説明

プロジェクタ

【課題】光源からの光束を第1レンズアレイに無駄なく取り込むことができる照明系を備
えるプロジェクタを提供すること。
【解決手段】光源装置10がX方向とY方向とで集光状態の差を有する。これにより、光
源装置10から射出される光束の断面形状を調整でき、発光管11からリフレクタ12を
経て第1レンズアレイ23に向かう光束がX方向において部分的に第1レンズアレイ23
外にはみ出して遮光され光量ロスが発生することを防止できる。さらに、第1レンズアレ
イ23を構成する複数の要素レンズ23aが、光源装置10の集光状態の差を相殺する傾
向となるようにがX方向とY方向とでパワーの差を有するので、第1及び第2レンズアレ
イ23,24から射出された光束が、適切な収束状態又は発散状態で重畳レンズ25等に
入射することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル等の光変調装置によって形成した画像をスクリーン上に投射する
プロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタとして、例えば、光源部から射出された白色光を反射するリフレクタと、
光源部やリフレクタからの光束を均一化する第1及び第2レンズアレイと、両レンズアレ
イを経た光束の偏光方向を揃える偏光変換素子と、両レンズアレイを経た光束を重畳させ
るための重畳レンズとを備えるものが存在する(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−164838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のようなプロジェクタでは、第1レンズアレイの縦横の長さが異なってお
り、例えばこのような長さの差が大きくなった場合、光源部からリフレクタを介して射出
された円形断面の白色光が、特定方向において部分的に第1レンズアレイ外にはみ出して
遮光される傾向を生じる。ここで、光源部からの白色光の光束断面を相対的に小さくして
第1レンズアレイ中に完全に収めることも考えられるが、この場合、上記特定方向に垂直
な方向に関して第1レンズアレイが有効に活用されず、照明光の均一性が劣化する可能性
がある。
【0004】
そこで、本発明は、光源からの光束を第1レンズアレイに無駄なく取り込むことができ
る照明系を備えるプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るプロジェクタは、(a)発光管と、当該発光管
からの光束を前方に反射する反射鏡とを有する光源と、(b)光源から射出された光束を
複数の要素レンズによって複数の部分光束に分割する第1レンズアレイと、(c)第1レ
ンズアレイから射出された複数の分割光束の状態を複数の要素レンズによって個別に調整
する第2レンズアレイと、(d)第2レンズアレイを経た複数の分割光束をそれぞれ対象
とする被照明領域に重畳して入射させる重畳レンズとを備え、(a1)上記光源は、シス
テム光軸に垂直な第1方向と、システム光軸及び第1方向に垂直な第2方向とで集光状態
の差を有することによって、光源から射出される光束の断面を調整し、(c1)上記第1
レンズアレイ及び第2レンズアレイのうち少なくとも一方を構成する複数の要素レンズは
、光源の集光状態の差を相殺する傾向となるように、第1方向と第2方向とでパワーの差
を有する。
【0006】
上記プロジェクタによれば、光源が、第1方向と第2方向とで集光状態の差を有するこ
とによって光源から射出される光束の断面形状を調整するので、発光管から反射鏡を経て
第1レンズアレイに向かう光束が特定方向において部分的に第1レンズアレイ外にはみ出
して遮光され光量ロスが発生することを防止できる。ここで、少なくとも一方のレンズア
レイを構成する複数の要素レンズが、光源の集光状態の差を相殺する傾向となるように第
1方向と第2方向とでパワーの差を有するので、第1及び第2レンズアレイから射出され
た光束が、適切な収束状態又は発散状態で重畳レンズを含む次段の光学部品に入射するこ
