説明

プロジェクター

【課題】環境の変化に伴うピントずれを補償できるプロジェクターを提供すること。
【解決手段】レンズ移動部としての主制御部99やレンズ駆動装置72が連結部82の温度情報を検出する第1温度センサー97の検出結果に基づいて投射レンズ71の一部を移動させるので、連結部82の温度変化によって投射レンズ71と表示装置81との間隔が変化した場合にも、これを相殺するように投射レンズ71のバックフォーカス位置を調整することができ、環境変化に関わらず良好な画像を投射できるプロジェクター100を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル等で形成された光束を画像としてスクリーン上に投射するプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ等の光学機器として、移動レンズ群を含むリアフォーカスズームレンズと、リアフォーカスズームレンズの合焦状態を検出する自動合焦手段と、移動レンズ群を駆動して自動合焦を行わせる自動合焦制御手段とを備えるものがある(特許文献1参照)。この光学機器では、リアフォーカスズームレンズに温度、湿度等の検出手段を設け、自動合焦手段の動作を停止させているときに、上記検出手段の出力に基づいて温度、湿度等の変化に伴うリアフォーカスズームレンズの結像面の位置ずれを補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−211312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プロジェクターの場合、ケース内に熱分布が形成されることが多く、投射レンズ自体の温度変化だけでなく、投射レンズの周辺の温度変化に伴って、結像面と液晶パネルとの間に位置ズレが生じることも多い。つまり、上記特許文献1と同様に投射レンズ自体の温度、湿度等の変化のみに基づいて投射レンズのピント状態を調整した場合、ピントズレを十分に抑制できない可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、投射レンズの周囲環境の変化に伴うピントずれを補償できるプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るプロジェクターは、画像を表示する表示部と、表示部に表示された画像を投射する投射レンズと、表示部と投射レンズとを連結する連結部と、連結部の状況に関する情報を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて投射レンズの少なくとも一部を移動させるレンズ移動部とを備える。
【0007】
上記プロジェクターによれば、レンズ移動部が連結部の状況に関する情報を検出する検出部の検出結果に基づいて投射レンズの少なくとも一部を移動させるので、連結部の温度その他の状況変化によって投射レンズと表示部との間隔が変化した場合にも、これを相殺するように投射レンズのバックフォーカス位置を調整してスクリーン側の結像位置を維持することができ、環境変化に関わらず良好な画像をスクリーン上に投射できるプロジェクターを提供することができる。
【0008】
また、本発明の具体的な態様又は側面によれば、上記プロジェクターにおいて、検出部が、連結部に取り付けられて連結部の温度を検出する第1のセンサーを有する。この場合、連結部が温度変化に伴って伸縮する量を相殺するように投射レンズのバックフォーカス位置を変化させることができ、連結部の温度変化に関わらず良好な画像を投射できるプロジェクターを提供することができる。
【0009】
本発明の別の側面によれば、レンズ移動部が、検出部の検出結果に基づいて投射レンズの全体又は一部の移動量を算出する演算部と、演算部の算出結果に応じて投射レンズの全体又は一部を移動させるレンズ駆動装置とを有する。この場合、連結部の温度に応じて投射レンズを駆動することで、そのバックフォーカス位置を適切に変化させることができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面によれば、検出部が、投射レンズに取り付けられて投射レンズの温度を検出する第2のセンサーを有する。この場合、投射レンズ自体の温度状態を監視することができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面によれば、演算部が、第1及び第2のセンサーの検出結果に基づいて投射レンズの全体又は一部の移動量を算出する。この場合、投射レンズ自体の温度の変化も加味して投射レンズのピント状態を調整することができ、より良好な画像を投射できるプロジェクターを提供することができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面によれば、表示部を照明するための照明光を射出する照明光学系をさらに備える。この場合、表示部に表示された画像を十分な輝度でスクリーン等に投射することができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、表示部が、照明光学系からの照明光を変調する光変調装置である。この場合、光変調装置に表示させた様々な画像をスクリーン等に投射することができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、照明光学系が、照明光の射出強度を変化させることができ、検出部が、照明光学系からの照明光の射出強度が所定以上に保たれる第1の動作モードである場合に、連結部の状況に関する情報として連結部が比較的高温状態であることを検出し、照明装置からの照明光の射出強度が所定未満に変化する第2の動作モードである場合に、連結部の状況に関する情報として連結部が比較的低温状態であることを検出する。この場合、照明光学系からの照明光の射出強度に関連する第1及び第2の動作モードに適合するように、投射レンズのバックフォーカス位置を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクターを概念的に示す図である。
