説明

プログラム可能な分子操作方法および装置

【課題】
分子を操作するための方法およびシステムを提供する。
【解決手段】
本システムは、原子間力顕微鏡において使用されるような近接プローブのセットを使用して分子を操作する。各近接プローブが静電力を及ぼし得るように、近接プローブのセット上に静電パターンが配置される。静電力を使って分子が捕捉され、しかる後、分子が近接プローブによって捕捉された状態にある間、それら分子は、操作することが可能である。静電パターンは、分子が近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間、その近接プローブのセット全体にわたって移動または回転するように修正することが可能である。静電パターンは、分子が近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間、分子を曲げるまたは分割するために使用することが可能であり、それによってシステムが、分子を化学反応に取り込むこと、例えば、合成触媒または合成酵素として作用することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、分子との相互作用のために原子スケール精度の近接プローブを利用する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研究探査活動はナノテクノロジの知識を継続的に向上させている。科学者は、ほとんど名状し難い微小の分野に進出しようとしている。ナノテクノロジでは、あらゆるものを原子の相互作用によって説明することができる。これらの次元では、生物学と物理学との区別が曖昧であり、それは、多くの進展にもかかわらず、それぞれの専門分野における科学者が相互の研究領域を侵そうとしているので、ナノテクノロジの難しさを増している。例えば、微小の電子回路を作るために、或る物理学者は、生物学的プロセスに類似した方法で非生物を集成させることによって性質を真似ようとしている。
【0003】
原子レベルでの物質の操作は新しいことではない。1981年にスイス国チューリッヒにおけるIBM研究所のGerd Bining および Heinrich Rohrer 氏他は、走査トンネル顕微鏡(STM)を発明し、特許を取得した(米国特許第4,343,993号参照)。それは、原子レベルにおける顕微鏡の世界を理解するための能力を大いに進歩させた。STMの主要な要素は、圧電素子のアレイ上に搭載されたタングステンのような金属から作られた極めて先が尖った先端部であり、その圧電素子が先端部の位置を三次元で制御する。SMTは、先端部を表面に関してほぼナノメートルの精度で極めて正確に制御することができる。そのような小さな距離では、先端部と表面の間を電流がトンネルすることができる。先端部がサンプルの表面を横切って移動するとき、サンプルにおける表面原子の電子雲を映像化し得るよう一定の量にトンネル電流を保つために、その高さが調節される。STMは、金属および半導体のような無機材料の表面の画像を提供し、微小世界の最初の映像を科学者にもたらした。この研究で上記Bonning および Rohrer の両氏は1986年にノーベル賞を得た。
【0004】
STMは、その能力にもかかわらず、導電材料を可視化することに限定されている。この限定を克服するために、Bonning氏他は、原子間力顕微鏡(AFM)と呼ばれる、STMに関連した装置を開発した。この現在周知の装置は、極小の微細加工されたカンチレバー型の端部に搭載された小さい先端部を使用してサンプルの形状(topography)を感知する。トンネル電流を使用せずに、先端部をサンプル表面と実際に接触させることによってサンプルが走査され、ナノメートル単位の先が尖った先端部とサンプル表面との間の原子間力の相互作用がカンチレバー型のピボット偏位を生じさせる。AFMは、一定の応力を維持するために必要な、小さな上向きおよび下向きの偏位を測定する。AFMは応力に依存するので、それは有機物質または絶縁物質のような非導電物質を映像化するために使用することが可能である。
【0005】
STMおよびAFMに関する別の変形が開発されている。これらの装置は、磁気力、静電力、ファン・デル・ワールス相互作用、温度変動、光吸収、近接光学、および音響学のような分子レベルで物質に関する他の側面を調べることができる。これらは、まとめて「近接プローブ」として知られており、種々のこれらのプローブが、1990年発行の「Science」誌、247巻、ページ634〜636における「Children of the STM」と題した Pool 氏の論文に記載されている。
【0006】
科学者は、個々の原子を見ることができると直ちに、それらを扱うことを望むであろう。近接プローブ装置は、走査先端部によってそれらをピックアップし且つ移動させることによって、実質的に原子および分子を操作するために使用されている。これに関しては、1990年発行の「Nature」誌、344巻、ページ524〜526における「Positioning Single Atoms with a Scanning Tunneling Microscope」と題したD. M. Eigler および E. K. Schweizer の両氏による論文を参照されたい。なお、この論文は、「IBM」というイニシャルを形成するためにニッケル基板上にキセノン原子を位置決めすることを開示している。別のSTMイメージは、1993年発行の「Physics Today」誌、46巻、ページ17〜19における「STM Rounds Up Electron Waves at the QM Corral」と題した論文に見ることができる。
【0007】
IBM社他は、近接プローブ技術に関して新たな応用例を開発した。Binning氏は、チューリッヒにおける仲間と共に、「millipede」記憶システムにおいて数千個の小さい先端部を自身の各カンチレバーに1つずつ有するナノスケールのブラシを作成した。ヒータ・カンチレバーを使って、ポリマ材料にくぼみが作られる。そのような熱機械的記録が1平方インチ(6.45平方センチ)当たり400ギガバイトの記憶密度で実演された。くぼみをうまく読取るために先端部が使用される。読取りに対して毎秒数メガバイトの速度および書込みに対して毎秒100キロバイトの速度が実演された。これは、1999年1月3日の「Applied Physics Letter」誌、74巻、9号、ページ1329〜1331における「Ultra high-density Atomic Force Microscopy Data Storage with Erase Capability」と題した Binning 氏他による論文、および2000年5月発行の「IBM Journal of Research & Development」誌、44巻、3号、ページ323〜340における「The Millipede-More Than One Thousand Tips for Future AFM Data Storage」と題した Vettinger 氏他による論文に記載されている。磁性基板を使用する磁気millipede は、「Magnetic Millipede for Ultra High Density Magnetic Storage」と題した米国特許第6,680,808号に記載されている。
【0008】
ほとんどの Binning 氏の研究は機械的原理に基づいているが、他のものは材料を操作する方法を考察する上で自然界で見出されるプロセスを使用している。テキサス大学におけるAngela Belcher 氏は、新しい半導体材料を形成するために蛋白質を使用した。一例として、Belcher 氏は鮑の貝殻を研究した。鮑の貝殻は、2つのタイプの白亜から作られるが、石灰岩に見られる白亜の強さの約3000倍の強さを有する。白亜分子を最適に配列する方法を決定するのは、鮑のRNAによって生成された蛋白質である。この知見を使って、Belcherは、結晶成長を種々の方法で制御する蛋白質のセットを組み立てた。この研究の一部は、2000年6月8日発行のNature 誌、405巻、ページ666〜668における「Selection of Peptides with Semiconductor Binding Specificity for Directed Nanocrystal Assembly」に記載されている。
【0009】
Belcher 氏と同様に、Heller 氏他は、「Active Programmable Electronic Devices for Molecular Biological Analysis」と題した米国特許第5,605,662号に記載されているように、他の分子と相互作用するために化学的鎖構造を使用した。Heller氏他の特許において、鎖構造は、各々のサイトにそれぞれ別の化学物質をホールドするように設定されて、そのことが対象とする分子を捕捉することになるマイクロロケーション(個々の分子サイズよりもずっと大きい)のアレイによって適当な位置に保持される。この手法は、どのような分子がどちらの領域に集中するかに関して興味あるプログラマビリティを可能にするが、分子を個々に操作するのではなく、一括して操作する。Belcherおよび Heller 氏他は、分子を直接に操作するのではなく、被分析物、蛋白質、またはそれらに類する
ものを使用して分子に間接的に影響を与える。
【0010】
研究者は、有機分子の優れた選択性と近接プローブの位置決め精度を結合することも提案した。1992年発行の「Wiley Interscience」誌の「Nanosystems : Molecular Machinery, Manufacturing, and Computation」において Eric Drexler 氏は、プローブ表面上に有機分子を含む複数のビード・バウンド・ワークサイト(bead bound work sites)を有
するAFMを提案した。コーネル大学における Harold Craighead 氏および彼のチームは抗体をカンチレバー上の近接プローブに加えた。この装置によって、特定のバクテリアの存在を検出することが可能になる。それが存在する場合、抗体がバクテリアに付着する。プローブがバクテリアの蓄積により重みで押し下げられるとき、振動するカンチレバーの共振周波数が変更される。
【0011】
生物の場合、ほとんどの操作がDNA、RNA、および特別の蛋白質によって駆動される。特定の蛋白質は、操作されるべき分子上の電荷の相補的パターンとぴったりと一致するような電荷の静電パターンを生成するという原理に基づいて作用し、それによって、適切な分子が酵素、触媒、または他の操作分子に付加されることを可能にする。近接プローブ技術を使用して同様のタイプの分子操作を行うための能力を提供することは有益なことであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,343,993号
【特許文献2】米国特許第6,680,808号
【特許文献3】米国特許第6,091,124号
【特許文献4】米国特許第6,198,300号
【特許文献5】米国特許第5,856,967号
【特許文献6】米国特許第6,507,197号
【特許文献7】米国特許第5,329,236号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】1990年発行の「Science」誌、247巻、ページ634〜636における「Childrenof the STM」と題したPool 氏の論文
【非特許文献2】1990年発行の「Nature」誌、344巻、ページ524〜526における「Positioning Single Atoms with a Scanning Tunneling Microscope」と題した D. M. Eigler およびE. K. Schweizer の両氏による論文
【非特許文献3】1993年発行の「Physics Today」誌、46巻、ページ17〜19における「STM Rounds Up Electron Waves at the QM Corral」と題した論文
【非特許文献4】1999年1月3日の「Applied Physics Letter」誌、74巻、9号、ページ1329〜1331における「Ultrahigh-density Atomic Force Microscopy Data Storage with Erase Capability」と題した Binning 氏他による論文
【非特許文献5】2000年5月発行の「IBM Journal of Research & Development」誌、44巻、3号、ページ323〜340における「The Millipede - More Than One Thousand Tips for Future AFM Data Storage」と題した Vettinger 氏他による論文
【非特許文献6】2000年6月8日発行のNature 誌、405巻、ページ666〜668における「Selection of Peptides with Semiconductor Binding Specificity for Directed Nanocrystal Assembly」と題した論文
【非特許文献7】1992年発行の「Wiley Interscience」誌の「Nanosystems : Molecular Machinery, Manufacturing, and Computation」と題した Eric Drexler 氏の論文
【非特許文献8】1992年3月19日発行の「Nature」誌、356巻、ページ266〜267における「The interfacial - Force Microscope」と題した Houston 氏他による論文
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、原子間力顕微鏡、静電力顕微鏡、走査トンネル顕微鏡等において使用される近接プローブのような、近接プローブのセットを使って分子を操作するための方法、装置、およびコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
近接プローブのサブセットにおける各近接プローブの端部が静電力を及ぼすように、近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブのサブセット上に静電パターンが形成される。静電パターンが及ぼす静電力を使って分子が捕捉され、しかる後、その分子は、それが近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に操作され得る。静電パターンは、分子が近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間、その分子が近接プローブのセット全体にわたって移動および/または回転するように、近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブのサブセット上に異なる静電パターンを生成するように修正される。静電パターンは、分子が近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間、その分子を曲げるかまたは分割するために使用することも可能であり、それによって、システムがその分子を化学反応に取り込むこと、例えば、合成触媒または合成酵素として作用することを可能にする。
【0016】
近接プローブの1つまたは複数のセットは、機械的および/または電気的に一括して操作されてもよい。近接プローブのセットが操作されるとき、捕捉された分子がその近接プローブのセットと共に移動し、それによって、機械的作用または化学反応を通してその捕捉された分子に対する修正を生じさせる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックを制御するためのデータ処理システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の分子操作システムの具現化において使用するための導電性の微小先端部を有する近接プローブを示す概略図である。
【図3】本発明の分子操作システムの具現化において使用するための導電性の微小先端部を有するガラス絶縁性の近接プローブを形成するための方法を示す概略図である。
【図4】本発明の分子操作システムの具現化において使用するための導電性の微小先端部を有するカンチレバーを備えた近接プローブを示す概略図である。
【図5】本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックを形成するために一体的に集成される近接プローブのグループを示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例に従って捕捉分子の電子雲に面した静電パターンを表わす一次元近接プローブ・アレイを示す概略図である。
【図7】本発明の実施例に従って一次元近接プローブ・アレイ・ブロックの前縁部の静電パターンを示す概略図である。
【図8】本発明の実施例に従って、分極ロケーションを含む電子雲を表わす標的分子を捕捉しようとするための静電パターンを提示し得る二次元近接プローブ・アレイを示す概略図である。
【図9】本発明の実施例に従って二次元近接プローブ・アレイ・ブロックの前縁部の静電パターンを示す概略図である。
