説明

プロスタグランジン及びそれらの類縁体の製法

【課題】ラタノプロストの精製方法および高純度のラタノプロストを提供すること。
【解決手段】本発明のラタノプロストの精製方法は、1種以上の炭化水素、1種以上のアルコール、及び場合によってはアセトニトリルを含む混合物を溶離液として使用することを特徴とするHPLCによって行われる。本発明の方法によれば、15(S)−シス異性体、15(S)−トランス異性体及び15(R)−トランス異性体を実質的に含まないラタノプロスト、好ましくは98%以上の純度をもつラタノプロストが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロスタグランジンとプロスタグランジン類縁体を合成するための新規な方法に関する。特に、本発明はPGF2α及びこれらの類縁体の合成に関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジンFα{PGF2α−7−[3,5−ジヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−1−オクテニル)−シクロペンチル]−5−ヘプテン酸]}は構造
【0003】
【化1】

【0004】
を有する。
この化合物は子宮収縮を生じ、そして陣痛を誘発、加速し、また人工妊娠中絶薬として臨床的に使用される。
プロスタグランジンは、一般にシクロペンチル環上の置換基を特徴とする。PGF2αプロスタグランジンとプロスタグランジン類縁体は、一般にシクロペンタン環に関してシス立体配置の2個のヒドロキシル基と相互に関してトランス立体配置の2個の側鎖であって、各側鎖が1個の二重結合を有するものを有する。PGF2αの類縁体は側鎖中に異なる数の二重結合を有することができ、側鎖に沿った置換基は変わってもよい。加えて、あるPGF2α類縁体においては、この側鎖のカルボン酸基はエステル化されていてもよい。
【0005】
治療に使用されるPGF2α類縁体の例は、クロロフェニルエーテル側鎖置換基を含有するクロプロステノール、トリフルオロメチルフェニルエーテル側鎖置換基を含有するフルプロステノール、およびトラボプロスト
【0006】
【化2】

【0007】
である。これらの化合物はプロスタグランジンFアゴニスト活性を有し、緑内障と高眼圧症の治療の臨床に使用される。
【0008】
ラタノプロスト[13,14−ジヒドロ−15(R)−17−フェニル−18,19,20−トリノール−PGF2αイソプロピル]
【0009】
【化3】

【0010】
は、1つの飽和側鎖を有し、カルボン酸基をエステル化したPGF2α類縁体の例である。この化合物は患者の上昇した眼内圧力を低減させるために開放角緑内障と高眼圧症で臨床に使用される。
【0011】
緑内障と高眼圧症の治療に使用するPGF2αをベースとするプロスタグランジン類縁体は、例えば、特許文献1に記述されている。その中で記述されているPGF2α類縁体の合成方法は、進行段階の中間体、16−フェニル−17,18,19,20−トリノールPGF2α、またはそのテトラノール同族体から出発する。
【0012】
特許文献2は、式
【0013】
【化4】

【0014】
(ここで、基Rはアルキル、フェニルまたはベンジルを表す)
の13,14−ジヒドロ−15(R)−17−フェニル−18,19,20−トリノール−PGF2αのエステル合成方法を記述している。その中で開示されている方法の出発材料は、パラ−フェニルベンゾイル(PPB)で保護されたコレイラクトン
【0015】
【化5】

【0016】
である。この開示された方法においては、式
【0017】
【化6】

【0018】
の中間体は、この保護されたコレイラクトンのヒドロキシメチル基を酸化剤(ジシクロヘキシルカルボジイミド)により変換して、対応するアルデヒドを形成することにより製造される。このアルデヒドとフェニルホスホニウム塩との反応は上記の中間体を形成する。
【0019】
次に、この中間体を還元して、対応するヒドロキシ化合物を形成し、これを水素化反応にかけて、式
【0020】
【化7】

【0021】
の飽和側鎖中間体を形成する。
【0022】
上記の中間体のラクトンオキソ基を還元して、対応するヒドロキシ類縁体を形成し、これを以降に脱保護して、次の中間体
【0023】
【化8】

【0024】
を得る。
【0025】
以降のウイッチヒ反応とそれに続くエステル化は所望のPGF2α生成物を形成する。
【0026】
特許文献2に開示されている方法は、ある段階で中程度、あるいは低い収率しか得られないという主な欠点を持つ。特に、実施例によれば、小規模での第1の段階(PPB保護されたコレイラクトンとトリフェニル−(4−フェニル−3−オキソブチルホスホニウムヨウ化物との反応)の収率は、僅か49%近傍である。大規模であっても、報告されている収率は僅か53%近傍である。
【0027】
出発時でこれらが低収率であることは、よくても中間体の精製が難しく、そして悪くすると貴重で、高価な出発材料を損失するという結果を生じる。加えて、第2の段階(側鎖オキソ基の還元)における38%の報告されている収率も満足とはいえない。
【0028】
更には、以降の反応段階で中程度の収率しか得られず、全体収率の劇的な低下を招く。
【0029】
非特許文献1に記述されている代替的な合成においては、ラクトンのオキソ基の還元の前に脱保護段階を行ったことを除いて、類似の経路を使用した。この方法も第1の段階における低収率(約58%)の問題があり、そして以降の段階に対して中程度あるいは低い収率しか報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】EP0364417B1号明細書
【特許文献2】EP0544899B1号明細書
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】B.Resulら、J.Med.Chem.(1993),36,pp.243−248
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
先行技術の方法とそれに関連する問題に鑑みて、本発明の目的は、PGF2αとこれらの類縁体および塩の合成に対する代替的な方法を提供することである。少なくとも特定の本発明の実施形態の更なる目的は、良好な収率と容易に精製可能である中間体の合成経路を提供することを包含する。
【課題を解決するための手段】
【0033】
従って、本発明は、式(I−A)および(I−B)
【0034】
【化9】

【0035】
を有するプロスタグランジン誘導体を製造する方法であって、ここで、
Bは(i)C〜Cアルキル、(ii)C〜C16アラルキル(ここで、前記アリール基が非置換であるか、あるいはC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい)、および(iii)−(CHOR(ここで、nは1、2または3を表し、そして、Rは非置換であるか、あるいはC〜C10アルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されてもよいC〜C10アリール基を表す)から選択される置換基を表し;そして
R”はC−C20アルキル(好ましくはC〜Cアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピルおよびイソ−プロピル)、C〜Cシクロアルキル(例えば、シクロヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル)またはC〜C10アリール(好ましくはフェニル)を表す方法を提供する。好ましいR”基はイソプロピルである。
【0036】
当業者ならば、R”がアルキル、シクロアルキルあるいはアリール基以外である、式(I−A)および(I−B)の化合物の合成に本発明を適用することができることを認識するであろう。事実、基R”は、式(I−A)あるいは(I−B)の化合物の酸中間体と化合物R”−X(X=ハロ、好ましくはヨード)とをDBUなどの塩基の存在下で反応させることにより導入可能であるいかなる基も表すことができる。他の好適なR”基の例は、限定ではないが、飽和あるいは不飽和アルキルまたはシクロアルキル基、またはアリール基をCF、C〜Cアルコキシ、CNなどの1つ以上の(通常1〜3つ)置換基により置換することができる不飽和C〜C20アルキル、不飽和C〜Cシクロアルキルを包含する。好適なR”基の他の例は、C〜C10ヘテロシクロアルキル(例えば、ピペリジニル)、C〜C10ヘテロアリール(ピリジルなどの)および置換C〜C10アリール(CF、C〜Cアルコキシ、CNなどの置換基を含む)を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の方法の実施形態をスキーム1−4に示す。
【0038】
スキーム1は、式(X)の保護されたコレイラクトン化合物から出発して式(I−A)および(I−B)の化合物を合成するための一つの経路
【0039】
【化10】

【0040】
を図示する。
【0041】
本発明による代替的な手順においては、スキーム1に示す段階(a)および(b)を行い、そしてスキーム1における段階(c)、(d)、および(e)を次のスキーム2
【0042】
【化11】

【0043】
に示すような段階(e’)、(c’)および(d’)により置き換えることにより、スキーム1における中間体(VI−A)を製造することができる。
【0044】
スキーム3は、式(IIa)および(IIIb)の中間体から出発して式(I−A)および(I−B)の化合物を合成するための代替的な手順
【0045】
【化12】

【0046】
を図示する。
【0047】
スキーム4は、式(IIa)および(IIb)の中間体から出発して式(I−B)の化合物を合成するための代替的な手順
【0048】
【化13】

【0049】
を示す。
【0050】
本発明の一つの局面においては、式(IX)
【0051】
【化14】

【0052】
の化合物を製造する方法であって、ここで、Aは
(i)ハロ、(ii)C〜Cアルキルおよび(iii)非置換C〜C10アリールからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよいC〜C10アリール基を表し;
式(X)
【0053】
【化15】

【0054】
の化合物を触媒量の安定な有機ニトロキシルラジカルの存在下での酸化反応にかけることを含む方法が提供される。
【0055】
上記の反応を有機ニトロキシルラジカルの存在下で電解酸化により行ってもよい。
【0056】
別法として、この酸化反応をニトロキシル−ラジカルとm−クロロ過安息香酸、高原子価金属塩、亜臭素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムあるいはカルシウム、N−クロロコハク酸イミドまたは[ビス(アセトキシ)ヨード]ベンゼンなどの超原子価ヨウ素化合物からなる群から選択される少なくとも1モル等量の共酸化剤の存在下で行ってもよい。好ましくは、この共酸化剤は次亜塩素酸ナトリウムである。
【0057】
この安定な有機ラジカルは、好ましくはフリーラジカルの2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPOフリーラジカル)などの完全にα−置換されたピペリジン−1−オキシラジカルを含む。
【0058】
式(X)の化合物を酸化して、式(IX)の化合物を形成する先行技術の酸化法は、ジメチルスルホキシドジシクロヘキシルカルボジイミドの使用を包含する。しかしながら、このような方法はアルデヒド(IX)の単離を必要とする。アルデヒド(IX)は溶液中で特に安定でないので、仕上げ時にある量の分解生成物が通常観察される。
【0059】
有利なことには、TEMPOフリーラジカルなどの安定な有機ラジカルを用いて式(X)の化合物を酸化する本発明の方法においては、この段階で得られるアルデヒド(IX)溶液をこのアルデヒドを単離せずに以降の段階で使用することができ、それゆえいかなる分解も最少とする。
【0060】
本発明の更なる局面においては、式(VIII)
【0061】
【化16】

【0062】
の化合物を製造するための方法であって、ここで
Aは非置換であるか、あるいは(i)ハロ、(ii)C〜Cアルキルおよび(iii)非置換C〜C10アリールからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよいC〜C10アリールを表し、
Bは(i)C〜Cアルキル、(ii)C〜C16アラルキル(ここで、前記アリール基が非置換であるか、あるいはC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい)、および(iii)−(CHOR(ここで、nは1、2または3を表し、そして、Rは非置換であるか、あるいはC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されてもよいC〜C10アリール基を表す)から選択される置換基を表し、
式(IX)
【0063】
【化17】

【0064】
の化合物を構造
【0065】
【化18】

【0066】
(ここで、AとBは上記のように定義され、各R'''は同一であるか、あるいは異なってもよく(好ましくは同一)、そして各々はC〜Cアルキル基(好ましくはメチル)を表す)
を有する化合物との反応にかけ、この方法を塩化リチウムと有機塩基(3級アルキルアミン、例えばジイソプロピルエチルアミン)の存在下で行うことを含む方法が提供される。
【0067】
式(IX)の化合物は市販されているか、あるいは市販の出発材料から製造可能である。例えば、式(IX)の化合物を米国特許第3,778,450号に記述されている方法により製造してもよい。式
【0068】
【化19】

【0069】
のホスホネート化合物を当業界で既知の方法により製造してもよい(例えば、B.Resulら、J.Med.Chem.(1993),3E,243−248)を参照)。例として、ジメチル−(2−オキソ−4−フェニルブチル)ホスホネートを次の反応
【0070】
【化20】

【0071】
によりジメチル(2−オキソ−プロピル)ホスホネートから製造してもよい。
【0072】

【0073】
【化21】

【0074】
のホスホネート化合物を製造する好ましい方法は、構造
【0075】
【化22】

【0076】
のジアルキルメチルホスホネートと強塩基(例えば、「BuLi」とを反応させて、アニオンを生成し、続いてこのアニオンと式B−CO(ここで、Rは脱離基−ORを形成することができるいかなる基も表すことができる)の化合物とを反応させることを含む。通常のR基は、メチルまたはエチルなどのC〜Cアルキルを包含する(メチルが好ましい)。このように、ジメチルメチルホスホネート(メチルホスホン酸ジメチルエステル)とn−ブチルリチウムなどの強塩基とを反応させて、対応するアニオンを生成し、続いてこのアニオンと式B−COの化合物とを反応させることが下記
【0077】
【化23】

