説明

プロジェクター、及び、プロジェクターの制御方法

【課題】糸巻き歪を補正するための操作を容易に行うことが可能なプロジェクター、および、プロジェクターの制御方法を提供する。
【解決手段】プロジェクター1は、液晶ライトバルブ12で変調された画像光が示す投射画像の四隅の角部と、角部の間にある四つの辺とにそれぞれ対応する8つの識別画像を、投射光学系から画像光を投射することによってOSD処理部25により表示させ、表示される8つの識別画像の中から1つを選択する操作を入力操作部22によって受け付け、この操作により選択された識別画像Gを、他の識別画像Gと識別可能に強調表示し、識別画像Gを表示している状態で、角部または辺上の所定位置を移動させるための操作を入力操作部22により受け付け、受け付けた操作に基づいて、選択された識別画像Gに対応する角部または辺上の所定位置を移動させるとともに、この移動に伴う糸巻き歪補正を画像補正部26により実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクター、及び、プロジェクターの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターにおいて、投射面に対するプロジェクターの設置角により生じる台形歪補正をユーザーの操作によって補正するため、補正用の画像を表示することで、操作を容易にしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−250041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、投射面の状態によっては投射画像に糸巻き歪と呼ばれる歪みが生じることがある。糸巻き歪は、投射画像の角部を移動させるだけでは補正できないため、上記従来の構成では対応できず、糸巻き歪を補正する操作を容易に行えるプロジェクターが求められていた。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、糸巻き歪を補正するための操作を容易に行うことが可能なプロジェクター、および、プロジェクターの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、光源と、前記光源から射出された光を変調する光変調装置と、前記光変調装置で変調された画像光を投射する投射光学系と、前記画像光が示す画像の四隅の角部と、前記角部の間にある四つの辺とにそれぞれ対応する8つの識別画像を、前記投射光学系から画像光を投射することによって表示する識別画像表示部と、前記識別画像表示部が表示する前記8つの識別画像の中から1つを選択する操作を受け付ける選択操作部と、前記選択操作部で選択された識別画像を、他の識別画像と識別可能に強調表示する強調表示部と、前記強調表示部が前記識別画像を表示している状態で、前記角部または前記辺上の所定位置を移動させるための操作を受け付ける移動操作部と、前記移動操作部で受け付けた操作に基づいて、前記選択操作部で選択された前記識別画像に対応する前記角部または前記辺上の所定位置を移動させるとともに、この移動に伴う糸巻き歪補正を実行する画像補正部と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、投射される画像の四隅の角部と四つの辺とにそれぞれ対応する8つの識別画像を表示し、これらの識別画像から1つを選択する操作に応じて選択された識別画像を表示し、この識別画像に対する操作に基づいて糸巻き歪補正を行うので、糸巻き歪補正を行うための操作を容易に行うことができる。
【0006】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記強調表示部は、前記角部に対応する前記識別画像に対しては、前記移動操作部で移動可能な少なくとも2つの軸に対応する方向マークを、前記選択操作部で選択された前記識別画像に付加し、前記辺部に対応する前記識別画像に対しては、前記移動操作部で移動可能な1つの軸に対応する方向マークを、前記選択操作部で選択された前記識別画像に付加することを特徴とする。
本発明によれば、角部と辺に対してそれぞれ最適な方向マークを表示することにより適切に操作を案内することができ、糸巻き歪を補正するための操作をより容易にすることができる。
【0007】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、糸巻き歪補正を行う糸巻き歪補正モードと、台形歪補正を行う台形歪補正モードとを選択可能に構成され、前記台形歪補正モードにおいては、前記識別画像表示部は、前記画像の四隅の角部にそれぞれ対応する4つの識別画像を表示し、前記選択操作部は、前記識別画像表示部が表示する前記4つの識別画像の中から1つを選択する操作を受け付け、前記移動操作部は、前記強調表示部が前記識別画像を表示している状態で、前記角部を移動させるための操作を受け付け、前記画像補正部は、前記移動操作部で受け付けた操作に基づいて、前記選択操作部で選択された前記識別画像に対応する角部を移動させるとともに、この移動に伴う台形歪補正を実行すること、を特徴とする。
本発明によれば、糸巻き歪補正とともに、台形歪補正をするための操作を容易に行うことができる。
【0008】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記強調表示部は、前記糸巻き歪補正モードにおいては前記選択操作部で選択されなかった7つの前記他の識別画像を非表示にし、前記台形歪補正モードにおいては前記選択操作部で選択されなかった3つの前記他の識別画像を非表示にすることを特徴とする。
本発明によれば、糸巻き歪補正と台形歪補正とのそれぞれに最適な表示を行って、操作をより容易にすることができる。
【0009】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記強調表示部は、前記選択操作部により選択された前記角部または前記辺上の所定の位置が移動可能範囲の限界に位置していて所定の方向へ移動できない状態では、当該方向に対応する前記方向マークを目立たなくすることを特徴とする。
本発明によれば、マークの表示状態によって、角部または辺を移動させる操作の限界を知らせることができるので、糸巻き歪を補正するための操作をより容易にすることができる。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明は、光源から射出された光を変調した画像光を投射するプロジェクターの制御方法であって、前記画像光が示す画像の四隅の角部と、前記角部の間にある四つの辺とにそれぞれ対応する8つの識別画像を、前記投射光学系から画像光を投射することによって表示し、前記8つの識別画像の中から1つを選択する操作を受け付け、選択された識別画像を、他の識別画像と識別可能に強調表示し、前記識別画像を強調表示している状態で、前記角部または前記辺上の所定位置を移動させるための操作を受け付け、受け付けた操作に基づいて、前記選択操作部で選択された前記識別画像に対応する前記角部または前記辺上の所定位置を移動させるとともに、この移動に伴う糸巻き歪補正を実行すること、を特徴とする。
本発明によれば、投射される画像の四隅の角部と四つの辺とにそれぞれ対応する8つの識別画像を表示し、これらの識別画像から1つを選択する操作に応じて選択された識別画像を表示し、この識別画像に対する操作に基づいて糸巻き歪補正を行うので、糸巻き歪補正を行うための操作を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、糸巻き歪補正を行うための操作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】プロジェクターの概略構成を示すブロック図である。
【図2】台形歪を説明するための説明図であり、(a)は、プロジェクター及び投射面を側方から見た側面図、(b)は、投射面を示す正面図である。
【図3】台形歪を説明するための説明図であり、(a)は、プロジェクター及び投射面を側方から見た側面図、(b)、(d)は、投射面を示す正面図、(c)は、液晶ライトバルブの画素領域を示す図である。
