説明

プロジェクタ

【課題】投射部への塵埃等の付着がほぼ皆無になるプロジェクタを提供する。
【解決手段】プロジェクタ1は、上部外装および下部外装3に設けられた投射開口7と、投射開口7を開閉するための開閉扉8と、投射開口7へ第2ファンからの冷却空気を流出させるための流出口83と、を備え、冷却空気は、開閉扉8の開放開始と連動して流出口83からの流出を開始し、投射開口7の少なくとも開口となった全域を覆いプロジェクタ1の外部側と内部側とを遮断するエアカーテン30を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の開口部から塵埃等の異物が浸入することを防止するためのプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学系を構成するレンズ等に、塵埃が付着しないようにするため、光学系の前面または近傍へ風を送って付着抑止を図ったプロジェクタが知られている。このプロジェクタによれば、プロジェクタの稼動中は、ファンからの風が、常に、光学系に送られており、この風によって、光学系に近づく塵埃を遮っている。具体的には、光学系の最前列のレンズへ、ファンからの風が送られるようにダクトの向きを調整して、塵埃の付着を抑止している。これにより、プロジェクタは、塵埃の影響による投射画像の画質低下を防いでいる。また、光学系を外部と遮断するためのシャッタを設けることにより、シャッタを閉じれば、プロジェクタの稼働停止中においても、外部からの塵埃の浸入を防止することが可能である(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−173119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、プロジェクタの起動時において、シャッタの開放がファンからの風の到着より早く、その間に、開放されたシャッタから塵埃が浸入して光学系に付着することがあった。同様に、プロジェクタの稼働停止時においても、シャッタの閉止がファンからの風の停止より遅く、その間に、開放されているシャッタから塵埃が浸入して光学系に付着してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるプロジェクタは、光源部から射出された光束を画像信号に応じ光変調装置で変調し画像光を形成し、当該画像光を投射するプロジェクタであって、筐体と、前記画像光の投射のために前記筐体に設けられた開口部と、前記開口部を開閉するための開閉扉と、前記開口部へ空気を流出させるための流出口と、前記開閉扉の開放動作と連動して前記流出口から空気の流出を開始させる制御部と、を有することを特徴とする。
【0007】
このプロジェクタによれば、開口部を閉止していた開閉扉が開けられると、異物が開口部から筐体内へ浸入しやすい状態になるが、流出口から空気流を流出して開口部を覆うことにより、開口部からの異物の浸入を防止できる。つまり、開閉扉が開けられるにつれて、開閉扉で閉じられていた開口部に、筐体の外部側と内部側とを連通させる開口が出現し始め、徐々に拡大して開口部の全域が開口となって開放される。この時、プロジェクタは、開閉扉の開放動作と連動して、流出口から空気が流出して空気流を形成し、形成された空気流によって、開口部に出現し始めた開口が覆われるように制御する。これにより、開口における筐体の外部側と内部側とは、空気流によって遮断された状態となり、異物が筐体の外部側から開口部を通って筐体の内部側へ浸入できなくなっている。そして、この空気流による遮断状態は、開口部の全域が開放されても継続される。ゆえに、開口部が開放されて、筐体の内部から光束が投射可能な状態であっても、開口部からの異物の浸入を阻止して、筐体内部を常に清浄に保つことができ、プロジェクタの投射機能を長期に維持することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかるプロジェクタにおいて、前記制御部は、さらに、前記開閉扉の閉止終了と連動して前記流出口から空気の流出を停止することが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、開閉扉が閉止し始めても、流出口から空気が流出して、空気流が継続して形成されており、徐々に縮小する開口を覆って、開口部からの異物の浸入を阻止している。そして、開閉扉によって、開口部が完全に閉じられると、流出口からの空気の流出が止まり、空気流の形成が停止する。この状態で空気流の形成が停止しても、開口部は開閉扉によって開口のない状態になっているため、開口部から異物が侵入することはない。