量線との比較により決定されうる。そのような定量化方法は、当技術分野における日常的技術内で十分である。
【0074】
アレイ化学
異なる化学的機能性(例えば、異なる結合特異性)を有するビーズ(例えば、ミクロスフェア)は共に混合されてもよい。各ビーズの機能性を同定する能力は、光学的に質問可能な符号化スキーム(「光学シグネチャー」)を用いて達成されうる。例えば、光学シグネチャーは、上記で考察されているようなポリマーラマン標識を用いて作製されうる。チップまたはマイクロタイタープレートのような基板は、個々のビーズに結合できる個々の部位を含むパターン化された表面を含みうる。これは、プローブ(すなわち、核酸、アプタマーまたは抗体)の合成が、アレイ上のそれらの配置から分離されるのを可能にする。プローブは、合成され、ビーズに付着し、ビーズは、パターン化された表面上に無作為に分布されうる。ビーズは、最初、光学シグネチャーでコードされるので、その結果生じたアレイは、後で「解読」されうる。すなわち、アレイ上の個々の部位の位置と、その特定の部位に位置したビーズまたはプローブの間の相関が作成されうる。ビーズは、アレイ上に無作為に分布されうるため、これは、結果として、アレイ作製についてのインサイチュー合成かまたはスポッティング技術と比較して、速くかつ費用のかからない工程を生じる。
【0075】
アレイ組成物は、個々の部位を含む表面をもつ少なくとも第一の基板を含みうる。アレイのサイズは、アレイの最終用途に依存する。約2個の異なる作用物質(すなわち、異なるビーズ)から何百万個という異なる作用物質までを含むアレイが作製されうる。一般的に、アレイは、ビーズおよび基板のサイズに依存して、2個の異なるビーズから10億個またはそれ以上ほどまでを含む。従って、非常に高密度、高密度、中位の密度、低密度、または非常に低密度のアレイが作製されうる。非常に高密度のアレイについてのいくつかの範囲は、アレイあたり約10,000,000個の部位から約2,000,000,000個の部位までである。高密度アレイは、約100,000個の部位から約10,000,000個の部位までの範囲である。中位の密度アレイは、約10,000個の部位から約50,000個の部位までの範囲である。低密度アレイは、一般的に、10,000個未満の部位である。非常に低密度のアレイは、1,000個未満の部位である。
【0076】
本発明のいくつかの態様において、異なるまたは同一の組成物のいずれかの複数の基板を用いることができる。従って、例えば、大きなアレイは、より小さな基板の複数を含みうる。「基板」または「固体支持体」とは、ビーズの付着または会合に適切で、かつ少なくとも1つの検出方法を受け入れられる別々の個々の部位を含むように修飾されうる任意の物質を意味する。一般的に、基板は、光学的検出を可能にし、シグナル発光を認めうるほどには干渉しない。
【0077】
部位は、パターン、すなわち、規則的なデザインもしくは配置、を含む、または無作為に分布されうる。部位の規則的なパターンは、部位がX-Y座標面にアドレス指定されうるように用いられうる。基板の表面は、個々の部位においてミクロスフェアの付着を可能にするように修飾されうる。従って、基板の表面は、単一の会合したビーズを有しうるのみである別々の部位が形成されるように、修飾されうる。一つの態様において、基板の表面は、ウェル、すなわち基板の表面における窪み、を含むように改変されうる。これは、限定されるわけではないが、フォトリソグラフィー、スタンピング技術、成形技術およびマイクロエッチング技術を含む様々な公知の技術を用いることによりなされうる。当業者に認識されているように、用いられる技術は、基板の組成物および形に依存する。または、基板の表面は、ミクロスフェアおよび/またはビーズを基板上の別々の位置へ付着させるために用いられうる化学的に誘導された部位を含むように改変されうる。アミノ基、カルボキシ基、オキソ基およびチオール基のような化学的官能基のパターンの付与は、一般的に対応する反応性官能基またはリンカー分子を含むミクロスフェアを共有結合性に付着させるために用いられうる。
【0078】
適切なビーズ組成物は、限定されるわけではないが、プラスチック、セラミック、ガラス、ポリスチレン、メチルスチレン、アクリルポリマー、常磁性物質、トリアゾル、カーボングラファイト、二酸化チタン、ラテックスを含む、ペプチド、核酸および有機部分合成に用いられるものを含む、またはセファロース、セルロース、ナイロン、架橋ミセル、およびTeflon(登録商標)のような架橋デキストランはすべて使用され得る。ビーズサイズは、約0.2ミクロンから約200ミクロンまで、および約0.5ミクロンから約5ミクロンまでのビーズを含む、ナノメートル(すなわち100 nm)からミリメートル(すなわち1 mm)までの範囲でありうるが、いくつかの態様において、より小さなビーズが用いられうる。
【0079】
組成物は、特定の標的分析物、例えば、核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質、酵素、抗体または抗原の存在を検出するために用いられうる。組成物はまた、特定の標的への結合について生理活性物質、すなわち薬物候補、をスクリーニングするために、または汚染物質のような原因物質を検出するために、用いられうる。上記で考察されているように、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたはアプタマーのようなプローブ部分が設計されうる任意の分析物が、開示されたバーコードと組み合わせて用いられうる。
【0080】
生理活性物質を、合成または天然の化合物のライブラリーを含む幅広い種類の源から得ることができる。例えば、ランダム化オリゴヌクレオチドの発現を含む、幅広い種類の有機化合物および生体物質のランダムならびに定方向合成について多数の手段が利用できる。または、細菌、真菌、植物および動物の抽出物の形をとった天然化合物のライブラリーが入手可能であり、または容易に作製される。さらに、天然のまたは合成的に作製されたライブラリーおよび化合物は、通常の化学的、物理的および生化学的手段により容易に修飾される。既知の薬理学的作用物質は、構造的類似体を生成するようにアシル化、アルキル化、エステル化および/またはアミド化のような、定方向またはランダム化学修飾にかけられうる。
【0081】
生理活性物質は、天然に存在するタンパク質または天然に存在するタンパク質の断片を含みうる。従って、例えば、タンパク質を含む細胞抽出物、またはタンパク性細胞抽出物のランダムもしくは定方向消化物が用いられうる。このようにして、原核生物および真核生物のタンパク質のライブラリーは、本明細書に記載された系をスクリーニングするために作製されうる。例えば、細菌、真菌、ウイルスおよび哺乳動物タンパク質のライブラリーは、スクリーニング目的として作製されうる。
【0082】
生理活性物質は、約5アミノ酸から約30アミノ酸まで、または約5アミノ酸から約15アミノ酸までのペプチドでありうる。ペプチドは、天然に存在するタンパク質の消化物またはランダムペプチドでありうる。一般的にランダムペプチド(またはランダム核酸)は、化学合成されるため、それらは、任意の位置に任意のヌクレオチドまたはアミノ酸を組み入れうる。合成過程は、配列の長さに渡る可能な組み合わせの全部または大部分の形成を可能にするために、ランダム化されたタンパク質または核酸を作製し、それに従って、ランダム化生理活性物質のライブラリーを形成するように設計されうる。
【0083】
または、生理活性物質は核酸でありうる。核酸は、一本鎖または二本鎖、またはそれらの混合物でありうる。核酸は、DNA、ゲノムDNA、cDNA、RNAまたはハイブリッドであってよく、核酸は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの任意の組み合わせ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンタニン、イソシトシン、イソグアニンを含む塩基の任意の組み合わせ、ならびにニトロピロールおよびニトロインドールなどのような塩基対類似体を含む。
【0084】
本明細書に開示されたバーコードの適用は、前記の使用に限定されず、標的検出、同定および/または定量化が含まれうる任意の使用を含みうる。非限定的適用は、一塩基多型(SNPs)の検出、遺伝子突然変異の検出、疾患診断、法医学分析、環境的汚染物質および/または病原体の検出、臨床診断検査、ならびに当技術分野において公知の幅広い種類の他の適用を含む。
【0085】
プローブ調製
オリゴヌクレオチドプローブ