【図10】本発明の実施例に従って捕捉分子の電子雲に面した静電パターンを表わす二次元近接プローブ・アレイの1つの行を示す概略図である。
【図11】本発明の実施例に従って標的分子を捕捉するために使用され得る一対の二次元近接プローブ・アレイ・ブロックを示す概略図である。
【図12】本発明の実施例に従って標的分子を捕捉するために使用し得る一対の対向した二次元近接プローブ・アレイ・ブロックを示す概略図である。
【図13】本発明の実施例に従って分子を操作するために近接プローブ・アレイを使用するためのプロセスを示すフローチャートである。
【図14】表面上に被膜として付着される標的分子のセットの1つを捕捉および保持しようとする近接プローブ・アレイ・ブロックを示す概略図である。
【図15】本発明の実施例に従って短い期間にわたって静電パターンをシフトするために近接プローブ・アレイを使用する方法を示す概略図である。
【図16】本発明の実施例に従って短い期間にわたって静電パターンをシフトするために近接プローブ・アレイを使用する方法を示す、図15と関連した概略図である。
【図17】本発明の実施例に従って短い期間にわたって静電パターンをシフトするために近接プローブ・アレイを使用する方法を示す、図15と関連した概略図である。
【図18】本発明の実施例に従って短い期間にわたって静電パターンをシフトするために近接プローブ・アレイを使用する方法を示す、図15と関連した概略図である。
【図19】本発明の実施例に従って標的分子を移動させるために近接プローブ・アレイ・ブロックを使用するための方法を示す概略図である。
【図20】本発明の実施例に従って標的分子を曲げるまたは撓めるために近接プローブ・アレイ・ブロックを使用するための方法を示す概略図である。
【図21】本発明の実施例に従って標的分子の一部分を捩れまたはピボットさせるために近接プローブ・アレイ・ブロックを使用するための方法を示す概略図である。
【図22】本発明の実施例に従って標的分子を分断するために近接プローブ・アレイ・ブロックを使用するための方法を示す概略図である。
【図23】本発明の実施例に従って2つの標的分子を結合することによって1つの分子を生成するために近接プローブ・アレイを使用するための方法を示す概略図である。
【図24】本発明の実施例に従って2つの標的分子を結合することによって1つの分子を生成するために複数の近接プローブ・アレイを使用するための方法を示す概略図である。
【図25】本発明の実施例に従って1つの捕捉分子を分割するために先端部が撓められた近接プローブ・アレイ上の近接プローブの端部における一対のカンチレバー型先端部を示す概略図である。
【図26】本発明の実施例に従って1つの捕捉分子を分割するために近接プローブ・アレイ・ブロックが移動させられる一対の並置された近接プローブ・アレイ・ブロックを示す概略図である。
【図27】本発明の実施例に従って1つの捕捉分子を分割するために近接プローブ・アレイ・ブロックが移動させられる一対の対向した近接プローブ・アレイ・ブロックを示す概略図である。
【図28】本発明の実施例に従って1つの捕捉分子を分割するために近接プローブ・アレイ・ブロックの1つが移動させられる一対の対向した近接プローブ・アレイ・ブロックを示す概略図である。
【図29】本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックが自立型修正機構を有する標的分子を操作するために近接プローブ・アレイ・ブロックを使用するための方法を示す概略図である。
【図30】本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する分子操作の1つの段階を示す概略図である。
【図31】本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する分子操作の1つの段階を示す概略図である。
【図32】本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する分子操作の1つの段階を示す概略図である。
【図33】本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する分子操作の1つの段階を示す概略図である。
【図34】本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する分子操作の1つの段階を示す概略図である。
【図35】本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する分子操作の1つの段階を示す概略図である。
【図36】本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する分子操作の1つの段階を示す概略図である。
【図37】本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する分子操作の1つの段階を示す概略図である。
【図38】本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する分子操作の1つの段階を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックを制御するためのデータ処理システムのブロック図が示される。近接プローブの従来の使用方法とは対照的に、本発明は、プログラマブル分子操作システム100において2つまたはそれ以上の近接プローブのセットを使用する。近接プローブの配列は「近接プローブ・アレイ」と呼ばれる。好適な実施例では、近接プローブのセットが、近接プローブのアレイを形成するように規則的または画一的な態様で配列される。別の実施例では、近接プローブのセットが不規則な間隔またはプローブ間ギャップを有することも可能である。本明細書における例示的な形は近接プローブを四面体として描いているが、本発明は、異なる形状およびサイズの近接プローブを使用して具現化することが可能である。例えば、近接プローブの1つのタイプが、2000年7月18日に発行された「Micromechanical sensor for AFM/STM profilometry」と題した、Bayer 氏他を発明者とする米国特許第6,091,124号に開示されている。近接プローブの別のタイプが、2000年2月6日に発行された「Silicided silicon microtips for proximal probe microscopy」と題した、Doezema 氏他を発明者とする米国特許第6,198,300号に開示されている。もう1つの例として、各近接プローブは、炭素の少なくとも1つのバッキーチューブ(buckytube)またはナノチューブ(nanotube)、シリコン・ナノチューブ、或いは何らかの他の素子およびポリマから作られたナノチューブを含み得る。
【0019】
近接プローブの集成体102は、近接プローブ自体に加えて支持構造および/または支持回路を含み得る近接プローブ・アレイ・ブロックを形成する。本発明の実施例は、複数の近接プローブ・アレイ・ブロックを使用してもよい。そのアレイ・ブロックの各々は、近接プローブ・アレイ・ブロックが少なくとも1つの空間的次元におけるものとして解釈し得るが、望ましくは、3つの空間軸の周りを回転する場合も含めて3つの空間的次元におけるものとして解釈し得る。本明細書において説明される図は縮尺して描かれてはいないことに留意されたい。
【0020】
コンピュータ108が、アレイ・ブロック・アクチュエータ106を制御するアクチュエータ・コントローラ110にコマンドを送る。コンピュータ108は、ユーザが分子操作システム100を動作させることを可能にするためのディスプレイ・モニタおよび入力装置とのコンピュータ・ヒューマン・インターフェースを有する。ユーザは、分子操作システム100の使用を自動化するために、コンピュータ108上で実行される特別のソフトウェア・アプリケーションを呼び出すことも可能である。本発明は、種々のタイプのアクチュエータ、サーボ・モータ、または、恐らくレーザによるガイドを伴う原子的スケールでの移動の管理を可能にする圧電コントローラ、を使用して具現化することができる。例えば、サーボ・コントローラの1つのタイプが、「Atomic force microcopy data storage system with tracking servo from lateral force - sensing cantilever」と題した、Mamin 氏他を発明者とする1999年1月5日発行の米国特許第5,856,967号に開示されている。
【0021】
近接プローブが集成される近接プローブ・アレイ・ブロックの移動による近接プローブの移動に加えて、近接プローブは、更に詳しく後述するように、カンチレバーを含むように具現化することも可能である。それがカンチレバーを含む場合、近接プローブと関連した各カンチレバーは、コンピュータ108によってコマンド指示されるカンチレバー・コントローラ112を介して制御される。
【0022】
本発明のプログラマブル分子操作システムは、分子の操作のために近接プローブを介して静電力を使用する。コンピュータ108によってコマンド指示され得る静電コントローラ114は、各近接プローブが受ける(恐らく、電流のような他の物理的可変量に加えて)電圧の大きさを制御し、それによって、更に詳しく後述するように、各近接プローブの先端部によって与えられる静電力を制御する。更に、コンピュータ108は、他のコントローラ素子を機能させることも可能である。静電コントローラ114または他のコントローラは、主として静電力による分子の操作を支援するために、または分子を直接操作するために、分子の磁気的操作を行うことも可能である。例えば、近接プローブは、分子に小さい磁界を与えるために電流を搬送する導電材の小型ループを含んでもよい。
【0023】
次に図2を参照すると、本発明の分子操作システムを具現化する場合に使用するための導電性の微小先端部を有する近接プローブの概略図が示される。上述のように、本発明の近接プローブは、種々の形式で具現化することが可能である。図2は、カンチレバーを含まない近接プローブの先端部を示し、一方、図4は、カンチレバーを含む近接プローブの先端部を示す。いずれの場合も、近接プローブの先端部は、分子上に静電力を与えるために、静電荷を生じさせるその近接プローブの部分のことである。しかし、下記の各図面に関する説明では、静電荷を生じさせる近接プローブを近接プローブの端部における先端部を参照せずに簡単に記述する。図2を参照すると、先端部200は、原子レベルに先が尖った微小先端を形成する導電性ワイヤ/リード202を含み、導電性リード202は、絶縁材料または半導体材料204内の中心に置かれる。図2では、先端部200は、図解のために先が切り取られた部分を表わす。図2は、先端部200の側面図または先端部200の中心断面図を示す。
【0024】
次に図3を参照すると、本発明の分子操作システムの具現化において使用するための導電性微小先端部を有するガラス絶縁性近接プローブを形成するための方法が示される。ガラス・ロッド300が、そのガラス・ロッド内の中心に置かれた導電性リード/ワイヤ302を含む。ガラス・ロッド300は、それを柔軟におよび整形し易くするために領域304を加熱され、領域304を細長くするために引き伸ばされ、それによってガラス・ロッド300およびそれの導電性リード/ワイヤ302を領域304では非常に薄くされる。ガラス・ロッド300は、微小先端部が形成されるように、領域304において切断されてもよい。例えば、図2に示されたものと同様の導電性ワイヤ302の微細部分だけが現れる。図3に関連して説明したプロセスは、複数の近接プローブの集成体がより効率的に製造されるように、複数のガラス・ロッドにおいて同時に遂行することも可能である。換言すると、近接プローブ・アレイ・ブロックは、上記のように単一のオペレーションで製造することが可能である。
【0025】
次に図4を参照すると、本発明の分子操作システムの具現化において使用するための導電性微小先端部を有するカンチレバーを備えた近接プローブが示される。先端部400は、カンチレバー404の端部において原子レベルに先が尖った微小先端部を形成する導電性リード402を含み、導電性ワイヤ/リード402はカンチレバー404の絶縁性材料または導電性材料内に含まれる。図4では、先端部400は図解のために先端を切り取られたものであり、図4は先端部400の側面図または先端部400の中心断面図を示す。カンチレバー基部406はカンチレバー404を動かすための構造を含み、カンチレバー404は種々の異なる方法で具現化することが可能である。静電近接プローブ上のカンチレバーに関する情報は、2003年1月14日に発行された「Electrostatic force detector with cantilever for an electrostatic force microscope」と題した、Itoh 氏他を発明者とする米国特許第6,507,197号において開示されている。近接プローブのためのカンチレバーの構造に関する更なる詳細が前述の米国特許第5,856,967号に開示されている。
【0026】
図5を参照すると、本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックを形成するために組み立てられた近接プローブのグループを表わすブロック図が示される。図5は、更に、図2および図4に示された近接プローブが、図1に示されるように、近接プローブ・アレイ・ブロックを形成するためにグループ化される方法を示す。近接プローブ502は、近接プローブ・アレイ・ブロック504を形成するように組み立てられる。しかし、近接プローブ・アレイ・ブロックが必ずしも個々の近接プローブを集合したものから作られるのではないということに留意されたい。更に、近接プローブ・アレイ・ブロックは、リソグラフィ、ガス付着、レーザ切断、または何らかの他の技術を使用して製造することも可能である。
【0027】
各近接プローブからの導電性ワイヤ/リードが支持回路に接続される。図5は、近接プローブ・アレイ・ブロック504内の支持回路506を示すが、その支持回路は、導電性接続だけが近接プローブ・アレイ・ブロック内に設けられるようにその近接プローブ・アレイ・ブロックの外に設置されてもよい。導電性ワイヤ/リードは、近接プローブの先端部に静電電位を与えるための、即ち、アクティブにするまたは誘起するためのワイヤ、近接プローブのカンチレバーを制御するためのワイヤ、センサのためのワイヤ、近接プローブの構造を操作制御するためのワイヤ、近接プローブ・アレイ・ブロックの基板の一部分を操作制御するためのワイヤ、および/または他の目的のためのワイヤを含んでもよい。支持回路506は、図1に示されたコントローラのような高レベルのコントローラに、必要な場合に、接続されるであろう。近接プローブ502は並置される。このことは、それらが相互に接触するということを意味するか、或いは、それらが、種々のタイプの材料から成る材料の層、ブロック、または基板に組み込まれるか、それに取り付けられるか、或いはそれによって保持されるので、それらの間に隙間を有するということを意味する。いずれの場合も、近接プローブが相互に接触していても或いは接触していなくても、各近接プローブにおける導電性ワイヤは他の近接プローブにおける導電性ワイヤから電気的に絶縁されているものと仮定することができる。
【0028】
近接プローブ502および/または近接プローブ502相互間の間隔が、近接プローブ・アレイ・ブロック504を使って操作されるべき分子の配列に対し必要に応じて設けられるように、近接プローブ・アレイ・ブロック504を製造することも可能である。更に、図面は、近接プローブを等しい長さまたは高さを有するものとして示しているが、いずれの近接プローブ・アレイ・ブロックにおける近接プローブも、標的とされる分子(以下、標的分子という)の配列に適合するよう、必要に応じて不均等の長さまたは高さを有することがある。
【0029】
図面は、近接プローブ・アレイ・ブロックの基板を平面であるように示しているが、その近接プローブ・アレイ・ブロックが実質的に凹面状、凸面状、またはもっと複雑な形状を有するような非平面的な表面を有してもよい。近接プローブ・アレイ・ブロックの基板は、以下で説明および図解するように、その近接プローブ・アレイ・ブロックにおける近接プローブのサブセット間の間隔を増加または減少させるように、または近接プローブ・アレイ・ブロックの基板から近接プローブのサブセットの長さまたは高さを増加または減少させるように、制御可能な構造を含んでもよい。近接プローブ・アレイ・ブロックの基板は、必ずしも単一の材料で作られるのではなく、種々の材料から作られる種々の部分を含み得る。
【0030】
図6は、本発明の分子操作システムの具現化において、捕捉された分子(以下、捕捉分子という)の電子雲に面している静電パターンを表わす一次元の近接プローブ・アレイを示す。上記のように、本発明のプログラマブル分子操作システムは、分子の操作を実現ために近接プローブを介して静電力を使用する。しかし、分子が操作される前に、それらの分子は近接プローブ・アレイに引き付けられ、しかる後、近接プローブによって捕捉される。近接プローブ・アレイによる分子の操作の前に近接プローブ・アレイに分子を引き付ける理由を、図6における概略図に関連して説明する。
【0031】