このように、開口部に開口が生じている間において、空気流によって開口を確実に覆うだけでなく、開口部が閉じている間では、空気流の形成を停止して、空気流の無駄な形成をなくすことができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかるプロジェクタにおいて、前記流出口は、前記開閉扉の端部に形成されていることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、開閉扉の端部に形成された流出口から流出した空気は、空気流を形成して、開口部の開口した部分を覆っている。このように、開閉扉の端部から空気を流出する構成では、異物が浸入し易い開口のみを空気流で覆っており、開口以外の領域にまで空気流を形成せず、効率的に空気流を形成することができる。従って、開閉扉の開閉に伴う開口部の開口の大きさに合わせて、空気の流出強さを変えること等ができ、省エネルギーを図った空気流の形成が行えるプロジェクタを提供できる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかるプロジェクタにおいて、前記流出口は、前記開口部の縁部に設けられていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、空気流は、開閉扉が多少でも開いている間において、常に、開口を含めて開口部の全域を覆うように形成されている。従って、空気流で覆われないような開口部の部分がないため、プロジェクタが置かれた環境に関わらず、また異物が微細であっても、開口部から異物が侵入することを確実に防止できる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかるプロジェクタにおいて、前記流出口は、前記流出口から流出された空気が前記画像光を投射するための投射レンズへの当接を回避するように構成されていることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、流出口は、開口部を覆うと共に、投射レンズに直接当たらないように形成されている。これにより、空気流が冷たい空気や湿った空気等で形成されていても、直接投射レンズに当たらないため、投射レンズと空気との温度差等で光束が歪んだり、湿気がもたらされて投射レンズに黴等が発生しやすくなったりすることを、抑制できる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかるプロジェクタにおいて、前記筐体の内部を冷却するために導入される冷却空気を分流する分流ダクトを有していることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、空気流を形成する空気は、プロジェクタの内部を冷却するために導入する空気であって、プロジェクタは、投射装置へ導入する空気の一部を分流して、空気流を形成する分流ダクトを有している。こうすれば、空気流を形成するためだけに、空気の導入機構を備える必要がなく、プロジェクタに備えられている冷却用の空気の導入機構をそのまま用いることができる。そのため、より簡便な機構によって、異物浸入防止のための空気流の形成が行え、プロジェクタが大型化することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、防塵方法を備えたプロジェクタの具体的な実施形態について、図面に従って説明する。本実施形態のプロジェクタは、光束を投射する投射部へ塵埃等(異物)が付着することを防止する構成に、特徴を有している。
(実施形態1)
【0019】
図1(a)は、実施形態1にかかるプロジェクタを正面上方から見た斜視図、図1(b)は、プロジェクタを正面下方から見た斜視図である。図1に示すように、プロジェクタ1は、略直方体形状の外観をなしていて、プロジェクタ1の機構部を収容する筐体である上部外装2と、下部外装3と、を有している。上部外装2は、プロジェクタ1の上部側に配置され、上面、正面、背面、右側面および左側面を形成している。上部外装2の上面には、背面側左方に位置し、光源部のランプを交換するために開閉可能な光源蓋2aと、上面の略中央部に位置し、プロジェクタ1を操作するための操作ボタン類を有する操作部2bと、正面側右方にあって投射部45の投射レンズ45aからの光束が通過して投射されるための投射開口(開口部)7と、が設けられている。
【0020】