とになる。これにより、重畳レンズを経た照明光は、被照明領域を比較的均一かつ効率的
に照明する状態となる。
【0007】
また、本発明の具体的な態様又は側面によれば、上記プロジェクタにおいて、第1レン
ズアレイが、第1方向の長さと第2方向の長さとが異なる矩形状の輪郭を有する。この場
合、第1レンズアレイの矩形状の輪郭に合わせてこの第1レンズアレイを第1方向及び第
2方向に関して無駄なく照明することができる。
【0008】
本発明の別の態様によれば、第1レンズアレイ及び第2レンズアレイのうち少なくとも
一方を構成する複数の要素レンズが、トーリック型の光学面を有する。この場合、いずれ
かのレンズアレイを構成する要素レンズの一方の面を特殊な形状とすることになる。
【0009】
本発明のさらに別の態様によれば、第1レンズアレイ及び第2レンズアレイのうち少な
くとも一方を構成する複数の要素レンズは、シリンドリカル型の光学面と球面型の光学面
とを有する。この場合、両レンズアレイを構成する要素レンズをシリンドリカル型や球面
型といった一般的な面形状とすることができる。
【0010】
本発明のさらに別の態様によれば、光源が、反射鏡である楕円ミラーと、楕円ミラーか
らの光束を略平行にする凹レンズ等の平行化レンズとを備える。この場合、楕円ミラーで
回収した光源光を平行化レンズ介して平行光束として取り出すことができる。
【0011】
本発明のさらに別の態様によれば、平行化レンズが、トーリック型の光学面を有する。
この場合、平行化レンズの一方の面を特殊な形状とすることになる。
【0012】
本発明のさらに別の態様によれば、平行化レンズが、シリンドリカル型の光学面と球面
型の光学面とを有する。この場合、平行化レンズをシリンドリカル型や球面型といった一
般的な面形状とすることができる。
【0013】
本発明のさらに別の態様によれば、反射鏡が、トーリック型の反射面を有する。この場
合、反射鏡の反射面を特殊な形状とすることになる。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、光源からの光束の偏光方向を揃えるため、偏光分離
膜と反射膜と位相差板とをそれぞれ有する複数のプリズム要素を長手方向に直交する横方
向に配列した偏光変換部をさらに備え、複数のプリズム要素の長手方向は、第1方向に対
応しており、第1レンズアレイの第1方向に関する幅は、第1レンズアレイの第2方向に
関する幅よりも長い。この場合、第1レンズアレイの第1方向の長さがその第2方向の長
さよりも長いので、偏光変換部を構成するプリズム要素の数を増やすことなく第1レンズ
アレイを構成する要素レンズの数を増やすことができる。よって、照明系を高価で複雑な
ものとすることなく比較的均一性の高い照明光を得ることができる。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、(e)重畳レンズから射出された光束を各色の光束
に分離する色分離導光光学系と、(f)色分離導光光学系から射出された各色の光束を画
像情報に応じてそれぞれ変調する各色の光変調装置と、(g)各色の光変調装置から射出
された各色の変調光を合成する光合成光学系と、(h)光合成光学系を経て合成された画
像光を投射する投射光学系とをさらに備える。この場合、明るくムラの少ないカラー画像
を投射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明に係る第1実施形態のプロジェクタの光学系の構造を概念的に説明する
平面図である。このプロジェクタ100は、光源から射出された光束を画像情報に応じて
変調して光学像を形成し、この光学像をスクリーン上に拡大投射するための光学機器であ
り、光源装置10と、均一化光学系20と、色分離導光光学系30と、光変調部40と、
クロスダイクロイックプリズム50と、投射レンズ60とを備える。ここで、光変調部4
0は、同様の構造を有する3つの液晶ライトバルブ40a,40b,40cを含む。
【0017】
上記プロジェクタ100において、光源装置10は、照明用の光源として、放電発光型
の発光管11と、楕円型の反射鏡であるリフレクタ12と、球面型の副反射鏡である副鏡
