説明

プロジェクタ

【課題】確実に放電ランプの始動特性を改善し、放電ランプへ印加する始動電圧を低下させた構成とすることができるプロジェクタを提供する。
【解決手段】放電ランプ2からの光が通過する光路上にLED(発光素子)3を配置可能とし、光路上に配置されたLED3が発光し、LED3からの光を放電ランプ2の発光管21内へ入射させる。入射された光による光電効果によって発光管21内の電極表面から電子が放出され、放電が発生しやすくなる。光を入射しながら始動電圧を印加することにより、容易に放電が発生し、放電ランプ2の始動特性が改善する。従って、プロジェクタを、従来よりも印加電圧を低下させた構成とすることが可能となる。また放電ランプ2の点灯と同時にLED3を光路外へ移動させることにより、LED3の損傷を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源ランプからの光を利用して画像を投射するプロジェクタに関し、より詳しくは、光源ランプの始動特性を改善することにより、光源ランプに印加する始動電圧を低下させたプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
プレゼンテーション又は映像の映写の分野では、光源ランプからの光でスクリーン又は壁等に画像を投影するプロジェクタが用いられている。プロジェクタでは高い照度が必要であるので、光源ランプには、超高圧水銀ランプ又はメタルハライドランプ等の放電ランプが用いられることが多い。このような放電ランプは、経時変化によって劣化するので、プロジェクタの他の部品よりも寿命が短く、交換が容易なようにプロジェクタの本体に対して着脱可能なユニット状に構成されているのが通常である。
【0003】
放電ランプの経時変化の一つとして、電極の先端に水銀が付着して電子放出を阻害し、放電ランプが点灯し難くなる現象がある。放電ランプの点灯し易さである始動特性を悪化させないようにするためには、放電ランプを点灯させるために放電ランプに印加する始動電圧を2kV以上等の高電圧にしておけばよい。しかしながら、始動電圧が高い場合は放電ランプの電極に掛かる負荷も大きく、電極が早く消耗して放電ランプの寿命が短くなる。また始動電圧を高くするためには電源が大型化することとなり、プロジェクタの小型化を阻害する。また始動電圧を高くすると放電ランプ始動時のノイズが大きくなり、プロジェクタ内の回路及びプロジェクタ外の機器に悪影響を及ぼすことがある。
【0004】
そこで、始動電圧を高くすることなく始動特性を改善した放電ランプが開発されている。特許文献1及び2には、クリプトン85等の放射性同位元素を発光管内に封入した放電ランプが開示されている。この放電ランプでは、放射性同位元素からの放射線により電子励起が行われ、始動特性が改善される。また特許文献3には、ランプ内に補助放電部を組み込み、補助放電部からの放電光により始動特性を改善する放電ランプが開示されている。その他ランプ内にトリガーワイヤを設けたもの等、始動特性を改善した種々の放電ランプが開発されている。
【特許文献1】特開2005−347060号公報
【特許文献2】特開平2−201863号公報
【特許文献3】特開2005−116450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の如く、始動特性を改善した種々の放電ランプは開発されているものの、これらは放電ランプ自体に改良を施したものであり、放電ランプの始動特性を改善する機能をプロジェクタ内に持たせたものではない。従来のプロジェクタで始動電圧を高くすることなく放電ランプの始動特性を改善するためには、特許文献1〜3に開示された放電ランプ等の特殊な放電ランプを使用する必要がある。即ち、始動特性は放電ランプに依存し、放電ランプの始動特性をプロジェクタで制御できないので、放電ランプの始動特性が改善していることを前提に始動電圧を低下させて構成したプロジェクタでは、未改良の放電ランプを使用した場合に始動特性が極端に悪化する。従って、プロジェクタを始動電圧を低下させた構成とすることが困難であるという問題がある。