【0078】
に示される。
【0079】
ジメチル(2−オキソ−4−フェニルブチル)ホスホネートを次の反応
【0080】
【化24】

【0081】
から良好な収率で製造することができる。
【0082】
通常、この反応からの生成物を蒸留により精製することができる。有利なこととしては、この反応は、通常、ジメチル(2−オキソプロピル)ホスホネートを用いる先行技術の方法と比較して副反応を含まない。
【0083】
式VIIIの化合物の製造に上記に述べた方法は、温和な条件で行う変形Horner−Wadsworth−Emmons反応であり、ここでは、このホスホネートのアニオンを生成させるのに使用される通常の塩基、THF中の水素化ナトリウムまたはトルエン中の炭酸カリウムがトリエチルアミンとジイソプロピルエチルアミンなどの3級アルキルアミンとDBU[1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセ−7−エン]からなる群から選択される塩基に置き換えられている。有利なこととしては、生成物(VIII)の収率が劣るか、中程度である先行技術方法とは異なり、温和な試剤、すなわち塩化リチウムからのリチウムカチオンを3級アルキルアミンと組み合わせて使用することによって、生成物の収率が高く、クリーンな反応をもたらす。
【0084】
この反応は、−20℃〜40℃、好ましくは−90℃〜30℃の範囲の温度で好ましくは行われる。この反応に好適な溶媒は、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、およびこれらの混合物からなる群から選ばれるものを包含する。
【0085】
式(VIII)の化合物においては、基Aは、好ましくは非置換C〜C10アリール基(例えば、フェニル)を表す。
【0086】
基Aに対する他の好ましい置換基は、ハロまたはフェニルから選択される1つの置換基により置換されているC〜C10アリール基から選択されるものを包含する。基Aに対する更なる好ましい置換基は、非置換あるいは置換のフェニルを包含し、ここでは置換基がハロまたはフェニルから選択される。好ましい方法においては、基Aはフェニルを表す。
【0087】
本発明のもう一つの局面によれば、式(VII)
【0088】
【化25】

【0089】
の化合物を製造するための方法であって、ここで
Aは非置換C〜C10アリールを表し、
Bは(i)C〜Cアルキル、(ii)C〜C16アラルキル(ここで、前記アリール基が非置換であるか、あるいはC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい)、および(iii)−(CHOR(ここで、nは1、2または3を表し、そして、Rは非置換であるか、あるいはC〜C10アルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されてもよいC〜C10アリール基を表す)から選択される置換基を表し、
式(VIII)
【0090】
【化26】

【0091】
の化合物中の側鎖オキソ基を還元することを含む方法が提供される。
【0092】
側鎖オキソ基の還元に好適な還元剤は、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、リチウムトリ−s−ブチルボロハイドライド、{LiB[CH(CH)CH(C)]H}(L−Selectride(登録商標))および水素化ホウ素ナトリウムを包含する。最終生成物をラセミ体(フプロステノルなど)として所望する場合には、非立体選択的還元剤を使用してもよい(例えば、LiAlH、NaBHおよび他の金属性ハイドライド)。
【0093】
最終生成物を単一の異性体(例えば、ラタノプロストにおけるように)として所望する場合には、主要量の所望の異性体の製造に対して選択性が更に大きいために、還元剤は、好適にはキラルオキサザボロリジン触媒(「コレイ触媒」)の存在下でのボラン−ジメチルスルフィド錯体を含む。この反応は所望の異性体の生成を極めて有利とするが、形成されるいかなる所望しない異性体もフラッシュカラムクロマトグラフィなどのクロマトグラフ法により分離してもよい。
【0094】
このように、還元反応の好ましい試剤は、キラルオキサザボロリジン触媒(コレイ触媒)の存在下でのボラン−ジメチルスルフィド錯体である。本発明のこの実施形態においては、式(VII)の化合物中の基Aは、非置換C〜C10アリールであることに加えて、(i)ハロ、例えばフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード、(ii)C〜Cアルキルおよび(iii)フェニルなどのC〜C10アリールからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されるC〜C10アリールも表すことができる。
【0095】
この反応は優れた選択性により起こるために、コレイ触媒と組み合わせてのボラン−ジメチルスルフィド錯体の使用が特に好ましい。事実、L−Selectride(登録商標)を用いる反応と比較して、立体選択性の顕著な改善が見られる。更なる利点は、−70℃未満の反応温度を必要とするL−Selectride(登録商標)と比較して高い温度(通常−15℃〜−18℃)でボラン−ジメチルスルフィド錯体を用いる還元反応を行うことができるということである。
【0096】
コレイ触媒は、(R)−テトラヒドロ−1−メチル−3,3−ジフェニル−H,3H−ピロール[1,2−c][1,3,2]オキサザボロールなどのキラルオキサザボロリジン化合物を含み[J.Am.Chem.Soc.,109,5551(1987)およびJ.Am.Chem.Soc.109.,7925(1987)およびLancaster Catalogue 2000−2001,page819に引用されている文献を参照]、適切なキラルプロリノール[市販の(R)−(+)−α,α−ジフェニルプロリノールなどの]とトリアルキルボロキシンとの反応、例えば
【0097】
【化27】

【0098】
により製造される。
【0099】
この反応はトルエン、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランなどの溶媒中不活性条件中で行われる。このオキサザボロリジン触媒は還元段階において溶液として使用される。
【0100】
本発明のもう一つの局面によれば、式(V)
【0101】
【化28】

【0102】
の化合物を製造するための方法であって、ここで
前記破線は任意の二重結合を形成し;
Bは(i)C〜Cアルキル、(ii)C〜C16アラルキル(ここで、前記アリール基が非置換であるか、あるいはC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい)、および(iii)−(CHOR(ここで、nは1、2または3を表し、そして、Rは非置換であるか、あるいはC〜C10アルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されてもよいC〜C10アリール基を表す)から選択される置換基を表し;そして
R’は置換基
【0103】
【化29】

【0104】
(ここで、R、RおよびRは同一であるか、あるいは異なり、各々はC〜Cアルキル、C〜C10アリールまたはC〜C16アラルキルを独立に表す)
を表し;
(a)式(VII)
【0105】
【化30】

【0106】
(Aは非置換であるか、あるいは(i)ハロ、(ii)C〜Cアルキルおよび(iii)非置換C〜C10アリールからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよいC〜C10アリールを表す)
の化合物のヒドロキシル基を脱保護して、式(VI)
【0107】
【化31】

【0108】
の対応するヒドロキシ置換化合物を形成する段階と
(b)場合によっては、式(V)の化合物の破線が単結合を表す場合には、式(VI)の二重結合を水素化して、式(VI−A)
【0109】
【化32】

【0110】
の化合物を形成する段階と
(c)式(VI)あるいは(VI−A)の化合物を式
【0111】
【化33】

【0112】
(ここで、R、RおよびRは上記で定義したようなものであり、XはF、Cl、BrまたはIを表す)
を有するシリル化剤との反応にかける段階とを
含む方法が提供される。
【0113】
(a)このシクロペンタン環のヒドロキシル基上の保護基Aを除去する脱保護段階は、好ましくは塩基の存在下で行われる。脱保護反応での使用に好ましい塩基は、KCO、NaCO、およびLiCOからなる群から選択されるものを包含し、KCOが特に好ましい。
【0114】
脱保護反応に好適な溶媒は、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルコールを包含する。
【0115】
段階(a)からの脱保護された生成物の単離を標準のクロマトグラフィ法により行ってもよい。しかしながら、有利なこととして、ヘキサン区分による抽出により脱保護された生成物を単離することができ、かくして、時間がかかり、そして費用のかかるクロマトグラフ法の使用を避けることができることが判明した。
【0116】
上述のラタノプロストなどの一つの飽和側鎖を有するプロスタグランジン誘導体を製造するためには、この段階では、すなわち脱保護段階(a)の後、側鎖の二重結合を水素化して、式(VI−A)の中間体を形成することが便利である。
【0117】
カーボンなどの不活性担体上に担持してもよいパラジウム、白金またはロジウムなどの任意の好適な水素化触媒を用いて、この水素化段階を行うことができる。好適な水素化触媒の例はカーボン上の5%パラジウムである。好ましい方法においては、この水素化反応は窒化ナトリウムの存在下好ましくは水性溶液中で行われる。この方法は脱離生成物の形成を回避し、式(VI−A)の化合物の改善された収率(通常、95%以上)をもたらす。この水素化反応に好適な溶媒は、メタノールとエタノールなどのアルコールを包含する。水素化反応の完結時には、この混合物を好ましくは希塩酸と攪拌して、亜硝酸塩を除去する(室温で分解する亜硝酸への変換により)。この方法は、亜硝酸塩が以降の合成手順に持ち越されないことを確実にする。
【0118】
理論に束縛されるのを望むのではないが、水素化反応における窒化ナトリウムの役割は、脱離生成物の形成、すなわち、出発材料の側鎖からの水分子の脱離および、結果として所望の生成物の充分に飽和した脱酸素類縁体の形成を避けることである。
【0119】
式(V)の化合物を製造するためには、式(VI)を有する段階(a)で製造される化合物または式(VI−A)を有する段階(b)で製造される化合物をシリル化剤(X)Si(R)(R)(R)と反応させる。基R、R、およびRは同一であるか、あるいは異なることができ、各々はC〜Cアルキル基またはC〜C10アリール基を表す。好ましくは、基R、R、およびRの各々は、メチル、エチル、ブチル、イソプロピルから独立に選択される。段階(c)での使用に特に好ましいシリル化剤は、塩化トリメチルシリル、塩化トリエチルシリルおよび塩化−t−ブチルジメチルシリルからなる群から選択される。塩化トリエチルシリルが特に好ましい。
【0120】
このシリル化段階は、好ましくは塩基、例えばイミダゾールまたはトリエチルアミンなどのトリアルキルアミンなどの有機塩基の存在下で行われる。
【0121】
シリル化反応での使用に好適な溶媒は、テトラヒドロフランまたはジメチルスルホキシドなどの極性非プロトン性溶媒、またはジクロロメタンなどの塩素化溶媒を包含する。しかしながら、好ましくは、この反応は、ジメチルホルムアミドを含む溶媒中で行われる。
【0122】
これは一般にヒドロキシル基を保護しない反応と比較して高い収率でクリーンな反応をもたらすために、本発明によるシリル保護基の使用は有利である。
【0123】
シリル基は、例えばDIBAL−H(ジ−イソブチルアルミニウム)による以降の還元反応に対して、安定であるために、本発明の方法におけるシリル保護基に使用は、例えばベンゾイル−およびパラ−フェニルベンゾイル(PPB)保護基を用いる先行技術の方法と比較して特別な利点を有する。
【0124】
事実、このような反応は、保護基のオキソ部分の還元を生じることができるために、ベンゾイル−およびPPB保護基の存在は、ラクトールを形成するラクトン環の以降の還元におけるDIBAL−Hを含む多数の還元剤の使用を妨害する。このように、DIBALを還元剤として使用し、そして出発材料がベンゾイル−あるいはPPB保護基を含む先行技術の方法においては、還元段階に先立って出発材料を脱保護しなければならない。しかしながら、各遊離ヒドロキシル基または出発材料がDIBAL−Hが協働するために、DIBAL−H還元段階における非保護ヒドロキシル基の存在は望ましくない。結果として、追加の等量のDIBAL−Hの使用が必要となる。
【0125】
以降のウイッチッヒ反応[スキーム1における段階(i)]においてシリル保護基を使用する第2の利点は、所望のシス異性体の形成が有利になるということである。シリル保護基は、一般に分子の親油性を増大させ、誘導体が有機溶媒に易溶となる点で更なる利点を有する。このように、シリル保護されたウィッティヒ反応生成物[(IIIa)/(IIIb)]はヘキサンに可溶であり、一方トリフェニルホスフィンオキシドは不溶であり、濾過による分離が可能になるために、このウィッティヒ反応においては、ホスフィンオキシド副生成物の除去が容易となる。この生成物の以降の精製を完全なクロマトグラフ精製でなく、シリカゲル濾過により行うことができる。シリル保護基を使用する更なる利点は、下記に述べるように温和な条件下でこれらの保護基を除去することができるということである。
【0126】
別法として、実線と破線が単結合を表す式(V)の中間体化合物(すなわち、式(VI−A)の化合物)
【0127】
【化34】

【0128】
は、
(a)式(VIII)
【0129】
【化35】

【0130】
の化合物の二重結合を水素化して、式(XIII)
【0131】
【化36】

【0132】
の化合物を形成する段階と、
(b)式(XIII)の化合物の側鎖オキソ基を還元して、式(XIV)
【0133】
【化37】

【0134】
の化合物を形成する段階と、
(c)式(XIV)の化合物中のヒドロキシル基を脱保護して、式(VI−A)
【0135】
【化38】

【0136】
の化合物を形成する段階と、
(d)式(VI−A)の化合物を式
【0137】
【化39】

【0138】
(ここで、R、RおよびRは請求項21で定義したようなものであり、XはF、Cl、BrまたはIを表す)
を有するシリル化剤との反応にかける段階とを
含む方法によりすなわち、式(VIII)の化合物から製造可能である。この方法の段階(a)〜(c)は、スキーム2において段階(e’)、(c’)および(d’)として示されている。段階(d)はスキーム1の段階(f)に対応し、この生成物は式(V)(ここで、破線と実線は単結合を表す)の化合物である。この代替的な手順における水素化、還元、脱保護およびシリル化段階を直前の方法に対して行って、式(V)の化合物を形成する。
【0139】
本発明のもう一つの局面によれば、
式(IV)
【0140】
【化40】

