説明

プロジェクター

【課題】色むらを抑えてコントラスト比が高いプロジェクターを安価で簡単な構成で提供する。
【解決手段】本発明のプロジェクターは、光源と、光源からの光束を部分的に遮光可能な遮光機構を有する照明光学系と、照明光学系からの照明光によって照明される光変調装置と、を備え、遮光機構は、所定の回転軸のまわりに回動することで遮光領域の大きさを変化させる一対の遮光部材を有し、これら一対の遮光部材は、最大遮光状態とされた際に前記照明光学系の光軸に沿う方向に、互いの先端部が重なるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
照明装置の調整のために遮光部材を用いたプロジェクターとして、例えば回動によって開閉可能な一対の板状の遮光部材を、照明装置内の一対のレンズアレイ間に照明光軸を挟んで対象に配置して、照明光の遮光量の調整を行うものが知られている。また、このような遮光部材としてブロック状の遮光体を用い、当該遮光体に切り欠いたような窪みを設けて遮光量の変化を調整するものも知られている。ところが、このような切欠きを有するブロック状の遮光体を遮光部材として用いる場合、遮光量の変化を所望のものとするために当該遮光体の端部に複雑な曲面を形成する必要がある。なお、この場合、当該遮光体のための空間も必要となるが、一対のレンズアレイ周辺には空間的制限があり、ブロック状の遮光体を設置するのは困難な場合がある。
【0003】
そこで、遮光部が第1遮光部材と第2遮光部材とを有してなり、第1遮光部材が切欠き部を有することにより、遮光量の変化を比較的なだらかなものにすることができ、かつ、第2遮光部材が切欠き部に対応する光の遮光領域を変化させ、第1遮光部材の全閉時における切欠き部に対応する光束の全部または一部を遮光する構成が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−217651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一対の板状の遮光部材を開閉動作させることにより遮光を行う場合、遮光量の変化がなだらかなものとならない可能性があり、色むらが発生しやすい。また、各遮光部材の位置制御のばらつきも大きくなってしまう。その結果、許容できる色むらに抑えるためには各遮光部材による遮光量(閉じ量)に限界があり、コントラスト比を大きくすることは困難であった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、色むらを抑えてコントラスト比が高いプロジェクターを提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプロジェクターは、光源と、前記光源からの光束を部分的に遮光可能な遮光機構を有する照明光学系と、前記照明光学系からの照明光によって照明される光変調装置と、を備え、前記遮光機構は、所定の回転軸のまわりに回動することで遮光領域の大きさを変化させる一対の遮光部材を有し、これら一対の遮光部材は、最大遮光状態とされた際に、前記照明光学系の光軸に沿う方向に、互いの先端部が重なるように配置されていることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、一対の遮光部材が最大遮光状態とされた際に互いの先端部が重なる配置とされていることから、光源からの光を完全に遮蔽することが可能となる。特に、光束のうち輝度の高い中央側を遮光することで色むらが抑制される。
【0009】
また、前記一対の遮光部材には、前記先端部の両端側に第1切欠部がそれぞれ形成されている構成としてもよい。
【0010】
このような構成によれば、一対の遮光部材が所定の位置(最大遮光位置)にあるときに互いに重なる先端部どうしによって光源からの光束を完全に遮蔽してしまうのではなく、各先端部に形成された一対の第1切欠部によって漏光させることが可能となる。これにより、所望のコントラスト比が得られるようになる。また、第1切欠部を先端部の両端側に形成することによって、光変調装置に対して斜めに入射する漏れ光によってより高コントラストとなる。
【0011】
また、前記一対の遮光部材は、前記最大遮光位置とされた際に、前記所定の遮光位置において前記光軸に直交する方向に延在する第1遮光板部と、前記第1遮光板部に対して前記照明光の射出側に、先端側が前記第1遮光板部から離れるように前記第1遮光板部に対して傾斜する第2遮光板部とを有してなる構成としてもよい。
このように、一対の遮光部材が回転する際に、第1遮光板部だけでなく第2遮光板部においても光軸を遮光することによって、遮光量の変化を比較的なだらかなものとすることができる。また、最大遮光状態において照明光量を十分に下げることができる。
【0012】
また、前記第1遮光板部に前記第1切欠部が形成され、前記第2遮光板部の先端側中央部分に第2切欠部が形成されている構成としてもよい。
