説明

プロテアーゼ検出製品

サンプル中のプロテアーゼ酵素を検出するためのプロテアーゼ検出製品(1)。本プロテアーゼ検出製品(1)は、液体流路を提供する媒体(2);液体流路上に配置された標識(された)成分(6);標識された要素(要素ないし成分)(6)及び無傷の標識成分を固定するための固定手段(8)の下流に配置された捕捉コンポーネント(要素ないし成分)(12)を含む。前記標識要素(6)は、プロテアーゼ感受性リンカーペプチド(9)を介して遊離可能エレメントに連結されたベースエレメント(8)を含む。前記遊離可能エレメントは標識(10)を含む。前記捕捉コンポーネント(12)は前記遊離可能エレメントと結合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中のプロテアーゼ酵素の検出に適したプロテアーゼ検出製品に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテアーゼは、タンパク質を特にペプチド結合を加水分解及び切断することによって消化する酵素である。したがって、プロテアーゼによって分解されるタンパク質は2つ以上のさらに小さなペプチドに切断される。ペプチドの切断は、特定のアミノ酸残基鎖に隣接するペプチドをプロテアーゼが加水分解するときに生じ(ただし他のプロテアーゼは特異性が少ない)、ペプチド切断活性を指令するためには1つ又は2つのアミノ酸を必要とするだけである。
【0003】
完全に別個の発展領域はラテラルフローイムノアッセイの領域であった。これらのイムノアッセイはサンプル中の分析物の検出を可能にする。そのようなイムノアッセイの一般的な例は妊娠検査キットである。前記キットはニトロセルロース細片を含み、前記細片の一方の端から他方の端へと吸収性サンプル受容領域;標識された抗体バンド;捕捉抗体バンド及びコントロールバンドが配置される。
【0004】
前記標識された抗体バンドは、複数のモノクローナル抗体を含み、これらモノクローナル坑体はhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン・コリオゴナドトロピン)に特異的であり金粒子とコンジュゲートされている。前記標識された抗体は、液体存在下でニトロセルロース細片中を移動しさらにこれを通過する。前記捕捉抗体バンドは、固定された複数のモノクローナル抗体を含み、その各々はhCGに特異的である(ただし標識された抗体とは異なるhCGのエピトープに特異的である)。前記コントロールバンドは、特定の種の免疫グロブリンG(IgG)に特異的な複数の固定された抗体を含む。
【0005】
各個体の妊娠検査用キットを使用するために、各個体からのサンプル(典型的には尿)をサンプル受容ゾーンに入れる。サンプルは、最初に標識された抗体バンド、続いて捕捉抗体バンド、最後にコントロールバンドに向かって細片を縦方向に自然に(毛管力にしたがって)流れる。したがって細片はサンプルのために液体流路を提供することが理解されよう。
【0006】
サンプルの内容物が標識された抗体バンドを通過するとき、標識された抗体バンドは細片内を移動するようにされ、さらにまた捕捉抗体バンドの方向へ運ばれる。その際hCGがサンプル中に存在する場合、標識された抗体はhCGと結合する。
【0007】
標識された抗体が捕捉抗体バンドに到達するとき、2つの事象のうち1つが発生しえる。hCGがサンプル中に存在する場合、hCGは捕捉抗体により結合される。hCGの大半は既に標識された抗体と結合され、したがって固定された捕捉抗体の所で複合体が形成され、hCGは捕捉抗体と標識された抗体との間で結合又は架橋を形成する。これは抗体の“サンドイッチ”として一般的に知られている。或いは一方、サンプル中にhCGが存在しない場合、標識された抗体は捕捉抗体と相互反応せずに捕捉抗体バンドを通過する。捕捉抗体(複数)は固定されてあり、したがっていずれの場合にもこれらは細片に沿って流れていくことはない。
【0008】
その後、サンプルはコントロールバンドに到達する。キット中には過剰な標識された抗体が存在するので、サンプル中にhCGが存在していたとしても十分な標識された抗体がキット中に存在し、いくらかの物質が捕捉抗体を超えて通過する。したがって、hCGがサンプル中に存在してもしなくても、いくらかの標識された抗体がコントロールバンドに到達する。コントロールバンドでは、固定された抗IgG抗体は標識された抗体と結合し、したがって標識された抗体を固定する。
【0009】
標識された抗体が固定され濃縮された場合、金粒子の存在は眼に見える(visible)線を形成することが理解されよう。したがって、hCGがサンプル中に存在する場合(当該個体が妊娠している場合であろう)、眼に見える線が捕捉抗体バンドにて形成される。hCGがサンプル中に存在してもしなくても、眼に見える線がコントロールバンドに形成されるであろう。コントロールバンドの線は以下の点で有用である。なぜならば、その線はアッセイが結論に達したことを示し(例えばサンプル中の液体が不十分なときに前記事象は生じえない)、装置が正しく機能したことを確認するからである。その線はまた、結果の確実性をさらに高めるために捕捉抗体バンドとコントロールバンドとを比較することを可能にする。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、プロテアーゼ酵素の存在を検出するための改善された製品(装置ないし器具、product)を提供する。
【0011】
本発明の一視点にしたがえば、以下を含む、サンプル中のプロテアーゼ酵素を検出することを目的とするプロテアーゼ検出製品(装置ないし器具)が提供される:
−液体流路を提供する媒体(medium);
−第一の位置で液体流路上に配置することができる切断可能コンポーネント(要素ないし成分、cleavable component)であって、前記切断可能コンポーネントはプロテアーゼ感受性リンカーペプチドを介して遊離可能エレメントに連結されたベースエレメントを含む前記切断可能コンポーネント;
−前記遊離可能エレメントは標識結合構造を含み、標識は前記標識結合構造と結合することができる標識;
