説明

プロジェクター

【課題】色域調整用のフィルターを光路上に省スペースで配置することができ、ゴースト像の発生等の弊害を抑制することができるプロジェクターを提供すること。
【解決手段】フィルター部材81を構成する複数の板状のフィルター部分81a,81bが照明光束LFの中心軸であるシステム光軸SAに垂直なXY面に対して傾いて配置されるので、フィルター部材81の入出射側面81i,81oでの反射に起因するゴースト像の発生等の弊害を抑制できる。しかしかも、フィルター部材81が傾斜方向に配列される複数の板状のフィルター部81a,81bを有するので、フィルター部材81が一枚の平板である場合に比較してシステム光軸SAに沿った方向に関する厚みを抑えることができ、フィルター部材81を薄型化して狭い空間に配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光の波長域を調整するためのフィルター部材を有するプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプロジェクターとして、光源装置の光路下流側に色域拡大用のフィルターを設け、このフィルターを光軸に垂直な方向にスライド移動可能に設置することにより、フィルターを光路上に進退可能にしたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、別のプロジェクターとして、光源装置に設けた金属製反射ミラーの正面にコーン型のフィルター板を配置することにより、このフィルター板で反射した赤外光及び紫外光を周囲に設けた放熱筒の内面に吸収させるものがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−654896号公報
【特許文献2】特開2008−16394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のように色域拡大用のフィルターを光路上に配置すると、フィルターの面で不要光が反射されて、ゴースト像を発生させる可能性がある。ここで、ゴースト像の発生を抑制するため、フィルターを光軸方向に対して垂直な状態から幾分傾けて配置することも考えられるが、このようなフィルターの傾斜に対応させて光軸方向に比較的広い空間を確保する必要が生じ、フィルターの配置の自由度が制限されてしまう。
【0006】
また、上記特許文献2のようにコーン型のフィルター板を設置する場合、フィルター板がその形状に起因して光軸方向に幅をとってしまうので、フィルター板の配置場所が制限され、特に金属製反射ミラーの直後にフィルター板を配置する場合、発光放電管から熱的な影響を受けやすくなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、波長域を調整するためのフィルターを光路上に省スペースで配置することができ、ゴースト像の発生等の弊害を抑制することができるプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るプロジェクターは、照明光束を射出する光源と、光源から射出された照明光束によって照明される光変調装置と、光変調装置から射出された光束を投射する投射光学系と、光源からの照明光束の中心軸に垂直な面に対して傾斜するとともに傾斜方向に配列される複数の板状のフィルター部分を有し、照明光束のうち所定波長域の光束を減衰させるフィルター部材とを備える。
【0009】
上記プロジェクターによれば、フィルター部材を構成する複数の板状のフィルター部分が光源からの照明光束の中心軸に垂直な面に対して傾いて配置されるので、フィルター部材の入出射面での反射に起因するゴースト像の発生等の弊害を抑制できる。しかしかも、フィルター部材が傾斜方向に配列される複数の板状のフィルター部を有するので、フィルター部材が一枚の平板である場合に比較して照明光束の中心軸に沿った方向に関する厚みを抑えることができ、フィルター部材を薄型化して狭い空間に配置することができる。
【0010】
また、本発明の具体的な態様又は側面によれば、上記プロジェクターにおいて、フィルター部材を光路上に進退させるフィルター移動機構をさらに備える。フィルター部材が例えば可視波長域の透過率を調整可能である場合、フィルター部材を光路上に配置することによって色域を拡大した色調優先モードでの画像投射と、フィルター部材を光路上から退避させることによって明るさを増した明るさ優先モードでの画像投射との選択が可能になる。
