説明

プロテオグリカンを減少させた軟組織異種移植片

【課題】人間に移植するための実質的に非免疫原生の柔組織異種移植片を含む製造物品の提供。
【解決手段】人間以外の動物から柔組織の少なくとも一部分を除去することにより異種移植片を提供し、異種移植片を塩水及びアルコール中で洗浄し、細胞破壊処理し、プロテオグリカン除去因子及びあるいはグリコシダーゼを使用して消化処理し、随意的には、キャッピング処理を使用して柔組織異種移植片を調製するための方法。上述の方法で製造した製造物品。更に、人間に移植するための呪詛式異種移植片であって、人間以外の動物から採取した柔組織の一部分を含み、該一部分が細胞外成分と、実質的に死んだばかりの細胞とを含む柔組織異種移植片。細胞外成分は、プロテオグリカン分子が減少される。本発明の各異種移植片は実質的に非免疫原生であり、実質的に天然柔組織のそれと同じ機械特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は人体の膝関節欠損処置の分野に関し、詳しくは、不具合を生じたあるいは損傷を受けた人体の膝関節の軟組織を、人体以外の動物の実質的に免疫学的に適合する軟組織を使用して交換及び補修することに関する。
【背景技術】
【0002】
(従来の技術)
本明細書中で、“軟組織”とは、メニスカスや関節軟骨等の軟骨性構造、前方膝十字靱帯のような靱帯、腱、及び心臓弁に対して参照されるものとする。
メニスカス軟骨:
特に、内側及び外側の軟骨性のメニスカス軟組織を介して脛骨の表面プラトーと関節で連結された大腿部関節顆及びこれら構造部分の全ては様々の靱帯により然るべく保持される。内側及び外側の各メニスカスは、繊維軟骨細胞と呼ばれる細胞、コラーゲン繊維や弾性繊維の細胞間マトリクス、のみならず、様々なプロテオグリカンから成り立っている組織である。損傷を受けていないメニスカスは、通常の活動中に反復性の圧縮負荷を日常的に受ける膝関節内での相互作用する骨表面での適正な力配分、安定化、潤滑を確実化し、膝における衝撃を吸収する。内側及び外側の各メニスカスの衝撃吸収機能の大半は軟骨に固有の弾性特性により得られる。メニスカスが傷、病気あるいは炎症等により損傷を受けると関節炎性の変化が膝関節に生じ、結局、膝関節の機能が失われる。
【0003】
成人の関節間軟骨は破壊されると有意程度には自然再生しないことから、損傷を受けた成人のメニスカスは歴史的に様々な外科的介入を使用して処置されてきている。損傷を受けたメニスカスは除去され人工補装具と交換される。硬質プラスチック製の大腿部部材と金属製の脛骨部材とを有する人工膝関節が米国特許第4,034,418号に記載される。米国特許第4,344,193号や同第4,502,161号に示されるような、シリコーンゴムあるいは天然ゴムのような弾性材料を用いる数多くのメニスカス人工補装具が考案された。米国特許第5,092,894号、同第5,171,322号には、メニスカス人工補装具のための更に別の、変形性の、可撓性の弾性材料、例えば、コラーゲン、腱、あるいは繊維軟骨等が開示される。米国特許第5,358,525号には、小型のボールベアリングあるいはゼラチン状流体を充填したポリエチレンプラスチックで構成される軟骨代替具が記載される。しかしながら、既知の人工補装具は弾性に乏しく、従って、本来のメニスカスの特性である衝撃吸収性が低く、それ故、損傷を受けたメニスカス治療のためには不満足なものであった。更には、既知の人工補装具は日常的な膝関節機能に固有の力に耐え得ないことが分かった。
【0004】
本願発明の発明者の一人は、初期の特許(米国特許第4,880,429号、同第5,007,934号、同第5,116,374号、同第5,158,574号)において幾つかの改良型のメニスカス人工補装具を提供した。これらの特許では、グリコサミノグリカン分子を随意的に含む再生架橋コラーゲンのような加工天然繊維の乾燥多孔質マトリクスから構成されたメニスカス人工補装具が一般に開示される。一般に、こうしたメニスカス人工補装具のためのコラーゲンは動物のアキレス腱あるいは皮膚から採取されたものである。再生プロセスにより、元の組織に追加的な弾性を授け得る、グリコプロテイン、プロテオグリカン、脂質、天然グリコサミノグリカンその他のような非コラーゲン材料が除去されてしまう。
【0005】
関節軟骨:
関節軟骨軟組織は、人間及び動物の関節を構成する結着部を構成する全ての骨の端部を被覆する。関節軟骨は繊維軟骨と、コラーゲン繊維の細胞外マトリクスのみならず様々なプロテオグリカンから成り立っている。軟骨は関節内で力を配分するための機構として、また、骨どうしの接触領域の潤滑体として作用する。関節軟骨がないと関節を容易には動かせなくなるほどの応力集中や摩擦が生じる。関節軟骨が失われると通常は疼痛性の関節炎を生じ、関節の動きが悪くなる。
成人の場合、損傷を受けた関節軟骨は、補修、交換若しくは切除を含む様々な外科的介入により伝統的に処置されてきている。補修あるいは切除によれば、通常は一時的であって関節での平常的な力に耐えるには不十分ではあるものの、組織は再生され得る。
【0006】