−前記液体流路の第一の位置の下流に配置された、前記遊離可能エレメントと結合することができる、捕捉コンポーネント(要素ないし成分、capture component);及び
−前記無傷の切断可能コンポーネントを固定するための固定化手段。
【0012】
前記切断可能コンポーネントは標識と(例えば共有結合によって)結合することができ、この場合、前記切断可能コンポーネントは“標識されたコンポーネント(要素ないし成分)”(labeled component)とみなすことができる。また別には、前記切断可能コンポーネントは標識とは別の(separate)コンポーネント(要素ないし成分)であってもよく、例えば前記標識は、切断可能コンポーネントの遊離可能エレメント上の標識結合構造に対する抗体を含むことができる。
【0013】
前記切断可能コンポーネントは液体流路上に配置されることができ、この場合、“第一の位置”は、切断可能コンポーネントが配置される液体流路上の位置である。或いは(また別には)、前記切断可能コンポーネントは、アッセイを実施することを所望するときに別個に添加してもよく、この場合、前記“第一の位置”は、例えばサンプル受容ゾーン、例えば吸収パッドである。
【0014】
本発明のまた別の視点にしたがえば、以下を含む、サンプル中のプロテアーゼ酵素を検出することを目的とするプロテアーゼ検出製品が提供される:
−液体流路を提供する媒体;
−液体流路上に配置された標識されたコンポーネント(要素ないし成分)(labeled component)、プロテアーゼ感受性ペプチド結合を介してエレメント遊離物(release of an element)と連結されたベースエレメントを含む切断可能コンポーネント(要素ないし成分)、該遊離可能エレメント(ないし成分、The releasable element)は標識を含む;
−標識コンポーネントの下流に配置された捕捉コンポーネント(要素ないし成分)、該補足コンポーネントは液体流路上で該遊離可能エレメントと結合することができる前記捕捉コンポーネント;及び
−無傷の切断可能コンポーネントを固定するための固定化手段。
【0015】
好ましくは、液体流路を提供する媒体は吸収性細片(ストリップないし帯状片)、例えばニトロセルロースで製造されたものである。
【0016】
簡便には、固定化手段は、ベースエレメントと液体流路上の構造との間にアタッチメントを含む。例えば、ベースエレメントはビオチンを含み、液体流路上の構造はストレプトアビジンである。
【0017】
また別には、固定化手段は、第一の位置の下流に配置された更に別の捕捉コンポーネント(要素ないし成分、capture component)を含み、この更に別の捕捉コンポーネントは、プロテアーゼ感受性リンカーペプチドに亘るアミノ酸配列;プロテアーゼ酵素活性によって破壊されるリンカーペプチドの構造性エピトープ;又は前記リンカーペプチドが配列と標識結合構造若しくは標識との間に存在するように配置した前記配列と、結合することができる。
【0018】
有利には、前記捕捉コンポーネントは液体流路の固定化手段の上流に存在する。
【0019】
また別には、前記捕捉コンポーネントは液体流路の固定化手段の下流に存在する。
【0020】
プロテアーゼ検出製品は、液体流路上の前記1つの又は複数の捕捉コンポーネントの上流に配置されたプロテアーゼ阻害剤を含むことが好都合である。
【0021】
好ましくは、プロテアーゼ検出製品はさらに、分解性(可能)又は破壊性(可能、disruptable)のバリアーを液体流路上に含む。前記バリアーは10から100μmの厚さでありえる。例えば、いくつかの実施態様では、前記バリアーは可溶性バリアー、例えばコラーゲン、ペクチン又はPVAである。
【0022】
好都合には、分解性又は破壊性バリアーは、液体流路の外側に向かって伸び、物質が液体流路を流れる際にバリアー周辺での通過を妨げることを目的とするリップを含む。リップは少なくとも0.5mm外側に向かって伸びることができる。一般的には、リップは、5mm未満、好ましくは2mm未満外側に向かって伸びる。約1mmのリップが最も好ましい。
【0023】
有利には、プロテアーゼ検出製品はさらに、切断可能コンポーネント及びサンプルを混合させるために混合ゾーンを含み、前記分解性又は破壊性バリアーは混合ゾーンの下流及び前記1つ又は複数の捕捉コンポーネントの上流に配置される。
【0024】
好ましくは、前記捕捉コンポーネント又は捕捉コンポーネントの各々は、結合対の片方(の半部)を含む。
【0025】
好都合には、前記捕捉コンポーネント又は捕捉コンポーネントの各々は、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。
【0026】
また別には、前記捕捉コンポーネント又は捕捉コンポーネントの各々はセルロースを含み、前記遊離可能エレメントはさらに、セルロースが結合することができる結合半部(モイエティないし対半部)を含む。
【0027】
好ましくは、前記結合部分はガラクトマンナン又はキシログルカンである。
【0028】
有利には、標識は金粒子又は発蛍光団(fluorophore group)である。
【0029】
また別には、前記捕捉コンポーネント又は捕捉コンポーネントの各々は、ビオチン-ストレプトアビジン結合対の片方を含む。好ましくは、プロテアーゼ検出製品(product)はラテラルフローイムノアッセイである。
【0030】
本発明の別の視点にしたがえば、本発明のプロテアーゼ検出製品を用いて、サンプル中のプロテアーゼ酵素を検出する、以下の工程を含む方法が提供される:第一の位置で切断可能コンポーネント(要素ないし成分)を提供する工程;液体流路の上流端でサンプルを提供し、サンプルが液体流路に沿って流れるようにする工程;及び捕捉コンポーネント(要素ないし成分)及び/又は固定手段で標識の存在を決定する工程。
【0031】
前記方法はさらに、液体流路の上流端に標識を別個に添加し、前記標識が液体流路に沿って流れるようにする工程を含むことが好都合である。
【0032】