【0011】
本発明の別の具体的な側面によれば、フィルター部材は、複数のフィルター部分を支持するホルダを有し、複数のフィルター部分は、段差を介して互いに平行に配置された状態でホルダに固定されている。この場合、フィルター部材の実効的な厚みを段差分だけ簡易に減少させることができ、フィルター部材をホルダによって一体化して取り扱うことができる。
【0012】
本発明のさらに別の具体的な側面によれば、照明光束の偏光方向を揃えるための複数の偏光変換素子を有する偏光変換装置をさらに備え、複数のフィルター部分の境界は、偏光変換装置を構成する複数の偏光変換素子の入射面に形成されたマスクに対応して設けられている。この場合、複数のフィルター部分の境界周辺を通過する光が照明に利用されることを抑制でき、迷光の発生をより抑制できる。
【0013】
本発明のさらに別の具体的な側面によれば、フィルター部材は、偏光変換装置に隣接して配置される。複数のフィルター部分の境界周辺を通過する光が照明に利用されることをより確実に防止できる。
【0014】
本発明のさらに別の具体的な側面によれば、光源からの照明光束を分割する一対の第1及び第2のレンズアレイと、第1及び第2のレンズアレイを経た照明光束を重畳させるための重畳レンズとをさらに備え、複数のフィルター部分の境界は、第2のレンズアレイを構成する複数の要素レンズの境界に対応して設けられている。この場合、複数のフィルター部分の境界周辺に照明光束が入射することを抑制でき、迷光の発生をより抑制できる。
【0015】
本発明のさらに別の具体的な側面によれば、フィルター部材は、第2フライアイレンズに隣接して配置される。複数のフィルター部分の境界周辺を通過する光が照明に利用されることをより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクターを概念的に示す平面図である。
【図2】(A)は、照明光学系について説明する平面図であり、(B)は、フィルター部材の正面図である。
【図3】フィルター部材を移動させるための構造の一例を示す斜視図である。
【図4】第2実施形態に係るプロジェクターの照明光学系を説明する図である。
【図5】第3実施形態に係るプロジェクターの照明光学系を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係るプロジェクターについて詳細に説明する。
【0018】
〔A.プロジェクターの構造の概要〕
図1に示すように、本実施形態に係るプロジェクター100は、照明装置10と、色分離導光部40と、光変調部50と、色合成部60と、投射光学系70とを備える。
【0019】
まず、照明装置10は、光源ランプユニット20と、均一化光学系30と、色域調節装置80とを含む照明光学系である。
【0020】
照明装置10のうち、光源ランプユニット20は、光源として、ランプ部21aと、凹レンズ21bとを備える。このうち、ランプ部21aは、例えば高圧水銀ランプ等である発光管22aと、発光管22aから射出された光束を反射して前方に射出させる楕円面型の凹面鏡22bとを備える。凹レンズ21bは、ランプ部21aからの照明光束LFをシステム光軸SA(即ち照明光束LFの中心軸)に略平行にする役割を有するが、例えば凹面鏡22bが放物面鏡である場合には、省略することもできる。
【0021】
均一化光学系30は、第1及び第2レンズアレイ31,32と、偏光変換部材34と、重畳レンズ35とを備える。
【0022】
第1及び第2レンズアレイ31,32は、それぞれが例えばX方向及びY方向に関してマトリクス状に配置された複数の要素レンズからなるフライアイレンズである。このうち、第1レンズアレイ31を構成する複数の要素レンズ31aによって、光源ランプユニット20から射出された照明光束LFが複数の部分光束に分割される。また、第2レンズアレイ32を構成する複数の要素レンズ32aによって、第1レンズアレイ31から入射した各部分光束が適当な発散角で偏光変換部材34側に射出される。
【0023】