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、放電ランプの始動特性を改善する機能をプロジェクタ内に備えることにより、確実に放電ランプの始動特性を改善し、放電ランプへ印加する始動電圧を低下させた構成とすることができるプロジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプロジェクタは、放電ランプが発する光を用いて画像を投影するプロジェクタにおいて、前記放電ランプの発光管内へ光を入射する手段を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るプロジェクタは、放電ランプと、該放電ランプに始動電圧を印加する印加手段とを備え、前記放電ランプが発する光を用いて画像を投影するプロジェクタにおいて、発光素子と、該発光素子からの光を前記放電ランプの発光管内へ入射させる入射手段と、該入射手段が前記光を前記放電ランプの発光管内へ入射させている状態で、前記印加手段に始動電圧を前記放電ランプに印加させる手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るプロジェクタは、前記発光素子を移動可能に保持し、前記放電ランプからの光が通過する光路上にある第1の位置、及び前記光路上から外れた第2の位置のいずれかに前記発光素子を配置する移動手段と、該移動手段が前記発光素子を第1の位置に配置した場合に、前記発光素子を発光させる手段とを更に備え、前記移動手段は、第1の位置で前記発光素子が発した光が前記放電ランプの発光管内へ入射するように前記発光素子を保持してあり、前記入射手段は、前記移動手段に前記発光素子を第1の位置へ移動させることにより、前記発光素子からの光を前記放電ランプの発光管内へ入射させる構成としてあることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプロジェクタは、前記放電ランプが点灯したことを検出する手段と、該手段が前記放電ランプが点灯したことを検出した場合に、前記移動手段に、前記発光素子を第2の位置に配置させる手段とを更に備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るプロジェクタは、前記発光素子は紫外光を発する発光ダイオードであることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るプロジェクタは、前記放電ランプは発光管内に放射性同位元素を封入してあることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、放電ランプを用いるプロジェクタで、発光素子を用いて放電ランプへ光を入射し、光を入射した状態で放電ランプに始動電圧を印加する。入射された光による光電効果によって放電ランプの電極表面から電子が放出され、電極間に放電が発生しやすくなって放電ランプの始動特性が改善される。
【0013】
また本発明においては、放電ランプからの光の光路上に発光素子を配置可能とし、光路上に配置した状態で発光素子を放電ランプに対向させることにより、発光素子からの光が放電ランプに入射される。
【0014】
また本発明においては、放電ランプが点灯した場合に、発光素子を光路から外れた位置に移動させることにより、発光素子に放電ランプからの光が照射されることを防止する。
【0015】
また本発明においては、発光素子が紫外光を発することにより、エネルギーの高い紫外光で光電効果が容易に発生する。
【0016】
また本発明においては、放電ランプを、発光管内にクリプトン85等の放射性同位元素を封入した構成とすることにより、放射線によって電極表面で電子が励起され、電極間に放電が発生しやすくなって放電ランプの始動特性が改善される。
【発明の効果】
【0017】
本発明にあっては、確実に放電ランプの始動特性を改善することができるので、プロジェクタは、始動電圧を従来よりも低い電圧に抑えた構成とすることが可能となる。始動電圧を下げることにより、放電ランプの電極に掛かる負荷が下がり、放電ランプの寿命が従来よりも長くなる。また、始動電圧を低い電圧に抑えた構成とすることができるので、プロジェクタの小型化及び低コスト化が可能となる。
【0018】
また本発明にあっては、放電ランプに光を入射する発光素子に放電ランプからの光が照射されることを防止することにより、放電ランプからの光によって発光素子が損傷することを防止することができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、本発明のプロジェクタの内部構成を模式的に示す構成図である。プロジェクタは、メタルハライドランプ又は超高圧水銀ランプ等の白色光を発光する放電ランプ2と、放電ランプ2からの光を用いて画像を投影するための光学系とを備えている。放電ランプ2は、放電により発光を行う発光管21を備え、発光管21内には図示しない一対の電極が配置されている。放電ランプ2はリフレクタを備え、発光管21が発光する光は、リフレクタによって前方へ投射される。また放電ランプ2は、発光管21内にクリプトン85等の放射性同位元素を封入して構成されている。図1中には、発光管21が発光してから外部へ投射されるまでの光の軌跡を矢印で示している。放電ランプ2からの光を用いて画像を投影するための光学系は筐体5内に収納されている。
