説明

プロジェクタ

【課題】投写画像の画像品質を従来よりも高くすることが可能なプロジェクタを提供する。
【解決手段】照明装置と、液晶パネル410R,410G,410Bと、投写光学系と、液晶パネルの光入射側及び光射出側に配置され偏光層を有する入射側偏光板420R,420G,420B及び射出側偏光板440R,440G,440Bと、各偏光板における液晶パネル側の表面に貼り合わされ、無機材料からなる液晶パネル側透光性基板としての透光性基板430R,430G,430B,450R,450G,450Bと、各偏光板における液晶パネル側の表面とは反対側の表面に貼り合わされ、無機材料からなる反対側透光性基板としての透光性基板460R,460G,460B,470R,470G,470Bとを備えるプロジェクタ。液晶パネル側透光性基板の厚みは、反対側透光性基板の厚みよりも薄い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネルを備えるプロジェクタとして、偏光板の両面(光入射面及び光射出面)に熱伝導性の透光性基板が貼り付けられたプロジェクタが知られている(例えば、特許文献1参照。)。熱伝導性の透光性基板としては、サファイア又は水晶からなる透光性基板が用いられている。
従来のプロジェクタによれば、偏光板の両面に熱伝導性の透光性基板が貼り付けられているため、偏光板で発生した熱(光の吸収により発生する熱など)を透光性基板を介して系外に放散させることが可能となる。その結果、偏光板の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−198596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、プロジェクタから投写される画像のコントラストを向上したり、コントラストむらや色むらなどを低減したりするなど、投写画像の画像品質を高くしたいという要望がある。
【0005】
しかしながら、従来のプロジェクタにおいては、サファイア、水晶、石英、耐熱ガラス又は白板ガラスからなる透光性基板は、偏光板からの熱が伝導することで面内に熱分布が発生し、その位置による温度差によって膨張量に差ができることから、透光性基板の内部に応力が発生する。この応力によって、透光性基板を通過する光に位相差(熱歪による位相差)が発生する。熱歪による位相差が大きくなると、透光性基板を通過する光について偏光の乱れが大きくなるため、投写画像のコントラストが低下したり、面内の分布によってコントラストむらや色むらなどが発生したりしてしまい、投写画像の画像品質が低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、投写画像の画像品質を従来よりも高くすることが可能なプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、上記した目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、透光性基板の厚みを薄くすることによって、熱歪による位相差を小さくすることが可能となることを見出した。すなわち、次式(1)に示すように、熱歪による位相差は、光弾性定数と熱応力と透光性基板の厚みとの積であることから、透光性基板の厚みを薄くすれば、熱歪による位相差を小さくすることができるのである。
【0008】
δ=B×σ×t・・・(1)
δ:熱歪による位相差、B:光弾性定数、σ:熱応力、t:透光性基板の厚み
【0009】
しかしながら、透光性基板は上述のように偏光板の温度上昇を抑制する効果を有しているため、偏光板の両面に貼り付けられた2つの透光性基板の両方を薄くすると、式(1)の透光性基板の厚みtの項が小さくなる反面、熱応力σが上昇し、熱歪による位相差δをあまり小さくすることができない。また、2つの透光性基板の両方を薄くすることにより、偏光板が高温になりやすくなるため、偏光板が劣化して偏光板の偏光特性が低下してしまう結果、投写画像のコントラストが低下する。つまり、偏光板の両面に貼り付けられた2つの透光性基板の両方を薄くした場合は、熱歪による位相差に起因した投写画像の画像品質の低下を抑制する効果が小さい上に、偏光板の温度上昇に起因した投写画像の画像品質の低下を抑制することが容易ではなくなる結果、上記した目的を達成することができない。
【0010】
以上の知見に基づき、本発明の発明者はさらなる研究を重ねた結果、偏光板の両面に貼り付けられた2つの透光性基板のうち、液晶パネル側に配置される透光性基板(以下、液晶パネル側透光性基板という。)の厚みを液晶パネルとは反対側に配置される透光性基板(以下、反対側透光性基板という。)の厚みよりも薄くすれば、熱歪による位相差を小さくしつつ、偏光板の温度上昇を極力抑制することができ、結果として、投写画像の画像品質を従来よりも高くすることが可能となることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明のプロジェクタは、照明光束を射出する照明装置と、前記照明装置からの前記照明光束を画像情報に応じて変調する液晶パネルと、前記液晶パネルで変調された光を投写する投写光学系と、前記液晶パネルの光入射側及び光射出側の少なくとも一方に配置され、少なくとも偏光層を有する偏光板と、前記偏光板における前記液晶パネル側の表面に貼り合わされ、無機材料からなる液晶パネル側透光性基板と、前記偏光板における前記液晶パネル側の表面とは反対側の表面に貼り合わされ、無機材料からなる反対側透光性基板とを備え、前記液晶パネル側透光性基板の厚みは、前記反対側透光性基板の厚みよりも薄いことを特徴とする。
【0012】
このため、本発明のプロジェクタによれば、液晶パネル側透光性基板の厚みが反対側透光性基板の厚みよりも薄いことから、液晶パネル側透光性基板で発生する熱歪による位相差を小さくすることが可能となり、液晶パネル側透光性基板を通過する光について偏光の乱れの発生を低減することができる。その結果、熱歪による位相差に起因した投写画像の画像品質の低下を抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明のプロジェクタは、液晶パネル側透光性基板と反対側透光性基板との両方の基板の厚みが薄いのではなく、一方の基板(液晶パネル側透光性基板)の厚みだけが薄いものであることから、他方の基板(反対側透光性基板)の厚みがある程度厚ければ、必要十分な放熱効果を得ることができ、偏光板の温度上昇を十分に抑制することが可能となる。その結果、偏光板の温度上昇に起因した投写画像の画像品質の低下を極力抑制することが可能となる。