偏光変換部材34は、全体としてXY面に平行な矩形の平板状の部材であり、PBSのプリズムアレイ等で構成されY方向を長手方向として延びる複数の偏光変換素子34aをX方向に一列に並べて形成されている。偏光変換部材34は、レンズアレイ32から射出された照明光束LFを特定方向の直線偏光のみに変換して次段光学系に供給する。具体的に説明すると、偏光変換部材34を構成する各偏光変換素子34aは、レンズアレイ32を構成する複数の要素レンズ32aがX方向に並ぶ個数に合わせて配列されており、第2レンズアレイ32の各要素レンズ32aから射出された各部分光束は、対応する偏光変換素子34aにそれぞれ入射し、偏光変換素子34aにおいて特定方向の直線偏光に変換される。
【0024】
重畳レンズ35は、第2レンズアレイ32から射出され偏光変換部材34を経た照明光束LFを全体として適宜収束させることにより、光変調装置である光変調部50に設けた各色の液晶ライトバルブ50a,50b,50cに対する重畳照明を可能にする。
【0025】
以上のように、均一化光学系30は、光源である光源ランプユニット20からの照明光束LFを分割・重畳により均一化し、当該照明光束LFにより光変調部50に設けた各色の液晶ライトバルブ50a,50b,50cに対する適切な照明を可能にする。
【0026】
色域調節装置80は、動作環境等に応じてオン・オフ動作可能に設けられており、色域調節装置駆動部91により駆動される。色域調節装置80は、フィルター部材81と、フィルター移動機構82とを備える。
【0027】
フィルター部材81は、第2レンズアレイ32と偏光変換部材34との間の光路上に偏光変換部材34に隣接して配置可能であるとともに、フィルター移動機構82によってX方向にスライド移動可能になっている。フィルター部材81は、例えば照明光束LFの色域を調節するための色域フィルターであり、光路上に配置されたオン状態でランプ部21aから射出される照明光束LFのうち所定波長域のスペクトル成分を反射又は吸収によって減衰させて、投射画像の色合いを調整する。例えば、フィルター部材81が所定波長域として580nm付近における緑色光成分及び赤色光成分の強度を減衰させるような色域フィルターである場合、緑色光成分と赤色光成分との分離が良くなり、赤色及び緑色の色再現性を向上させることができる。
【0028】
フィルター部材81は、±X方向にスライド移動することで、システム光軸SAを中心軸とする照明光束LFの光路上に進退可能となっており、光路上に配置されたオン状態では(図中実線)、照明光束LFのうち所定波長域の光束を減衰させ、光路外に退避したオフ状態では(図中破線)、照明光束LFの減衰を行わない。これにより、プロジェクター100は、フィルター部材81を光路上に配置することで、照明光束LFのうち色再現性の向上に寄与する波長域の光束を選択的に通過させる色再現性の高い表示モード(以下、色再現性優先モードという)での画像投射を行うことができる。一方、プロジェクター100は、フィルター部材81を光路上から外れた位置に待避させることで、照明光束LFをそのまま通過させる高輝度の表示モード(以下、明るさ優先モードという)での画像投射も行うことができる。つまり、プロジェクター100のユーザーは、本体に設置された操作ボタン(不図示)等を適宜操作して、上記モードを切り換えられる。なお、フィルター部材81をスライド移動させるためのフィルター移動機構82の詳細については後述する。
【0029】
図2(A)及び2(B)に示すように、フィルター部材81は、複数枚(具体的には2枚)の板状のフィルター部分81a,81bと、両フィルター部分81a,81bを支持するホルダ81cとを有する。
【0030】
各フィルター部分81a,81bは、光透過性の基板上に誘電体多層膜を形成したものであり、照明光束LFのうち所定波長域の光束を減衰させる。また、各フィルター部分81a,81bにおいて、その主面である入射側面81iの向きは、照明光束LFの中心軸に相当するシステム光軸SAに垂直な面即ちXY面に対して平行とはなっておらず、XY面を基準としてY方向に平行な軸のまわりに傾斜角度αだけ反時計回りの方向に回転している。これにより、例えば光路下流側からフィルター部材81に向かう戻り光その他の不要光ULは、フィルター部材81を構成する各フィルター部分81a,81bの裏面である射出側面81oで照明光束LFの光路外の方向に反射される。結果的に、不要光ULは、照明光束LFの一部となって均一化光学系30の後段の液晶ライトバルブ50a,50b,50c等に導かれることがなくなるので、ゴースト像の発生源となることなく除去される。つまり、プロジェクター100は、色再現性優先モードにおいても、ゴースト像を発生させることなく良好な画像を提供することができる。また、フィルター部材81を構成する各フィルター部分81a,81bが上述のように傾斜していることで、光路上流側からフィルター部材81に向かう照明光束LFのうちフィルター部材81の各フィルター部分81a,81bの入射側面81iで反射される成分についても、そのまま反対側にある光源ランプユニット20の発光管22aには戻らず光路外へ排出等されるため、ランプ部21aの加熱等の原因とならない。