近接プローブ・アレイ・ブロック602が近接プローブのセットを含む。或る時点で、近接プローブの幾つかが、例えば図1に示されるコンポーネントを使用して、意図的に、静電的に帯電される。例えば、図5に示され、図1に示されたコンピュータ108のような装置によって最終的に制御される支持回路506を使って、近接プローブの先端部における導電性材料に電圧を印加すること、電圧をアクティブにすること、または誘起することによって、静電荷が誘起または現出され、即ち、外部のエンティティに対して明示または露出される。各近接プローブにおいてアクティブにされる電位の極性は、各近接プローブによって露出されている静電荷の極性を決定する。或る近接プローブは、その近接プローブに電圧が印加されないので、中性の状態にある。従って、静電パターン604は、電位が近接プローブのセットに印加されるとき、その近接プローブのセットによって与えられる。
【0032】
近接プローブ・アレイ・ブロック602が1つまたは複数の標的分子に対して何らかの方法で晒される。例えば、近接プローブ・アレイ・ブロック602が、低温、低圧の気体を保持する単一の容器であってもよい反応容器内に入れられる。それとは別に、その容器は、標的分子を液体の形で保持するか、または標的分子が、望ましくは、水よりも低い双極子モーメントを示す溶媒を使って、溶液内で浮遊させられる。溶液内での静電力顕微鏡の使用は、1994年7月12日に発行され、「Apparatus for estimating charged and polarized states of functional groups in a solution」と題し、Gemma 氏他を発明者とする米国特許第5,329,236号に開示されている。別の方法では、標的分子が基板上に、容器の表面でもよい被膜または層として置かれる。被膜に関する界面張力顕微鏡の使用が1992年3月19日発行の「Nature」誌、356巻、ページ266〜267における「The interfacial - Force Microscope」と題した Houston 氏他による論文に開示されている。望ましくは、標的分子の被膜を支持する基板が、標的分子に関して比較的小型の引き付け力を示すので、近接プローブ・アレイは、基板の引き付け力に打ち克つための大きな力を使用することなく、標的分子を捕捉することが可能である。
【0033】
近接プローブ・アレイの使用が一時的な期間、第1に、標的分子が近接プローブ・アレイよって捕捉されるオペレーションの捕捉フェーズまたはモード、第2に、標的分子が近接プローブ・アレイによって操作される操作フェーズ、第3に、近接プローブ・アレイに取り付けられた分子がその近接プローブ・アレイから解放される解放フェーズ、に分離される。
【0034】
捕捉フェーズの目的は、静電力によって標的分子を近接プローブ・アレイに引き付けることである。一般に、標的分子が適切な方位を有するものと仮定すると、標的分子の或るロケーションは、後述のように、近接プローブ・アレイによって表わされた静電荷とは反対の極性を有するので、容器内の標的分子は、近接プローブ・アレイによって表わされる静電パターンに引き付けられるであろう。換言すれば、標的分子は、次のような理由で、近接プローブ・アレイの静電パターンに引き付けられるであろう。
【0035】
各々の元素の原子は、種々の電子吸引能力を有する。原子が化学結合に加わるとき、それらの原子は電気陰性度、即ち、その化学結合に関与する電子を吸引する能力を示す。化学結合における2つの原子の電気陰性度が異なる場合、電子は他の原子の周りよりも大きい電気陰性の原子の周りでより多くの時間存在し、それによって、化学結合における1つの原子がわずかに負の電荷を得たように見えるようにし、他の原子がわずかに正の電荷を得たように見えるようにする。この電荷の分離が双極子を構成し、多くの分子が、電子雲の周りに分極度の異なる数々の領域またはロケーションを有する。強い極性の分子は、静電的に帯電した近接プローブ・アレイによって表わされる静電パターンに強く引き付けられるであろうし、一方、非極性の分子は引き付けられないであろう。
【0036】
図6を再び参照すると、反応容器内の分子は分子の電子雲606を有し、その電子雲は、もともと、分子が静電パターン608を表わすように分極したそれぞれの箇所を有する。ある時刻にそれぞれの静電パターンが整合するように、分子が近接プローブ・アレイ・ブロック602に引き付けられるであろう。近接プローブ・アレイによってもたらされる静電荷のパターンとは反対の極性を有するポイントまたはロケーションの整合パターンを示す分子は、近接プローブ・アレイの静電パターンに対する相補の静電パターンを有すると呼ばれる。現時点で近接プローブ・アレイによってもたらされる静電パターンは「現静電パターン」と呼ばれる。現静電パターンに対する相補の静電パターンを有する分子は「標的分子」と呼ばれる。標的分子は近接プローブ・アレイが標的分子の相補の静電パターンと整合するとき、「捕捉分子」と呼ばれる。捕捉分子は、整合するポイント間の静電力が標的分子を短時間の間近接プローブ・アレイに保持させるような引力を受けるだろう。
【0037】
標的分子は、その電子雲の周りに多数の分極ロケーションを有し得る。各近接プローブが標的分子における単一の固有の分極したロケーションを指すように、近接プローブ・アレイ上の静電パターンを使うことが可能であることに留意されたい。これは、近接プローブと標的分子の分極ロケーションとの間に1対1の関係が存在する望ましいケースである。しかし、近接プローブ・アレイ上の静電パターンは、例えば、標的分子における複数の分極ローション同士が近接プローブのサイズに比べてかなり近接しているために、その近接プローブが多数の分極ロケーションに影響を与える程度のより強い電位を1つの近接プローブに使用することによって、その近接プローブがそれら多数の特定の分極ロケーションを指すように使用することも可能である。更に、近接プローブ・アレイ・ブロック上の静電パターンは、例えば、標的分子の形状、分極ロケーションの極性の程度、および近接プローブ・アレイ・ブロックの形状を考慮すると、複数の近接プローブが標的分子上の単一且つ独得の分極ロケーションに向けられることを意図して使用されることも可能である。上記の各ケースは、近接プローブ・アレイ・ブロックにおける単一の静電パターン内で同時に使用されてもよい。
【0038】
標的分子が多数の分極ロケーションを有し得るという事実を考慮すると、近接プローブ・アレイ・ブロック上の静電パターンが、標的分子における分極ロケーションの一部だけを標的にし得るということに留意されたい。場合によっては、標的分子の分極ロケーションの一部が標的分子を捕捉するに十分であると思われる。また、場合によっては、標的分子の形状が、標的分子の或る分極ロケーションの引き付けを実質上妨げることもある。以下では、近接プローブ・アレイ・ブロック上の静電パターンによって引き付けのポイントであるとして指定される標的分子上の分極ロケーションのセットにおける各分極ロケーションは標的分子の「捕捉ポイント」と呼ばれる。
【0039】
次に図7を参照すると、本発明の分子操作システムの具現化における一次元の近接プローブ・アレイ・ブロックの前縁部分が示される。この図では、近接プローブ・アレイ・ブロックにおける近接プローブの先端部は示されていない。その代わり、各近接プローブは、それぞれの先端部においてアクティブにされる静電荷によって表わされる。このように、近接プローブ・アレイは、アクティブにされた電位に対応する静電荷パターン、例えば、静電パターン702を表わすと云える。
【0040】
図8を参照すると、本発明に実施例に従って分極ロケーションを含む電子雲を示す標的分子を捕捉しようとするための静電パターンを表わす二次元の近接プローブ・アレイが示される。図8においては、分子の電子雲806は、分極ロケーションの三次元配列を示す。実質的に直線状に配列された近接プローブを有する図6の一次元近接プローブ・アレイ・ブロックとは対称的に、二次元近接プローブ・アレイ・ブロック802は領域全体にわたって配列される近接プローブを含み、それによって、すべてが複雑な電子雲を伴う三次元対象物である分子を捕捉するという難しい課題を処理する。好適な実施例では、近接プローブは、それらの近接プローブ間の一様なサイズのギャップを有し、領域全体にわたって等間隔に設けられるが、近接プローブ・アレイ・ブロックは、近接プローブが、場合によっては近接プローブ・アレイ・ブロックの基板に対する複雑な形状に加えて標的分子の形状にも適合するべく、領域全体にわたって、種々のサイズを有する種々のロケーションに配列されるように製造されてもよい。図8に示された本発明の実施例では、センサ・プローブ804のようなセンサが近接プローブ・アレイ・ブロック802における近接プローブ間に散在している。これらのセンサは、以下で更に詳しく説明される。センサ・プローブは一次元近接プローブ・アレイ・ブロックにおいても使用することが可能であるということに留意されたい。しかし、本発明の種々に実施例はセンサ・プローブを含んでもよく、或いは含まなくてもよい。
【0041】
近接プローブがそれ自身のディテクタとしても作用し得るということ、即ち、標的分子が捕捉された後、標的分子の捕捉ポイントが近接プローブの先端部の電気的特性に影響を与えることがあるということに留意されたい。所与の近接プローブの導電性ワイヤ/リード線を通る電流を分析することによって、または、例えば、標的分子の捕捉前、捕捉中、および捕捉後に導電性ワイヤ/リード線に生じる電圧および/または電流の変動を分析することによって、近接プローブの先端が捕捉分子に近接しているかどうか、望ましくは、捕捉後に標的分子の捕捉ポイントに近接しているかどうかを見極めることが可能となる。
【0042】
次に図9を参照すると、本発明の分子操作システムの具現化における二次元近接プローブ・アレイ・ブロックの前縁部分が示される。図7に示されたものと同様に、近接プローブ・アレイ・ブロックにおける近接プローブの先端部は図示されていない。その代わり、各近接プローブは、各近接プローブのそれぞれの先端部においてアクティブにされる静電荷によって表わされる。一次元近接プローブ・アレイ・ブロックを示す図7とは対照的に、図9は、静電パターン902を表わす二次元近接プローブ・アレイ・ブロックを示す。
【0043】
図9に示される実施例では、二次元近接プローブ・アレイ・ブロックにおける近接プローブの一様な配列が、図8において表わされる静電パターンの一様な配列によって反映される。図9に示される例では、二次元近接プローブ・アレイの各行は一次元近接プローブ・アレイと見なすことができる。図9における二次元近接プローブ・アレイは行904、906、908、および910を含む。この例では、一次元近接プローブ・アレイの軸とは異なる軸に沿って整列している一次元近接プローブ・アレイのセットが二次元近接プローブ・アレイを含む。例えば、二次元近接プローブ・アレイは一次元近接プローブ・アレイのセットを堆積することによって形成することが可能である。
【0044】
しかし、二次元近接プローブ・アレイにおける一次元近接プローブ・アレイの各々は必ずしも同じ形状を共用しない。例えば、異なる近接プローブ・アレイは異なるプローブ間ギャップまたは間隔を有することがある。更に、上述のように、近接プローブは、標的分子の形状に適合するように可変ギャップ・サイズを有する種々のロケーションにおいて配列することが可能であり、二次元近接プローブ・アレイは異なる形状を有することが可能である。これらの実施例では、二次元近接プローブ・アレイ・ブロックにおける近接プローブの一様でない配列が、図9には示されていない静電パターンの非一様な配列によって反映されるであろう。
【0045】
次に図10を参照すると、本発明の分子操作システムの具現化において捕捉分子の電子雲に面する静電パターンを表わす二次元近接プローブ・アレイの単一行が示される。図10は図6と同じであるが、図示された一次元近接プローブ・アレイ・ブロックは二次元近接プローブ・アレイ・ブロックを集合的に含む一次元近接プローブ・アレイ・ブロックのセットにおける単なる1つの行であるという点で図6とは異なる。換言すれば、図10は、図8に示されたような二次元近接プローブ・アレイ・ブロックの1つの行1002の水平方向切取りスライスまたは概観を表わす。更に詳しく云えば、二次元近接プローブ・アレイの単一スライス1002が図9に示された行906に対応する。分子の電子雲1004は、図8に示された分子の電子雲806のような三次元分子の電子雲の水平切取りスライスまたは概観を表わす。
【0046】
図11を参照すると、本発明の実施例に従って標的分子を捕捉するために使用することができる一対の並置された二次元近接プローブ・アレイ・ブロックが示される。図1に関する説明は、単一のプログラマブル分子操作システムにおいて複数の近接プローブ・アレイ・ブロックを使用することが可能であることを述べている。図11および図12は、複数の近接プローブ・アレイ・ブロックを使用するための2つの異なる構成を示す。図11は並置された近接プローブ・アレイ・ブロックを示し、一方、図12は対抗または対面する近接プローブ・アレイ・ブロックを示す。いずれの場合も、分子操作システムは、三次元配列の近接プローブを有するものとして説明することができる。より多くの近接プローブ・アレイ・ブロックを使用して、より大きい、より複雑な三次元構成の近接プローブを得ることが可能である。しかし、分子操作システムは、少なくとも1つの近接プローブ・アレイ・ブロックと共に使用されるように構成される1つまたは複数の個々の近接プローブを含み得ることに留意されたい。近接プローブ・アレイ・ブロックに関する対抗位置または並置位置における個々の近接プローブを個々に操作することも可能である。
【0047】
図11は、ブロック間ギャップ1106によって隔てられた一対の並置された二次元近接プローブ・アレイ・ブロック1102および1104を示す。ブロック間ギャップ1106のサイズは、例えば、図1に示された制御機構を使用して変更することが可能であり、操作員による調節が可能であってもよい。更に詳しく云えば、近接プローブ・アレイ・ブロック1102および1104の各々が他の近接プローブ・アレイ・ブロックとは無関係に移動することも可能である。単一の静電パターンが各近接プローブ・アレイによって共用されてもよく、或いは各近接プローブ・アレイが独得の静電パターンを表わすように2つの静電パターンが使用されてもよい。近接プローブ・アレイ・ブロック1102および1104は、単一の標的分子を捕捉するように、または2つの独得の標的分子を捕捉するように、または2つの同じ標的分子を捕捉するように、操作されてもよい。
【0048】
図12を参照すると、本発明の実施例に従って標的分子を捕捉するために使用される一対の対抗する二次元近接プローブ・アレイ・ブロックが示される。図12は、ブロック間ギャップ1206によって隔てられた一対の二次元近接プローブ・アレイ・ブロック1202および1204の各々から1つの行を示す。図12は、図10に示された態様における2つの完全な二次元の近接プローブ・アレイ・ブロックの平面図、または水平切取り図またはスライスを示すものと仮定する。ブロック間ギャップ1206のサイズは、例えば、図1に示された制御機構を使用して変更することが可能であり、操作員による変更が可能であってもよい。更に詳しく云えば、近接プローブ・アレイ・ブロック1202および1204の各々は、近接プローブ・アレイ・ブロック1202および1204が他の近接プローブ・アレイ・ブロックとは無関係に移動し得るように、アクチュエータ機構と固有に関連付けられてもよい。単一の静電パターンが各近接プローブ・アレイによって共用されてもよく、或いは各近接プローブ・アレイが独得の静電パターンを表わすように2つの静電パターンが使用されてもよい。近接プローブ・アレイ・ブロック1202および1204は、単一の標的分子を捕捉するように、または2つの独得の標的分子を捕捉するように、または2つの同様の標的分子を捕捉するように、動作することも可能である。図12に示された例では、単一の捕捉された分子が分子の電子雲1208の平面図或いは水平切取り図またはスライスによって表わされる。
【0049】
次に図13を参照すると、本発明の実施例に従って分子を操作するために近接プローブ・アレイを使用するためのプロセスのフローチャートが示される。これまでの図の説明は、分子を操作することが可能であることを述べているに過ぎないが、これらの図に関する説明の大多数の焦点は、近接プローブ・アレイが標的分子を捕捉するために使用される方法の説明に関連している。図13に示されるプロセスは、遂行される種々なタイプの分子操作を説明するための基礎を提供する。それらの分子操作に関しては更に詳細に後述される。
【0050】
プロセスは、1つまたは複数の近接プローブ・アレイに対する静電パターンの選択によって開始する(ステップ1302)。その選択は、分子操作システムのユーザからの入力に従って遂行することが可能であり、或いは、自動的におよびプログラム可能に、望ましくは、操作手順のオペレーションを案内する構成パラメータに従って遂行することも可能である。この場合、1つまたは複数の構成パラメータがユーザによって選択されている。
【0051】
次に、近接プローブ・アレイにおける各近接プローブ上の電位をアクティブにすることまたはアクティブにしないことによって、近接プローブ・アレイがその選択された静電パターンに従って付勢される(ステップ1304)。なお、このように電位をアクティブにするか否かは、各近接プローブに対応する静電パターン内の位置により指示される。静電パターンは、分子操作システムにおいて配線されてもよく、或いは静電パターンを1つまたは複数のデータ構造またはメモリ内にデータとして記憶することによってソフトウェアで管理されてもよい。例えば、電子パターンのデータベースが、図1に示されたコンピュータ108にとってアクセス可能なものであってもよい。