【図2】図1に示すプロジェクターの光学系の要部を説明する側面図である。
【図3】図1に示すプロジェクターの動作を説明するフローチャートである。
【図4】第2実施形態に係るプロジェクターの要部を説明する側面図である。
【図5】第2実施形態に係るプロジェクターの動作を説明するフローチャートである。
【図6】第3実施形態に係るプロジェクターを概念的に示す図である。
【図7】図6に示すプロジェクターの動作の説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、本発明の第1実施形態に係るプロジェクターについて説明する。図示のプロジェクター100は、画像の形成及び投射用の光学系部分10と、光学系部分10の動作を制御する制御装置90とを備える。
【0017】
〔1.プロジェクターの光学系〕
図1に示す光学系部分10は、照明光を射出する照明光学系20と、照明光学系20からの照明光を青緑赤の3つの色光に分離する色分離導光光学系40と、色分離導光光学系40から射出された3つの色光を画像情報に応じてそれぞれ変調する光変調部50と、光変調部50から射出された各色の画像光を合成する光合成光学系60と、光合成光学系60によって合成された画像光をスクリーン(不図示)に投射する投射光学系70とを備える。これらのうち、光変調部50と光合成光学系60とは、照明光を変調して画像を形成するための表示装置81を構成する。また、照明光学系20から光合成光学系60までの部分は、光学部品用筐体11の内部に収納されている。
【0018】
■請求項6対応■
照明光学系20は、光源装置21と、凹レンズ22と、第1及び第2のレンズアレイ24,25と、偏光変換装置26と、重畳レンズ27と、調光機構31とを備える。このうち、光源装置21は、照明用の光束を射出する光源であり、例えば高圧水銀ランプ等である放電型の発光管21aと、発光管21aから射出された光束を回収して前方に射出させる楕円面型の凹面鏡21bとを備える。凹レンズ22は、光源装置21からの光束を平行化する役割を有するが、例えば凹面鏡21bが放物面鏡である場合には、省略することもできる。第1及び第2のレンズアレイ24,25は、それぞれマトリクス状に配置された複数の要素レンズからなるフライアイレンズである。このうち、第1のレンズアレイ24を構成する要素レンズによって、光源装置21から射出された光束が複数の部分光束に分割される。また、第2のレンズアレイ25を構成する要素レンズによって、第1のレンズアレイ24からの各部分光束が適当な発散角で射出される。偏光変換装置26は、PBSや波長板を組み込んだプリズムアレイで構成され、レンズアレイ25から射出された分割光束を特定方向の直線偏光のみに変換して次段光学系に供給する偏光変換部である。重畳レンズ27は、偏光変換装置26を経た直線偏光としての照明光を全体として適宜収束させることにより、被照明領域すなわち光変調部50に設けた各色の液晶ライトバルブ50r,50g,50bに対する重畳照明を可能にする。つまり、両レンズアレイ24,25と重畳レンズ27とを通過した照明光は、以下に詳述する色分離導光光学系40を通って、光変調部50に設けられた各色の液晶パネル51r,51g,51bを均一に重畳照明する。
【0019】
調光機構31は、照明光学系20の内部、例えば第1及び第2のレンズアレイ24,25の間に配設され、一対の遮光部33,34を開閉することで照明光学系20から射出される照明光の少なくとも一部を連続的又は段階的に遮光し照明光量すなわち照明光の射出強度を調整する。
【0020】
色分離導光光学系40は、第1及び第2のダイクロイックミラー41a,41bと、反射ミラー42a,42b,42cと、3つのフィールドレンズ43r,43g,43bとを備え、光源装置21から射出された照明光を赤(R)色、緑(G)色、及び青(B)色の3色に分離するとともに、分離された各色光を後段の液晶ライトバルブ50r,50g,50bへ導く。より詳しく説明すると、まず、第1のダイクロイックミラー41aは、RGBの3色のうちR色の照明光LRを反射しG色及びB色の照明光LG,LBを透過させる。また、第2のダイクロイックミラー41bは、GBの2色のうちG色の照明光LGを反射しB色の照明光LBを透過させる。つまり、第1のダイクロイックミラー41aで反射された赤色光LRは、フィールドレンズ43rのある第1光路OP1に導かれ、第1のダイクロイックミラー41aを透過して第2のダイクロイックミラー41bで反射された緑色光LGは、フィールドレンズ43gのある第2光路OP2に導かれ、第2のダイクロイックミラー41bを通過した青色光LBは、フィールドレンズ43bのある第3光路OP3に導かれる。各色用のフィールドレンズ43r,43g,43bは、第2レンズアレイ25から射出された各部分光束が、各液晶ライトバルブ50r,50g,50bの被照射領域上において適度な入射角度となるように調節している。一対のリレーレンズ44a,44bは、第1光路OP1や第2光路OP2よりも相対的に長い第3光路OP3上に配置され、入射側の第1のリレーレンズ44aの直前に形成された像を、ほぼそのまま射出側のフィールドレンズ43bに伝達することにより、光の拡散等による光の利用効率の低下を防止している。
【0021】
光変調部50は、3色の照明光LR,LG,LBがそれぞれ入射する3つの液晶ライトバルブ50r,50g,50bを備える。各液晶ライトバルブ50r,50g,50bは、入射した照明光の強度の空間分布を変調する非発光型の光変調装置である。
【0022】