関節軟骨は、通常は、骨膜移植(Engkvist(1979)Scan J.Plast.Reconstr.Suro.13:361−369;Rubak(1982)Acta Orthop.Scan.53:181−186)による同種移植片の移植(Sengupta他、(1974)J.Bone Suro.56B(1):167−177;Rodrigo他、(1978)Clin Orth 134:342−349)あるいは、金属製及びあるいはプラスチック製の構成部品(Rubash他、(1991)年版、Clin.Orth.Rel.Res/271:2−96)を使用して交換される。死んだ軟骨組織の同種移植は長年試みられてきているが成功例はごく少ない。この方策は、移植片に対するホストの免疫学的反応、低温保存プロセスの失敗、付着部位の破損が生じることで、長い間、部分的においてのみ成功を収めてきたに過ぎない。関節面全体を金属製及びプラスチック製の構成部品と交換する方法は、年輩の、体をそれほど動かさない患者に対しては非常にうまく行くが、運動性の活動上生じる衝撃を許容するためには一般に不十分であると考えられ、それ故、通常の関節機構が修復することが示されたことはない。
【0007】
従来の別の方策では関節軟骨は骨及びあるいは人工材料からなる人工補装具を使用して交換される。例えば、米国特許第4,627,853号には、脱ミネラル化した同種あるいは外因性の骨セグメントが交換部品として使用される。こうした交換部品が正しく機能するか否かは骨セグメントの脱ミネラル化の違いに基づく。米国特許第4,846,835号には、繊維軟骨を移植して損傷した関節軟骨の回復を促進するための移植技法が記載される。米国特許第4,642,120号には、胎生の繊維軟骨を含むゲル様組成物の使用が記載される。米国特許第5,306,311号には、生体内での外形を本来の関節軟骨と実質的に同じにさせた乾燥多孔質の体積マトリクスを含む関節軟骨人工補装具が記載される。
【0008】
これらの考案があるにも拘わらず、関節軟骨の軟組織を恒久的な人工材料製の構造物と交換する処置は一般に満足と言えるものではなく、関節軟骨として好適で、天然の、あるいは天然のそれと類似する、再吸収性の材料からなる構造物は開発されていない。ほ乳類の関節部の対向する関節軟骨は脆く、摩耗性の表面ばかりか、従来の人工関節移植によって生じる通常状態からのコンプライアンス変動にも耐え得ない。更にまた、関節部の力は体重の数倍であり、膝と臀部の場合ではそうした力の発生は代表的には年間当たり百万サイクルを上回る。故に、従来の恒久的人工関節は本来の関節軟骨の特性を有する材料から構成されないばかりか、そうした日常的な力に充分耐えるべくしっかりと位置決めされ得るようにはなっていない。
【0009】
靱帯:
前方膝十字靱帯(以下、ACLとも称する)軟組織は、全ての屈曲位置において、脛骨の大腿部からの前方偏倚に抵抗する機能がある。ACLには、脛骨の内外への回転中における完全に伸びた膝の過伸展に抵抗して回転安定性に寄与する機能の他に固有受容性における役割もある。ACLは細胞、水、コラーゲン、プオロテオグリカン、フィブロネクチン、エラスチン、その他のグリコプロテインから成る結着組織構造から構成される(Cyril Frank,M.D.他、Normal Ligament: Structure, Function, and Composition. Injury and Repair of the Musculoskeletal Soft Tissues, 2:45−101)。構造上、ACLは、顆間隆起正面の凹部に付着し、外側大腿骨関節丘の内側壁まで後上方に向けて延伸している。
【0010】
損傷を受けたACLの好ましい処置方法は、骨−靱帯−骨の自己移植を使用する靱帯再生である。膝十字靱帯再生には安定化を直ちに得られるという利益があり、機能回復が迅速且つ活発化する可能性がある。しかしながら、ACL再生には重大な欠点がある。そうした欠点は、例えば、膝蓋腱あるいは膝腱を再生に使用する場合には通常の解剖学的構造が破壊を受ける;関節内ハードウェアを配置して腱を固定する必要がある;前方膝が頻繁に痛むことである。しかも、最近の調査によれば、関節内ACL再生を使用した多数の患者グループでの前方膝十字靱帯再生において、変形性関節症の恐れが増大することが示された。
【0011】
損傷ACLの“一次ACL補修”と称される第2の処置方法には、裂けた構造部分を元の場所に縫合することが含まれる。この一次ACL補修には、関節鏡を限定量接近させることができる;通常の解剖学的構造上の破壊が最小である;局所麻酔下での外来患者手順である;といった潜在的利益がある。一次ACL補修に欠点があるとすれば、長期に渡るACL補修において充分な数の患者に安定性が提供されず、いずれ再度の再生が必要になるという認識があることである。前方膝十字靱帯の補修成功率は一般に60〜70%の範囲を推移している。
【0012】
心臓弁:
心臓弁は、繊維軟骨細胞と、コラーゲン及び弾性繊維の細胞外マトリクスとのみならず様々なプロテオグリカンから成り立っている。心臓弁代替物を形成するために人工及び組織ベースの様々な材料(後者は受容生物あるいは同種内での異なる生物の何れかからのもの)が使用されてきており、各材料には長所も短所もある。
