説明

プロテインキナーゼA検出用バイオセンサー及び、これを有するキット

【課題】プロテインキナーゼA(protein kinase A;PKA)を特異的に認識するプロテインキナーゼ抑制剤(protein kinase inhibitor;PKI)ペプチドを含むPKA検出用バイオセンサー及び、該PKA検出用バイオセンサーまたはバイオアレイを有するPKA関連疾病の診断用キットを提供する。
【解決手段】本発明はプロテインキナーゼA(PKA)を特異的に感知するバイオセンサー及び、前記バイオセンサーを有する診断用キットに関するものである。より詳しく、本発明はカンチレバー及び、前記カンチレバー表面に固定されるプロテインキナーゼ抑制剤(PKI)ペプチドを含むPKA検出用バイオセンサー及び、対象試料、前記PKA検出用バイオセンサー及び定量手段を有するPKA活性増加と関する疾病の診断用キットに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロテインキナーゼA(protein kinase A;PKA)を特異的に感知するバイオセンサー及び、これを有する診断用キットに関するものである。より詳しくは、本発明はカンチレバー(片端固定レバー)及び、このカンチレバー表面に固定されたプロテインキナーゼ抑制剤(protein kinase inhibitor;PKI)ペプチドを含むPKA検出用バイオセンサー及び、対象試料、前記PKA検出用バイオセンサー及び定量手段を有するプロテインキナーゼ活性増加による疾病の診断用キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼはATPのガンマ−ホスホリル基を蛋白質のセリン(Ser)、トレオニン(Thr)またはチロシン(Tyr)残基のヒドロキシル基に伝達する反応を触媒するもので、多様な細胞信号経路に重要な役割を果たす(非特許文献1)。プロテインキナーゼ活性の増加は普通癌、心血管症候群(cardiovascular syndromes)、免疫疾患、内分泌障害などの各種疾病状態で発見される。したがって、このような酵素は、前記疾病に関与すると考えられ、これに関する特異的な阻害剤の開発が活発に行われてきた。
【0003】
特に、多様なプロテインキナーゼの中で、その性質が最も明らかになったプロテインキナーゼA(PKA)は、他のプロテインキナーゼの原型(prototype)として使用される。PKAはcAMPがない時、主に2つの調節サブユニットと2つの触媒サブユニットで構成される不活性状態の4量体ホロエンザイムとして存在する。細胞内cAMPの濃度が増加すると、このような不活性PKAの調節サブユニットにcAMPが結合し、調節サブユニットと触媒サブユニットとの結合力を弱化させることによって、ホロエンザイムの、活性を有する触媒サブユニットが、調節サブユニットから分離され各種リン酸化反応を進行させる。また、活性を有する触媒サブユニットは生体内にある熱安定性抑制蛋白質であるプロテインキナーゼ抑制剤(PKI)との結合で活性が阻害される調節メカニズムも存在することが知られている。
【0004】
特定の癌細胞はPKAの触媒サブユニットを細胞外部に排出することに基づいて、細胞外PKA触媒サブユニットと癌との相関関係が報告されている(非特許文献2)。このように排出される蛋白質は極少量であるので、特定の蛋白質を高い感度で定量的に測定する技術の重要性が強調されている。
【0005】
今までプロテインキナーゼ活性を分析する多くの方法が開発された。このような方法としては、リン酸化された基質を分離する過程を必要とする放射性同位元素を利用する方法、リン酸化した基質を認識する抗体を利用する免疫反応分析法(ELISA)と最近開発された蛍光に基づく蛍光偏光度及び時間差蛍光共鳴エネルギー遷移(time−resolved fluorescence resonance energy transfer)を利用する非放射性分析法などがある。
【0006】
最近、技術的発展でペプチドと蛋白質との間の相互作用を分析する多くの方法が開発されているが、特に、ペプチド−蛋白質結合研究に蛍光偏光法と毛細管電気泳動を利用する分析法がよく確立されている。しかし、このような方法で活性化したキナーゼを直接定量する方法は、酵素活性分析法やELISAによる信号増幅法に比べて感度が良くないことが現実である。さらに、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance;SPR)技術は生体分子相互作用分析のための効果的な技術として知られているが、非常に複雑であるという短所を有する。
【0007】
前記のように感度が低いか複雑な従来のペプチド−蛋白質結合測定法の問題が改善された高感度の簡便な測定技術の開発が要求される。
【非特許文献1】H.C.Clevers,M.A. Oosterwegel, K.Georgopoulos, Immunol, TODAY 14(1993)592−597
【非特許文献2】Yee Sook Choet al.PNAS 97(2)(2000)835−840
【非特許文献3】J.Coffin,M.Latev,X.Bi,T.T.Nikiforov,Anal.Biochem.278(2000)206−212
【非特許文献4】J.Lew, N.Coruh, I.Tsigelny, S.Garrod, S.S.Taylor, J.Biol.Chem.272(1997)1507−1513
【非特許文献5】Y.Lee, E.K.Lee, Y.W.Cho,T.Matsui, I.−C.Kang, T.−S.Kim, M.H.Han, Proteomics 3(2003)2289−2304