好ましくは、前記方法はさらに、サンプルを液体流路に適用する工程の後に洗浄緩衝液を液体流路の終端の上流に適用する工程を含む。例えば、50から500μLの洗浄緩衝液を添加することができるが、約150μLがもっとも好ましい。
【0033】
本明細書では、あるコンポーネント(要素ないし成分、component)が液体流路“上に”(on)存在するという場合は、コンポーネント(要素ないし成分)が液体流路“内に”(in)存在するということと等価であり、逆もまた同様である。
【0034】
本発明をより完全に理解できるように、したがって更なるその特徴を理解しうるように、本発明の実施態様をこれから例として添付の図面を参考に記述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1を参照したとき、プロテアーゼ検出製品(1)は、第一及び第二の末端(3、4)を有するニトロセルロース細片(ストリップないし帯状片)(2)を含む。サンプル受容ゾーン(5)が第一の末端(3)に取り付けられ(attached)、サンプル受容ゾーン(5)は、ニトロセルロース細片(2)よりもわずかに広い幅の細長い長方形の吸収性物質を含む。
【0036】
第二の末端(4)に向かってさらに(進めば)、細片(2)の長軸を横切って配置される標識用バンド(6)が提供される。前記標識用バンド(6)は、図2にさらに詳細に示される多数の標識されたコンポーネント(要素ないし成分)(7)を含む。前記標識されたコンポーネント(7)はステム(8)を含み、ステムは細片(2)の構造内に固定されて標識されたコンポーネント(7)への酵素の接近(アクセス)を高める。ステム(8)に取り付けられて、プロテアーゼ感受性リンカーペプチド(9)が提供される。プロテアーゼ感受性リンカーペプチド(9)の遊離末端に取り付けられた標識(label)(10)が提供され、標識はこの事例では発蛍光団(fluorophore)であるが、他の実施態様では例えば金粒子又は色素源半部(chromogenic moiety)である。
【0037】
第二の末端(4)に向かって細片(2)をさらに進めば、プロテアーゼ阻害剤バンド(11)が提供され、プロテアーゼ阻害剤バンドは細片(2)の長軸を横切って配置される。プロテアーゼ阻害剤バンド(11)は、細片(2)へと乾燥させたプロテアーゼ阻害剤を含む。プロテアーゼ阻害剤バンド(11)は本発明にとって決して必須ではなく、他のいくつかの実施態様では省略される。
【0038】
第二の末端(4)に向かって細片(2)をさらに進めば、捕捉バンド(12)が提供され、捕捉バンドもまた細片(2)の長軸を横切って配置される。捕捉バンド(12)は複数の捕捉コンポーネント(13)を含み、その1つが模式的に図3に示されている。この実施態様では、捕捉分子[コンポーネント](13)はモノクローナル抗体であり、これは細片(2)に固定されるが、このことは本発明にとって必須ではない。重要なことは、捕捉コンポーネント(13)の各々がペプチドリンカー(9)の遊離末端と結合することができるということである。図3では、捕捉コンポーネント(13)がペプチドリンカー(9)に結合しているのが示されているが、これは使用中のプロテアーゼ検出製品を示していることは理解されよう。プロテアーゼ検出製品(1)の使用前には、いずれの成分も捕捉コンポーネント(13)と結合していない。
【0039】
本プロテアーゼ検出製品(1)を用いて液体サンプル中の活性なプロテアーゼ酵素を検出するために、サンプルをサンプル受容ゾーン(5)に滴下ないし適用し(deposited)、続いて第一の末端(3)近くでニトロセルロース細片(2)に吸収させる。続いて、適切な溶媒を含む追跡緩衝液をサンプル受容ゾーンに施し(滴下し)、サンプルを細片(2)にそって運ぶために十分な液体が存在するようにする。その後サンプルは、細片の第二の末端(4)に向かって、液体流路と称されるものに沿って矢印(14)の方向へ吸収される。
【0040】
サンプルが標識用バンド(6)に到達するとき、サンプル中のプロテアーゼ酵素のいずれかがプロテアーゼ感受性リンカーペプチド(9)を切断(cleave)し、したがって標識(10)と一緒にリンカーペプチドの遊離端を遊離させる。他方、サンプル中に活性なプロテアーゼが存在しない場合、リンカーペプチド(9)は無傷(完全、intact)のままであり、したがってステム(8)を介して細片(2)に固定されている。
【0041】
次いでサンプルは、プロテアーゼ阻害剤バンド(11)に到達するまで液体流路に沿って流れ続け、その到達時点でサンプル中のいずれかの活性なプロテアーゼ酵素は不活化される。
【0042】
サンプルは、捕捉バンド(12)及び複数の捕捉コンポーネント(13)に到達するまで液体流路に沿って流れ続ける。サンプル中の活性なプロテアーゼ酵素はいずれも不活化されているので、サンプルは捕捉コンポーネント(13)自体を劣化ないし分解(degrade)しない。
【0043】
最初のサンプル中に活性なプロテアーゼが存在し、したがってプロテアーゼ感受性リンカーペプチド(9)を切断した場合、リンカーペプチド(9)の遊離末端は捕捉コンポーネント(13)と結合し、細片(2)に固定されたままに留まる。他方、最初のサンプル中に全くプロテアーゼが存在しないか、又はサンプル中のいずれのプロテアーゼも特異的なリンカーペプチドを(9)を切断することができなかった場合、捕捉コンポーネント(13)はそれと結合するものを持たない。
【0044】
続いて捕捉バンド(12)が可視化される。標識が発蛍光団の場合(本実施態様の場合のように)、可視化は紫外光の下で実施されるが、標識が天然光の下で見ることができる場合(例えば標識が金粒子の場合)、紫外光は不要である。ペプチドリンカー(9)が切断され、かくて捕捉コンポーネント(13)と結合する場合、捕捉バンド(12)での標識(10)の蓄積は細片(2)上の線として眼で見ることができる。他方、ペプチドリンカー(9)が感受性を有するプロテアーゼがサンプルに含まれなかったとき、捕捉バンド(12)での標識(10)の蓄積は存在しない。したがって、サンプル中の活性なプロテアーゼ酵素の存在は、いったんアッセイが完了すれば、捕捉バンド(12)での線の有無を観察することによって判定することができる。