【0031】
フィルター部材81を構成する一対のフィルター部分81a,81bは、互いに平行で、両フィルター部分81a,81bの傾斜方向であるX方向に配列されている。両フィルター部分81a,81bは、上記傾斜方向に垂直なY方向に延びるエッジ部分Ea,Ebにおいてホルダ81cの一部である桟状の接続枠81dによって連結され固定されている。ここで、傾斜方向とは、システム光軸SAに垂直なXY面において、両フィルター部分81a,81bの傾斜角度αをとる方向(すなわち回転軸又は傾斜軸に垂直な方向)であるものとする。このように、フィルター部材81を構成するフィルター部分81a,81bを傾斜方向に配列することにより、フィルター部材81の照明光束LFの中心軸に相当するシステム光軸SAに沿った方向に関する厚みを低減することができる。つまり、フィルター部材81の傾斜方向の幅をdxとし、各フィルター部分81a,81bの厚みをtzとすると、フィルター部分81a,81bが一体の部材である場合、フィルター部材81のシステム光軸SA方向の厚みは、dx・tanα+tz程度となるが、上記のようにフィルター部分81a,81bが段差Sを有する別部材である場合、dx・tanα+tz−S程度と、段差S分だけ薄くすることができる。なお、両フィルター部分81a,81b間の段差Sは、最大で(1/2)・dx・tanα程度とすることができるので、フィルター部材81を2枚のフィルター部分81a,81bに分割した場合、最も効果的に配置したときのフィルター部材81の厚みは、分割しない場合の半分程度とすることができる。
【0032】
フィルター部材81を構成するフィルター部分81a,81bに設けたエッジ部分Ea,Ebは、偏光変換部材34を構成する複数の偏光変換素子34aの入射面に形成されたマスク34fに対向して設けられている。この場合、複数のフィルター部分81a,81bの境界に存在するエッジ部分Ea,Eb周辺を通過する光が照明に利用されることを抑制でき、迷光の発生をより抑制できる。つまり、エッジ部分Ea,Ebやホルダ81cの接続枠81dに入射する照明光束LFが存在しても、マスク34fに遮られるべきものであり、各色の液晶ライトバルブ50a,50b,50cに入射する照明光束LFの均一性が損なわれることを防止できる。
【0033】
なお、偏光変換部材34を構成する各偏光変換素子34aは、平行四辺形の断面を有する1つの四角プリズム34cと、直角三角形の断面を有し四角プリズム34cの対向斜面に接合される2つの三角プリズム34d,34eと、一方の三角プリズム34dの光入射面側に形成された遮光用のマスク34fと、三角プリズム34eの光射出面側に形成された位相調整用の波長板34gとを有する。中央の四角プリズム34cと、一方の三角プリズム34dとの接合面には、ミラー34jが形成され、中央の四角プリズム34cと、他方の三角プリズム34eとの接合面には、偏光分離膜34kが形成されている。レンズアレイ32の要素レンズ32aから射出された部分光束DLは、マスク34fを避けるように四角プリズム34cに入射しこれを直進して三角プリズム34eに入射する。この際、偏光分離膜34kでS偏光が反射され、偏光分離膜34kを通過したP偏光は、三角プリズム34eを介して波長板34gから射出される際に、P偏光からS偏光に変換される。一方、偏光分離膜34kで反射されて直交方向に折り曲げられたS偏光は、ミラー34jで反射されて再度直交方向に折り曲げられて四角プリズム34cから射出される。ここで、三角プリズム34eの光射出側の波長板34gから射出される部分光束DLと、四角プリズム34cの光射出側から射出される部分光束DLとは、いずれもS偏光であり、偏光方向が揃った状態となっている。
【0034】