【図4】糸巻き歪を説明するための説明図であり、(a)はプロジェクター及び投射面を斜め上方から見た斜視図、(b)、(d)、(f)、(h)は液晶ライトバルブの画素領域を示す図、(c)、(e)、(g)は投射面を示す正面図である。
【図5】台形歪補正キー及び糸巻歪補正キーが操作された際のプロジェクターの動作を説明するフローチャートである。
【図6】糸巻き歪補正キーが操作された際のプロジェクターの動作を説明するフローチャートである。
【図7】台形歪補正の実行時に表示される画像を示す図であり、(a)はコーナー選択画像を示す図、(b)はコーナー調整画像を示す図である。
【図8】(a)〜(g)は、台形歪の補正手順を説明するための説明図であり、投射面を示す正面図である。
【図9】調整部選択画像を示す図である。
【図10】コーナー調整画像を示す図である。
【図11】辺調整画像を示す図である。
【図12】(a)〜(i)は、画像形成領域の角部の移動を説明するための説明図であり、液晶ライトバルブの画素領域を示す図である。
【図13】(a)〜(c)は、画像形成領域の水平方向の辺の中点の移動を説明するための説明図であり、液晶ライトバルブの画素領域を示す図である。
【図14】(a)〜(c)は、画像形成領域の垂直方向の辺の中点の移動を説明するための説明図であり、液晶ライトバルブの画素領域を示す図である。
【図15】(a)〜(g)は、糸巻き歪の補正手順を説明するための説明図であり、投射面を示す正面図である。
【図16】(a)、(b)は、糸巻き歪の補正手順を説明するための説明図であり、液晶ライトバルブの画素領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態のプロジェクターについて、図面を参照して説明する。
プロジェクターは、光源から射出された光を変調して、外部から入力される画像情報に基づく画像(以降、「入力画像」という。)を形成し、この画像をスクリーンや壁面等の表面(以降、「投射面」という。)に投射する光学機器である。
【0014】
図1は、プロジェクター1の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、プロジェクター1は、画像投射部10、制御部20、記憶部21、入力操作部22、画像情報入力部23、画像処理部24、OSD処理部25、画像補正部26等を備えている。
【0015】
画像投射部10は、光源11、光変調装置としての3つの液晶ライトバルブ12(12R,12G,12B)、投射光学系としての投射レンズ13、光変調装置駆動部14等で構成されている。画像投射部10は、表示部に相当するものであり、光源11から射出された光を液晶ライトバルブ12で変調して画像(画像光)を形成し、この画像を投射レンズ13から拡大投射して、投射面Sに表示する。投射面Sは、固定式および可動式のスクリーンで構成される他、壁面やホワイトボードを投射面Sとして用いることも可能である。
【0016】
光源11は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等からなる放電型の光源ランプ11aと、光源ランプ11aが放射した光を略一定の方向に反射するリフレクター11bとを含んで構成されている。光源11から射出された光は、図示しないインテグレーター光学系によって輝度分布が略均一な光に変換され、図示しない色分離光学系によって光の3原色である赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の色光成分に分離された後、それぞれ液晶ライトバルブ12R,12G,12Bに入射する。
【0017】
液晶ライトバルブ12は、一対の透明基板間に液晶が封入された液晶パネル等によって構成される。液晶ライトバルブ12には、マトリクス状に配列された複数の画素12pからなる矩形の画素領域12aが形成されており、液晶に対して画素12p毎に駆動電圧を印加可能になっている。光変調装置駆動部14が、入力される画像情報に応じた駆動電圧を各画素12pに印加すると、各画素12pは、画像情報に応じた光透過率に設定される。このため、光源11から射出された光は、この液晶ライトバルブ12の画素領域12aを透過することによって変調され、画像情報に応じた画像が色光毎に形成される。
【0018】
形成された各色の画像は、図示しない色合成光学系によって画素12p毎に合成されてカラー画像となった後、投射レンズ13によって投射面Sに拡大投射される。投射レンズ13には、画像の拡大率を変更するためのズーム機構(図示せず)が備えられており、ユーザーは、このズーム機構によって画像の表示サイズを調整することができる。
【0019】
なお、本明細書では、投射レンズ13から投射される画像の全体を「投射画像」と呼ぶ。投射画像は、画素領域12aの全域で形成された画像が投射されたものであり、画素領域12aの全域又は一部の領域を黒色(光をほとんど透過しない状態)とした場合でも、この黒色の領域に対応する部位を含んだ範囲が投射画像となる。また、例えば、スクリーンに向けて画像を投射する際に、画像の一部がスクリーンからはみ出して後方の壁面等に投射された場合でも、はみ出した部位を含んだ範囲が投射画像となる。
【0020】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)や、各種データ等の一時記憶に用いられるRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)を備え、記憶部21に記憶されている制御プログラムに従って動作することによりプロジェクター1の動作を統括制御する。つまり、制御部20は、記憶部21とともにコンピューターとして機能する。
【0021】
記憶部21は、マスクROM(Read Only Memory)や、フラッシュメモリー、FeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリー)等の不揮発性のメモリーにより構成されている。記憶部21には、プロジェクター1の動作を制御するための制御プログラムや、プロジェクター1の動作条件等を規定する各種設定データ等が記憶されている。
【0022】
入力操作部22は、ユーザーからの入力操作を受け付けるものであり、ユーザーがプロジェクター1に対して各種指示を行うための複数の操作キーを備えている。入力操作部22が備える操作キーとしては、電源のオン・オフを切り替えるための電源キーや、各種設定を行うためのメニュー画像を表示させるメニューキー、メニュー画像等で選択された項目を確定させる決定キー、上下左右に対応する4つの方向キー、動作の取り消し等を指示するための取消キー、糸巻き歪を補正するための糸巻き歪補正キー、台形歪を補正するための台形歪補正キー等がある。ユーザーが入力操作部22の各種操作キーを操作すると、入力操作部22は、ユーザーの操作内容に応じた操作信号を制御部20に出力する。なお、入力操作部22として、遠隔操作が可能なリモコン(図示せず)を用いた構成としてもよい。この場合、リモコンは、ユーザーの操作内容に応じた赤外線の操作信号を発信し、図示しないリモコン信号受信部がこれを受信して制御部20に伝達する。
【0023】
画像情報入力部23には、図示しない外部の画像出力装置と接続を行うための接続端子(図示せず)が備えられており、画像出力装置から各種形式の画像情報(画像信号)が入力される。画像情報入力部23は、入力された画像情報を画像処理部24に出力する。
【0024】
画像処理部24は、画像情報入力部23から入力される各種形式の画像情報を、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bの各画素12pの階調を表す画像情報に変換する。ここで、変換された画像情報は、R,G,Bの色光別になっており、各液晶ライトバルブ12R,12G,12Bのすべての画素12pに対応する複数の画素値によって構成されている。画素値とは、対応する画素12pの光透過率を定めるものであり、この画素値によって、各画素12pから射出する光の強弱(階調)が規定される。また、画像処理部24は、制御部20の指示に基づき、変換した画像情報に対して、明るさ、コントラスト、シャープネス、色合い等を調整するための画質調整処理等を行い、処理後の画像情報をOSD処理部25に出力する。
【0025】