【0020】
プロジェクタは、光学系を構成する光学部品として、カラーホイール51と、カラーホイール51を通過した光が入射されるロッドレンズ52と、コンデンサレンズ53,54と、偏光ビームスプリッタ55と、DMD(Digital Micromirror Device)56と、DMD56を冷却するための放熱板57と、DMD56が反射して偏光ビームスプリッタ55で分離した光を外部へ投射する投射レンズ58とを備えている。これらの光学部品で構成される光学系は、放電ランプ2からの光が通過する光路をなす。図1中には光学系の光軸を一点鎖線で示している。
【0021】
カラーホイール51は、円盤の中心軸周りに夫々に固有の色の光を透過させる複数のフィルタを配して構成されており、中心軸を回転軸として回転する。回転するカラーホイール51を放電ランプ2からの白色光が通過することによって、複数色の光が時分割で生成される。ロッドレンズ52は、カラーホイール51を通過した光が入射され、入射された光を内面で多数回反射させて光強度分布を均一に調整した光を出射する。コンデンサレンズ53,54はロッドレンズ52が出射した光を集光し、偏光ビームスプリッタ55へ入射する。偏光ビームスプリッタ55は、コンデンサレンズ54からの光の偏光を調整してDMD56へ入射し、DMD56からの反射光を投射レンズ58の方向へ反射する。DMD56は、夫々が画像中の画素に対応する多数の微小ミラーを2次元的に配置してなり、発光する画素に対応する微小ミラーが偏光ビームスプリッタ55の方向へ光を反射し、また非発光の画素に対応する微小ミラーが他の方向へ光を反射することにより、偏光ビームスプリッタ55の方向への反射光の有無で2次元の画像を形成する。
【0022】
回転するカラーホイール51を白色光が通過して各色の光が生成し、生成した光の光強度分布をロッドレンズ52が調整し、DMD56は各色の光に対応する画像を形成し、画像を形成したDMD56からの反射光を投射レンズ58が外部へ投射することにより、プロジェクタは各色の光の像でなる画像を外部のスクリーン又は壁等に投影する。カラーホイール51の回転に応じて各色の画像が時分割で順に投影され、使用者にはカラー画像として認識される。
【0023】
また本発明のプロジェクタは、紫外光を発光するLED(発光ダイオード)3と、LED3を移動させるプッシュ型のソレノイドとを備える。LED3は、本発明における発光素子に対応し、ソレノイドは本発明における移動手段に対応する。ソレノイドはソレノイドコイル42及び可動鉄芯41からなり、ソレノイドコイル42に電流が流れた場合に可動鉄芯41がソレノイドコイル42に引き込まれ、可動鉄芯41に連結された連結部を押し出す構成となっている。またソレノイドは、ソレノイドコイル42に電流が流れていない場合はバネ等の付勢手段により連結部をソレノイドコイル42に引き込む構成となっている。LED3は可動鉄芯41に連結された連結部に保持されている。ソレノイドは、可動鉄芯41が連結部を押し出すことにより、放電ランプ2からの光が通過する光路上の第1の位置へLED3を移動させ、連結部をソレノイドコイル42に引き込むことにより、光路上からはずれた第2の位置へLED3を移動させる。図1には、ソレノイドコイル42に電流が流れておらず、LED3が第2の位置に配置されている状態を示している。
【0024】
更に本発明のプロジェクタは、電源13と、放電ランプ2に印加する始動電圧を発生させる始動電圧発生回路(印加手段)12と、電源13、始動電圧発生回路12及びソレノイドの動作を制御する制御回路11とを備えている。始動電圧発生回路12は、放電ランプ2の発光管21内の各電極に接続されており、電源13に供給された電圧から始動電圧を発生させ、発生させた始動電圧を放電ランプ2に印加する。放電ランプ2に始動電圧が印加されることにより、発光管21内の電極間で放電が発生し、放電ランプ2が点灯する。また始動電圧発生回路12は、放電ランプ2が発光している間は、発光に必要な電圧を放電ランプ2に印加する。制御回路11はマイコンで構成され、ソレノイドコイル42が接続されており、ソレノイドコイル42に電流を供給することができる。また電源13には、一対の接続端子43,44が接続されている。一方の接続端子43は、常時LED3に接続されており、他方の接続端子44は、LED3が光路上の第1の位置に配置された場合にLED3に接続されるように構成されている。一対の接続端子43,44が共にLED3に接続された場合には、電源13からLED3に電流が供給され、LED3が発光する。