13と、コリメート用の平行化レンズ14とを備える。発光管11から周囲に放射された
光束は、楕円ミラーのリフレクタ12で反射され、或いは副鏡13での反射を経てリフレ
クタ12でさらに反射されて収束光束とされた後、平行化レンズ14によって平行光束と
されて、前方側すなわち均一化光学系20の第1レンズアレイ23に入射する。なお、以
上の平行化レンズ14は、後に詳述するが、システム光軸OAに垂直なX方向とY方向と
で屈折力すなわちパワーが異なっているトーリックレンズである。
【0018】
均一化光学系20は、均一化された照度の照明光を光変調部40等に供給するためのも
のであり、光源装置10から射出された光束を適当な状態に分割する第1及び第2レンズ
アレイ23,24と、両レンズアレイ23,24を経た複数の光束を重畳させる重畳レン
ズ25と、重畳レンズ25に入射する光束の偏光方向を揃える偏光変換素子27とを備え
る。この均一化光学系20において、第1及び第2レンズアレイ23,24は、それぞれ
マトリクス状に配置された複数の要素レンズ23a,24aからなる。このうち、第1レ
ンズアレイ23を構成する要素レンズ23aによって平行化レンズ14を経た光束を分割
し、第2レンズアレイ24を構成する要素レンズ24aによって第1レンズアレイ23か
らの分割光束を適当な発散角にして射出させる。なお、光源装置10側に配置される第1
レンズアレイ23の各要素レンズ23aは、後に詳述するが、システム光軸OAに垂直な
X方向とY方向とでパワーが異なっているトーリックレンズである。重畳レンズ25は、
第2レンズアレイ24から射出され偏光変換素子27を経た照明光を全体として適宜収束
させて、後段の光変調部40に設けた液晶ライトバルブ40a,40b,40cの被照明
領域すなわち表示領域に対する重畳照明を可能にする。偏光変換素子27は、PBSアレ
イで形成された偏光変換部であり、第1レンズアレイ23により分割され第2レンズアレ
イ24を経た各部分光束の偏光方向を一方向の直線偏光に揃える役割を有する。この偏光
変換素子27は、同様の構造をそれぞれ有しY方向にそれぞれ延びる4つのプリズム要素
27aをX方向に配列した構造を有するプリズムアレイである。各プリズム要素27aは
、プリズムの斜面を利用してシステム光軸OAに対して傾斜した状態で配置される偏光分
離膜及び反射膜と、システム光軸OAに対して垂直なプリズムの射出面に固定される位相
差板とを備えている。なお、各プリズム要素27aが延びる長手方向は、第1方向に相当
するY方向となっており、各プリズム要素27aの横方向は、第2方向に相当するX方向
となっている。
【0019】
色分離導光光学系30は、第1及び第2ダイクロイックミラー31a,31bと、反射
ミラー32a,32b,32cと、3つのフィールドレンズ33a,33b,33cとを
備え、均一化光学系20から出射した照明光を赤(R)、緑(G)、及び青(B)の3色
に分離するとともに、各色光を後段の液晶ライトバルブ40a,40b,40cへ導く。
より詳しく説明すると、まず、第1ダイクロイックミラー31aは、RGBの3色のうち
R光を反射しG光及びB光を透過させる。また、第2ダイクロイックミラー31bは、G
Bの2色のうちG光を反射しB光を透過させる。この色分離導光光学系30において、第
1ダイクロイックミラー31aで反射されたR光は、反射ミラー32aを経て入射角度を
調節するためのフィールドレンズ33aに入射する。また、第1ダイクロイックミラー3
1aを透過し、第2ダイクロイックミラー31bで反射されたG光は、入射角度を調節す
るためのフィールドレンズ33bに入射する。さらに、第2ダイクロイックミラー31b
を通過したB光は、リレーレンズLL1,LL2及び反射ミラー32b,32cを経て入
射角度を調節するためのフィールドレンズ33cに入射する。
【0020】
光変調部40を構成する各液晶ライトバルブ40a,40b,40cは、入射した照明
光の空間的強度分布を変調する非発光型の光変調装置である。液晶ライトバルブ40a,
40b,40cは、色分離導光光学系30から射出された各色光に対応してそれぞれ照明