そして、下部外装3は、プロジェクタ1の正面、右側面、左側面、背面および下面を形成しており、投射開口7の内部側には、左右方向にスライド移動して投射開口7を開閉するための開閉扉8を有している。また、下部外装3の下面3aには、投射部45の直下に、機構部を冷却する冷却空気(空気)を筐体の内部へ取り入れるための吸気口5が設けられ、左側面には、機構部を冷却した冷却空気を排気するための排気口6が設けられている。さらに、下面3aには、正面側中央、背面側右方および背面側左方に位置し、投射部45から投射される画像の上下方向の煽りと水平方向の傾きとを調整するための3本の脚部10と、プロジェクタ1を無線制御するリモコンに対応する受信部14と、が設けられている。このプロジェクタ1は、画像が投射されるスクリーン等を見る側と同じ側に設置されるいわゆるフロントタイプのものである。
【0021】
次に、筐体の内部に収容されている機構部について説明する。図2は、プロジェクタの内部の構成を示す斜視図である。図2に示すように、プロジェクタ1は、内部に、吸気口5(図1)から冷却空気を吸引して取り入れるための2つの吸気ファン15と、吸気ファン15の一方の第1ファン15aが取り込んだ冷却空気を機構部へ導くための第1ダクト17と、吸気ファン15の他方の第2ファン15bが取り込んだ冷却空気を機構部へ導くための第2ダクト(不図示)と、第2ダクトの冷却空気を分流して開閉扉8へ供給するための分流ダクト9と、を有している。
【0022】
また。プロジェクタ1は、第1ファン15aと第2ファン15bとの間に位置し光束を投射する投射部45と、下部外装3の正面左方にあって一端が排気口6(6b)と対向して位置する電源部18と、電源部18の背面側に排気口6(6a)に対して斜めに対向して位置する排気ファン16と、排気ファン16から投射部45にかけて上面側から見て略L字状に配置された光学ユニット4(41,42,43,44,45)と、光学ユニット4の背面側に設けられたスピーカ19と、光学ユニット4の上方に設けられた制御基板20と、制御基板20の背面側に設けられ、外部機器とプロジェクタ1とを接続するための数種の端子類を有するコネクタ部21と、を有している。
【0023】
プロジェクタ1の機構部の主要部である光学ユニット4は、排気ファン16の近傍にあり光源部を有するインテグレータ照明部41と、色分離部42と、リレー光学部43と、3枚の液晶パネル(不図示)を光学変調素子として有する光学変調部44と、光学変調部44に接続されている投射部45と、で構成されている。このような構成の光学ユニット4は、略L字状の支持体に収容されて、下部外装3の内底面に載置されている。
【0024】
ここで、光学ユニット4の機能について、簡単に説明する。インテグレータ照明部41は、光源部の光源ランプから光束を射出し、光学変調部(光変調装置)44において、赤、緑、青の色光にそれぞれ対応して設けられている3枚の液晶パネルの画像形成領域を、光束がほぼ均一に照明するための光学系である。また、色分離部42は、インテグレータ照明部41から射出された光束を赤、緑、青の3色の色光に分離するための光学系である。次のリレー光学部43は、色分離部42で分離された色光の内、液晶パネルまでの経路の長い色光を導く機能を有する光学系であり、この場合赤色光がリレー光学部43へ導かれている。そして、光学変調部44は、3枚の液晶パネルによって、それぞれの色光を画像情報に応じて変調して光学像を形成し、さらに、クロスダイクロイックプリズムによって、色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成するための光学系である。このようにして形成されたカラー画像は、投射部45の投射レンズ45aによって拡大して投射され、スクリーンに映像として映し出される。
【0025】
次に、分流ダクト9から冷却空気の供給を受けると共に投射開口7を開閉するための開閉扉8と、その近傍の構成と、について、図2および図3を参照して説明する。図3は、エアカーテンを形成する流出口が設けられた開閉扉を示す斜視図であり、投射開口7に対してほぼ全開状態の開閉扉8を示している。開閉扉8は、下部外装3の投射開口7に対して内側に位置し、外面側が投射開口7と対向する平面であり、内面側が略中央部に一段の段差をなしている長方形の板状である。段差は、開閉扉8が左右にスライドする方向の投射開口7の側が厚くなった肉厚部となっていて、この肉厚部には、スライド方向に沿って冷却空気を導く導風孔81が形成されている。導風孔81は、略中央部の段差部に冷却空気が流入する流入口82と、開閉扉8の投射開口7側の端面に冷却空気が流出する流出口83と、を有し、流出口83の上下方向の長さは、投射開口7の上下方向の長さより長く設定されている。
【0026】