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、プロテインキナーゼA(PKA)を特異的に認識するプロテインキナーゼ抑制剤(PKI)ペプチドを含むPKA検出用バイオセンサーを提供することにある。
【0009】
本発明の他の課題は、前記のようなPKA検出用バイオセンサーまたはバイオアレイを有するPKA関連疾病の診断用キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はPKAの活性部位であるPKA触媒サブユニットを特異的に認識するPKIペプチド基板のPZT微細カンチレバーセンサーを利用して極少量の蛋白質を選択的に感知する検出技術を提供する。
【0011】
一般に、プロテインキナーゼが活性化すると、活性化した酵素によって生成されるリン酸化した産物を測定する酵素活性分析法で信号を増幅させることで分析できるが、活性化したキナーゼの直接的な測定は酵素の状態とキナーゼを媒介とした現象に対するより正確な情報を提供すると期待される。したがって、本発明ではPKA、特にPKAの触媒サブユニットに対して強い親和力を有するPKA阻害蛋白質であるPKIのアミノ酸配列のうち5番目から24番目までのアミノ酸配列を含むPKIペプチドを利用し、極少量の結合を感知するのに適したカンチレバーセンサーを利用して活性化したPKAを直接的に測定できるナノバイオセンサーアッセイ(nanobiosensor assay)を開発した。
【0012】
活性化した形態であるPKAの触媒サブユニットを特異的に検出する方法は、主にキナーゼ活性による放射性同位元素及び抗体を利用する分析法と、PKAを認識する抗体を利用するウェスタン−ブロットなどが使用されてきたが、このような方法は有害な放射性同位元素を使用したり、低い検出限界などの短所を持っている。
【0013】
そこで、本発明はPKAに対するペプチドリガンド基盤のセンサーシステムに関するもので、具体的には、前記蛋白質の活性サブユニットである触媒サブユニットを特異的に認知するPKIペプチドを利用する分析法を考案し、これを最適化して蛋白質との直接的な特異結合を定量分析に利用した。本方法ではPKIペプチドをカンチレバー表面に固定させてPKAの触媒サブユニットを捕獲することによって、放射性同位元素を利用する活性アッセイ法に比べて100倍以上の感度と大きい躍動範囲(ダイナミックレンジ)を示し、蛍光偏光を利用する直接結合分析及び酵素付き抗体を利用する信号増幅法に比べても非常に感度の良い定量分析技術を提供する。本発明によると、癌、心血管症候群、免疫疾患、内分泌障害などの各種疾病状態標識分子である前記PKAの触媒サブユニットを特異的で簡便に検出できるので、前記疾病の診断に有用に適用することができる。
【0014】
本発明の目的は、PKIペプチドリガンドを基盤としたPKA感知センサーを開発するための条件を最適化することにある。このために、PKA触媒サブユニットと、その結合リガンドであるPKIペプチドとの間の結合条件、特に、ATP及びその濃度による影響を試験するために、マグネチックビーズ、毛細管電気泳動、表面プラズモン共鳴(SPR)及び蛍光偏光度分析法などを利用した。そして、ナノメカニカルPb(Zr0.52Ti0.48)O(PZT)カンチレバーを製作してATPの有無によってセンサー表面に固定化したPKIペプチドとPKA触媒サブユニットとの結合程度を測定し、その結果を利用してPKA触媒サブユニットを定量的に分析することを成功した。
【0015】
最近、極度に弱い力、機械的な圧力と質量を測定するために微細カンチレバーに基づいたセンサーが開発されて前例のない感度と躍動範囲(dynamic−range)で特定生体分子間の相互作用が測定できるようになった。初期に、このようなセンサーは主に空気中の構成物を検出するのに使用されたが、次第にカンチレバーの一側に薄い膜をコーティングしたり、生体分子認識因子を固定化して、溶液中にある特定物質を検出するのに関心が集まっている。一般に、カンチレバーは躍動状態と静的状態の両方で特定物質との結合を測定することができる。カンチレバーの2つの面の間の吸着による表面緊張の差は静的状態で測定できるが、狭い躍動範囲と寄生偏向のような限界を持っている。
【0016】
反面、躍動モードカンチレバーは結合する表面における質量変化または硬度等、カンチレバーの機械的性質による共鳴振動数の変化(resonancefrequency shift)を測定するもので、これを利用する感知法は寄生偏向から生じる偏向信号(deflection signal)の変化に影響を受けないという長所を持つ。本発明は、前記のような特性を有するカンチレバーを使用して対象物質の検出感度を改善させたものである。
【0017】
つまり、本発明はカンチレバー及び、前記カンチレバー表面に固定されたPKIペプチドを含むPKA検出用バイオセンサー及び、検出対象試料、前記PKA検出用バイオセンサーまたはバイオセンサーアレイ及び定量手段を有するプロテインキナーゼ活性増加と、それに関連する疾病の診断用キットに関するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明はPKAに特異的に結合するPKIから由来するペプチドに基づくPZT微細カンチレバーセンサーを用いた定量分析法で、癌標識分子であるPKA触媒サブユニットを従来の活性分析法より100倍以上の感度で検出できるので、極微量の癌標識因子を検出する癌診断試験に有用に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0020】
まず、本発明はカンチレバーと、前記カンチレバー表面に固定されたPKIペプチドを含むPKA検出用バイオセンサーを提供する。
【0021】