人工心臓弁の場合、人工ポリマーのモノマー及びあるいは反応条件を変えてやることで、心臓弁の特性を有益に改変することが恐らく可能である。しかしながら人工心臓弁は血栓塞栓症や機械的故障を生じ得る。米国特許第4,755,593号を参照されたい。
【0013】
組織ベースの心臓弁は人工心臓弁に対して優れた血液接触特性を実証することができる。しかしながら、組織ベースの心臓弁もまた生体内での安定性に劣る可能性がある。米国特許第4,755,593号を参照されたい。
心膜異種移植組織の弁が、上述した人工及び組織ベースの各心臓弁の代替物として導入された。Inescu,M.I.他、Heart Valve Replacement With The Inescu−Shiley Pericardial Xenograft,J.Thrac.Cardiovas.Surg.73;31−42(1977)を参照されたい。しかしながら、そうした弁にはカルシウム沈着及び耐久性上の問題がある。Morse,D,ed.Guide To Prosthetic Heart Valves,Springer−Verlag,NewYork,225−232(1985)を参照されたい。
従って、血液接触性を有し及び生体内安定性があり、機械的耐久性のある柔軟な心臓弁代替物に対する要望が存在する。
【0014】
異種移植片:
軟組織の大半の構造並びにその多くの特性は、異種移植片材料、即ち、移植片の受容者とは別の種から取り出した移植片材料を使用する移植の場合に維持され得る。例えば、米国特許第4,400,833号では、牛その他の動物から採取した腱あるいは靱帯が人工メッシュで被覆された後に異種宿主に移植される。この米国特許には豚の心膜のような平坦組織も異種移植に好適である旨も記載される。米国特許第4,755,593号には、人工心臓弁、人工血管、やけどその他の傷当てに好適な医用生体材料に加工された牛の腹膜が記載される。WO84/03036号には牛、羊、あるいは豚の血管異種移植片が開示される。しかしながらそれらの何れにも、軟組織交換のために異種移植片を使用する点に関する記載は含まれない。
【0015】
移植された異種移植片は、移植片の慢性及び激症の拒絶反応等の免疫反応を誘発する。ここで“慢性拒絶反応”とは、異種移植片の受容者における異種移植片に対する免疫反応に対して参照される。代表的には、慢性拒絶反応は異種移植片の受容者個体の血清中の免疫グロブリンG天然抗体と、異種移植片の、細胞上に発現した炭水化物成分と、及びあるいは、細胞マトリクス及びあるいは細胞外成分との相互作用により媒介される。例えば、非霊長類哺乳動物(例えば、豚あるいは牛原産の)軟組織軟骨異種移植片の人間への移植は、主に人間の血清中の免疫グロブリンG天然抗Gal抗体が、異種移植片に発現した炭水化物構造Galα1−3Galβ1−4GlcNAc−R(α−ガラクトシルあるいはα−galエピトープ)と相互作用することによって妨げられる(K.R.Stone他、Porcine and bovine cartilage transplants in cymomolgus monkey:I.A model for chronic xenograft rejection,63 Transplantation 640−645(1997);U.Galili他、Procine and bovine cartilage transplants in cynomolgus monkey;II.Changes in anti−Gal response during chronic rejection,63 Transplantation 646−651(1997))。慢性拒絶において、免疫系は、典型的には、異種移植片の移植から1〜2週間以内に応答する。
【0016】
ここで、“慢性拒絶反応”と対比的に使用される“激症拒絶反応”とは、天然抗体異種移植片の受容者における、代表的には、異種移植片に対する受容者個体の血清中の免疫グロブリンMと、細胞上に発現する炭水化物成分とが相互作用することにより媒介される免疫反応に対して参照される。この相互作用により補完システムが働くと血管床が溶解し、受容者個人の血流は数分〜2、3時間の内に停止する。
ここで、“細胞外成分”とは、軟組織中に存在する、細胞外水分、コラーゲン及び弾性繊維、プロテオグリカン、フィブロネクチン、エラスチンその他のグリコプロテインに対して参照される。
【0017】
異種移植片材料は、移植片受容者に移植するに先立って免疫原性を低下させるべく化学的に処置することができる。例えば、グルタルアルデヒドを異種移植片に架橋させるあるいは“なめす(tan)”ことで抗原性を低下させることが米国特許第4,755,593号に詳しく説明される。脂肪族及び芳香族の各ジアミン化合物のようなその他の架橋剤は、コラーゲンポリペプチドのアスパラギン酸及びグルタミン酸の側鎖カルボキシ基群を介して追加的な架橋を提供することができる。グルタルアルデヒドおよびジアミンによるなめし加工によっても異種移植組織の安定性を高めることができる。
【0018】