オリゴヌクレオチド合成の方法は、当技術分野において周知であり、任意のそのような公知の方法を用いることができる。例えば、オリゴヌクレオチドを、市販のオリゴヌクレオチドシンセサイザー(例えば、Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて調製してもよい。様々なタグに付着したヌクレオチド前駆体は商業的に入手されて(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)、オリゴヌクレオチドへ取り込まれうる。または、ビオチン、ジゴキシゲニン、スルフヒドリル、アミノまたはカルボキシル基のような様々な反応性基を含むヌクレオチド前駆体が購入されうる。オリゴヌクレオチド合成後、タグは、標準的化学作用を用いて付着しうる。タグ付着のための反応性基を含むまたは含まない、任意の望ましい配列のオリゴヌクレオチドもまた、幅広い種類の供給元(例えば、Midland Certified Reagents, Midland, TX)から購入されうる。オリゴヌクレオチドプローブはまた、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR(商標))増幅を用いる標準酵素的過程により調製されうる(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harobor Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989;米国特許第5,279,721号;第4,683,195号;第4,683,202号;第4,800,159号;第4,883,750号)。
【0086】
アプタマープローブ
アプタマーは、SELEXと呼ばれるインビトロの進化的過程により引き出されたオリゴヌクレオチドである(例えば、Brody and Gold, Molecular Biotechnology 74:5-13, 2000)。SELEX過程は、可能性のあるアプタマー(核酸リガンド)を標的に曝露する段階、結合を生じるようにさせておく段階、結合したものを遊離核酸リガンドから分離する段階、結合したリガンドを増幅する段階、およびその結合過程を繰り返す段階の繰り返しサイクルを含む。多数のサイクル後、事実上、任意の型の生物学的標的に対して高い親和性および特異性を示すアプタマーが調製されうる。それらの小さなサイズ、相対的安定性および調製の容易さのために、アプタマーは、プローブとしての使用によく適しうる。アプタマーはオリゴヌクレオチドから構成されるため、それらは、核酸型バーコードへ容易に組み入れられうる。アプタマーの作製の方法は周知である(例えば、米国特許第5,270,163号;第5,567,588号;第5,670,637号;第5,696,249号;第5,843,653号)。または、特定の標的に対する様々なアプタマーは、商業的供給元(例えば、Somalogic, Boulder, CO)から入手されうる。アプタマーは、約7 kDa〜50 kDaの比較的小さな分子である。
【0087】
抗体プローブ
抗体の産生の方法もまた、当技術分野において周知である(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1988)。プローブとしての使用に適したモノクローナル抗体はまた、多数の商業的供給元から入手されうる。そのような市販の抗体は、幅広い種類の標的に対して有効である。抗体プローブは、下に考察されているように、標準的化学作用を用いてバーコードに結合されうる。
【0088】
開示された方法および組成物は、用いられるプローブの型に関して制限はなく、当技術分野において公知のプローブ部分の任意の型が、バーコードに付着し、開示された方法に用いられうる。そのようなプローブは、限定されるわけではないが、抗体断片、アフィボディ、キメラ抗体、一本鎖抗体、リガンド、結合タンパク質、受容体、インヒビター、基質などを含みうる。
【0089】
タグ
本発明の様々な態様において、バーコードは、検出および/または同定を容易にするために1つまたは複数のタグ部分に付着しうる。当技術分野において公知の任意の検出可能なタグが用いられうる。検出可能なタグは、限定されるわけではないが、電気的、光学的、分光光度的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的技術により検出できる任意の組成物を含みうる。タグは、限定されるわけではないが、導電性、ルミネセンス、蛍光、化学ルミネセンス、生物ルミネセンスおよびリン光性の部分、量子ドット、ナノ粒子、金属ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、色原体、抗体、抗体断片、遺伝子操作された抗体、酵素、基質、補因子、インヒビター、結合タンパク質、磁気粒子、ならびにスピン標識化合物を含みうる。(米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;および第4,366,241号。)
【0090】
ラマンタグ
使用されるラマンタグの非限定的例は、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBD(7-ニトロベンズ-2-オキザ-1,3-ジアゾール)、テキサスレッド色素、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファストバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラ-アミノ安息香酸、エリトロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン、5-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン、TET(6-カルボキシ-2',4,7,7'-テトラクロロフルオレセイン)、HEX(6-カルボキシ-2',4,4',5',7,7'-ヘキサクロロフルオレセイン)、Joe(6-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン)5-カルボキシ-2',4',5',7'-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、Tamra(テトラメチルローダミン)、6-カルボキシローダミン、Rox(カルボキシ-X-ローダミン)、R6G(ローダミン6G)、フタロシアニン、アゾメチン、シアニン(例えば、Cy3、Cy3.5、Cy5)、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、N,N-ジエチル-4-(5'-アゾベンゾトリアゾリル)-フェニルアミン、およびアミノアクリジンを含む。これらを始めとするラマンタグは、商業的供給元(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)から入手されうる。
【0091】
一般的な多環式芳香族化合物は、ラマンタグとして機能しうる。使用されうる他のタグは、シアン化物、チオール、塩素、臭素、メチル、リンおよびイオウを含む。特定の態様において、カーボンナノチューブは、ラマンタグとして使用されうる。ラマン分光法におけるタグの使用は公知である(例えば、米国特許第5,306,403号および第6,174,677号)。
【0092】
ラマンタグは、バーコードへ直接的に付着しうる、または様々なリンカー化合物を介して付着しうる。ラマンタグへ共有結合性に付着しているヌクレオチドは、標準的な商業的供給元から入手できる(例えば、Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN; Promega Corp., Madison, WI; Ambion, Inc., Austin, TX; Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)。他の分子、例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸、と共有結合性に反応するように設計された反応性基を含むラマンタグは、市販されている(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)。
【0093】
蛍光タグ
使用される可能性のある蛍光タグは、限定されるわけではないが、フルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、2'7'-ジメトキシ-4'5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、ローダミン、6-カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N',N',-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、4-(4'-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)、および5-(2'-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)を含む。他の可能性のある蛍光タグは当技術分野において公知である(例えば、米国特許第5,866,336号)。幅広い種類の蛍光タグは、Molecular Probes(Eugene, OR)のような商業的供給元から入手されうる。タグ付き分子の蛍光検出の方法もまた、当技術分野において周知であり、任意のそのような公知の方法が用いられうる。
【0094】