【0141】
の化合物を製造する方法であって、ここで、
前記破線は任意の二重結合を形成し;
Bは(i)C〜Cアルキル、(ii)C〜C16アラルキル(ここで、前記アリール基が非置換であるか、あるいはC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい)、および(iii)−(CHOR(ここで、nは1、2または3を表し、そして、Rは非置換であるか、あるいはC〜C10アルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されてもよいC〜C10アリール基を表す)から選択される置換基を表し;そして
R’は置換基
【0142】
【化41】

【0143】
(ここで、R、RおよびRは同一であるか、あるいは異なり、各々はC〜Cアルキル、C〜C10アリールまたはC〜C16アラルキルを独立に表す)
を表し;
式(V)
【0144】
【化42】

【0145】
の化合物の側鎖オキソ基を還元することを含む
方法が提供される。
【0146】
この方法に好適な還元剤は、ジ−イソブチルアルミニウムハイドライド(DIBAL−H)であり、そしてこの反応を例えばテトラヒドロフラン中で行ってもよい。
【0147】
本発明のもう一つの局面によれば、式(IIIa)あるいは(IIIb)
【0148】
【化43】

【0149】
の化合物またはこれらの混合物を製造する方法であって、ここで、
前記破線は任意の二重結合を形成し;
Bは(i)C〜Cアルキル、(ii)C〜C16アラルキル(ここで、前記アリール基が非置換であるか、あるいはC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい)、および(iii)−(CHOR(ここで、nは1、2または3を表し、そして、Rは非置換であるか、あるいはC〜C10アルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されてもよいC〜C10アリール基を表す)
から選択される置換基を表し;そして
R’は置換基
【0150】
【化44】

【0151】
(ここで、R、RおよびRは同一であるか、あるいは異なり、各々はC〜Cアルキル、C〜C10アリールまたはC〜C16アラルキルを独立に表す)
を表し;
式(IV)
【0152】
【化45】

【0153】
化合物をイリドとのウィッティヒ反応にかけることを含んでなり、
前記イリドは式
【0154】
【化46】

【0155】
(ここで、RはC〜CアルキルまたはC〜C10アリールを表し、そしてXはフルオロ、クロロ、ブロモまたヨードを表す)
の化合物と強塩基との反応により形成されることを含む方法が提供される。
【0156】
好ましくは、基Rはフェニルを表す。基Xは好ましくはブロモを表す。
【0157】

【0158】
【化47】

【0159】
の試剤は市販されているか、あるいはホスフィンP(RとHOC(CH−X’(ここで、X’はハライド、例えばF、Cl、BrまたはIを表す)との反応により製造可能である。このイリドの形成に好適な塩基は、ブチルリチウム、ナトリウムアミド、水素化ナトリウム、およびナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドおよびカリウムt−ブトキシドを包含するアルカリ金属アルコキサイドからなる群から選択されるものを包含する。カリウムt−ブトキシドが特に好ましい塩基である。この反応に好適な溶媒はテトラヒドロフランである。
【0160】
このように、好ましい実施形態においては、(4−カルボキシブチル)−トリフェニルホスホニウムブロミドとカリウムt−ブトキシドとの反応
【0161】
【化48】

【0162】
によりこのイリドを形成してもよい。
【0163】
3等量のこのホスホニウムハライドと6等量の塩基、すなわち1:2のホスホニウムハライドと塩基の比を用いて、このイリドを生成させることができるが、好ましくは2.15等量のこのホスホニウムハライドと4等量の塩基を用いて、このイリドを生成させる。
【0164】
このウィッティヒ反応時、このシクロペンチル環上のヒドロキシル置換基のシリル保護基は、ラクトール環の開環により形成されるヒドロキシル基に移行してもよく、式(IIIa)および(IIIb)の9−および11−シリル化異性体の混合物を生じる。
【0165】
化合物(IIIa)および(IIIb)の混合物を例えばクロマトグラフ法により分離することができるが、保護基を以降の反応段階で除去するために、分離はこの段階で必要でない。このように、本発明の方法においては、この9−および11−シリル化異性体(IIIa)および(IIIb)のこのような混合物を分離せずに以降の反応段階で使用することが好ましい。
【0166】
本発明のもう一つの局面においては、
式(XI)
【0167】
【化49】

【0168】
の化合物を製造する方法であって、ここで、R’は同一であって、各々置換基
【0169】
【化50】

【0170】
(ここで、R、RおよびRは同一であるか、あるいは異なり、そして各々C〜Cアルキル、C〜C10アリールまたはC〜C16アラルキルを独立に表す)
を表し;
式(IIIa)または式(IIIb)の化合物、またはこれらの混合物と式
【0171】
【化51】

【0172】
(ここで、R、RおよびRは上記に定義されている通りであり、そしてXはF、CI、BrまたはIを表す)
を有する少なくともモル等量のシリル化剤との反応させることを含む方法が提供される。
【0173】
この方法は、式(IIIa)と式(IIIb)の化合物の混合物をこのウィッティヒ反応の生成物として形成させる場合に有利に行われる。少なくとも1つのモル等量のシリル化剤、好ましくは式(V)の化合物のヒドロキシル基を保護するのに使用されるのと同一のシリル化剤とのこのような混合物の反応によって、式(IIIa)および(IIIb)の化合物の混合物を以降の反応段階に対して式(XI)の単一の生成物に「合一化」させることが可能である。好ましくは、この段階においては、出発材料に対するシリル化剤の少なくともモル等量、通常、1.1〜2モル等量を使用する。単一の生成物の形成によって、以降の反応段階の制御と精製が可能になる。
【0174】
本発明のもう一つの局面によれば、式(IIa)または(IIb)
【0175】
【化52】

【0176】
の化合物またはこれらの混合物を製造する方法であって、ここで、
前記破線は任意の二重結合を形成し;
Bは(i)C〜Cアルキル、(ii)C〜C16アラルキル(ここで、前記アリール基が非置換であるか、あるいはC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい)、および(iii)−(CHOR(ここで、nは1、2または3を表し、そして、Rは非置換であるか、あるいはC〜C10アルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されてもよいC〜C10アリール基を表す)
から選択される置換基を表し;そして
R’は置換基
【0177】
【化53】

【0178】
(ここで、R、RおよびRは同一であるか、あるいは異なり、各々はC〜Cアルキル、C〜C10アリールまたはC〜C16アラルキルを独立に表す)
を表し;そして
R”はC〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルを表し;
式(IIIa)または式(IIIb)の化合物またはこれらの混合物をDBUの存在下で式R”−Hal(ここで、R”はC〜Cアルキル基またはC〜Cシクロアルキル基を表し、そして「Hal」はクロロ、ブロモまたはヨード(好ましくはヨード)を表す)のアルキルハライドとの反応にかけることを含む方法が提供される。
【0179】
上記に示したように、このウィッティヒ反応がシリル保護基の移行を生じて、式(IIIa)および(IIIb)の9−および11−シリル化異性体の混合物を形成する場合には、この混合物を上記に示した方法によりアルキル化して、式(IIa)および(IIb)の9−および11−シリル化エステルの混合物を形成してもよい。式(IIIa)および(IIIb)の化合物の混合物のシリル化を行う代わりに、アルキル化段階の後、すなわち、式(IIa)および(IIb)の化合物の混合物に対してシリル化を行うことも可能である。
【0180】
従って、本発明の更なる局面は、式(XII)
【0181】
【化54】

【0182】
の化合物を製造する方法であって、ここで、
各R’は好ましくは同一であり、そして各々置換基
【0183】
【化55】

【0184】
(ここで、R、RおよびRは同一であるか、あるいは異なり、各々C〜Cアルキル、C〜C10アリールまたはC〜C16アラルキルを独立に表し、そしてR”はC〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルを表す)
を表し;
式(IIa)または式(IIb)の化合物またはこれらの混合物を式
【0185】
【化56】

【0186】
(ここで、R、RおよびRは上記に定義されている通りであり、そしてXはF、CI、BrまたはIを表す)
を有する少なくとも1モル等量のシリル化剤との反応にかけることを含む方法を提供する。
【0187】
式(IIIa)および(IIIb)の化合物の混合物のシリル化について上記に示したように、この方法は、好ましくは少なくともモル等量のシリル化剤の存在下で行われ、そして更に好ましくは1.1〜2モル等量のシリル化剤が使用される。再度、この段階は、式(IIa)および(IIb)の化合物の混合物の「合一化」を生じて、以降の反応段階の制御と以降の中間体の精製を容易にする単一の生成物[すなわち、式(XII)の化合物]を形成する。
【0188】
式(IIa)および(IIb)の化合物の混合物またはそれぞれ式(IIIa)および(IIIb)の化合物の混合物をシリル化剤と反応させて、式(XII)および式(XI)の単一の生成物(すなわち、式IAおよびIBの目標化合物の前駆体)を形成する段階においては、精製が容易になることが判明した。有利なこととしては、単純にシリカゲルによる濾過により、式(XII)および(XI)の化合物を精製し、この合成法の最終段階では特に望ましくない完全なクロマトグラフ分離を行う必要性を省略できることを見出した。これの一つの理由は、式(XII)および(XI)の化合物中の3つのシリル基の存在によって、ヘプタンに極めて易溶であり、そのために更に極性の不純物から容易に分離可能である極めて親油性の分子が生成するということである。
【0189】
本発明のもう一つの局面によれば、
式(XII)
【0190】
【化57】

【0191】
化合物を製造する方法であって、ここで、
R’は好ましくは同一であり、そして各々は置換基
【0192】
【化58】

【0193】
(ここで、R、RおよびRは同一であるか、あるいは異なり、各々C〜Cアルキル、C〜C10アリールまたはC〜C16アラルキルを独立に表し、そしてR”はC〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルを表す)
を表し;式(XI)
【0194】
【化59】

【0195】
(ここで、基R’は好ましくは同一であり、そして各々は置換基
【0196】
【化60】

【0197】
(ここで、R、RおよびRは同一であるか、あるいは異なり、各々C〜Cアルキル、C〜C10アリールまたはC〜C16アラルキルを独立に表す)
を表す)の化合物を式R”−OH(ここで、R”はC〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルを表す)を有するアルコールとのエステル交換反応にかけることを含む方法が提供される。
【0198】
場合によっては、ピリジニウムp−トルエンスルホネートなどの弱酸触媒の存在下で上記の方法を行ってもよい。シリル基の脱保護を避けるために、この反応を水の不在で行わなければならない。
【0199】
本発明の更なる局面によれば、式(I−A)
【0200】
【化61】

【0201】
の化合物を製造する方法であって、ここで、
Bは(i)C〜Cアルキル、(ii)C〜C16アラルキル(ここで、前記アリール基が非置換であるか、あるいはC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい)、および(iii)−(CHOR(ここで、nは1、2または3を表し、そして、Rは非置換であるか、あるいはC〜C10アルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されてもよいC〜C10アリール基を表す)
から選択される置換基を表し;(i)式(IIIa)、式(IIIb)
【0202】
【化62】

【0203】
の化合物またはこれらの混合物、(ii)式(XI)
【0204】
【化63】

【0205】
の化合物
(ここで、BとR’は先行する請求項で定義した通りである)
からなる群から選択される化合物からシリル保護基R’を除去することを含む
方法が提供される。
【0206】
本発明の更なる局面によれば、式(I−B)
【0207】
【化64】

【0208】
の化合物を製造する方法であって、ここで、
Bは(i)C〜Cアルキル、(ii)C〜C16アラルキル(ここで、前記アリール基が非置換であるか、あるいはC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい)、および(iii)−(CHOR(ここで、nは1、2または3を表し、そして、Rは非置換であるか、あるいはC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されてもよいC〜C10アリール基を表す)
から選択される置換基を表し;(i)式(IIa)、式(IIb)
【0209】
【化65】