【0014】
したがって、本発明のプロジェクタは、投写画像の画像品質を従来よりも高くすることが可能なプロジェクタとなる。
【0015】
ところで、反対側透光性基板の厚みが液晶パネル側透光性基板の厚みよりも薄い場合には、偏光板の温度上昇に起因した投写画像の画像品質の低下を極力抑制することが可能となる。しかしながら、この場合には、偏光板と液晶パネルとの間に、比較的厚みのある透光性基板が存在することとなるため、透光性基板が薄いものと比べて熱歪による位相差が大きくなり、それに起因して投写画像の画像品質が低下する可能性がある。
これに対し、本発明のプロジェクタによれば、偏光板と液晶パネルとの間には、比較的厚みの薄い透光性基板が存在することとなるため、熱歪による位相差に起因した投写画像の画像品質の低下を効果的に抑制することが可能となる。
【0016】
また、本発明のプロジェクタによれば、液晶パネル側透光性基板及び反対側透光性基板の2つの基板によって偏光板を両面から挟んでいるため、所定の機械的強度を得ることができる。
【0017】
本発明のプロジェクタにおいては、前記液晶パネル側透光性基板及び前記反対側透光性基板は、同一材料からなる透光性基板であることが好ましい。
【0018】
このように構成することにより、液晶パネル側透光性基板と反対側透光性基板とで熱膨張が大きな軸方向が同一方向となるため、偏光板の熱変形を抑制することが可能となる。
【0019】
本発明のプロジェクタにおいては、前記液晶パネル側透光性基板及び前記反対側透光性基板は、サファイア又は水晶からなる透光性基板であることが好ましい。
【0020】
これらの材料からなる透光性基板は熱伝導性に非常に優れているため、偏光板で発生した熱を効率よく系外に放散させることができ、偏光板の温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。
【0021】
本発明のプロジェクタにおいては、前記サファイア又は水晶からなる透光性基板の光学軸が前記偏光層の偏光軸に略平行又は略垂直となるように、前記偏光板に対して前記サファイア又は水晶からなる透光性基板が配置されていることが好ましい。
【0022】
サファイアや水晶は複屈折性を有するため、液晶パネル側透光性基板及び反対側透光性基板としてサファイア又は水晶からなる透光性基板を用いた場合には、これらの透光性基板を通過する光の偏光状態に望ましくない乱れが発生してしまう場合がある。
これに対し、本発明のプロジェクタによれば、各透光性基板は、透光性基板の光学軸が偏光層の偏光軸に略平行又は略垂直となるように配置されているため、透光性基板を通過する光の偏光状態に望ましくない乱れが発生するのを抑制することが可能となる。
【0023】
なお、この明細書において「偏光層の偏光軸」とは、偏光層を通過する光の偏光軸のことである。
【0024】
本発明のプロジェクタにおいては、前記液晶パネル側透光性基板及び前記反対側透光性基板はともに、面内方向によって線膨張係数に差を有する透光性基板であり、前記液晶パネル側透光性基板における最も線膨張係数が大きくなる軸方向と前記反対側透光性基板における最も線膨張係数が大きくなる軸方向とは、略同一であることが好ましい。
【0025】
このように構成することによっても、偏光板の熱変形を抑制することが可能となる。
【0026】
本発明のプロジェクタにおいては、前記液晶パネルの光入射側に配置される集光レンズをさらに備え、前記偏光板は、少なくとも前記液晶パネルの光入射側に配置されており、当該偏光板に貼り合わされた前記反対側透光性基板は、前記集光レンズの光射出面に貼り合わされていることが好ましい。
【0027】
このように構成することにより、液晶パネルの光入射側に配置された偏光板(入射側偏光板)で発生した熱を、反対側透光性基板を介して熱容量の比較的大きな集光レンズに伝達することができるため、偏光板(入射側偏光板)の温度上昇をさらに抑制することが可能となる。その結果、プロジェクタの放熱性能を高めることができる。
【0028】
本発明のプロジェクタにおいては、前記照明装置からの前記照明光束を複数の色光に分離して被照明領域に導光する色分離導光光学系と、前記液晶パネルとして、前記色分離導光光学系で分離された複数の色光のそれぞれを画像情報に応じて変調する複数の液晶パネルと、前記複数の液晶パネルによって変調された色光が入射する複数の光入射端面及び合成された色光を射出する光射出端面を有するクロスダイクロイックプリズムとをさらに備え、前記偏光板は、前記複数の液晶パネルのうち少なくとも1つの液晶パネルの光射出側に配置されており、当該偏光板に貼り合わされた前記反対側透光性基板は、前記クロスダイクロイックプリズムの前記光入射端面に貼り合わされていることが好ましい。
【0029】
このように構成することにより、液晶パネルの光射出側に配置された偏光板(射出側偏光板)で発生した熱を、反対側透光性基板を介して熱容量の比較的大きなクロスダイクロイックプリズムに伝達することができるため、偏光板(射出側偏光板)の温度上昇をさらに抑制することが可能となる。その結果、プロジェクタの放熱性能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明のプロジェクタについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0031】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るプロジェクタ1000の光学系を示す図である。
図2は、実施形態1に係るプロジェクタ1000の要部を説明するために示す図である。図2(a)はクロスダイクロイックプリズム500の周辺部分を上面から見た図であり、図2(b)は図2(a)のA−A断面図である。
図3は、入射側偏光板420Rに対する各透光性基板430R,460Rの配置状態を説明するために示す図である。
【0032】
実施形態1に係るプロジェクタ1000は、図1に示すように、照明装置100と、照明装置100からの照明光束を赤色光、緑色光及び青色光の3つの色光に分離して被照明領域に導光する色分離導光光学系200と、色分離導光光学系200で分離された3つの色光のそれぞれを画像情報に応じて変調する電気光学変調装置としての3つの液晶パネル410R,410G,410Bと、3つの液晶パネル410R,410G,410Bによって変調された色光を合成するクロスダイクロイックプリズム500と、クロスダイクロイックプリズム500によって合成された光をスクリーンSCR等の投写面に投写する投写光学系600とを備えたプロジェクタである。これら各光学系は、筐体10に収納されている。