各液晶ライトバルブ50r,50g,50bは、中央に配置される液晶パネル51r,51g,51bと、これを挟むように一方の光入射側に配置される入射側偏光フィルター52r,52g,52bと、他方の光射出側に配置される射出側偏光フィルター53r,53g,53bとをそれぞれ備えている。各液晶パネル51r,51g,51bは、図示による説明を省略するが、透明電極等を有する光透過性基板と、画素電極等を有する光透過型の駆動基板と、光透過性基板及び駆動基板間に密閉封入される液晶層とを備える。各液晶ライトバルブ50r,50g,50bに入射した各色光LR,LG,LBは、各液晶ライトバルブ50r,50g,50bに電気的信号として入力された駆動信号或いは画像信号に応じて、画素単位で強度変調される。
【0023】
光合成光学系60は、クロスダイクロイックプリズムであり、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、X字状に交差する一対のダイクロイックミラー61,62が形成されている。両ダイクロイックミラー61,62は、特性が異なる誘電体多層膜で形成されている。すなわち、一方の第1ダイクロイックミラー61は赤色光LRを反射し、他方の第1ダイクロイックミラー62は青色光LBを反射する。この光合成光学系60は、液晶ライトバルブ50rからの変調後の赤色光LRを第1ダイクロイックミラー61で反射して光路を折り曲げることによりZ方向に射出させ、液晶ライトバルブ50gからの変調後の緑色光LGを第1及び第2ダイクロイックミラー61,62を透過させることによってZ方向に直進させ、液晶ライトバルブ50bからの変調後の青色光LBを第2ダイクロイックミラー62で反射して光路を折り曲げることによりZ方向に射出させる。光合成光学系60の光射出側では、各色光LR,LG,LBが重ね合わされて色合成が行われる。
【0024】
投射光学系70は、光合成光学系60で合成されたカラーの画像光を拡大投射する投射レンズ71と、制御装置90の制御下で動作して投射レンズ71の状態を調整するレンズ駆動装置72とを備える。投射レンズ71は、液晶パネル51r,51g,51b上の画像を所望の倍率でスクリーン(不図示)上に投射するズームレンズである。レンズ駆動装置72は、図示を省略するが、アクチュエータ、機械機構、センサー等を内蔵している。レンズ駆動装置72は、投射レンズ71の投射倍率、レンズシフト量等のレンズ情報を検出して後述するレンズ駆動制御部95に出力するとともに、レンズ駆動制御部95からの制御信号に基づいて、投射レンズ71の投射倍率、レンズシフト量、バックフォーフォーカス量等を変更することができる。なお、投射レンズ71のY方向への全体的な移動であるレンズシフト量を変更することにより、システム光軸SAや光軸OAから+Y方向にずれた位置に形状歪の少ない状態での画像投射が可能になる。また、詳細は後述するが、投射レンズ71中の一部レンズを光軸OAの方向に移動させることにより、投射倍率を変化させることができ、或いはバックフォーフォーカス量を微小変化させ得るようになっている。以上の投射光学系70により、各液晶パネル51r,51g,51bに入力された駆動信号又は表示信号に対応する各色の画像を合成したカラー動画やカラー静止画がスクリーン上に所望の倍率で投射される。
【0025】
図2は、投射光学系70に対して光変調部50や光合成光学系60を固定する方法を説明する側面図である。なお、光変調部50と光合成光学系60とは、一体化されて表示装置81を構成し、画像を表示する表示部として機能する。
【0026】
投射光学系70と表示装置81とを互いに固定するための連結部82は、投射光学系70を支持するフレーム部材82aと、表示装置81を支持するホルダ部材82bと、フレーム部材82a及びホルダ部材82b間に介在する中間部材82cとを有する。これらのフレーム部材82aと、ホルダ部材82bと、中間部材82cとは、例えばアルミダイカスト、マグネシウムダイカストその他の線膨張係数の比較的小さな材料で一体的に形成される。中間部材82cには、第1のセンサーとして、連結部82の温度を検出する第1温度センサー97が取り付けられている。第1温度センサー97は、例えばサーミスター等の感温素子で形成され、制御装置90に設けた検出回路96によって動作が制御される。なお、連結部82のうちフレーム部材82aは、図1に示す光学部品用筐体11に固定されている。
【0027】
投射光学系70のうち投射レンズ71は、レンズ駆動装置72を介してフレーム部材82aに支持されている。つまり、レンズ駆動装置72は、一方でフレーム部材82aに固定されてこのフレーム部材82aに支持されており、他方で投射レンズ71のフランジ71fに固定されて投射レンズ71を支持している。投射レンズ71には、第2のセンサーとして、投射光学系70の温度を検出する第2温度センサー98が取り付けられている。第2温度センサー98は、例えばサーミスター等の感温素子で形成され、制御装置90に設けた検出回路96によって動作が制御される。なお、投射レンズ71の鏡筒71aのうち表示装置81側すなわち光路上流側の部分は、フレーム部材82aの開口85に通されている。
【0028】
表示装置81は、光合成光学系60の底面60rにおいて接着剤等を利用することによりホルダ部材82bに固定されている。ここで、光合成光学系60の側面である3つの入射面65には、アライメント用の支持体68r,68g,68bを介して各色用の液晶ライトバルブ50r,50g,50bがそれぞれ固定されている。
【0029】
レンズ駆動装置72は、投射レンズ71をその光軸OA上の位置から光軸OA方向に垂直なCD方向に沿って適宜並進移動させることができ、このように投射レンズ71の光軸OAをシステム光軸SAに対して意図的にずらすレンズシフトによって、投射レンズ71による投射方向を光軸OAに対して例えば+Y方向に所望角度傾いた斜め方向とすることができる。また、レンズ駆動装置72は、投射レンズ71内に設けた部分駆動機構73を介してレンズ群71a,71b,71c等を光軸OA方向に個別に往復移動させることができ、投射レンズ71の投射倍率等を調整することができるようになっている。さらに、レンズ駆動装置72は、部分駆動機構73を介してレンズ群71a,71c等を光軸OA方向に適宜微動させることができ、表示装置81の位置ずれ等の環境状況に対応して、投射レンズ71のバックフォーカス量を調整することができる。つまり、レンズ駆動装置72は、後述する制御装置90の主制御部99とともに、連結部82の温度検出結果に基づいて投射レンズ71の一部を移動させるためのレンズ移動部を構成する。なお、投射レンズ71のうち例えばレンズ群71dは、手動で光軸OA方向に微動させることができ、投射レンズ71によるフォーカス状態すなわちスクリーン状でのピント状態の手動調整に利用される。