図1に戻って、均一化光学系30の光路下流側に位置する色分離導光部40は、第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41bと、反射ミラー42a,42b,42cと、3つのフィールドレンズ43a,43b,43cと、リレーレンズ44a,44bとを備え、照明装置10から射出された照明光束LFを赤(R)色、緑(G)色、及び青(B)色の3色に分離するとともに、各色光を後段の液晶ライトバルブ50a,50b,50cへ導く。より詳しく説明すると、まず、第1ダイクロイックミラー41aは、RGBの3色のうちR色の照明光LRを反射しG色及びB色の照明光LG,LBを透過させる。また、第2ダイクロイックミラー41bは、GBの2色のうちG色の照明光LGを反射しB色の照明光LBを透過させる。つまり、第1ダイクロイックミラー41aで反射された赤色光LRは、フィールドレンズ43aのある赤光路OP1に導かれ、第1ダイクロイックミラー41aを透過して第2ダイクロイックミラー41bで反射された緑色光LGは、フィールドレンズ43bのある緑光路OP2に導かれ、第2ダイクロイックミラー41bを通過した青色光LBは、フィールドレンズ43cのある青光路OP3に導かれる。各色用のフィールドレンズ43a,43b,43cは、第2レンズアレイ32から射出され重畳レンズ35等を通過して光変調部50に入射する各部分光束DL(図2(A)参照)が、各液晶ライトバルブ50a,50b,50cの被照射領域上において、システム光軸SAに対して適当な収束度又は発散度となるように入射角を調節している。
【0035】
光変調部50は、照明光束LFから分離された3色の照明光LR,LG,LBによって照明される光変調装置であり、3色の照明光LR,LG,LBがそれぞれ入射する3つの液晶ライトバルブ50a,50b,50cを備える。各液晶ライトバルブ50a,50b,50cは、中央に配置される液晶パネル51a,51b,51cと、これを挟むように配置される光路上流側の入射側偏光フィルター52a,52b,52cと、光路下流側の射出側偏光フィルター53a,53b,53cとをそれぞれ備えている。各液晶ライトバルブ50a,50b,50cにそれぞれ入射した各色光LR,LG,LBは、各液晶ライトバルブ50a,50b,50cに電気的信号として入力された駆動信号或いは制御信号に応じて、画素単位で強度変調される。なお、各液晶パネル51a,51b,51cは、いずれも透過型の液晶パネルであり、図示による説明を省略するが、透明電極等を有する光透過性の入射側基板と、画素電極等を有する光透過性の駆動基板と、入射側基板及び駆動基板間に密閉封入される液晶層とを備える。
【0036】
色合成部60は、カラー画像を合成するためのクロスダイクロイックプリズムであり、その内部には、R光反射用の第1ダイクロイック膜61と、B光反射用の第2ダイクロイック膜62とが、平面視X字状に配置されている。この色合成部60は、液晶ライトバルブ50aからの赤色光LRを第1ダイクロイック膜61で反射して進行方向右側に射出させ、液晶ライトバルブ50bからの緑色光LGを両ダイクロイック膜61,62を介して直進・射出させ、液晶ライトバルブ50cからの青色光LBを第2ダイクロイック膜62で反射して進行方向左側に射出させる。
【0037】
投射光学系70は、投射レンズとして、色合成部60で合成された画像光をスクリーン(不図示)上にカラー画像として投射する。
【0038】
〔B.遮光板のスライド構造の説明〕
以下、フィルター部材81のスライド構造であるフィルター移動機構82について説明する。なお、図2(A)等を用いて上述したように、フィルター部材81を構成するフィルター部分81a,81bは、システム光軸SAに垂直なXY面に対して傾斜角度αだけ傾けて配置されている。フィルター部材81は、フィルター移動機構82により、フィルター部分81a,81bを傾斜させた姿勢を維持したままで光路上に進退可能となっている。
【0039】
図3に示すように、フィルター移動機構82は、第1ガイド部材92と、第2ガイド部材93と、固定部材95と、駆動機構96と、移動部材97とを備え、図1の色域調節装置駆動部91からの駆動信号に従って動作する。
【0040】
第1ガイド部材92は、移動部材97をスライド方向R1に沿って移動可能に支持する部材であり、板体92aと、レール部92bとを一体化して備えている。板体92aは、図1の筐体11に固定される。レール部92bは、移動部材97の上端と摺動可能に係合する部分である。第2ガイド部材93は、移動部材97をスライド方向R1に沿って移動可能に支持する部材であり、板体93aと、レール部93bとを一体化して備えている。板体93aは、図1の筐体11に固定される。レール部93bは、移動部材97の下端と摺動可能に係合する部分である。