このように、第2遮光板部の先端側中央部分に設けられた第2切欠部から光を漏らすことによって、遮光量の変化を比較的なだらかなものとすることができる。
【0013】
また、前記照明光学系は、小レンズがマトリックス状に配列されたレンズアレイを備え、前記一対の遮光部材の移動方向における前記小レンズの数が奇数であり、前記レンズアレイの中央の小レンズが前記光軸上に配置されている構成としてもよい。
このように、レンズアレイの小レンズの数が奇数で、かつその中央の小レンズが光軸上に配置されている場合、一対の遮光部材が光軸上で一致している従来の構成では、一対の遮光部材を閉じた場合でもその隙間から光源からの照射光の一部(特に、最も輝度の高い中央の光)がレンズアレイの中央の小レンズに入射してしまい、所望のコントラストが得られない。これに対して、本発明の構成であれば、最大遮光状態のときに一対の遮光部材が重なるように配置されるため、レンズアレイが奇数の小レンズの構成であっても、照射光の中央側の光を完全に遮光することが可能であるため、所望のコントラストを得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態のプロジェクターの構成を示す斜視図。
【図2】プロジェクターの概略構成を模式的に示す図。
【図3】プロジェクターの内部構成を示す図。
【図4】調光機構を中心に示す部分拡大断面図。
【図5】調光機構の構成を示す分解図。
【図6】遮光部材とレンズアレイとの位置関係を示す図。
【図7】(a),(b)は、調光機構の全体の構成を具体的に示す図。
【図8】一対の遮光シャッターの構成を具体的に示す図であって、光源装置(第1レンズアレイ)側から見た斜視図。
【図9】(a)は、一対の遮光シャッターの構成を示す平面図、(b)は、(a)の側面図。
【図10】一対の遮光シャッターの構成を具体的に示す図であって、第2レンズアレイ側から見た斜視図。
【図11】調光機構の動作を説明するための斜視図。
【図12】調光機構の動作を示すための断面図。
【図13】最大開放状態(全開状態)を示す図であって、(a)は側面図、(b)は光軸側から見た図。
【図14】最大遮光状態(全閉状態)を示す図であって、(a)は側面図、(b)は光軸側から見た図。
【図15】調光機構の動作による遮光量(照明光の通過量)の変化について詳細な説明をするための概念図。
【図16】第1切欠部他の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0016】
[プロジェクター]
以下、本実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照して説明する。
本実施形態のプロジェクターは、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調して画像光を形成し、その画像光を拡大投写する。
図1は、本実施形態のプロジェクターの構成を示す斜視図であり、ケーブルカバーを取り外した図である。図2は、プロジェクターの概略構成を模式的に示す図である。
【0017】
図1に示すように、プロジェクター1は、本体(プロジェクター本体)1Aが外装筐体2で囲まれた構成になっている。外装筐体2は、合成樹脂製であり、筐体上部を構成するアッパーケース(第1ケース)21、筐体下部を構成するロアーケース(第2ケース)22等を備えており、これらは、ネジ等により固定されている。
【0018】
また、外装筐体2内には、図2に示すように、制御部10、光学ユニット3、電源ユニット4、冷却ファン51、および排気ファン52等が配置されている。光学ユニット3は、平面視略L字状に構成され、光源311を有する光源装置31、電気光学装置35、および投写光学装置(投写光学系)36を備えている。光学ユニット3は、制御部10による制御の下、光源311から射出された光束を光学的に処理して画像情報に応じた画像光を電気光学装置35にて形成し、この画像光を投写光学装置36によってスクリーン等に画像を表示させる。
【0019】
光源装置31は、外装筐体2の端部に配置され、投写光学装置36は、外装筐体2の略中央部に配置される。なお、以下においては、説明の便宜上、光源装置31から光束が射出される方向を+X方向、電気光学装置35から画像光が射出される方向を+Y方向とし、外装筐体2の各ケース21,22の組み合わせ方向をZ方向とする。
【0020】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等が実装された回路基板として構成される。制御部10は、コンピューターとして機能するものであり、プロジェクター1の動作の制御、例えば、画像の投写に関わる制御等を行う。なお、図2中に示す制御部10の位置は模式的に示すものであって実際の位置とは異なっている。詳しくは後述するが、実際に制御部10は光学ユニット3を覆うようにして配置される。