前記カンチレバーは幅が5乃至100μmの範囲にあり、長さは10乃至300μmの範囲であるのが好ましい。カンチレバーの大きさが前記範囲より大きい場合には、所望する検出限界を得ることが難しく、より小さい場合には、高い検出限界を有するが、再現性を確保することが難しく、製造工程も複雑であるため、本発明のカンチレバーの大きさは前記の範囲にあるのが好ましい。カンチレバーの材質は躍動モードのカンチレバーで、メンブレン材質は高弾性特性を有するのが好ましく、ケイ素、窒化ケイ素(SiN;x=1乃至1.5)、炭化ケイ素(SiC)、ジルコニア(ZrO)及びアルミナ(Al)からなる群の中より選択された1つ以上の物質であるのが好ましい。例えば、本発明に使用されるカンチレバーは、50×150×2μm(横×縦×厚さ)の大きさのSiウエハー表面に、前記メンブレン材質で窒化ケイ素が蒸着されたSiN/Si基板で製作されたものであってもよい。また、前記カンチレバーは適切に表面改質されたものであってもよい。前記表面改質は能動型カンチレバーのための圧電薄膜を形成させるためで、表面改質物質としてPb系ペロブスカイト酸化物または酸化亜鉛(ZnO)等を利用することができる。例えば、圧電薄膜形成は乾式あるいは湿式でPb(Zr0.52Ti0.48)Oを表面に蒸着させて行ってもよい。本発明の一具体例において、前記カンチレバーはSiN/Si基板にPb(Zr0.52Ti0.48)Oが蒸着されたナノメカニカルPb(Zr0.52Ti0.48)O(PZT)カンチレバーであり得る。
【0022】
前記PKIペプチドはPKA触媒サブユニットと特異的に結合するペプチドである。前述した通り、PKAは2つの調節サブユニットと2つの触媒サブユニットで構成された4量体ホロエンザイムで、前記のように触媒活性を有する前記触媒サブユニットが調節サブユニットと結合して4量体状態で存在する場合は不活性の状態であり、触媒サブユニットがcAMPによって調節サブユニットと分離され遊離された状態で存在すれば活性化した状態となる。前記PKIは遊離された触媒サブユニットに特異的に結合するペプチドで、全ての哺乳類のPKIを用いることができ、好ましくは、ヒトPKI(Accession No. AAB21141;mtdvettyad fiasgrtgrr naihdilvss asgnsnelal klagldinkt egeedaqrss teqsgeaqge aakses;配列番号:1)を使用することができる。本発明で使用されるPKIペプチドは、PKAの触媒サブユニットとの特異な結合活性を考慮して、少なくともPKIの5番目から24番目までの20個のアミノ酸残基(TTYADFIASGRTGRRNAIHD;配列番号:2)を有するアミノ酸配列を含む20乃至76個のアミノ酸からなるペプチドであってもよく、より好ましくは、前記PKAの触媒サブユニットに特異的に結合するPKIペプチドは5番目から24番目までの20個のアミノ酸残基「TTYADFIASGRTGRRNAIHD」(配列番号:2)を有するアミノ酸配列であるのが好ましい。前記アミノ酸番号は開始コドンによるアミノ酸であるメチオニンを除いて、その次のアミノ酸から算出したものである。
【0023】
前記PKIペプチドは通常の如何なる化学的カップリング方法でも、カンチレバー表面に固定化できる。例えば、前記PKIペプチドの末端にビオチンを結合させて複合体を形成し、前記カンチレバー表面にストレプトアビジン(streptavidin)を固定化し、PKIペプチドに結合されたビオチンとカンチレバー表面に固定化したストレプトアビジンとの相互作用によってPKIペプチドをカンチレバー表面に固定化することができる。或いは、エポキシ基を有する物質でカンチレバー表面をコーティングし、ペプチドのアミノ基と反応をさせる方法でペプチドをカンチレバー表面に固定化することもできる。この他にも、ペプチドを表面に固定化できる全ての化学的カップリング方法を用いることができ、このような方法は当業者によく知られている。
【0024】
本発明のPKAとPKIの結合有無は、カンチレバーの共鳴振動数変化によって測定できる。したがって、前記バイオセンサーは共鳴振動数変化の測定装置を追加的に有することができる。
【0025】
本発明の前記バイオセンサーは、前記PKIが表面に固定されたカンチレバーを2つ以上備えてもよい。この場合、カンチレバーの個数は所望の検出感度と対象試料種類などによって適切に調節でき、通常3個乃至12個にできる。また、カンチレバー間の間隔は特に制限しないが、最上の検出感度を得るために、100乃至500μmが好ましい。この範囲より間隔が狭い場合には干渉の影響があり得て、反対に広い場合はチップの大きさが過剰に大きくなる短所がある。
【0026】
また、他の側面において、本発明は検出対象試料と、前記バイオセンサーと、検出手段を含むPKAの活性化に関連する疾患の診断用キットを提供する。
【0027】
癌、心血管症候群、免疫疾患、内分泌障害などの各種疾病状態でPKAの活性増加が観察されるので、PKAの活性を測定することによって、前記疾病を診断できる。PKAの活性は活性化状態である解離触媒サブユニットの存在水準で決定でき、解離触媒サブユニットの存在水準は、これと特異的に結合するPKIペプチドとの結合程度によって測定できる。したがって、前記バイオセンサーまたはバイオアレイに固定化されたPKIペプチドのPKA触媒サブユニットとの結合程度を測定してPKAの活性化と関連する疾患を簡便で容易に診断できる。本発明の診断用キットによって診断可能なPKAの活性化によって診断可能な疾病は、癌、心血管症候群、免疫疾患、内分泌障害、脳卒中、感染性疾患からなる群の中から選択されたものでもよい。
【0028】