【0030】
以下、レンズ駆動装置72の第1のフォーカス補償機能について説明する。まず、前提として、連結部82は、温度変化に伴ってわずかであるが伸縮し、投射レンズ71を支持するフレーム部材82aに対する液晶ライトバルブ50g等の位置が温度に伴って微小変化するものとする。具体的に説明すると、連結部82、特に中間部材82cの周辺が常温状態である場合、図2に実線で示すように、フレーム部材82aから液晶ライトバルブ50gまでの距離がD0となっている。ここで、投射レンズ71が常温状態でそのバックフォーカス量が標準値BF0に保たれているとするならば、投射レンズ71のバックフォーカス位置は、実線で示す液晶ライトバルブ50r等の位置に対応するものとなっており、不図示のスクリーン上にピントの合った結像が可能になっている。その後、連結部82の周辺が加熱されて温度差ΔT1だけ高温状態となった場合、図2に二点鎖線で示すように、フレーム部材82aから液晶ライトバルブ50gまでの距離がD0よりも増加して変化値D1となる。ここで、投射レンズ71の温度が元のまま増減していないものとする。この場合、レンズ駆動装置72を適宜動作させて投射レンズ71を構成するレンズ群71a,71c等を光軸OA方向に適宜微動させることにより、投射レンズ71のバックフォーカス量を、標準値BF0に対して正の差分ΔD=D1−D0だけ加算して増加させた補正バックフォーカス量BF1=BF0+ΔDとすることができる。ここで、差分ΔDは、一般的に温度差ΔT1に比例するので、温度係数αを用いると、ΔD=α・ΔT1と表すことができる。以上のようなバックフォーカス量の補正を行うことにより、投射レンズ71のバックフォーカス位置を二点鎖線で示す液晶ライトバルブ50r等の位置に一致させることができる。逆に、連結部82の周辺が常温よりも温度差ΔT1だけ低温状態となった場合、図示を省略するが、フレーム部材82aから液晶ライトバルブ50gまでの距離がD0よりも減少して変化値D1となる。ここで、レンズ駆動装置72を適宜動作させて、投射レンズ71のバックフォーカス量を標準値BF0に対して負の差分ΔD=D1−D0だけ加算して減少させた補正バックフォーカス量BF1=BF0+ΔDとするならば、投射レンズ71のバックフォーカス位置を液晶ライトバルブ50r等の位置に一致させることができる。つまり、連結部82の周辺の温度環境にかかわらず、不図示のスクリーン上に液晶ライトバルブ50r,50g,50bの像をピントの合った状態で投射することができる。なお、以上では、温度係数αを一定と考えたが、温度係数αが温度に伴って大きく変化しても、温度に伴って変化する温度係数α(T)を用いれば、バックフォーカス位置の正確な温度補償が可能になる。
【0031】
以下、レンズ駆動装置72の第2のフォーカス補償機能について説明する。以上では、投射レンズ71が常温状態に保たれていることを前提としているが、実際の投射レンズ71の温度は環境等の影響を受けて変化する。投射レンズ71が画像投射中に加熱されて比較的高温状態となった場合、例えば投射レンズ71のバックフォーカス量がBF0からBF1'に減少し、バックフォーカス位置が差分ΔBだけ光路下流側にシフトしたものとなる。つまり、投射レンズ71の焦点距離の増減の温度係数βは、この例では負の値であり、上昇の温度差ΔT2に伴ってバックフォーカス量が差分ΔB=β・ΔT2だけ短くなるという傾向を有する。ここで、連結部82が常温状態でフレーム部材82aから液晶ライトバルブ50gまでの距離が標準値D0に保たれているとする。この場合、レンズ駆動装置72を適宜動作させて投射レンズ71を構成するレンズ群71a,71c等を光軸OA方向に適宜微動させることにより、投射レンズ71のバックフォーカス量BF1'を正の差分ΔB'=−ΔB=−β・ΔT2だけ増加させて標準値BF0に戻すことができる。これにより、投射レンズ71のバックフォーカス位置を実線で示す液晶ライトバルブ50r等の位置に一致させることができる。逆に、投射レンズ71が比較的低温状態となった場合、図示を省略するが、投射レンズ71のバックフォーカス量がBF0から増加し、バックフォーカス位置が光路上流側にシフトしたものとなる。ここで、レンズ駆動装置72を適宜動作させることにより、投射レンズ71のバックフォーカス量を負の差分ΔB'=−β・ΔT2だけ減少させて標準値BF0に戻すならば、投射レンズ71のバックフォーカス位置を液晶ライトバルブ50r等の位置に一致させることができる。つまり、投射レンズ71の温度にかかわらず、不図示のスクリーン上に液晶ライトバルブ50r,50g,50bの像をピントの合った状態で投射することができる。以上では、温度係数βを一定と考えたが、温度係数βが温度に伴って大きく変化しても、温度に伴って変化する温度係数β(T)を用いれば、バックフォーカス位置の正確な温度補償が可能になる。
【0032】
以上では、投射レンズ71が常温状態であるか、連結部82が常温状態であるかのいずれかを前提としたが、投射レンズ71及び連結部82の双方が常温状態からずれてもよい。この場合、第1のフォーカス補償機能と第2のフォーカス補償機能とが一括して行われる。つまり、投射レンズ71を構成するレンズ群71a,71c等を光軸OA方向に適宜微動させ、投射レンズ71のバックフォーカス量をΔDとΔB'とを加算した補償量によって温度変動を相殺することで、投射光学系70と表示装置81と含めた系においてフォーカス補償が可能になる。