【0021】
そして、図1に戻り、上記各部品を収容している外装筐体2のアッパーケース21の上面には凹部210が形成され、この凹部210を構成する一方の傾斜面側には、さらに平面視矩形状の凹部211が形成されている。そして、この凹部211の底面には投写窓201が設けられており、投写光学装置36から射出された画像光は、この投写窓201から外装筐体2の後方(図2のランプカバー24側)に向かって射出される。ここで、投写窓201上に投写光を遮る物がユーザーによって置かれた場合には、上記した異物検出センサー(不図示)によって検出できるようになっている。制御部10は、異物検出センサー(不図示)から異物検出信号が入力されるとユーザーへ警告する。
【0022】
アッパーケース21の前方には、プロジェクター1の各種設定を行うための複数の操作キーよって構成される操作部23が設けられている。また、アッパーケース21の後方には、光源装置31の交換用の開口部212が形成されており、この開口部212は、ランプカバー24(図2)がアッパーケース21に装着されることによって閉塞される。
【0023】
外装筐体2の側面2Bには、外気を取り込むための吸気口220が設けられている。吸気口220は、複数の矩形状のスリット孔で形成されており、この吸気口220の内側には、図示しない、防塵フィルターが配置されている。そして、光学ユニット3は、この吸気口220から取り込まれて防塵フィルターを通過した空気によって冷却される。
【0024】
また、外装筐体2の右側方(側面2C)には、内部の暖気を排出するための排気口222が設けられている。排気口222は、複数のスリット孔で形成されており、光源311(図2)の点灯等によって温まった外装筐体2内の空気は、この排気口222から外部に排出される。ロアーケース22には、排気口222の前方に矩形状の凹部211が形成されており、この凹部211によって形成される空間内に、プロジェクター1に接続される複数のケーブル等が収容されている。
【0025】
[光学ユニット]
次に、光学ユニットの各構成要素について図2および図3を用いて詳しく説明する。
図3は、プロジェクターの内部構成を示す図である。
図2および図3に示すように、光学ユニット3は、平面視L字状を呈し、光源装置31、照明光学装置(照明光学系)32、色分離光学装置33、リレー光学装置34、電気光学装置35、投写光学装置36、およびこれら各光学部品31〜36を所定位置に配置する光学部品用筐体37を備える。
【0026】
光源装置31は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等からなる放電型の光源311およびリフレクター312等を備える。そして、光源装置31は、光源311から射出された光束をリフレクター312によって射出方向を揃え、照明光学装置32に向けて射出する。
【0027】
照明光学装置32は、第1レンズアレイ321、第2レンズアレイ322、偏光変換素子323、重畳レンズ324および調光機構(遮光機構)325を備える。
第1レンズアレイ321は、光源311から射出された光束の光軸L方向から見て略矩形の輪郭を有する小レンズがマトリックス状に配列された構成を有しており、光源装置31から射出された光束を複数の部分光束に分割する。第2レンズアレイ322は、第1レンズアレイ321と略同様の構成を有しており、重畳レンズ324とともに、部分光束を後述する液晶ライトバルブ(光変調素子)352の表面に略重畳させる。偏光変換素子323は、第2レンズアレイ322から射出されたランダム偏光光を液晶ライトバルブ352で利用可能な略1種類の偏光光に揃える機能を有する。
【0028】
調光機構325は、光源311から射出された光束の一部を遮光する遮光シャッター(遮光部材)326,327(図4)を備え、光束の通過光量を調整する機能を有している。詳しい構成については後述するが、この調光機構325は、上記制御部10による制御のもと、光源311から射出され、第1レンズアレイ321を透過した光束の一部を遮光シャッター326,327にて遮光して第2レンズアレイ322に入射する光量、ひいては、電気光学装置35に入射する光量を調整し、投写画像のコントラスト向上に寄与するものである。
【0029】
色分離光学装置33は、2枚のダイクロイックミラー331,332、および反射ミラー333を備え、照明光学装置32から射出された光束を赤色光(以下「R光」という)、緑色光(以下「G光」という)、青色光(以下「B光」という)の3色の色光に分離する機能を有する。
【0030】
リレー光学装置34は、入射側レンズ341、リレーレンズ343、および反射ミラー342,344を備え、第2のダイクロイックミラー332を透過したR光をR光用の液晶ライトバルブ352Rまで導く機能を有する。なお、光学ユニット3は、リレー光学装置34がR光を導く構成としているが、これに限らず、例えば、B光を導く構成としてもよい。