【0052】
簡単な場合、静電パターンを表わすデータ構造内のデータ・フラッグによって各近接プローブを表わすことも可能である。データ構造内のデータ・フラッグの位置は近接プローブ・アレイにおける近接プローブの位置に1対1の関係で対応する。データ・フラッグは、次のような4つの値を可能にする2つの2進ビットを使用して具現化し得る。第1の値は、対応する近接プローブに正の電位が印加されなければならないことを表わす。第2の値は、対応する近接プローブに負の電位が印加されなければならないことを表わす。第3の値は、対応する近接プローブが電位を有するべきではないこと、即ち、接地されるべきであることを表わす。第4の値は、近接プローブに印加される電位が正または負のいずれの電位も有し得る場合の無指定値を表してもよいであろう。データ・フラッグは、例えば、図1に示された静電コントローラ114を使って、必要なときに、対応する近接プローブに印加されるべき電圧に対してマップされるであろう。
【0053】
これとは別に、各近接プローブは、1つまたは複数のメモリに記憶される1つまたは複数のデータベース・ファイル内のレコードによって表わすことも可能である。各データベース・ファイルは静電パターンを表わすことができる。各レコードは、各近接プローブと関連する種々の物理特性または物理変数を個々に制御するために使用される種々のパラメータに対する複数のフィールドを含む。例えば、種々の近接プローブによって標的とされる種々の捕捉ポイントに従って種々の近接プローブ上に種々の電圧を印加することは有益であるし、その電圧に関する値は対応するレコード内に単にパラメータの1つとして記憶されるであろう。このタイプのデータベース・ファイルにおけるレコードの位置は近接プローブ・アレイにおける近接プローブの位置と1対1の関係で対応し得る。これとは別に、レコードは、そのレコードが対応する近接プローブの相対的位置を表わすための識別座標を含んでもよい。レコードは、例えば、図1に示された静電コントローラ114を介して対応する近接プローブに印加されるべき電圧および/または他のタイプの物理変数に、必要時に、マップされるであろう。
【0054】
近接プローブ・アレイを付勢した後、近接プローブ・アレイ・ブロックが、反応容器内の標的分子、その標的分子をガス状態で含む大量の低温低圧の気体、その標的分子を液体状態で含む反応槽または容器内の大量の液体、或いはその標的分子を含む被膜又は層、に与えられる。なお、その被膜または層は表面又は基板上に付着されたものである。1つ又は複数の近接プローブのセットが静電荷パターンをその標的分子に与えられ、静電荷が標的分子上の分極ロケーション又は捕捉ポイントを引き付けるであろう。
【0055】
或る時点で、分子が近接プローブ・アレイによって捕捉されるであろう(ステップ1306)。その捕捉分子が、操作員が操作することを望んでいた標的分子あるということを保証するために,任意選択的なチェックが行われてもよい(ステップ1308)。分子の捕捉は、近接プローブ・アレイに組み込まれたまたは近接プローブ・アレイに接続された感知ディテクタを使用して任意選択的に検出することが可能である。更に、捕捉分子は、近接プローブ・アレイによってたまたま捕捉される無作為の分子ではなく標的分子の一例であるとして任意選択的に確認することも可能である。図8を再び参照すると、近接プローブ・アレイ・ブロック802は近接プローブ間に散在するセンサ804を有する。センサは必ずしも近接プローブと同じ形態又は構造を有するのではなく、種々のタイプのセンサが近接プローブ・アレイ・ブロックに組み込まれてもよい。例えば、前述の米国特許第6,507,197号は、静電力顕微鏡と連動した静電力検出器の使用を開示している。標的分子の捕捉を検出するために、捕捉分子に向けられたレーザ・ビームからの反射光に関する分光学的技術を使用するというような他の技術を使用することも可能である。更に、前述のように、近接プローブはそれ自身の検出器としても作用してもよい。
【0056】
再び図13を参照すると、標的分子が捕捉された場合、その捕捉分子を操作するために、複数の近接プローブ・アレイ・ブロックおよび/または複数の捕捉分子を使用して、プログラムされた手順または手操作のオペレーションが行われる(ステップ1310)。操作が行われた後、または、ステップ1308において捕捉分子が標的分子ではなかった場合、近接プローブ・アレイ・ブロックは、例えば、事前に帯電/付勢された近接プローブに対する印加電圧を取り消すことによって、捕捉分子を解放するために滅勢される(ステップ1312)。操作された分子は、更に詳細に後述されるように、その後の分子操作が望ましい場合にはステップ1312を省略することによって近接プローブ・アレイ・ブロックにより任意選択的に保持されてもよい。更なる操作手順が行われるべきか否かに関する決定が行われ(ステップ1314)、それが肯定される場合、プロセスは他の分子を捕捉および操作するためにステップ1302にブランチする。
【0057】
次に図14を参照すると、表面上に被膜として付着される標的分子のセットの1つを捕捉および保持しようとする近接プローブ・アレイ・ブロックが示される。表面/基板1402が、分子の電子雲1404〜1410によって表わされる標的分子の被膜を支持する。近接プローブ・アレイ・ブロック1412は、分子の電子雲1408によって表わされる標的分子を捕捉しようとするために標的分子の被膜上の1つの位置に動かされる。近接プローブ・アレイ・ブロック1412と標的分子との間のギャップが所定の値よりも低いとき、標的分子は、標的分子と被膜内の他の分子との間の引力よりも大きい且つ標的分子をその下の表面に向けて引っ張るように作用する重力よりも大きい静電力によって近接プローブ・アレイ・ブロックに引き付けられるであろう。その場合、標的分子を、近接プローブ・アレイ・ブロックによって捕捉されるものとして説明することができるであろう。その近接プローブ・アレイ・ブロックは、捕捉分子が近接プローブ・アレイによって解放されるまで、または近接プローブ・アレイから捕捉分子に打ち当たるように作用する気体状態における比較的高エネルギの分子との衝突のようなその捕捉分子の解放を生じさせる事態に直面するまで、その捕捉分子を保持するであろう。
【0058】
前述の各図は、本発明の実施例に従って分子を捕捉および操作するために使用される構造体の種々の例を示している。図13は、分子を操作するためにそれらの構造体を使用するためのプロセスを示す。ステップ1310は、捕捉分子を操作するためのプログラムされた手順または手操作オペレーションが行われるプロセス・ステップに関するものである。しかし、前述の各図は、残りの図に関して更に詳細に後述される本発明の分子操作システムに従って分子が操作される種々の方法の詳細に示していない。「操作(manipulation)」という用語は、伸張(stretching)、加圧(stressing)、せん断(shearing)、修正(modifying)、撓み(bending)、捻り(twisting)、結合(combing)、結束(binding)、融合(fusing)、一体化(uniting)、引裂き(ripping)、分断(breaking)、描画(rendering)、または、場合によって1つの分子或いは2つ以上の分子に関する物理的変形に関連したその他の作用を含むがそれに限定されない数多くの種々のタイプの作用を意味するということに留意されたい。
【0059】
図15〜図18は、本発明の実施例に従って、短い期間にわたって静電パターンをシフトするために近接プローブ・アレイを使用する方法を示す図である。上述のように、近接プローブ・アレイにおける捕捉分子は、近接プローブ・アレイ上の静電パターンによって発生された静電力を維持することによって所定位置に保持される。近接プローブ・アレイを使用して捕捉分子を操作するための技術の1つとして、捕捉分子を保持するために使用される同じ静電力が、静電パターンを修正することによって捕捉分子を移動させるためにも使用される。
【0060】
静電パターン1502は、図7に示された静電パターン702と類似している。比較的短い期間の間に、静電パターン1502を静電パターン1504に修正することが可能である。その修正の期間は、例えば、図1に示されたコンピュータ108上で実行されるソフトウェア・アプリケーションによって設定し得るパラメータであってもよい。
【0061】
静電パターンの修正は種々の方法で行うことが可能である。本明細書において提供される例が網羅的なリストを含むものと解するべきではない。1つの実施例では、静電パターンが、コンピュータ・メモリにおけるビット・シフトに類似した方法で修正期間中にシフトされる。この場合、完全なシフト・オペレーションは、図16に示されるように、一連のわずかなシフト・オペレーション、望ましくは個々のビット・シフト、を使用して一連の短い期間に生じる。その短い期間のうちの1つの間、付勢状態にあるかまたは付勢状態にない、即ち、静電荷を示しているかまたは示していない近接プローブの第1サブセットにおける各近接プローブが隣接の近接プローブの状態を受け入れる。付勢状態にあるかまたは付勢状態にない近接プローブの第2サブセットが隣接の近接プローブの状態を受け入れる。静電パターンの修正を生じるシフト・オペレーション全体を完成するために、必要に応じて、短いシフト・オペレーションが何回も繰り返される。
【0062】
静電パターンを修正するためのもう1つの方法は、上述のような一連のわずかな隣接のシフトと類似しているが、この代替の例では、わずかなシフト・オペレーションは、類似の個別的なデジタル・オペレーションではなく更に類似のアナログ・オペレーションであると見なされる。この第2の例では、近接プローブの状態が上述の方法と類似した方法で空間的に変化する。近接プローブの第1セットの状態は、近接プローブの第2セットの状態をも修正しながら修正される。その場合、近接プローブの第2セットにおける近接プローブの各々が近接プローブの第1セットにおける近接プローブに隣接している。これとは別に、近接プローブの状態は必ずしも隣接していないが、比較的近接している。その場合、距離も設定可能である。
【0063】
しかし、この第2の例では、近接プローブの状態が種々の方法で一時的にシフトされる。この第2の例では、近接プローブの状態は、例えば、図17における関数1506によって示されるように、不連続な態様で唐突に行われるのではなく、関数に従って徐々にシフトされる。その関数は、オペレータによって手動的にまたは分子操作システムによってプログラム的に選択され、その関数に対するパラメータは設定可能であってもよい。従って、わずかな期間の1つの間、或る近接プローブにおける電位が徐々に減少し、一方、他の近接プローブにおける電位が徐々に上昇する。例えば、図17における関数1506は、第1近接プローブにおける電圧を表し、図18における関数1508は第1近接プローブに隣接した第2近接プローブにおける電圧を表わす。図17および図18は、同じ期間を表わす。第1近接プローブにおける電圧が減少しつつあるとき、第2近接プローブにおける電圧は上昇しつつある。静電パターンの修正を生じるシフト・オペレーション全体を完了させるために、短いシフト・オペレーションが必要な回数だけ繰り返される。
【0064】
上記のように、種々のタイプの操作が存在する。これらの種々のタイプの操作は、静電パターンを種々の方法で修正することによって遂行することが可能である。
【0065】
次に図19を参照すると、本発明の実施例従って標的分子を動かすために近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する方法が示される。図19は、分子操作のタイプの1つとして移動オペレーションを遂行するために、例えば、図15〜図17に関して上述した例を使って、近接プローブ・アレイ・ブロック上の静電パターン全体がシフトされる例を示す。静電パターン全体がシフトされるとき、静電力のパターン全体もシフトされる。静電力を及ぼしている近接プローブによって引き付けられる分極ロケーション、即ち、捕捉ポイントを捕捉分子が有する場合、その捕捉ポイントは、シフト・オペレーションの間、それらの近接プローブに引き付けられた状態にあり、捕捉ポイントはシフト・オペレーション中でも移動する。従って、捕捉分子は、静電パターンをシフトすることによって近接プローブ・アレイの周りを一体的に移動し得る。
【0066】
図6に示されたものと同様に、近接プローブ・アレイ・ブロック1602は、静電パターン1604を示すように或る電位でもって付勢された近接プローブのセットを含む。捕捉分子は分子の電子雲1606を有し、その電子雲は、分子が静電パターン1608を表わすような極性を示す固有の捕捉ポイントを有する。或る時点で、分子は、それぞれの静電パターンが揃うように近接プローブ・アレイ・ブロック1602に引き付けられるであろう。その分子は、例えば、図14に関して説明したように、近接プローブ・アレイ・ブロック1602によって捕捉されるであろう。
【0067】
その後の或る時点で、近接プローブ・アレイ・ブロック1602上の静電パターンの部分が静電パターン1610を形成するためにシフトされる。近接プローブ・アレイ・ブロック上の静電パターンがシフトされるとき、捕捉分子もシフトされるように、分子の電子雲1606における静電パターン1608によって表わされる捕捉ポイントが静電パターン1610に追従する。
【0068】
次に図20を参照すると、本発明の実施例に従って、標的分子を曲げるまたは撓めるために近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する方法が示される。図20は、分子の操作タイプの1つとして曲げオペレーションまたは撓めオペレーションを遂行するために近接プローブ・アレイ・ブロック上の静電パターンの一部分がシフトされる例を示す。静電パターン全体の一部分だけがシフトされるとき、静電力の一部分だけがシフトされる。捕捉分子の捕捉ポイントは、シフト・オペレーションの間、それぞれの近接プローブに引き付けられた状態にある。捕捉ポイントの一部分がシフト・オペレーション中に移動し、一方、捕捉ポイントの残りの部分は所定のロケーションに引き付けられた状態にある。従って、捕捉分子は、静電パターンの部分的シフトによって曲げられるかまたは撓められる。
【0069】
図20は図19と類似しており、同じ参照番号は同じ素子を指す。近接プローブ・アレイ・ブロック1602は、分子の電子雲1606を有する分子を捕捉した静電パターン1606を示し、その分子の電子雲は静電パターン1608によって表わされる捕捉ポイントを含む。
【0070】
その後の或る時点で、近接プローブ・アレイ・ブロック1602上の静電パターンの部分が静電パターン1612を作成するためにシフトされる。近接プローブ・アレイ上の静電パターンがシフトされるときに捕捉分子が伸張するように、分子の電子雲1606上の静電パターンによって表わされる捕捉ポイントが静電パターン1612に追従する。捕捉分子が曲げられる程度または撓められる程度は分子のタイプに多少は依存するであろう。
【0071】
次に図21を参照すると、本発明の実施例に従って標的分子の一部分をねじるまたはピボットするために近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する方法が示される。図21は、近接プローブ・アレイ・ブロック上の静電パターンの一部分が、操作タイプに1つとしてねじれまたはトルク・オペレーションを得るために1つの点の周りをシフトまたはピボットする例を示す。静電パターン全体の一部分だけがシフトされるとき、静電力の一部分だけがシフトされ、上述のように、捕捉分子が静電パターンの部分的シフトでもって曲がるかまたは撓む。しかし、静電パターンを単純な線形態様でシフトする代わりに、静電パターンが軸の周りに回転してもよい。この場合も、捕捉分子の捕捉ポイントがシフト動作中それぞれの近接プローブに引き付けられた状態にあり、捕捉ポイントの一部分がシフト動作中に回転し、一方、捕捉ポイントの残り部分は所定ロケーションに引き付けられた状態にある。従って、捕捉分子は静電パターンの部分的シフトによってねじれる。
【0072】
図21は図9に類似している。いずれも近接プローブ・アレイ・ブロックにおける二次元の静電パターンを示す。図21上の静電パターンは部分1616および1618から成る。その後の或る時点で、静電パターンの部分1616は時計方向に90度回転して静電パターンの部分1620を形成し、一方、部分1618は無修正の状態にある。静電パターンが事前に分子を捕捉しているものと仮定すると、捕捉分子上の捕捉ポイントのサブセットは、それがシフトされるとき、近接プローブ・アレイ・ブロック上の静電パターンがシフトされるときに捕捉分子の一部分がねじれるように静電パターン1616に追従する。
【0073】
それとは別に、静電パターンは2つの分子を事前に捕捉していることもある。それらのうちの第1の分子は静電パターンの部分1616によって保持され、一方、第2の分子は静電パターンの部分1618によって保持される。その後の或る時点で、静電パターンの部分1620を形成するために静電パターンのシフト部分1616が第1の分子を回転するであろう。部分1618はシフトしない状態にあるので、第2の分子は動かない状態にある。