OSD処理部25は、制御部20の指示に基づいて、入力画像上にメニュー画像やメッセージ画像等のOSD(オンスクリーンディスプレイ)画像を重畳するための処理を行う。OSD処理部25は、図示しないOSDメモリーを備えており、OSD画像を形成するための図形やフォント等を表す画像データを記憶している。制御部20が、OSD画像の重畳を指示すると、OSD処理部25は、必要な画像データをOSDメモリーから読み出して、指定されたOSD画像を形成するためのOSD画像情報を生成する。そして、入力画像上の所定の位置にOSD画像が重畳されるように、画像処理部24から入力される画像情報にこのOSD画像情報を合成する。OSD画像情報が合成された画像情報は、画像補正部26に出力される。なお、制御部20からOSD画像を重畳する旨の指示がない場合には、OSD処理部25は、画像処理部24から入力される画像情報を、そのまま画像補正部26に出力する。
【0026】
画像補正部26は、制御部20の指示に基づいて画像(画像情報)を補正する。具体的には、画像補正部26は、液晶ライトバルブ12の画素領域12a内に、ユーザーによって設定された形状の画像形成領域12eを設定する(図3(c)参照)。そして、この画像形成領域12e内に入力画像Piが形成されるように、OSD処理部25から入力される画像情報を補正する。さらに、画像補正部26は、画像形成領域12eの外側の領域を無効とすべく、画像形成領域12e外の画素12pについては、黒色の画素値、つまり、光透過率が最小となる画素値に設定する。画像補正部26は、上記のように補正した画像情報を光変調装置駆動部14に出力する。なお、制御部20から画像を補正する旨の指示がない場合には、画像補正部26は、OSD処理部25から入力される画像情報を、そのまま光変調装置駆動部14に出力する。この場合には、画素領域12aの全域で入力画像Piが形成される。言い換えれば、画素領域12aの全域が画像形成領域12eとなる。
【0027】
光変調装置駆動部14が、入力される画像情報に従って液晶ライトバルブ12を駆動すると、液晶ライトバルブ12は、この画像情報に応じた画像を形成し、投射レンズ13から投射画像として投射面Sに投射される。
【0028】
次に、プロジェクター1の台形歪補正について、その概略を説明する。
図2及び図3は、台形歪を説明するための説明図であり、図2(a)及び図3(a)は、プロジェクター1及び投射面Sを側方から見た側面図、図2(b)及び図3(b)、(d)は、投射面Sを示す正面図、図3(c)は、液晶ライトバルブ12の画素領域12aを示す図である。
【0029】
図2(a)に示すように、プロジェクター1が投射面Sに対して傾斜していない状態、即ち、投射レンズ13の光軸方向が投射面Sの法線方向と略同一となる状態では、図2(b)に示すように、投射画像Aoに台形歪は生じず、投射画像Aoは、本来の形状(矩形状)で表示される。この場合には、画素領域12aの全域で入力画像Piを形成すればよいため、画像補正部26による補正を行う必要はなく、投射面Sの全域に投射画像Ao(入力画像Pi)が表示されるよう、ズーム調整や、プロジェクター1の設置位置の調整等を適宜行えばよい。
【0030】
一方、図3(a)に示すように、プロジェクター1が投射面Sに対して傾斜している状態、即ち、投射レンズ13の光軸方向が投射面Sの法線方向とは異なる状態では、図3(b)に示すように、投射画像Aoに台形歪が生じる。このため、画素領域12aの全域で入力画像Piを形成している場合には、入力画像Piは、台形歪によって歪んで表示される。ここで、図3(c)に示すように、画素領域12a内に、台形歪を相殺可能な形状、即ち投射画像Aoとは反対向きに歪んだ形状の画像形成領域12eを設定して、この画像形成領域12e内に入力画像Piを形成すれば、画像形成領域12e(入力画像Pi)の歪んだ形状は、台形歪によって相殺され、投射面Sには、台形歪が補正された本来の形状(矩形状)で入力画像Piが表示される(図3(d)参照)。
【0031】
上述したように、入力操作部22には、台形歪補正キーが備えられており、ユーザーは、この台形歪補正キーを操作することにより、画像形成領域12eの形状を設定することができる。
【0032】
さらに、投射面Sが曲面となっている場合には、糸巻き歪、樽型歪等と呼ばれる歪(以下、糸巻き歪と呼ぶ)を生じる。
図4は、糸巻き歪を説明するための説明図であり、(a)はプロジェクター及び投射面を斜め上方から見た斜視図、(b)、(d)、(f)、(h)は液晶ライトバルブの画素領域を示す図であり、(c)、(e)、(g)は投射面を示す正面図である。
図4(a)にはプロジェクター1を投射面Sの正面に設置した状態を示し、台形歪は生じていないが、投射面Sが曲面で構成されているために、投射画像Aoは上下の辺が凸の曲線となるような歪を生じている。画素領域12aの全域で入力画像Piを形成している場合には、投射面Sが平面であれば矩形で表示されるはずの入力画像Piは、糸巻き歪によって歪んで表示される。
図4(a)の例では投射面Sが縦方向すなわち垂直方向には歪がなく、左右方向すなわち水平方向において中央がプロジェクター1から離れる側に凸になった曲面(柱面)である。この場合、投射画像Aoは上下に曲線を有する樽型に歪む。
【0033】
ここで、図4(b)に示すように、画素領域12a内に、糸巻き歪を相殺可能な形状、即ち投射画像Aoとは反対向きに歪んだ形状の画像形成領域12eを設定して、この画像形成領域12e内に入力画像Piを形成すれば、画像形成領域12e(入力画像Pi)の歪んだ形状は、糸巻き歪によって相殺され、投射面Sには、図3(d)に示した状態と同様に、糸巻き歪が補正された本来の形状(矩形状)で入力画像Piが表示される。
さらに、図4(a)に示す設置状態において、図3(a)に示したようにプロジェクター1が投射面Sに対して傾斜している場合には、図3(b)に示したような台形歪と図4(a)に示したような糸巻き歪との両方を生じる。この場合、投射画像Aoは、台形歪と糸巻き歪の両方により、例えば樽型の投射画像Aoの上方が広がった形状に歪む。このような場合には、画素領域12aに形成される画像形成領域12eの形状を、台形歪と糸巻き歪の一方を補正するよう変形させ、さらに他方を補正するよう変形させた形状とすることで、投射面Sに矩形の投射画像Aoを表示させることができる。
【0034】
図4(c)には、投射面Sがプロジェクター1側に凸となった柱面を構成する例を示している。この場合、投射画像Aoは、図4(a)とは逆の糸巻き歪を生じている。ここで、図4(d)に示すように、投射画像Aoとは反対向きに歪んだ形状の画像形成領域12eを画素領域12a内に設定すれば、糸巻き歪を相殺して、投射面Sに矩形状の入力画像Piを表示できる。
図4(e)には、投射面Sが、水平方向に歪がなく、垂直方向にゆがんだ柱面を構成し、プロジェクター1から離れた側に凸となっている例を示す。この例では投射面Sに投射された投射画像Aoが、左右の垂直方向の辺が曲線となるような歪を生じている。ここで、図4(f)に示すように、投射画像Aoとは反対向きに歪んだ形状の画像形成領域12eを画素領域12a内に設定すれば、糸巻き歪を相殺して、投射面Sに矩形状の入力画像Piを表示できる。
図4(g)には、投射面Sが、水平方向に歪がなく、垂直方向にゆがんだ柱面を構成し、図4(e)とは逆にプロジェクター1側に凸となっている例を示す。この例では投射面Sに投射された投射画像Aoが、左右の垂直方向の辺が曲線となるような歪を生じている。ここで、図4(h)に示すように、投射画像Aoとは反対向きに歪んだ形状の画像形成領域12eを画素領域12a内に設定すれば、糸巻き歪を相殺して、投射面Sに矩形状の入力画像Piを表示できる。
【0035】
また、図4(a)、(c)、(e)、及び(g)に示しただけでなく、投射面Sが楕円曲面や放物面等のより複雑な曲面を構成している場合も、この曲面により発生する糸巻き歪を相殺するような画像形成領域12eを画素領域12aに形成すれば、矩形の投射画像Aoを表示できる。
上記のように、入力操作部22には、糸巻き歪補正キーが備えられており、ユーザーは、この糸巻き歪補正キーを操作することにより、画像形成領域12eの形状を設定して、糸巻き歪を補正できる。
【0036】
図5は、台形歪補正キー又は糸巻き歪補正キーが操作された際のプロジェクター1の動作を説明するフローチャートである。この図5、及び後述する図6の動作において、制御部20は、OSD処理部25と協働して識別画像表示部及び強調表示部として機能し、入力操作部22は、制御部20の制御のもとに選択操作部及び移動操作部として機能する。