【0210】
の化合物またはこれらの混合物、(ii)式(XII)
【0211】
【化66】

【0212】
の化合物(ここで、BとR”は先行する請求項で定義した通りである)からなる群から選択される化合物からシリル保護基R’を除去することを含む方法が提供される。シリル保護基R’の脱保護は温和な反応条件中で有利に行われる。式(IIIa)、(IIIb)、(XI)、(IIa)、(IIb)および(XII)の化合物からシリル基を除去するのに好適な試剤は、酢酸とクエン酸などの弱酸を包含する。特に好ましい弱酸はピリジニウムp−トルエンスルホネートである。この反応をいかなる好適な溶媒または溶媒混合物中で行ってもよい。この脱保護反応に特に好ましい溶媒はアセトンと水を含む。
【0213】
本発明の好ましい実施形態によれば、式(VII)、(VI)、(VI−A)、(V)、(IV)、(IIIa)、(IIIb)、(IIa)、(IIb)、(I−A)、(I−B)、(XI)、(XII)および(XIV)の化合物は、単一の鏡像異性体(すなわち、側鎖中の波線はくさび形または破線くさび形の単結合を表す)である。上述のように、スキーム1における段階(c)またはスキーム2における段階(c’)において立体選択的還元剤[例えば、キラルオキサザボロリジン(コレイ)触媒の存在下のボラン−ジメチルスルフィド錯体]を使用することにより、このような化合物を製造することができる。
【0214】
本発明の好ましい実施形態によれば、式(XII)、(XI)、(VIII)、(VII)、(VI)、(VI−A);(V)、(IV)、(IIIa)、(IIIb)、(IIa)、(IIb)、(I−A)または(I−B)の化合物中の基Bは、(i)C〜Cアルキル、(ii)アリール基が非置換であるC〜C16アラルキルおよび(iii)−(CHOR(ここで、nは1、2または3を表し、そしてRはハロまたはCFからなり群から選択されるC〜C10アリ−ル基である。
【0215】
式(XII)、(XI)、(VIII)、(VII)、(VI)、(VI−A)、(V)、(IV)、(IIIa)、(IIIb)、(IIa)、(IIb)、(I−A)または(I−B)の化合物(ここで、Bは(i)C〜C直鎖アルキル、(ii)−(CHPhおよび(iii)−CHOR(ここで、RはハロまたはCFにより置換されているフェニル基を表す)が更に好ましい。
【0216】
式(XII)、(XI)、(VIII)、(VII)、(VI)、(VI−A)、(V)、(IV)、(IIIa)、(IIIb)、(IIa)、(IIb)、(I−A)または(I−B)の化合物(Bは
【0217】
【化67】

【0218】
の基から選択される置換基を表す)が特に好ましい。
【0219】
本発明の更なる好ましい実施形態においては、式(XII)、(XI)、(V)、(IV)、(IIIa)、(IIIb)、(IIa)、(IIb)、(I−A)および(I−B)の各々における実線と破線は単結合を形成する。
【0220】
更なる別な好ましい実施形態においては、式(XII)、(XI)、(V)、(IV)、(IIIa)、(IIIb)、(IIa)、(IIb)、(I−A)および(I−B)の各々における実線と破線は単結合を形成する。
【0221】
実線と破線が単結合を形成する、式(XII)、(XI)、(V)、(IV)、(IIIa)、(IIIb)、(IIa)、(IIb)、(I−A)および(I−B)の化合物に対しては、Bは好ましくは−CHCHPhを表す。
【0222】
実線と破線が単結合を形成する、式(XII)、(XI)、(V)、(IV)、(IIIa)、(IIIb)、(IIa)、(IIb)、(I−A)および(I−B)の化合物に対しては、Bは好ましくは
【0223】
【化68】

【0224】
からなる群から選択される置換基を表す。
【0225】
当業者ならば認識するように、本発明の方法は、プラスタグランジンとプラスタグランジン類縁体、特にPGF2αとこの類縁体の合成に一般に適用可能である。この方法は
【0226】
【化69】

【0227】
からなる群から選択される化合物の製造に特に有用である。好ましい実施形態においては、本発明はラタノプロストを合成する方法であって、
(1)式(X)
【0228】
【化70】

【0229】
(ここで、Aは(i)ハロ、(ii)C〜Cアルキルおよび(iii)非置換C〜C10アリールからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよいC〜C10アリール基を表す)
の化合物を次亜塩素酸ナトリウムとの酸化反応にかけ、前記酸化反応を触媒量のTEMPOフリーラジカルなどの安定な有機ニトロキシルラジカルの存在下で行って、
式(IX)
【0230】
【化71】

【0231】
を有する化合物を形成する段階と、
(2)上記に定義したような式(IX)の化合物を塩化リチウムと有機塩基の存在下で構造
【0232】
【化72】

【0233】
(ここで、R'''はC〜Cアルキル基(好ましくはメチル)を表す)
を有する化合物との反応にかけて、式(VIII)(Bは−CHCHPhである)
【0234】
【化73】

【0235】
を有する化合物を形成する段階と、
(3)ボラン−ジメチルスルフィド錯体を用いて、式(VIII)の化合物の側鎖オキソ基を還元し、前記還元を(R)−テトラヒドロ−1−メチル−3,3−ジフェニル−1H,3H−ピロール[1,2c]−[1,3,2]オキサザボロールなどのキラルオキサザボロリジン触媒の存在下で行って、式(VII)(Bは−CHCHPhである)
【0236】
【化74】

【0237】
を有する化合物を形成する段階と、
(4)好ましくはメタノール中のKCOを用いて、式(VII)の上記化合物のヒドロキシル基を脱保護して、式(VI)
【0238】
【化75】

【0239】
(ここで、破線と実線は単結合を表し、そしてBは−CHCHPhである)
の化合物を形成する段階と、
(5)式(VI)の化合物の二重結合を水素化触媒の存在下で、場合によっては窒化ナトリウムの存在下で水素化して、式(VI−A)(Bは−CHCHPhである)
【0240】
【化76】

【0241】
を有する化合物を形成する段階と、
(6)式(VI−A)の化合物を式
【0242】
【化77】

【0243】
(ここで、R、RおよびRは同一であるか、あるいは異なり、そして各々C〜Cアルキル、C〜C10アリールまたはC〜C16アラルキルを独立に表す)
のシリル化剤との反応にかけて、式(V)(Bは−CHCHPhである)
【0244】
【化78】

【0245】
(ここで、R’は
【0246】
【化79】

【0247】
を表す)
を有する化合物を形成する段階と、
(7)DIBAL−Hなどの還元剤を用いて、式(V)の化合物のラクトンオキソ基を還元して、式(IV)(Bは−CHCHPhを表す)
【0248】
【化80】

【0249】
の化合物を形成する段階と、
(8)式(IV)の化合物をイリドとのウィッティヒ反応にかけ、前記イリドは式
【0250】
【化81】

【0251】
(ここで、XはF、Cl、BrまたはIを表す)の化合物と強塩基との反応から生成し、
式(IIIa)あるいは(IIIb)(ここで、Bは−CHCHPhを表す)
【0252】
【化82】

【0253】
の化合物またはこれらの混合物を形成する段階と、
(9)式(IIIa)あるいは(IIIb)の化合物またはこれらの混合物のカルボン酸基をヨウ化イソプロピルによりDBUの存在下でアルキル化して、それぞれ式(IIa)あるいは(IIb)(Bは−CHCHPhであり、R”はイソプロピルである)
【0254】
【化83】

【0255】
を有する化合物またはこれらの混合物を形成する段階と、そして
(10)式(IIa)あるいは(IIb)の化合物またはこれらの混合物から保護基を除去して、ラタノプロスト
【0256】
【化84】

【0257】
を形成する段階とを含む方法が提供される。
【0258】
上記の段階(1)〜(10)は、上記のスキーム1の段階(a)−(b)−(c)−(d)−(e)−(f)−(h)−(i)−(j)−(k)に相当する。
【0259】
別法においては、ラタノプロストを先行の方法の段階(1)および(2)を行い、段階(3)、(4)および(5)を次の段階(3’)、(4’)、(5’)で置き換え、そしてその後段階(6)−(10)を先行の方法に述べたように行うことを包含する方法により形成することができる。段階(3’)、(4’)、(5’)は次の通りである。
(3’)式(VIII)の化合物の二重結合を水素化触媒(例えば、パラジウム、白金またはロジウム)の存在下で水素化反応にかけ、前記反応を場合によっては窒化ナトリウムの存在下で行って、式(XIII)(Bは−CHCHPhである)
【0260】
【化85】

【0261】
の化合物を形成する段階と、
(4’)ボラン−ジメチルスルフィド錯体を用いて、式(XIII)の化合物の側鎖オキソ基を還元し、この還元を(R)−テトラヒドロ−1−メチル−3,3−ジフェニル−1H,3H−ピロール[1,2c]−[1,3,2]オキサザボロールなどのキラルオキサザボロリジン触媒の存在下で行って、
式(XIV)(Bは−CHCHPhである)
【0262】
【化86】

【0263】
の化合物を形成する段階と、
(5’)好ましくはメタノール中のKCOを用いて、式(XIV)の上記化合物のヒドロキシル基を脱保護して、式(VI)
【0264】
【化87】

【0265】
(ここで、破線と実線は単結合を表し、そしてBは−CHCHPhである)
の化合物を形成する段階。
【0266】
この方法は、スキーム1とスキーム2に示す段階(a)−(b)−(e’)−(c’)−(d’)−(f)−(h)−(i)−(l)−(k)に対応する。
【0267】
更に好ましい実施形態においては、ラタノプロストを合成する方法であって、先行する方法のいずれかにより段階(1)〜(8)を行って、各構造を有する式(IIIa)と式(IIIb)
【0268】
【化88】

【0269】
の化合物を含む混合物を形成し、そして
(9a)上記混合物を少なくとも1モル等量(好ましくは少なくとも1モル等量、そして更に好ましくは1.1〜2モル等量の)のシリル化剤との反応にかけて、式(XI)
【0270】
【化89】

【0271】
(ここで、各R’は上記に定義した通りである)の化合物を形成する段階と、
(10a)式(XI)の化合物を場合によっては、ピリジニウムp−トルエンスルホネートなどの弱酸触媒の存在下でイソプロパノールとのエステル交換反応にかけて、式(XII)の化合物
【0272】
【化90】

【0273】
を形成する段階と、そして
(11a)保護基R’を除去して、ラタノプロストを形成する段階と
を更に行うことを含むラタノプロストを合成する方法が提供される。
【0274】
これらの段階(9a)〜(11a)は上記のスキーム2における段階(m)−(o)−(p)に対応する。
【0275】
本発明のなお更なる実施形態によれば、ラタノプロストを製造する方法で、段階(1)〜(9)を行って、各構造を有する式(IIa)と式(IIb)
【0276】
【化91】

【0277】
の化合物を含む混合物を形成し、そして
(10b)上記混合物を少なくとも1モル等量(好ましくは少なくとも1.1モル等量、そして更に好ましくは1.15〜2モル等量の)のシリル化剤との反応にかけて、式(XII)
【0278】
【化92】

【0279】
の化合物を形成する段階と、
(11b)保護基R’を除去して、ラタノプロストを形成する段階と
を更に行うことを含む方法が提供される。
【0280】
上記の段階(10b)および(11b)は上記のスキーム3に示す段階(q)−(r)に対応する。
【0281】
本発明の更なる局面によれば、上記に定義したように式(I−A)あるいは(I−B)の化合物を合成する新規な中間体が提供される。この新規な中間体は次のものを包含する:
−式(VIII)
【0282】
【化93】

【0283】
(ここで、Aは非置換C〜C10アリールを表し、そして
Bは(i)C〜Cアルキル、(ii)C〜C16アラルキル(ここで、前記アリール基が非置換であるか、あるいはC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい)、および(iii)−(CHOR(ここで、nは1、2または3を表し、そして、Rは非置換であるか、あるいはC〜C10アルキル、ハロおよびCFからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基により置換されてもよいC〜C10アリール基を表す)
の化合物、
−式(VII)
【0284】
【化94】

【0285】
(ここで、AとBはこの明細書で定義されている通りである)
の化合物とこれらの単一の鏡像異性体、
−式(VI)
【0286】
【化95】

【0287】
(ここで、Bはこの明細書で定義されている通りである)
の化合物とこれらの単一の鏡像異性体、
−式(VI−A)
【0288】
【化96】

【0289】
(ここで、Bはこの明細書で定義されている通りである)の化合物とこれらの単一の鏡像異性体、
−式(V)
【0290】
【化97】

【0291】
(ここで、Bはこの明細書で定義されている通りであり、そしてR’は置換基
【0292】
【化98】

【0293】
(ここで、R、RおよびRは同一であるか、あるいは異なり、そしてC〜Cアルキル、C〜C10アリールまたはC〜C16アラルキルを独立に表す)を表す)の化合物とこれらの単一の鏡像異性体、
−式(IV)
【0294】
【化99】

【0295】
(ここで、BおよびR’はこの明細書で定義されている通りである)
の化合物とこれらの単一の鏡像異性体、
−式(IIIa)あるいは(IIIb)
【0296】
【化100】

【0297】
(ここで、BおよびR’はこの明細書で定義されている通りである)
の化合物とこれらの単一の鏡像異性体、
式(IIa)あるいは(IIb)
【0298】
【化101】

【0299】
(B、R’およびR”はこの明細書で定義されている通りである)
の化合物とこれらの単一の鏡像異性体、単一の鏡像異性体および混合物、
−式(XI)
【0300】
【化102】

【0301】
(B、R’はこの明細書で定義されている通りである)
の化合物とこれらの単一の鏡像異性体、
−式(XII)
【0302】
【化103】

【0303】
(B、R’はこの明細書で定義されている通りである)
の化合物とこれらの単一の鏡像異性体、
−式(XIII)
【0304】
【化104】

【0305】
(Aは非置換C〜C10アリールを表し、Bはこの明細書で定義されている通りである)
の化合物とこれらの単一の鏡像異性体、
−式(XIV)
【0306】
【化105】