前記調節サブユニットから分離されて活性化したPKA触媒サブユニットは、ATPの存在下でPKIペプチドと効果的に結合するので(下記の実施形態1参照)、本発明の診断用キットはPKA活性の検出効率を高めるために、ATP溶液を追加的に含むことができる。つまり、検出対象試料を適切な濃度のATP溶液と反応させて、前記試料内のPKAを活性化することができる。この時、試料内PKAを効果的に活性化するために、前記ATPの濃度は10乃至1000μMであるのが好ましく、10乃至500μMであるのがさらに好ましい。
【0029】
前記検出対象試料は患者から得たもので、患者の如何なる細胞または組織でもよいが、好ましくは、血液、血漿などの最少侵襲で確保可能な試料または分泌体液からなる群の中から選択されるが好ましい。前記患者は如何なる哺乳類でもよいが、好ましくはヒトである。
【0030】
本発明の診断用キットに含まれる検出手段は試料内のPKAと前記バイオセンサのカンチレバー表面に固定化されたPKIとの結合を検出する全ての手段を含む。例えば、前記検出手段はカンチレバーの共鳴振動数変化を測定する手段であり得る。
【0031】
以下、本発明を実施形態を通じてより詳しく説明する。しかし、これらの実施形態は本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲がこれら実施形態によって制限されるわけではない。
【実施例】
【0032】
下記の実施形態において、本発明者らはPKA触媒サブユニットを特異的に認識するPKIペプチド基盤のPZT微細カンチレバーセンサーを利用して、従来の活性分析法より100倍以上の感度を有する方法を考案し、これを実施した。本発明の実施形態ではPKA触媒サブユニットとペプチドリガンドであるPKIペプチドとの結合を蛍光偏光法と毛細管電気泳動、SPR及びELISA法を利用して測定した。また、それぞれについてATPがPKA触媒サブユニットとPKIペプチドの結合に与える影響を調べた。さらに、本発明の実施形態ではPZT微細カンチレバーにPKIペプチドを固定化してPKA触媒サブユニットの検出限界とATPが結合に与える影響も調べた。
【0033】
実施形態1:PKIペプチドによるPKA活性阻害及びPKA−PKI結合に対するATPの影響
1.1.蛍光偏光度を利用するPKA活性測定によるPKIペプチドのPKA活性阻害測定による結合分析
本実施形態では蛍光標識された基質ペプチドがリン酸化されると、陽イオン性ポリアミノ酸と選択的な結合を行うことによって、蛍光偏光度増加を誘発させる原理を利用したキナーゼアッセイ(非特許文献3)を使用し、本実施形態に適合するようにその条件を最適化した。正味の電荷(net charge)値が0である蛍光標識された基質ペプチドを使用して、キナーゼによってリン酸化されて陰電荷を帯びると、陽イオン性ポリアミノ酸との静電気的な相互作用で結合が生じるので、これによる蛍光偏光度の変化を測定してキナーゼの活性を分析した。
【0034】
PKAに対する分析条件を最適化するために、PKAの基質であるkemptide(LRRASLG)のN−末端に蛍光標識分子であるフルオレセイン(fluorescein)を付着し、これを含んで全電荷が0になるようにして、PKAによってリン酸化されると、(−)電荷を帯びるように設計したものを購入した(F-kemptide;PEPTRON社、韓国)。このような基質ペプチドであるF−kemptide(1μM)を使用して、50mMのHepes、pH7.5、5mMのMgCl、1mMのDTTの緩衝溶液で100μMのATP存在下でPKAと反応させた。反応後、F−kemptideの最終濃度が0.1μMになるように、50mMのHepes緩衝溶液(pH7.5)に希釈し、poly−Arg(MW75,000〜150,000)の濃度を増加させながら蛍光偏光度を測定した。蛍光偏光度は発光測定器(LS−50B luminoscence spectrometer、Perkin Elmer社、米国)を使用して、励起波長488nm、発光波長520nmで測定した。
【0035】
前記で得られた結果を図1のAに示した。前記図1のAから分かるように、PKAと反応後のF−kemptideはpoly−Argの濃度が増加することによって蛍光偏光度が顕著に増加したが、PKAと反応をさせなかったF−kemptideの場合には蛍光偏光度がほとんど増加しなかった。反面、poly−Argを添加しなかった時には、リン酸化された基質とリン酸化されていない基質の蛍光偏光度値の差がなかった。
【0036】
リン酸化された基質とリン酸化されていない基質の蛍光偏光度値の差が最大であるpoly−Argの最適濃度は5μMに決め、この濃度でPKAの時間に応じる反応を前記の方法で測定した。その結果、PKAとの反応時間が増加することによって蛍光偏光度が増加し、飽和した結果を示し、これを図1のBに示した。
【0037】
また、蛍光偏光度を利用する活性阻害分析のために、N−末端にビオチンを有するPKIペプチド(5番目から20番目までの20個のアミノ酸残基を持つ)であるビオチン−PKI(5−24)(ビオチン−TTYADFIASGRTGRRNAIHD;配列番号:2)を合成した(PEPTRON社、韓国)。多様な濃度のビオチン−PKI(5−24)存在下に13.2nMのPKAと1μMのF-kemptideを混合して室温で15分間反応させた後に分析した結果、蛍光偏光度値がPKI濃度に逆比例することが分かり、IC50値が約54nMであった(図2参照)。
【0038】