移植の準備上、異種移植片組織は様々な物理処置にもかけられる。例えば、米国特許第4,755,593号には、異種移植片を引張して機械適応力を受けさせ、ずっと薄く且つ強靱な医用生体材料とすることが記載される。例えば、米国特許第5,071,741号、同第5,131,850号、同第5,160,313号、同第5,171,660号に記載されるように、同種移植のための組織は、通常は低温保存されることで貯蔵期間中の細胞生存力が最適化される。米国特許第5,071,741号には、組織を冷凍すると細胞外あるいは細胞内での氷晶形成及び浸透性の脱水により細胞に機械的損傷が生じることが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第4,034,418号
【特許文献2】米国特許第4,344,193号
【特許文献3】米国特許第4,502,161号
【特許文献4】米国特許第5,092,894号
【特許文献5】米国特許第5,171,322号
【特許文献6】米国特許第5,358,525号
【特許文献7】米国特許第4,880,429号
【特許文献8】米国特許第5,007,934号
【特許文献9】米国特許第5,116,374号
【特許文献10】米国特許第5,158,574号
【特許文献11】米国特許第4,627,853号
【特許文献12】米国特許第4,846,835号
【特許文献13】米国特許第4,642,120号
【特許文献14】米国特許第5,306,311号
【特許文献15】米国特許第4,755,593号
【特許文献16】米国特許第4,400,833号
【特許文献17】WO84/03036号公報
【特許文献18】米国特許第5,071,741号
【特許文献19】米国特許第5,131,850号
【特許文献20】米国特許第5,160,313号
【特許文献21】米国特許第5,171,660号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
(解決しようとする課題)
本発明は、軟組織の補修あるいは交換を必要とする人体に移植するための、実質的に非免疫原性の軟組織異種移植片を提供する。
本発明は、又、人体用の異種移植片のための、免疫原性は低いが、実質的に自然な(native)弾性及び負荷支持能力を有する異種移植用軟組織の加工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(課題を解決するための手段)
本発明によれば、軟組織の補修あるいは交換を必要とする人体に移植するための、実質的に非免疫原性の軟組織異種移植片が提供される。本発明によれば、免疫原性の低い、しかし、人体用の異種移植片のための実質的に自然な弾性及び負荷支持能力を有する異種移植用軟組織を加工するための方法も提供される。
ここで、“異種移植”とは、ある種の動物から別の種の動物に移行される移植組織に対して参照される(Stedman’s Medical Dictionary,Williamn & Wilkins, Baltimore, MD(1995))。
ここで、“外因性の”、例えば、外因性軟組織とは、ある動物種から他の動物種に移行される軟組織に対して参照される(同典拠)。
【0022】
本発明の方法には、放射線照射、1サイクル以上の冷凍及び解凍を使用した処理、化学的架橋剤を使用した処置、アルコールあるいはオゾン化を使用する処理の何れかあるいは組み合わせたものが含まれる。これらの方法に加えてあるいはそれらに代わる本発明の方法には、細胞破壊処理、異種移植片の炭水化物成分のグリコシダーゼ消化、あるいは、プロテオグリカン除去因子を使用した処理、の何れかあるいは組み合わせたものが含まれる。随意的にではあるが、グリコシダーゼ消化、あるいは、プロテオグリカン除去因子を使用した処理に引き続き、それ以降の処理、例えば、キャッピング分子を使用しての異種移植片の炭水化物成分の処理を行うことができる。本発明の方法によれば、上述のプロセス処理段階の1つ以上を実施した後、天然の軟組織と実質的に同じ機械的特性を持った異種移植片が提供される。
【0023】
ここで、“細胞破壊”、例えば細胞破壊処理とは、細胞を殺すための処理に対して参照される。
ここで、“キャッピング分子”とは、異種移植片がその受容者の免疫システム上もはや異物としては認識されないように、炭水化物鎖と架橋する単数あるいは複数の分子に対して参照される。
ここで、“キャップ”するあるいは“キャッピング”とは、例えば、異種移植片の表面炭水化物成分に炭水化物ユニットを共有結合させる場合のように、炭水化物ユニット等のキャッピング分子を炭水化物鎖の端部に結合することに対して参照される。
本発明の1実施例によれば、人体に移植するための、実質的に非免疫原性の軟組織異種移植片を含む製造物品が提供される。
【0024】
本発明の他の実施例によれば、人体に移植するための軟組織異種移植片の調製方法が提供され、本調製方法には、人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を取り出して異種移植片を用意すること、異種移植片を水及びアルコール中で洗浄すること、異種移植片を、紫外放射線への曝露、アルコール浸漬、オゾン化、凍結/解凍サイクル、の処理群から選択した少なくとも1つの処理に掛け、かくして異種移植片の機械的特性を天然の軟組織の相当部分のそれと実質的に同一化することが含まれる。