【0307】
(Aは非置換C〜C10アリールを表し、Bはこの明細書で定義されている通りである)
の化合物とこれらの単一の鏡像異性体。
【0308】
好ましくは、この明細書中の構造のいずれにおいても、基Aはフェニルを表す。
【0309】
本発明の好ましい実施形態によれば、式(VII)、(VI)、(VI−A)、(V)、(IV)、(IIIa)、(IIIb)、(IIa)、(IIb)、(XI)、(XII)、(XIII)および(XIV)の化合物は単一の鏡像異性体である(すなわち、側鎖の波線はくさび形または破線くさび形の単結合を表す)。
【0310】
式(VIII)、(VII)、(VI)、(VI−A)、(V)、(IV)、(IIIa)、(IIIb)、(IIa)、(IIb)、(X)、(XI)、(XII)および(XIV)の中間体においては、基Bは
【0311】
【化106】

【0312】
から選択される。
【0313】
好ましくは、式(V)、(IV)、(IIIa)、(IIIb)、(IIa)、(IIb)、(XI)および(XII)の中間体に対しては、実線と破線は単結合を表し、そしてBは−CHCHPhを表す。
【0314】
式(V)、(IV)、(IIIa)、(IIIb)、(IIa)、(IIb)、(XI)および(XII)の中間体であって、実線と破線が二重結合を表し、そしてBは
【0315】
【化107】

【0316】
からなる群から選択される置換基を表すものが更に好ましい。
【0317】
式(V)、(IV)、(IIIa)、(IIIb)、(IIa)、(IIb)、(XI)および(XII)の中間体においては、基R’は好ましくは
【0318】
【化108】

【0319】
である。
【0320】
式(XII)、(IIa)、(IIb)および(I−B)の化合物においては、基R”は好ましくはイソプロピルを表す。
【0321】
本発明は、ラタノプロストの製造において上記に定義したようないかなる新規な中間体の使用も更に提供し、そしてクロプロステノール、コプロセノール、PGF2α、トラボプロスト、またはPGF(好ましくはPGF2α)類縁体の製造において上記に定義したようないかなる新規な中間体の使用も更に提供する。
【0322】
本発明は、また、式
【0323】
【化109】

【0324】
(ここで、基XはF、Cl、BrまたはIを表し、そしてPG−A、PG−B、PG−CPG−DまたはPGFベースのプラスタグランジンまたはプラスタグランジン類縁体などのプラスタグランジンまたはプラスタグランジン類縁体の合成において中間体のヒドロキシル基を保護するためにR、RおよびR前記に定義した通りである)のシリル化試剤の使用も提供する。これらのシリル化剤の使用は、ラタノプロスト、クロプロステノール、フルプロステノールおよびトラボプロストを含むPGF2αをベースとするプラスタグランジンPGF2αまたはプラスタグランジン類縁体の合成において特に好適である。これらの内、ラタノプロストが特に好ましい。
【0325】
好ましいR、RおよびRはメチル、エチルおよびt−ブチルである。特に好ましいシリル化試剤は塩化トリエチルシリルである。
【0326】
上記の方法と段階はPGF2αとこの類縁体を参照しているが、当業者ならばシクロペンチル環上の官能基を変成するために、1つ以上の追加の反応段階をもうけることによりこの方法と段階を、例えば
【0327】
【化110】

【0328】
の他のプラスタグランジン類縁体合成にもうまく適用することができること、−例えば、PGF誘導体中のシクロペンチル環ヒドロキシル基の酸化は、結果としてPGDまたはPGE類縁体のいずれかを生じることができることを理解するであろう。
【0329】
この明細書で使用されるように、シクロペンタン環に付いた斜め線は環の面の下にある結合(すなわち、アルファ立体配置の結合)を示す。シクロペンタン環に付いた塗りつぶしたくさびは環の面の上にある結合(すなわち、ベータ立体配置の結合)を示す。波線、すなわち
【0330】
【化111】

【0331】
はアルファ、あるいはベータのいずれかの立体配置の結合を表し、そして単一の鏡像異性体、すなわち
【0332】
【化112】

【0333】
またはラセミ混合物を含むこれらの混合物を包含することを理解されたい。このように、
【0334】
【化113】

【0335】
【化114】

【0336】
【化115】

【0337】
を包含する。
【0338】
上記の各々の式中の単一の破線は任意の二重結合を表すことができる。このように、「−−」は単結合または二重結合のいずれかを表す。
【0339】
ラタノプロスト中の主要不純物は、本発明の方法により製造される場合、
−ラタノプロストの15(S)−シス異性体
【0340】
【化116】

【0341】
−ラタノプロストの15(S)−トランス異性体
【0342】
【化117】

【0343】
−およびラタノプロストの15(R)−トランス異性体
【0344】
【化118】

【0345】
を包含することが判明した。
【0346】
特に、ラタノプロストの異性体は、ラタノプロストに類似の物理的および化学的性質を有するために除去することが特に困難であることが判明した。
【0347】
本発明者は、キラルカラム付きのHPLC精製系を用いてラタノプロストの15(S)−シス−、15(S)−トランス−および15(R)−トランス異性体からラタノプロストの分離を得ることが可能であることを見出した。しかしながら、キラルカラムは高価であり、大規模分離には実用的でない。
【0348】
ラタノプロストのHPLC精製において非キラルカラムと特に溶離液混合物を使用することによりこの問題は解決された。従って、本発明は、炭化水素とアルコールと場合によってはアセトニトリルを含む混合物を溶離液として含むHPLCによりラタノプロストを精製する方法を更に提供する。
【0349】
このような溶離液の組み合わせの使用は、本発明の方法により製造されるラタノプロストを精製する特に好ましい方法である。上記の溶離液混合物は極めて高い純度のラタノプロストを実現させることができることが判明した。
【0350】
好ましくは、この溶離液は炭化水素、アルコールおよびアセトニトリルを含む。有利なことには、ラタノプロストのHPLC精製においてアセトニトリルを溶離液の成分として使用することは、結果として不純物の分離を改善させることを見出した。特に、アセトニトリルを上記混合物溶離液の成分として使用することは、結果として分離するのがそれまで困難なラタノプロストの15(S)−トランス異性体の分離を改善させることを見出した。特に、15(S)−トランス異性体はラタノプロストと共溶離しないこと、すなわち15(S)−トランス異性体のラタノプロストのベースライン分離を得ることができることが判明した。結果として、先行技術の方法に比較して上記溶離液系を用いて高収率の高純度ラタノプロストが得られることもある。
【0351】
特に、本発明の精製方法における溶離液系は、炭化水素を80−99容量パーセントの量範囲で、そしてアルコールを1−20容量パーセントの量範囲で含む。好ましくは、この溶離液は、炭化水素を85−99容量パーセントの量範囲で、そしてアルコールを1−15容量パーセントの量範囲で含む。炭化水素を88−98容量パーセントの量範囲で、そしてアルコールを2−12容量パーセントの量範囲で含む溶離液が更に好ましい。
【0352】
本発明の精製方法の好ましいアセトニトリル含有溶離液系においては、この溶離液は、炭化水素を85−99容量パーセントの量範囲で、アルコールを0.5−10容量パーセントの量で、そしてアセトニトリルを0.5−5容量パーセントの量で含む。炭化水素を86−98容量パーセントの量範囲で、アルコールを1−8容量パーセントの量で、およびアセトニトリルを1−6容量パーセントの量で含む溶離液が好ましい。炭化水素を90−96容量パーセントの量範囲で、アルコールを2−6容量パーセントの量で、およびアセトニトリルを2−4容量パーセントの量で含む溶離液が特に好ましい。
【0353】
上記の溶離液系においては、この炭化水素はC〜Cの直鎖、分枝状あるいは環状の炭化水素であり、ここでこの炭化水素は好ましくはn−アルカンであるのが好ましい。ヘキサンとヘプタンが特に好ましい。この溶離液で使用される炭化水素はヘキサン区分などの例えばアルカンの混合物を含んでもよい。良好な結果はn−ヘプタンにより得られることが判明した。
【0354】
上記の溶離液系中の好ましいアルコールは、C〜Cの直鎖、分枝状あるいは環状のアルカノールであり、C〜Cの直鎖あるいは分枝状のアルカノールが特に好ましい。これらの内、メタノール、エタノール、プロパン−1−オル、プロパン−2−オル、ブタン−1−オルまたはブタン−2−オルが特に有用である。良好な結果は、アルコール成分としてプロパン−2−オル(イソプロパノール)により得られた。アルコール成分としてエタノールを使用することも良好な分離をもたらした。この溶離液のアルコール成分は、1つ以上のアルカノールの混合物を包含することができ、例えば、イソプロパノール、エタノールおよびメタノールの2つ以上の組み合わせを使用してもよく、例えば1:1〜3:1の比の混合物がうまく使用されている。
【0355】
好ましい溶離液系は、n−ヘプタン:イソプロパノール:アセトニトリルを含む。n−ヘプタン:イソプロパノール:アセトニトリルの好ましい容量パーセント範囲は、90−96%:2−7%:2−5%である。好ましくは、n−ヘプタン:イソプロパノールアセトニトリルの比は、92−94%:3−5%:2−4%の範囲内である。良好な結果は93%:4%:3%の比により得られた。
【0356】
上記のHPLC法は好ましくはシリカゲルカラムにより行われる。好適なカラムの例は、Waters(登録商標)Spherisorb、PhenomeneX(登録商標)Luna CyanoおよびPhenomeneX(登録商標)Luna Silicaを包含する。
【0357】
上記の分離法を使用することにより、15(S)−シス異性体、15(S)−トランス異性体および15(R)−トランス異性体を実質的に含まないラタノプロストを製造することが可能であることが判明した。特に、いかなる組み合わせでも合計で0.3%未満の15(S)−シス異性体、15(S)−トランス異性体および15(R)−トランス異性体を含有するラタノプロストが製造される。本発明の方法を用いて、各々0.1%未満の15(S)−シス−、15(S)−トランス−および15(R)トランス異性体を含有するラタノプロストを製造することができる。
【0358】
このようにして、上記の方法によれば、例えば、98%以上の純度の、99%以上の純度の、99.5%以上の純度の極めて高い純度を有するラタノプロストを得ることが可能になる。実際、99.8%以上のラタノプロスト純度を得ることが可能であることが判明した。
【0359】
次の略号を使用した。
HPLC=高圧液体クロマトグラフィ
MPLC=中圧液体クロマトグラフィ
L−Selectride=リチウムトリ−s−ブチルボロハイドライド
DMS=ジメチルスルフィド
DIBAL−H=ジ−イソ−ブチルアルミニウムハイドライド
PPB=パラ−フェニルベンゾイル
DBU=[1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセ−7−エン]
nBuLi=n−ブチルリチウム
TEMPO、フリーラジカル=2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、フリーラジカル
EtOAc=酢酸エチル
DMF=ジメチルホルムアミド
TsOH=パラ−トルエンスルホン酸
KOtBu=カリウムt−ブトキシド
ベンゾイルコレイラクトン=
【0360】
【化119】

【0361】
この明細書で使用されるように、用語「アルキル」はC〜Cの直鎖あるいは分枝状の炭素鎖を指す。本発明の化合物と方法に特に好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、および3級ブチルを包含する。
【0362】
用語「アリール」は、6〜15個の炭素原子を含有し、少なくとも1つの芳香族環を有する炭素環状基を表す。本発明の化合物と方法のいずれにも特に好ましいアリール基はフェニルとナフチルを包含する。
【0363】
用語「アラルキル」は、1つ以上の水素原子(好ましくは1つ)が上記に定義したような非置換C〜C10アリール基により置換された上記に定義したようなアルキル基を指す。本発明の化合物と方法に好ましいアラルキル基はベンジルである。
【0364】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを指す。
【0365】
特定の不純物を「実質的に含まない」という用語は、1%未満の、好ましくは0.5%未満の、更に好ましくは0.3%未満の、そして一層更に好ましくは0.1%未満の不純物を指す。
【0366】
次の実施例は本発明によるラタノプロストの製造を例示する。
【実施例】
【0367】
溶媒(クロマトグラフィグレード)を使用に先立って3Aモレキュラーシーブ上で乾燥した。純水をLoveridgeから入手した。この反応で得られた生成物をアルゴン下で密封し、低温の部屋中4℃で必要とするまで貯蔵した。カラムクロマトグラフィをMerckシリカゲル60で行った。
【0368】
用心として、表記した場合には、反応をアルゴン下で行った。反応の進行を薄層クロマトグラフィによりモニターした。特記しない限り、最終生成物を約0.01kPaの圧力の高真空下で乾燥した。
【0369】
[実施例1] (1S, 5R,6R,7R)−7−ベンゾイルオキシ−6−ホルミル−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン(PGX−5)の製造
【0370】
【化120】