プロジェクター1が入力画像Piを投射している状態で、ユーザーにより台形歪補正キー又は糸巻き歪補正キーが操作されると、制御部20は、図4に示すフローに従って動作する。なお、入力操作部22において、糸巻き歪補正と台形歪補正とのいずれにも対応する歪補正キーを設け、この歪補正キーの操作に応じて、プロジェクター1が糸巻き歪補正と台形歪補正とを選択するためのメニュー画面を表示し、入力操作部22の操作によりメニュー画面上で糸巻き歪補正と台形歪補正のいずれかを選択する構成としてもよい。この場合、入力操作部22の操作キーは1つで済む上に、投射面S上の投射画像Aoの歪が台形歪なのか糸巻き歪なのかを判別しにくい場合や、台形歪と糸巻き歪とが混在した歪を生じている場合に、ユーザーは歪の種類を考えず直感的に歪補正キーを操作すればよく、操作性の向上を図ることができる。
【0037】
図5に示すように、ステップST11で、制御部20は入力操作部22のキー操作により指示された補正内容が、糸巻き歪補正か台形歪補正かを判別する。糸巻き歪補正が指示された場合には、制御部20は、糸巻き歪補正モードを実行し、ステップST12で後述する糸巻き歪み補正処理を実行し、本処理を終了する。
台形歪補正が指示された場合、制御部20は、ステップST13に移行して、台形歪補正モードに移行し、台形歪補正処理を開始し、ステップST14で、OSD処理部25に指示をして、コーナー選択画像Ps(図7(a)参照)を入力画像Pi上に重畳表示させる。
【0038】
図7は、台形歪補正の実行時に表示される画像を示す図であり、(a)はコーナー選択画像Psを示す図であり、(b)はコーナー調整画像Pzを示す図である。
コーナー選択画像Psには、タイトル部Taと、入力画像Piの四隅、即ち画像形成領域12eの四隅に対応する4つの識別画像Cと、ユーザーへのメッセージが表記されるメッセージ部Maと、操作可能な操作キーとその動作を案内するキー案内部Kaとを含んでいる。
【0039】
4つの識別画像Cは、画像形成領域12e(入力画像Pi)の左上の角部に対応する識別画像C1と、右上の角部に対応する識別画像C2と、左下の角部に対応する識別画像C3と、右下の角部に対応する識別画像C4で構成されており、これらはすべて同じ大きさである。そして、各識別画像C1〜C4は、2行2列のマトリクス状に配列され、それぞれ対応する位置に配置されている(例えば、左上の角部に対応する識別画像C1は、左上に配置されている)。また、各識別画像C1〜C4には、対応する角部を表したイラストが描かれている。
【0040】
タイトル部Taには、「コーナー位置調整」と表記されており、角部の位置を調整することによって台形歪を補正する機能であることが分かるようになっている。また、メッセージ部Maには、「エリアを選択してください。」と表記されており、識別画像C1〜C4によっていずれか1つの角部を選択するようユーザーに促している。識別画像C1〜C4のうちの1つ(図7(a)の例では識別画像C1)は、他の3つとは異なる配色になっており、その識別画像Cが選択された状態であることを示している。なお、これ以降、選択されている識別画像Cの配色を「選択配色」、選択されていない識別画像Cの配色を「非選択配色」とも呼ぶ。ユーザーは、方向キーを操作することによって所望の識別画像Cを選択することが可能であり、識別画像Cを選択した後で決定キーを操作すると、識別画像Cの選択が確定する。
【0041】
また、図7(b)に示すように、コーナー調整画像Pzは、タイトル部Tbと、拡大画像表示部Zと、ユーザーへのメッセージが表記されるメッセージ部Mbと、操作可能な操作キーとその動作を案内するキー案内部Kbとを含んでおり、タイトル部Tbには、コーナー選択画像Psのタイトル部Taと同様、「コーナー位置調整」と表記されている。
拡大画像表示部Zには、上述した4つの識別画像C1〜C4のうち、コーナー選択画像Psで選択された1つの識別画像C(図6の例では識別画像C1)が拡大されて表示されており、選択されなかった3つの識別画像Cは表示されていない。また、拡大画像表示部Zには、上下左右の方向を指し示す三角状の方向マークDが付加されており、拡大されている識別画像Cに対応する角部を上下左右に移動(位置調整)可能であることを示している。さらに、メッセージ部Mbには、「調整を実施してください。」というメッセージが表記されており、角部の位置を調整するようにユーザーに促している。このコーナー調整画像Pzが表示されている状態では、ユーザーは、方向キーを操作することによって角部の位置を調整することができる。
【0042】
図5のステップST15で、制御部20は、ユーザーにより方向キーが操作されたか否かを判断し、方向キーが操作されていない場合にはステップST17に移行し、方向キーが操作された場合にはステップST16に移行する。
ステップST16で、制御部20は、操作された方向キーの方向に配置されている他の識別画像Cを新たに選択してステップST14に戻る。これにより、コーナー選択画像Psには、新たに選択された識別画像Cが選択配色で表示され、それまで選択されていた識別画像Cが非選択配色で表示される。
また、ステップST17で、制御部20は、ユーザーにより決定キーが操作されたか否かを判断し、決定キーが操作されていない場合にはステップST18に移行し、決定キーが操作された場合にはステップST20に移行する。
【0043】
ステップST18で、制御部20は、ユーザーにより取消キーが操作されたか否かを判断し、取消キーが操作されていない場合にはステップST15に戻り、取消キーが操作された場合にはステップST19に移行する。
ステップST19で、制御部20は、OSD処理部25に指示をしてコーナー選択画像Psの重畳表示を終了させて、本処理を終了する。
【0044】
また、ステップST20で、制御部20は、OSD処理部25に指示をして、コーナー選択画像Psの代わりに、コーナー調整画像Pz(図7(b)参照)を重畳表示させる。
【0045】
続いて、制御部20は、ステップST21で方向キーが操作されたか否かを判断し、方向キーが操作された場合にはステップST22に移行し、方向キーが操作されていない場合にはステップST23に移行する。
ステップST22で、制御部20は、画像補正部26に指示をして、選択された角部を、操作された方向キーの方向に移動させて、ステップST20に戻る。例えば、コーナー選択画像Psで識別画像C1が選択された場合、即ち左上の角部が選択された場合には、画像補正部26は、図8に示すように、画像形成領域12eの左上の角部を移動の対象として、操作された方向キーの方向に所定量だけ移動させる。そして、これ以降、画像補正部26は、角部が移動した後の新たな形状の画像形成領域12e内に入力画像Piが形成されるよう、画像情報を補正する。そして、ユーザーが、方向キーを繰り返し操作したり、長押ししたりすれば、ステップST21,ST22が繰り返し実行され、選択した角部を必要な量だけ移動させることができる。
なお、投射される入力画像Piの上下左右と、液晶ライトバルブ12の上下左右の関係は、必ずしも一致しないが、その場合には、投射される入力画像Piの角部が、操作された方向に移動するよう、画像形成領域12eの角部を移動させるものとする。
【0046】
また、画像形成領域12eの角部は、画素領域12aの外側には移動し得ないため、角部が画素領域12aの外縁(境界)上、即ち移動可能範囲の限界に位置している場合には、制御部20は、画素領域12aの外側に向かう方向の方向キーの操作を無視するようになっている。さらに、角部が画素領域12aの外縁上に位置している場合には、制御部20は、その外側の方向へは移動できないことをユーザーに報知するために、OSD処理部25に指示をして、画素領域12aの外側に向かう方向、即ち移動できない方向の方向マークDの色を、他の方向の方向マークDの色(例えば、オレンジ色等の明るい色)に比べて目立たない色(例えば、灰色等の暗い色)に変更させる。例えば、図8(a)、(b)、(c)に示すように、移動対象の角部が画素領域12aの上端に位置している場合には、上方向の方向マークDが目立たない色で表示されるとともに、上方向の方向キーが操作された場合には、その操作は無視される。また、図8(a)、(d)、(g)に示すように、移動対象の角部が画素領域12aの左端に位置している場合には、左方向の方向マークDが目立たない色で表示されるとともに、左方向の方向キーが操作された場合には、その操作は無視される。なお、ステップST22の後にステップST20に戻ってコーナー調整画像Pzを改めて表示するようにしているのは、状況に応じて方向マークDの色を更新するためである。また、移動可能範囲の限界は、画素領域12aの外縁上のみならず、画素領域12aの内側の方向に限界を設けるようにしてもよい。