される3つの画像表示用液晶パネル41a,41b,41cと、各画像表示用液晶パネル
41a,41b,41cの入射側にそれぞれ配置される3つの第1偏光フィルタ42a,
42b,42cと、各画像表示用液晶パネル41a,41b,41cの射出側にそれぞれ
配置される3つの第2偏光フィルタ43a,43b,43cとを備える。
【0021】
この光変調部40において、第1ダイクロイックミラー31aで反射されたR光は、フ
ィールドレンズ33a等を介して液晶ライトバルブ40aに入射し、液晶ライトバルブ4
0aを構成する画像表示用液晶パネル41a上の表示領域を照明する。第1ダイクロイッ
クミラー31aを透過し、第2ダイクロイックミラー31bで反射されたG光は、フィー
ルドレンズ33b等を介して液晶ライトバルブ40bに入射し、液晶ライトバルブ40b
を構成する画像表示用液晶パネル41b上の表示領域を照明する。第1及び第2ダイクロ
イックミラー31a,31bの双方を透過したB光は、フィールドレンズ33c等を介し
て液晶ライトバルブ40cに入射し、液晶ライトバルブ40cを構成する画像表示用液晶
パネル41c上の表示領域を照明する。各画像表示用液晶パネル41a〜41cは、入射
した照明光の偏光方向の空間的分布を変調する。各画像表示用液晶パネル41a〜41c
にそれぞれ入射した3色の光は、各画像表示用液晶パネル41a〜41cに電気的信号と
して入力された駆動信号或いは画像信号に応じて、画素単位で偏光状態を調節される。こ
の際、第1偏光フィルタ42a〜42cによって、各画像表示用液晶パネル41a〜41
cに入射する照明光の偏光方向が調整されるとともに、第2偏光フィルタ43a〜43c
によって、各画像表示用液晶パネル41a〜41cから射出される変調光から所定の偏光
方向の変調光が取り出される。以上により、各液晶ライトバルブ40a,40b,40c
は、それぞれに対応する各色の像光を形成する。
【0022】
クロスダイクロイックプリズム50は、光合成光学系として、各液晶ライトバルブ40
a,40b,40cからの各色の像光を合成する。より詳しく説明すると、クロスダイク
ロイックプリズム50は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、
直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、X字状に交差する一対の誘電体多層膜51a
,51bが形成されている。一方の第1誘電体多層膜51aは、R光を反射し、他方の第
2誘電体多層膜51bは、B光を反射する。クロスダイクロイックプリズム50は、液晶
ライトバルブ40aからのR光を誘電体多層膜51aで反射して進行方向右側に射出させ
、液晶ライトバルブ40bからのG光を誘電体多層膜51a,51bを介して直進・射出
させ、液晶ライトバルブ40cからのB光を誘電体多層膜51bで反射して進行方向左側
に射出させる。このようにして、クロスダイクロイックプリズム50によりR光、G光及
びB光が合成され、カラー画像による画像光である合成光が形成される。
【0023】
投射レンズ60は、投射光学系であり、クロスダイクロイックプリズム50を経て形成
された合成光による画像光を所望の拡大率で拡大してスクリーン(不図示)上にカラーの
画像を投射する。
【0024】
図2(A)は、光源装置10や均一化光学系20における、XZ面内での光束の状態を
説明する図であり、図2(B)は、YZ面内での光束の状態を説明する図である。
【0025】
中心側の光束L11と、外側の光束L12又は光束L22とは、平行化レンズ14によ
って平行光束に近い集光状態(ここで集光状態とは、収束する場合に限らず平行又は発散
する場合を含むものとする)とされる。ここで、平行化レンズ14の入射面14cは、球
面であり、XZ面内の曲率とYZ面内の曲率とが等しくなっている。一方、平行化レンズ
14の射出面14dは、Y方向よりもX方向に強いパワーを有するトーリック面であり、
XZ面内の曲率の方がYZ面内の曲率よりも大きくなっている。結果的に、図3に示すよ