【0025】
図2は、LED3が第1の位置に配置された状態を示すプロジェクタの模式的構成図である。図中には、ソレノイドコイル42に電流が流れて可動鉄芯41がLED3を第1の位置へ移動させた状態が示されている。LED3が配置される第1の位置は、コンデンサレンズ53,54の間の光軸上となっている。またLED3は、第1の位置に配置された状態では放電ランプ2に対向する向きとなるように保持されている。この状態では、接続端子44がLED3に接続され、接続端子43,44を介して電源13からLED3に電流が供給され、LED3は発光する。光軸上に配置されて放電ランプ2に対向した状態で発光するので、LED3が発光した紫外光は、放電ランプ2からの光の光路を逆進して放電ランプ2の発光管21へ入射される。即ち、LED3が発光した紫外光は、コンデンサレンズ53で集光され、ロッドレンズ52及びカラーホイール51を通過し、放電ランプ2のリフレクタで反射されて発光管21へ入射される。図2には、LED3が発光して発光管21へ入射される紫外光を矢印で示している。なお、図1及び図2には、光路が直線状に構成されている例を示しているが、本発明のプロジェクタは、曲折した光路をミラー等を用いて構成した形態であってもよく、光路に沿ってLED3が放電ランプ2に対向するように構成してあればよい。
【0026】
LED3からの紫外光が発光管21へ入射されることにより、発光管21内に配置された電極に紫外光が照射される。電極に紫外光が照射されると、光電効果により電極表面から電子が放出される。経時変化で電子放出が困難になった電極であっても、光電効果により表面から電子が放出されるので、電極間に放電が発生しやすくなり、放電ランプ2の始動特性が改善される。また放電ランプ2の発光管21内には、クリプトン85等の放射性同位元素が封入してあるので、放射線が電極に照射されて電極表面で電子励起が行われ、電極間に放電が発生しやすくなっており、放電ランプ2の始動特性はより改善される。このように、確実に放電ランプ2の始動特性を改善することができるので、本発明のプロジェクタは、始動電圧発生回路12が放電ランプ2に印加する始動電圧を従来よりも低く抑えた構成とすることが可能となる。
【0027】
次に、以上の構成でなる本発明のプロジェクタが行う動作を説明する。図3は、本発明のプロジェクタが放電ランプ2を点灯させる処理の手順を示すフローチャートである。また図4は、本発明のプロジェクタが放電ランプ2を点灯・消灯させる制御のタイミングチャートである。図4の各縦軸は電流又は電圧を示し、横軸は時間を示す。
【0028】
放電ランプ2を点灯させる際には、制御回路11は、まず、ソレノイドコイル42へソレノイド電流を供給する(S1)。図4では、ソレノイド電流が供給されていることをハイで示している。ソレノイドコイル42へソレノイド電流が供給されることにより、ソレノイドコイル42は可動鉄芯41を引き込み、可動鉄芯41に連結された連結部に保持されたLED3は移動し、図2に示す如き光軸上の第1の位置に放電ランプ2と対向して配置される。第1の位置に配置されたLED3には接続端子44が接続され、接続端子43,44を介して電源13からLED3に電流が供給され、LED3は発光する。LED3が発光した紫外光は放電ランプ2の発光管21へ入射し、発光管21内の電極表面では光電効果により電子が放出される。
【0029】
制御回路11は、ソレノイド電流の供給を開始した2秒後に、放電ランプ2の点灯を指示するオン信号を始動電圧発生回路12へ出力する(S2)。図4では、放電ランプ2の点灯指示をオン信号がハイになることで示しており、ソレノイド電流の供給開始後2秒で、オン信号がハイになっている。なお、ソレノイド電流の供給を開始した後でオン信号を出力するのであれば、この2秒という時間の値は他の値であってもよい。始動電圧発生回路12は、オン信号を入力された場合に、始動電圧を発生させ、発生させた始動電圧を放電ランプ2に印加する(S3)。図4には、オン信号がハイになると共に始動電圧が発生することが示されている。放電ランプ2に印加される始動電圧は、例えば1.5kV程度となる。始動電圧の印加により発光管21内の電極間に放電が発生して放電ランプ2が点灯すると、電極間の抵抗が急激に低下して電流が増加し、始動電圧発生回路12では安定機構が作動して始動電圧をオフにする。放電ランプ2が点灯しなければ、始動電圧は放電ランプ2に印加され続ける。