【0047】
図5のステップST23で、制御部20は、決定キー又は取消キーが操作されたか否かを判断し、決定キー及び取消キーのいずれも操作されていない場合には、ステップST21に戻る。一方、決定キー及び取消キーのいずれかが操作された場合には、選択した角部の移動を完了してステップST14に戻り、コーナー選択画像Psが表示される状態に復帰する。その後、ユーザーは、他の角部を選択して調整を続けることもできるし、取消キーを操作して処理を終了させることもできる。
【0048】
そして、画像補正部26は、図8(a)〜(i)に例示したように、液晶ライトバルブ12上の画像形成領域12eを変形させて、入力画像Piを形成することで、投射面S上の投射画像Aoを変形させ、図3に示したような台形歪を補正する。従って、プロジェクター1では、台形歪補正キー、方向キー、決定キー、及び取消キーの操作に応じて、コーナー選択画像Ps及びコーナー調整画像Pzが表示され、台形歪を補正する操作を行うことができる。
【0049】
図6は、ステップST12(図5)の糸巻き歪補正処理を詳細に示すフローチャートである。
糸巻き歪補正が指示された場合、制御部20は、ステップST31で、OSD処理部25に指示をして、調整部選択画像Puを入力画像Pi上に重畳表示させる。
【0050】
図9〜図11は、糸巻き歪補正の実行時に表示される画像を示す図であり、図9は調整部選択画像Puを示す図であり、図10はコーナー調整画像Pvを示す図であり、図11は辺調整画像Pwを示す図である。
調整部選択画像Puには、タイトル部Tcと、入力画像Piの四隅、即ち画像形成領域12eの四隅に対応する4つの識別画像G1〜G4と、画像形成領域12eの四辺に対応する4つの識別画像G5〜G8と、ユーザーへのメッセージが表記されるメッセージ部Mcと、操作可能な操作キーとその動作を案内するキー案内部Kcとを含んでいる。
【0051】
識別画像G1〜G8は、それぞれ、画像形成領域12e(入力画像Pi)の左上の角部に対応する識別画像G1と、右上の角部に対応する識別画像G2と、左下の角部に対応する識別画像G3と、右下の角部に対応する識別画像G4と、上辺に対応するG5と、左辺に対応するG6と、右辺に対応するG7と、下辺に対応するG8とで構成され、これらはすべて同じ大きさである。各識別画像G1〜G8は、中央を空けた3行3列のマトリクス状に配列され、それぞれ画像形成領域12eの対応する位置に配置されている。例えば、左上の角部に対応する識別画像G1は、左上に配置されている。また、各識別画像G1〜G8には、対応する角部及び辺を表したイラストが描かれており、画像形成領域12eの各角部及び各辺と各識別画像G1〜G8との対応をユーザーが直感的に理解できるようになっている。
【0052】
タイトル部Tcには、糸巻き歪を補正する機能であることが分かるように「糸巻き歪補正」と表記されており、メッセージ部Mcには、「エリアを選択してください。」と表記され、識別画像G1〜G8によっていずれか1つの角部を選択するようユーザーに促している。識別画像G1〜G8のうちの1つ(図9の例では識別画像G1)は、他の3つとは異なる配色の枠で囲まれており、その識別画像Gが選択された状態であることを示している。なお、これ以降、選択されている識別画像Gの配色を「選択配色」、選択されていない識別画像Gの配色を「非選択配色」とも呼ぶ。ユーザーは、方向キーを操作することによって所望の識別画像Gを選択することが可能であり、識別画像Gを選択した後で決定キーを操作すると、識別画像Gの選択が確定する。
【0053】
また、図10に示すように、コーナー調整画像Pvは、タイトル部Tdと、拡大画像表示部Vと、ユーザーへのメッセージが表記されるメッセージ部Mdと、操作可能な操作キーとその動作を案内するキー案内部Kdとを含んでおり、タイトル部Tdには、調整部選択画像Puのタイトル部Tcと同様、「糸巻き歪補正」と表記されている。コーナー調整画像Pvは、図9の調整部選択画像Puにおいて、角部に対応する識別画像G1〜G4のいずれかが選択された場合に表示される。
拡大画像表示部Vには、調整部選択画像Puで選択された1つの識別画像G(図10の例では識別画像G1)が拡大されて表示されており、選択されなかった3つの識別画像G(図10の例ではG2〜G4)は表示されていない。また、拡大画像表示部Vには、上下左右の方向を指し示す三角状の方向マークDが付加されており、拡大されている識別画像Gに対応する角部を上下左右に移動(位置調整)可能であることを示している。さらに、メッセージ部Mdには、「調整を実施してください。」というメッセージが表記されており、角部の位置を調整するようにユーザーに促している。このコーナー調整画像Pvが表示されている状態では、ユーザーは、方向キーを操作することによって角部の位置を調整することができる。
【0054】
ここで、調整部選択画像Pu(図9)において、辺に対応する識別画像G5〜G8のいずれかが選択されると、コーナー調整画像Pvに代えて、図11に示す辺調整画像Pwが表示される。辺調整画像Pwは、コーナー調整画像Pvと同様のタイトル部Td、拡大画像表示部V、ユーザーへのメッセージが表記されるメッセージ部Md、及び操作可能な操作キーとその動作を案内するキー案内部Kdを含んでおり、拡大画像表示部Vには、調整部選択画像Puで選択された、画像形成領域12eのいずれかの辺に対応する識別画像G(図11の例では識別画像G5)が拡大表示されている。辺調整画像Pwにおいて、選択されなかった3つの辺に対応する識別画像G(図11の例ではG6〜G8)は表示されていない。
拡大画像表示部Vには、コーナー調整画像Pvと同様、上下左右の方向を指し示す三角状の方向マークDが付加されている。ただし、画像形成領域12eの辺は上下方向のみ調整可能であるため、辺調整画像Pwでは2つの方向を示す2つの方向マークDが付加される。上辺及び下辺に対応する識別画像G5、G8が選択された場合は、辺調整画像Pwには上下方向を示す2つの方向マークDが付加され、左辺及び右辺に対応する識別画像G6、G7が選択された場合は左右方向を示す2つの方向マークDが付加される。
これらの方向マークDにより、拡大されている識別画像Gに対応する辺を、上下あるいは左右に移動(位置調整)可能であることを示している。
【0055】
ここで、コーナー調整画像Pv及び辺調整画像Pwにおける操作に対応して、画像形成領域12eが変形される様子を図12〜図14に示す。図12の(a)〜(i)は、画像形成領域12eの角部の移動を説明するための説明図であり、図13の(a)〜(c)及び図14の(a)〜(c)は、画像形成領域12eの辺の中点の移動を説明するための説明図である。これら図12〜図14の各図は液晶ライトバルブ12の画素領域12aを示している。
【0056】
図12には、画像形成領域12eの左上の角部に対応する識別画像G1に対する操作を例として示す。この図12に示すように、コーナー調整画像Pvが表示された状態で方向キーが操作されると、この操作に応じて拡大画像表示部Vに表示された識別画像Gに対応する角部が、上下左右に移動するように、画像形成領域12eが変形される。例えば、図12(e)の状態で、上方向の方向キーが操作されると、画像形成領域12eの角部は一段階上に移動される。この角部の移動に伴って、この角部に繋がる辺すなわち画像形成領域12eの輪郭を構成する曲線が変形され、画像形成領域12eは図12(b)に示す形状となる。角部の移動に伴う曲線の変化は、制御部20が予め設定されたアルゴリズムに従って演算処理する。また、図12(e)の状態で、下方向を示す方向キーが操作されると、画像形成領域12eの角部は一段階下に移動され、画像形成領域12eは図12(h)に示すように変形される。同様に、右方向を示す方向キーが操作されると、画像形成領域12eは図12(f)に示すよう変形され、左方向を示す方向キーが操作されると、画像形成領域12eは図12(d)に示すよう変形される。このように、方向マークDの操作によって画像形成領域12eを変形させて、歪を補正することができる。