【0031】
電気光学装置35は、入射側偏光板351、光変調装置としての液晶ライトバルブ352、射出側偏光板353、色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム354を備え、色分離光学装置33から射出された各色光を画像情報に応じて変調する。
【0032】
投写光学装置36は、複数のレンズを組み合わせた組レンズと、非球面形状の反射ミラー38を有して構成されている。投写光学装置36は、電気光学装置35にて変調された光束を組レンズから反射ミラー38に射出し、反射ミラー38によって光束を広角化するように反射して投写する。このような構造とすることにより、投写距離の短い、いわゆる短焦点プロジェクターとして構成することができる。なお、組レンズから反射ミラー38に射出する光束の方向を投写光学装置36内の投写方向という。
【0033】
電源ユニット4は、外部電源から供給された交流電力を整流、平滑化し、光源311および制御部等に出力する。電源ユニット4は、光源装置31の下方に配設されている。具体的には、ロアーケース22の底部に装着される電源ケース20(図3)内に収容されている。
【0034】
冷却ファン51は、回転軸方向から吸入した空気を回転接線方向に吐出するシロッコファンで構成され、吸気口220の内側であって、リレー光学装置34の近傍に配置されている。この冷却ファン51は、外気を吸入する吸入口511が吸気口220側を向き、空気を吐出する吐出口512がリレー光学装置34側に向くように配置される。そして、冷却ファン51は、吸入口511が取り込んだ外気を発熱するリレー光学装置34に向けて吐出することによって、リレー光学装置34を冷却する。なお、以下では、冷却ファン51が空気を吐出する方向を「吐出方向」という。
【0035】
排気ファン52は、軸流ファンで構成され、排気口222の内側であって、光源装置31との間に配置される。この排気ファン52は、光源装置31等を冷却して温められた空気を、排気口222を介して外装筐体2の外部に排出する。
【0036】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等が実装されたメイン回路基板53およびドライバー基板54を備えて構成され、使用者の操作に応じて、或いは、自律的に、プロジェクター1を制御する。
【0037】
例えば、制御部10は、前述の光源装置31の点灯を制御するほか、操作部23を介して入力される画像信号に応じた駆動信号を生成し電気光学装置35に出力する。この駆動信号生成の際に、制御部10は、使用者により設定されたパラメーターに応じた画質調整等の処理を実行する。このような制御部10は、例えば、記憶部、情報取得部、画像生成部、駆動制御部及び情報保存部等を備える。
【0038】
[調光機構]
次に、調光機構の構成について詳述する。
図4は、調光機構を中心に示す部分拡大断面図であり、図5は、調光機構の構成を示す分解図であり、図6は、遮光部材とレンズアレイとの位置関係を示す図である。
図4に示すように、調光機構325は、第1レンズアレイ321と第2レンズアレイ322との間に配設される一対の遮光シャッター(遮光部材)326,327を有して構成されている。このような調光機構325は、図5に示すように照明光学装置32の側方から光学部品用筐体37の側方側から各遮光シャッター326,327を差し込むように挿入されて、板部材360が光学部品用筐体37に対してねじ止めされることで組み付けられている。調光機構325は、組み込まれた状態において、図6に示すように各遮光シャッター326,327が第1レンズアレイ321と第2レンズアレイ322との間においてこれらの面方向に沿って並ぶように上下に配置される。
【0039】
図7(a),(b)は、調光機構の全体の構成を具体的に示す図である。また、図8は一対の遮光シャッターの構成を具体的に示す図であって、(a)は第1レンズアレイ側から見た斜視図、(b)は第2レンズアレイ側から見た斜視図である。図9(a)は、一対の遮光シャッターの構成を示す平面図、(b)は(a)の側面図である。図10は、一対の遮光シャッターの構成を具体的に示す図であって、第2レンズアレイ側から見た斜視図である。
【0040】
図7(a),(b)に示すように、調光機構325は、光源装置31からの光束を部分的に遮光可能な一対の遮光シャッター326,327と、一対の遮光シャッター326,327を動作させる駆動部329とを備える。
駆動部329は、複数のギア部361,362,363,364と、ギア部364を回転させるためのステッピングモーター365と、これらを保持する板部材360とを備えている。ギア部364は、ステッピングモーター365の回転軸に取り付けられた駆動歯車であって、時計周り方向あるいは反時計周り方向に回転する。ギア部361〜363は従動歯車であって、ギア部364の回転に伴って連動する。