【0074】
次に図22を参照すると、本発明の実施例に従って標的分子を分断するために近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する方法が示される。図22は、静電パターンの第1の部分がシフトされ、一方、静電パターンの第2の部分が逆方向または異なる方向にシフトされるという例を示す。このオペレーションは、図15および図16に示されたオペレーションと類似している。この場合も、捕捉分子の捕捉ポイントがシフト動作中それぞれの近接プローブに引き付けられた状態にある。捕捉ポイントの第1のサブセットが静電パターンの第1部分と共にシフトされ、一方、近接プローブの第2のサブセットが静電パターンの第2部分と共にシフトされる。従って、捕捉分子は電子パターンのシフト部分と共に曲がるかまたは撓み、それらの分子内の原子相互間の化学結合における応力が十分に大きい場合、その化学結合は分断するであろう。
【0075】
図22は図19と類似しており、同じ参照番号は同じ素子を指す。近接プローブ・アレイ・ブロック1602は近接プローブのセットを含み、それらの近接プローブは近接プローブが静電パターン1604を示すように或る電位でもって付勢されている。捕捉分子は分子の電子雲を有し、その電子雲は、分子が静電パターン1608を表わすような分極を示す固有の捕捉ポイントを有する。或る時点で、分子は、それぞれの静電パターンが揃うように近接プローブ・アレイ・ブロック1602に引き付けられるであろう。
【0076】
その後の或る時点で、近接プローブ・アレイ・ブロック1602上の静電パターンの部分が静電パターン1622を作成するためにシフトされ、捕捉分子が静電パターンのシフト部分と共に曲がるかまたは撓む。それらの分子内の原子相互間の化学結合における応力が十分に大きい場合、その化学結合は解かれ、それによって、捕捉分子を、分子の電子雲1624および1626によって表わされる2つの異なる分子に分離または分断するであろう。そこで、近接プローブ・アレイは、適切な近接プローブにおける電圧を終わらせることによって滅勢され、捕捉分子は解放されるであろう。
【0077】
分離された分子は元の分子の構成片とはまったく異なる構造を有することがあり、それによって異なる双極子モーメントを発生することがあるので、分離された分子における分極位置は元の分子における分極位置とは異なることがあるということに留意されたい。従って、分離オペレーションの直後に、静電パターン1622が分子の電子雲1624および1626を反発することが起り得る。
【0078】
静電パターン1604がシフト・オペレーションのために別々の部分に分割される方法は構成パラメータとして制御され得るし、それによって分子操作システムが捕捉分子内で特定の化学結合を標的とすることを可能にする。捕捉分子が大きな距離にわたって曲げられるかまたは撓められるときに化学結合における応力が増大する場合、大きい距離であっても静電パターンの一部分しかシフトしないことによって同様の結果が得られることがあることに留意されたい。
【0079】
次に図23を参照すると、本発明の実施例に従って2つの標的分子を結合することによって1つの分子を作成するために近接プローブ・アレイを利用する方法が示される。図22は分離オペレーションを示すが、図23は結合オペレーションを示す。従って、図23は、時間的な見方が反対であることを除けば図22と類似している。
【0080】
近接プローブ・アレイ・ブロック1702は、近接プローブが静電パターン1704を示すように或る電位でもって付勢されている近接プローブのセットを含む。分子の電子雲1706および1708によって、独得の捕捉分子が表わされる。捕捉分子は異なっているかもしれない。しかし、分子の電子雲1706および1708が異なって示されていても、電子雲全体が示されていないので、捕捉分子は同じであるかもしれない。
【0081】
その後の或る時点で、近接プローブ・アレイ・ブロック1704上の静電パターンの部分は静電パターン1710を生成するためにシフトされ、捕捉分子は、それが静電パターンのシフトした部分と共に移動するとき、近接状態にされる。捕捉分子が相互に或る程度の化学的親和性を有するものと仮定すると、分子の電子雲1712によって表わされる単一の捕捉分子を形成するように捕捉分子間に化学結合が作られる。しかる後、適切な近接プローブにおける電圧を終わらせることによって近接プローブ・アレイを滅勢することが可能であり、捕捉分子は解放されるであろう。
【0082】
捕捉分子は元の分子の構成上の構造とはまったく異なる構造を有することがあるので、捕捉分子における分極位置が元の分子における分極位置とは異なることがあり、それによってその生成された分子ではまったく異なる双極子モーメントを発生することがあるということに留意されたい。従って、静電パターン1710は結合オペレーションの直後に分子の電子雲1712を反発することがあり得る。
【0083】
次に図24を参照すると、本発明の実施例に従って2つの標的分子を結合することによって分子を作成するために複数の近接プローブ・アレイを使用するための方法が示される。図23は1つの近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する結合オペレーションを示すが、図24は2つの近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する結合オペレーションを示す。近接プローブ・アレイ・ブロック1802および1804は静電パターンによって付勢されている。分子の電子雲1806および1808によって2つの独得の捕捉分子が表わされる。
【0084】
その後の或る時点で、近接プローブ・アレイ・ブロック1804上の静電パターンの部分が、例えば、元の静電パターンをシフトすることによって、新たな静電パターンを生成するために修正され、捕捉分子が静電パターンのシフトした部分と共に移動するとき、捕捉分子は近接状態にされる。捕捉分子が相互に或る程度の化学的親和性を有するものと仮定すると、分子の電子雲1810によって表わされる単一の捕捉分子を形成するように捕捉分子間に化学結合が作られる。しかる後、適切な近接プローブにおける電圧を終わらせることによって近接プローブ・アレイを滅勢することが可能であり、捕捉分子は解放されるであろう。
【0085】
図15〜図24に関して説明された分子操作オペレーションは電気的手段のみを介して遂行される。更に詳しく云えば、分子操作オペレーションは、近接プローブ・アレイ上の静電パターンの修正のみを通して遂行される。しかし、別の分子操作オペレーションは機械的手段を通して遂行することが可能である。更に詳しく云えば、別の分子操作オペレーションは、残りの図に関して更に詳しく説明するように、近接プローブの先端部の移動によっておよび/または近接プローブ・アレイ・ブロックの移動によって遂行することが可能である。
【0086】
次に図25を参照すると、本発明の実施例に従って捕捉分子を分離するために先端部が撓む近接プローブ・アレイ上の近接プローブの端部における一対の感知レバー型先端部が示される。先端部1902は、近接プローブ・アレイにおける他の近接プローブと共に集成された近接プローブの端部である。端部1904は隣接する近接プローブの端部である。近接プローブ・アレイ・ブロックは、分子の電子雲1906によって表わされる分子を既に捕捉している。先端部1902および1904は、捕捉分子の捕捉ポイントにおいて静電力を及ぼしている。
【0087】
その後の時点で、先端部1902および1904のカンチレバー部分が横方向に、しかし反対向きに撓むように電子回路を通して制御される。捕捉分子の捕捉ポイントは、撓み動作中それぞれの先端部に引き付けられた状態にあり、捕捉分子は撓んだ先端部と共に曲がるまたは撓む。分子内の原子相互間の化学結合における応力が十分に大きい場合、化学結合は解かれ、その結果、分子の電子雲1908および1910によって表わされる捕捉分子からの2つの分子の形成が生じる。そこで、先端部は、適切な近接プローブにおける電圧を終わらせることによって滅勢される。このように、図25に示される分離動作のような種々の分子操作オペレーションが近接プローブのセットのカンチレバー型先端部の動きによって遂行される。この方法において使用される近接プローブの数は捕捉分子の形状によって変わり得る。
【0088】
次に図26を参照すると、本発明の実施例に従って捕捉分子を分離するために近接プローブ・アレイ・ブロックを移動する一対の並置された近接プローブ・アレイ・ブロックが示される。上述のように、1つまたは複数の分子を同時に操作するために、複数の近接プローブ・アレイ・ブロックが使用される。近接プローブ・アレイ・ブロック2002および2004は、図11に示された方法と同様の方法でブロック間ギャップ2006だけ分離されている。近接プローブ・アレイ・ブロック2002および2004は、分子の電子雲2008によって表わされる単一の分子を既に捕捉している。
【0089】
その後の時点で、近接プローブ・アレイ・ブロック2002および2004は、横方向にしかし反対向きに移動するように電子回路を通して制御される。その電子回路は、近接プローブ・アレイ・ブロック2002および2004の間のブロック間ギャップを拡大する。それは、ブロック間ギャップ2010として示される。これとは別に、近接プローブ・アレイ・ブロックは、種々の方向に変形または回転することが可能である。捕捉分子の捕捉ポイントは、移動動作中近接プローブを引き付けた状態にあり、捕捉分子は移動する近接プローブと共に伸張する。その分子内の原子相互間の化学結合における応力が十分に大きい場合、化学結合は解離し、その結果、捕捉分子からの2つの分子の形成を生じる。それは、分子の電子雲2012および2014によって表わされる。しかる後、近接プローブは、適切な近接プローブにおける電圧を終わらせることによって滅勢され得るし、捕捉分子は解放されるであろう。このように、分子操作オペレーション、例えば、分離は近接プローブ・アレイ・ブロックのセットの移動によって遂行することが可能である。この方法において使用される近接プローブ・アレイ・ブロックの数は捕捉分子の形状によって変わり得る。
【0090】
次に図27を参照すると、本発明の実施例に従って捕捉分子を分離するために近接プローブ・アレイ・ブロックを移動する一対の対向した近接プローブ・アレイ・ブロックが示される。図26に示された方法と同様の方法で、一対の近接プローブ・アレイ・ブロックが単一の捕捉分子を保持している。近接プローブ・アレイ・ブロック2102および2104が、図12に示された方法と同様の方法でブロック間ギャップだけ隔てられている。近接プローブ・アレイ・ブロック2102および2104は、分子の電子雲2106によって表わされる単一の分子を既に捕捉している。図26は、捕捉分子を分裂させるものとして説明し得る分子操作オペレーションを示すが、図27は、捕捉分子におけるせん断オペレーションようなものとして説明し得る分子操作オペレーションを示す。
【0091】
その後の時点で、近接プローブ・アレイ・ブロック2102および2104は、横方向にしかし反対向きに移動するように電子回路を通して制御される。それとは別の方法では、近接プローブ・アレイ・ブロックは種々の方向に変形および回転することができる。捕捉分子の捕捉ポイントは、移動動作中、近接プローブを引き付けた状態にあり、捕捉分子は移動する捕捉分子と共に伸張する。分子内の原子相互間の化学結合における応力が十分に大きい場合、化学結合は解離するであろう。その結果、捕捉分子からの、分子の電子雲2110および2112によって表わされる、2つの分子の形成が生じる。それは。しかる後、近接プローブは、適切な近接プローブにおける電圧を終わらせることによって滅勢され、捕捉分子を解放することが可能である。このように、分子操作オペレーション、例えば、せん断は近接プローブ・アレイ・ブロックのセットの移動によって遂行され得る。この方法で使用される近接プローブ・アレイ・ブロックの数は捕捉分子の形状によって変わり得る。
【0092】
次に図28を参照すると、本発明の実施例に従って捕捉分子を撓めるために近接プローブ・アレイ・ブロックの1つが移動する一対の対向する近接プローブ・アレイ・ブロックが示される。図27に示された方法と同様の方法で、一対の近接プローブ・アレイ・ブロックが単一の捕捉分子を保持している。近接プローブ・アレイ・ブロック2202および2204は、図12に示された方法と同様の方法でブロック間ギャップによって隔てられている。近接プローブ・アレイ・ブロック2202および2204は、分子の電子雲2206によって表わされる単一の分子を既に捕捉している。
【0093】
その後の時点で、近接プローブ・アレイ・ブロック2204は、変形および回転するように電子回路を通して制御される。捕捉分子の捕捉ポイントは、操作オペレーション中それらの近接プローブに引き付けられた状態にあり、捕捉分子は移動する捕捉分子と共に伸張し、それによって捕捉分子に異なる形状を与える。
【0094】
近接プローブが付勢する前に、種々の他のオペレーションが遂行され得る。例えば、異なる捕捉分子を保持する他の近接プローブ・アレイ・ブロックは、撓んだ形状の分子の電子雲2206と近接状態にされ、それによって、2つの捕捉分子が近接状態にあって正規の形状を保っている場合には生じない化学反応がそれらの2つの捕捉分子の間で生じることを可能にする。
【0095】
捕捉分子が撓んだ形状を有していても、遂行される別のオペレーションは、その捕捉分子を近接プローブ・アレイから素早く解放することになるであろう。解放時における撓んだ形状を考えると、捕捉分子の静止形状が、それが以前に捕捉された時に有していた静止形状とは異なるように、その捕捉分子は構造を変更することが可能である。その場合、新たに形成された分子の特性を研究することが可能であろう。例えば、蛋白質の分子をその解放後に異なる形に折りたたみことが可能であり、その新たに生成された蛋白質の特性を研究することも可能であろう。
【0096】
次に図29を参照すると、本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックが自立型の修正素子を有する標的分子を操作するために近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する方法が示される。図29は以下のような点で図20に類似している。近接プローブ・アレイ・ブロック2302は静電パターン2304を提示し、その静電パターンは、静電パターン2308によって表わされる捕捉ポイントを含む分子の電子雲2306を持った分子を捕捉している。その後の或る時点で、近接プローブ・アレイ・ブロック2302上の静電パターンは、静電パターン2310を形成するために修正される。分子の電子雲2306上の静電パターン2312によって表わされる捕捉ポイントは、近接プローブ・アレイ・ブロック上の静電パターンが修正されるとき、捕捉分子が伸張または細長くされるように静電パターン2310に追従する。
【0097】
しかし、図29は、次の点で図20とは異なる。図20は近接プローブ・アレイ・ブロックに表わされる静電パターンが、近接プローブによって与えられる静電荷のパターンをシフトすることによって修正される図を示しているが、図29は、近接プローブ・アレイ・ブロックによって与えられる静電パターンを修正するためには近接プローブ・アレイ・ブロックの構造または形状が修正される例を示している。図29に示される例では、近接プローブ・アレイ・ブロック2302が、その近接プローブ・アレイ・ブロック2302の形状または構造を変更するために、例えば、図1に示されたコンポーネントによって制御される自立型の素子2314を有する。上述のように、近接プローブ・アレイ・ブロックにおける近接プローブ間のプローブ間ギャップまたは間隔は変り得る。この例では、近接プローブのセットにおける間隔またはギャップは自立型の素子2314によって占有される。素子2314は、そうするように制御されるとき、拡大または縮小し、それによって素子2314に並置された近接プローブのセットにおけるプローブ間ギャップまたは間隔を増加または減少させる。素子2314が拡大するとき、並置された近接プローブが移動し、それらのプローブによって与えられた静電パターンが修正される。この例では、静電パターンの一部分が横方向に移動する。プローブが移動するとき、捕捉分子が操作される。
【0098】
素子2314はマイクロ・メカニカル構造、ナノ・メカニカル構造、または電子制御に応答する何らかの他の構造であってもよい。それとは別に、近接プローブ・アレイ・ブロック内の近接プローブに対する導電性ワイヤまたはリードが絶縁されているものと仮定すると、素子2314は、電気活性材料に電流を供給することによって伸張し、縮小し、または形状を変更する、或いは形状記憶装置を示す電気活性ポリマまたは他の電気活性材料を含み得る。電気活性材料が拡大または縮小するとき、プローブ間ギャップまたは間隔が拡大または縮小され、それによって、標的分子を捕捉するためにまたは捕捉分子の所望の操作を生じさせるためには、標的分子の構造に適合するように基板における融通性を与える。1つの実施例では、種々の部分が個々に制御可能であるように、近接プローブ・アレイ・ブロックの基板の多くの部分が電気活性材料を含む。
【0099】