【0033】
なお、フォーカス補償に際して移動させるレンズは、レンズ群71a,71cに限らず、投射レンズ71内に特別設けた補正レンズ(不図示)とすることもできる。
【0034】
〔2.プロジェクターの制御系〕
図1に示すように、制御装置90は、ビデオ信号等の外部画像信号が入力される画像処理部91と、画像処理部91の出力に基づいて各液晶ライトバルブ50r,50g,50bを駆動するパネル駆動部92と、画像処理部91の出力に基づいて調光機構31を駆動する調光機構駆動部93と、光源装置21に給電して発光管21aの点灯状態を調整する点灯駆動部94と、投射光学系70による結像状態を調整するためのレンズ駆動制御部95と、これらの回路部分91,94,95等の動作を統括的に制御する主制御部99とを備える。なお、制御装置90は、電源装置101から電力の供給を受けて動作する。
【0035】
制御装置90において、画像処理部91は、入力された外部画像信号に対して色補正、歪補正等を行うことや、外部画像信号に対応する画像に代えて或いは重畳して文字情報等を表示することができる。
【0036】
パネル駆動部92は、画像処理部91から出力された画像処理後の画像信号に基づいて各液晶ライトバルブ50r,50g,50bの状態を調節する駆動信号を発生する。これにより、画像処理部91から入力された画像信号に対応して、液晶ライトバルブ50r,50g,50bにおいて、透過率分布としての画像を形成することができる。
【0037】
調光機構駆動部93は、調光機構31の開閉状態を制御する。調光機構駆動部93は、遮光部33,34が光路の大半を遮断している閉状態と、遮光部33,34が光路を開放している開状態との間で、調光機構31に連続的又は段階的な開閉動作を行わせる。
【0038】
点灯駆動部94は、発光管21aに供給する電圧や電流の振幅や周期等を調節することによって、発光管21aの発光状態を調節する。
【0039】
レンズ駆動制御部95は、レンズ駆動装置72に制御信号を出力することによりレンズ駆動装置72を適切に動作させており、投射レンズ71の投射倍率、レンズシフト量、バックフォーフォーカス量等を所望の状態にすることができる。また、レンズ駆動制御部95は、レンズ駆動装置72に内蔵されたズームポジションセンサー、シフトセンサー等からの検出信号を受信しており、投射レンズ71の投射倍率、レンズシフト量等のレンズ情報を監視している。
【0040】
主制御部99は、マイクロコンピューター、メモリー等からなり、画像処理部91、点灯駆動部94、レンズ駆動制御部95等を制御するために適宜用意されたプログラムに基づいて動作する。これにより、プロジェクター100の動作状態が適宜維持される。本実施形態において、主制御部99は、検出回路96を介して第1温度センサー97の検出出力を監視しており、演算部として、第1温度センサー97の検出結果に基づいて投射レンズ71を構成する一部のレンズ群71a,71cを温度補償のために移動させる量である第1の移動量を算出する。この移動量は、距離を直接表すものである必要はなく、レンズ駆動装置72の駆動量に対応するものであればよい。主制御部99は、検出回路96を介して第2温度センサー98の検出出力も監視しており、演算部として、第2温度センサー98の検出結果に基づいて投射レンズ71を構成する一部のレンズ群71a,71cを温度補償のために移動させる量である第2の移動量を算出する。主制御部99は、第1の移動量と第2の移動量とを加算して、投射レンズ71のバックフォーカス量を加算値ΔD+ΔB'だけ変化させるための制御信号を準備し、この制御信号をレンズ駆動制御部95に出力する。なお、主制御部99は、以上のような差分ΔD,ΔB'を計算するために必要な換算表や換算式を不揮発性のメモリー部分に保管している。
【0041】
〔3.フォーカス補償の動作〕
以下、図3のフローチャートを参照して、本実施形態のプロジェクター100におけるフォーカス補償動作について説明する。
【0042】
まず、プロジェクター100は、画像信号の表示処理を行う(ステップS10)。すなわち、主制御部99は、制御装置90に画像信号入力端子を介してビデオ信号が入力されると、画像処理部91を動作させて、液晶ライトバルブ50r,50g,50bにビデオ信号に対応する光変調を行わせる。
【0043】
次に、主制御部99は、検出部である第1温度センサー97の検出結果に基づいて、中間部材82cの常温からの温度差ΔT1を検出する(ステップS11)。
【0044】
次に、主制御部99は、ステップS11で得た温度差ΔT1から、投射レンズ71のバックフォーカス量の修正量として上述した差分ΔDを算出する(ステップS12)。
【0045】
次に、主制御部99は、検出部である第2温度センサー98の検出結果に基づいて、投射レンズ71の常温からの温度差ΔT2を検出する(ステップS13)。
【0046】
次に、主制御部99は、ステップS13で得た温度差ΔT2から、投射レンズ71のバックフォーカス量の修正量として上述した差分ΔB'を算出する(ステップS14)。
【0047】
次に、主制御部99は、投射レンズ71のバックフォーカス量の総修正量として上述した2つの差分の加算値ΔD+ΔB'を算出する(ステップS15)。
【0048】
次に、主制御部99は、この加算値ΔD+ΔB'を与える移動量に対応する制御信号をレンズ駆動制御部95に出力することにより、レンズ駆動装置72を適宜動作させ、投射光学系70と表示装置81と含めた系においてフォーカス補償を行わせる(ステップS17)。
【0049】
主制御部99は、電源のオフ等によって投射動作の終了が指示されるまでは(ステップS18のY)、ステップS17の動作の後、ステップS10に戻る(ステップS18のN)。
【0050】