うに、平行化レンズ14から第1レンズアレイ23に入射する光束L1は、X方向の光束
断面幅の方がY方向の光束断面幅よりも小さいものとなっており、第1レンズアレイ23
の輪郭23z内に略収まっている(具体的な照度分布は図4(A)参照)。なお、参考の
ために示した光束L0は、平行化レンズ14の入射面14cや射出面14dが光軸のまわ
りに対称な球面である場合に対応するものであり、第1レンズアレイ23の輪郭23z外
にはみ出して光量ロスを生じさせている(具体的な照度分布は図4(B)参照)。ここで
、第1レンズアレイ23は、8行4列で計32個の要素レンズ23aからなっており、各
要素レンズ23aの縦横比すなわちY方向の幅とX方向の幅との比は9:16となってお
り、第1レンズアレイ23の輪郭23zの縦横比すなわちY方向の幅とX方向の幅との比
は18:16となっている。結果的に、第1レンズアレイ23の輪郭23zは、Y方向に
相対的に長い縦長となっている。
【0026】
図2に戻って、第1レンズアレイ23に入射した中心側の光束L11と、X方向に関し
て外側の光束L12と、Y方向に関して外側の光束L22とは、第1レンズアレイ23を
構成する要素レンズ23aによって他の部分光束から分離された後、第2レンズアレイ2
4の位置付近に集光される。ここで、要素レンズ23aの入射面23cは、平面であるが
、その射出面23dは、X方向よりもY方向に強いパワーを有するトーリック面であり、
XZ面内の曲率の方がYZ面内の曲率よりも小さくなっている。結果的に、第1レンズア
レイ23から第2レンズアレイ24に入射する光束L11,L12,L22は、理想的に
は略一点に収束するようなものとなる。つまり、X方向に相対的に強いパワーを有する平
行化レンズ14による光束L11,L12,L22の収束効果を、Y方向に相対的に強い
パワーを有する要素レンズ23aによる光束L11,L12,L22の収束効果によって
相殺している。
【0027】
第2レンズアレイ24に入射した中心側の光束L11と、X方向に関して外側の光束L
12と、Y方向に関して外側の光束L22とは、第2レンズアレイ24を構成する要素レ
ンズ24aによって適当な発散角の集光状態(ここで集光状態とは、収束する場合に限ら
ず平行又は発散する場合を含むものとする)とされる。なお、要素レンズ24aの入射面
24cは、平面であり、その射出面24dは、球面であり、両面24c,24dともに、
X方向のパワーとY方向のパワーとが等しくなっている。この結果、第2レンズアレイ2
4から偏光変換素子27に入射する光束は、X方向の光束断面幅とY方向の光束断面幅と
が等しいものとなっている。
【0028】
偏光変換素子27において、偏光分離膜27eは、各光束L11,L12,L22に含
まれるP偏光及びS偏光のうち、一方の偏光(例えばP偏光)を透過し、他方の偏光(例
えばS偏光)を反射する。反射された他方の偏光は、反射膜27fによって曲折され、一
方の偏光の射出方向、すなわちシステム光軸OAに沿った方向に射出される。射出された
偏光のいずれか(例えばS偏光)は、光束射出面に設けられた位相差板27gによって偏
光変換され、すべての偏光が例えばP偏光に揃えられる。
【0029】
なお、以上で説明した平行化レンズ14については、入射面14cをトーリック面とし
、射出面14dを球面とすることができる。また、第1レンズアレイ23を構成する要素
レンズ23aについても、例えば入射面23cをトーリック面とし、射出面23dを平面
とすることができる。
【0030】
以上の説明から明らかなように、本実施形態のプロジェクタ100によれば、光源装置
10がX方向とY方向とで集光状態の差を有する。これにより、光源装置10から射出さ
れる光束L1の断面形状を調整でき、発光管11からリフレクタ12を経て第1レンズア
レイ23に向かう光束L1がX方向において部分的に第1レンズアレイ23外にはみ出し
て遮光され光量ロスが発生することを防止できる。さらに、第1レンズアレイ23を構成
する複数の要素レンズ23aが、光源装置10の集光状態の差を相殺する傾向となるよう
にX方向とY方向とでパワーの差を有するので、第1及び第2レンズアレイ23,24か