次に図30〜図38を参照すると、本発明の実施例に従って近接プローブ・アレイ・ブロックを使用する複数の分子操作を表わす一連の図が示される。図13は、単一の分子を操作するためのプロセスを単一のループで表わすフローチャートを示しているが、一連の複数の操作を連続的に遂行することも可能である。その一連の操作は、図13に示されるステップ1302〜1310を反復することによって、時には、その結果生じる分子を解放することが望ましくないときには必要に応じてステップ1312を省略することによって、行うことが可能である。図30〜図38は、図30において示される開始状態から図38における終了状態まで時間が進行する場合の一連の分子操作の例を示す。個々の近接プローブまたはそれらのそれぞれの領域は図30〜図38には表わされていない。
【0100】
図30は、近接プローブ・アレイ・ブロック2402の開始状態を示す。近接プローブ・アレイ・ブロック2402上の静電パターン2404が近接プローブのサブセットの輪郭によって表わされる、それらの近接プローブの或るものは標的分子を捕捉するための正および負の静電荷を表わす。帯電パターン2404は、残りの図において操作される第1標的分子を捕捉しているものと仮定する。
【0101】
図31は、その後の或る時点における近接プローブ・アレイ・ブロック2402を示す。近接プローブ・アレイ・ブロック2402上の静電パターン2406は、残りの図において操作される第2標的分子を捕捉しているものと仮定される近接プローブの他のサブセットの輪郭を表わす。
【0102】
図32は、その後の或る時点における近接プローブ・アレイ・ブロック2402を示す。近接プローブ・アレイ・ブロック2402上の静電パターン2408は近接プローブの別のサブセットの輪郭を表わす。この場合、第1捕捉分子および第2捕捉分子の間の化学反応に第3捕捉分子を形成させるために、静電パターン2406が静電パターン2404と近接状態にシフトされている。静電パターン2408は第3捕捉分子を保持するために使用される。
【0103】
図33は、その後の或る時点における近接プローブ・アレイ・ブロック2402を示す。近接プローブ・アレイ・ブロック2402上の静電パターン2410は、以下の図において操作される第4分子を捕捉したものと仮定される近接プローブの別のサブセットの輪郭を表わす。図34は、その後の或る時点における近接プローブ・アレイ・ブロック2402を示す。近接プローブ・アレイ・ブロック2402上の静電パターン2410は、それぞれの第3および第4捕捉分子の間の化学反応に、図35に示されるような第5捕捉分子を形成させるために、静電パターン2408と近接状態になるように移動および回転している。図35における場合、静電パターン2412は第4捕捉分子を保持するために使用される。
【0104】
図36は、その後の或る時点における近接プローブ・アレイ・ブロック2402を示す。図35に示された静電パターン2412の一部分がシフトされて、図36に示される静電パターン2414を形成する。それを行う場合、第4捕捉分子は、近接プローブ・アレイ・ブロック2402によって保持されている間に或る程度ねじれてしまったものと仮定する。図37は、その後の或る時点における近接プローブ・アレイ・ブロック2402を示す。図36に示された静電パターン2414の一部分が分離して、図37に示された静電パターン2416を形成し、図38に示されるその後の或る時点での次の分子操作に備える。図38は、シフトおよび回転してしまった状態の静電パターン2416の残り部分である静電パターン2418を示す。図36〜38に示されたオペレーションは、第5捕捉分子を形成するために或る所望のロケーションで第4捕捉分子を分離したものと仮定する。近接プローブ・アレイ・ブロック2402は、或る設定可能な期間の間第5捕捉分子を保持し得る。第5捕捉分子は、近接プローブ・アレイ・ブロック2402におけるその後の分子操作において使用することも可能であり、或いは、近接プローブ・アレイ・ブロック2402における検出器により観察し得る間、近接プローブ・アレイ・ブロック2402を含む反応容器内で未捕捉分子との化学反応を受けることも可能である。
【0105】
図30〜図38は、結果として複雑な分子の作成を生じる、種々の時点における複数の捕捉分子の操作シーケンスを示し、それによって、一般的な反応容器における自由浮動試薬との一般的な親和力を使って構成することができない複雑な分子を構成する。本発明のもう1つの利点は、滅多に見られない分子或いは見るのが非常に難しい分子を一般的な反応室において作る能力である。場合によっては、興味ある分子を反応室で作ることことが可能であるかもしれないが、非常に低い反応速度のために、その後の反応に対する標的とすることは非常に難しいかもしれない。本発明によって、興味ある分子を構成ずることが可能であり、その後、その後の反応を観察するためにまたはそれの一般的な化学的性質を観察するために、その分子を捕捉分子として保持することも可能である。
【0106】
逆の態様では、図30〜図38に示されたように分子を集成するためではなく、分子を分解するために、分子に関する一連の分子操作を行うことも可能である。分解手順の各ステップでは、できるだけ、分子操作によって捕捉分子に接触させられる1つまたは複数の捕捉触媒分子の支援によって、1つの捕捉分子を除去することが可能である。
【0107】
本発明は、大型分子の構成片を分析する場合にも有用であろう。例えば、大型分子は、図30〜38に示された形成プロセスを使用して近接プローブ・アレイ・ブロック上に作成されすることが可能であろう。しかし、その手順の終了時には、捕捉分子の構造は未知であるかもしれない。捕捉分子は、たとえ捕捉分子の構造およびそれの捕捉ポイントが未知であろうと、大きな経験的に見つかった静電パターンを使って近接プローブ・アレイ・ブロックにより保持されるかもしれない。一連の分子操作を大型の捕捉分子に受けさせることによって、大型の捕捉分子の小さい構成片をその後の分析のために順次除去することがあるであろう。そこで、構成片は、シフトされるかまたは近接プローブ・アレイ・ブロックの隔絶された部分に、或いは他の近接プローブ・アレイ・ブロックに移すことが可能であろうし、それによって構成片は、恐らく更なる分子操作を使ってもっと容易に分析することが可能であろう。構成片の構造を決定した後、大型の元の分子の構造を分解することが可能であろう。
【0108】
図面は、反応室が近接プローブ・アレイ・ブロックのそのような配列を1つしか含んでいないかのように、1つの分子操作または一連の分子操作を遂行するための1つまたは複数の近接プローブ・アレイ・ブロックの単一配列を示しているが、近接プローブ・アレイ・ブロックの複数配列(最も可能性が高いのは、近接プローブ・アレイ・ブロックの同一配列)が一連の分子操作を並行して行い得るし、それによって1つまたは複数の所望の分子の多様なコピーを生成するということに留意されたい。多数のそのような配列の近接プローブ・アレイ・ブロックが具現化される場合、大量の所望の分子を生産することができるであろう。この大量の所望の分子は、研究のため、工業的用途のため、または医療用途のためのような種々の目的で一般的な化学反応の範囲内で使用することできるであろう。
【0109】
更に、本発明の実施例は、一般的な化学作用の場合にはわずかな量しか生産し得ない分子の十分な量を生産するという利点があるであろう。例えば、その分子を含む反応に関する統計上の特性の研究にとってその量が少なすぎて有用ではない場合、本発明のこの実施例は特に有利であろう。更に、本発明は、一般的な化学作用で生産するには法外な費用のかかる十分な量の貴重な分子の生産にとって費用効率がよいであろう。
【0110】
本発明の利点は、上記の詳細な説明から見て明らかであろう。近接プローブを一次元、二次元、または三次元で構成することによって、線形的、面積的な、または立体的な近接プローブ・アレイ・ブロックを作ることも可能である。近接プローブ・アレイ・ブロックは、通常の技術を使用しても得ることができない複雑な化学作用または生物を得るために使用することも可能である。
【0111】
例えば、科学者は長い鎖状の分子を特定のポイントで切断することを望むことがある。科学者は、分子の電子雲によって固有に表わされる分子の静電特性を供給する静電パターンを示すように本発明のシステムをプログラムすることによって鎖状の分子を標的とすることが可能である。その場合、近接プローブ・アレイ・ブロックは、標的分子を含む溶液に晒される。最終的に、標的分子の1つが熱運動によって近接プローブ・アレイ・ブロックの付近を移動し、標的分子における相補的静電荷が近接プローブに引き付けられ、それによって捕捉分子が近接プローブ・アレイによって捕捉されることを可能にする。近接プローブ・アレイ・ブロックにおけるセンサは捕捉分子の存在を検知することができ、近接プローブ・アレイ・ブロックは、1つまたは複数の種々の操作アクションにおいて捕捉分子を操作するために使用することが可能である。例えば、近接プローブ上の静電パターンの部分は、シフトおよび/または回転することが可能であり、それによって捕捉分子内の特定の化学結合における捕捉分子を分裂させ、2つの捕捉分子を生じさせることが可能である。
【0112】
同様の方法で、標的分子を捕捉するように近接プローブ・アレイの種々の部分をプログラムすることが可能である。その後、捕捉分子は、それが、新たな大きい分子を形成する化学反応において関与するために十分に近接するよう、近接プローブ・アレイにおける特定の位置および方向にシフトおよび回転させられる。その新たな大きい分子は、その後、溶液内に解放される。このように、本発明の実施例に従って作られる装置によって新規な化学操作を行うことも可能である。
【0113】
本発明を用いて新規な生物学的操作を行うことも可能である。生物の場合、生物学的処理が、DNA、RNA、他の一般的な分子、および特別の蛋白質によって駆使される。これらはすべて、操作されるべき分子における電荷の相補的パターンに密接に適合する電荷の静電パターンを作成するという原理に基づいて作用する。これは、酵素、触媒、または他の分子に適切な分子を付着させる。或る例では、分子が切断されるか、または分子が、他の分子を一緒に保持することによってまたは他の分子を曲げることによって、他の分子に付着される。過去においては、何年もの作業を必要とする所望の分子操作を行うものを発見するために、多くの既知の触媒、酵素等を用いて極めて面倒な実験が行われなければならなかったであろう。更に、特定の分子変形または機能に関して符号化する遺伝子を見つけるために一般的な技術が使用されている。その後、所望分子変形または機能を遂行する薬品を製造するために遺伝子を用いて細菌が処理されている。これも極めて面倒な作業である。
【0114】
本発明は、同様の生物学的活動を遂行するためのプログラム可能なプロセスおよびプログラム可能な構造を提供する。例えば、捕捉分子は酵素または触媒として作用し得るが、その分子は近接プローブ・アレイによって捕捉された状態にある。科学者は、極めて面倒な作業を潜在的に排除することができる電子ハードウェアを介して所望の分子操作をプログラムすることが可能である。更に、本発明は、病気の存在、人をある問題に被り易くする遺伝子、薬品、汚染物質、ウィルス、細菌、または血液或いは他の体液内の他の物質を検査するために有用である。病気誘発分子の不活性または非脅迫バージョンを製造すること、および免疫システムが元の有害な分子に対する抗体を作り得る体にそれを注入することが可能である。更に、本発明は、分子、特に、蛋白質のような生体分子を折りたたむ分子操作を遂行するために使用することが可能である。例えば、DNAによってコード化されたアミノ酸鎖は自身を多くの種々の方法で折りたたむことができ、有機体は、通常、異常折りたたみ構造の蛋白質を分断または元に戻すための機構を有する。しかし、この装置を使用すると、そのような折りたたみの効果を研究するためにそのような分子を特定の形状に折りたたむことを強いること、或いは、自然生物学的過程を通して得ることが非常に困難なまたは不可能な分子を得ることができるであろう。
【0115】
本発明を、それがデータ処理システムの一部であるように説明したが、本発明のプロセスの或るものを、コンピュータ可読媒体における命令の形でおよび種々の他の形式で配布することが、その配布を行うために実際に使用される信号保持媒体の特定のタイプに無関係に可能であるということは、当業者には明らかであろう。コンピュータ可読媒体の例は、EPROM、ROM、テープ、用紙、フロッピ・ディスク、ハード・ディスク・ドライブ、RAM、CD−ROM、並びに、デジタルおよびアナログ通信リンクのような伝送タイプの媒体を含む。
【0116】
一般に、方法は、所望の結果を導くステップの自己矛盾のないシーケンスであると考えられている。これらのステップは、物理的量の物理的操作を必要とする。通常、これらの量は、記憶されること、転送されること、結合されること、比較されること、およびそれとは別に操作されることが可能な電気的または磁気的信号の形をとるが、必ずしもそのような形をとるわけではない。主として共通使用のために、これらの信号をビット、数値、パラメータ、項目、要素、対象、記号、文字、用語、数字等として言及することことが便利であることが時々ある。しかし、これらの用語および同様の用語がすべて適切な物理的量と関連付けられるべきであるということ、およびそれがこれらの量に適用された単に便利なラベルであるということは留意されたい。
【0117】
本発明の説明は、例示を目的として行われたものであって、網羅的であることおよび開示された実施例に限定されることを意図するものではない。当業者には、多くの修正および変更が明らかであろう。実施例は、本発明の原理およびそれの実用的な応用を説明するために、および他の意図された使用に適するように種々の修正によって種々の実施例を具現化すべく当業者が本発明を理解することを可能にするために選択された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子を操作するための方法であって、
近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブのサブセット上に静電パターンを配置するステップと、
前記静電パターンによって及ぼされる静電力を使用して1つの分子を捕捉するステップと、
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を操作するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブの端部が静電力を及ぼすように前記近接プローブのサブセット内の各近接プローブにおける導電材に電位を印加するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブが、前記近接プローブのサブセット間に固有の強度の静電力を及ぼすことができるように、前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブを独立して制御するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子が前記近接プローブのセット全体にわたって移動または回転するように、前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブの異なるサブセット上に異なる静電パターンを生成するために前記静電パターンを修正するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を曲げるために前記静電パターンを修正するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記分子を第1分子および第2分子に分割するために前記静電パターンを修正するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記近接プローブのセットによって前記第1分子または前記第2分子を保持し続けるステップと、
前記近接プローブのセットを用いて前記第1分子または前記第2分子を操作するステップと
を更に含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブの第1サブセット上に第1静電パターンを生成するために、および前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブの第2サブセット上に第2静電パターンを生成するために、前記静電パターンを修正するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1静電パターンおよび前記第2静電パターンを独立して操作するステップを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1静電パターンを用いて前記分子の第1部分に、および前記第2静電パターンを用いて前記分子の第2部分に、独立して作用するステップを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブのサブセットが近接プローブの第1サブセットを表し、前記静電パターンが第1静電パターンを表し、前記分子が第1分子を表し、
前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブの第2サブセットにして前記第1サブセットと交わることがない前記第2サブセット上に静電パターンを配置するステップと、