使用されるルミネセンスのタグは、限定されるわけではないが、希土類金属クリプタート、ユーロピウムトリスビピリジンジアミン、ユーロピウムクリプタートまたはキレート、Tbトリビピリジン、ジアミン、ジシアニン、ラホーヤ青色色素、アロピコシアニン、アロコシアニンB、フィコシアニンC、フィコシアニンR、チアミン、フィコエリトロシアニン、フィコエリトリンR、アップコンバーティングまたはダウンコンバーティングリン光体、ルシフェリン、またはアクリジニウムエステルを含む。
【0095】
ナノ粒子タグ
ナノ粒子は、例えば、バーコードが様々な様式により検出されることになっている場合、タグとして使用可能である。ナノ粒子を調製する方法は公知である(例えば、米国特許第6,054,495号;第6,127,120号;第6,149,868号; Lee and Meisel, J. Phys. Chem. 86:3391-3395, 1982)。ナノ粒子はまた、商業的に入手されうる(例えば、Nanoprobes Inc., Yaphank, NY; Polysciences, Inc., Warrington, PA)。金または銀ナノ粒子は、タグとして最も一般的に用いられるが、ナノ粒子の任意の型または組成物は、バーコードに付着してタグとして使用可能である。
【0096】
使用されるナノ粒子は、ナノ粒子のランダム凝集体(コロイドナノ粒子)でありうる。または、ナノ粒子は、二量体、三量体、四量体、または他の凝集体のようなナノ粒子の特定の凝集体を生じるように架橋されうる。ナノ粒子の選択された数を含む凝集体(二量体、三量体など)は、ショ糖溶液中での超遠心分離のような公知の技術により濃縮または精製されうる。
【0097】
バーコードへの付着に適した修飾ナノ粒子は、Nanoprobes, Inc. (Yaphank, NY)からのNanogold(登録商標)ナノ粒子のように、市販されている。Nanogold(登録商標)ナノ粒子は、単一もしくは複数のいずれかのマレイミド、アミンまたは他の基がナノ粒子ごとに付着した状態で入手可能である。そのような修飾ナノ粒子は、様々な公知のリンカー化合物を用いてバーコードに付着しうる。
【0098】
金属性タグ
タグは、1マイクロメートル未満のサイズの金属性タグを含みうる(例えば、Nicewarner-Pena et al., Science 294:137-141, 2001)。Nicewarner-Pena et al. (2001)は、異なる型の金属から構成された、1マイクロメートル未満のストライプでコードされたマルチメタルマイクロロッドを調製する方法を開示している。この系は、非常に多数(金属の2つの型を用いて4160個まで、および金属の3つの異なる型で8x105個)の識別可能なタグの作製を可能にする。そのようなタグは、バーコードに付着し、検出されうる。金または銀のような金属粒子をオリゴヌクレオチドおよび他の型の分子へ付着させる方法は、当技術分野において公知である(例えば、米国特許第5,472,881号)。
【0099】
フラーレンタグ
フラーレンも、バーコードタグとして用いられうる。フラーレンを作製する方法は公知である(例えば、米国特許第6,358,375号)。フラーレンは、誘導体化され、カーボンナノチューブについて以下に開示されたものに類似した方法により、他の分子へ付着しうる。フラーレンタグ付きバーコードは、例えば、様々なテクノロジーを用いて同定されうる。
【0100】
バーコードに付着し、検出される公知のタグの他の型が企図されている。可能性のあるタグの非限定的例は、量子ドットを含む(例えば、Schoenfeld, et al., Proc. 7th Int. Conf. on Modulated Semiconductor Structures, Madrid, pp. 605-608, 1995; Zhao, et al., 1st Int. Conf. on Low Dimensional Structures and Devices, Singapore, pp. 467-471, 1995)。量子ドットおよびタグの他の型もまた、商業的供給元(例えば、Quantum Dot Corp., Hayward, CA)から入手されうる。
【0101】
カーボンナノチューブタグ
単層カーボンナノチューブ(SWNT)のようなカーボンナノチューブもまた、タグとして用いられうる。ナノチューブは、例えば、ラマン分光法により検出されうる(例えば、Freitag et al., Phys. Rev. B 62:R2307-2310, 2000)。電気的または光学的性質のようなカーボンナノチューブの特徴は、ナノチューブのサイズに少なくとも一部、依存する。
【0102】
カーボンナノチューブは、限定されるわけではないが、炭素アーク放電、触媒熱分解炭化水素による化学蒸着、プラズマ支援化学蒸着、触媒金属含有グラファイト標的のレーザーアブレーション、または凝縮相電気分解を含む、当技術分野において公知の様々な技術により作製されうる。(例えば、米国特許第6,258,401号、第6,283,812号および第6,297,592号参照。)異なる長さのカーボンナノチューブの混合物を含む組成物は、当技術分野において公知の任意の方法を用いて、ナノチューブの長さおよび直径により別個のサイズクラスへ分離されうる。例えば、ナノチューブは、質量分析法によりサイズ分類されうる(Parker et al., "High yield synthesis, separation and mass spectrometric characterization of fullerene C60-C266," J. Am. Chem. Soc. 113:7499-7503, 1991)。カーボンナノチューブはまた、CarboLex(Lexington, KY)、NanoLab(Watertown, MA)、Materials and Electrochemical Research(Tucson, AZ)またはCarbon Nano Technologies Inc.(Houston, TX)から購入されうる。
【0103】
カーボンナノチューブは、バーコードへの付着を促進するように反応性基で誘導体化されてもよい。例えば、ナノチューブは、カルボジイミド架橋剤を用いてアミンへ結合されうるカルボン酸基を含むように誘導体化されてもよい(米国特許第6,187,823号)。
【0104】
ヌクレオチドタグ
ヌクレオチドまたは塩基(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、もしくはチミン)は、オリゴヌクレオチドおよび核酸以外の分子バーコードにタグを付けるために用いられうる。例えば、ペプチドに基づいた分子バーコードは、ヌクレオチドまたはプリンもしくはピリミジン塩基でタグを付けてもよい。ウラシル、イノシン、2,6-ジアミノプリン、5-フルオロ-デオキシシトシン、7デアザ-デオキシアデニン、または7-デアザ-デオキシグアニンのような、プリンもしくはピリミジンの他の型またはそれらの類似体もまた、タグとして使用可能である。他のタグは塩基類似体を含む。塩基は、糖またはリン酸を含まない窒素含有環構造である。そのようなタグは、ラマンまたは蛍光分光法のような光学技術により検出されうる。ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体タグの使用は、検出される標的分子が核酸またはオリゴヌクレオチドである場合、バーコードのタグ部分が、プローブ部分とは異なる標的分子にハイブリダイズする可能性がありうるため、適切ではない可能性がある。
【0105】
アミノ酸タグ
アミノ酸もまたタグとして使用されうる。タグとして使用される可能性のあるアミノ酸は、限定されるわけではないが、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、アルギニン、システインおよびメチオニンを含む。
【0106】
架橋剤
二官能性架橋試薬は、タグをバーコードへ付着させるような様々な目的のために用いられうる。二官能性架橋試薬は、それらの官能基、例えば、アミノ、グアニジノ、インドール、またはカルボキシルの特定の基の特異性により分類されうる。これらのうち、遊離アミノ基に向けられる試薬は、それらの商業的入手性、合成の容易さ、およびそれらが適用されうる穏やかな反応条件のために、人気がある(米国特許第5,603,872号および第5,401,511号)。使用される可能性のある架橋試薬は、グルタルアルデヒド(GAD)、二官能性オキシラン(OXR)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)、および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のようなカルボジイミドを含む。
【0107】
バーコード検出
バーコードは、当技術分野において公知の任意の様式を用いて検出されうる。例えば、蛍光分光法は、バーコードを検出するために用いられうる。いくつかの蛍光色素は、単一のバーコードに付着しうる。バーコードにおける色素の量および色素の化学的性質は、バーコードの蛍光発光プロファイルを決定する。所定のバーコード組成物について、シグナルはまた、可能性のある共鳴エネルギー移転によるタグ間の相対的距離により影響を及ぼされることがある。