ら射出された光束L11,L12,L22が、適切な収束状態又は発散状態で重畳レンズ
25等に入射することになる。これにより、重畳レンズ25を経た照明光は、液晶ライト
バルブ40a,40b,40cの被照明領域を比較的均一かつ効率的に照明することにな
る。
【0031】
〔第2実施形態〕
以下、図5を参照して、第2実施形態のプロジェクタについて説明する。なお、第2実
施形態のプロジェクタは、第1実施形態のプロジェクタ100を変形したものであり、特
に説明しない部分は第1実施形態のプロジェクタ100と同様であるものとする。
【0032】
この場合、平行化レンズ14の入射面114cは、シリンドリカル型の光学面であり、
XZ面内の曲率が適当な値になっており、YZ面内の曲率がゼロとなっている。一方、平
行化レンズ14の射出面114dは、球面であり、XZ面内の曲率とYZ面内の曲率とが
等しくなっている。本実施形態の場合、入射面114cと射出面114dとが協働してト
ーリックレンズのように機能する。結果的に、第1実施形態の場合と同様、図3に示すよ
うに、平行化レンズ14から第1レンズアレイ23に入射する光束L1は、X方向の光束
断面幅の方がY方向の光束断面幅よりも小さいものとなっており、第1レンズアレイ23
の輪郭23z内に略収まる。
【0033】
以上で説明した平行化レンズ14の変形として、入射面14cを球面とし、射出面14
dをシリンドリカル面とすることもできる。
【0034】
〔第3実施形態〕
以下、図6を参照して、第3実施形態のプロジェクタについて説明する。なお、第3実
施形態のプロジェクタは、第1実施形態のプロジェクタ100を変形したものであり、特
に説明しない部分は第1実施形態のプロジェクタ100と同様であるものとする。
【0035】
この場合、第1レンズアレイ23を構成する各要素レンズ223aにおいて、入射面2
23cは、シリンドリカル型の光学面であり、XZ面内の曲率が適当な値になっており、
YZ面内の曲率がゼロとなっている。一方、各要素レンズ223aの射出面223dは、
球面であり、XZ面内の曲率とYZ面内の曲率とが等しくなっている。本実施形態の場合
、入射面223cと射出面223dとが協働してトーリックレンズのように機能する。結
果的に、第1実施形態の場合と同様、X方向に相対的に強いパワーを有する平行化レンズ
14による光束L11の収束効果を、Y方向に相対的に強いパワーを有する要素レンズ2
23aによる光束L11の収束効果によって相殺している。
【0036】
以上で説明した第1レンズアレイ23を構成する各要素レンズ223aの変形として、
入射面223cを球面とし、射出面223dシリンドリカル面とすることもできる。
【0037】
〔第4実施形態〕
以下、図7を参照して、第4実施形態のプロジェクタについて説明する。なお、第4実
施形態のプロジェクタは、第1実施形態のプロジェクタ100を変形したものであり、特
に説明しない部分は第1実施形態のプロジェクタ100と同様であるものとする。
【0038】
この場合、第2レンズアレイ24を構成する各要素レンズ324aにおいて、入射面3
24cは、平面であるが、その射出面324dは、X方向よりもY方向に強いパワーを有
するトーリック面であり、XZ面内の曲率の方がYZ面内の曲率よりも小さくなっている
。結果的に、第2レンズアレイ24から射出される光束L11は、理想的には略一点に収
束するようなものとなる。つまり、X方向に相対的に強いパワーを有する平行化レンズ1
4の収束効果の偏りを、Y方向に相対的に強いパワーを有する要素レンズ324aの収束
効果の偏りによって相殺している。
【0039】
なお、以上において、入射面324cを平面とし、射出面324dをトーリック面とし
たが、例えば入射面324cをシリンドリカル面とし、射出面324dを球面とすること
もできる。
【0040】
また、入射面324cをトーリック面とし、射出面324dを平面とすることもでき、
入射面324cを球面とし、射出面324dをシリンドリカル面とすることもできる。
【0041】
〔第5実施形態〕
以下、図8を参照して、第5実施形態のプロジェクタについて説明する。なお、第5実