【0045】
サンプル中にプロテアーゼが存在しない場合、標識(10)は標識用バンド(6)に残留することは理解されよう。したがって、いくつかの別の実施態様では、捕捉バンド(12)における標識線の存在を(視認して)決定する代わりに、標識用バンド(6)の線の存在が測定される。標識が標識用バンド(6)に存在するならばサンプル中にプロテアーゼが存在しないことを示すが、標識が標識用バンド(6)に存在しないか、又は低い濃度で存在するならば、サンプル中にプロテアーゼが存在することを示す。
【0046】
本発明のさらに別の実施態様では、標識用バンド(6)及び捕捉バンド(12)の両方の標識の量(換言すればバンド(6)、(12)のそれぞれの線の強度ないし濃度)が、2本のバンドの標識の比を調べるために決定される。2本のバンドの標識の比を決定することによって、サンプル中のプロテアーゼ酵素の量又は活性を定量することが可能である。より具体的には、標識用バンド(6)と比較して捕捉バンド(12)の標識の量が多ければ多いほど、より多くのプロテアーゼ又はより高活性のプロテアーゼがサンプル中に存在し、逆もまた然りである。
【0047】
上記に述べた本発明の実施態様では、捕捉コンポーネント(要素ないし成分、capture component)は抗体である。しかしながら、本発明のさらに別の実施態様では、捕捉コンポーネントは抗体以外のコンポーネント(要素ないし成分)(複数)である。例えば、いくつかの実施態様では、プロテアーゼ感受性ペプチドは炭水化物半部を含み(CISジオールを示す)、捕捉コンポーネントはフェニルボロン酸である(これは炭水化物を結合することができる)。特に好ましいある実施態様では、捕捉コンポーネント(13)はセルロースであり、プロテアーゼ感受性リンカーペプチド(9)はガラクトマンナン又はキシログルカンとコンジュゲートされる(即ち、そのどちらもセルロースと結合するであろう)。そのような実施態様の利点は、プロテアーゼ阻害剤バンド(11)が要求されないということである。なぜならば、セルロース、ガラクトマンナン及びキシログルカンはプロテアーゼ酵素の影響を受けないからである。用いることができる他の結合対の例はレクチン(例えばニワトコの実由来のレクチン)と炭水化物(ペプチドとO-結合した糖)、及びストレプトアビジンとビオチンである。
【0048】
今度は図4を参照すれば、本発明の第二の実施態様が示されている。プロテアーゼ検出製品(15)は、第一及び第二の末端(17、18)を有するニトロセルロース細片(16)を含む。ニトロセルロース細片(16)の第一の末端には、サンプル受容ゾーン(19)が配置される。このゾーンは、細片(16)の上に置かれた長方形の吸収性物質シートを含む。標識(例えば発蛍光団)とコンジュゲートされたプロテアーゼ感受性ペプチドがサンプル受容ゾーン(19)に含浸される。このプロテアーゼ感受性ペプチドは、プロテアーゼがそこでこのペプチドを切断することができる切断配列を有する。ニトロセルロース細片(16)とサンプル受容ゾーン(19)との間に挟まれて、例えばペクチン又はポリビニルアルコールから製造された可溶性バリアー(20)が存在する。前記可溶性バリアー(20)は一時的に液体を浸透させず、水の存在下で溶解し、したがって予め設定した時間後に浸透性になる。
【0049】
第二の末端(18)に向かってニトロセルロース細片(16)に沿ってさらに(進めば)、細片(16)の長軸を横切って配置される第一の捕捉バンド(21)が提供される。前記第一の捕捉バンド(21)は複数のモノクローナル抗体を含み、各々の抗体は細片(16)の表面上に固定されている。第一の捕捉バンド(21)の抗体(複数)は、切断配列が結合配列と標識との間に存在(位置)するように配置されたペプチドの結合配列に特異的である。また別のいくつかの実施態様では、第一の捕捉バンド(21)の抗体(複数)は切断配列それ自体に特異的であるか、又はプロテアーゼ酵素の作用により破壊される配座(conformational)エピトープに特異的である。
【0050】
第二の末端(18)に向かってニトロセルロース細片(16)に沿ってさらに(進めば)、第二の捕捉バンド(22)が提供される。これもまた細片(16)の長軸を横切って配置される。前記第二の捕捉バンドは複数のモノクローナル抗体を含み、その各々は細片(16)の表面上に固定される。第二の捕捉バンド(22)の抗体(複数)は、切断配列と標識との間のペプチド上の配列に特異的である。
【0051】
プロテアーゼ検出製品(15)を用いて水性サンプル中の活性なプロテアーゼ酵素の存在を検出するために、サンプル受容ゾーン(19)上にサンプルを滴下(沈着)する。以前の実施態様に関連して述べたように、追跡緩衝液もまたサンプル受容ゾーン(19)に滴下される。サンプルはサンプル受容ゾーンから染み込ませるが、可溶性バリアー(20)の存在のために、最初は更なる吸収は不可能である。ある時間が過ぎた後、サンプル中の緩衝液によって可溶性バリアー(20)が溶解される。しかしながら前記時間中に、その中のプロテアーゼ感受性ペプチドとサンプルは完全に混ざりあい、サンプル中に存在するいずれのプロテアーゼも切断配列でペプチドを切断するであろう。
【0052】
いったん可溶性バリアー(20)が浸透性になったら、プロテアーゼ感受性ペプチドと混ざりあったサンプルは、液体流路に沿って矢印(23)の方向にニトロセルロース細片(16)に沿って吸収される。
【0053】
続いて、サンプル及びペプチドの混合物は第一の捕捉バンド(21)を通過する。ペプチドを切断することができる活性な任意のプロテアーゼ酵素がサンプル中に存在する場合、ペプチドは切断され、抗体は標識を保持しないペプチドフラグメントと結合するであろう。また別の実施態様では、ペプチドは最初の捕捉バンドで抗体と結合することができないであろう。なぜならば、抗体は切断点を横切る(across)配列に特異的であるか、又はプロテアーゼ酵素活性の作用によって破壊される配座エピトープに特異的であるからである。他方、ペプチドを切断することができる活性なプロテアーゼがサンプルに存在しない場合、無傷(完全)のペプチドは第一の捕捉バンド(21)で抗体(複数)と結合するであろう。