そして、下部外装3の投射開口7の近傍には、投射開口7を取り囲む矩形状の枠をなし、枠の内側に開閉扉8がガイドされてスライド移動するための溝部12が形成されたスライド枠11と、スライド枠11の電源部18寄りに設けられた分流ダクト9と、同じくスライド枠11の電源部18寄りに設けられ開閉扉8をスライドさせるための開閉機構部13と、が設けられている。さらに、分流ダクト9と流入口82との間には、分流ダクト9から導風孔81へ冷却空気を送るための伸縮導風筒91が設けられている。伸縮導風筒91は、蛇腹状の形状をしていて、スライド移動する開閉扉8の流入口82に追随して伸縮する。
【0027】
上述のような構成により、分流ダクト9から冷却空気の空気分流31aを形成して供給された冷却空気は、伸縮導風筒91へ送られて、空気分流31bとして流入口82から導風孔81へ導かれる。導風孔81を通過した空気分流31bは、投射開口7の開口している部分を覆うように流出口83から流出し、投射部45の投射レンズ45aに直接当たることなく、投射開口7の左方から右方の方向へ流れる。このように流出口83から流出した冷却空気は、上下方向の長さが投射開口7より長いため、投射開口7の全域を確実に覆うエアカーテン30を形成する。このエアカーテン30の形成により、投射開口7において、プロジェクタ1の外部側と内部側とが塵埃等の侵入できない遮断状態となる。そのため、図1に示すように、プロジェクタ1の投射開口7が開かれている状態であっても、塵埃等が浸入して投射レンズ45aに付着するようなことがなく、プロジェクタ1の輝度低下や投射映像の画質低下等を防止できる。
【0028】
なお、冷却空気の空気分流31aは、分流ダクト9の切換部9aが、第2ファン15b(図2)で導入した冷却空気の一部を開閉扉8へ分流して導くように、切り換え操作をすることにより形成される。そして、分流ダクト9の切換部9aが、分流を停止する切り換え操作をすれば、第2ファン15bが稼働していても、空気分流31aは形成されない。また、開閉機構部13は、詳細を示していないが、プランジャーで開閉扉8を開閉させる方法や、モータ制御のラックおよびピニオン機構で開閉扉8を開閉させる方法等を用いて構成されている。開閉機構部13は、開閉扉8の開放開始および開放終了や閉止終了を検出するための位置検出部13aを有している。位置検出部13aは、マイクロスイッチによる電気的検出またはフォトセンサによる光学的検出等により構成されている。
【0029】
このような構成のプロジェクタ1は、制御部によって制御されており、以下にその構成について説明する。図4は、制御部の構成を示すブロック図である。プロジェクタ1の制御部50は、制御基板20に実装されていて、プロジェクタ1を総合的に制御するCPU(Central Processing Unit)51と、CPU51が参照して各種処理を実行するためのプログラム等を格納しているROM(Read Only Memory)52と、光学ユニット4および電源部18を制御するユニット制御部53と、操作部2bおよびコネクタ部21を制御する入出力制御部54と、を有している。
【0030】
また、制御部50は、吸気ファン15および排気ファン16を制御するファン制御部55と、分流ダクト9の切換部9aおよび開閉機構部13の位置検出部13aを制御する開閉扉制御部56と、を有している。これら制御部50を構成する各々は、内部バスを介して互いに接続されている。
【0031】
次に、制御部50による開閉扉8を開閉するための制御およびエアカーテン30を形成するための制御について説明する。最初に、プロジェクタ1の稼働開始時の制御について説明する。図5は、プロジェクタの稼働開始時の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに基づき、開閉扉8の開放およびエアカーテン30の形成が行われる。また、図6は、開閉扉が閉まった状態を示す正面図、図7は、開閉扉が半開の状態を示す正面図、そして、図8は、開閉扉が全開の状態を示す正面図である。
【0032】
図5にフローチャートを示す。まず、ステップS1において、開閉扉8の開放を開閉機構部13へ指示する。具体的には、制御部50のCPU51がROM52のプログラムに準じ開閉扉制御部56を介して、開閉扉8の開放を開閉機構部13へ指示する。この時、開閉扉8は、図6に示すように、流出口83がスライド枠11の溝部12へ収まっていて、投射開口7の全域を塞いで閉まっている。また、伸縮導風筒91は、分流ダクト9から開閉扉8の流入口82に追随して伸びた状態である。この状態では、開閉扉8によって、投射開口7から塵埃等が浸入することを防止している。開閉扉8の開放指示後、ステップS2へ進む。
【0033】
ステップS2において、位置検出部13aから開閉扉8の開放を開始する情報を、受信したか否かを判断する。判断は、開閉扉制御部56が位置検出部13aから受信した開放開始の情報に基づき、CPU51が行う。開放開始の情報を受信していなければ、ステップS2において受信を待ち、一方、開放開始の情報を受信すれば、ステップS3へ進む。開閉扉8の開閉を開始するステップS2は、開放工程に該当する。