その後、磁性を持つビーズ(M−280 streptavidin−coated magnetic beads、Dynal Biotech社、ノルウェー)にビオチン−PKI(5−24)を固定してPKAを捕集する実験を実施した。ストレプトアビジンでコーティングされた磁性ビーズにビオチン−ストレプトアビジン相互作用を利用してビオチン−PKI(5−24)を固定化した後、ATPがある場合とない場合の条件で13.2nMのPKAを含んでいる緩衝溶液(50mMのHepes、pH7.5、5mMのMgCl、1mMのDTT)にビーズ濃度を変化しながら添加して、1分間反応させた。ビーズを除去した後、上澄液を取ってPKAの活性を分析した。その結果、PKAはビーズのPKIペプチド結合するが、400μMのATPがある時にビーズにさらによく結合することが明らかになり、これはATPがPKA−PKI結合を促進することを意味する。このような結果はPKI蛋白質によるPKAの阻害においてATPのsynergistic binding(協同結合)が必要であるという従来の報告と一致する(非特許文献4)。
【0039】
1.2.毛細管電気泳動とSPRを利用したPKA−PKI結合に対するATPの影響
PKA−PKI結合に対するATPの影響を毛細管電気泳動で分析するために、N−末端にフルオレセインで蛍光標識されたF−PKI(5−24)を合成した(PEPTRON社、韓国)。毛細管電気泳動装置は溶融シリカ(fused−silica)capillary(Polymicro社、米国;長さ27cm、内径50μm)が装着されたBeckman P/ACE5000 CE−LIF system(Beckman−Coulter社、米国)を使用して実施した。システムに付属している488nm波長の3mWアルゴンイオン(Ar−ion)レーザーで蛍光物質を励起させ、520±10nmのフィルターで、発光したシグナルはLIF検出器によって捕集した。分析及び毛細管処理に使用された全ての溶液は0.2μm孔径(pore−size)フィルターでろ過し、毛細管は1NのNaOHと蒸溜水をそれぞれ5分間流して洗浄した後に使用し、各電気泳動の間には1NのNaOH、蒸溜水、緩衝溶液で2分ずつ毛細管を洗浄した。試料は0.5psiで1秒間注入され、10.8kVの電気をかけて分離した。電気泳動用緩衝溶液は50mMのHepes、pH7.5、1MのNDSB−195、0.1%のTriton X−100、10mMのDTTを含んでいて、PKA−PKI反応溶液に5mMのMgClを追加的に添加した。
【0040】
1MのNDSB−195と0.1%のTriton X−100がガラス表面のペプチドの吸着を減少させることが知られており、これらを緩衝液に添加して再現性のあるペプチドピークを得、その結果を図3に示した。図3から分かるように、ATPが含まれていない緩衝液にF−PKI(5−24)とPKAを添加して毛細管電気泳動で分析した時、PKAがない場合に比べてF−PKI(5−24)のピーク値がほとんど減少していない。反面、F−PKI(5−24)とPKAの複合体ピークを分離してみることはできなかったが、ATPの濃度が増加することによってF−PKIのピークが減少し、このような結果はATPがF−PKI(5−24)とPKAの複合体形成に寄与することを間接的に証明する。一方、500μMのATPとF−PKIのみを混合した場合、F−PKI(5−24)ピークの変化はなかった。
【0041】
次に、PKA−PKI結合に対するATPの影響をSPR分析器であるBiacore3000 biosensor system(Biacore社、米国)を利用して分析した。CM5 sensor chip(Biacore社、米国)表面をN−エチル−N'−3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)とN,N−ヒドロキシこはく酸イミド(NHS)で活性化した後、50μg/mLのストレプトアビジンを流してアミンカップリング法でセンサー表面にストレプトアビジンを固定化した。このように固定されたストレプトアビジンにビオチン−PKI(5−24)を5μM/minの速度で100秒間流して結合させた後、このセンサーに132nMのPKAをATP濃度を変化させながら混合した溶液を30μM/minの速度で100秒間流した後、200秒間緩衝溶液を流して計測図を得て、これを図4に示した。
【0042】
前記図4に示された結果から、ビオチン−PKI(5−24)が固定されたセンサー表面にPKAが相互作用することにおいてATPの濃度が影響を与えるということが分かった。ここで、ATPの濃度増加によってPKAのon−rateは増加し、off−rateは減少する傾向が見られた。PKIの代わりにPKAに対する親和力が10μM以上の結合力の弱いペプチドであるビオチン−Ala−kemptide(ビオチン−LRRAALG)で同じ実験を行った時には、高濃度のATP存在下でもPKAの結合が全く見られなかった。
【0043】
1.3.蛍光偏光度を利用したPKA−PKI結合分析
PKA−PKI結合をより直接的に確認するために、F−PKI(5−24)を利用して前記実施形態1の方法で蛍光偏光度を測定及び分析し、その結果を図5のAに示した。前記図5のAから分かるように、13.2、66、132nMのPKAに対して各々PKAの濃度が一定な状態で、ATPの濃度が増加することによって蛍光偏光度が増加して飽和状態に到達することが分かる。100nMのF−PKI(5−24)を50mMのHepes、pH7.5、5mMのMgCl、1mMのDTT緩衝溶液に混合してPKAの濃度を変化させながら蛍光偏光度を測定して、その結果を図5のBに示した。図5のBに示されているように、100μMのATPを添加した場合にはPKA53nMまでその値が線形的に増加し、ATP不在時に非特異結合による微々たる蛍光偏光変化が現れた。
【0044】
実施形態2:微細カンチレバー分析
バイオセンサーとして利用するために外部発振器(external oscillator)より電気的信号分析が便利なsmart piezoelectic materialで構成されたPZTナノメカニカルカンチレバーセンサーアレイを製作した。
【0045】