前記第2静電パターンによって及ぼされる静電力を使用して第2分子を捕捉するステップと、
前記第2分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記第2分子を操作するステップと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1分子および前記第2分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記第1分子および前記第2分子を独立して操作するステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1分子および前記第2分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記第1分子を前記第2分子と近接するように移動させるステップと、
前記第1分子および前記第2分子の間で化学反応を生じさせるステップと
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1分子の少なくとも一部分および前記第2分子の少なくとも一部分から第3分子を形成するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブがカンチレバー型構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブがカンチレバー型構造を含み、
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を曲げるために前記近接プローブのサブセットにおける近接プローブの少なくとも2つを独立して撓めるステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブがカンチレバー型構造を含み、前記分子を第1分子および第2分子に分割するために前記近接プローブのサブセットにおける近接プローブの少なくとも2つを独立して撓めるステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記近接プローブのセットによって前記第1分子または前記第2分子を保持し続けるステップと、
前記近接プローブのセットを用いて前記第1分子または前記第2分子を操作するステップと
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を化学反応において使用するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を化学反応において触媒として使用するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を化学反応において酵素として使用するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
近接プローブの第1セットが第1エンティティとして物理的に接続され且つ近接プローブの第2セットが第2エンティティとして物理的に接続され、それによって前記第1エンティティおよび前記第2エンティティを独立して操作し得るようにした、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
捕捉された分子を前記第1エンティティおよび前記第2エンティティによって保持するステップを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2エンティティが同じ状態を保った状態にある間に前記第1エンティティを操作するステップを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を曲げるステップを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記分子を第1分子および第2分子に分割するステップを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記分子の少なくとも一部分が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子の少なくとも一部分を反復的に操作するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記分子の部分を操作する操作シーケンスを通して前記分子の前記少なくとも一部分を含む新しい分子を生成するステップを更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記分子の前記少なくとも一部分に他の分子の部分を加えることによって前記新しい分子を作るステップを更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記分子の一部分を除去することによって前記分子を分解するステップを更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記分子を折りたたむために前記分子を操作するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記分子が蛋白質である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記分子が一片のデオキシリボ核酸(DNA)分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記分子が遺伝的分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
分子を操作するための装置であって、
静電パターンによって及ぼされる静電力を使用して1つの分子を捕捉するための手段と、
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を操作するための手段と
を含む、装置。
【請求項36】
前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブの端部が静電力を及ぼすように、前記近接プローブのサブセット内の各近接プローブにおける導電材に電位を印加するための手段を更に含む、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブが、前記近接プローブのサブセット間に固有の強度の静電力を及ぼすことができるように、前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブを独立して制御するための手段を更に含む、請求項35に記載の装置。
【請求項38】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子が前記近接プローブのセット全体にわたって移動または回転するように、前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブの異なるサブセット上に異なる静電パターンを生成するために前記静電パターンを修正するための手段を更に含む、請求項35に記載の装置。
【請求項39】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を曲げるために前記静電パターンを修正するための手段を更に含む、請求項35に記載の装置。
【請求項40】
前記分子を第1分子および第2分子に分割するために前記静電パターンを修正するための手段を更に含む、請求項35に記載の装置。
【請求項41】
前記近接プローブのセットによって前記第1分子または前記第2分子を保持し続けるための手段と、
前記近接プローブのセットを用いて前記第1分子または前記第2分子を操作するための手段と
を更に含む、請求項40記載の装置。
【請求項42】
前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブの第1サブセット上に第1静電パターンを生成するために、および前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブの第2サブセット上に第2静電パターンを生成するために、前記静電パターンを修正するための手段を更に含む、請求項35に記載の装置。
【請求項43】
前記第1静電パターンおよび前記第2静電パターンを独立して操作するための手段を更に含む、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記第1静電パターンを用いて前記分子の第1部分に、および前記第2静電パターンを用いて前記分子の第2部分に、独立して作用するための手段を更に含む、請求項42に記載の装置。
【請求項45】
近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブのサブセットが近接プローブの第1サブセットを表し、前記静電パターンが第1静電パターンを表し、前記分子が第1分子を表し、
前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブの第2サブセットにして前記第1サブセットと交わることがない前記第2サブセット上に静電パターンを配置するための手段と、
前記第2静電パターンによって及ぼされる静電力を使用して第2分子を捕捉するための手段と、
前記第2分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記第2分子を操作するための手段と
を更に含む、請求項35に記載の装置。
【請求項46】
前記第1分子および前記第2分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記第1分子および前記第2分子を独立して操作するための手段を更に含む、請求項45に記載の装置。
【請求項47】
前記第1分子および前記第2分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記第1分子を前記第2分子と近接するように移動させるための手段と、
前記第1分子および前記第2分子の間で化学反応を生じさせるための手段と
を更に含む、請求項45に記載の装置。
【請求項48】
前記第1分子の少なくとも一部分および前記第2分子の少なくとも一部分から第3分子を形成するための手段を更に含む、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブがカンチレバー型構造を含む、請求項35に記載の装置。
【請求項50】
前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブがカンチレバー型構造を含み、
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を曲げるために前記近接プローブのサブセットにおける近接プローブの少なくとも2つを独立して撓めるための手段を更に含む、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブがカンチレバー型構造を含み、前記分子を第1分子および第2分子に分割するために前記近接プローブのサブセットにおける近接プローブの少なくとも2つを独立して撓めるための手段を更に含む、請求項49に記載の装置。
【請求項52】
前記近接プローブのセットによって前記第1分子または前記第2分子を保持し続けるための手段と、
前記近接プローブのセットを用いて前記第1分子または前記第2分子を操作するための手段と
を更に含む、請求項51に記載の装置。
【請求項53】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を化学反応において使用するための手段を更に含む、請求項35に記載の装置。
【請求項54】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を化学反応において触媒として使用するための手段を更に含む、請求項35に記載の装置。
【請求項55】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を化学反応において酵素として使用するための手段を更に含む、請求項35に記載の装置。
【請求項56】
近接プローブの第1セットが第1エンティティとして物理的に接続され且つ近接プローブの第2セットが第2エンティティとして物理的に接続され、それによって前記第1エンティティおよび前記第2エンティティを独立して操作し得るようにした、請求項35に記載の装置。
【請求項57】
捕捉された分子を前記第1エンティティおよび前記第2エンティティによって保持するための手段を更に含む、請求項56に記載の装置。
【請求項58】
前記第2エンティティが同じ状態を保った状態にある間に前記第1エンティティを操作するための手段を更に含む、請求項57に記載の装置。
【請求項59】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を曲げるための手段を更に含む、請求項58に記載の装置。
【請求項60】
前記分子を第1分子および第2分子に分割するための手段を更に含む、請求項58に記載の装置。
【請求項61】
前記分子の少なくとも一部分が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子の少なくとも一部分を反復的に操作するための手段を更に含む、請求項35に記載の装置。
【請求項62】
前記分子の前記少なくとも一部分を操作する操作シーケンスを通して前記分子の前記少なくとも一部分を含む新しい分子を生成するための手段を更に含む、請求項61に記載の装置。
【請求項63】
前記分子の前記少なくとも一部分に他の分子の部分を加えることによって前記新しい分子を作るための手段を更に含む、請求項62に記載の装置。
【請求項64】
前記分子の一部分を除去することによって前記分子を分解するための手段を更に含む、請求項62に記載の装置。
【請求項65】
前記分子を操作するための手段が、前記分子を折りたたむための手段を含む、請求項35に記載の装置。
【請求項66】
前記分子が蛋白質である、請求項35に記載の装置。
【請求項67】
前記分子が一片のデオキシリボ核酸(DNA)分子である、請求項35に記載の装置。
【請求項68】
分子を操作するためのデータ処理システムにおいて使用するためのコンピュータ・プログラムであって、
近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブのサブセット上に静電パターンを配置するための手段と、
静電パターンによって及ぼされる静電力を使用して1つの分子を捕捉するための手段と、
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を操作するための手段と
を含む、コンピュータ・プログラム。
【請求項69】
前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブの端部が静電力を及ぼすように、前記近接プローブのサブセット内の各近接プローブにおける導電材に電位を印加するための手段を更に含む、請求項68に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項70】
前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブが、前記近接プローブのサブセット間に固有の強度の静電力を及ぼすことができるように、前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブを独立して制御するための手段を更に含む、請求項68に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項71】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子が前記近接プローブのセット全体にわたって移動または回転するように、前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブの異なるサブセット上に異なる静電パターンを生成するために前記静電パターンを修正するための手段を更に含む、請求項68に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項72】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を曲げるために前記静電パターンを修正するための手段を更に含む、請求項68に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項73】
前記分子を第1分子および第2分子に分割するために前記静電パターンを修正するための手段を更に含む、請求項68に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項74】
前記近接プローブのセットによって前記第1分子または前記第2分子を保持し続けるための手段と、
前記近接プローブのセットを用いて前記第1分子または前記第2分子を操作するための手段と
を更に含む、請求項73記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項75】