【0030】
始動電圧発生回路12は、始動電圧がオフになったか否かを検出することにより、放電ランプ2が点灯したか否かを判定する(S4)。放電ランプ2が点灯した場合は(S4:YES)、始動電圧発生回路12は、放電ランプ2が点灯したことを示す信号を制御回路11へ入力し、制御回路11は、ソレノイドコイル42へのソレノイド電流の供給を停止する(S5)。ソレノイド電流が停止することにより、可動鉄芯41に連結された連結部はソレノイドコイル42に引き込まれ、連結部に保持されたLED3は移動し、放電ランプ2からの光の光路から外れた第2の位置に配置される。LED3が移動することにより、LED3と接続端子44との接続状態が切断され、電源13からLED3への電流供給が途絶え、LED3は消灯する。
【0031】
図4には、放電ランプ2が点灯するタイミングを破線で示している。放電ランプ2が点灯するタイミングで、始動電圧がオフされ、ソレノイド電流も供給が停止されている。また始動電圧発生回路12は、放電ランプ2の発光に必要なランプ電圧を放電ランプ2に印加する。図4に示すように、ランプ電圧は放電ランプ2の点灯以後に徐々に上昇し、一定値となる。放電ランプ2は高輝度であるので、LED3に放電ランプ2からの光が照射された場合は光の熱によってLED3が損傷する虞がある。放電ランプ2の点灯と同時にソレノイド電流を停止してLED3を光路から外れた第2の位置に配置することにより、放電ランプ2からの光によってLED3が損傷することを防止する。
【0032】
始動電圧発生回路12は、始動電圧の印加を開始してから6秒後に、点灯確定信号をハイで制御回路11へ出力する(S6)。ハイの点灯確定信号は、放電ランプ2が点灯していることを示し、制御回路11は点灯確定信号によって放電ランプ2が点灯していることを確認する。なお、この6秒という時間の値は他の値であってもよい。プロジェクタは、ステップS6で放電ランプ2を点灯させる処理を終了する。
【0033】
点灯していた放電ランプ2を一旦消灯して再度点灯させる場合等、発光管21内の温度が所定の温度以上に高くなっている場合は、始動電圧を印加しても放電ランプ2は点灯しない。図5は、一旦消灯した放電ランプ2を点灯させる所謂ホットスタートにより本発明のプロジェクタが放電ランプ2を点灯・消灯させる制御のタイミングチャートである。
【0034】
ステップS4で放電ランプ2が点灯していない場合は(S4:NO)、始動電圧発生回路12は、6秒の所定時間が経過するまで始動電圧を印加し続け、まだ所定時間が経過していない場合は(S7:NO)、始動電圧を印加し続けながらステップS4の判定を行う。始動電圧を印加し続けて所定時間が経過した場合は(S7:YES)、始動電圧発生回路12は、始動電圧をオフにし(S8)、点灯確定信号をローで制御回路11へ出力する(S9)。ローの点灯確定信号は、放電ランプ2が点灯していないことを示す。図5には、始動電圧が印加開始から6秒後にオフにされ、このとき点灯確定信号がローになっていることが示されている。
【0035】
制御回路11は、ローの点灯確定信号を受け付け、始動電圧を印加することで放電ランプ2の点灯を試行した回数が5回等の所定回数に達したか否かを判定する(S10)。まだ試行回数が所定回数に達していない場合は(S10:NO)、制御回路11は、15秒の所定時間待機することによって、放電ランプ2を冷却させる(S11)。プロジェクタは、放電ランプ2を冷却するための図示しない冷却ファンを備えており、始動電圧発生回路12が電圧を印加せずに待機することにより、放電ランプ2での新たな発熱がなくなり、放電ランプ2が冷却される。15秒の所定時間が経過した後、制御回路11は、再度の印加指示を始動電圧発生回路12へ出力し、始動電圧発生回路12は、処理をステップS3へ戻して始動電圧を放電ランプ2に印加する。なお、始動電圧発生回路12が15秒の所定時間が経過した後に自動で再度始動電圧を印加する形態であってもよい。
【0036】