【0108】
他の態様において、ラマン分光法は、バーコードを検出するために用いられうる。様々なラマンタグは、SERS(表面増強ラマン分光法)のような公知のラマン分光法技術による検出のためにバーコードへ付着しうる。付着したラマンタグに加えて、バーコード骨格それ自身が、ラマンタグとして使用されうる。DNA分子の異なる塩基組成物は、DNAに基づいたバーコードを同定するために使用してもよい異なるラマンシグナルを生じる。様々な特定の検出様式は下に考察されている。
【0109】
ラマン分光法
ラマン分光法のための表面
ラマン分光法の様々な様式は、タグ付き(バーコード)分子の表面への近接によるラマンシグナルの増強を利用する。特定の様式において、表面増強ラマン分光法(SERS)または表面増強共鳴ラマン分光法(SERRS)のように、金、銀、アルミニウム、白金、銅または他の金属のようなラマン活性金属表面への近接が、ラマンシグナルを6桁または7桁まで増強させうる。
【0110】
他の型の化合物もまた、SERSにおいてシグナルを増強させるために用いてよく、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、NaCl、KCl、LiBr、NaBr、KBr、Lil、NaI、およびKIがある。特に、LiClは、特定の分析物(例えば、dAMP、デオキシアデノシン、アデノシンおよびアデニン)の強度の相対的シグナルを2倍と100倍の間で増加させることが実証されている。LiClは、対象となる分析物に依存して、一般的に用いられるNaClと比較して2倍を超えて相対的強度を増加させる。他の態様において、NaBrまたはNaIは、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)のような分析物について、LiClより良い場合がある。
【0111】
ラマン検出器
ラマン検出の様々な方法は、当技術分野において公知である。使用されるラマン検出ユニットの一つの例は、米国特許第6,002,471号に開示されている。開示されているように、励起ビームは、532 nm波長におけるNd:YAGレーザーかまたは365 nm波長におけるTi:サファイアレーザーかのいずれかにより発生される。パルスレーザービームまたは連続レーザービームが用いられうる。励起ビームは、共焦点光学および顕微鏡対物を通過し、標的領域上に集束させられる。ラマン標識からのラマン放出光は、顕微鏡対物および共焦点光学により集められ、スペクトル解離のためにモノクロモネーターに連結される。共焦点光学は、バックグラウンドシグナルを低減させるための、二色性フィルター、バリアーフィルター、共焦点ピンホール、レンズおよびミラーの組み合わせを含む。標準全視野光学は、共焦点光学と同様に用いられうる。シグナルは、任意の公知のラマン検出器により検出されうる。
【0112】
検出ユニットの代替例は、例えば、単一光子計数様式で操作されるガリウム砒素(GaAs)光電子増倍管(RCA Model C31034またはBurle Industries Model C3103402)を備えたSpex Model 1403二重回折格子分光光度計を含む米国特許第5,306,403号に開示されている。
【0113】
もう一つの例示的ラマン検出ユニットは、レーザーおよびラマン検出器を含む。励起ビームは、近赤外波長におけるチタニウム:サファイアのレーザー(Spectra-PhysicsによるTsunami)または785 nmもしくは830 nmにおけるガリウムアルミニウム砒素ダイオードレーザー(Process InstrumentsによるPI-ECLシリーズ)により発生される。パルスレーザービームまたは連続ビームが用いられうる。励起ビームは、集められたビームとの共線幾何学へと、二色性ミラー(Kaiser OpticalによるホログラフィックノッチフィルターまたはChromaもしくはOmega Opticalによる干渉フィルター)により反射される。反射されたビームは、顕微鏡対物(Nikon LUシリーズ)を通過し、バーコード結合標的が位置している領域上に集束される。ラマン散乱光は、同じ顕微鏡対物により集められ、二色性ミラーを通ってラマン検出器へ通過する。ラマン検出器は、集束レンズ、分光器およびアレイ検出器を含む。集束レンズは、分光器の入射スリットを通してラマン散乱光を集束させる。分光器(RoperScientific)は、それの波長により光を分散させる回折格子を含む。分散した光は、アレイ検出器(RoperScientificによる背面照射の深い空之型CCDカメラ)上へイメージングされる。アレイ検出器は、データ転送および検出器機能の制御のためのコンピュータへ接続されているコントローラ回路に接続されている。
【0114】
代替励起源は、窒素レーザー(Laser Science Inc.)およびヘリウム-カドミウムレーザー(Liconox)を含む(米国特許第6,174,677号)。励起ビームは、バンドパスフィルター(Corion)でスペクトル的に精製されてもよく、6X対物レンズ(Newport, Model L6X)を用いて集束されてもよい。対物レンズは、対象となる分子を励起すること、およびラマンシグナルを集めることの両方のために用いられうる(Kaiser Optical Systems, Inc., Model HB 647-26N18)。ホログラフィックノッチフィルター(Kaiser Optical Systems, Inc.)は、レイリー散乱放射線を低減するために用いられうる。電荷注入装置、フォトダイオードアレイまたはフォトトランジスタアレイのような他の型の検出器が用いられうる。
【0115】
多重バーコードに関する代替の検出システムは、重複しているバーコードにおける違いを解読することを含みうる。これらのバーコードを区別しうる1つの方法は、例えば、単一ユニットにおける異なるバーコード要素間の距離(波長吸光度または励起からのシフト、物理的距離、トンネリング伝導率など)が識別されうるように、標準DSP方法でありうる。
【0116】
ラマン分光法または当技術分野において公知の関連技術の任意の適切な形式または構造を用いることができ、例えば、標準ラマン散乱、共鳴ラマン散乱、SERS、表面増強共鳴ラマン散乱、コヒーレントアンチストークスラマン分光法(CARS)、誘導ラマン散乱、逆ラマン分光法、誘導利得ラマン分光法、ハイパーラマン散乱、分子光学レーザー検査器(MOLE)またはラマンマイクロプローブまたはラマン顕微鏡法または共焦点ラマン顕微分光測定法、3次元またはスキャニングラマン、ラマンサチュレーション分光法、時間分解共鳴ラマン、ラマンデカップリング分光法またはUV-ラマン顕微鏡法である。
【0117】
微小電気機械システム(MEMS)
バーコード調製、使用および/または検出のための装置を、より大きな装置および/またはシステムへ組み入れてもよい。特定の態様において、装置は、微小電気機械システム(MEMS)を含みうる。MEMSは、機械的要素、センサー、アクチュエータおよび電子機器を含む集積システムである。それらの構成要素のすべては、シリコンベースまたは等価の基板の一般的なチップ上における微細加工技術により製造されうる(例えば、Voldman et al., Ann. Rev. Biomed. Eng. 1:401-425, 1999)。MEMSのセンサー構成要素は、バーコードを検出するために機械的、熱的、生物学的、化学的、光学的および/または磁気的現象を測定するのに用いられうる。電子機器は、センサー、およびポンプ、バルブ、ヒーターなどのような制御アクチュエータ構成要素からの情報を処理することができる。
【0118】
MEMSの電子的構成要素は、集積回路(IC)プロセス(例えば、CMOSまたはバイポーラプロセス)を用いて組み立てられてもよい。それらは、コンピュータチップ製造のためのフォトリソグラフィーおよびエッチング方法を用いてパターン化されうる。微小機械構成要素は、機械的および/または電気機械的構成要素を形成するために、選択的に、シリコンウエハーの部分をエッチングして取り除く、または新しい構造層を加える、適合性の「微小機械加工」プロセスを用いて組み立てられてもよい。
【0119】
MEMS製造における基本技術は、物質の薄膜を基板上に蒸着する段階、いくつかのリソグラフィー方法により膜の上にパターン化マスクを貼り付ける段階、および選択的に膜をエッチングする段階を含む。薄膜は、数ナノメートル〜100マイクロメートルの範囲でありうる。使用される蒸着技術は、化学蒸着(CVD)、電着、エピタキシーおよび熱酸化のような化学的手順、ならびに物理蒸着(PVD)および鋳造のような物理的手段を含みうる。ナノ電気機械システムの製造の方法もまた使用することができる(例えば、Craighead, Science 290:1532-36, 2000を参照)。
【0120】