【0025】
ここで、“部分”、例えば、軟組織、第2表面炭水化物成分あるいはプロテオグリカンの一部分とは、異種移植片のそれぞれの、軟組織、第2表面炭水化物成分あるいはプロテオグリカンの全て若しくは全てではない部分に対して参照される。
本発明の他の実施例によれば、人体に移植するための軟組織異種移植片の調製方法が提供される。この調製方法によれば、人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を取り出して異種移植片を用意すること、異種移植片を水及びアルコール中で洗浄すること、異種移植片を、細胞破壊処理し、異種移植片をグリコシダーゼを使用して消化し、第1表面炭水化物成分を除去し、かくして異種移植片の特性を天然の軟組織の相当部分のそれと実質的に同一化することが含まれる。
【0026】
ここで、“第1表面炭水化物成分(単数あるいは複数の)”とは、炭水化物鎖の非還元末端位置の末端α−ガラクトシル糖に対して参照される。
本発明の更に他の方法実施例には追加的段階、例えば、異種移植片上の第2表面炭水化物成分をキャッピング分子を使用して少なくとも一部分キャッピングし、かくして異種移植片を実質的に非免疫原性のものとすることが含まれ得る。
ここで、“第2表面炭水化物成分”とは、炭水化物鎖の非還元末端位置でのN−アセチルラクトサミン基(residue)であって、本来、あるいはα−ガラクトシル糖エピトープの前分裂の結果の何れかによりキャッピングされていない基に対して参照される。
【0027】
更に他の実施例によれば、人体に移植するための軟組織異種移植片の調製方法が提供される。この調製方法によれば、人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を取り出して異種移植片を用意すること、異種移植片を水及びアルコール中で洗浄すること、異種移植片を細胞破壊処理に掛けること、異種移植片をプロテオグリカン除去因子で消化して異種移植片からプロテオグリカンの少なくとも一部分を除去し、かくして、異種移植片の機械的特性を天然の且つ実質的に非免疫原性の軟組織の相当部分のそれと実質的に同一化することが含まれる。
【0028】
本発明の更に他の実施例によれば、上述の1つ以上の方法により調製される、人間に移植するための、実質的に非免疫原性の軟組織異種移植片を含む製造物品が提供される。
更に他の実施例によれば、人間に移植するための軟組織異種移植片であって、人間以外の動物から採取した軟組織の一部分を含み、この一部分が、グリコシダーゼ消化されやすい表面炭水化物成分を実質的に含まず、かくして、実質的に天然の軟組織の相当部分と同じ機械的特性を有する軟組織異種移植片が提供される。
【0029】
更に他の実施例によれば、人間以外の動物から採取した軟組織の一部分を含み、この一部分が、細胞外成分と実質的に死細胞のみとを含み、これらの細胞外成分及び死細胞が、実質的に表面αガラクトシル成分を有さず且つ表面炭水化物成分の少なくとも一部分と結着したキャッピング分子を有する、人体に移植するための軟組織異種移植片が提供される。軟組織の一部分は実質的に非免疫原性であり且つ実質的に天然の軟組織と同じ機械的特性を有する。
【0030】
更に他の実施例によれば、人間に移植するための軟組織異種移植片であって、人間以外の動物から採取した軟組織の一部分を含み、この一部分には細胞外成分と、実質的に死細胞のみとが含まれ、この細胞外成分はプロテオグリカンが減少されている軟組織異種移植片が提供される。軟組織の一部分は実質的に非免疫原性であり且つ実質的に天然の軟組織と同じ機械的特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】内側及び外側メニスカスがそれらの本来の位置にある、人間の膝関節の簡略化した概略図である。
【図2】生体内で位置決めされた状態での、脛骨の内側及び外側顆を覆っている内側及び外側の各メニスカスを示す、人間の膝関節の断面概略図である。
【図3】人間の膝の、裂けた外側メニスカスを切除する状況及び、メニスカス移植を受けるための膝の準備状況の概略図である。
【図4】人間の膝に後方外側メニスカスホーンを挿入するために好ましいドリルガイド配置状況の概略図である。
【図5】人間の膝に後方外側メニスカスホーンを挿入するに際しての、カニューレドリルのオーバードリルガイドワイヤの概略図である。
【図6】メニスカスホーンを挿入するための後方及び前方の各ドリル穴を設けた人間の膝の様子の概略図である。
【図7】人間の膝関節内にメニスカス移植片を引き込むための好ましい縫合糸パスの配置状況の概略図である。
【図8】挿入ステージ中におけるメニスカス移植片を含む人間の膝の外観を示す概略図である。
【図9】メニスカス補修縫合糸を最終的に結ぶ位置にある、ゾーン限定のメニスカス補修縫合糸を有するメニスカス移植片を含む、人間の膝の外観の概略図である。