【0033】
照明装置100は、被照明領域側に略平行な照明光束を射出する光源としての光源装置110と、光源装置110から射出される照明光束を複数の部分光束に分割するための複数の第1小レンズ122を有する第1レンズアレイ120と、第1レンズアレイ120の複数の第1小レンズ122に対応する複数の第2小レンズ132を有する第2レンズアレイ130と、光源装置110から射出される偏光方向の揃っていない照明光束を略1種類の直線偏光に揃える偏光変換素子140と、偏光変換素子140から射出される各部分光束を被照明領域で重畳させるための重畳レンズ150とを有する。
【0034】
光源装置110は、楕円面リフレクタ114と、楕円面リフレクタ114の第1焦点近傍に発光中心を有する発光管112と、発光管112から被照明領域側に向けて射出される光を発光管112に向けて反射する副鏡116と、楕円面リフレクタ114からの集束光を略平行光として射出する凹レンズ118とを有する。光源装置110は、照明光軸100axを中心軸とする光束を射出する。
【0035】
発光管112は、管球部と、管球部の両側に延びる一対の封止部とを有する。管球部は、球状に形成された石英ガラス製であって、この管球部内に配置された一対の電極と、管球部内に封入された水銀、希ガス及び少量のハロゲンとを有する。発光管112としては、種々の発光管を採用でき、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を採用できる。
【0036】
楕円面リフレクタ114は、発光管112の一方の封止部に挿通・固着される筒状の首状部と、発光管112から放射された光を第2焦点位置に向けて反射する反射凹面とを有する。
【0037】
副鏡116は、発光管112の管球部の略半分を覆い、楕円面リフレクタ114の反射凹面と対向して配置される反射手段である。副鏡116は、発光管112の他方の封止部に挿通・固着されている。副鏡116は、発光管112から放射された光のうち楕円面リフレクタ114に向かわない光を発光管112に戻し楕円面リフレクタ114に入射させる。
【0038】
凹レンズ118は、楕円面リフレクタ114の被照明領域側に配置されている。そして、楕円面リフレクタ114からの光を第1レンズアレイ120に向けて射出するように構成されている。
【0039】
第1レンズアレイ120は、凹レンズ118からの光を複数の部分光束に分割する光束分割光学素子としての機能を有し、複数の第1小レンズ122が照明光軸100axと直交する面内に複数行・複数列のマトリクス状に配列された構成を有する。図示による説明は省略するが、第1小レンズ122の外形形状は、液晶パネル410R,410G,410Bの画像形成領域の外形形状に関して相似形である。
【0040】
第2レンズアレイ130は、重畳レンズ150とともに、第1レンズアレイ120の各第1小レンズ122の像を液晶パネル400R,400G,400Bの画像形成領域近傍に結像させる機能を有する。第2レンズアレイ130は、第1レンズアレイ120と略同様な構成を有し、複数の第2小レンズ132が照明光軸100axに直交する面内に複数行・複数列のマトリクス状に配列された構成を有する。
【0041】
偏光変換素子140は、第1レンズアレイ120により分割された各部分光束の偏光方向を、偏光方向の揃った略1種類の直線偏光として射出する偏光変換素子である。
偏光変換素子140は、光源装置110からの照明光束に含まれる偏光成分のうち一方の直線偏光成分を透過し他方の直線偏光成分を照明光軸100axに垂直な方向に反射する偏光分離層と、偏光分離層で反射された他方の直線偏光成分を照明光軸100axに平行な方向に反射する反射層と、反射層で反射された他方の直線偏光成分を一方の直線偏光成分に変換する位相差板とを有する。
【0042】
重畳レンズ150は、第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130及び偏光変換素子140を経た複数の部分光束を集光して、液晶パネル410R,410G,410Bにおける画像形成領域近傍に重畳させるための光学素子である。重畳レンズ150は、重畳レンズ150の光軸と照明装置100の照明光軸100axとが略一致するように配置されている。なお、重畳レンズ150は、複数のレンズを組み合わせた複合レンズで構成されていてもよい。
【0043】
色分離導光光学系200は、ダイクロイックミラー210,220と、反射ミラー230,240,250と、入射側レンズ260と、リレーレンズ270とを有する。色分離導光光学系200は、照明装置100から射出される照明光束を赤色光、緑色光及び青色光の3つの色光に分離して、それぞれの色光を照明対象となる液晶パネル410R,410G,410Bに導く機能を有する。
【0044】
ダイクロイックミラー210,220は、所定の波長領域の光束を反射し他の波長領域の光束を透過する波長選択膜が基板上に形成された光学素子である。光路前段に配置されるダイクロイックミラー210は、赤色光成分を反射し、その他の色光成分を透過させるミラーである。光路後段に配置されるダイクロイックミラー220は、緑色光成分を反射し、青色光成分を透過させるミラーである。
【0045】
ダイクロイックミラー210で反射された赤色光成分は、反射ミラー230により反射され、集光レンズ300Rを介して赤色光用の液晶パネル410Rに入射する。集光レンズ300Rは、重畳レンズ150からの各部分光束を各主光線に対して略平行な光束に変換するために設けられている。なお、他の集光レンズ300G,300Bも、集光レンズ300Rと同様に構成されている。
【0046】
ダイクロイックミラー210を通過した緑色光成分及び青色光成分のうち緑色光成分は、ダイクロイックミラー220で反射され、集光レンズ300Gを通過して緑色光用の液晶パネル410Gに入射する。一方、青色光成分は、ダイクロイックミラー220を透過し、入射側レンズ260、入射側の反射ミラー240、リレーレンズ270、射出側の反射ミラー250及び集光レンズ300Bを通過して青色光用の液晶パネル410Bに入射する。入射側レンズ260、リレーレンズ270及び反射ミラー240,250は、ダイクロイックミラー220を透過した青色光成分を液晶パネル410Bまで導く機能を有する。
【0047】