【0054】
続いて、ペプチド及びサンプルの混合物は、矢印(23)の方向に細片(16)に沿って進み続け、第二の捕捉バンド(22)に到達する。プロテアーゼがサンプル中に存在するか否かにかかわらず、無傷のペプチド又は切断されたペプチドは第二の捕捉バンド(22)で抗体と結合するであろう。プロテアーゼがサンプル中に存在する場合、標識は第一の捕捉バンド(21)とはほとんど又は全く結合せず、したがってより多くの標識が第二の表捕捉バンド(22)との結合に利用できることが理解されよう。
【0055】
続いて、細片上の標識(の位置・存在)を決定するために細片(16)は可視化される。この実施態様の場合のように、標識が発蛍光団である場合、細片(16)は紫外光の下で可視化される。標識が蓄積されている場合、標識は細片(16)上で線として眼に見える。標識が第一の捕捉バンド(21)で蓄積されていたら、これは、サンプル中に活性なプロテアーゼ酵素が存在しないことを示す。
【0056】
また別の実施態様では、第二の捕捉バンド(22)における標識の存在が決定され、第二の捕捉バンド(22)における標識の存在は、サンプル中に活性なプロテアーゼ酵素が存在することを示す。
【0057】
いくつかのさらに別の実施態様では、標識の存在が第一及び第二の捕捉バンド(21、22)の両方で決定され、2つのバンド(21、22)における標識線の強度(ないし濃度)の比が判定される。第一の捕捉バンド(21)と比較して第二の捕捉バンド(22)により多くの標識が存在すれば、サンプル中により多くの酵素が存在するか、又はより活性の強い酵素が存在することを示し、逆もまた同様である。
【0058】
第二の捕捉バンド(22)は“コントロールバンド”として機能することが理解されよう。なぜならば、第二の捕捉バンド(22)における標識の蓄積は、サンプルが可溶性バリアー(20)を浸透しアッセイの終点に到達したことを示すからである。
【0059】
いくつかのまた別の実施態様では、第一及び第二の捕捉バンド(21、22)の位置は逆にされる。すなわち、第二の捕捉バンド(22)は第一の捕捉バンドの上流に存在する。
【0060】
図5に示した実施態様で、可溶性バリアー(20)を提供する利点は、プロテアーゼ感受性ペプチド及びサンプルの混合が、混合物が液体流路を進む前に生じうるということであることが理解されよう。可溶性バリアー(20)が提供されない場合は、混合が生じるために十分な時間を提供し、混合物が第一の捕捉バンド(21)に到達する前にプロテアーゼがペプチドを切断するようにするために、ニトロセルロース細片(16)ははるかに長くしなければならない。
【0061】
今度は図5を参照すれば、図1に示した実施態様の変型が、同じ参照数字を与えられた類似の成分により示されている。この実施態様では、プロテアーゼ検出製品(24)は、(図1の)標識バンド(6)及び捕捉バンド(12)が、それぞれ捕捉バンド(25)及びさらに別の捕捉バンド(26)で置き換えられているという点で、図1に示した製品と異なる。さらにまた、プロテアーゼ阻害剤バンド(11)は省略され、さらに、ニトロセルロース細片(2)の第一の末端(3)からサンプル受容ゾーン(5)の主要部分を分離させる可溶性バリアー(27)がサンプル受容ゾーン(5)に備えられる。
【0062】
サンプル受容ゾーンの主要部分へと標識(例えば発蛍光団)とコンジュゲートしたプロテアーゼ感受性ペプチドを乾燥させるよう導く。前記プロテアーゼ感受性ペプチドは、プロテアーゼが前記ペプチドをそこで切断することができる切断配列を有する。
【0063】
捕捉バンド(25)は複数のモノクローナル抗体を含み、その各々は細片(2)の表面に固定される。捕捉バンド(25)においての抗体は、切断配列と標識との間のペプチド上の配列に特異的である。
【0064】
さらに別の捕捉バンド(26)は複数のモノクローナル抗体を含み、その各々は細片(2)の表面に固定される。この別の捕捉バンド(26)の抗体はペプチドの結合配列に特異的であり、このペプチドでは、切断配列が前記結合配列と標識との間にくるように配置される。また別のいくつかの実施態様では、別の捕捉バンド(26)の抗体は切断配列それ自体に特異的であるか、又はプロテアーゼの作用により破壊される配座エピトープに特異的である。
【0065】
本プロテアーゼ検出製品(24)は以前の実施態様の場合のように用いられる。したがって、サンプルはサンプル受容ゾーン上に滴下され、追跡緩衝液が添加される。続いて、サンプルをプロテアーゼ感受性ペプチドとサンプル受容ゾーン上で混合させ、その間に可溶性バリアー(27)は緩衝液によって溶解される。サンプル中に適切なプロテアーゼが存在するならば、プロテアーゼ感受性ペプチドは切断される。
【0066】
所定時間後に、可溶性バリアー(27)は劣化ないし分解(degraded)され、サンプル、緩衝液及びプロテアーゼ感受性ペプチドは、第一の末端(3)から第二の末端(4)へと細片(2)に沿って進む。前記混合物が捕捉バンド(25)を通過するとき、捕捉バンド(25)の抗体(複数)は、プロテアーゼ感受性ペプチドと前記がプロテアーゼによって切断されているか否かにかかわらず結合する。しかしながら、サンプル受容ゾーン(5)には過剰のプロテアーゼ感受性ペプチドが提供されているので、プロテアーゼ感受性ペプチドのいくらかは捕捉バンド(25)を超えて流れ、さらに別の捕捉バンド(26)に到達する。
【0067】
別の捕捉バンド(26)で抗体が結合し、ペプチドの結合配列を固定する。プロテアーゼ感受性ペプチドが切断されている場合、標識はもはや結合配列に付着していないので、この別の捕捉バンド(26)では標識は固定されない。また別の実施態様では、ペプチドは、プロテアーゼ感受性ペプチドが切断されている場合は別の捕捉バンド(26)の抗体と全く結合せず、したがってこの理由のために標識は別の捕捉バンド(26)に蓄積しない。他方、プロテアーゼ感受性ペプチドが切断されていない場合、標識は別の捕捉バンド(26)に蓄積する。