【0041】
遮光シャッター326は、第1ギア部361を介して板部材360に取り付けられており、遮光シャッター327は、第2ギア部362を介して板部材360に取り付けられている。第1ギア部361と第2ギア部362は互いに噛合しており、第2ギア部362側に第3ギア部363が噛合している。第3ギア部363は、ステッピングモーター365に連結された第4ギア部364に噛合している。そして、この第4ギア部364を介してステッピングモーター365の駆動力が第3ギア部363に伝達されて第2ギア部362および第1ギア部361が回転し、遮光シャッター326,327が移動する構成となっている。これら遮光シャッター326,327は、光軸Lに交差する各ギア部361,362の回転軸周りに互いに連動して移動することになる。
【0042】
また、調光機構325は、第1ギア部361と第2ギア部362との噛み合い位置を検出するための噛み合い位置検出センサー366を有している。この噛み合い位置検出センサー366は光学素子からなり、例えば、第2ギア部362の歯数を検出できる箇所に設置されている。この噛み合い位置検出センサー366において第2ギア部362の歯数を検知することにより、当該第2ギア部362の回転量を検出するようになっている。上述したように、遮光シャッター327は第2ギア部362の回転に伴って移動し、遮光シャッター326は第1ギア部361の回転に伴って移動する。すなわち、第1ギア部361は第2ギア部362の回転量に応じて回転するため、噛み合い位置検出センサー366によって第2ギア部362の回転量を検出することにより、遮光シャッター326および遮光シャッター327の移動位置を制御することができる。
【0043】
図8および図9では、最大遮光位置における遮光シャッター326,327の配置状態の様子を示している。これらの図に示すように、遮光シャッター326,327は、最大遮光位置において光軸L上で互いの先端部326a,237aが光軸方向に重なるような配置となっている。
【0044】
遮光シャッター326,327は、それぞれ2枚の第1遮光板部6,第2遮光板部7によって構成され、これら第1遮光板部6および第2遮光板部7が貼り合わされることで所望の形状に形作れられている。2枚の遮光板部6,7はアルミニウムから形成される。
【0045】
遮光シャッター326は、第1遮光板部6Aと、この第1遮光板部6Aの照明光射出側(第2レンズアレイ322側の面)に貼り合わされた第2遮光板部7Aとを有し、最大遮光位置において光軸Lに略直交する方向に延在する第1遮光板部6Aの遮光部61aに対して、第2遮光板部7Aの遮光部71aが傾斜している。具体的に、遮光部71aは、その先端側に行くに従って遮光部61aから離れる方向へ傾斜している。
【0046】
遮光シャッター327は、第1遮光板部6Bと、この第1遮光板部6Bの照明光射出側(第2レンズアレイ322側の面)に貼り合わされた第2遮光板部7Bとを有し、最大遮光位置において光軸Lに交差する方向に延在する第1遮光板部6Bの遮光部61bに対して、第2遮光板部7Bの遮光部71bが傾斜している。遮光部71bはその先端側に行くにしたがって、遮光部61bから離れる方向へ傾斜している。
【0047】
また、光軸Lを挟んで互いに所定の距離をおいて対向配置される遮光部71a,71bどうしは、光軸Lに沿って遮光部61a,61bから離れるにしたがって光軸Lに近づくような傾斜する。遮光部71a,71bの先端から光軸Lまでの距離はそれぞれ等しい。さらに、遮光部71a,71bと第2レンズアレイ322との距離もそれぞれ等しい構成とされている。これにより、遮光シャッター326,327の回転時に遮光部71a,71bにおける遮光位置が光軸Lを介して互いに同じ対照的な位置となり、所望の照度分布となる。
【0048】
また、本実施形態の遮光シャッター326および遮光シャッター327は光軸方向に沿って離れる方向に互いにシフトしており、遮光シャッター326の方が遮光シャッター327よりも第2レンズアレイ322から離れた位置に配置されている。各遮光部71a,71bの先端と第2レンズアレイ322との距離を等しくするために、光軸方向前方(第1レンズアレイ321)側に位置する遮光シャッター327の遮光部71bは、遮光シャッター326の遮光部71bよりも長く設定されている。
【0049】
また、第1遮光板部6A,6Bの先端部326a,327aには、各々の幅方向両端側に第1切欠部320がそれぞれ形成されている。これら第1切欠部320は、最大遮光位置において光源装置31からの照射光を完全遮光してしまうのを防止するためのものであり、各第1切欠部320を通じて照射光の一部が漏れ光として出射する。
【0050】