なお、青色光の光路にこのような入射側レンズ260、リレーレンズ270及び反射ミラー240,250が設けられているのは、青色光の光路の長さが他の色光の光路の長さよりも長いため、光の発散等による光利用効率の低下を防止するためである。実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、青色光の光路の長さが長いのでこのような構成とされているが、赤色光の光路の長さを長くして、入射側レンズ260、リレーレンズ270及び反射ミラー240,250を赤色光の光路に用いる構成も考えられる。
【0048】
液晶パネル410R,410G,410Bは、照明光束を画像情報に応じて変調するものであり、照明装置100の照明対象となる。
赤色光用の液晶パネル410Rは、一対の透明なガラス基板412R,414Rに電気光学物質である液晶を封入したものであり、例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像信号に従って、入射側偏光板420Rから射出された1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。他の色光用の液晶パネル410G,410Bも、液晶パネル410Rと同様に構成されている。液晶パネル410R,410G,410Bは、図示を省略したが、例えばアルミニウム製のダイキャストフレームからなる液晶パネル保持枠に保持されている。
【0049】
入射側偏光板420R,420G,420Bは、図2に示すように、集光レンズ300R,300G,300Bと液晶パネル410R,410G,410Bとの間に配置され、集光レンズ300R,300G,300Bから射出された光のうち、所定の方向に軸を有する直線偏光のみを透過し、その他の光を吸収する機能を有する。
【0050】
入射側偏光板420Rは、偏光層20を有する。偏光層20としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)をヨウ素又は二色性染料で染色し1軸延伸して、当該染料の分子を一方向に配列させるように形成された偏光層を好ましく用いることができる。このように1軸延伸処理が施された偏光層20は、1軸延伸方向に平行な方向の偏光を吸収する一方、1軸延伸方向に垂直な方向の偏光を透過する機能を有する。他の入射側偏光板420G,420Bも、入射側偏光板420Rと同様に構成されている。
【0051】
入射側偏光板420R,420G,420Bの液晶パネル側(光射出側)の面には、液晶パネル側透光性基板としての透光性基板430R,430G,430Bがそれぞれ接着層Cを介して貼り付けられている。透光性基板430R,430G,430Bの光射出面には、図示しない反射防止層が形成されている。透光性基板430R,430G,430Bは、例えばサファイアからなる透光性基板である。サファイアからなる透光性基板は、熱伝導率が約40W/(m・K)と高い上、硬度も非常に高く、熱膨張率は小さく、傷がつきにくく透明度が高い。なお、中程度の輝度として安価性を重視する場合には、約10W/(m・K)の熱伝導率を有する水晶からなる透光性基板を用いてもよい。透光性基板430R,430G,430Bの厚さは、例えば0.5mmである。
【0052】
入射側偏光板420R,420G,420Bにおける液晶パネル側の面とは反対側(光入射側)の面には、反対側透光性基板としての透光性基板460R,460G,460Bがそれぞれ接着層Cを介して貼り付けられている。透光性基板460R,460G,460Bの光入射面には、図示しない反射防止層が形成されている。透光性基板460R,460G,460Bも、透光性基板430R,430G,430Bと同様に、例えばサファイアからなる透光性基板である。透光性基板460R,460G,460Bの厚さは、例えば1.5mmである。
【0053】
液晶パネル側の透光性基板430Rと反対側の透光性基板460Rとは、図3に示すように、各透光性基板430R,460Rの光学軸が入射側偏光板420Rにおける偏光層20の偏光軸(偏光層20を通過する光の偏光軸)に略平行となるように配置されている。他の入射側偏光板420G,420Bにおける液晶パネル側の透光性基板430G,430Bと反対側の透光性基板460G,460Bについても同様である。
【0054】
射出側偏光板440R,440G,440Bは、液晶パネル410R,410G,410Bとクロスダイクロイックプリズム500との間に配置され、液晶パネル410R,410G,410Bから射出された光のうち、所定の方向に軸を有する直線偏光のみを透過し、その他の光を吸収する機能を有する。
【0055】
射出側偏光板440Rは、偏光層40を有する。偏光層40としては、入射側偏光板420Rのものと同様の材料を用いることができる。他の射出側偏光板440G,440Bも、射出側偏光板440Rと同様に構成されている。
【0056】
射出側偏光板440R,440G,440Bにおける液晶パネル側(光入射側)の面には、液晶パネル側透光性基板としての透光性基板450R,450G,450Bがそれぞれ接着層Cを介して貼り付けられている。透光性基板450R,450G,450Bの光入射面には、図示しない反射防止層が形成されている。透光性基板450R,450G,450Bも、透光性基板430R,430G,430Bなどと同様に、例えばサファイアからなる透光性基板である。透光性基板450R,450G,450Bの厚さは、例えば0.5mmである。
【0057】
射出側偏光板440R,440G,440Bにおける液晶パネル側の面とは反対側(光射出側)の面には、反対側透光性基板としての透光性基板470R,470G,470Bがそれぞれ接着層Cを介して貼り付けられている。透光性基板470R,470G,470Bの光射出面には、図示しない反射防止層が形成されている。透光性基板470R,470G,470Bも、透光性基板430R,430G,430Bなどと同様に、例えばサファイアからなる透光性基板である。透光性基板470R,470G,470Bの厚さは、例えば1.5mmである。
【0058】
透光性基板430R,430G,430B,450R,450G,450Bの下端部には、各透光性基板と筐体10との間で熱を伝達する熱伝導部材14,16が配設されている。
【0059】
液晶パネル側の透光性基板450Rと反対側の透光性基板470Rとは、図示による説明は省略するが、入射側偏光板の場合と同様に、射出側偏光板440Rにおける偏光層40の偏光軸に略平行となるように配置されている。他の射出側偏光板440G,440Bにおける液晶パネル側の透光性基板450G,450Bと反対側の透光性基板470G,470Bについても同様である。