【0057】
また、画像形成領域12eの角部は、画素領域12aの外側には移動し得ないため、角部が画素領域12aの外縁(境界)上、即ち移動可能範囲の限界に位置している場合には、制御部20は、画素領域12aの外側に向かう方向の方向キーの操作を無視するようになっている。さらに、角部が画素領域12aの外縁上に位置している場合には、制御部20は、その外側の方向へは移動できないことをユーザーに報知するために、OSD処理部25に指示をして、画素領域12aの外側に向かう方向、即ち移動できない方向の方向マークDの色を、他の方向の方向マークDの色(例えば、オレンジ色等の明るい色)に比べて目立たない色(例えば、灰色等の暗い色)に変更させる。例えば、図12(a)、(b)、(c)に例示するように、移動対象の角部が画素領域12aの上端に位置している場合には、上方向の方向マークDが目立たない色で表示されるとともに、上方向の方向キーが操作された場合には、その操作は無視される。また、図12(a)、(d)、(g)に示すように、移動対象の角部が画素領域12aの左端に位置している場合には、左方向の方向マークDが目立たない色で表示されるとともに、左方向の方向キーが操作された場合には、その操作は無視される。
【0058】
ところで、図12に例示する識別画像G1〜G8は、いずれも、画像形成領域12eの各辺が内側に凸となるように変形した例を示しているが、図4(a)〜(h)に示したように、糸巻き歪が発生すると、投射画像Aoの各辺が投射画像Aoの外側に凸になる場合も、内側に凸となる場合もある。このため、例えば図12(b)に示す状態から、さらに画像形成領域12eの上辺を上に移動させる操作が行われた場合に、これを限界として操作不能となって終了するのではなく、例えば、画素領域12aにおける画像形成領域12eを縮小する操作を案内してもよい。或いは、画素領域12aにおける画像形成領域12eを、画素領域12aの端に達した辺の反対側にシフトさせる操作を案内してもよい。さらに、これらの操作を案内するだけでなく、実際に画像形成領域12eを縮小またはシフトさせてもよい。この場合、投射面S上の投射画像Aoに対し糸巻き歪を補正できる範囲が拡大される。
【0059】
図13は、画像形成領域12eの水平方向の辺の中点の移動に関する説明図であり、画像形成領域12eの上辺に対応する識別画像G5に対する操作を例として示す。この図13に示すように、辺調整画像Pwが表示された状態で方向キーが操作されると、この操作に応じて拡大画像表示部Vに表示された識別画像Gに対応する辺が、上下に移動するように、画像形成領域12eが変形される。ここで、辺全体が移動するのではなく、辺の中点が上下に移動され、この中点の移動に合わせて当該辺が変形される。辺の変化は、制御部20が予め設定されたアルゴリズムに従って、移動された中点の位置に合わせて曲線を描く演算処理を行って決定する。例えば、図13(b)の状態で、上方向を示す方向キーが操作されると、画像形成領域12eの辺の中心が一段階上に移動され、この移動に伴って、この辺すなわち画像形成領域12eの輪郭を構成する曲線が、図13(a)に示すように変形される。図13(b)の状態で、下方向を示す方向キーが操作されると、画像形成領域12eの角部は一段階下に移動され、画像形成領域12eは図13(c)に示すように変形される。ここで、制御部20は、所定位置として辺の中心を移動するが、他の位置を移動してもよい。ただし、通常画像形成領域12eは矩形であるため、辺の中心を移動することが、糸巻き歪の補正にとっては好適である。
【0060】
図14には、画像形成領域12eの垂直方向の辺の中点の移動に関する説明図であり、画像形成領域12eの左辺に対応する識別画像G6に対する操作を例として示す。この図14に示すように、辺調整画像Pwが表示された状態で方向キーが操作されると、この操作に応じて拡大画像表示部Vに表示された識別画像Gに対応する辺が、左右に移動するように、画像形成領域12eが変形される。図13を参照して説明した場合と同様に、方向マークDの操作に応じて、辺全体が移動するのではなく、辺の中点が上下に移動され、この中点の移動に合わせて当該辺が変形される。辺の変化は、制御部20が予め設定されたアルゴリズムに従って、移動された中点の位置に合わせて曲線を描く演算処理を行って決定する。
例えば、図14(b)の状態で、左方向を示す方向キーが操作されると、画像形成領域12eの辺の中心が一段階左に移動され、この移動に伴って、この辺すなわち画像形成領域12eの輪郭を構成する曲線が、図14(a)に示すように変形される。図13(b)の状態で、右方向を示す方向キーが操作されると、画像形成領域12eの角部は一段階右に移動され、画像形成領域12eは図14(c)に示すように変形される。
【0061】
図6のステップST32で、制御部20は、ユーザーにより方向キーが操作されたか否かを判断し、方向キーが操作されていない場合にはステップST34に移行し、方向キーが操作された場合にはステップST33に移行する。
ステップST33で、制御部20は、操作された方向キーの方向に配置されている他の識別画像Gを新たに選択してステップST31に戻る。これにより、調整部選択画像Puには、新たに選択された識別画像Gが選択配色で表示され、それまで選択されていた識別画像Gが非選択配色で表示される。
また、ステップST34で、制御部20は、ユーザーにより決定キーが操作されたか否かを判断し、決定キーが操作されていない場合にはステップST35に移行し、決定キーが操作された場合にはステップST37に移行する。
【0062】
ステップST35で、制御部20は、ユーザーにより取消キーが操作されたか否かを判断し、取消キーが操作されていない場合にはステップST32に戻り、取消キーが操作された場合にはステップST36に移行する。
ステップST36で、制御部20は、OSD処理部25に指示をして調整部選択画像Puの重畳表示を終了させて、本処理を終了する。
【0063】
また、ステップST37で、制御部20は、OSD処理部25に指示をして、調整部選択画像Puの代わりに、コーナー調整画像Pvまたは辺調整画像Pwを重畳表示させる。コーナー調整画像Pvと辺調整画像Pwのどちらを表示させるかは、ステップST32における操作に応じて制御部20が決定する。
【0064】
続いて、制御部20は、ステップST38で方向キーが操作されたか否かを判断し、方向キーが操作された場合にはステップST39に移行し、方向キーが操作されていない場合にはステップST40に移行する。
ステップST39で、制御部20は、画像補正部26に指示をして、コーナー調整画像Pvまたは辺調整画像Pwで拡大表示されている角部または辺を、操作された方向キーの方向に移動させて、ステップST37に戻る。画像補正部26は、図12〜図14で説明したように、画像形成領域12eの角部または辺の中心を、操作された方向キーの方向に所定量だけ移動させる。そして、これ以降、画像補正部26は、角部または辺の中心が移動した後の新たな形状の画像形成領域12e内に入力画像Piが形成されるよう、画像情報を補正する。そして、ユーザーが、方向キーを繰り返し操作したり、長押ししたりすれば、ステップST38,ST39が繰り返し実行され、選択した角部または辺を必要な量だけ移動させることができる。
【0065】
なお、投射される入力画像Piの上下左右と、液晶ライトバルブ12の上下左右の関係は、必ずしも一致しないが、その場合には、投射される入力画像Piの角部が、操作された方向に移動するよう、画像形成領域12eの角部を移動させるものとする。
また、ステップST39の後にステップST37に戻ってコーナー調整画像Pvを改めて表示するようにしているのは、状況に応じて方向マークDの色を更新するためである。また、移動可能範囲の限界は、画素領域12aの外縁上のみならず、画素領域12aの内側の方向に限界を設けるようにしてもよい。
【0066】
ステップST40で、制御部20は、決定キー又は取消キーが操作されたか否かを判断し、決定キー及び取消キーのいずれも操作されていない場合には、ステップST38に戻る。一方、決定キー及び取消キーのいずれかが操作された場合には、選択した角部の移動を完了してステップST31に戻り、調整部選択画像Puが表示される状態に復帰する。その後、ユーザーは、他の角部を選択して調整を続けることもできるし、取消キーを操作して処理を終了させることもできる。