前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブの第1サブセット上に第1静電パターンを生成するために、および前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブの第2サブセット上に第2静電パターンを生成するために、前記静電パターンを修正するための手段を更に含む、請求項68に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項76】
前記第1静電パターンおよび前記第2静電パターンを独立して操作するための手段を更に含む、請求項75に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項77】
前記第1静電パターンを用いて前記分子の第1部分に、および前記第2静電パターンを用いて前記分子の第2部分に、独立して作用するための手段を更に含む、請求項75に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項78】
近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブのサブセットが近接プローブの第1サブセットを表し、前記静電パターンが第1静電パターンを表し、前記分子が第1分子を表し、
前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブの第2サブセットにして前記第1サブセットと交わることがない前記第2サブセット上に静電パターンを配置するための手段と、
前記第2静電パターンによって及ぼされる静電力を使用して第2分子を捕捉するための手段と、
前記第2分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記第2分子を操作するための手段と
を更に含む、請求項68に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項79】
前記第1分子および前記第2分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記第1分子および前記第2分子を独立して操作するための手段を更に含む、請求項78に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項80】
前記第1分子および前記第2分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記第1分子を前記第2分子と近接するように移動させるための手段と、
前記第1分子および前記第2分子の間で化学反応を生じさせるための手段と
を更に含む、請求項78に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項81】
前記第1分子の少なくとも一部分および前記第2分子の少なくとも一部分から第3分子を形成するための手段を更に含む、請求項80に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項82】
前記近接プローブのセットにおける2つまたはそれ以上の近接プローブがカンチレバー型構造を含む、請求項78に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項83】
前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブがカンチレバー型構造を含み、
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を曲げるために前記近接プローブのサブセットにおける近接プローブの少なくとも2つを独立して撓めるための手段を更に含む、請求項82に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項84】
前記近接プローブのサブセットにおける各近接プローブがカンチレバー型構造を含み、前記分子を第1分子および第2分子に分割するために前記近接プローブのサブセットにおける近接プローブの少なくとも2つを独立して撓めるための手段を更に含む、請求項82に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項85】
前記近接プローブのセットによって前記第1分子または前記第2分子を保持し続けるための手段と、
前記近接プローブのセットを用いて前記第1分子または前記第2分子を操作するための手段と
を更に含む、請求項84に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項86】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を化学反応において使用するための手段を更に含む、請求項78に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項87】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を化学反応において触媒として使用するための手段を更に含む、請求項78に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項88】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を化学反応において酵素として使用するための手段を更に含む、請求項78に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項89】
近接プローブの第1セットが第1エンティティとして物理的に接続され且つ近接プローブの第2セットが第2エンティティとして物理的に接続され、それによって前記第1エンティティおよび前記第2エンティティを独立して操作し得るようにした、請求項78に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項90】
捕捉された分子を前記第1エンティティおよび前記第2エンティティによって保持するための手段を更に含む、請求項89に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項91】
前記第2エンティティが同じ状態を保った状態にある間に前記第1エンティティを操作するための手段を更に含む、請求項90に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項92】
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を曲げるための手段を更に含む、請求項91に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項93】
前記分子を第1分子および第2分子に分割するための手段を更に含む、請求項91に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項94】
前記分子の少なくとも一部分が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子の少なくとも一部分を反復的に操作するための手段を更に含む、請求項78に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項95】
前記分子の前記少なくとも一部分を操作する操作シーケンスを通して前記分子の前記少なくとも一部分を含む新しい分子を生成するための手段を更に含む、請求項94に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項96】
前記分子の前記少なくとも一部分に他の分子の部分を加えることによって前記新しい分子を作るための手段を更に含む、請求項95に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項97】
前記分子の一部分を除去することによって前記分子を分解するための手段を更に含む、請求項95に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項98】
前記分子を操作するための手段が、前記分子を折りたたむための手段を含む、請求項78に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項99】
前記分子が蛋白質である、請求項78に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項100】
前記分子が一片のデオキシリボ核酸(DNA)分子である、請求項78に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項101】
分子を操作するための装置であって、
2つまたはそれ以上の近接プローブのセットと、
前記近接プローブのセットを保持する基板と、
前記近接プローブのセットを制御回路に接続する導電性ワイヤのセットと、
前記近接プローブのセット上の静電パターンによって及ぼされる静電力を使用して分子を捕捉するために前記静電パターンをアクティブ状態にするための第1制御回路と、
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を操作するための第2制御回路と
を含む、装置。
【請求項102】
前記近接プローブのセットが単一のエンティティとして操作されるように接続されたアクチュエータを更に含む、請求項101に記載の装置。
【請求項103】
前記近接プローブのセットが1つの空間的次元に沿って実質的に一様に配列される、請求項101に記載の装置。
【請求項104】
前記近接プローブのセットが2つの空間的次元に沿って実質的に一様に配列される、請求項101に記載の装置。
【請求項105】
前記近接プローブのセットが3つの空間的次元内に配列される、請求項101に記載の装置。
【請求項106】
前記装置による前記分子の捕捉を検出するための第3制御回路を更に含む、請求項101に記載の装置。
【請求項107】
前記近接プローブが前記分子の捕捉を検出するために使用される、請求項106に記載の装置。
【請求項108】
前記基板によって保持される1つまたは複数のセンサのセットと、
前記センサのセットを制御回路に接続する導電性ワイヤのセットと、
前記センサのセットを使用して前記分子の捕捉を検出するための第4制御回路と、
を更に含む、請求項101に記載の装置。
【請求項109】
第1近接プローブ・アレイ・ブロックを形成する第1基板および近接プローブの第1セットと、
第2近接プローブ・アレイ・ブロックを形成する第2基板および近接プローブの第2セットと
を更に含む、請求項101に記載の装置。
【請求項110】
前記近接プローブの第1セットが単一のエンティティとして操作されるように前記第1基板に接続される第1アクチュエータと、
前記近接プローブの第2セットが単一のエンティティとして操作されるように前記第2基板に接続され、前記第1アクチュエータから独立して操作される第2アクチュエータと
を更に含む、請求項109に記載の装置。
【請求項111】
前記第1近接プローブ・アレイ・ブロックによって捕捉された第1分子が前記第2近接プローブ・アレイ・ブロックによって捕捉された第2分子と化学的に反応することができるように、前記第1近接プローブ・アレイ・ブロックおよび前記第2近接プローブ・アレイ・ブロックを並置するための手段を更に含む、請求項109に記載の装置。
【請求項112】
前記第1近接プローブ・アレイ・ブロックおよび前記第2近接プローブ・アレイ・ブロックが分子を捕捉することができるように前記第1近接プローブ・アレイ・ブロックおよび前記第2近接プローブ・アレイ・ブロックを並置するための手段を更に含む、請求項109に記載の装置。
【請求項113】
前記第1近接プローブ・アレイ・ブロックおよび前記第2近接プローブ・アレイ・ブロックによって捕捉された分子が、前記第1近接プローブ・アレイ・ブロックまたは前記第2近接プローブ・アレイ・ブロックの移動によって生じる物理的な力を受けるように、前記第1近接プローブ・アレイ・ブロックを前記第2近接プローブ・アレイ・ブロックから独立して移動させるための手段を更に含む、請求項109に記載の装置。
【請求項114】
前記第1近接プローブ・アレイ・ブロックによって捕捉された第1分子が前記第2近接プローブ・アレイ・ブロックによって捕捉された第2分子と化学的に反応することができるように、前記第1近接プローブ・アレイ・ブロックを前記第2近接プローブ・アレイ・ブロックと対向させるための手段を更に含む、請求項109に記載の装置。
【請求項115】
前記近接プローブのセットがカンチレバー型構造を含む、請求項101に記載の装置。
【請求項116】
前駆近接プローブのセットにおける少なくとも2つの近接プローブがカンチレバー型構造を含み、
前記分子が前記近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子上に物理的な力を及ぼすために前記近接プローブのセットにおける近接プローブの少なくとも2つを独立して撓めるための手段を含む、請求項101に記載の装置。
【請求項117】
前記近接プローブの少なくとも2つが異なる長さを有する、請求項101に記載の装置。
【請求項118】
前記基板が非平面形状を有する、請求項101に記載の装置。
【請求項119】
前記基板がメモリ形状の材料を含む、請求項101に記載の装置。
【請求項120】
プローブ間の間隔を増加または減少させるために拡大または縮小するように電気的に制御することが可能な前記基板のプローブ間部分を更に含む、請求項101に記載の装置。
【請求項121】
前記基板のプローブ間部分がマイクロ・メカニカル機構である、請求項120に記載の装置。
【請求項122】
前記基板のプローブ間部分がナノ・メカニカル機構である、請求項120に記載の装置。
【請求項123】
前記基板のプローブ間部分が電気活性材料である、請求項120に記載の装置。
【請求項124】
前記近接プローブがナノチューブである、請求項101に記載の装置。
【請求項125】
前記近接プローブがポリマである、請求項101に記載の装置。
【請求項126】
分子を操作するための装置であって、
2つまたはそれ以上の近接プローブを制御回路に接続する導電性ワイヤのセットと、
第1近接プローブ・アレイ・ブロックを形成する第1基板および近接プローブの第1セットと、
第2近接プローブ・アレイ・ブロックを形成する第2基板および近接プローブの第2セットと、
近接プローブのセット上の静電パターンによって及ぼされる静電力を使用して分子を捕捉するために前記静電パターンをアクティブ状態にするための第1制御回路と、
前記分子が近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を操作するための第2制御回路と、
前記第1近接プローブ・アレイ・ブロックによって捕捉された第1分子が前記第2近接プローブ・アレイ・ブロックによって捕捉された第2分子と化学的に反応することができるように、前記第1近接プローブ・アレイ・ブロックおよび前記第2近接プローブ・アレイ・ブロックを並置するための手段と
を含む、装置。
【請求項127】
分子を操作するための装置であって、
2つまたはそれ以上の近接プローブを制御回路に接続する導電性ワイヤのセットと、
第1近接プローブ・アレイ・ブロックを形成する第1基板および近接プローブの第1セットと、
第2近接プローブ・アレイ・ブロックを形成する第2基板および近接プローブの第2セットと、
近接プローブのセット上の静電パターンによって及ぼされる静電力を使用して分子を捕捉するために前記静電パターンをアクティブ状態にするための第1制御回路と、
前記分子が近接プローブのセットによって捕捉された状態にある間に前記分子を操作するための第2制御回路と、
前記第1近接プローブ・アレイ・ブロックおよび前記第2近接プローブ・アレイ・ブロックによって捕捉された分子が、前記第1近接プローブ・アレイ・ブロックまたは前記第2近接プローブ・アレイ・ブロックの移動によって生じる物理的な力を受けるように、前記第1近接プローブ・アレイ・ブロックを前記第2近接プローブ・アレイ・ブロックから独立して移動させるための手段と
を含む、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2010−142950(P2010−142950A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11350(P2010−11350)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【分割の表示】特願2007−536143(P2007−536143)の分割
【原出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【復代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
【復代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
【Fターム(参考)】