【0041】
固定部材95は、駆動機構96を支持する部材であり、載置固定部95aと、支持固定部95bとを備える。載置固定部95aは、後述する駆動機構96のモーター96a等を載置固定するとともに、支持固定部95bと組み合わせることで駆動機構96の第1及び第2歯車96c,96dを回動可能に挟持する。固定部材95は、図1の筐体11に固定される。
【0042】
駆動機構96は、移動部材97をX軸方向に平行なスライド方向R1に移動させるために設けられており、モーター96aと、減速ギアボックス96bと、第1歯車96cと、第2歯車96dとを備える。モーター96aから延びるモーター軸は、減速ギアボックス96bに接続されている。減速ギアボックス96bは、モーターの回転速度を減速し、その回転力を第1歯車96cと第2歯車96dとを介して移動部材97に伝達する。
【0043】
移動部材97は、フィルター部材81を支持固定するとともに、駆動機構96の駆動により、第1ガイド部材92のレール部92bと、第2ガイド部材93のレール部93bとに沿って、X軸方向即ちスライド方向R1に往復移動するものである。移動部材97には、第1ガイド部材92のレール部92bと係合する係合部97aが形成されており、第2ガイド部材93のレール部93bと摺動可能に嵌合する嵌合部97bが形成されている。ここで、嵌合部97bには、駆動機構96の第2歯車96dと噛合するラック97cがX軸方向に延びるように形成されている。移動部材97は、駆動機構96の駆動により第2歯車96dの回転がラック97cに伝達されることで、フィルター部材81をスライド方向R1に沿って移動させ、進退動作可能にしている。
【0044】
以上のフィルター移動機構82を適宜動作させて、フィルター部材81をシステム光軸SAと交差するように光路上に前進させ場合、色再現性優先モードでの画像投射を行うことができ、フィルター部材81を光路上から後退させた場合、明るさ優先モードでの画像投射を行うことができる。
【0045】
本実施形態のプロジェクター100によれば、フィルター部材81を構成する複数の板状のフィルター部分81a,81bが照明光束LFの中心軸であるシステム光軸SAに垂直なXY面に対して傾いて配置されるので、フィルター部材81の入出射側面81i,81oでの反射に起因するゴースト像の発生等の弊害を抑制できる。しかしかも、フィルター部材81が傾斜方向に配列される複数の板状のフィルター部81a,81bを有するので、フィルター部材81が一枚の平板である場合に比較してシステム光軸SAに沿った方向に関する厚みを抑えることができ、フィルター部材81を薄型化して狭い空間に配置することができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係るプロジェクターの光学系の構成について説明する。なお、第2実施形態のプロジェクターは、第1実施形態のプロジェクター100を変形したものであり、同一部分には同一の符号を付す。また、第2実施形態のプロジェクター100について特に説明しない部分は、第1実施形態のプロジェクター100と同様であるものとする。
【0047】
図4に示すように、フィルター部材81は、第2レンズアレイ32に隣接して光路上に進退可能に配置され、フィルター部材81を構成するフィルター部分181a,181bに設けたエッジ部分Ea,Ebは、第2レンズアレイ32を構成する複数の要素レンズ32aの境界32fに対向して設けられている。この場合、第2レンズアレイ32による部分光束DLは、複数のフィルター部分81a,81bの境界に存在するエッジ部分Ea,Eb周辺に入射しないので、迷光の発生をより抑制できる。
【0048】
なお、図4に示すフィルター部材81は、第2レンズアレイ32の光路下流側ではなく、第2レンズアレイ32の光路上流側に配置することもできる。
【0049】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係るプロジェクターの光学系の構成について説明する。なお、第3実施形態のプロジェクターは、第1実施形態や第2実施形態のプロジェクター100を変形したものであり、同一部分には同一の符号を付す。また、第3実施形態のプロジェクター100について特に説明しない部分は、第1実施形態や第2実施形態のプロジェクター100と同様であるものとする。
【0050】