【0371】
KBr(11.9g)を純水に溶解し、次に追加の水により200mlまで希釈することにより、臭化カリウムの0.5M溶液を製造した。
【0372】
2.1M次亜塩素酸ナトリウム溶液(476ml,1M)を純水の添加により1Lまで希釈して、1M溶液を得た。次に、攪拌と共に固体重炭酸ナトリウムを添加することによりpHを8.83まで調整した。
【0373】
(−)−ベンジルコレイラクトン(PGX−4)(200g,0.724M,1等量)を不活性雰囲気下でジクロロメタン(2L)に溶解し、そして2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)フリーラジカル(1.13g,7.24ミリモル,0.01等量)と上記で作製した臭化カリウム水溶液を添加した。この混合物を攪拌しながらほぼ0℃まで冷却し、上記で作製した次亜塩素酸ナトリウム水溶液の一部(100ml)をこの温度で添加した。この反応物を10℃まで温め、そして更なる量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(896ml)を10−15℃で40分かけて添加した。20分間攪拌した後、反応は完結していることがTLCにより示された。この層を分離し、水相をジクロロメタン(200ml)により抽出し、そして次に合わせた有機相を水(200ml)により洗浄し、その後硫酸マグネシウム上で乾燥した。濾過し、このフィルターケーキをジクロロメタン(2×200ml)により洗浄することによって、(1S,5R,6R,7R)−7−ベンゾイルオキシ−6−ホルミル−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン(PGX−5)をジクロロメタン中の溶液として得た。
【0374】
[実施例2] ジメチル(2−オキソ−4−フェニルブチル)−ホスホネート(PGX−3)の製造
【0375】
【化121】

【0376】
ジメチルメチルホスホネート(PGX−1)(346.2g,2.79M,1.95等量)をテトラヒドロフラン(2.4L)に溶解し、そして得られた溶液を不活性雰囲気下で−70℃まで冷却した。温度を−65℃以下に維持しながら、n−ブチルリチウム(テトラヒドロフラン中2.5M,1.0L,2.5M,1.75等量)を105分かけて添加した。得られた白色懸濁液をほぼ−70℃で20分間攪拌した。次に、温度を−65℃以下に維持しながら、テトラヒドロフラン(400ml)中のメチル3−フェニルプロピオネート(PGX−2)(234.8g,1.43M,1.0等量)の溶液を30分かけて添加した。反応がTLCにより完結するまで、この混合物をほぼ−70℃で2.5時間攪拌のままにした。ほぼ0℃まで温めた後、水(800ml)を添加することにより、この反応をクエンチした。t−ブチルメチルエーテル(1.0モル)を添加し、この混合物を分離した。有機相を水(5×500ml)により抽出し、そして10%塩酸(約110ml)を添加することにより、合わせた水相をpHまで酸性とした。この生成物をt−ブチルメチルエーテル(2×800ml、次に5×500ml)の中に抽出し、そして合わせた有機物を硫酸マグネシウム上で乾燥した。濾過し、このフィルターケーキをt−ブチルメチルエーテル(400ml)により洗浄し、そして蒸発せせることによって、粗生成物をオイル(240.4g)として得た。減圧下で蒸留(8×10−5−1×10−4トールでbp152−156℃)することによって、ジメチル(2−オキソ−4−フェニルブチル)ホスホネートを殆ど無色のオイル(214.1g,58%)として得た。
【0377】
[実施例3] (1S,5R,6R,7R)−7−ベンゾイルオキシ−6−[3−オキソ−5−フェニル−(E)−1−ペンテニル]−2−オキサビシクロ(3.3.0)オクタン−3−オン(PGX−6)の製造
【0378】
【化122】

【0379】
ホスホネートエステル(PGX−3)(176.2g,0.69M,0.95等量)を不活性雰囲気中で乾燥アセトニトリル(1.8L)に溶解し、塩化リチウム(153.4g,3.62M,5.0等量)を添加した。この混合物をほぼ−15℃まで冷却し、そして温度を維持しながら、乾燥ジイソプロピルエチルアミン(178.1g,1.38M,1.9等量)を10分かけて添加した。約100分間攪拌した後、温度を約−15℃に維持しながら、乾燥ジクロロメタン中のこのアルデヒド(PGX−5)の溶液(実施例1からの)(推定0.72M,1.0等量)を20分かけて添加した。次に、TLCが反応は完結していることを示すまで、この反応物を室温まで温めた。水(200ml)を添加し、そしてこの混合物を真空で蒸発させて、大部分のアセトニトリルを除去した。この残存スラリーを水(2.0L)と酢酸エチル(2.0L)の間で分配した。この有機相を分別し、そして水層を酢酸エチル(2×500ml)により抽出した。合わせた有機層を飽和塩水(2×1L)により洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。濾過後、溶媒を約540gの残存重量まで蒸発除去し、次に、ヘキサン(1L)をこの残渣に添加した。攪拌しながら4℃まで90分間冷却した後、固体を濾別し、ヘキサン:酢酸エチル4:1(2×200ml)により洗浄し、そして真空中室温で乾燥して、(1S,5R,6R,7R)−7−ベンゾイルオキシ−6−[3−オキソ−5−フェニル−(E)−1−ペンテニル)−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オンを白色固体として(225.8g,77%)として得た。
【0380】
[実施例4] (R)−テトラヒドロ−1−メチル−3,3−ジフェニル−1H,3H−ピロロ[1,2−c][1,3,2]オキサザボロール(コレイ触媒)の製造
【0381】
【化123】

【0382】
(R)−(+)1,1−ジフェニルプロリノール(15.20g,60.0ミリモル)を不活性雰囲気下でトルエン(600ml)に溶解し、そしてトリメチルボロキシン(7:57g,60.3ミリモル,1.0等量)を添加した。この混合物を還流まで加熱し、そしてこのトルエンのほぼ半分をディーン−スタルクトラップから溜去した。更なるトルエン(350ml)を添加し、そして合計710mlの蒸留物を捕集するまで、ディーン−スタルクトラップから溜去した。次に、この反応混合物を室温まで冷却して、(R)−テトラヒドロ−1−メチル−3,3−ジフェニル−1H,3H−ピロロ[1,2−c][1,3,2]オキサザボロールをトルエン中の0.25M溶液として得た。
【0383】
[実施例5] (1S,5R,6R,7R)−7−ベンゾイルオキシ−6−(3(S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−l(E)−ペンテニル]−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン(PGX−7)の製造
【0384】
【化124】

【0385】
PGX−6(225.1g,0.556M)を不活性雰囲気中乾燥テトラヒドロフラン(3.5L)に溶解し、そして実施例4により製造したコレイ触媒(トルエン中0.25M,223ml,0.1等量)を添加した。この混合物をほぼ−15℃まで冷却し、そして温度を約−15℃に維持しながら、乾燥テトラヒドロフラン(450ml)中のボラン−メチルスルフィド錯体(10MBH濃度,41.7ml,417ミリモル,0.75等量)の溶液を添加した。次に、反応は完結していることがTLCにより示されるまで、この混合物をこの温度で2時間攪拌した。メタノール(200ml)を30分かけて添加し、この混合物をほぼ0℃まで温め、その後10%塩酸水溶液(1.2L)により酸性とした。酢酸エチル(2.4L)を添加し、この層を分離させた。この水相を酢酸エチル(1×0.8L,1×0.4L)により抽出し、そして合わせた有機相を水(1×1.6L,3×0.8L)、次に塩水(1L)により洗浄した。硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させることによって、粗生成物(所望の3(S)−異性体、PGX−7、および所望でない3(R)−異性体PGX−8の混合物を含有する)をオイル(242.7g)として得た。これをジクロロメタン:酢酸エチル2:1(720ml)に溶解し、ジクロロメタン:酢酸エチル2:1により溶離するシリカゲル60(12.8Kg)によりクロマトグラフにかけた。PGX−7とPGX−8の混合物を含有する低純度の区分を蒸発させ、同一条件下で再クロマトグラフした。PGX−8を含まない区分(TLCによる)を合わせ、蒸発させた。真空中室温で乾燥することによって、所望の生成物(1S,5R,6R,7R)−7−ベンゾイルオキシ−6−[3(S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−[(E)ペンテニル]−2−オキサ−ビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オンを白色固体(167.9g,74.2%)として得た。
【0386】
[実施例5a] (1S,5R,6R,7R)−7−ベンゾイルオキシ−6−[3(S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−l(E)−ペンテニル]−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン(PGX7)の製造
【0387】
【化125】

【0388】
PGX6(345.2g,0.779M)を不活性雰囲気中乾燥テトラヒドロフラン(5.7L)に溶解し、そして「コレイ触媒」(トルエン中0.25M,312ml,0.1等量)を添加した。この混合物をほぼ−15℃まで冷却し、そして温度を約−15℃に維持しながら、乾燥テトラヒドロフラン(630ml)中のボラン−メチルスルフィド錯体(10MBH濃度,58.5ml,0.585M,0.75等量)の溶液を添加した。次に、反応は完結していることがTLCにより示されるまで、この混合物をこの温度で2時間攪拌した。メタノール(290ml)を30分かけて添加し、この混合物をほぼ0℃まで温め、その後10%塩酸水溶液(1.7L)により酸性とした。酢酸エチル(3L)を添加し、この層を分離させた。この水相を酢酸エチル(1×1.1L,1×0.55L)により抽出し、そして合わせた有機相を水(1×2L,3×1L)、次に塩水(1.5L)により洗浄した。硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させることによって、粗生成物(PGX7と所望でない異性体PGX8の混合物を含有する)をオイル(349.3g)として得た。このオイルを実施例5bに示す方法により精製した。
【0389】
注記
シリカゲルカラムでジクロロメタン:酢酸エチルの2:1混合物を中圧クロマトグラフィ(MPLC)用の溶離液として使用する実施例5で述べたクロマトグラフ法は、各分離後カラムを再充填しなければならず、その後、エピマー生成物混合物の以降の分取液を処理することができるという難点を持っている。このように、このような方法は大量の固定相と溶離液を使用し、合わせて時間がかかる。改善された方法を下記に(実施例5b)示す。
【0390】
[実施例5b] (1S,5R,6R,7R)−7−ベンゾイルオキシ−6−[3(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−l(E)ペンテニル)−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン(PGX−8)からの(1S,5R,6R,7R)−7−ベンゾイルオキシ−6−[3(S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−l(E)−ペンテニル]−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン(PGX−7)の分離
改善された方法によれば、実施例5aで述べた合成法により製造したエピマーPGX−7/PGX−8(686.5g)の粗混合物をヘプタン区分/酢酸エチル(7:3)から結晶化して、他の不純物を含まないエピマーPGX−7およびPGX−8の結晶性混合物(480.4g)を得た。この結晶化の濾液を蒸発させて、主として低純度PGX−7/PGX−8を含むオイル(150.3g)を得た。
【0391】
結晶性混合物をジクロロメタン:酢酸エチル(2:1)混合物に溶解して、ストック溶液(A)を得た。蒸発させた低純度PGX−7/PGX−B混合物をジクロロメタン:酢酸エチル(2:1)混合物に溶解して、第2のストック溶液(B)を得た。次に、次のプロトコルによるストック溶液の分取液の順次注入により、異性体PGX−7をシリカゲルカラムの中圧クロマトグラフィ(MPLC)によりPGX−8から分離した。
【0392】
注入1:結晶性PGX−7/PGX−8ストック溶液(A)の分取液を注入し、高純度PGX−7と低純度PGX−7を含有する適切な区分を捕集する。次に、このカラムを溶離液により掃液して、いかなる残存PGX−8も溶離する。
【0393】
注入2:結晶性PGX−7/PGX−8ストック溶液(A)の分取液を注入し、そして高純度PGX−7と低純度PGX−7を含有する適切な区分を捕集する。カラムをメタノールにより掃液し、次にカラムを溶離液により平衡させた。
【0394】
注入3:低純度PGX−7/PGX−8ストック溶液(B)の分取液を注入し、そして高純度PGX−7と低純度PGX−7を含有する適切な区分と低純度PGX−8を捕集する。シリカゲルを捨て、そしてカラムをシリカゲルにより再充填し、そしてサイクルを繰り返す。
【0395】
上記の戦略はPGX−7の処理能力をかなり増加させ、そして各注入後のカラムを再充填する必要性を回避する。
【0396】
低純度PGX−7を含有するカラム区分を再循環して、カラムの再充填の前にカラム当りの3回以上の注入を行うことができることを除いて、上記プロトコルを用いて更に高純度のPGX−7を得る。
【0397】
PGX−8を含まない区分(TLCによる)を合わせ、蒸発させた。真空中室温で乾燥することによって、(1S,5R,6R,7R)−7−ベンゾイルオキシ−6−[3(S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1(E)−ペンテニル]−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン(PGX−7)を白色固体(445.2g)として得た。
【0398】
[実施例6] (1S,5R,6R,7R)−7−ヒドロキシ−6−[3(S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−l(E)−ペンテニル]−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン(PGX−9)の製造
【0399】
【化126】