【0034】
開放開始の情報の受信後、ステップS3において、冷却空気を開閉扉8へ分流するよう切換部9aへ指示する。切換部9aは、開閉扉制御部56からの切り換え指示により、第2ファン15bの冷却空気の一部を、分流ダクト9を通って伸縮導風筒91へ送るように切り換え操作を行う。これにより、開閉扉8の開放開始に伴って、投射開口7に出現する開口を覆うエアカーテン30が形成される。
【0035】
このステップS3は、気体流形成工程に該当し、流出口83がスライド枠11から離反して開閉扉8が開き始めると、図7に示すように、投射開口7に開口部分が出現し始める。また、開閉扉8のスライドに連動して、伸縮導風筒91は、徐々に分流ダクト9の方向へ縮まっていく。そして、流出口83がスライド枠11から離反する時には、分流ダクト9から冷却空気の空気分流31a,31bが導風孔81へ送られていて、流出口83から流出した冷却空気によって、エアカーテン30が形成されている。このように、投射開口7に開口部分が出現し始めると、直ちにエアカーテン30が形成され、投射開口7の開口部分から塵埃等が投射部45へ進入することを防止している。切り換え指示後、ステップS4へ進む。
【0036】
ステップS4において、位置検出部13aから開閉扉8の開放完了の情報を、受信したか否かを判断する。判断は、開閉扉制御部56が位置検出部13aから受信した開放完了の情報に基づき、CPU51が行う。開放完了の情報を受信していなければ、ステップS4において受信を待ち、一方、開放完了の情報を受信すれば、ステップS5へ進む。
【0037】
ステップS5において、開閉機構部13へ停止を指示する。これで、投射開口7は、図8に示すように、開閉扉8に遮られずに、全域が開かれており、投射部45から光束の投射が可能になる。また、伸縮導風筒91は、分流ダクト9の方向へ最も縮まった状態となっていて、分流ダクト9からの空気分流31a,31bを効率良く導風孔81へ導いている。これにより、投射開口7の全域を覆うエアカーテン30が形成され、投射開口7が全開状態であっても、塵埃等が投射部45へ進入することを防止できる。このステップS5は、ステップS2およびステップS4と共に、開放工程に該当する。以上で、プロジェクタ1の稼働開始時において、エアカーテン30を形成するフローが終了する。
【0038】
次に、プロジェクタ1の稼働終了時の制御について説明する。図9は、プロジェクタの稼働終了時の手順を示すフローチャートである。図9のフローチャートに示すように、まず、ステップS10において、開閉扉8の閉止を開閉機構部13へ指示する。具体的には、制御部50のCPU51がROM52のプログラムに準じ開閉扉制御部56を介して、開閉扉8の閉止を開閉機構部13へ指示する。この時、開閉扉8は、図8に示すように、投射開口7が全開の状態である。開閉扉8の閉止指示後、ステップS11へ進む。
【0039】
ステップS11において、位置検出部13aから開閉扉8が閉止される直前であるとの情報を、受信したか否かを判断する。開閉扉8の閉止直前とは、閉止される開閉扉8が、図7に示す投射開口7をほぼ塞いだ状態からさらに閉止され、投射開口7を完全に塞いで、流出口83がスライド枠11の溝部12へ入ろうとしている状態である。この状態であれば、エアカーテン30がなくても、投射開口7から塵埃等が投射部45へ進入することを防止できる。閉止直前の判断は、開閉扉制御部56が位置検出部13aから受信した閉止直前の情報に基づき、CPU51が行う。このステップS11は、開閉扉8を閉止する閉止工程に該当する。そして、制御部50が閉止直前の情報を受信していなければ、ステップS11において受信を待ち、一方、閉止直前の情報を受信すれば、ステップS12へ進む。
【0040】
ステップS12において、冷却空気の開閉扉8への分流を停止するよう切換部9aへ指示する。切換部9aは、開閉扉制御部56からの切り換え指示により、第2ファン15bの冷却空気の一部を、分流ダクト9へ送らないように切り換え操作を行う。これにより、エアカーテン30の形成が停止される。このステップS12は、気体流停止工程に該当する。切換部9aへ切り換え指示後、ステップS13へ進む。
【0041】
ステップS13において、位置検出部13aから開閉扉8の閉止完了の情報を、受信したか否かを判断する。判断は、開閉扉制御部56が位置検出部13aから受信した閉止完了の情報に基づき、CPU51が行う。閉止完了の情報を受信していなければ、ステップS13において受信を待ち、一方、閉止完了の情報を受信すれば、ステップS14へ進む。
【0042】