施形態のプロジェクタは、第1実施形態のプロジェクタ100を変形したものであり、特
に説明しない部分は第1実施形態のプロジェクタ100と同様であるものとする。
【0042】
このプロジェクタ400の場合、光源装置10において、リフレクタ412は放物面型
の反射鏡であり、平行化レンズ14は省略されている。ここで、リフレクタ412の反射
面は、正確な放物面でなくY方向よりもX方向に強いパワーを有するトーリック面であり
、XZ面内の曲率の方がYZ面内の曲率よりも大きくなっている。結果的に、第1実施形
態の場合と同様、図3に示すように、リフレクタ412から第1レンズアレイ23に入射
する光束L1は、X方向の光束断面幅の方がY方向の光束断面幅よりも小さいものとなっ
ており、第1レンズアレイ23の輪郭23z内に略収まる。
【0043】
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲にお
いて種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である

【0044】
例えば、上記実施形態の光源装置10に用いるランプとしては、高圧水銀ランプやメタ
ルハライドランプ等種々のものが考えられる。また、光源装置10は、副鏡13を有しな
いタイプの光源とすることができる。
【0045】
また、上記実施形態では、透過型のプロジェクタに本発明を適用した場合の例について
説明したが、本発明は、反射型プロジェクタにも適用することが可能である。ここで、「
透過型」とは、画像表示用液晶パネル等を含む液晶ライトバルブが光を透過するタイプで
あることを意味しており、「反射型」とは、液晶ライトバルブが光を反射するタイプであ
ることを意味している。なお、光変調装置は液晶パネル等に限られず、例えばマイクロミ
ラーを用いた光変調装置であってもよい。
【0046】
また、プロジェクタとしては、投射面を観察する方向から画像投射を行う前面プロジェ
クタと、投射面を観察する方向とは反対側から画像投射を行う背面プロジェクタとがある
が、図1等に示すプロジェクタの構成は、いずれにも適用可能である。
【0047】
また、上記実施形態では、3つの画像表示用液晶パネル41a〜41cを用いたプロジ
ェクタ100の例のみを挙げたが、本発明は、1つの液晶パネルのみを用いたプロジェク
タ、2つの液晶パネルを用いたプロジェクタ、或いは、4つ以上の液晶パネルを用いたプ
ロジェクタにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態のプロジェクタについて説明する平面図である。
【図2】(A)は、XZ面内での光束の状態を説明する図であり、(B)は、YZ面内での光束の状態を説明する図である。
【図3】平行化レンズから第1レンズアレイに入射する光束の断面形状を説明する図である。
【図4】(A)は、平行化レンズから第1レンズアレイに入射する光束の具体的形状を説明する図であり、(B)は、比較例の光束の形状を説明する図である。
【図5】第2実施形態のプロジェクタについて説明する図である。
【図6】第3実施形態のプロジェクタについて説明する図である。
【図7】第4実施形態のプロジェクタについて説明する図である。
【図8】第5実施形態のプロジェクタについて説明する図である。
【符号の説明】
【0049】
10…光源装置、 11…発光管、 12…リフレクタ、 13…副鏡、 14…平行
化レンズ、 20…均一化光学系、 23…第1レンズアレイ、 23a…要素レンズ、
23z…輪郭、 24…第2レンズアレイ、 24a…要素レンズ、 25…重畳レン
ズ、 27…偏光変換素子、 27a…プリズム要素、 30…色分離導光光学系、 3
1a,31b…ダイクロイックミラー、 40…光変調部、 40a,40b,40c…
液晶ライトバルブ、 41a,41b,41c…液晶パネル、 42a,42b,42c
…第1偏光フィルタ、 43a,43b,43c…第2偏光フィルタ、 50…クロスダ
イクロイックプリズム、 60…投射レンズ、 100…プロジェクタ、 OA…システ