いくつかの態様において、装置および/または検出器は、様々な液体で満たされたコンパートメント(例えば、微小流体チャネルまたはナノチャネル)に接続されうる。これらを始めとする装置の構成要素は、例えば、チップ(例えば、半導体チップ)および/またはマイクロキャピラリーまたは微小流体チップの形をとって、単一ユニットとして形成されうる。または、個々の構成要素は、別々に組み立てられて、合わせて取り付けらてもよい。そのようなチップにおける使用として公知の任意の物質を、開示された装置に用いることができ、例えば、ケイ素、二酸化ケイ素、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、プラスチック、ガラス、水晶などである。
【0121】
チップの一括製造のための技術は、コンピュータチップ製造および/またはマイクロキャピラリーチップ製造において周知である。そのようなチップは、フォトリソグラフィーおよびエッチング、レーザーアブレーション、射出成形、鋳造、分子ビームエピタキシー、ディップペンナノリソグラフィー、化学蒸着(CVD)製造、電子ビームまたは集束イオンビームテクノロジーまたはインプリンティング技術によるような、当技術分野において公知の任意の方法により製造されうる。非限定的例は、通常の成形、二酸化ケイ素のドライエッチング;および電子ビームリソグラフィーを含む。ナノ電気機械システムの製造方法は、特定の態様について使用されうる。例えば、Craighead, Science 290:1532-36, 2000参照。)微細加工チップの様々な型は、例えば、Caliper Technologies Inc. (Mountain View, CA)およびACLARA BioSciences Inc. (Mountain View, CA)から市販されている。
【0122】
特定の態様において、装置の一部または全部は、例えば、ラマン分光法によるバーコード検出に用いられる励起および発光周波数における電磁放射には透明であるように選択されうる。適した構成要素は、ガラス、ケイ素、水晶または任意の他の光学的に透明な物質のような物質から製造されうる。様々な分析物、例えば、核酸、タンパク質など、に曝されうる液体で満たされたコンパートメントについて、そのような分子に曝される表面は、例えば、表面を疎水性から親水性表面へと変換させるため、および/または分子の表面への吸着を減少させるためにコーティングすることにより修飾されうる。ガラス、ケイ素、水晶および/またはPDMSのような一般的なチップ材料の表面修飾は、公知である(例えば、米国特許第6,263,286号)。そのような修飾は、例えば、市販されているキャピラリーコーティング剤(Supelco, Bellafonte, PA)、様々な機能(例えば、ポリエチレンオキシドまたはアクリルアミドなど)をもつシランでのコーティングを含みうる。
【0123】
特定の態様において、そのようなMEMS装置は、分子バーコードを調製するために、組み込まれていない構成要素から形成された分子バーコードを分離するために、分子バーコードを標的に曝すために、および/または標的に結合した分子バーコードを検出するために、使用されうる。
【0124】
実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために含まれる。後に続く実施例において開示された技術は、本発明の実施において十分に機能するように本発明者らにより発見された技術を提示し、従って、それの実施にとって好ましい様式を構成すると考えられうることは、当業者により認識されるべきである。しかしながら、開示されている特定の態様において多くの変更がなされ、かつ本発明の真意および範囲から逸脱することなく、同様なまたは類似した結果をなお得ることができることを、本開示に照らせば、当業者は認識するものと思われる。
【0125】
実施例1. 分子バーコードのラマン検出
図3は、例示的な、付着したラマンタグをもつ一本鎖バーコードを示す。例示的オリゴヌクレオチド配列301、302、303、304は、標準ホスホラミダイト化学作用により合成された。光学的検出のためのタグが、オリゴヌクレオチドに付着しており、蛍光色素ROX(カルボキシ-X-ローダミン)310;FAM(6-カルボキシフルオレセイン)320;およびTAMRA(テトラメチルローダミン)330を含んだ。各バーコードに付着した色素タグの位置および同定は、図3に示されているとおりである。アミン基は、合成中に、3つのオリゴヌクレオチド302、303、304の5'末端に付着した。
【0126】
実施例2. 分子バーコードのラマンスペクトル
図3に示された分子バーコードはSERSにかけられた。SERS発光スペクトルは、図4に示されている。銀コロイドおよびLiClの存在下における示されたバーコード301、302、303、304の1 μM溶液の220 μlを含む試料は、100 ms、レーザービームに曝露され、表面増強ラマンスペクトルが記録された。スペクトルは、約1000 CCDカウントユニットによりオフセットされた。図4に示されているように、4つの分子バーコード301、302、303、304のそれぞれは、3つの分子バーコード302、303、304が、同じヌクレオチド配列302、303、304上の異なる位置に付着した同じラマンタグ330を含んでいるにしても、識別可能なラマン発光スペクトルを生じた。これは、開示された方法を用いて識別可能な分子バーコードを作製することの実行可能性を実証している。
【0127】
実施例3.
ヌクレオチドに付着したいくつかの例示的ラマンタグにより発生したSERSスペクトル801 802 803 804 805 806は、図8に示されている。各ラマンタグから生じたスペクトルパターン801 802 803 804 805 806は、容易に識別できる。銀コロイドおよびLiClの存在下における1 μM バーコード溶液の220 μlを含む試料は、100 ms、レーザービームに曝露され、表面増強ラマンスペクトルが記録された。SERS発光スペクトルは、ポリT[NeBu]T 801;ポリT[EthdA]T 802;ポリT[8Br-dA]T 803;ポリT[2AmPur]T 804;[ThiSS]ポリTdA 805および[5Acrd]ポリdG[AmC7]806について示されている。
【0128】
実施例4.
本発明の1つの例示的態様が例示される。核酸配列を、図5および図6/7に示されているように、解読方法を用いることにより決定することができる。コード構成要素ライブラリー(図6 601 602 603 604)は、ライブラリーの各構成要素が、構成要素(例えば、3-マー)を具体的かつ一意的に同定する結合した標識(例えば、ラマンタグ)を有するように、作製されうる。核酸は、プローブの標的配列605へのハイブリダイゼーションを可能にするように構成要素ライブラリーとインキュベートされる。ハイブリダイズした核酸は、それらが励起源および検出器を流れ過ぎる、微小流体チャネルを通して操作される。コード構成要素の発光スペクトルは、検出され、データ処理システムへ中継されうる。核酸の配列は、発光スペクトルおよび発光スペクトルが検出される順序を、標識と結合したコード構成要素についてのスペクトルのデータベースと比較することにより決定される。
【0129】
例えば、組織試料を、疾患の疑いがある対象から得てもよい(例えば、生検試料、または場合により血液試料により)。単細胞懸濁液は、当技術分野において公知の技術により作製され、細胞は、細胞の内容物を放出するためにいくつかの膜破壊の1つにより溶解されうる。核酸は、当技術分野において公知の方法(例えば、フェノール/クロロホルム抽出、ゲル精製など)により単離される。精製された核酸分子は、ナイロン膜、96ウェルのマイクロタイタープレートまたは他の固定化基板への付着により固定化される。コード構成要素は、例えば、1個ずつまたは数個ずつ、固定化核酸へ導入され、予め決められたストリンジェンシー(NaCl含有量)の緩衝液において分子と相互作用するようにされてもよい。コードされたプローブは、標的核酸にハイブリダイズするようにさせられる。第一の1つまたは複数のコード構成要素のハイブリダイゼーション後、追加のコードされた構成要素が添加されうる。ハイブリダイズしていないコード構成要素および互いにハイブリダイズしたコード構成要素は、徹底的な洗浄により除去され、固定化核酸にハイブリダイズしているコード構成要素のみを残す。その後、コード構成要素は、逐次的に取り出され、コード構成要素にマッチする核酸配列を解読することにより読み取られる。配列の全部または一部は、所望の終点に依存して決定されうる。この情報を、検査されることになっている疾患について知られている情報と比較してもよく、特定の配列の存在または非存在によって、問題になっている疾患に関して対象の状態が決定され得る。一つの例において、疾患と相互に関連しているSNPs(一塩基多型)が同定され得、従って、固定化核酸の完全なシーケンシングは必要ではない。
【0130】
または、1つまたは複数のコード構成要素を、96ウェルのプレートのような表面上に固定化してもよく、これらを、特定の遺伝子型などについてのマーカーである、既知のSNP、挿入または欠失のような標的配列を含む対応する核酸分子を捕獲するために用いることができる。ラマン標識のようなタグの感度により、標的配列の迅速な同定が可能でありうる。
【0131】
実施例5.