さらに、図10に示すように、第2遮光板部7A,7Bの先端部327a,327bには、その幅方向中央部分に円弧状の第2切欠部330が形成されている。これら第2切欠部330は、光源装置31から射出された照明光の光束中央側の遮光量を制御するためのものである。
【0051】
つまり、遮光シャッター326は、全開状態から全閉状態に至るまでの間、第2遮光板部7Aに形成された第2切欠部330により光束中心側の遮光量の調整を行うよう機能する。また、全閉状態にあるときには、第1遮光板部6Aの遮光部61aにより光束中央の遮光量を最大にしつつ、第1切欠部320により光束周辺の遮光量の調整を行うよう機能する。
【0052】
同様に、遮光シャッター327は、全開状態から全閉状態に至るまでの間、第2遮光板部7Bに形成された第2切欠部330により光束中心側の遮光量の調整を行うよう機能する。また、全閉状態にあるときには、第1遮光板部6Bの遮光部61bにより光束中央の遮光量を最大にしつつ、第1切欠部320により光束周辺の遮光量の調整を行うよう機能する。
【0053】
このような構成の遮光シャッター326は連結部材301を介して第1ギア部361に連結され、遮光シャッター327は連結部材302を介して第2ギア部362に連結されている。これら連結部材301,302は基材100よりも熱伝導率の低い材料より形成され、例えばSUSからなる。
【0054】
図11は、調光機構の動作を説明するための斜視図であり、図12は、調光機構の動作を示すための断面図である。図13は、最大開放状態(全開状態)を示す図であり、図14は、最大遮光状態(全閉状態)を示す図である。
図11に示すように、調光機構325のステッピングモーター365の回転は、モーターの回転軸Oに接続された第4ギア部364を介して第3ギア部363に伝達される。第3ギア部363の回転に伴って第2ギア部362および第1ギア部361が回転する。このとき、第1ギア部361および第2ギア部362は同期して反対方向に回転する。これにより調光機構325は、遮光シャッター326および遮光シャッター327を同期して観音開き状に開閉移動させることができる。この際、遮光シャッター326,327は、ステッピングモーター365の正転又は逆転に伴ってその状態を全開状態および全閉状態へと変化させる。
【0055】
例えば、図12に示すように、遮光シャッター326,327は各ギア部361,362の中心軸AX1,AX2を中心とする回動動作により、最大遮光状態および全開状態になったりする。
具体的には、図中の実線で示す最大遮光状態では、遮光シャッター326,327が第2レンズアレイ322に略平行となって先端部326a,327aが光軸L上に並ぶ。図中の破線で示す全開状態では、遮光シャッター326,327が第2レンズアレイ322に略平行な全閉時の状態から所定の回動角度θ1(略90°)回転し、先端部326a,327aが照明光の光路外(有効範囲外)に位置し、照明光の遮光がない。
【0056】
また、図示してはいないが、中間の段階として、遮光シャッター326,327が第2レンズアレイ322に略平行な全閉時に比べて所定の回動角度θ2(0°<θ1<θ2)だけ回転し、先端部326a,327aが光軸Lからある程度離れて一部の照明光の遮光を行う状態にもなる。
【0057】
次に、調光機構の動作について具体的に述べる。
図13は、一対の遮蔽シャッターの全開状態を示す図であって、(a)は側面図、(b)は光軸側から見た図である。
全閉状態から全開状態へと遮光シャッター326,327を移動させる場合、図13(a),(b)に示すように、ステッピングモーター365が反時計回りに回転すると、これに伴って第4ギア部364が同方向へ回転し、第3ギア部363は時計回りに回転する。第2ギア部362は第3ギア部363に同期して反時計回りへ回転することから、これに伴って第1ギア部361が時計回りに回転する。これにより、遮光シャッター326,327は互いに最も離れた全開状態となる。
【0058】
図14は、最大遮光状態(全閉状態)を示す図であって、(a)は側面図、(b)は光軸側から見た図である。
全開状態から全閉状態へと遮光シャッター326,327を移動させる場合、図14(a),(b)に示すように、ステッピングモーター365が時計周りに回転すると、これに伴って第4ギア部364が同方向へ回転し、第3ギア部363が反時計回りに回転する。第2ギア部362は第3ギア部363に同期して時計回りへ回転し、これに伴って第1ギア部361が反時計回りに回転する。これにより、遮光シャッター326,327は互いに最も近づいて光軸Lと一致する位置において互いに部分的に重なり、最大遮光状態となる。
【0059】
次に、調光機構による遮光領域の変化について述べる。
図15は、調光機構の動作による遮光量(照明光の通過量)の変化について詳細な説明をするための概念図である。