【0060】
入射側偏光板420R,420G,420Bにおける偏光層20の端面及び射出側偏光板440R,440G,440Bにおける偏光層4の端面は、接着層Cで取り囲まれている。接着層Cに用いる接着剤としては、例えば紫外線硬化型の接着剤や可視光短波長硬化型の接着剤などを好適に用いることができる。
【0061】
これらの入射側偏光板420R,420G,420B及び射出側偏光板440R,440G,440Bは、互いの偏光軸の方向が直交するように設定・配置されている。
【0062】
クロスダイクロイックプリズム500は、各射出側偏光板440R,440G,440Bから射出された各色光ごとに変調された光学像を合成して、カラー画像を形成する光学素子である。クロスダイクロイックプリズム500は、液晶パネル410R,410G,410Bで変調された色光をそれぞれ入射する3つの光入射端面と、合成された色光を射出する光射出端面とを有する。クロスダイクロイックプリズム500は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向と揃えられることにより、3つの色光が合成される。
クロスダイクロイックプリズム500は、熱伝導性のスペーサ12(図2(b)参照。)を介して筐体10に配設されている。
【0063】
クロスダイクロイックプリズム500から射出されたカラー画像は、投写光学系600によって拡大投写され、スクリーンSCR上で大画面画像を形成する。
【0064】
なお、ここでは図示を省略したが、プロジェクタ1000内には、各光学系などを冷却するための少なくとも1つのファン及び複数の冷却風流路が設けられている。プロジェクタ1000の外部から取り込まれた空気は、これらファン及び複数の冷却風流路によってプロジェクタ1000内を循環し、外部へと排出される。図2に示すように、筐体10に設けられた通風孔(冷却風流路)から流れ込む空気が、クロスダイクロイックプリズム500などからの放熱を促進させる。
【0065】
このように構成された実施形態1に係るプロジェクタ1000について説明するにあたり、以下では説明を簡略化するため、3つの色光の光路のうち赤色光の光路に配置された部材の構成をもとにして、実施形態1に係るプロジェクタ1000をさらに詳細に説明する。
【0066】
実施形態1に係るプロジェクタ1000によれば、入射側偏光板420Rに貼り付けられた2つの透光性基板430R,460Rのうち液晶パネル側の透光性基板430Rの厚みは、反対側の透光性基板460Rの厚みよりも薄く、射出側偏光板440Rに貼り付けられた2つの透光性基板450R,470Rのうち液晶パネル側の透光性基板450Rの厚みは、反対側の透光性基板470Rの厚みよりも薄い。このため、液晶パネル側の透光性基板430R,450Rで発生する熱歪による位相差を小さくすることが可能となり、液晶パネル側の透光性基板430R,450Rを通過する光について偏光の乱れの発生を低減することができる。その結果、熱歪による位相差に起因した投写画像の画像品質の低下を抑制することが可能となる。
【0067】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000は、液晶パネル側の透光性基板430R,450Rと反対側の透光性基板460R,470Rとの両方の基板の厚みが薄いのではなく、一方の基板(液晶パネル側の透光性基板430R,450R)の厚みだけが薄いものであることから、他方の基板(反対側の透光性基板460R,470R)の厚みがある程度厚ければ、必要十分な放熱効果を得ることができ、入射側偏光板420R及び射出側偏光板440Rの温度上昇を十分に抑制することが可能となる。その結果、偏光板の温度上昇に起因した投写画像の画像品質の低下を極力抑制することが可能となる。
【0068】
したがって、実施形態1に係るプロジェクタ1000は、投写画像の画像品質を従来よりも高くすることが可能なプロジェクタとなる。
【0069】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000によれば、入射側偏光板420Rと液晶パネル410Rとの間及び液晶パネル410Rと射出側偏光板440Rとの間には、比較的厚みの薄い透光性基板430R,450Rが存在することとなるため、熱歪による位相差に起因した投写画像の画像品質の低下を効果的に抑制することが可能となる。
【0070】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000によれば、透光性基板430R,460Rの2つの基板によって入射側偏光板420Rを両面から挟んでおり、透光性基板450R,470Rの2つの基板によって射出側偏光板440Rを両面から挟んでいるため、所定の機械的強度を得ることができる。
【0071】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、液晶パネル側の透光性基板430R及び反対側の透光性基板460Rは、同一材料からなる透光性基板であるため、液晶パネル側の透光性基板430Rと反対側の透光性基板460Rとで熱膨張が大きな軸方向が同一方向となり、入射側偏光板420Rの熱変形を抑制することが可能となる。射出側偏光板についても同様に、液晶パネル側の透光性基板450R及び反対側の透光性基板470Rは、同一材料からなる透光性基板であるため、液晶パネル側の透光性基板450Rと反対側の透光性基板470Rとで熱膨張が大きな軸方向が同一方向となり、射出側偏光板440Rの熱変形を抑制することが可能となる。
【0072】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、透光性基板430R,450R,460R,470Rは、サファイアからなる透光性基板である。サファイアからなる透光性基板は熱伝導性に非常に優れているため、入射側偏光板420R及び射出側偏光板440Rで発生した熱を効率よく系外に放散させることができ、入射側偏光板420R及び射出側偏光板440Rの温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。