【0067】
次に、図4に示した糸巻き歪を、上述したフローに従って補正する際の具体的な手順について説明する。
図15及び図16は、糸巻き歪の補正手順を説明するための説明図であり、図15(a)〜(g)は投射面Sを示す正面図であり、図16(a)、(b)は、液晶ライトバルブ12の画素領域12aを示す図である。
投射面Sに投射されている入力画像Piに糸巻き歪が生じている状態で、ユーザーが糸巻き歪補正キーを操作すると、制御部20は、図6に示すフローに従った動作を開始し、まず、図15(a)に示すように、入力画像Pi上に調整部選択画像Puを重畳表示させる(ステップST31)。
【0068】
ユーザーは、必要に応じて方向キーを操作して(ステップST32)、最初に左上の角部に対応する識別画像G1を選択する(ステップST33)。そして、ユーザーが決定キーを操作すると(ステップST34)、制御部20は、図15(b)に示すように、コーナー調整画像Pvを入力画像Pi上に重畳表示させ(ステップST37)、その拡大画像表示部Vに、識別画像G1を拡大して表示させる。
コーナー調整画像Pvが表示されると、ユーザーは、方向キーの操作によって画像形成領域12e(入力画像Pi)の角部を移動させることが可能であり、ユーザーは、選択した左上の角部を左上の方向に移動させるべく、左方向キーと上方向キーを適宜操作する(ステップST38)。図12に示したように、画像形成領域12eの左上の角部は、左方向キーが操作される度に左方向に所定量ずつ移動し、上方向キーが操作される度に上方向に所定量ずつ移動する(ステップST39)。そして、ユーザーは、投射面Sに投射される入力画像Pi(図15(c)参照)を見ながら、画像形成領域12eの左上の角部を必要な量だけ左上に移動させる(図15(d)参照)。これにより、液晶ライトバルブ12上に形成される画像形成領域12eは、図16(a)に示すように左上の角部が左上に移動するよう変形される。その後、ユーザーが決定キー又は取消キーを操作すると(ステップST40)、左上の角部の移動は完了し、調整部選択画像Puが表示される状態に戻る(ステップST31)。
【0069】
次に、ユーザーは、必要に応じて方向キーを操作して(ステップST32)、今度は上辺に対応する識別画像G5を選択する(ステップST33)。そして、ユーザーが決定キーを操作すると(ステップST34)、制御部20は、図15(e)に示すように、辺調整画像Pwを入力画像Pi上に重畳表示させ(ステップST37)、その拡大画像表示部Vに、識別画像G5を拡大して表示させる。
辺調整画像Pwが表示されると、ユーザーは、投射面Sに投射される入力画像Pi(図15(f)参照)を見ながら、上方向キーを適宜操作して(ステップST38)、画像形成領域12eの上辺を必要な量だけ上に移動させる。これにより、液晶ライトバルブ12上に形成される画像形成領域12eは、図16(a)に示すように上辺が上に移動するよう変形される。そして、ユーザーが決定キー又は取消キーを操作すると(ステップST40)、上辺の移動は完了し、調整部選択画像Puが表示される状態に戻る(ステップST31)。その後、ユーザーが取消キーを操作すると(ステップST35)、調整部選択画像Puの重畳表示が終了し(ステップST36)、糸巻き歪が解消された状態で入力画像Piが表示される。
【0070】
このように、プロジェクター1では、糸巻き歪補正キー、方向キー、決定キー、及び取消キーの操作に応じて、調整部選択画像Pu、コーナー調整画像Pv及び辺調整画像Pwが表示され、糸巻き歪を補正する操作を行うことができる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクター1によれば、光源11と、光源11から射出された光を変調する液晶ライトバルブ12と、液晶ライトバルブ12で変調された画像光を投射する投射レンズ13を含む投射光学系を備え、制御部20は、画像光が示す投射画像Aoの四隅の角部と、角部の間にある四つの辺とにそれぞれ対応する8つの識別画像G1〜G8を、投射光学系から画像光を投射することによってOSD処理部25により表示させ、表示される8つの識別画像G1〜G8の中から1つを選択する操作を入力操作部22によって受け付け、この操作により選択された識別画像Gを、他の識別画像Gと識別可能に強調表示し、識別画像Gを表示している状態で、角部または辺上の所定位置を移動させるための操作を入力操作部22により受け付け、受け付けた操作に基づいて、選択された識別画像Gに対応する角部または辺上の所定位置を移動させるとともに、この移動に伴う糸巻き歪補正を画像補正部26により実行するので、投射面Sに投射される投射画像Aoの四隅の角部と四つの辺とにそれぞれ対応する8つの識別画像G1〜G8を表示し、これらの識別画像G1〜G8から1つを選択する操作に応じて選択された識別画像Gを表示し、この識別画像Gに対する操作に基づいて糸巻き歪補正を行うので、糸巻き歪補正を行うための操作を容易に行うことができる。
【0072】
また、制御部20は、角部に対応する識別画像G1〜G4に対しては、入力操作部22で移動可能な少なくとも2つの軸に対応する方向マークDを、入力操作部22で選択された識別画像Gに付加し、辺部に対応する識別画像G5〜G8に対しては、入力操作部22で移動可能な1つの軸に対応する方向マークDを、入力操作部22で選択された識別画像Gに付加するので、角部と辺に対してそれぞれ最適な方向マークDを表示することにより適切に操作を案内することができ、糸巻き歪を補正するための操作をより容易にすることができる。
【0073】
また、プロジェクター1は、糸巻き歪補正を行う糸巻き歪補正モードと、台形歪補正を行う台形歪補正モードとを選択可能に構成され、台形歪補正モードにおいては、制御部20は、画像の四隅の角部にそれぞれ対応する4つの識別画像C1〜C4を表示し、入力操作部22は、制御部20が表示する4つの識別画像C1〜C4の中から1つを選択する操作を受け付け、入力操作部22は、制御部20が識別画像Cを表示している状態で、角部を移動させるための操作を受け付け、画像補正部26は、入力操作部22で受け付けた操作に基づいて、選択された識別画像Cに対応する角部を移動させるとともに、この移動に伴う台形歪補正を実行するので、糸巻き歪補正とともに、台形歪補正をするための操作を容易に行うことができる。
【0074】
また、制御部20は、糸巻き歪補正モードにおいては入力操作部22で選択されなかった7つの他の識別画像Gを非表示にし、台形歪補正モードにおいては入力操作部22で選択されなかった3つの他の識別画像Cを非表示にするので、糸巻き歪補正と台形歪補正とのそれぞれに最適な表示を行って、操作をより容易にすることができる。
制御部20は、入力操作部22により選択された角部または辺上の所定の位置が移動可能範囲の限界に位置していて所定の方向へ移動できない状態では、当該方向に対応する方向マークDを目立たなくするので、方向マークDの表示状態によって、角部または辺を移動させる操作の限界を知らせることができるので、糸巻き歪を補正するための操作をより容易にすることができる。
【0075】
なお、上記実施形態は本発明を適用した具体的態様の例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、上記実施形態とは異なる態様として本発明を適用することも可能である。例えば、上記実施形態においては、コーナー選択画像Psで選択された識別画像C、及び、調整部選択画像Puで選択された角部または辺に対応する識別画像Gを、コーナー調整画像Pz、コーナー調整画像Pv或いは辺調整画像Pwに表示している。つまり、選択されなかった他の識別画像C、Gを非表示にしているが、例えば、選択された識別画像C、Gより小さなサイズであれば、選択されなかった識別画像C、Gの一部又は全部がコーナー調整画像Pz、コーナー調整画像Pv及び辺調整画像Pwに含まれていてもよい。また、コーナー調整画像Pz、コーナー調整画像Pv及び辺調整画像Pwでは、選択された識別画像C、Gを必ずしも拡大する必要はなく、選択されていない識別画像C、Gを縮小したり、非表示にしたりするだけであってもよい。このように、コーナー調整画像Pz、コーナー調整画像Pv及び辺調整画像Pwは、選択された識別画像C、Gを、選択されなかった識別画像C、Gよりも強調して表示する態様であればよい。