本発明のプロジェクタは、以上のステップS3,S4,S7〜S11の処理を、放電ランプ2が点灯するまで繰り返す。図5には、6秒間の始動電圧の印加と、15秒間の始動電圧のオフとが繰り返される状態が示されている。この処理の間中、オン信号は出力され続け、ソレノイド電流はソレノイドコイル42に供給され続け、LED3は発光し続けている。なお、放電ランプ2を冷却する15秒の所定時間の値は他の値であってもよい。一旦放電ランプ2が点灯した後は、プロジェクタは前述と同様にステップS4〜S6の処理を行い、図5に示す制御のタイミングチャートも点灯以後は図4と同様となる。
【0037】
ステップS10で試行回数が所定回数に達している場合は(S10:YES)、過熱又は故障等、放電ランプ2が異常な状態であるとして、制御回路11は、オン信号をオフにし、ソレノイド電流を停止する(S12)。オン信号がオフとなるので、始動電圧発生回路12は始動電圧の発生を停止する。この処理では、プロジェクタは放電ランプ2を点灯させることなく点灯の処理を終了する。なお、放電ランプ2を点灯させることなく点灯の処理を終了した場合には、プロジェクタは、警告音を発する等、放電ランプ2の異常を報知するための処理を行ってもよい。
【0038】
図6は、本発明のプロジェクタが放電ランプ2を消灯させる処理の手順を示すフローチャートである。放電ランプ2を消灯させる際には、制御回路11は、オン信号をオフにする(S21)。オン信号がオフになることで、放電ランプ2の消灯が指示される。オン信号がオフになったことを検出した始動電圧発生回路12は、ランプ電圧の放電ランプ2への印加を停止し(S22)、点灯確定信号をローで制御回路11へ出力する(S23)。ランプ電圧が停止されることにより、放電ランプ2の発光管21内での放電が停止し、放電ランプ2は消灯する。図4及び図5には、放電ランプ2が消灯するタイミングを破線で示している。オン信号のオフは図中ではローで示しており、オン信号のオフと同時にランプ電圧が停止して点灯確定信号がローになっている。本発明のプロジェクタは、以上で消灯の処理を終了する。
【0039】
以上詳述した如く、本発明においては、LED3で放電ランプ2へ紫外光を入射することによって、放電ランプ2の電極表面から電子が放出され、電極間に放電が発生しやすくなって放電ランプ2の始動特性が改善される。どのような放電ランプ2を用いた場合であっても、確実に放電ランプ2の始動特性を改善することができるので、本発明のプロジェクタは、始動電圧発生回路12が放電ランプ2に印加する始動電圧を従来の2kV以上の高電圧よりも1.5kV程度の低い電圧に抑えた構成とすることが可能となる。始動電圧を下げることにより、放電ランプ2の電極に掛かる負荷が下がり、電極の消耗が抑制される。電極の消耗が抑制されることにより、電極表面から発生する塵の量が減少し、発光管21内でハロゲンサイクルが適切に進行することが期待される。従って、ハロゲンサイクルで抑止しきれない量の塵が発光管21内に付着して発光管21の黒化及び失透が発生することを抑制することができる。発光管21の黒化及び失透を抑制できるので、経年変化による光出力の劣化が抑制され、放電ランプ2の寿命が従来よりも長くなる。また、始動電圧を低い電圧に抑えた構成とすることができるので、プロジェクタの小型化及び低コスト化が可能となる。
【0040】
なお、本実施の形態においては、LED3をソレノイドを用いて移動させて第1の位置に配置する形態を示したが、本発明のプロジェクタは、これに限るものではなく、ソレノイド以外のアクチュエータ又はステッピングモータ等、他の移動機構を用いてLED3を移動させる構成であってもよい。また本実施の形態においては、LED3を光路上の第1の位置に移動させた上でLED3からの光を放電ランプ2へ入射する形態を示したが、これに限るものではなく、本発明のプロジェクタは、光路の外側からミラー等を用いて光を放電ランプ2へ入射する形態であってもよい。また本実施の形態においては、紫外光を発光するLED3を用いて紫外光を放電ランプ2へ入射する形態を示したが、本発明のプロジェクタは、可視光を発光するLEDを用いて可視光を放電ランプ2へ入射する形態であってもよい。また本実施の形態においては、発光素子としてLED3を用いた形態を示したが、本発明のプロジェクタは、発光素子として小型電球又はレーザー素子等のその他の発光素子を用いた形態であってもよい。
【0041】