本発明の1つの例示的態様が示される。タンパク質またはペプチド(例えば、まれな制御タンパク質など)は、前に考察されているように精製されうる。精製されたタンパク質/ペプチドは、当技術分野において周知の技術により抗体(モノクローナル抗体もまた当技術分野において公知の技術により作製されうる)を作製するために用いられる(Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York, 1988)。抗原の反応性は、フロイントの完全または不完全アジュバントのようなアジュバントを同時投与することにより増加しうる。抗原性は、ウシ血清アルブミンまたはキーホールリンペットヘモシアニンのような担体に抗原を付着させることにより増加しうる。動物の免疫応答は、抗原のブースター注射を定期的に施すことにより増加しうる。抗体1206は、動物の循環へ分泌され、出血または心臓の穿刺により得られうる。抗体1206は、血液凝固、遠心分離、濾過および/またはイムノアフィニティー精製(例えば、抗ウサギ抗体を用いる)もしくはアフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテイン-Aセファロースカラムクロマトグラフィー)のような周知の方法により他の血液成分から分離されうる。その後、これらの抗体は、図12に示されたポリマーラマン標識のいずれか1つに連結(例えば、共有結合性に)されうる。その後、ポリマーラマン標識抗体は、多くの分子の抽出物からそのタンパク質を同定するために用いられうる。または、ポリマーラマン標識抗体は、同定を目的として、対象となるタンパク質のさらなる研究のために、そのタンパク質の活性をブロックするために、疾患に関連したタンパク質を同定するためになど、分子の抽出物からいくつかの同じタンパク質を単離するのに用いられうる。ポリマーラマン標識分子は容易に検出されるため、それはまた、疾患の存在および/または程度を評価する診断目的のために使用されうる。
【0132】
実施例6. 図5〜7に示された技術を用いる核酸配列同定
一つの態様において、核酸は、1つまたは複数のラマンタグを用いて修飾されうる。多くの小さくかつ独特なラマンタグが利用できる。一つの例において、強くかつ独特なラマンシグネチャーを有するいくつかのアデニン類似体が図13に示されている(他のものは図8に示されている)。一つの例において、ラマンタグを、1つまたは複数の塩基修飾を通して核酸に連結してよく、その後、これらの修飾塩基を、オリゴヌクレオチドの化学合成のためのホスホラミダイトを作製するために用いてもよい。修飾塩基のホスホラミダイトを、当技術分野において公知の技術により作製することができる(McBride, L.J. and Caruthers, M.H. (1983) "An investigation of several deoxynucleoside phosphoramidites useful for synthesizing deoxyoligonucleotides." Tetrahedron Lett. 24:245-248)。
【0133】
一つの態様において、コード構成要素は、約10〜20塩基の長さからなりうる。10-マーについて、これは、4^10個の可能な配列であり、20-マーについて、これは、4^20個の可能な配列である。実践的適用において、標的配列は既知である、または配列は、配列のサブセットへ分割されうる。従って、オリゴヌクレオチドは、例えば、1つまたは複数のラマンタグにより標識かつ同定されうる。一つの例において、10個の異なるホスホラミダイトが用いられうる場合(それぞれ、異なるラマンタグをもつ);合成されたオリゴヌクレオチド配列あたり1つのラマンタグがあるならば、10個の異なるオリゴが合成されうる;合成されたオリゴヌクレオチドあたり2つのラマンタグがあるならば、55個のオリゴヌクレオチドが合成されうる、およびオリゴヌクレオチドあたり3つのタグがあるならば、175個のオリゴが合成されうる。例えば、オリゴヌクレオチド(コード構成要素)合成のためのホスホラミダイトを用いることができ、これらの方法は、当技術分野において公知である。一つの例において、1つの構成要素は、タグとしてキネチン(KN)(図13)を有する
であってもよく、およびもう一つは、タグとしてベンゾイル-アデニン(BA)(図13)を有する
であってもよい。バーコード構成要素の多くは、予め作製されて、後の使用のために保存されてもよい。
【0134】
一つの態様において、バーコードは以下の方法により調製されうる。バーコードは、いくつかのコード構成要素から構築されうる。バーコード鋳型は、標準ホスホラミダイト化学作用により合成されうる、比較的長いポリヌクレオチド、例えば40ヌクレオチドのDNA断片でありうる:
【0135】
この例における下線部分は、コンテナ部であり得、その他の配列は、プローブ部であり得る。バーコード構成要素
および
は、標準条件(例えば、200 mM NaCl、10 mM トリスHCl、pH 7.5および1 mM EDTAの存在下において1〜10 μMのオリゴヌクレオチド濃度)下でコンテナ部にハイブリダイズしうる。それゆえに、この例において、プローブ部は、2-バーコード構成要素により表され、それのラマンシグネチャーは、ラマンタグとしてのキネチンおよびベンゾイル-アデニンの両方により決定される。異なるバーコード鋳型を合成するために、プローブ部およびコンテナ部は、相応じて変化させられる;異なるバーコード構成要素(予め作製された)は、新しいバーコードを形成するようにいっしょにハイブリダイズしうる。
【0136】
この技術は、例えば、感染性原因物質に対応するDNAまたはRNAの存在を分析することにより感染性原因物質を検出するために用いられうる。試料を収集し、当技術分野において公知の技術により試料から核酸を抽出した後、核酸は消化され(例えば、制限酵素、限定デオキシリボヌクレアーゼ消化などにより)、ビオチン化ddNTP(Perkin Elmer Life Sciences)の存在下においてターミナルトランスフェラーゼ(New England Biolabsから入手可能)によりビオチンで末端標識されうる。ゲル濾過カラム(Amersham-Pharmacia Biotech)により遊離のヌクレオチドを除去した後、ビオチン化DNAは、ストレプトアビジンコーティング化磁気ビーズ(Roche)上に捕獲されうる。核酸は、その後、2つの相補鎖を分離するために0.1 N NaOH(DNAについて)で変性される。標的分子を中和した後、バーコード分子を、相補配列を結合するために導入してもよい。結合/洗浄緩衝液の1つの例は、200 mM NaCl、10 mM トリスHCl、pH 7.5および1 mM EDTAでありうる。磁石(Dynal Corp)を、当技術分野において公知の方法による粒子操作のために用いてもよい。
【0137】
一つの例において、バーコードのプローブ部は、標的配列に相補的である、例えば、
バーコード分子は、標的配列に結合し、それに従って、この例においては磁石により保持される(Dyna beads, Dynal)。ビーズは、銀コロイド(1 mM AgNO3から調製され、水で1:2に希釈された)および0.1 M LiCl(最終濃度)と混合されうる。粒子がラマン検出器を通過する時、バーコード分子に特異的に結合したラマンシグナル(KNおよびBA)は、このようにして検出されうる。この例において、情報は、1つまたは複数の試料において特定の感染性原因物質の存在または非存在を確認するために使用されうる。
【0138】
実施例7. タンパク質検出のためのバーコード-抗体
もう一つの態様は、実施例6においてのようにラマンタグ付きバーコードの調製を含みうるが、バーコードは、その後、抗原検出(例えば、タンパク質)のために抗体へ付着する。それゆえに、バーコード調製物は生じており、そして、DNAタグ付き抗体が作製されうる。例えば、IgG抗体(例えば、200 μg(1.33 nmoles))は、0.1x PBS(Ambionから入手できる、10x PBSから希釈された)の200 μlにおいてスルホ-GMBS(Pierceカタログ番号22324)の20 μg(52 nmoles)で、37℃で30 min、およびその後、室温で30 min、活性化されうる。溶液は、その後、PD-10カラム(Amersham-Pharmacia)を通過させられ、抗体含有画分は収集される。チオール修飾オリゴは、商業的ベンダー(Qiagen-Operon)により合成されうる。ベンダーからの指示に従ってジスルフィド結合を還元した(例えば、DTT処理)後、DNAオリゴ(例えば、13 nmoles)は、精製かつ活性化された抗体と混合されうる。反応は、室温で2時間、および4℃で一晩、進行するようにさせておく。DNA-抗体は、その後、例えば、0〜2 M NaCl勾配を用いるイオン交換カラム(Amersham-Pharmacia)により精製されうる。DNAおよびタンパク質の両方を含む画分が収集される。試料は、当技術分野において公知の技術を用いる脱塩および濃縮処理後、抗原結合(タンパク質検出)の準備ができている。
【0139】
固体支持体上に抗原(例えば、タンパク質)を固定化するためにいくつかの方法が用いられうる。好ましくは、ラマン検出について、捕獲抗体(捕獲抗体および検出抗体は、同じ抗原を認識するべきであり、R&D SystemおよびBD Biosciencesのような商業的ベンダーから入手できる)は、EDC化学により金表面上に固定化されうる(Benson et al., Science, 193, (2001), 1641-1644)。標的抗原(例えば、タンパク質)を含む試料は、1x PBSに希釈され、その後、特異的結合のために固体表面に適用されうる。例えば、DNAタグ付き抗体は、捕獲される抗原(例えば、タンパク質標的)に結合するようにさせておく。その後、標準イムノアッセイ手順に従いうるが、典型的には、1x PBSおよび0.05% ツイーン-20を用いる。一旦結合事象が起きたならば、相補的ラマンタグ付きDNAは、検出抗体に付着した固定化DNAオリゴに結合するようにさせておく。典型的には、バーコード分子は、2x PBSおよび1□g/ml 酵母tRNA(Sigma)において10 nM 濃度でありうる。1x PBSでの洗浄後、銀コロイド(1 mM AgNO3から調製され、水で1:2に希釈された)を、結合表面に添加してもよく、LiClを、その後、0.1 Mまで添加し、続いて、ラマン測定が行われる。抗体に付着しているDNAオリゴは、バーコードのプローブ部に相補的であるため、バーコードシグネチャーの存在は、抗体およびそれに従って標的抗原(タンパク質)の存在を示す。いくつかの異なる抗原は、異なる捕獲抗体およびDNAタグ付き検出抗体が同じ系に用いられる場合、この方法により同時に検出されうる。