【0073】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、透光性基板430R,460Rの光学軸が偏光層20の偏光軸に略平行となるように、入射側偏光板420Rに対して透光性基板430R,460Rが配置されており、透光性基板450R,470Rの光学軸が偏光層40の偏光軸に略平行となるように、射出側偏光板440Rに対して透光性基板450R,470Rが配置されているため、各透光性基板を通過する光の偏光状態に望ましくない乱れが発生するのを抑制することが可能となる。
【0074】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、入射側偏光板420Rと透光性基板430R,450R及び射出側偏光板440Rと透光性基板450R,470Rは、それぞれ接着剤によって貼り合わされているため、各部材間の界面における表面反射の発生が抑制され、光透過率を高めることが可能となる。また、入射側偏光板420R、射出側偏光板440R及び透光性基板430R,450R,460R,470Rの線膨張係数がそれぞれ異なる場合であっても、各部材間の貼り合わせ面における剥離が起こりにくくなり、長期信頼性の低下を抑制することが可能となる。
【0075】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、各光学系を内部に収納する筐体10と、透光性基板430R,460Rと筐体10との間で熱を伝達する熱伝導部材14,16とをさらに備える。これにより、入射側偏光板420R及び射出側偏光板440Rで発生した熱は、透光性基板430R,450R及び熱伝導部材14,16を介し筐体10に放散されるようになるため、プロジェクタ1000の放熱性能を高めることができる。なお、熱伝導部材14,16としては、アルミニウムなどの金属からなる部材を好適に用いることができる。
【0076】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、透光性基板430R,450Rを冷却する冷却風流路が設けられている。これにより、冷却風流路からの冷却風によって透光性基板430R,450Rを冷却することができるため、透光性基板430R,450Rの温度上昇を抑制し、入射側偏光板420R及び射出側偏光板440Rで発生した熱を効率的に除去することができる。
【0077】
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係るプロジェクタ1002の要部を説明するために示す図である。図4(a)はクロスダイクロイックプリズム500の周辺部分を上面から見た図であり、図4(b)は図4(a)のA−A断面図である。なお、図4において、図2と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0078】
実施形態2に係るプロジェクタ1002は、基本的には実施形態1に係るプロジェクタ1000とよく似た構成を有しているが、入射側偏光板に貼り合わされた透光性基板が集光レンズに接着されている点及び射出側偏光板に貼り合わされた透光性基板がクロスダイクロイックプリズムに接着されている点で、実施形態1に係るプロジェクタ1000とは異なる。
【0079】
すなわち、実施形態2に係るプロジェクタ1002においては、図4に示すように、入射側偏光板420Rに貼り合わされた反対側透光性基板としての透光性基板460Rは、集光レンズ300Rの光射出面に接着層を介して接着されている。他の透光性基板460G,460Bも、集光レンズ300G,300Bの光射出面にそれぞれ接着されている。
また、射出側偏光板440Rに貼り合わされた反対側透光性基板としての透光性基板470Rは、クロスダイクロイックプリズム500の光入射端面に接着層を介して接着されている。他の透光性基板470G,470Bも、クロスダイクロイックプリズム500の光入射端面にそれぞれ接着されている。
【0080】
このように、実施形態2に係るプロジェクタ1002は、入射側偏光板に貼り合わされた透光性基板が集光レンズに接着されている点及び射出側偏光板に貼り合わされた透光性基板がクロスダイクロイックプリズムに接着されている点で、実施形態1に係るプロジェクタ1000とは異なるが、実施形態1に係るプロジェクタ1000の場合と同様に、入射側偏光板420Rに貼り付けられた2つの透光性基板430R,460Rのうち液晶パネル側の透光性基板430Rの厚みは、反対側の透光性基板460Rの厚みよりも薄く、射出側偏光板440Rに貼り付けられた2つの透光性基板450R,470Rのうち液晶パネル側の透光性基板450Rの厚みは、反対側の透光性基板470Rの厚みよりも薄い。その結果、投写画像の画像品質を従来よりも高くすることが可能なプロジェクタとなる。
【0081】
実施形態2に係るプロジェクタ1002においては、入射側偏光板420R,420G,420Bに貼り合わされた透光性基板460R,460G,460Bは、集光レンズ300R,300G,300Bの光射出面に接着されている。これにより、入射側偏光板420R,420G,420Bで発生した熱を、透光性基板460R,460G,460Bを介して熱容量の比較的大きな集光レンズ300R,300G,300Bに伝達することができるため、入射側偏光板420R,420G,420Bの温度上昇をさらに抑制することが可能となる。その結果、プロジェクタ1002の放熱性能を高めることができる。
【0082】
実施形態2に係るプロジェクタ1002においては、射出側偏光板440R,440G,440Bに貼り合わされた透光性基板470R,470G,470Bは、クロスダイクロイックプリズム500の各光入射端面に接着されている。これにより、射出側偏光板440R,440G,440Bで発生した熱を、透光性基板470R,470G,470Bを介して熱容量の比較的大きなクロスダイクロイックプリズム500に伝達することができるため、射出側偏光板440R,440G,440Bの温度上昇をさらに抑制することが可能となる。その結果、プロジェクタ1002の放熱性能を高めることができる。
【0083】
実施形態2に係るプロジェクタ1002は、入射側偏光板に貼り合わされた透光性基板が集光レンズに接着されている点及び射出側偏光板に貼り合わされた透光性基板がクロスダイクロイックプリズムに接着されている点以外の点では、実施形態1に係るプロジェクタ1000と同様の構成を有するため、実施形態1に係るプロジェクタ1000が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0084】
[実施形態3]
図5は、実施形態3に係るプロジェクタ1004の要部を説明するために示す図である。なお、図5において、図2と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0085】