【図10】牛の血清アルブミン(BSA)、牛のチログロブリン、マウスのラミニン、GAlβ−4GlcNAc−BSA(N−アセチルラクトサミン−BSA)、Galα1−4Galβ1−4GlcNAc−BSA(BSAに結合したP1抗原)、人間のチログロブリンあるいは人間のラミニン上のα−ガラクトシルエピトープに対するモノクローナル抗−GAl抗体の特異性を表すグラフである。
【図11】αガラクトシダーゼ処理したメニスカス軟骨からのαガラクトシルエピトープ排除の状況を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(発明の実施の態様)
本発明は、人間に移植するための異種移植片の慢性拒絶反応に対処しようとするものである。従って、本発明の方法に従い製造される軟組織異種移植片は実質的に非免疫原性であり、また、一般に、天然の軟組織の機械的特性を維持する。
軟組織はプロセス処理中に幾分収縮するが、本発明に従い調製した軟組織異種移植片は一般に、天然の軟組織異種移植片の外観を呈する。例えば、本発明に従い調製した内側メニスカス異種移植片は一般に、天然の内側メニスカスの外観を呈し、本発明の外側メニスカス異種移植片は一般に天然の外側メニスカスの外観を呈する。軟組織異種移植片は切断してセグメント化し、各セグメントを以下に説明するように受容者の関節中に移植することができる。
【0033】
本発明の1実施例によれば、人間に移植するための異種移植片軟組織を調製あるいは加工するための方法が提供される。軟組織は人間以外の動物から採取され本発明の異種移植片に調製され得る。人間以外のトランスジェニック動物あるいは、遺伝子工学的に変質された人間以外の動物から採取した軟組織もまた、本発明に従う異種移植片として使用することができる。異種移植片調製のために使用する内側及び外側の各メニスカス、並びに関節軟骨の供給源として好ましいのは牛、羊、豚、の膝関節、もっと好ましくは豚の膝関節である。靱帯軟組織異種移植片の供給源として好ましいのは牛及び豚の関節であり、もっと好ましくは豚の関節である。心臓弁異種移植片を調製するための軟組織供給源として好ましいのは豚の腹膜である。あるいは、豚の心膜を使用して本発明の心臓弁異種移植片を形成することもできる。若い動物の軟組織は、老いた動物のそれよりも本質的に弾性に富み、従って移植性に富むことから、軟組織の供給源としてずっと好ましい。軟組織供給源としての動物の年齢は、屠殺時で6〜18月齢であるのが最も好ましい。また、膝蓋腱、前方あるいは後方の膝十字靱帯、アキレス腱あるいは膝腱は動物供給源から採取されドナー靱帯として使用され得る。
【0034】
本発明の最初の段階では、人間以外の動物から無傷の軟組織を取り出す。人間以外の動物の膝関節から内側あるいは外側の各メニスカスを取り出す。人間以外の動物の任意の関節から関節軟骨を取り出す。例えばアキレス腱のような靱帯及び腱も、人間以外の動物から取り出す。好ましくは、相当する関節から採取した軟組織が本発明の軟組織異種移植片を作成するために使用される。後膝関節から採取した関節軟骨は、膝に移植するための関節軟骨異種移植片を作成するために使用される。同様に、ドナー動物の股関節から採取した関節軟骨は人間の股関節のための関節軟骨異種移植片を作成するために使用される。
【0035】
軟組織の供給源としての関節は、屠殺直後の動物から採取されるべきであり、また、無菌の等張液その他の組織保存溶液内に素早く配置するのが好ましい。関節の採取は、動物の屠殺後できるだけ速やかに実施すべきであり、また、冷温下、即ち、約5℃〜約20℃の範囲の温度下に実行して軟組織の酵素分解を最小化するのが好ましい。
【0036】
軟組織は冷温下に厳しい無菌技法を使用して採取される。
メニスカス軟組織に関し、関節は膝蓋腱を先ず横切開することにより開放される。メニスカスのホーンが付着組織の無い状態で切開される。直径約5ミリ、深さ約5ミリの実質的に円筒プラグ状の少量の骨がホーンに付着したまま残される。メニスカスの滑膜性の連結部を注意深く識別し、メニスカス組織自体から切り離し、異種移植片を形成する。
【0037】
関節軟骨軟組織の場合、関節軟骨の細皮を肋軟骨下の骨の薄層と共にドナーの関節から少量削り取り、異種移植片を形成する。
靱帯軟組織の場合、ドナーの関節が標準的な外科技法を使用して開放される。靱帯は、本発明の幾つかの形態では靱帯のみが採取されるが、好ましくは一端あるいは両端に骨ブロックを付けた状態で採取される。本発明の1形態では、直径約9〜10ミリ、長さ約20〜40ミリの実質的に円筒プラグ状の骨ブロックを靱帯に付着させたままとすることができる。靱帯は注意深く識別され、付着する組織の無い状態で切開され、異種移植片を形成する。
【0038】
心臓弁軟組織の場合、豚の腹膜あるいは心膜が採取され、当業者に既知の手順に従い心臓弁異種移植片が形成される。例えば、米国特許第4,755,593号には腹膜採取手順が議論される。
次いで異種移植片は無菌の約10容量の冷水内で洗浄され、残留する血液タンパク質や水溶性物質が除去される。その後、異種移植片は室温下に約5分間アルコールに浸漬され、組織を滅菌すると共に非コラーゲン材料が除去される。
【0039】