【0400】
PGX−7(152.0g,0.374M,1.0等量)を不活性雰囲気下で乾燥メタノール(2.28L)に溶解し、そして炭酸カリウム(31.0g,0.224M,0.6等量)を一括で添加した。次に、TLCが反応は完結していることを示すまで、この混合物を室温で3時間攪拌した。5M塩酸(65.5ml)を添加して、溶液の見掛けのpHを約6.8−7.0まで調整し、そして次に混合物を真空中で乾燥するまで蒸発させた。この粘着性の残渣を水(1.5L)により処理し、そして1M塩酸(7ml)を添加することによりpHを6.8−7.0に調整した。ヘプタン(0.45L)を添加し、この混合物を激しくかきまぜ、そして沈澱した固体を濾別し、そしてフィルター上でヘプタン(2×150ml)により洗浄した。次に、この固体を更なる量のヘプタン(2×150ml)により粉砕した。ヘプタン洗浄液を全部合わせ、元の濾液に添加した。水相を分別し、ヘプタン(2×150ml)により洗浄し、そして次に酢酸エチル(1×450ml,3×150ml)により抽出した。前に単離した固体を合わせた酢酸エチル抽出物に添加し、そしてこの混合物を溶液を形成するまで、振盪した。これを飽和塩水(2×250ml)により洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。濾過し、真空中で蒸発させることによって、(1S,5R,6R,7R)−7−ヒドロキシ−6−[3(S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−l(E)−ペンテニル]−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オンを淡黄色オイル(112.1g,99.1%)として得た。
【0401】
[実施例7] (1S,5R,6R,7R)−7−ヒドロキシ−6−[3(R)−(3−ヒドロキシ−5−フェニル)ペンチル]−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン(PGX−10)の製造
【0402】
【化127】

【0403】
PGX−9(111.5g,0.369M,1.0等量)をエタノール(1.67L)に溶解し、そしてカーボン上5%パラジウム(5:58g)を、続いて水(100ml)中の窒化ナトリウム(8.90g,0.129M,0.35等量)の溶液を添加した。次に、TLCにより完結していることが示されるまで、この混合物を5時間水素化した。1M塩酸(260ml)を添加し、この混合物を1時間攪拌した。この固体をセライトからの濾過により除去し、次に濾液を蒸発させて、オイル状固体残渣を得、これを酢酸エチル(0.45L)と水(0.45L)の間に分配した。この層を分離し、水層を酢酸エチル(2×0.33L)により抽出した。合わせた有機層を塩水(2×0.22L)により洗浄し、次に5%炭酸水素ナトリウムを含有する硫酸ナトリウム上で乾燥した。濾過し、蒸発させることによって、(1S,5R,6R,7R)−7−ヒドロキシ−6[3(R)−(3−ヒドロキシ−5−フェニル)ペンチル]−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オンを黄色のオイル(110.4g,98.4%)として得た。
【0404】
注記
HCl仕上げ時に生成物PGX−10が酸媒体中にある時間を低減させ、そして(1S,5R,6R,7R)−7−ヒドロキシ−6−[3(R)−(3−ヒドロキシ−5−フェニル)ペンチル]−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オンの側鎖ヒドロキシル基の酸触媒エピマー化の可能性を最少とすることが可能であることが判明した。
【0405】
このように、改変した方法においては、実施例7に述べたように実施例7に述べた反応の完結時に、1M塩酸を添加し、そしてこの反応混合物を60分間攪拌した。使用済触媒を濾過し、濾液を乾燥まで蒸発すのに先立ち、固体炭酸水素ナトリウムの添加によりこの混合物のpHを5と6の間に調整した。次に、生成物を酢酸エチルの中に抽出することにより、仕上げを実施例7に述べるように完結させる。次の実施例7aは改善した方法を例示する。
【0406】
[実施例7a] (1S,5R,6R,7R)−7−ヒドロキシ−6−[3(R)−(3−ヒドロキシ−5−フェニル)ペンチル]−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン(PGX10)の製造
【0407】
【化128】

【0408】
PGX9(326.5g,1.08M,1.0等量)をエタノール(6.5L)に溶解し、そしてカーボン上の5%パラジウム(16.3g)、続いて水(200ml)中の窒化ナトリウム(26g,0.377M,0.35等量)の溶液を添加した。次に、TLCにより完結していることが示されるまで、この混合物を1.5時間水素化した。1M塩酸(750ml)を添加し、この混合物を1時間攪拌した。固体炭酸水素ナトリウム(55g)の添加によりpHを5−6の間に調整した。この固体をセライトからの濾過により除去し、次に濾液を蒸発させて、オイル状固体残渣を得、これを酢酸エチル(1.3L)と水(1.3L)の間に分配した。合わせた有機層を塩水(2×0.65L)により洗浄し、次に硫酸ナトリウム上で乾燥した。濾過し、蒸発させることによって、(1S,5R,6R,7R)7−ヒドロキシ−6−[3(R)−(3−ヒドロキシ−5−フェニル)フェニル]−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オンを黄色のオイル(311.5g,94.8%)として得た。
【0409】
[実施例8] (1S,5R,6R,7R)−6−[3(R)−(5−フェニル−3−トリエチルシリルオキシ)ペンチル]−7−トリエチルシリルオキシ−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オン(PGX−11)の製造
【0410】
【化129】

【0411】
PGX−10(109.7g,0.360M,1.0等量)を不活性雰囲気下で乾燥ジメチルホルムアミド(720ml)に溶解した。イミダゾール(29.4g,0.432M,1.2等量)とトリエチルアミン(102.9ml,74.69g,0.738M,2.05等量)を添加し、次にこの混合物をほぼ0℃まで冷却した。トリエチルクロロシラン(111.2g,0.738M,2.05等量)を10℃未満で15分かけて添加した。次に、TLCが反応が完結していることを示すまで、この混合物を室温まで温めた。10℃まで再冷却した後、ヘキサン(0.55L)と水(1L)を添加し、そしてこの層を分離した。この水相をヘキサン(1×0.2L,1×0.1L)により抽出し、そして次に合わせた有機層を水(2×0.5L)と塩水(2×0.5L)により洗浄した。硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させることによって、(1S,5R,6R,7R)−6−[3(R)−(5−フェニル−3−トリエチルシリルオキシ)ペンチル]−7−トリエチルシリルオキシ−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オンを黄色オイル(187.4g,97.6%)として得た。
【0412】
[実施例9] (1S,3RS,5R,6R,7R)−6−[3(R)−(5−フェニル−3トリエチルシリルオキシ)ペンチル)−7−トリエチルシリルオキシ−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オール(PGX−12)の製造
【0413】
【化130】

【0414】
PGX−11(186.8g,0.3505M,1.0等量)を不活性雰囲気下で乾燥テトラヒドロフラン(1.86L)に溶解し、そしてこの溶液を−70℃未満まで冷却した。温度を−70℃以下に維持しながら、ジイソブチルアルミニウムハイドライド(トルエン溶液中1.1M,701ml,0.7711M,2.2等量)をこの反応物に添加した。次に、反応がTLCにより完結していることを示すまで、この混合物をこの温度で2時間攪拌した。メタノール(132ml)を添加し、そしてこの混合物を−5℃まで温め、その後水(2L)を添加し、続いて2M硫酸水素ナトリウム水溶液(1.54L,8.8等量)によりpH3まで酸性とした。酢酸エチル(0.66L)を添加し、そしてこの層を分離させた。この水相を酢酸エチル(1×0.26L,1×0.13L)により抽出し、そして次に合わせた有機層を水(2×1.3L)と塩水(2×1.3L)により洗浄した。硫酸マグネシウム上で乾燥し、真空中で蒸発させることによって、(1S,3RS,5R,6R,7R)−6−[3(R)−(5−フェニル−3−トリエチルシリルオキシ)ペンチル]−7−トリエチルシリルオキシ−2−オキサビシクロ[3.3.0]オクタン−3−オールを殆ど無色のオイル(182.5g)として得た。
【0415】
[実施例10] (Z)−7−{(1R,2R,3R,5S)−5−ヒドロキシ−2−[3(R)−(5−フェニル−3−トリエチルシリルオキシ)ペンチル−3−(トリエチルシリルオキシ)シクロペンチル}−5−ヘプテン酸(PGX−13)及び(Z)−7−{(1R,2R,3R,5S)−3−ヒドロキシ−2−[3(R)(5−フェニル−3−トリエチル−シリルオキシ)ペンチル]−5−(トリエチルシリルオキシ)シクロペンチル}−5−ヘプテン酸(PGX−14)の製造
【0416】
【化131】

【0417】
(4−カルボキシブチル)−トリフェニルホスホニウムブロミド(459.0g,1.0353M,3.0等量)を不活性雰囲気下乾燥テトラヒドロフラン(1.84L)に懸濁し、この混合物を0℃まで冷却した。次に、テトラヒドロフラン溶液中の1.07Mカリウムt−ブトキシド(1.806L,1.93M,5.6等量)を0℃で60分かけて添加した。添加を完結した後、この反応物をほぼ20℃まで温め、そして1時間攪拌し、その後0℃まで再冷却した。次に、テトラヒドロフラン(0.27L)中のPGX−12(184.6g,0.3451M,1.0等量)の溶液をこの温度で添加した。この混合物を室温まで温め、そしてTLCが反応は完結したことを示すまで75分間攪拌した。0℃まで再冷却した後、水(3L)を添加することにより、この混合物をクエンチし、そして次に5%クエン酸水溶液(1.6L)によりpH5まで酸性とした。この生成物を酢酸エチル(1×1.0L,2×0.4L)の中に抽出し、そして次に合わせた有機層を塩水(2×0.7L)により洗浄した。硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させることによって、(Z)7−{(1R,2R,3R,5S)−5−ヒドロキシ−2−[3(R)−(5−フェニル−3−トリエチルシリルオキシ)ペンチル]−3(トリエチルシリルオキシ)シクロ−ペンチル}−5−ヘプテン酸と(Z)−7−{(1R,2R,3R,5S)−3−ヒドロキシ−2−13(R)−(5−フェニル−3−トリエチル−シリルオキシ)ペンチル−5−(トリエチルシリルオキシ)シクロペンチル}−5−ヘプテン酸の混合物を黄色のオイル(461.7g)として得た。トリフェニルホスフィンオキシド副生成物を含有するこの粗生成物をこの合成の次の段階において精製せずに使用した。
【0418】
注記
上記の反応で使用した(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドの量は、使用した出発材料PGX−12の量に対して3.0等量である。このイリドとこのカルボキシレート塩を生成するために、これを5.6等量のカリウムt−ブトキシドにより処理する。(4カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(必要量2.0等量;使用量1.87等量)に対して使用されるカリウムt−ブトキシドの量の若干の不足は計画的であり、このカリウムt−ブトキシドのすべてを消費し、これがラクトールとの反応時に存在しないことを確実にする。
【0419】
しかしながら、本発明者は、ラクトール出発材料PGX−12の量に対して2.15等量の(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドと4.0等量のカリウムt−ブトキシドを使用することができることを見出した。有利なことには、これはPGX−12のPGX−13/PGX−14への転換を良好にする。これを実施例10aに例示する。
【0420】
[実施例10a] (Z)−7−{(1R,2R,3R,5S)−5−ヒドロキシ−2−[3(R)−(5−フェニル−3−トリエチルシリルオキシ)ペンチル]−3−(トリエチルシリルオキシ)シクロペンチル}−5−ヘプテン酸(PGX−13)及び(Z)−7−{(1R,2R,3R,5S)−3−ヒドロキシ−2−[3(R)−(5−フェニル−3−トリエチル−シリルオキシ)ペンチル]−5−(トリエチルシリルオキシ)シクロペンチル}−5−ヘプテン酸(PGX−14)の製造
【0421】
【化132】

【0422】
(4−カルボキシブチル)−トリフェニルホスホニウムブロミド(965.5g,2.18M,2.15等量)を不活性雰囲気下で乾燥テトラヒドロフラン(4.4L)に懸濁し、そしてこの混合物を0℃まで冷却した。次に、テトラヒドロフラン溶液中の0.98Mカリウムt−ブトキシド(4.135L,4.05M,4.0等量)を0℃で60分かけて添加した。添加を完結した後、この反応物をほぼ20℃まで温め、そして1時間攪拌し、その後0℃まで再冷却した。次に、テトラヒドロフラン(1L)中のPGX−12(542.3g,1.013M,1.0等量)の溶液をこの温度で添加した。この混合物を室温まで温め、そしてTLCが反応は完結したことを示すまで60分間攪拌した。0℃まで再冷却した後、水(8.6L)を添加することにより、この混合物をクエンチし、そして次に5%クエン酸水溶液(4.5L)によりpH5まで酸性とした。この生成物を酢酸エチル(1×3L,2×1.2L)の中に抽出し、そして合わせた有機層を塩水(2×2L)により洗浄した。硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発させることによって、(Z)−7−{(1R,2R,3R,5S)5−ヒドロキシ−2−[3(R)−(5−フェニル−3−トリエチルシリルオキシ)ペンチル]−3−(トリエチルシリルオキシ)シクロペンチル}−5−ヘプテン酸と(Z)−7−{(1R,2R,3R,5S)−3−ヒドロキシ−2−[3(R)−(5−フェニル−3−トリエチル−シリルオキシ)ペンチル]−5−(トリエチルシリルオキシ)シクロ−ペンチル}−5−ヘプテン酸の混合物を黄色のオイル(1095.6g)として得た。トリフェニルホスフィンオキシド副生成物を含有するこの粗生成物をこの合成の次の段階において精製せずに使用した。
【0423】
[実施例11] イソプロピル(Z)−7−{(1R,2R,3R,5S)−5−ヒドロキシ−2−[3(R)−(5−フェニル−3−トリエチルシリルオキシ)ペンチル]−3−(トリエチルシリルオキシ)−シクロペンチル}5−ヘプテノエート(PGX−15)及びイソプロピル(Z)−7−{(1R,2R,3R,5S)−3−ヒドロキシ−2−[3(R)−(5−フェニル−3−トリエチルシリルオキシ)ペンチル]−5−(トリエチルシリルオキシ)シクロペンチル}−5−ヘプテノエート(PGX−16)の製造
【0424】
【化133】