実施形態3に係るプロジェクタ1004は、基本的には実施形態1に係るプロジェクタ1000とよく似た構成を有しているが、偏光板が支持層をさらに有する点で、実施形態1に係るプロジェクタ1000とは異なる。
【0086】
すなわち、実施形態3に係るプロジェクタ1004においては、入射側偏光板422Rは、図5に示すように、偏光層20と、偏光層20における液晶パネル410Rとは反対側(集光レンズ300R側)に配置され偏光層20を支持する支持層22とを有する。支持層22は、偏光層20が延伸状態から元の状態に戻ろうとするのを規制する機能を有する。支持層22としては、トリアセチルセルロース(TAC)からなる支持層を好ましく用いることができる。他の入射側偏光板422G,422Bも、入射側偏光板422Rと同様に構成されている。
【0087】
また、射出側偏光板442Rは、偏光層40と、偏光層40における液晶パネル410Rとは反対側(クロスダイクロイックプリズム500側)に配置され偏光層40を支持する支持層42とを有する。支持層42は、偏光層40が延伸状態から元の状態に戻ろうとするのを規制する機能を有する。支持層42としては、トリアセチルセルロース(TAC)からなる支持層を好ましく用いることができる。他の射出側偏光板442G,442Bも、射出側偏光板442Rと同様に構成されている。
【0088】
このように、実施形態3に係るプロジェクタ1004は、偏光板が支持層をさらに有する点で、実施形態1に係るプロジェクタ1000とは異なるが、実施形態1に係るプロジェクタ1000の場合と同様に、入射側偏光板422Rに貼り付けられた2つの透光性基板430R,460Rのうち液晶パネル側の透光性基板430Rの厚みは、反対側の透光性基板460Rの厚みよりも薄く、射出側偏光板442Rに貼り付けられた2つの透光性基板450R,470Rのうち液晶パネル側の透光性基板450Rの厚みは、反対側の透光性基板470Rの厚みよりも薄い。その結果、投写画像の画像品質を従来よりも高くすることが可能なプロジェクタとなる。
【0089】
実施形態3に係るプロジェクタ1004は、偏光板が支持層をさらに有する点以外の点では、実施形態1に係るプロジェクタ1000と同様の構成を有するため、実施形態1に係るプロジェクタ1000が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0090】
以上、本発明のプロジェクタを上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0091】
(1)上記各実施形態においては、液晶パネル側透光性基板及び反対側透光性基板が同一材料からなる透光性基板である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、液晶パネル側透光性基板及び反対側透光性基板が異なる材料からなる透光性基板であってもよい。この場合において、液晶パネル側透光性基板及び反対側透光性基板がともに、面内方向によって線膨張係数に差を有する透光性基板であれば、液晶パネル側透光性基板における最も線膨張係数が大きくなる軸方向と反対側透光性基板における最も線膨張係数が大きくなる軸方向とが、略同一であることが好ましい。これにより、偏光板(入射側偏光板又は射出側偏光板)の熱変形を抑制することが可能となる。
【0092】
(2)上記各実施形態においては、液晶パネル側透光性基板と反対側透光性基板とが、各透光性基板の光学軸が偏光板(入射側偏光板又は射出側偏光板)における偏光層の偏光軸に略平行となるように配置されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、液晶パネル側透光性基板と反対側透光性基板とが、各透光性基板の光学軸が偏光板(入射側偏光板又は射出側偏光板)における偏光層の偏光軸に略垂直となるように配置されていてもよい。
【0093】
(3)上記各実施形態においては、3つの入射側偏光板及び3つの射出側偏光板の両面に貼り合わされた透光性基板のすべてが、反対側透光性基板よりも液晶パネル側透光性基板の厚みが薄くなるように構成されている場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、3つの入射側偏光板及び3つの射出側偏光板のうち例えば1つの偏光板の両面に貼り合わされた透光性基板が、反対側透光性基板よりも液晶パネル側透光性基板の厚みが薄くなるように構成されたプロジェクタも本発明の範囲に含まれる。
【0094】
(4)上記実施形態2においては、3つの入射側偏光板に貼り合わされた反対側透光性基板のすべてが集光レンズに接着され、3つの射出側偏光板に貼り合わされた反対側透光性基板のすべてがクロスダイクロイックプリズムの光入射端面に接着された場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、3つの入射側偏光板に貼り合わされた反対側透光性基板のうち例えば1つの反対側透光性基板が集光レンズに接着されているプロジェクタや、3つの射出側偏光板に貼り合わされた反対側透光性基板のうち例えば1つの反対側透光性基板がクロスダイクロイックプリズムの光入射端面に接着されているプロジェクタも本発明の範囲に含まれる。
【0095】
(5)上記各実施形態においては、液晶パネル側透光性基板及び反対側透光性基板がサファイアからなる透光性基板である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、水晶、石英、耐熱ガラス(硬質ガラス)、結晶化ガラス、白板ガラス又は立方晶の焼結体などからなる透光性基板であってもよい。
【0096】
(6)上記各実施形態においては、リフレクタとして、楕円面リフレクタを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、放物面リフレクタも好ましく用いることができる。
【0097】
(7)上記各実施形態においては、発光管に配設される反射手段として副鏡を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、反射手段として反射膜を用いることも好ましい。また、上記各実施形態においては、発光管に反射手段としての副鏡が配設されたプロジェクタを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、副鏡が配設されていないプロジェクタに本発明を適用することも可能である。