図5に示すように、フィルター部材81を構成するフィルター部分181a,181bは、照明光束LFの中心軸であるシステム光軸SAに垂直なXY面に対して傾斜角度αだけ傾いて配置されている。ただし、フィルター部分181aは、時計回りの方向に傾斜角度αだけ回転して傾斜しているが、フィルター部分181bは、反時計回りの方向に傾斜角度αだけ回転して傾斜している。この際、両フィルター部分181a,181bは、境界のエッジ部分Ea,Ebにおいて接続枠181dによって連結され固定されているが、接続枠181dは、エッジ部分Ea,Eb間に段差が形成されないようにしている。このように、両フィルター部分181a,181bの傾斜の回転方向が反対であっても、フィルター部材81のシステム光軸SA方向に関する厚みを低減できる。
【0051】
なお、図5に示すフィルター部材81は、第2レンズアレイ32の光路下流側ではなく、第2レンズアレイ32の光路上流側に配置することもできる。
【0052】
〔その他、変形例等〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0053】
上記第1実施形態では、フィルター部材81が色域拡大用の色フィルターであるものとしたが、フィルター部材81を紫外(UV)光や赤外光のカット用のフィルターとすることもでき、この場合、フィルター部材81を光路上に進退移動させるためのフィルター移動機構82は不要となる。
【0054】
上記第1実施形態では、図2(A)に示すように、偏光変換部材34を構成する複数の偏光変換素子34aのうちシステム光軸SAに隣接する中央側の1つの偏光変換素子34aに形成されたマスク34fに重ねるように、フィルター部材81のエッジ部分Ea,Ebや接続枠81dを配置しているが、図2(A)に例示する上記偏光変換素子34aに限らず、いずれか他の偏光変換素子34aに形成されたマスク34fに重ねるように、フィルター部材81のエッジ部分Ea,Ebや接続枠81dを配置することができる。
【0055】
上記第2実施形態では、図4に示すように、第2レンズアレイ32を構成する複数の要素レンズ32a間の境界の32fのうちシステム光軸SAと交差する中央の境界32fに重ねるように、フィルター部材81のエッジ部分Ea,Ebや接続枠81dを配置しているが、図4に例示する上記境界32fに限らず、いずれか他の境界32fに重ねるように、フィルター部材81のエッジ部分Ea,Ebや接続枠81dを配置することができる。なお、第2実施形態では、Y方向に延びる境界32fにエッジ部分Ea,Ebや接続枠81dを一致させているが、X方向に延びる境界32fにエッジ部分Ea,Ebや接続枠81dを一致させることもできる。この場合、フィルター部材81を構成するフィルター部分181a,181bは、X軸に平行な軸のまわりに傾斜した状態でフレームに固定されることになる。
【0056】
上記第3実施形態では、第2レンズアレイ32においてシステム光軸SAと交差する中央の境界32fに重ねるように、フィルター部材81のエッジ部分Ea,Ebや接続枠181dを配置しているが、他の境界32fに重ねるようにフィルター部材81のエッジ部分Ea,Ebや接続枠181dを配置することができる。さらに、偏光変換部材34を構成するいずれかの偏光変換素子34aに形成されたマスク34fに重ねるように、フィルター部材81のエッジ部分Ea,Ebや接続枠181dを配置することができる。
【0057】
上記第1〜3実施形態では、フィルター部材81を2枚のフィルター部分81a,81b,181a,181bに分割しているが、フィルター部材81を3枚以上のフィルター部分に分割して傾斜方向に配列することもできる。
【0058】
上記各実施形態では特に説明していないが、例えば動的な調光装置を設けることができる。すなわち、第1及び第2レンズアレイ31,32間に開閉可能な一対の調光羽根を設け、当該一対の調光羽根を絞りのように機能させることにより、照明装置10から射出される照明光の光量を増減調整することができる。これにより、投射画像の動的なコントラストを増加させることができる。
【0059】
また、上記実施形態において、フィルター部材81は、フィルター移動機構82によりX方向にスライド移動するが、スライド方向は、このほかの方向(例えばY方向)であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態において、フィルター部材81を第2レンズアレイ32の前後に配置しているが、フィルター部材81を第1レンズアレイ31の前後周辺に配置することができる。