以上の説明では、投射レンズ71の温度変化に伴う投射レンズ71のバックフォーカス量の変動である差分ΔB'が比較的大きいとしたが、この差分ΔB'が差分ΔDに比較して小さい場合、主制御部99は、第1温度センサー97の検出結果のみに基づいて動作することができる。この場合、第2温度センサー98は不要となり、主制御部99は、投射レンズ71のバックフォーカス量の総修正量として差分ΔDのみを算出し、この差分ΔDの移動量に対応する制御信号をレンズ駆動制御部95に出力することにより、レンズ駆動装置72を適宜動作させてフォーカス補償を行わせる。
【0051】
以上説明したプロジェクター100によれば、レンズ移動部としての主制御部99やレンズ駆動装置72が連結部82の温度情報を検出する第1温度センサー97の検出結果に基づいて投射レンズ71の一部を移動させるので、連結部82の温度変化によって投射レンズ71と表示装置81との間隔が変化した場合にも、これを相殺するように投射レンズ71のバックフォーカス位置を調整することができ、環境変化に関わらず良好な画像を投射できるプロジェクター100を提供することができる。
【0052】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係るプロジェクターの光学系の構成について説明する。なお、第2実施形態のプロジェクターは、第1実施形態のプロジェクター100を変形したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様である。
【0053】
図4は、図2に対応するものであり、第2実施形態に係るプロジェクター100の要部の側面図である。この場合、レンズ駆動装置72は、投射レンズ71全体を光軸OAの方向に移動させることにより、バックフォーフォーカス位置を微小変化させ得るようになっている。
【0054】
以下、レンズ駆動装置72の第1のフォーカス補償機能について説明する。連結部82、特に中間部材82cの周辺が常温状態である場合、図4に実線で示すように、フレーム部材82aから液晶ライトバルブ50gまでの距離がD0となっている。ここで、投射レンズ71のバックフォーカス量BF0が標準値に保たれているとするならば、投射レンズ71のバックフォーカス位置は、実線で示す液晶ライトバルブ50r等の位置に対応するものとなっており、不図示のスクリーン上にピントの合った結像が可能になっている。その後、連結部82の周辺が加熱されて温度差ΔT1だけ高温状態となった場合、図2に二点鎖線で示すように、フレーム部材82aから液晶ライトバルブ50gまでの距離がD1に延びている。ここで、投射レンズ71のバックフォーカス量BF0が標準値に保たれているとするならば、レンズ駆動装置72を適宜動作させて投射レンズ71全体を−Z方向に正の差分ΔD=D1−D0=α・ΔT1だけ移動させることで、投射レンズ71のバックフォーカス位置を二点鎖線で示す液晶ライトバルブ50r等の位置に一致させることができる。逆に、連結部82の周辺が常温よりも温度差ΔT1だけ低温状態となった場合、図示を省略するが、フレーム部材82aから液晶ライトバルブ50gまでの距離がD0よりも短くなる。ここで、投射レンズ71のバックフォーカス量BF0が標準値に保たれているとするならば、レンズ駆動装置72を適宜動作させて投射レンズ71全体を−Z方向に負の差分ΔD=D1−D0=α・ΔT1だけ、つまり+Z方向に適宜移動させることで、投射レンズ71のバックフォーカス位置を液晶ライトバルブ50r等の位置に一致させることができる。つまり、連結部82の周辺の温度環境にかかわらず、不図示のスクリーン上に液晶ライトバルブ50r,50g,50bの像をピントの合った状態で投射することができる。
【0055】
以下、レンズ駆動装置72の第2のフォーカス補償機能について説明する。以下では、投射レンズ71が常温状態から変動してバックフォーカス量BF0が変化するものとする。投射レンズ71が画像投射中に加熱されてΔT2だけ高温状態となった場合、投射レンズ71のバックフォーカス量がBF0からBF2に減少し、バックフォーカス位置が差分ΔB=β・ΔT2だけ光路下流側にシフトしたものとなる。ここで、フレーム部材82aから液晶ライトバルブ50gまでの距離が標準値D0に保たれているとするならば、レンズ駆動装置72を適宜動作させて投射レンズ71全体を+Z方向に負の差分ΔB'=−ΔBだけ移動させることで、投射レンズ71のバックフォーカス位置を実線で示す液晶ライトバルブ50r等の位置に一致させることができる。逆に、投射レンズ71が常温よりも温度差ΔT2だけ低温状態となった場合、図示を省略するが、投射レンズ71のバックフォーカス量がBF0から増加し、バックフォーカス位置が光路上流側にシフトしたものとなる。ここで、フレーム部材82aから液晶ライトバルブ50gまでの距離が標準値D0に保たれているとするならば、レンズ駆動装置72を適宜動作させて投射レンズ71全体を+Z方向に正の差分ΔB'=−ΔBだけ移動させることで、投射レンズ71のバックフォーカス位置を実線で示す液晶ライトバルブ50r等の位置に一致させることができる。つまり、投射レンズ71の温度にかかわらず、不図示のスクリーン上に液晶ライトバルブ50r,50g,50bの像をピントの合った状態で投射することができる。
【0056】
図5は、第2実施形態に係るプロジェクター100の動作を説明するフローチャートである。この場合、主制御部99は、ステップS11で得た温度差ΔT1から、フォーカス補償に必要な投射レンズ71全体の移動量として上述した差分ΔDを算出する(ステップS112)。また、主制御部99は、ステップS13で得た温度差ΔT2から、フォーカス補償に必要な投射レンズ71全体の移動量として上述した差分ΔB'を算出する(ステップS114)。そして、主制御部99は、ステップS115で、投射レンズ71の総移動量として上述した2つの差分の加算値ΔD+ΔB'を算出し、ステップS17で、この加算値ΔD+ΔB'の移動量に対応する制御信号をレンズ駆動制御部95に出力し、レンズ駆動装置72によって投射光学系70と表示装置81と含めた系においてフォーカス補償を行わせる。
【0057】