メニスカス軟組織異種移植片は、全体的に半月形状の主表面を上側(上(superior)表面)に有し、また、全体的に半月形状の主表面を底部(下(inferior)表面)に有する光沢のあるC型繊維組織であり、上下表面の各外部(outer)部分は外部外側(outer lateral)表面により連結され、また、上下表面の各内部(inner)部分は内部外側(inner lateral)表面により連結されている。
人工関節軟組織異種移植片は骨基質上に支持されたガラス状組織の外観を呈し、チップ側(上(superior)表面)には全体に球状の主表面を有し、骨の底表面(下(inferior)表面)はざらざらしている。
【0040】
アルコールに浸漬した後、異種移植片は直接移植するか、若しくは以下の手順、即ち、放射線処理、アルコール処理、オゾン化、1サイクル以上の冷凍及び解凍、及びあるいは、化学架橋剤処理、の少なくとも1つを受けてもよい。1つ以上の処理を施す場合、異種移植片に対するそれらの処理は任意の順番で実施して良い。
本発明の1方法実施例によれば、異種移植片は約15分間、紫外放射線に曝され、あるいは約0.5〜3メガラドのガンマ放射線量に曝される。
【0041】
本発明の別の実施例によれば、異種移植片は再度アルコール溶液中に置かれて処理されてもよい。この処理にはどのようなアルコール溶液でも使用できる。好ましくは異種移植片はイソプロパノールの70%溶液中に室温で置かれる。
更に別の実施例では異種移植片はオゾン化処理を受ける。
本発明の更に別の方法実施例によれば、異種移植片は冷凍/解凍サイクル処理に掛けられ得る。例えば、異種移植片は、異種移植片が完全に凍結する、即ち、未凍結の軟組織を含む温点が内部に残らない限りに於いて、任意の冷凍方法を使用して冷凍することができる。異種移植片を約5分間液体窒素に浸漬してこの段階を実行するのが好ましい。異種移植片を冷凍庫に配置してゆっくりと冷凍させるのが更に好ましい。冷凍/解凍サイクルの次なる段階では、異種移植片は室温(約25℃)下に約10分間等張塩水浴へ浸漬されて解凍される。繊維分解を最小化するために外部熱源あるいは放射線源は使用しない。
【0042】
更に他の実施例では、異種移植片は随意的に化学剤に曝露され、細胞外成分内のタンパク質をなめし加工あるいは架橋させ、異種移植片内の免疫原性の決定因子を更に減少あるいは低減させる。この処理のためには任意のなめし剤あるいは架橋剤を使用することが可能であり、1回以上の架橋ステップを実施するあるいは1つ以上の架橋剤を使用することで完全な架橋を保証し、かくして、異種移植片の免疫原性を最適に減少させることができる。例えば、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アジピックジアルデヒドその他のようなアルデヒドを使用して、本発明の方法に従う異種移植片の細胞外コラーゲンを架橋することができる。その他の好ましい架橋剤には脂肪族及び芳香族の各ジアミン、カルボジイミド、ジイソシアネートその他が含まれる。
【0043】
アルデヒド、例えばグルタルアルデヒドを架橋剤として使用する場合、異種移植片は約0.001%から約5.0%のグルタルアルデヒド、好ましくは約0.01%〜約5.0%のグルタルアルデヒドを含有しpHが約7.4である緩衝溶液、更に好ましくはアルデヒド含有量が約0.01%〜約0.1%、最も好ましくは約0.01%〜約0.05%のアルデヒドを含有する緩衝液に配置され得る。恐らくは1日〜14日、好ましくは1日〜5日、最も好ましくは3日〜5日であり得る架橋反応期間中、溶液のpHを制御し続けることが可能である限りに於いて、リン酸緩衝食塩水あるいはトリスヒドロキシメチルアミノメタンその他のような任意の好適な緩衝溶液を使用することができる。
【0044】
あるいは、異種移植片を、これに限定するものではないが、蒸気アルデヒド架橋剤、例えば蒸気ホルムアルデヒドのような蒸気形態の架橋剤に曝露することもできる。蒸気形態の架橋剤は濃度及びpHを有し得、異種移植片は架橋反応を生じさせるに好適な時間、蒸気架橋剤に曝露させることができる。例えば、異種移植片は濃度約0.001〜約5.0%、好ましくは約0.01〜約5.0%、pH約7.4の蒸気架橋剤に曝露させることができる。より好ましくは異種移植片は、濃度約0.01〜約0.10%、最も好ましくは約0.01〜約0.05%の範囲のアルデヒドに曝露される。異種移植片は、1日〜14日、好ましくは1日〜5日、最も好ましくは3日〜5日間の期間、アルデヒドに曝露され得る。蒸気架橋剤に曝露されることにより異種移植片中の残留化学物質が減少され得る。
【0045】
架橋反応は、異種移植片軟組織から免疫原性の決定因子が実質的に排除されるまで継続されるべきであるが、異種移植片の機械的特性が大幅に変化する前に終了されるべきである。架橋剤としてジアミンも使用する場合、グルタルアルデヒド架橋は未反応のジアミンがキャッピングされるよう、ジアミン架橋の後に行われるべきである。架橋が上記説明したように生じて完了した後、異種移植片を洗浄して残留化学物質を除去し、また0.01〜0.1Mグリシン、好ましくは0.01〜0.05Mグリシンを添加して、未反応のまま残留するアルデヒド基をキャッピングするべきである。
【0046】