【0140】
本明細書に開示および主張された方法、組成物および装置のすべては、本開示に照らせば、過度の実験なしに作製および使用されうる。主張された内容の概念、真意および範囲から逸脱することなく、変化が、本明細書に記載された方法、組成物および装置に適用可能であることは、当業者に明らかであると思われる。より具体的には、化学的および生理学的の両方に関連している特定の作用物質が、本明細書に記載された作用物質の代わりに使用可能であると同時に、同じまたは類似した結果が達成されるだろうことは、明らかであると思われる。当業者に明らかなすべてのそのような類似した置換および改変は、主張された内容の真意、範囲および概念内であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】分枝120およびタグ130で修飾された有機骨格110をもつバーコード100を作製するための例示的方法を示す。バーコード100は、標的に結合するプローブ部分を含みうる。タグ130は、例えば、抗体140に結合することによる、追加の修飾を受ける場合がある。
【図2】同じ骨格を利用する異なるバーコード201、202、203を作製するための例示的方法を示す。タグ240、250、260を、識別可能なバーコード201、202、203を作製するために異なる位置に置いてもよい。バーコード201、202、203の標的への結合は、バーコード201、202、203に付着したプローブ部分210、220、230により仲介されてもよい。
【図3】一本鎖核酸骨格をもついくつかのバーコード301、302、303、304の例を示す。タグ310、320、330は、例えば、ラマン分光法により同定されうる異なるスペクトルを生じるように、骨格上の様々な部位に付加される。バーコード302、303、304上の異なる部位に付着した同じタグ330をもつバーコードは、識別可能なラマンスペクトルを生じうる。
【図4】図3に開示されたバーコードにより生じたラマンスペクトルの例を示す。バーコード301、302、303および304は、グラフに表されている。
【図5】1つまたは複数のタグ510に付着した既知の配列の様々な短いオリゴヌクレオチド520を用いてバーコードを作製するための例示的方法を示す。オリゴヌクレオチド-タグ分子は、鋳型分子500へのハイブリダイゼーションにより、集合してバーコードを構築しうる。鋳型500は、オリゴヌクレオチド-タグハイブリダイゼーションのためのコンテナ部540、および核酸のような標的分子への結合のためのプローブ部550を含みうる。代替の態様において、プローブ550は、例えば、タンパク質、ペプチドまたは標的の他の型に結合可能なアプタマー配列を含みうる。
【図6】コード構成要素601、602、603、604を作製することを含む、タグ部分をオリゴヌクレオチドまたは核酸に付着させ、鋳型606を作製し、コード構成要素を鋳型605へハイブリダイズさせて、バーコード607を生じることによる、バーコードを作製するための例示的方法の概略図を表す。
【図7】相補標的鎖の存在または非存在を同定するために、図6の方法により作製されたバーコードを利用する例示的方法の概略図を表す。
【図8】いくつかのラマンタグ801、802、803、804、805、806により生じたSERS(表面増強ラマン分光法)スペクトルのプロットの例を表す。
【図9】ポリマーラマン標識910の例を示す。モノマーユニット901、902は、骨格909に付着した官能基904、908と、増加するポリマー鎖の末端におけるもう一つの官能基904、908との相互作用から生じた共有結合906により連結される。任意で、追加のユニット903が付加してもよい。
【図10】ポリマーラマン標識を作製するための例示的方法の概略図を示す。固体支持体1001は、構成要素1005(例えば、ポリマーラマン標識の部分)を付着させるために用いられる。構成要素1005の開放端1104は、脱保護され、モノマーユニット1010が、モノマーユニット1010の脱保護された官能基1006を介して構成要素1005に付着する。ラマンタグ1002、1003、1008は、ポリマーラマン標識に付着している。
【図11A】ポリマーラマン標識1105を作製するためのもう一つの例示的方法を表す。第1反応は、官能基1102a、1102bをラマンタグ1101a、1101bに付着させ、官能性を持たせたラマンタグ1103a、1103bを生成するために用いられる。第2反応は、官能性を持たせたラマンタグ1103a、1103bを重合させて、サブポリマーラマン標識1104a、1104bを形成するために用いられる。各サブポリマーラマン標識1104a、1104bは、予め決められた数のモノマーラマンタグ1103a、1103bを含む。この例において、第一サブポリマー1104aは、第一モノマー1103aの「n」コピーを含み、第二サブポリマー1104bは、第二モノマー1103bの「m」コピーを含む。予め決められた比率のサブポリマーラマン標識1104a、1104bが、混合され、架橋されて、ポリマーラマン標識1105を形成しうる。
【図11B】ポリマーラマン標識を作製するためのさらにもう一つの例示的方法を示す。官能基1112をもつポリマー分子1109は、異なるラマンタグ1110と組み合わされて、ポリマーラマン標識1111を形成しうる。ラマンタグ1110の各型の数を、特定された分光学的性質をもつポリマーラマン標識1111を生じるように予め決めることができる。
【図12】標的分子を同定するための1つまたは複数のプローブ1206に連結されたポリマーラマン標識のいくつかの例を示す。第一の例1201は、リンカー1205を介してプローブ1206に付着したポリマーラマン標識1204を示す。第二の例1202は、リンカー1205を介してナノ粒子1207に連結された2つのポリマーラマン標識1204、およびナノ粒子1207を2つのプローブ1206に付着させる追加のリンカー1205を示す。第三の例1203は、リンカー1205を介してナノ粒子に付着した複数のプローブ1206、およびナノ粒子1207に付着した複数のラマンタグ1208を示す。
【図13】修飾核酸、アデニンのいくつかのラマンタグにより生じたSERS(表面増強ラマン分光法)スペクトルのプロットの例を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む方法:
有機分子骨格に付着した2つまたはそれ以上のタグを含むバーコードを得る段階;
バーコードを標的に結合させる段階;および
標的に結合したバーコードを検出する段階。
【請求項2】
バーコードが、核酸、ペプチド、多糖、生体ポリマー、および合成ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つの分子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
核酸が一本鎖DNAである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
骨格が、ペプチドに共有結合した核酸を含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
タグが、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、塩基類似体、蛍光色素、ペプチド、アミノ酸、修飾アミノ酸、有機部分、ラマンタグ、量子ドット、カーボンナノチューブ、フラーレン、1マイクロメートル未満の金属粒子、高電子密度粒子、および結晶状粒子からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
骨格が、1つまたは複数の分岐核酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
分枝が、骨格に沿って予め決められた部位に位置している、請求項6記載の方法。
【請求項8】
バーコードが、蛍光分光法、ラマン分光法、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、および表面プラズモン共鳴からなる群より選択される技術により検出される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
バーコードが、プローブ部分を介して標的に結合する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
識別可能なバーコードが、同じ骨格に沿った異なる部位への同じタグの付着により作製される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
標的が、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、リポタンパク質、プリオン、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、脂質、脂肪酸、炭水化物、糖脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、リポ多糖、多糖、真核細胞、原核細胞、細菌、ファージ、ウイルス、および病原体からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
以下の段階を含む方法:
コンテナ部およびプローブ部を含む核酸鋳型を得る段階;ならびに
バーコードを作製するように1つまたは複数のタグ付きオリゴヌクレオチドをコンテナ部にハイブリダイズさせる段階。
【請求項13】
バーコードを標的に結合させる段階をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
標的に結合したバーコードを検出する段階をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
以下の段階を含む、ポリマーラマン標識を作製する方法:
2つまたはそれ以上のモノマーユニットを得る段階;および
ポリマーラマン標識を作製するようにモノマーユニットを重合させる段階。
【請求項16】
各モノマーユニットがラマンタグを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