ム光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管と、前記発光管からの光束を前方に反射する反射鏡とを有する光源と、
前記光源から射出された光束を複数の要素レンズによって複数の部分光束に分割する第
1レンズアレイと、
前記第1レンズアレイから射出された前記複数の分割光束の状態を複数の要素レンズに
よって個別に調整する第2レンズアレイと、
前記第2レンズアレイを経た前記複数の分割光束をそれぞれ対象とする被照明領域に重
畳して入射させる重畳レンズとを備え、
前記光源は、システム光軸に垂直な第1方向と、前記システム光軸及び前記第1方向に
垂直な第2方向とに関して集光状態の差を有することによって、前記光源から射出される
光束の断面を調整し、
前記第1レンズアレイ及び前記第2レンズアレイのうち少なくとも一方を構成する前記
複数の要素レンズは、前記光源の前記集光状態の差を相殺する傾向となるように、前記第
1方向と前記第2方向とに関してパワーの差を有する、
プロジェクタ。
【請求項2】
前記第1レンズアレイは、前記第1方向の長さと前記第2方向の長さとが異なる矩形状
の輪郭を有する、請求項1記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記第1レンズアレイ及び前記第2レンズアレイのうち少なくとも一方を構成する前記
複数の要素レンズは、トーリック型の光学面を有する、請求項1及び請求項2のいずれか
一項に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記第1レンズアレイ及び前記第2レンズアレイのうち少なくとも一方を構成する前記
複数の要素レンズは、シリンドリカル型の光学面と球面型の光学面とを有する、請求項1
及び請求項2のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記光源は、前記反射鏡である楕円ミラーと、前記楕円ミラーからの光束を略平行にす
る平行化レンズとを備える、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載のプロジェクタ

【請求項6】
前記平行化レンズは、トーリック型の光学面を有する、請求項5に記載のプロジェクタ

【請求項7】
前記平行化レンズは、シリンドリカル型の光学面と球面型の光学面とを有する、請求項
5に記載のプロジェクタ。
【請求項8】
前記反射鏡は、トーリック型の反射面を有する、請求項1から請求項7までのいずれか
一項に記載のプロジェクタ。
【請求項9】
前記光源からの光束の偏光方向を揃えるため、偏光分離膜と反射膜と位相差板とをそれ
ぞれ有する複数のプリズム要素を長手方向に直交する横方向に配列した偏光変換部をさら
に備え、
前記複数のプリズム要素の長手方向は、前記第1方向に対応しており、
前記第1レンズアレイの前記第1方向に関する幅は、前記第1レンズアレイの前記第2
方向に関する幅よりも長い、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のプロジェ
クタ。
【請求項10】
前記重畳レンズから射出された光束を各色の光束に分離する色分離導光光学系と、
前記色分離導光光学系から射出された各色の光束を画像情報に応じてそれぞれ変調する
各色の光変調装置と、
前記各色の光変調装置から射出された各色の変調光を合成する光合成光学系と、
前記光合成光学系を経て合成された画像光を投射する投射光学系とをさらに備える、
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載のプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−175308(P2009−175308A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12302(P2008−12302)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】