ステップS14において、開閉機構部13へ停止を指示する。これで、投射開口7は、図6に示すように、開閉扉8によって全域が塞がれた状態となる。このステップS14は、ステップS11およびステップS13と共に、閉止工程に該当する。以上で、プロジェクタ1の稼働終了時において、エアカーテン30の形成を停止するフローが終了する。
【0043】
以下、実施形態1におけるプロジェクタ1の主な効果をまとめて記載する。
【0044】
(1)プロジェクタ1は、開閉扉8の開放開始(開放工程)と連動して、流出口83から冷却空気が流出してエアカーテン30を形成(気体流形成工程)する構成である。形成されたエアカーテン30は、投射開口7を覆い、塵埃等の異物が投射開口7を通って、プロジェクタ1の内部へ浸入することを防止している。また、エアカーテン30は、開閉扉8が閉止(閉止工程)して投射開口7を閉じると、形成が停止(気体流停止工程)される。これにより、プロジェクタ1は、常時、投射開口7からの異物の浸入を阻止できるため、正常な投射機能を長期に維持することができる。
【0045】
(2)また、流出口83が開閉扉8の端面部に設けられており、開閉扉8の開閉に伴う投射開口7の開口の大きさに合わせて、流出口83からの冷却空気の流出強さを変える操作をすれば、塵埃等の浸入を防止し且つ省エネルギーを図りつつ、エアカーテン30の形成をすることができる。
【0046】
(3)そして、エアカーテン30は、投射開口7を覆うと共に投射レンズ45aに直接当たらないように形成されている。これにより、エアカーテン30が冷たい空気や湿った空気等で形成されていても、直接投射レンズ45aに当たらないため、投射レンズ45aとエアカーテン30との直接当接による温度差等で光束が歪んだり、湿気が直接もたらされて投射レンズ45aに黴等が発生しやすくなったりすることを、抑制できる。
【0047】
(4)さらに、エアカーテン30は、プロジェクタ1を冷却する冷却空気を導入する吸気ファン15から分流した冷却空気を用いているため、エアカーテン30を形成するための空気導入機構を備える必要がない。そのため、簡便な機構によって、エアカーテン30の形成が行え、プロジェクタ1の大型化を抑制できる。
(実施形態2)
【0048】
次に、防塵方法を備えたプロジェクタ1を具体化した実施形態2について説明する。実施形態2における実施形態1との相違点は、実施形態1において、開閉扉8の端面部に設けられ開閉扉8と共にスライド移動していた流出口83が、投射開口7の縁部に固定されて設けられた流出口であることである。図10は、実施形態2におけるエアカーテンが形成された投射開口の近傍を示す斜視図である。図10に示すように、エアカーテン30を形成するための流出口63は、分流ダクト9(図2)から略四角形状である投射開口7の左方の辺(縁部)まで延伸している延伸ダクト61の先端に設けられている。この延伸ダクト61は、分流ダクト9からの空気分流32を流出口63へ導くための導風孔62を有し、上部外装2および下部外装3の内側に密着して設けられている。分流ダクト9からの空気分流32は、実施形態1の空気分流31bと同様に、投射開口7の左方から右方の方向へ流れて、投射開口7の全域を覆うエアカーテン30を形成する。
【0049】
そして、開閉扉60は、外面側および内面側ともに段差のない平面の板状であり、実施形態1の段差を有する開閉扉8と異なった形状をしている。また、開閉扉60は、延伸ダクト61よりさらに上部外装2および下部外装3の内側に位置して、実施形態1の開閉扉8と同様にスライド移動する。この構成では、開閉扉60と投射開口7を形成する上部外装2および下部外装3との間に間隙が生じており、この間隙を図示していない軟弾性パッキンで封止している。これにより、開閉扉60が閉じられ、エアカーテン30が形成されていない状態においても、投射開口7から塵埃等が投射部45(図1)へ進入することを防止できる。
【0050】
さらに、流出口63が投射開口7の縁部に固定されているため、投射開口7は、開閉扉8の開閉に関係なく、全域が常にエアカーテン30で覆われている。従って、実施形態1の場合では、エアカーテン30で覆われていない投射開口7の部分があるが、実施形態2の構成では、エアカーテン30で覆われていない投射開口7の部分がない。そのため、開閉扉8のスライド移動により投射開口7と開閉扉60との間に間隙が生じても、エアカーテン30によって、確実に塵埃等の進入を防止できる。
【0051】
以上、防塵方法を備えたプロジェクタ1について具体的に説明した。なお、プロジェクタ1は、上記の両実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、実施形態と同様な効果が得られる。
【0052】