以上説明したプロジェクター100によれば、レンズ移動部としての主制御部99やレンズ駆動装置72が連結部82の温度情報を検出する第1温度センサー97の検出結果に基づいて投射レンズ71全体を移動させるので、連結部82の温度変化によって投射レンズ71と表示装置81との間隔が変化した場合にも、これを相殺するように投射レンズ71のバックフォーカス位置を調整することができ、環境変化に関わらず良好な画像を投射できるプロジェクター100を提供することができる。
【0058】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係るプロジェクターの光学系の構成について説明する。なお、第3実施形態のプロジェクターは、第1実施形態のプロジェクター100を変形したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様である。
【0059】
図6は、図1に対応するものであり、第3実施形態に係るプロジェクター200の構造を説明する図である。この場合、図1に示すような温度センサー98,98を設けないで、主制御部99が調光機構31を構成する一対の遮光部33,34の開閉状態を検出する。つまり、主制御部99は、画像処理部91を介して調光機構駆動部93の動作状態として遮光部33,34の開閉状態を監視する。
【0060】
なお、プロジェクター200は、調光機構31を開状態とする第1の動作モードと、表示画像に応じて調光機構31による遮光量を増減させる第2の動作モードとで動作可能となっている。第2の動作モードは、ダイナミック・コントラストを増加させる動作モードである。プロジェクター200が第2の動作モードで動作するとき、調光機構31は、調光機構駆動部93の制御下で、投射画像に応じて開閉動作する。つまり、第2の動作モードでは、表示画像に応じて遮光量を増減させるので、動画のコントラストを向上させることができる。なお、ダイナミック・コントラスト優先の第2の動作モードとするか、輝度優先の第1の動作モードとするかは、例えばユーザが設定することができ、主制御部99には、動作モードの選択が記憶される。
【0061】
図7は、第3実施形態に係るプロジェクター200の動作を説明するフローチャートである。この場合、主制御部99は、プロジェクター200が高輝度の動作モードに設定されているか否かの判断を行う(ステップS21)。主制御部99は、ダイナミック・コントラスト優先の第2の動作モードが選択されず、輝度優先の第1の動作モードが選択されていると判断した場合、投射レンズ71のバックフォーカス量の修正量として差分ΔDを算出する(ステップS22)。この場合、差分ΔDは、第1の動作モードでの動作によって予測される連結部82の光軸OA方向の伸張量に相当する。主制御部99は、この差分ΔDを相殺する移動量に対応する制御信号をレンズ駆動制御部95に出力し、投射レンズ71の一部を微動させることによってフォーカス補償を行わせる(ステップS17)。なお、主制御部99は、第2の動作モードが選択されていると判断した場合、連結部82の光軸OA方向の伸張量が殆ど無視できるものとして、ステップS22,S17の処理を省略する。
【0062】
以上において、高輝度の第1の動作モードでのフォーカス補償は、投射レンズ71の一部を微動させることに限らず、投射レンズ71の全部を微動させることによっても達成される。
【0063】
また、以上の処理では、投射レンズ71自体の温度変化を無視しているが、投射レンズ71の温度変化を考慮して、投射レンズ71のバックフォーカス量の増減調整を行うこともできる。
【0064】
以上説明した第3実施形態のプロジェクター200において、主制御部99は、検出部として、照明光の射出強度が所定以上に保たれる第1の動作モードである場合に、連結部82が比較的高温状態であることを判定又は検出し、照明光の射出強度が所定未満に変化する第2の動作モードである場合に、連結部82が比較的低温状態であることを判定又は検出するので、第1及び第2の動作モードに適合するように、投射レンズ71のバックフォーカス位置を調整することができる。
【0065】
なお、この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0066】
すなわち、上記実施形態では、プロジェクター100,200がオートフォーカス型でないことを前提としたが、プロジェクター100,200がオートフォーカス型であれば、レンズ駆動装置72によって投射レンズ71の自動焦点調節を行わせることができる。この場合も、オートフォーカス機能を停止させたとき、環境温度によって投射レンズ71のピント状態が変化するので、図3,5,7に示す動作を実行することによって環境変化に関わらず良好な画像を投射できる。
【0067】
また、上記実施形態では、投射レンズ71の周辺の温度変化に基づいてバックフォーカス位置の調整を行っているが、湿度変化を加味してバックフォーカス位置の調整を行うこともできる。
【0068】
また、上記実施形態では、照明光学系20に設けた光源装置21の発光管21aとして高圧水銀ランプを用いているが、発光管21aとして、メタルハライドランプ等の種々の光源を用いることができる。
【0069】
また、上記実施形態では、光源装置21からの光を複数の部分光束に分割するため、一対のレンズアレイ24,25を用いていたが、この発明は、このようなレンズアレイを用いないプロジェクターにも適用可能である。さらに、レンズアレイ24,25をロッドインテグレーターに置き換えることもできる。
【0070】
上記第1実施形態では、光源装置21等からの光を特定方向の偏光とする偏光変換装置26を用いていたが、この発明は、このような偏光変換装置26を用いないプロジェクターにも適用可能である。
【0071】