【0098】
(8)上記各実施形態においては、光均一化光学系として、レンズアレイからなるレンズインテグレータ光学系を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ロッド部材からなるロッドインテグレータ光学系をも好ましく用いることができる。
【0099】
(9)上記各実施形態においては、3つの型液晶パネルを用いたプロジェクタを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つ、2つ又は4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクタにも適用可能である。
【0100】
(10)本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクタに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェクタに適用する場合にも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】実施形態1に係るプロジェクタ1000の光学系を示す図。
【図2】実施形態1に係るプロジェクタ1000の要部を説明するために示す図。
【図3】入射側偏光板420Rに対する各透光性基板430R,460Rの配置状態を説明するために示す図。
【図4】実施形態2に係るプロジェクタ1002の要部を説明するために示す図。
【図5】実施形態3に係るプロジェクタ1004の要部を説明するために示す図。
【符号の説明】
【0102】
10…筐体、12…熱伝導性のスペーサ、14,16…熱伝導部材、20,40…偏光層、22,42…支持層、100…照明装置、100ax…照明光軸、110…光源装置、112…発光管、114…楕円面リフレクタ、116…副鏡、118…凹レンズ、120…第1レンズアレイ、122…第1小レンズ、130…第2レンズアレイ、132…第2小レンズ、140…偏光変換素子、150…重畳レンズ、200…色分離導光光学系、210,220…ダイクロイックミラー、230,240,250…反射ミラー、260…入射側レンズ、270…リレーレンズ、300R,300G,300B…集光レンズ、410R,410G,410B…液晶パネル、412R,412G,412B,414R,414G,414B…ガラス基板、420R,420G,420B,422R,422G,422B…入射側偏光板、430R,430G,430B,450R,450G,450B,460R,460G,460B,470R,470G,470B…透光性基板、440R,440G,440B,442R,442G,442B…射出側偏光板、500…クロスダイクロイックプリズム、600…投写光学系、1000…プロジェクタ、C…接着層、SCR…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光束を射出する照明装置と、
前記照明装置からの前記照明光束を画像情報に応じて変調する液晶パネルと、
前記液晶パネルで変調された光を投写する投写光学系と、
前記液晶パネルの光入射側及び光射出側の少なくとも一方に配置され、少なくとも偏光層を有する偏光板と、
前記偏光板における前記液晶パネル側の表面に貼り合わされ、無機材料からなる液晶パネル側透光性基板と、
前記偏光板における前記液晶パネル側の表面とは反対側の表面に貼り合わされ、無機材料からなる反対側透光性基板とを備え、
前記液晶パネル側透光性基板の厚みは、前記反対側透光性基板の厚みよりも薄いことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタにおいて、
前記液晶パネル側透光性基板及び前記反対側透光性基板は、同一材料からなる透光性基板であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクタにおいて、
前記液晶パネル側透光性基板及び前記反対側透光性基板はともに、サファイア又は水晶からなる透光性基板であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のプロジェクタにおいて、
前記サファイア又は水晶からなる透光性基板の光学軸が前記偏光層の偏光軸に略平行又は略垂直となるように、前記偏光板に対して前記サファイア又は水晶からなる透光性基板が配置されていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
請求項1に記載のプロジェクタにおいて、
前記液晶パネル側透光性基板及び前記反対側透光性基板はともに、面内方向によって線膨張係数に差を有する透光性基板であり、
前記液晶パネル側透光性基板における最も線膨張係数が大きくなる軸方向と前記反対側透光性基板における最も線膨張係数が大きくなる軸方向とは、略同一であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記液晶パネルの光入射側に配置される集光レンズをさらに備え、
前記偏光板は、少なくとも前記液晶パネルの光入射側に配置されており、
当該偏光板に貼り合わされた前記反対側透光性基板は、前記集光レンズの光射出面に貼り合わされていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記照明装置からの前記照明光束を複数の色光に分離して被照明領域に導光する色分離導光光学系と、
前記液晶パネルとして、前記色分離導光光学系で分離された複数の色光のそれぞれを画像情報に応じて変調する複数の液晶パネルと、
前記複数の液晶パネルによって変調された色光が入射する複数の光入射端面及び合成された色光を射出する光射出端面を有するクロスダイクロイックプリズムとをさらに備え、
前記偏光板は、前記複数の液晶パネルのうち少なくとも1つの液晶パネルの光射出側に配置されており、
当該偏光板に貼り合わされた前記反対側透光性基板は、前記クロスダイクロイックプリズムの前記光入射端面に貼り合わされていることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−145444(P2009−145444A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320475(P2007−320475)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】