【0068】
サンプルがいったんこの別の捕捉バンド(26)を通過したら、細片(2)を精査してアッセイの結果を決定する。別の捕捉バンド(26)に蓄積する標識のレベルを捕捉バンド(25)に蓄積した標識のレベルと比較する。別の捕捉バンド(26)の標識レベルが低ければ低いほど、それはプロテアーゼ感受性ペプチドの切断量が大きいことを示しているので、サンプル中のプロテアーゼの量が大きいか又は活性が強い(逆もまた然りである)。
【0069】
この実施態様の他の変型で、捕捉バンド及びさらに別の捕捉バンド(26)の位置を互いに入れ替えてもよいことが理解されよう(すなわち別の捕捉バンド(26)は捕捉バンド(25)の上流の液体流路に配置することができる)。
【0070】
この実施態様のある具体的な変型では、標識は、プロテアーゼ感受性ペプチドとコンジュゲートされた金粒子を含む。金粒子とコンジュゲートされるものはまたガラクトマンナン半部(モイエティ)である。捕捉バンド(25)は、ペプチド上の結合配列と結合することができる複数の抗体を含み、切断配列は金粒子と結合配列との間に存在する。別の捕捉配列(26)はPBAを含み、PBAはCISジオールを提示する炭水化物と結合する。プロテアーゼが存在しないとき、金粒子は捕捉バンド(25)及び別の捕捉バンド(26)の両方に結合し蓄積する。しかしながら、適切なプロテアーゼが存在するとき、切断配列が切断され、したがって第一の捕捉バンド(25)に結合するいずれのペプチドにも金粒子は付着していない。したがって、プロテアーゼが存在する場合は、金粒子は別の捕捉バンド(26)にのみ蓄積する。したがって、サンプル中の活性なプロテアーゼ酵素の有無は、捕捉バンド(25)の金粒子の蓄積を別の捕捉バンド(26)の金粒子の蓄積と比較することによって判定することができる。
【実施例】
【0071】
実施例1:細片上の固定ペプチドの切断
ストレプトアビジンの試験線1及び抗マウス抗体の試験線2を含むイムノアッセイ試験細片を用いて、固定ペプチドのプロテアーゼ切断を示すべく以下のアッセイを実施した。切断可能ペプチド(フルオレセイン-Val-Arg-Gly-[PEG]20-ビオチン(a))をストレプトアビジン/ビオチン結合により細片に固定し、その後、細片にトリプシン含有溶液(これはArg残基のC-末端結合で前記ペプチドを切断することができる)を流すことにより切断した:
a)4μLのペプチド(0.65μg/mL)(フルオレセイン-Val-Arg-Gly-[PEG]20-ビオチン)を10μLのウシ血清アルブミン(200mg/mLのBSA)及び20μLのリン酸緩衝食塩水(PBS, pH7.4)と混合し、支持台上に垂直に保持した6枚の細片の基部に添加し、各細片の上方へクロマトグラフさせた。
【0072】
b)(a)で調製した全ての混合物が各細片に染み込んだとき、150μLのPBS洗浄液を各細片の基部に添加し、各細片の上方へクロマトグラフさせた。
【0073】
c)(b)の洗浄液が各細片から引き出されたとき、この細片を室温で30分乾燥させた。
【0074】
d)乾燥後に、20μL体積の0、50、100、250、500及び1000μg/mLのトリプシン標準物(複数)を個々の細片の基部に添加し、各細片の上方へクロマトグラフさせた。
【0075】
e)(d)で添加された前記標準物が各細片を通って吸収された(drawn)とき、さらに50μLのPBS洗浄液を各細片の基部に添加し、さらに各細片の上方へクロマトグラフさせた。
【0076】
f)(e)の洗浄液が各細片に吸収されたとき、2μLの抗FITC金コンジュゲート及び100μLのPBSを混合して各細片の基部に添加し、各細片の上方へクロマトグラフさせ、続いて各細片当たりさらに80μLのPBS洗浄液をクロマトグラフさせた。前記抗FITC金コンジュゲートはフルオレセインと結合することができ、さらに前記コンジュゲートは抗マウス抗体と結合することができ、前記抗体によって試験線2で固定される。
【0077】
試験線1及び2のシグナル強度の結果は下記の表1に示される。いずれの試験線における金コンジュゲートの存在も直接的には検出されなかったことは留意されよう。フルオレセインは、その蛍光特性のためではなく、それが小さな抗原性分子であり、それに対するいくつかの抗体が市場で入手できるので切断可能ペプチドに用いられた。
【0078】
表1:細片上に固定されたペプチドを用いた試験線1及び2のシグナル発生

【0079】
実施例2:結果の可視化のための蛍光標識の使用
ストレプトアビジンの試験線1及び抗マウス抗体の試験線2を含むイムノアッセイ試験細片を用い、サンプル中のトリプシン活性の検出のために蛍光を利用して切断可能ペプチド(フルオレセイン-Val-Arg-Gly-[PEG]20-ビオチン)により以下のアッセイを実施した:
a)4μLの体積のペプチド(50μg/mL)(フルオレセイン-Val-Arg-Gly-[PEG]20-ビオチン)を4μLの体積のトリプシン標準物(0、10、100及び1000μg/mL)と混合し、室温で5分間インキュベートした。
【0080】
b)(a)で調製した混合物に、PBS中のBSA(33mg/mL)の82μLを添加し、さらに混合し、続いて支持台上に垂直に保持した4枚の細片の基部に添加し、各細片の上方へクロマトグラフさせた。
【0081】
c)(b)で調製した混合物が全て各細片に吸収された(drawn)とき、150μLのPBS洗浄液を各細片の基部に添加し、各細片の上方へクロマトグラフさせた。
【0082】
d)試験線1と結合した未切断ペプチドの存在を可視化させるためにUV光源を用いて細片を観察した。
【0083】
試験線1のシグナル強度の結果は下記の表2に示される。この実施例では、フルオレセインの存在はシグナルを生じる。
【0084】
表2:可視化のために蛍光標識を用いた試験線1のシグナル発生

【0085】
実施例3:試験細片のサンプルパッドへの切断可能ペプチドの取り込み
ストレプトアビジンの試験線1及び抗マウス抗体の試験線2を含むイムノアッセイ試験細片を用いて試験細片のサンプルパッドに乾燥させて供給した切断可能ペプチド(フルオレセイン-Val-Arg-Gly-[PEG]20-ビオチン)のトリプシン切断を示すべく以下のアッセイを実施した:
a)以下の溶液を調製し、続いて60*32mmの長さのサンプルパッドに染み込ませ、さらに室温で3時間乾燥させた:200mg/mLのBSAを1mL+1%のトリトンX-100を500μL+蒸留水2mL+2gのシュクロース+50μg/mLの切断可能ペプチドを500μL。
【0086】
b)細片は、図6に示すようにさらに下記で詳細に説明するとおりに組み立てた。略記すれば、サンプル受容パッド(29)は乾燥切断ペプチドを含む。可溶性PVAフィルム(30)はサンプル受容パッド(29)を介在パッド(31)から分離させる。(中間)介在パッド(31)は抗FITC金コンジュゲートを含み、吸収性試験細片(35)と接触する。前記試験細片(35)は試験線1及び2を含む。
【0087】
c)アッセイは、0μg/mL及び1000μg/mLのトリプシン標準物を用い、“A”と標識したサンプルパッドの近位(基部)端に、このパッドが完全に飽和されるまで、適用することによって、実施した。
【0088】
d)サンプルパッドとコンジュゲートとの間のPVAフィルムが溶解して標準物がコンジュゲートパッドに流入するのが見えたとき、細片を完全に通過させるために必要に応じて更なる溶液を適用した。
【0089】
試験線1及び2のシグナル強度の結果は下記の表3に示される。
【0090】
表3:細片のサンプルパッドに取り込ませた切断可能ペプチドを用いた試験線1及び2のシグナル発生

【0091】
今度は図6を参照して、イムノアッセイ試験細片(28)は、吸収性物質から製造されたサンプル受容パッド(29)を第一の末端に含む。乾燥した切断可能ペプチド(フルオレセイン-Val-Arg-Gly-[PEG]20-ビオチン)は、サンプル受容パッド(29)(へ供給されその)上で乾燥される。
【0092】
厚さ35μmのPVAフィルム(30)はサンプル受容パッド(29)の下に配置される。PVAフィルム(30)の大きさは、サンプル受容パッド(29)の内側端全体を覆い、さらにサンプル受容パッド(29)の全てのディメンジョン(dimensions)をさらに1mm超えるように(サンプル受容パッド(29)の外側末端を除く)作製される。PVAフィルム(30)は、サンプル受容パッド(29)を超えて流れる液体のバリアーであるが、予め定めた時間の後で水に溶解性である。
【0093】
(中間)介在パッド(31)はPVAフィルム(30)の下に配置される。介在パッド(31)は、その外側端(32)がサンプル受容パッド(29)の内側端(33)と重なり合い、PVAフィルム(30)の内側端(34)がそれらの間に挟まれるように配置される。さらにまた、サンプル受容パッド(29)の内側端(33)からPVAフィルム(30)が1mm伸張することによって、サンプル受容パッド(29)と介在パッド(31)との間のいずれの直接的な液体流通も阻止される。複数の抗FITC金コンジュゲートが介在パッド(31)上へと乾燥される。
【0094】
吸収性細片(35)は介在パッド(31)の下に配置される。介在パッド(31)の内側端(36)は吸収性細片(35)の外側端(37)と重なり合い、さらにこれと接触する。第一及び第二の試験線(表示されていない)は吸収性細片(35)上に配置される。第一の試験線(介在パッド(31)に最も近い)は、吸収性細片(35)の表面に固定されたストレプトアビジンを含む。第二の試験線(介在パッド(31)から遠く離れている)は、吸収細片(35)上に固定された複数の抗マウス抗体を含む。
【0095】
使用時には、プロテアーゼ含有サンプルが、Aと印を付された位置でサンプル受容パッド(29)の基部端に添加される。サンプルは、サンプル受容パッド(29)に配置された切断可能ペプチドと混ざりあい、前記ペプチドを切断する。さらにまた、サンプルはPVAフィルム(30)を溶解させ、予め定めた時間の後で、切断されたペプチドは介在パッド(31)へと流れることができ、ここで前記ペプチドは抗FITC金粒子と混ざりあう。続いて、切断ペプチド及び抗FITC金コンジュゲートの混合物は吸収性細片(35)に吸収され、ここで切断ペプチドのビオチン含有部分(section)は第一の試験線で結合し、さらに切断ペプチドのフルオレセイン含有部(part)は抗FITC金コンジュゲートと結合し、これは第二の試験線で固定される。
【0096】
また別には、サンプル中にプロテアーゼが存在しないとき、ペプチドは切断されないままでサンプル受容パッド(29)上に留まり、サンプルはPVAフィルム(30)を溶解させてこれを通過し、さらに介在パッド(31)上でFITC金コンジュゲートと混ざりあう。抗FITC金コンジュゲートは未切断ペプチドのフルオレセインと結合し、前記は続いて第一の試験線で固定される。実際には、少量の抗FITC金コンジュゲートは切断可能ペプチドと結合せず、未結合コンジュゲートは第二の試験線で固定される。
【0097】
実際には、サンプルがプロテアーゼを含んでいるときでさえ全ての切断可能ペプチドが切断されるわけではなく、したがって第一及び第二の試験線で固定される抗FITC金コンジュゲートの相対量(複数)は、切断可能ペプチドの切断におけるプロテアーゼの量及び/又はプロテアーゼの有効性の指標であることは理解されよう。
【0098】
抗FITC金コンジュゲートは、サンプル受容パッド(29)ではなくむしろ介在パッド(31)に配置されることによって、サンプル中のプロテアーゼへの抗FITCコンジュゲートの暴露は極めて減少するが、そうでなければ、プロテアーゼはコンジュゲートに対してそのタンパク質分解活性を発揮するであろう、ということもまた理解されよう。したがって、抗FITC金コンジュゲートを介在パッド(31)に配置することによって、コンジュゲートのタンパク質分解は極めて減少し、したがって金コンジュゲートによって生じる試験線でのシグナルは最大になる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明のー実施態様のプロテアーゼ検出製品の平面図である。