単一のポリマーラマン標識における各ラマンタグが異なっている、請求項16記載の方法。
【請求項18】
ラマンタグが、スペーサー部分を通してポリマーラマン標識の骨格に付着している、請求項16記載の方法。
【請求項19】
ラマンタグが、モノマーユニットの重合後、ポリマーラマン標識に付着する、請求項15記載の方法。
【請求項20】
モノマーユニットの一方の末端における官能基を脱保護する段階、およびモノマーユニットとポリマーラマン標識の間に共有結合を形成する段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項21】
各サブポリマーユニットが予め決められた数のモノマーユニットを含むサブポリマーユニットを作製する段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項22】
ポリマーラマン標識を固体支持体に付着させる段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項23】
固体支持体がナノ粒子またはビーズである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
プローブをポリマーラマン標識に付着させる段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項25】
プローブを標的に結合させる段階をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
標的に結合したプローブを検出する段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
共有結合性に互いに付着した2つまたはそれ以上のモノマーユニット;
2つまたはそれ以上のラマンタグ;および
少なくとも1つのプローブ
を含む、ポリマーラマン標識。
【請求項28】
ポリマーラマン標識に付着したナノ粒子またはビーズをさらに含む、請求項27記載のポリマーラマン標識。
【請求項29】
標識における各ラマンタグが異なっている、請求項27記載のポリマーラマン標識。
【請求項30】
各ラマンタグの2つまたはそれ以上のコピーをさらに含む、請求項27記載のポリマーラマン標識。
【請求項31】
イメージング装置;
プローブに連結した少なくとも1つのバーコード;および
プローブに結合した少なくとも1つの標的
を含むシステム。
【請求項32】
イメージング装置が、蛍光装置、ラマン装置、およびFTIR装置からなる群より選択される、請求項31記載のシステム。
【請求項33】
各バーコードが、2つまたはそれ以上のラマンタグを含む、請求項31記載のシステム。
【請求項34】
単一のバーコードにおける各ラマンタグが、異なるラマン発光スペクトルを有する、請求項33記載のシステム。
【請求項1】
以下の段階を含む方法:
有機分子骨格に付着した2つまたはそれ以上のタグを含むバーコードを得る段階;
バーコードを標的に結合させる段階;および
標的に結合したバーコードを検出する段階。
【請求項2】
バーコードが、核酸、ペプチド、多糖、生体ポリマー、および合成ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つの分子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
核酸が一本鎖DNAである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
骨格が、ペプチドに共有結合した核酸を含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
タグが、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、塩基類似体、蛍光色素、ペプチド、アミノ酸、修飾アミノ酸、有機部分、ラマンタグ、量子ドット、カーボンナノチューブ、フラーレン、1マイクロメートル未満の金属粒子、高電子密度粒子、および結晶状粒子からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
骨格が、1つまたは複数の分岐核酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
分枝が、骨格に沿って予め決められた部位に位置している、請求項6記載の方法。
【請求項8】
バーコードが、蛍光分光法、ラマン分光法、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、および表面プラズモン共鳴からなる群より選択される技術により検出される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
バーコードが、プローブ部分を介して標的に結合する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
識別可能なバーコードが、同じ骨格に沿った異なる部位への同じタグの付着により作製される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
標的が、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、リポタンパク質、プリオン、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、脂質、脂肪酸、炭水化物、糖脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、リポ多糖、多糖、真核細胞、原核細胞、細菌、ファージ、ウイルス、および病原体からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
以下の段階を含む方法:
コンテナ部およびプローブ部を含む核酸鋳型を得る段階;ならびに
バーコードを作製するように1つまたは複数のタグ付きオリゴヌクレオチドをコンテナ部にハイブリダイズさせる段階。
【請求項13】
バーコードを標的に結合させる段階をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
標的に結合したバーコードを検出する段階をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
以下の段階を含む、ポリマーラマン標識を作製する方法:
2つまたはそれ以上のモノマーユニットを得る段階;および
ポリマーラマン標識を作製するようにモノマーユニットを重合させる段階。
【請求項16】
各モノマーユニットがラマンタグを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
単一のポリマーラマン標識における各ラマンタグが異なっている、請求項16記載の方法。
【請求項18】
ラマンタグが、スペーサー部分を通してポリマーラマン標識の骨格に付着している、請求項16記載の方法。
【請求項19】
ラマンタグが、モノマーユニットの重合後、ポリマーラマン標識に付着する、請求項15記載の方法。
【請求項20】
モノマーユニットの一方の末端における官能基を脱保護する段階、およびモノマーユニットとポリマーラマン標識の間に共有結合を形成する段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項21】
各サブポリマーユニットが予め決められた数のモノマーユニットを含むサブポリマーユニットを作製する段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項22】
ポリマーラマン標識を固体支持体に付着させる段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項23】
固体支持体がナノ粒子またはビーズである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
プローブをポリマーラマン標識に付着させる段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項25】
プローブを標的に結合させる段階をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
標的に結合したプローブを検出する段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
共有結合性に互いに付着した2つまたはそれ以上のモノマーユニット;
2つまたはそれ以上のラマンタグ;および
少なくとも1つのプローブ
を含む、ポリマーラマン標識。
【請求項28】
ポリマーラマン標識に付着したナノ粒子またはビーズをさらに含む、請求項27記載のポリマーラマン標識。
【請求項29】
標識における各ラマンタグが異なっている、請求項27記載のポリマーラマン標識。
【請求項30】
各ラマンタグの2つまたはそれ以上のコピーをさらに含む、請求項27記載のポリマーラマン標識。
【請求項31】
イメージング装置;
プローブに連結した少なくとも1つのバーコード;および
プローブに結合した少なくとも1つの標的
を含むシステム。
【請求項32】
イメージング装置が、蛍光装置、ラマン装置、およびFTIR装置からなる群より選択される、請求項31記載のシステム。
【請求項33】
各バーコードが、2つまたはそれ以上のラマンタグを含む、請求項31記載のシステム。
【請求項34】
単一のバーコードにおける各ラマンタグが、異なるラマン発光スペクトルを有する、請求項33記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−506431(P2007−506431A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528175(P2006−528175)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031289
【国際公開番号】WO2005/030996
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031289
【国際公開番号】WO2005/030996
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]