上記実施形態では、透過型の液晶ライトバルブ50r,50g,50bを備えるプロジェクターに本発明を適用した場合の例について説明したが、本発明は、反射型の液晶ライトバルブを備えるプロジェクターにも適用することが可能である。ここで、「透過型」とは、液晶パネル等を含む液晶ライトバルブが光を透過するタイプであることを意味しており、「反射型」とは、液晶ライトバルブが光を反射するタイプであることを意味している。
【0072】
プロジェクターとしては、投射面を観察する方向から画像投射を行う前面投射型のプロジェクターと、投射面を観察する方向とは反対側から画像投射を行う背面投射型のプロジェクターとがあるが、図1等に示すプロジェクター100,200の構成は、いずれにも適用可能である。
【0073】
上記実施形態では、3つの液晶ライトバルブ50r,50g,50bを用いたプロジェクター100,200の例のみを挙げたが、本発明は、1つ又は2つの液晶ライトバルブを用いたプロジェクター、4つ以上の液晶ライトバルブを用いたプロジェクターにも適用可能である。なお、単一の液晶ライトバルブでプロジェクターを構成する場合、この液晶ライトバルブが表示部となる。
【0074】
上記実施形態のプロジェクター100,200では、色分離導光光学系40や液晶ライトバルブ50r,50g,50b等を用いて各色の光変調を行っているが、これらに代えて、例えば照明装置21によって照明されるカラーホイールと、マイクロミラーの画素によって構成されカラーホイールの透過光が照射されるデバイス(光変調装置としてのライトバルブ)とを組み合わせたものとを用いることにより、カラーの光変調及び合成を行うこともできる。
【0075】
プロジェクターとしては、シート状の原稿を照明するとともに原稿の拡大像を投射レンズで拡大投射するタイプの装置(OHP)も存在するが、本発明は、この種のプロジェクターにも適用可能である。この際、原稿の支持台が表示部となり、検出部は、支持台と投射レンズとの間に介在する連結部の温度等の情報を検出する。
【符号の説明】
【0076】
10…光学系部分、 11…光学部品用筐体、 20…照明光学系、 21…光源装置、 22…凹レンズ、 24,25…レンズアレイ、 26…偏光変換装置、 27…重畳レンズ、 31…調光機構、 40…色分離導光光学系、 41a,41b…ダイクロイックミラー、 42a,42b,42c…反射ミラー、 43r,43g,43b…フィールドレンズ、 50…光変調部、 50r,50g,50b…液晶ライトバルブ、 51r,51g,51b…液晶パネル、 52r,52g,52b…入射側偏光フィルター、 53r,53g,53b…射出側偏光フィルター、 60…光合成光学系、 61,62…ダイクロイックミラー、 70…投射光学系、 71…投射レンズ、 71a,71b,71c,71d…レンズ群、 72…レンズ駆動装置、 73…部分駆動機構、 81…表示装置、 82…連結部、 82a…フレーム部材、 82b…ホルダ部材、 82c…中間部材、 90…制御装置、 91…画像処理部、 92…パネル駆動部、 93…調光機構駆動部、 94…点灯駆動部、 95…レンズ駆動制御部、 98,98…温度センサー、 99…主制御部、 100,200…プロジェクター、 101…電源装置、 LB…青色光、 LG…緑色光、 LR…赤色光、 OA…光軸、 OP1,OP2,OP3…光路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示部と、
前記表示部に表示された画像を投射する投射レンズと、
前記表示部と投射レンズとを連結する連結部と、
前記連結部の状況に関する情報を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて投射レンズの少なくとも一部を移動させるレンズ移動部と、
を備えるプロジェクター。
【請求項2】
前記検出部は、前記連結部に取り付けられて前記連結部の温度を検出する第1のセンサーを有する、請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記レンズ移動部は、前記検出部の検出結果に基づいて前記投射レンズの全体又は一部の移動量を算出する演算部と、前記演算部の算出結果に応じて前記投射レンズの全体又は一部を移動させるレンズ駆動装置とを有する、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記検出部は、前記投射レンズに取り付けられて前記投射レンズの温度を検出する第2のセンサーを有する、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項5】
前記演算部は、前記第1及び第2のセンサーの検出結果に基づいて前記投射レンズの全体又は一部の移動量を算出する、請求項4に記載のプロジェクター。
【請求項6】
前記表示部を照明するための照明光を射出する照明光学系をさらに備える、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項7】
前記表示部は、前記照明光学系からの照明光を変調する光変調装置である、請求項6に記載のプロジェクター。
【請求項8】
前記照明光学系は、照明光の射出強度を変化させることができ、
前記検出部は、前記照明光学系からの照明光の射出強度が所定以上に保たれる第1の動作モードである場合に、前記連結部の状況に関する情報として前記連結部が比較的高温状態であること検出し、前記照明装置からの照明光の射出強度が前記所定未満に変化する第2の動作モードである場合に、前記連結部の状況に関する情報として前記連結部が比較的低温状態であることを検出する、請求項6及び請求項7のいずれか一項に記載のプロジェクター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−53512(P2011−53512A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203390(P2009−203390)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】