【図2】図1のプロテアーゼ検出製品のあるコンポーネント(要素ないし成分、component)の模式図である。
【図3】図1に示したプロテアーゼ検出製品の別のコンポーネント(要素ないし成分、component)の使用時の模式図である。
【図4】本発明のさらに別の実施態様のプロテアーゼ検出製品の全体図である。
【図5】本発明の他の実施態様のプロテアーゼ検出製品の平面図である。
【図6】実施例3で試験したプロテアーゼ検出製品の縦方向断面模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、サンプル中のプロテアーゼ酵素を検出するためのプロテアーゼ検出製品:
−液体流路を提供する媒体;
−第一の位置で液体流路上に配置することができる切断可能コンポーネント(要素ないし成分)であって、前記切断可能コンポーネントはプロテアーゼ感受性リンカーペプチドを介して遊離可能エレメントに連結されたベースエレメントを含み、前記遊離可能エレメントは標識結合構造を含む、前記切断可能コンポーネント;
−前記標識結合構造と結合することができる標識;
−前記液体流路の第一の位置の下流に配置され、前記遊離可能エレメントと結合することができる、捕捉コンポーネント(要素ないし成分);及び
−完全な切断可能コンポーネントを固定するための固定化手段。
【請求項2】
前記固定化手段がベースエレメントと液体流路上の構造との間にアタッチメントを含む、請求項1に記載のプロテアーゼ検出製品。
【請求項3】
前記固定化手段が、第一の位置の下流に配置された更に別の捕捉コンポーネントを含み、この更に別の捕捉コンポーネントは、プロテアーゼ感受性リンカーペプチドに亘るアミノ酸配列;プロテアーゼ酵素活性によって破壊されるリンカーペプチドの構造性エピトープ;又は前記リンカーペプチドが配列と標識結合構造との間に存在するように配置した前記配列と結合することができる、請求項1に記載のプロテアーゼ検出製品。
【請求項4】
前記捕捉コンポーネントが液体流路内の固定化手段の上流に存在する、請求項1から3のいずれか1項に記載のプロテアーゼ検出製品。
【請求項5】
前記捕捉コンポーネントが液体流路内の固定化手段の下流に存在する、請求項1から3のいずれか1項に記載のプロテアーゼ検出製品。
【請求項6】
さらに、液体流路上の1つの又は複数の捕捉コンポーネントの上流に配置されたプロテアーゼ阻害剤を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のプロテアーゼ検出製品。
【請求項7】
さらに、液体流路上に分解性又は破壊性のバリアーを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のプロテアーゼ検出製品。
【請求項8】
前記分解性又は破壊性バリアーがリップを含み、前記リップは液体流路の外側に向かって伸び、物質が液体流路を流れる際に前記分解性又は破壊性のバリアー周辺での物質の通過を妨げることを目的とする、請求項7に記載のプロテアーゼ検出製品。
【請求項9】
さらに、切断可能コンポーネント(要素ないし成分)及びサンプルを混合させるために混合ゾーンを含み、前記分解性又は破壊性バリアーは混合ゾーンの下流及び1つの又は複数の捕捉コンポーネントの上流に配置される、請求項7又は8に記載のプロテアーゼ検出製品。
【請求項10】
捕捉コンポーネント又は捕捉コンポーネントの各々が、結合対の片方を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載のプロテアーゼ検出製品。
【請求項11】
捕捉コンポーネント又は捕捉コンポーネントの各々が、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、請求項10に記載のプロテアーゼ検出製品。
【請求項12】
捕捉コンポーネント又は捕捉コンポーネントの各々がセルロースを含み、前記遊離可能エレメントがさらに、セルロースが結合することができる結合半部(モイエティ)を含む、請求項10に記載のプロテアーゼ検出製品。
【請求項13】
前記結合半部がガラクトマンナン又はキシログルカンである、請求項12に記載のプロテアーゼ検出製品。
【請求項14】
捕捉コンポーネント又は捕捉コンポーネントの各々が、ビオチン又はストレプトアビジンを含む、請求項10に記載のプロテアーゼ検出製品。
【請求項15】
標識が金粒子又は発蛍光団である、請求項1から14のいずれか1項に記載のプロテアーゼ検出製品。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載のプロテアーゼ検出製品を用いて、サンプル中のプロテアーゼ酵素を検出する方法であって、前記方法は、
第一の位置で切断可能コンポーネント(要素ないし成分)を提供する工程;
液体流路の上流端でサンプルを提供し、サンプルが液体流路に沿って流れるようにする工程;及び
捕捉コンポーネント(要素ないし成分)及び/又は固定化手段で標識の存在を決定する工程を含む、
前記プロテアーゼ酵素を検出する方法。
【請求項17】
さらに、液体流路の上流端に別個に標識を添加し、この標識が液体流路に沿って流れるようにする工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらに、サンプルを液体流路に適用する工程の後で、液体流路の上流端に洗浄緩衝液を適用する工程を含む、請求項16又は17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−532052(P2009−532052A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503659(P2009−503659)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001291
【国際公開番号】WO2007/128980
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508257348)モロジック リミテッド (6)
【Fターム(参考)】