【0425】
このPGX−13/14混合物(461.1g,0.3446Mを含有すると推定,1.0等量)を不活性雰囲気下でアセトン(2.13L)に溶解し、そして乾燥1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)(290.1ml,1.94M,5.63等量)を室温で添加した。ほぼ15分間攪拌した後、2−ヨードプロパン(329.7g,1.94M,5.63等量)を添加し、そして次にこの混合物を室温で16時間攪拌した。TLCはこの反応が未完結であることを示した。更なる量のDBU(19.1ml,0.1275M,0.37等量)を添加し、20分後2−ヨードプロパン(21.7g,0.1275M,0.37等量)を添加した。室温で4.5時間攪拌した後、この反応はTLCにより完結したことが示された。このアセトン(約1.72L)の大部分を真空中で蒸発させ、そしてこの残渣を酢酸エチル(0.67L)と3%クエン酸水溶液(1.6L)の間で分配した。この有機層を分別し、そしてこの水層を更なる量の3%クエン酸水溶液(0.72L)によりpH6まで酸性とし、そして次に酢酸エチル(2×0.33L)により再抽出した。この合わせた有機相を3%クエン酸水溶液(2×0.8L)、5%炭酸水素ナトリウム溶液(2×0.8L)および飽和塩水(2×1.6L)により洗浄した。硫酸マグネシウム上で乾燥し、続けて濾過した後、この溶媒を蒸発除去し、そしてヘプタン(1.0L)と酢酸エチル(80ml)を残渣に添加した。この混合物を−20℃まで冷却し、激しく攪拌した。−20℃で30分後沈澱固体を濾別し、そしてフィルター上でヘプタン:酢酸エチル9:1(6×200ml)により洗浄した。濾液を真空中で蒸発させることによって、黄色のオイルを得た。ヘプタン(600ml)を添加し、そしてこの溶液を−20℃まで冷却した。30分後、沈澱を濾別し、そしてフィルター上でヘプタン(3×100ml)により洗浄した。この濾液を真空中で蒸発させて、イソプロピル(Z)−7−{(1R,2R,3R,5S)−5−ヒドロキシ−2−[3(R)−(5−フェニル−3−トリエチルシリルオキシ)ペンチル]−3−(トリ−エチルシリルオキシ)シクロペンチル}−5−ヘプテノエートとイソプロピル(Z)−7{(1R,2R,3R,5S)−3−ヒドロキシ−2−[3(R)−(5−フェニル−3−トリエチルシリルオキシ)ペンチル]−5−(トリエチルシリルオキシ)シクロ−ペンチル}−5−ヘプテノエートの混合物を黄色のオイル(238.4g)として得た。
【0426】
[実施例12] イソプロピル(Z)−7−{(1R,2R,3R,5S)−3,5−ビス(トリエチルシリルオキシ)−2−[(3(R)−(5−フェニル−3−トリエチルシリルオキシ)ペンチル]−シクロフェニル}−5−ヘプテノエート(PGX−17)の製造
【0427】
【化134】

【0428】
このPGX−15/16混合物(237.79g,0.344Mを含有すると推定)を不活性雰囲気下で乾燥ジメチルホルムアミド(700ml)に溶解した。イミダゾール(14.04g,0.206M,0.6等量)とトリエチルアミン(50.3ml,0.361M,1.05等量)を添加し、そしてこの混合物をほぼ0℃まで冷却した。トリエチルクロロシラン(60.6ml,54.4g,0.361M,1.05等量)を添加し、そしてこの混合物を室温まで温めた。反応はTLCにより完結したことが示されるまで、攪拌を2時間継続した。次に、この反応混合物をヘプタン(1.07L)と水(2.67L)の間に分配した。分離後、この水相をヘプタン(2×0.27L)により更に抽出した。この合わせた有機層を水(2×1.3L)と、次に飽和塩水(2×1.3L)により洗浄した。硫酸マグネシウム上で乾燥し、続いて濾過した後、この溶媒を真空中で蒸発させて、粗生成物(235.0g)を粘稠な黄色のオイルとして得た。これをヘプタン(90ml)に溶解し、そしてヘプタンと次にヘプタン:酢酸エチル95:5により溶離するシリカゲル(352.5g)のカラムクロマトグラフィにより精製した。関係する区分を合わせ、そしてこの溶媒を真空中で蒸発させて、イソプロピル(Z)−7−{(1R,2R,3R,5S)−3,5−ビス(トリエチルシリルオキシ)−2−[3(R)(5−フェニル−3−トリエチルシリルオキシ)ペンチル]シクロペンチル}−5−ヘプテノエートを淡黄色のオイル(210.5g)として得た。
【0429】
[実施例13] イソプロピル(Z)−7−{(1R,2R,3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−2−{(3(R)−(3−ヒドロキシ−5−フェニル)ペンチル]シクロペンチル}−5−ヘプテノエート(ラタノプロスト)の製造
【0430】
【化135】

【0431】
PGX−17(0.504g,0.65ミリモル)を磁気攪拌子を備えた50ml丸底フラスコの中に秤取した。アセトン(6.5ml)を添加し、そして得られた無色の溶液をアルゴンのゆっくりとした流れの下で室温で貯蔵した。
【0432】
水(0.9ml)中のピリジニウム−p−トルエンスルホネート(Aldrich,13mg)の溶液を製造し、この反応溶液に添加した。得られた白色の曇った懸濁液をアルゴンのゆっくりとした流れの下室温で貯蔵した。この混合物は約20分後に透明になり、無色の溶液を得た。3時間後のTLCは必要な生成物への転換を完結したことを示した。次に、攪拌を停止し、そしてこの反応混合物を減圧下で濃縮して、アセトンを除去した。この残渣を酢酸エチル(10ml)と飽和NaCl(15ml)の間に分配した。この有機相を分離し、そしてこの水層を更なる酢酸エチル(2×7.5ml)により抽出した。この合わせた有機抽出物を飽和NaCl(2×10ml)により洗浄し、MgSO(0.5g)上で乾燥し、そして減圧下で乾燥するまで蒸発させた。この粗生成物を無色のオイルとして得た。
【0433】
この粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィにより精製した。シリカゲル60(6g)と溶離液としてヘキサン区分/EtOAc(1:1)を使用して、フラッシュカラムを作製した。この粗生成物(7mgを保持試料として除去)をこの溶離液(2ml)に溶解し、そしてカラム上に装填した。次に、このカラムをヘキサン区分/EtOAc混合物により次のように溶離した:
ヘキサン区分/EtOAc 1:1 50ml
1:2 150ml
1:3 80ml
高純度生成物を含有する区分を合わせ、そして減圧下で乾燥するまで蒸発させた。この高純度生成物を無色の粘稠なオイルとして得、これを高真空(0.01kPa)下で一定重量(0.251g、収率89.3%)まで乾燥した。
【0434】
[実施例13a] イソプロピル(Z)−7−{(1R,2R,3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−2−[3(R)−(3−ヒドロキシ−5−フェニル)ペンチル]シクロペンチル}−5−ヘプテノエート(ラタノプロスト、R23)の製造
【0435】
【化136】

【0436】
PGX−17(170.0g,0.219M)を不活性雰囲気下でアセトン(1.9L)に溶解し、水(0.3L)中のピリジニウム−p−トルエンスルホネート(4.52g、18.0ミリモル、0.08等量)の溶液を添加した。反応はTLCにより完結したことが示されるまで、得られた混合物を室温で3時間攪拌した。有機揮発分を蒸発させた後、この残渣を酢酸エチル(2.1L)と塩水(2L)の混合物に添加した。この層を分離し、そしてこの水相を酢酸エチル(1L)により更に抽出した。この有機層を合わせ、そして塩水(0.5L)により洗浄した。真空で蒸発させることによって、淡黄色のオイル(166.4g)を得た。これをヘキサン:酢酸エチル1:1(0.25L)に溶解し、そしてヘキサン:酢酸エチル(1:1、次に1:2、次に1:3)により溶離するシリカゲル(1.87Kg)のカラムクロマトグラフィにより精製した。この関係する区分を合わせ、蒸発させて、殆ど無色のオイル(78.0g)を得た。ヘプタン(88−95%):メタノール/イソプロパノール(1/2)(5−12%)により溶離するシリカカラム定組成合成用HPLCによりこれを更に精製した。この関係する合わせた分取液を蒸発させることによって、イソプロピル(Z)−7−((1R,2R,3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−2−(3(R)−(3−ヒドロキシ−5−フェニル)フェニル)シクロペンチル}−5−ヘプテノエート(ラタノプロスト)を殆ど無色のオイル(50.2g,53.0%)として得た。
【0437】
[実施例13b] ラタノプロストのHPLC精製
Waters(登録商標)Spherisorbシリカゲルカラムを用いて、ラタノプロストのHPLC精製を行った。この定組成溶離液系はそれぞれ88−98%と2−12%の容量パーセント範囲の炭化水素とアルコールから構成される。使用した炭化水素はn−ヘキサン、ヘキサン区分、n−ヘプタンまたはヘプタン区分であった。使用したアルコールは単独あるいは1:1〜3:1の比の組み合わせのいずれかのイソプロパノール、エタノールまたはメタノールである。
【0438】
上記の溶離液系を用いた典型的なHPLCランの結果を下記に示す。
【0439】
【表1】

【0440】
このように、上記の溶媒系は99.8%以上のラタノプロスト純度をもたらし、そして所望しない異性体の量はすべて0.1%未満であることが判るであろう。
【0441】
[実施例13c] ラタノプロストと異性体のHPLC分離
Waters(登録商標)Spherisorbシリカゲルカラムを用いて、ラタノプロストのHPLC分離を行った。この定組成溶離液系は90−96%:2−6%:2−4%の容量パーセント比の炭化水素:アルコール:アセトニトリルから構成されるものであった。使用した炭化水素はn−ヘキサン、ヘキサン区分、n−ヘプタンまたはヘプタン区分であった。使用したアルコールはイソプロパノールまたはエタノールのいずれかであった。
【0442】
93%:4%:3%の容量パーセント比のヘプタン:イソプロパノール:アセトニトリルの混合物を溶離液として使用するラタノプロストのHPLC分離について次の結果を示す。ラタノプロストと15(S)−シス、15(S)−トランスおよび15(R)−トランス異性体の相対保持時間を下記に示す。
【0443】
【表2】

【0444】
上記の結果は、アセトニトリルを含む溶離液系を用いて、所望しないこれらの異性体からのラタノプロストの優れた程度の分離を得ることができることを示す。PhenomeneX(登録商標)Luna CyanoとPhenomeneX(登録商標)Lunaシリカカラムについて類似の結果を得た。この方法を用いて、実質的高純度であるか、あるいはこれまで除去が困難であった異性体を完全に含まないラタノプロストを得ることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の炭化水素、1種以上のアルコール、及び場合によってはアセトニトリルを含む混合物を溶離液として使用することを特徴とするHPLCによるラタノプロストの精製方法。
【請求項2】
溶離液が少なくとも1つの炭化水素、少なくとも1つのアルコール及びアセトニトリルを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶離液が80−99容量パーセントの量の炭化水素又は炭化水素の混合物及び1−20容量パーセントの量のアルコール又はアルコールの混合物を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
溶離液が88−98容量パーセントの量の炭化水素又は炭化水素の混合物及び2−12容量パーセントの量のアルコール又はアルコールの混合物を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
溶離液が85−99容量パーセントの量の炭化水素又は炭化水素の混合物、0.5−10容量パーセントの量のアルコール又はアルコールの混合物及び0.5−5容量パーセントの量のアセトニトリルを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
炭化水素がヘキサン又はヘプタンである請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
アルコール成分が少なくとも1つのC〜Cの直鎖、分枝鎖又は環状のアルカノールを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
アルコールがプロパン−2−オルを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
15(S)−シス異性体、15(S)−トランス異性体及び15(R)−トランス異性体を実質的に含まないラタノプロスト。
【請求項10】
15(S)−シス異性体、15(S)−トランス異性体及び15(R)−トランス異性体の任意の組み合わせの合計で0.3%以下を含有する請求項9に記載のラタノプロスト。
【請求項11】
15(S)−シス異性体、15(S)−トランス異性体及び15(R)−トランス異性体のそれぞれの0.1%以下を含有する請求項10に記載のラタノプロスト。
【請求項12】
98%以上の純度をもつラタノプロスト。
【請求項13】
99%以上の純度をもつ請求項12に記載のラタノプロスト。
【請求項14】
99.5%以上の純度をもつ請求項13に記載のラタノプロスト。
【請求項15】
99.8%以上の純度をもつ請求項14に記載のラタノプロスト。

【公開番号】特開2010−53149(P2010−53149A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278234(P2009−278234)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【分割の表示】特願2003−500077(P2003−500077)の分割
【原出願日】平成14年5月24日(2002.5.24)
【出願人】(503429076)レゾリューション ケミカルズ リミテッド (8)
【Fターム(参考)】