図15に示すように、調光機構は、遮光シャッター326,327をパターンP1〜P4のように回動させることで光源311からの照明光SLの光束の遮光領域を変化させ、照明光SLの調光を行う。パターンP1は、全開の状態(回動角度が略90°の状態)を示し、パターンP4は、全閉の状態(回動角度が略0°の状態)を示している。パターンP1〜P4は、回転角度θ1(0°<θ3<θ2<θ1(90°))による遮光状態の違いを示している。
【0060】
パターンP1の全開状態の場合、回動角度θ1の値が90°であり、遮光シャッター326,327は光源311からの光束を遮光しない位置に配置される。この場合、光源311から射出された光束のうち全ての成分が通過して照明光SLとして利用される。
【0061】
このような全開の状態から遮光領域を増やすように遮光シャッター326,327を回転させてパターン2の状態にした場合、まず、第2遮光板部7A,7Bによって照明光SLの一部が遮光される。この際、照明光SLのうち中央側の光は第2遮光板部7A,7Bの各第2切欠部330を透過する。
【0062】
そして、さらに遮光領域を増やすように遮光シャッター326,327をさらに回転させて、パターンP2の状態よりも閉じたパターンP3の状態にした場合、第1遮光板部6A,6Bおよび第2遮光板部7A,7Bによって照明光SLがさらに遮光される。この際には、照明光SLの中心側の光は一部が第1遮光板部6A,6Bによって遮光されながら第2切欠部330を透過する。
【0063】
そして、遮光シャッター326,327を閉じてパターンP4の全閉状態にした場合、照明光SLは第1遮光板部6A,6Bのみによって遮光される。この際、照明光SLは第1遮光板部6A,6Bによって全て遮光されるわけではなく、照明光SLの中心側の光は先端の遮光部61a,61bによって遮光されるが、これら遮光部61a,61bの両側に設けられた一対の第1切欠部320,320(図9(a))から漏れるようにして、照明光SLのうち周辺の光が一部透過する。
このように、遮光シャッター326,327が最大遮光状態としたときに、照明光SLのうち中心側の光を遮光するとともに周辺の光を一部透過させることが、コントラスト向上に寄与する。
【0064】
仮に、第2遮光板部7A,7Bが第2切欠部330を有さない板状部材からなる場合、第1レンズアレイ321による光源像がないところでは殆ど減光せず、光源像があるところを過ぎた途端に急激に減光するという状態となり、なだらかな減光制御を行うことができない。さらに、光源311の光軸Lがずれてしまった場合に照射領域と遮光領域との境界部分で色むらが目立ってしまう。
【0065】
一方、本実施形態では、第2切欠部330により、光軸Lに近い中央側と遠い周辺側とで減光量が異なるため、遮光領域と照射領域との境界部分に直線状の輪郭が形成されるような事態には至らず、遮光シャッター326,327の回動動作による回動角度の大きさに応じてなだらかに減光させることが可能となる。
【0066】
また、第1遮光板部6A,6Bが第1切欠部320を有さない板状部材からなる場合、遮光シャッター326,327が全閉状態にされると、互いの先端部326a,327aが光軸方向で重なるため照明光SLが全て遮光されてしまい、所望のコントラストが得られない。
つまり、照射光の中央側の光を完全に遮光するために一対の遮光シャッターを光軸方向でシフトさせて配置させた場合には、光源装置31に近い位置に配置された遮光シャッターによる遮光率と、光源装置31から離れた位置に配置された遮光シャッターによる遮光率とが異なるため照度分布が変わってしまう。これが色むらの原因となっていた。
一対の遮光シャッターの位置が光軸方向で一致している場合にはこのような問題が生じないが、全閉状態とした際に遮光シャッターの先端側の位置合わせが難しい。仮に、遮光シャッターの先端同士を当接させるように閉じたとしても、完全に遮光することはできず、僅かな隙間から照射光が漏れてしまうおそれがある。
【0067】
一方、本実施形態では、第1遮光板部6A,6Bの幅方向(光軸Lに交差する方向)の両端側に第1切欠部320,320が設けられているため、全閉状態とされた場合でも、第1遮光板部6Aの第1切欠部320と、第1遮光板部6Bの第1切欠部320との間に形成される矩形状の隙間を通じて、照明光SLの周辺の光を通過させることが可能である。照明光SLの中央側の光は、光軸Lに沿って配置された第1遮光板部6A,6Bの遮光部61a,61bが各遮光シャッター326,327の回動方向で互いに重なり合うことによって完全に遮光される。このように、中央側の輝度の高い光を遮光し、周辺側の比較的輝度の低い光を通過させて第2レンズアレイ322へ入射させることによって、表示画像のコントラストを高めることができる。
【0068】