【0076】
また、上記実施形態では、コーナー調整画像Pz、コーナー調整画像Pv及び辺調整画像Pwにおいて、移動できない方向の方向マークDの色を目立たない色にするとともに、その方向の方向キーが操作された場合には、この操作を無視するようにしているが、移動できない方向の方向キーが操作された場合に、移動できない旨を報知するメッセージをメッセージ部Mb、Md等に表示するようにしてもよい。
【0077】
上記実施形態において、各角部及び辺の位置調整が済んだか否かを、調整部選択画像Pu上で識別できるようにすれば、位置調整の実施状況を把握しやすくなり、利便性が向上する。例えば、角部或いは辺の移動(位置調整)を終えた際に、位置調整が済んだことを示す調整済マークを、調整部選択画像Puにおいて識別画像Gに付加するようにすればよい。或いは、位置調整が済んだ識別画像Cの配色を変更するようにしてもよい。
また、上記実施形態において、コーナー調整画像Pvまたは辺調整画像Pwが表示されている状態で方向キーが操作された場合に、その操作に連動して、対応する方向マークDの色を一時的に変化させるようにしてもよい。これによれば、方向キーを操作するたびに方向マークDの色が変化するため、ユーザーは、方向キーの操作が正常に受け付けられていることを認識することができる。
【0078】
また、上記実施形態では、光変調装置として3つの液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを用いた3板式のプロジェクター1について説明したが、光変調装置の態様は、これに限定されない。例えば、1枚の透過型または反射型液晶パネルとカラーホイールを組み合わせた方式、3枚のデジタルミラーデバイス(DMD)を用いた方式、1枚のデジタルミラーデバイスとカラーホイールを組み合わせたDMD方式等により構成してもよい。ここで、表示部として1枚のみの液晶パネルまたはDMDを用いる場合には、クロスダイクロイックプリズム等の合成光学系に相当する部材は不要である。また、液晶パネル及びDMD以外にも、光源が発した光を変調可能な構成であれば問題なく採用できる。
上記実施形態では、光源11は、放電型の光源ランプ11aによって構成されているが、LED光源等の固体光源や、その他の光源を用いることもできる。
【0079】
また、図1に示したプロジェクター1の各機能部は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態は特に制限されない。従って、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサーがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上記実施形態においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。その他、プロジェクター1の他の各部の具体的な細部構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…プロジェクター、10…画像投射部、11…光源、12…液晶ライトバルブ(光変調装置)、12a…画素領域、12e…画像形成領域、12p…画素、13…投射レンズ(投射光学系)、14…光変調装置駆動部、20…制御部(識別画像表示部、強調表示部)、21…記憶部、22…入力操作部(選択操作部、移動操作部)、25…OSD処理部(識別画像表示部、強調表示部)、26…画像補正部、Ao…投射画像、C1〜C4…識別画像、D…方向マーク、G1〜G8…識別画像、Ka、Kb、Kc、Kd…キー案内部、Ma、Mb、Mc、Md…メッセージ部、Pi…入力画像、Ps…コーナー選択画像、Pu…調整部選択画像、Pv…コーナー調整画像、Pw…辺調整画像、Pz…コーナー調整画像、S…投射面、Ta、Tb、Tc、Td…タイトル部、V、Z…拡大画像表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から射出された光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置で変調された画像光を投射する投射光学系と、
前記画像光が示す画像の四隅の角部と、前記角部の間にある四つの辺とにそれぞれ対応する8つの識別画像を、前記投射光学系から画像光を投射することによって表示する識別画像表示部と、
前記識別画像表示部が表示する前記8つの識別画像の中から1つを選択する操作を受け付ける選択操作部と、
前記選択操作部で選択された識別画像を、他の識別画像と識別可能に強調表示する強調表示部と、
前記強調表示部が前記識別画像を表示している状態で、前記角部または前記辺上の所定位置を移動させるための操作を受け付ける移動操作部と、
前記移動操作部で受け付けた操作に基づいて、前記選択操作部で選択された前記識別画像に対応する前記角部または前記辺上の所定位置を移動させるとともに、この移動に伴う糸巻き歪補正を実行する画像補正部と、
を備えたことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
前記強調表示部は、前記角部に対応する前記識別画像に対しては、前記移動操作部で移動可能な少なくとも2つの軸に対応する方向マークを、前記選択操作部で選択された前記識別画像に付加し、前記辺部に対応する前記識別画像に対しては、前記移動操作部で移動可能な1つの軸に対応する方向マークを、前記選択操作部で選択された前記識別画像に付加することを特徴とする請求項1記載のプロジェクター。
【請求項3】
糸巻き歪補正を行う糸巻き歪補正モードと、台形歪補正を行う台形歪補正モードとを選択可能に構成され、
前記台形歪補正モードにおいては、
前記識別画像表示部は、前記画像の四隅の角部にそれぞれ対応する4つの識別画像を表示し、
前記選択操作部は、前記識別画像表示部が表示する前記4つの識別画像の中から1つを選択する操作を受け付け、
前記移動操作部は、前記強調表示部が前記識別画像を表示している状態で、前記角部を移動させるための操作を受け付け、
前記画像補正部は、前記移動操作部で受け付けた操作に基づいて、前記選択操作部で選択された前記識別画像に対応する角部を移動させるとともに、この移動に伴う台形歪補正を実行すること、
を特徴とする請求項1または2記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記強調表示部は、前記糸巻き歪補正モードにおいては前記選択操作部で選択されなかった7つの前記他の識別画像を非表示にし、前記台形歪補正モードにおいては前記選択操作部で選択されなかった3つの前記他の識別画像を非表示にすることを特徴とする請求項3記載のプロジェクター。
【請求項5】
前記強調表示部は、前記選択操作部により選択された前記角部または前記辺上の所定の位置が移動可能範囲の限界に位置していて所定の方向へ移動できない状態では、当該方向に対応する前記方向マークを目立たなくすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプロジェクター。
【請求項6】
光源から射出された光を変調した画像光を投射するプロジェクターの制御方法であって、
前記画像光が示す画像の四隅の角部と、前記角部の間にある四つの辺とにそれぞれ対応する8つの識別画像を、前記投射光学系から画像光を投射することによって表示し、
前記8つの識別画像の中から1つを選択する操作を受け付け、
選択された識別画像を、他の識別画像と識別可能に強調表示し、
前記識別画像を強調表示している状態で、前記角部または前記辺上の所定位置を移動させるための操作を受け付け、
受け付けた操作に基づいて、前記選択操作部で選択された前記識別画像に対応する前記角部または前記辺上の所定位置を移動させるとともに、この移動に伴う糸巻き歪補正を実行すること、
を特徴とするプロジェクターの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−77958(P2013−77958A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216327(P2011−216327)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】