100mm直径のp−doped Siウエハーに低圧化学蒸着法(LPCVD)で1.2μm厚さの低応力シリコンナイトライドを蒸着した。Pt/Ta薄膜の下部電極をシリコンナイトライド/シリコン基板にRFマグネトロンスパッタリングした後、基板にジオール系ゾル−ゲル技法によって0.5μmPZT薄膜を成膜した。ここに、DCスパッタリングで上部電極にPt層を集積して金属−強誘電体−金属型蓄電器(metal−ferroelectric−metalcapacitor)構造を作った。
【0046】
イオンミリング(ion milling)方式で上部電極でPtをエッチングした後、誘導結合プラズマを利用して圧電物質であるPZTをエッチングした。Pt下部電極もやはりイオンミリングでパターニングし、下部SiN窓は反応性イオンエッチングでパターニングした後、KOHシリコンエッチング液で湿式エッチング処理した。最後に、反応性イオンエッチングでSiNエッチングしてカンチレバーを完成し、SiO薄膜を蒸着して電気化学的保護層を作った。本実施形態のバイオセンサーは3または12個のカンチレバーアレイで構成し、各カンチレバーの寸法は50μm×150μmになるようにした。
【0047】
PKA結合アッセイのために、前記のように製作されたカンチレバー表面を次の通りに機能化し、このように製作されたカンチレバーを図6のAに模式的に示した。
【0048】
まず、電子ビーム蒸発器(e−beam evaporator)を利用して、ナノメカニカルPZTカンチレバーの下部SiN面上にCr(10nm)/Au(50nm)層を蒸着した。このように処理したカンチレバーをH:HSO(1:4 vol/vol)溶液と脱イオン水で順次に洗浄した。洗浄されたカンチレバー表面上に蛋白質のアンモニウムイオンを認識して固定化させることができるCalixcrown(acalixarene derivative)を処理して、自己組織化単分子層(self−assembled monolayer;SAM)を形成した(非特許文献5)。次に、ストレプトアビジン(10μg/ml PBS中)を常温で一時間処理してCalixcrown SAMにストレプトアビジンを固定した後、30mlのPBST(PBS中、0.5%Tween20、pH7.5)で洗浄して、窒素ガス下で乾燥させた。非特異結合を最少化するために、前記のように処理されたカンチレバーを5%のBSAを含むPBSに常温で一時間浸漬してPBSTで洗浄した後、200nMのビオチン−PKI(5−24)を含むPBS緩衝溶液で常温で一時間処理して30mlのPBSTで洗浄した後、窒素ガス下で乾燥させた。ビオチン−PKI(5−24)が固定されたカンチレバーに常温で30分間PKA(50mM Hepes、pH7.5、5mMのMgCl中、1mMのDTT)を処理し、50mMのHepes、pH7.5、5mMのMgCl、1mMのDTTで洗浄した後、精密インピーダンス解析器(4294A、Agilent technologies社、USA)でカンチレバーの共鳴振動数を測定して、その結果を図6のBに示した。
【0049】
Calixcrown SAMで表面処理されたカンチレバーにストレプトアビジンを固定化した後、ビオチン−PKIを結合させてPKA−PKIの結合に対するATPの影響を調べるために、ATPの有無によって多様な濃度のPKAを含む反応溶液に反応させた。PKA−PKI結合を定量的に測定するために、3個の同じ大きさ(50μm×150μm)のカンチレバーアレイセンサーを使用した。カンチレバーの共鳴振動数が飽和された値に至るまで反復的に測定した時、ATPを含む場合に共鳴振動数がさらに大きく変化し、この結果はATPがPKA−PKIの結合を助けるということを意味する。
【0050】
次に、このような結合を定量的側面で測定した。図7のCに示したように、ATP存在時にPKAの活性サブユニットの濃度が増加することによって、共鳴振動数の差も増加することが確認された。また、ATP存在時に活性化したPKAを探知することにおいて、感度限界は10pM以下であると確認された。これは微細カンチレバーとPKA触媒サブユニットに対する特異的ペプチドの組合わせで、簡単で直接的に活性化したPKAに対するセンサーシステムを提供する。また、このようなペプチド基盤のカンチレバーセンサーは活性化した形態のPKAが特定癌腫細胞株から細胞外部に排出されるという点を考慮すると、癌などの診断にも利用できる。
【0051】
比較例1:32P−ATPを利用した活性測定
前記のような本発明のカンチレバーセンサーによる測定と比較するために、放射性同位元素を利用したPKAの活性測定を行った。PKAの基質ペプチドとしてkemptide 10μM)を使用して、50mMのHepes、pH7.5、5mMのMgCl、1mMのDTT緩衝溶液で32P−ATP(5μCi)を含む50μMのATP存在下でPKA触媒サブユニットの濃度を変化させながら、試料当り50μLの容量で常温で15分間反応させた。反応試料に10μLの30%(v/v)リン酸を添加して反応を停止させた後、リン酸化したkemptideの放射能定量のために停止した反応試料のうちの40μLをP81ホスホセルロースペーパーにスポッティングして、多量の脱イオン水で5回以上3時間程度十分に洗浄し、反応していない32P−ATPを除去し、P81ホスホセルロースペーパーを乾燥した後、Phospho−imager(BAS32P−image analyzer、FUJIFILM Life Science社)にて放射能定量を行った。前記で得られた結果を図7のAに示し、これから少なくとも1nM以上のPKAで活性分析が可能であることが分かった。
【0052】
比較例2:Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay(ELISA)を利用する分析