さらに、本実施形態の第2レンズアレイ322の小レンズ322aの数は、調光機構325の遮光シャッター326,327が開閉する方向に奇数個並んでいる。この場合、光軸上に一対の遮光シャッターが光軸上で一致している従来の構成では、一対の遮光シャッターを閉じた場合でもその隙間から光源装置31からの照射光の一部(特に、最も輝度の高い中央の光)が第2レンズアレイ322の中央の小レンズ322aに入射してしまい、所望のコントラストが得られないという問題があった。そのため、第2レンズアレイ322として偶数個の小レンズ322aが並んだタイプが用いられることが多い。
【0069】
これに対して、本実施形態の調光機構325であれば、一対の遮光シャッター326,327が光軸Lに沿って並べて配置されることから、全閉時に遮光部61a,61bが重なることで、照明光SLのうち最も輝度の高い中央の光を完全に遮光させることができる。このため、第2レンズアレイ322の小レンズ322aの数が奇数か偶数かに関わらず、色むらを抑えた高コントラストの画像を形成することが可能となる。
【0070】
本実施形態の調光機構325の構成により、遮光量の変化を比較的なだらかなものにし、かつ、最大遮光状態において照明光量を十分に下げることができる。また、遮光シャッター326,327およびその周辺構造は簡単な構成で安価に作製できるものであり、コストを抑えてコントラスト比の高い表示画像を投写することが可能な、高性能なプロジェクターが得られる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
先の実施形態では第2切欠部330を設けた構成としたが、必ずしもこれに限定されるのではなく、第2切欠部330がない構成としても構わない。しかしながら、色むら抑制のためには第2切欠部330を設けることが望ましい。
先の実施形態では第1切欠部320は第1遮光板部6A,6Bの先端部326a,327a各々の幅方向両端を切り取るように設けられていたが、必ずしもこれに限定されるのではなく、図16に示すように第1切欠部320をスリット形状としてもよい。
【0073】
また、先の実施形態では、遮光シャッター326,327を2枚の遮光板部6,7を貼り合せることによって構成したが、例えば、遮光板部6に対して遮光部71aのみを設けた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…プロジェクター、6(6A,6B)…遮光板部(第1遮光板部)、7(7A,7B)…遮光板部(第2遮光板部)、L…光軸、O…回転軸、32…照明光学装置(照明光学系)、61a,61b,71a,71b…遮光部、SL…照明光、311…光源、320…切欠部、320…第1切欠部、322…第2レンズアレイ(レンズアレイ)、322a…小レンズ、325…調光機構(遮光機構)、326,327…遮光シャッター(遮光部材)、326a,327a…先端部、328・・・遮光部、329・・・駆動部、330…第2切欠部、352…液晶ライトバルブ(光変調装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光束を部分的に遮光可能な遮光機構を有する照明光学系と、
前記照明光学系からの照明光によって照明される光変調装置と、を備え、
前記遮光機構は、所定の回転軸のまわりに回動することで遮光領域の大きさを変化させる一対の遮光部材を有し、これら一対の遮光部材は、最大遮光位置とされた際に、前記照明光学系の光軸に沿う方向に、互いの先端部が重なるように配置されている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
前記一対の遮光部材には、前記先端部の両端側に第1切欠部がそれぞれ形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記一対の遮光部材は、前記最大遮光位置とされた際に、前記光軸に略直交する方向に延在する第1遮光板部と、前記第1遮光板部に対して前記照明光の射出側に、先端側が前記第1遮光板部から離れるように前記第1遮光板部に対して傾斜する第2遮光板部とを有してなる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記第1遮光板部に前記第1切欠部が形成され、
前記第2遮光板部の先端側中央部分に第2切欠部が形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のプロジェクター。
【請求項5】
前記照明光学系は、小レンズがマトリックス状に配列されたレンズアレイを備え、
前記一対の遮光部材の移動方向における前記小レンズの数が奇数であり、前記レンズアレイの中央の小レンズが前記光軸上に配置されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−44933(P2013−44933A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182510(P2011−182510)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】