(変形例1)プロジェクタ1において、エアカーテン30を形成するための導風孔62,81および流出口63,83は、実施形態1または実施形態2で説明した構成に限定されない。例えば、導風孔を上部外装2および下部外装3自体の内部に形成し、流出口を投射開口7を形成する端面に設けた構成等であっても良い。また、エアカーテン30を形成する冷却空気は、投射開口7の左方から右方の方向へ流れる構成のほかに、投射開口7の右方または上方または下方のいずれかから流出する構成であっても良い。
【0053】
(変形例2)分流ダクト9に切換部9aを設けることに限定することなく、空気分流31aを供給する専用のファンを設け、開閉扉8の開閉に連動して、ファンの稼働を制御する構成であっても良い。または、切換部9aを設けずに、第2ファン15bが稼働している間は、常時、空気分流31aを供給する構成であっても良い。
【0054】
(変形例3)図3および図10に示すエアカーテン30を形成した冷却空気が、投射開口7の右部において、外部側によりスムーズに流れて排出されるように、投射開口7の右部に湾曲部を設けても良い。これにより、冷却空気の流れが乱れ難くなり、より均一なエアカーテン30を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(a)実施形態1にかかるプロジェクタを正面上方から見た斜視図、(b)プロジェクタを正面下方から見た斜視図。
【図2】プロジェクタの内部の構成を示す斜視図。
【図3】エアカーテンを形成する流出口が設けられた開閉扉を示す斜視図。
【図4】制御部の構成を示すブロック図。
【図5】プロジェクタの稼働開始時の手順を示すフローチャート。
【図6】開閉扉が閉まった状態を示す正面図。
【図7】開閉扉が半開の状態を示す正面図。
【図8】開閉扉が全開の状態を示す正面図。
【図9】プロジェクタの稼働終了時の手順を示すフローチャート。
【図10】実施形態2におけるエアカーテンが形成された投射開口の近傍を示す斜視図。
【符号の説明】
【0056】
1…プロジェクタ、2…筐体としての上部外装、3…筐体としての下部外装、4…光学ユニット、5…吸気口、6…排気口、7…開口部としての投射開口、8…開閉扉、9…分流ダクト、9a…切換部、11…スライド枠、12…溝部、13…開閉機構部、13a…位置検出部、15…吸気ファン、16…排気ファン、30…エアカーテン、31a,31b,32…空気分流、45…投射部、45a…投射レンズ、50…制御部、56…開閉扉制御部、60…開閉扉、61…延伸ダクト、62,81…導風孔、63,83…流出口、82…流入口、91…伸縮導風筒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部から射出された光束を画像信号に応じ光変調装置で変調し画像光を形成し、当該画像光を投射するプロジェクタであって、
筐体と、
前記画像光の投射のために前記筐体に設けられた開口部と、
前記開口部を開閉するための開閉扉と、
前記開口部へ空気を流出させるための流出口と、
前記開閉扉の開放動作と連動して前記流出口から空気の流出を開始させる制御部と、を有することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタにおいて、
前記制御部は、さらに、前記開閉扉の閉止終了と連動して前記流出口から空気の流出を停止させることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプロジェクタにおいて、
前記流出口は、前記開閉扉の端部に形成されていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のプロジェクタにおいて、
前記流出口は、前記開口部の縁部に設けられていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のプロジェクタにおいて、
前記流出口は、前記流出口から流出された空気が前記画像光を投射するための投射レンズへの当接を回避するように構成されていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のプロジェクタにおいて、
前記筐体の内部を冷却するために導入される冷却空気を前記流出口に分流する分流ダクトを有していることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−162987(P2009−162987A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−376(P2008−376)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】