本発明のカンチレバーセンサーによる測定と比較するための他の方法として、抗体に付着された酵素による信号増幅が可能なELISAを利用する検出方法でPKA−PKI結合を分析した。ストレプトアビジンがコーティングされた96−マイクロウェルプレートにビオチン−PKI(5−24)ペプチドをPBST緩衝溶液(10mMのNaHPO、2mMのKHPO、2.7mMのKCl、137mMのNaCl、0.5%のTween−20、pH7.4)中で結合させた後、5mMのMgClと200μMのATPが含まれているPBSTにPKA触媒サブユニットの濃度を異ならせて添加し、1時間程度反応させた。5mMのMgClと200μMのATPが含まれた300μLのPBSTで3回洗浄した後、PKA触媒サブユニットを特異的に認識する抗体(マウスモノクローナル抗体、abcam社、UK)を5mMのMgClと200μMのATPが含まれたPBSTに1/500に希釈した100μLずつ添加した後、常温で1時間結合させた。
【0053】
再び、5mMのMgClと200μMのATPが含まれた300μLのPBSTで3回洗浄した後、この抗体を認識する二次抗体であるHRP(horse−radish peroxidase)付着された抗体(rabbit anti−mouse IgG−HRP、abcam社、UK)を5mMのMgClと200μMのATPが含まれたPBSTに1/5,000に希釈して、100μLずつ添加して1時間結合させた。5mMのMgClと200μMのATPが含まれた300μLのPBSTで3回洗浄した後、HRPの基質であるTMB(3,3,5,5−tetramethylbenzidine、GenDEPOT社、USA)100μLを添加して約30分間反応させた後、100μLのTMB停止緩衝液(stop buffer)(GenDEPOT社、USA)を添加して反応を停止させ、450nmで吸光度を測定した。
【0054】
その結果を図7のBに示し、これから少なくとも1nM以上のPKAで吸光度変化による信号感知が可能であることが分かった。
【0055】
結果
前記比較例1及び2からの結果と、均質蛍光偏光測定による結合分析結果を実施形態のカンチレバーから得られたデータを比較して、図8のA、Bに示した。
【0056】
図8から分かるように、本発明のPKIペプチドをカンチレバー表面に固定してPKAの触媒サブユニットの結合を共鳴振動数で分析した方法が、放射線同位元素を利用する活性測定法に比べて100倍以上の感度と大きい躍動範囲を示し、蛍光偏光を利用する直接結合分析及び酵素付き抗体を利用する信号増幅方法に比べて非常に感度が優れていることが分かる。結論的に、微細カンチレバーとPKA触媒サブユニットに対する特異なペプチドの組合わせで、簡単で直接的な活性化したPKAに対するセンサーシステムを使用すると、極微量のPKA触媒サブユニットを二次的信号増幅なく従来方法に比べて簡単に定量することができ、このような方法はPKA触媒サブユニットを測定する癌診断に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、実施形態1によってpoly−Arg存在下で蛍光偏光(fluorescence polarization;FP)測定でプロテインキナーゼA活性を測定した結果を示し、Aは、1μMのF−kemptideを100μMのATPを含む反応バッファーで13.2nMのPKAと室温で15分間反応させた後、F−kemptideを100nMに希薄にし、poly−Arg濃度を増加させながらFPの変化を測定した結果を示すグラフ(●+PKA/○−PKA)であり、Bは、PKAによるリン酸化反応の時間による変化を5μMのpoly−Arg存在下で測定したFPの変化値を示すグラフである。
【図2】図2は、ビオチン−PKI(5−24)とPKAの結合によるPKAの活性阻害を実施形態1の活性分析法(13.2nMのPKAと1μMのF−kemptideを混合して室温で15分間反応させる)で定量分析した結果を示すグラフである。
【図3】図3は、110nMのPKAと50nMのF−PKI(5−24)ペプチド間の結合を、ATP濃度を0、0.025、0.1、1、10、500μMに増加させながら、毛細管電気泳動法で分析した電気泳動図である。この時、最も高いピークはPKAのないF−PKI(5−24)のみの電気泳動図である。
【図4】図4は、SPR分析によってPKAとビオチン−PKI(5−24)ペプチド間の結合を分析した結果を示し、ビオチン−ストレプトアビジン相互作用を通じて、ビオチン−PKI(5−24)ペプチドが表面に固定化しているBiacore CM5バイオセンサーを使用し、多様な濃度(1、5、10、50、100μM)のATPと混合されたPKA溶液を前記PKIペプチドが結合されたチップと基準チップ(ストレプトアビジンのみ固定しているチップ)にそれぞれ適用して、前記PKIペプチドが結合されたチップでの反応から前記基準チップの反応を差し引いて得られた計測図である。
【図5】図5は、PKAとF−PKI(5−24)の結合を室温で均質蛍光偏光(fluorescence polarization;FP)測定法で分析した結果で、Aは、100nMのF−PKI(5−24)と13.2nM(●).66nM(▲)または132nM(■)のPKAとをATP濃度を増加させながら反応バッファーで混合し、蛍光偏光変化を測定して得られた結果を示すグラフであり、Bは、100nMF−PKI(5−24)をPKA触媒サブユニットの濃度を増加させながら混合して、蛍光偏光を測定した結果を示すグラフである(◆+100μMのATP/●−ATP)。