【0061】
また、上記実施形態において、光変調部50を液晶ライトバルブ50a,50b,50cで構成するものとしたが、光変調部50をデジタル・ミラー・デバイス型のライトバルブで構成することができる。なお、光変調部50をデジタル・ミラー・デバイス型のライトバルブで構成する場合、ロッドレンズによって照明光を均一化することが多いが、例えばロッドレンズの手前に上記図2(A)等に示すようなフィルター部材81を配置することができる。
【符号の説明】
【0062】
10…照明装置、 20…光源ランプユニット、 21a…ランプ部、 21b…凹レンズ、 30…均一化光学系、 31…第1レンズアレイ、 31a…要素レンズ、 32…第2レンズアレイ、 32a…要素レンズ、 32f…境界、 34…偏光変換部材、 34a…偏光変換素子、 34f…マスク、 35…重畳レンズ、 40…色分離導光部、 41a,41b…ダイクロイックミラー、 50…光変調部、 50a,50b,50c…液晶ライトバルブ、 51a,51b,51c…液晶パネル、 60…色合成部、 70…投射光学系、 80…色域調節装置、 81…フィルター部材、 81a,81b,181a,181b…フィルター部分、 81c…ホルダ、 81d,181d…接続枠、 81i…入射側面、 81o…射出側面、 82…フィルター移動機構、 91…色域調節装置駆動部、 92…第1ガイド部材、 第2ガイド部材、 95…固定部材、 96…駆動機構、 96…駆動機構、 96a…モーター、 97…移動部材、 100…プロジェクター、 DL…部分光束、 Ea,Eb…エッジ部分、 LF…照明光束、 OP1…赤光路、 OP2…緑光路、 OP3…青光路、 SA…システム光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光束を射出する光源と、
前記光源から射出された照明光束によって照明される光変調装置と、
前記光変調装置から射出された光束を投射する投射光学系と、
前記光源からの前記照明光束の中心軸に垂直な面に対して傾斜するとともに傾斜方向に配列される複数の板状のフィルター部分を有し、前記照明光束のうち所定波長域の光束を減衰させるフィルター部材と、
を備えるプロジェクター。
【請求項2】
前記フィルター部材を光路上に進退させるフィルター移動機構をさらに備える、請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記フィルター部材は、前記複数のフィルター部分を支持するホルダを有し、
前記複数のフィルター部分は、段差を介して互いに平行に配置された状態で前記ホルダに固定されている、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記照明光束の偏光方向を揃えるための複数の偏光変換素子を有する偏光変換装置をさらに備え、
前記複数のフィルター部分の境界は、前記偏光変換装置を構成する前記複数の偏光変換素子の入射面に形成されたマスクに対応して設けられている、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項5】
前記フィルター部材は、前記偏光変換装置に隣接して配置される、請求項4に記載のプロジェクター。
【請求項6】
前記光源からの前記照明光束を分割する一対の第1及び第2のレンズアレイと、前記第1及び第2のレンズアレイを経た前記照明光束を重畳させるための重畳レンズとをさらに備え、
前記複数のフィルター部分の境界は、前記第2のレンズアレイを構成する複数の要素レンズの境界に対応して設けられている、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項7】
前記フィルター部材は、前記第2フライアイレンズに隣接して配置される、請求項6に記載のプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−191366(P2011−191366A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55455(P2010−55455)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】