また本実施の形態においては、本発明のプロジェクタは画像を形成する画像デバイスとしてDMD56を用いた形態を示したが、本発明のプロジェクタの構成はこれに限るものではない。例えば、本発明のプロジェクタは、RGBの各色に対応した3枚のDMDを用いてカラー画像を投影する形態であってもよい。この形態の場合は、プロジェクタはカラーホイール51を必要としない構成となる。また本発明のプロジェクタは、画像デバイスとして液晶パネルを備えた形態であってもよい。また本実施の形態においては、本発明のプロジェクタは、外部のスクリーン又は壁等へ画像を投影するフロントプロジェクション方式の形態を示したが、図示しない透過型のスクリーンを備え、スクリーンの背面から投射レンズ58で光を投射することによってスクリーンに画像を投影するリアプロジェクション方式の形態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のプロジェクタの内部構成を模式的に示す構成図である。
【図2】LEDが第1の位置に配置された状態を示すプロジェクタの模式的構成図である。
【図3】本発明のプロジェクタが放電ランプを点灯させる処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明のプロジェクタが放電ランプを点灯・消灯させる制御のタイミングチャートである。
【図5】一旦消灯した放電ランプを点灯させる所謂ホットスタートにより本発明のプロジェクタが放電ランプを点灯・消灯させる制御のタイミングチャートである。
【図6】本発明のプロジェクタが放電ランプを消灯させる処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
11 制御回路
12 始動電圧発生回路
13 電源
2 放電ランプ
21 発光管
3 LED(発光素子)
41 可動鉄芯
42 ソレノイドコイル
43,44 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプが発する光を用いて画像を投影するプロジェクタにおいて、
前記放電ランプの発光管内へ光を入射する手段を備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
放電ランプと、該放電ランプに始動電圧を印加する印加手段とを備え、前記放電ランプが発する光を用いて画像を投影するプロジェクタにおいて、
発光素子と、
該発光素子からの光を前記放電ランプの発光管内へ入射させる入射手段と、
該入射手段が前記光を前記放電ランプの発光管内へ入射させている状態で、前記印加手段に始動電圧を前記放電ランプに印加させる手段と
を備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
前記発光素子を移動可能に保持し、前記放電ランプからの光が通過する光路上にある第1の位置、及び前記光路上から外れた第2の位置のいずれかに前記発光素子を配置する移動手段と、
該移動手段が前記発光素子を第1の位置に配置した場合に、前記発光素子を発光させる手段とを更に備え、
前記移動手段は、第1の位置で前記発光素子が発した光が前記放電ランプの発光管内へ入射するように前記発光素子を保持してあり、
前記入射手段は、前記移動手段に前記発光素子を第1の位置へ移動させることにより、前記発光素子からの光を前記放電ランプの発光管内へ入射させる構成としてあること
を特徴とする請求項2に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記放電ランプが点灯したことを検出する手段と、
該手段が前記放電ランプが点灯したことを検出した場合に、前記移動手段に、前記発光素子を第2の位置に配置させる手段と
を更に備えることを特徴とする請求項3に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記発光素子は紫外光を発する発光ダイオードであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一つに記載のプロジェクタ。
【請求項6】
前記放電ランプは発光管内に放射性同位元素を封入してあることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一つに記載のプロジェクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−281628(P2008−281628A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123541(P2007−123541)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】