【図6】図6のAは、PZTカンチレバーのAu表面にCalixcrown SAM(self−assembled monolayer:自己組織化単分子層)、ストレプトアビジン及びビオチン−PKI(5−24)が固定されており、これにATPと結合されたPKA触媒サブユニットとを反応させ、PKA触媒サブユニットを捕獲するセンサーアッセイの概略的模式図である。図6のBは、このような構成のセンサーアッセイにおいて、3個の50μm×150μmアレイで構成されたカンチレバーチップ(5cm×5cm)上で132nMのPKAをインキュベートして測定した共鳴振動数変化を示すグラフである(+/−100μMのATP)。
【図7】図7は、既存のPKA定量分析法を本発明と比較したもので、Aは放射性同位元素である32Pで標識されたATPを利用してPKAの濃度を変化させながら、基質のリン酸化程度を分析したPKA活性分析結果であり、Bは、ビオチン−PKI(5−24)を固定した96−マイクロウェルプレートにPKAの濃度を変化しながらインキュベートして、捕獲されたPKAを酵素付きPKA特異的抗体を利用して分析したELISA結果であり、Cは、本発明によるビオチン−PKI(5−24)を固定した12個の50μm×150μmアレイで構成されたカンチレバーチップ(5cm×5cm)にPKA濃度を変化しながらインキュベートして結合されたPKAを共鳴振動数変化法で測定した結果を示すグラフである(■+100μMのATP/●−ATP)。
【図8】図8は、本発明のカンチレバーを利用する方法と他の分析法との測定結果を比較したもので、Aは、図7のCに示した本発明の結果を図7のAに示した放射性同位元素を使用した活性分析結果と共にフローティングしたグラフであり、Bはは、図7のCに示した本発明の結果を図5のBに示した蛍光偏光を利用した直接的な結合分析結果及び図7のBに示す抗体に付着された酵素による信号増幅が可能なELISAを利用した検出結果と共にフローティングしたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンチレバー及び、前記カンチレバー表面に固定されたプロテインキナーゼ抑制剤(PKI)ペプチドを含み、
前記プロテインキナーゼ抑制剤(PKI)ペプチドは配列番号:1の5番目から24番目までの20個のアミノ酸残基を含む20個乃至76個のアミノ酸を有することを特徴とするプロテインキナーゼA(PKA)検出用バイオセンサー。
【請求項2】
前記プロテインキナーゼ抑制剤(PKI)ペプチドは配列番号:1のアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1に記載のプロテインキナーゼA(PKA)検出用バイオセンサー。
【請求項3】
前記プロテインキナーゼ抑制剤(PKI)ペプチドは配列番号:2のアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1に記載のプロテインキナーゼA(PKA)検出用バイオセンサー。
【請求項4】
前記カンチレバーは幅が5乃至100μmの範囲で、長さは10乃至300μmであり、ケイ素、窒化ケイ素(SiN;x=1乃至1.5)、炭化ケイ素(SiC)、ジルコニア(ZrO)及びアルミナ(Al)からなる群の中から選択したメンブレンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のプロテインキナーゼA(PKA)検出用バイオセンサー。
【請求項5】
前記カンチレバーの表面がPb系ペロブスカイト酸化物または酸化亜鉛(ZnO)からなる群の中より選択される1つ以上の物質に改質されることを特徴とする、請求項4に記載のプロテインキナーゼA(PKA)検出用バイオセンサー。
【請求項6】
前記カンチレバーはSiN/Si(x=1乃至1.5)基板にPb(Zr0.52Ti0.48)Oが蒸着されたPb(Zr0.52Ti0.48)O(PZT)カンチレバーである、請求項5に記載のプロテインキナーゼA(PKA)検出用バイオセンサー
【請求項7】
前記カンチレバー表面にストレプトアビジンが固定化され、前記PKIペプチドのN−末端にはビオチンが結合され、ストレプトアビジンとビオチンの間の相互作用によってPKIペプチドがカンチレバー表面に固定化されることを特徴とする、請求項1に記載のプロテインキナーゼA(PKA)検出用バイオセンサー。
【請求項8】
共鳴振動数変化測定手段を追加的に有することを特徴とする、請求項1に記載のプロテインキナーゼA(PKA)検出用バイオセンサー。
【請求項9】
PKIペプチドが表面に結合されたカンチレバーを2つ以上有することを特徴とする、請求項1乃至8のうちの一項に記載のプロテインキナーゼA(PKA)検出用バイオセンサー。
【請求項10】
前記2つ以上のカンチレバー間の間隔が100乃至500μmであることを特徴とする、請求項9に記載のプロテインキナーゼA(PKA)検出用バイオセンサー。
【請求項11】
検出対象試料;
1つ以上の請求項1乃至8に記載のバイオセンサー;及び
定量手段を有することを特徴とするプロテインキナーゼA(PKA)過多活性と関する疾病の診断用キット。
【請求項12】
前記疾病は癌、心血管症候群、免疫疾患、内分泌障害、脳卒中及び感染性疾患からなる群の中より選択される1つ以上の疾病であることを特徴とする、請求項11に記載の診断用キット。
【請求項13】
10乃至1000μMのATPを追加的に含むことを特徴とする、請求項11に記載の診断用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−32676(P2008−32676A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318816(P2006−318816)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(591074116)韓国科学技術研究院 (17)
【Fターム(参考)】