上述した処理に加えてあるいはそれらに代えて、異種移植片を細胞破壊処理に掛けて異種移植片の細胞を殺すことができる。随意的には、この細胞破壊処理をグリコシダーゼを使用した異種移植片の消化に先駆けてあるいはその後に実施して異種移植片から第1表面炭水化物成分を除去する。グリコシダーゼを使用した処理に加えてあるいはそれに代えて、このグリコシダーゼ処理に先行してあるいは引き続き、異種移植片をプロテオグリカン除去因子を使用して処理する。更に、グリコシダーゼ及びあるいはプロテオグリカン除去因子消化に引き続き、随意的には、フコシルあるいはn−アセチルグルコサミン分子のようなキャッピング分子を結合させ、異種移植片の炭水化物鎖の表面N−アセチルラクトサミン端をキャッピングする。
【0047】
本発明のこの方法実施例では、異種移植片は細胞破壊処理を受けて軟組織の細胞が殺される。代表的には、表面炭水化物成分が生きた細胞及び細胞外成分から除去されると、生きた細胞は表面炭水化物成分を再発現させる。異種移植片の抗原性成分が再発現されると異種移植片の免疫性拒絶反応が連続して誘起され得る。これに対し、死細胞は表面炭水化物成分を再発現することはできない。抗原性の表面炭水化物成分を異種移植片の死細胞及び細胞外成分から除去することで、異種移植片の免疫性拒絶反応の原因としての抗原性の表面炭水化物成分が実質的に恒久的に排除される。
【0048】
従って、上述した各実施例では、本発明の異種移植片は凍結/解凍サイクルにかけられて軟組織の細胞が破壊、即ち殺される。あるいは、本発明の異種移植片は、0.2メガラド〜約3メガラドの量のガンマ放射線を使用して処理される。そうした放射線処理により軟組織細胞は殺され、異種移植片は滅菌される。殺された軟組織細胞はもはや、移植された異種移植片の免疫性拒絶反応の要因であるα−galエピトープのような抗原性の表面炭水化物成分を再発現することはない。
【0049】
軟組織細胞が殺される前あるいは後の何れかに於いて、本発明の各実施例では異種移植片はグリコシダーゼ、詳しくは、α−ガラクトシダーゼのようなガラクトシダーゼを使用した異種移植片の生体外消化を受け、抗原性の表面炭水化物成分が酵素除去される。特に、α−galエピトープは、下記反応中に示されるように、α−ガラクトシダーゼを使用する酵素処理により排除される。

【0050】
N−アセチルラクトサミン基は、通常は人間や哺乳動物の細胞上に発現されるエピトープであり、従って非免疫原性である。グリコシダーゼを使用しての異種移植片の生体外消化は様々な方法により達成される。例えば、異種移植片はグリコシダーゼを含有する緩衝溶液に浸漬されあるいはインキュベートされ得る。加えて、異種移植片は以下に詳しく説明するように、透過性を高めるべく孔開け処理され得る。あるいは、グリコシダーゼを含有する緩衝溶液を拍動性の洗浄プロセスを介して異種移植片中に加圧下に圧入させることができる。
【0051】
異種移植片からα−galエピトープを除去することで異種移植片に対する免疫反応が減少する。α−galエピトープは非霊長類哺乳動物や広鼻猿類のサル(南米のサル)において細胞当たり1×106〜35×106エピトープとしてのみならず、細胞外成分のプロテオグリカンのような巨大分子上にも表出される(U.Galili他、MAn,apes,and Old World monkeys differ from other mammals in the expression of α−galactosil epitopes on nucleated cells,263 J.Biol.Chem.17755(1988))。しかしながら、このエピトープは旧世界サル(アジアアフリカのサル及び類人猿)や人間には存在しない(同典拠)。抗−Galは、人間及び霊長類では胃腸内バクテリア上のα−galエピトープ炭水化物構造に対する免疫反応の結果として生じる(U.Galili他、Interaction between human natural anti−α−galactosyl immunoglobulin G and bacteria of the human flora, 56 Infect.Immun.1730(1988);R.M.Hamadeh他、Human natural anti−Gal IgG regulates alternative complement pathway activation on bacterial surfaces,89 J.Clin.Invest.1223(1992))。
【0052】
非霊長類哺乳動物がα−galエピトープを生じることから、これらの哺乳動物から採取した異種移植片を霊長類に異種移植すると霊長類の抗−Galがこれらのエピトープに結合して拒絶反応が生じる。異種移植片は、この結合により生じる補体固定及び抗体依存性細胞毒(antibody dependent cell cytotoxicity)により破壊される(U. Galili他、Interaction of the natural anti−Gal antibody with α−galactosyl epitopes:A major obstacle for xenotransplantation in humans, 14 Immunology Today 480(1993);M.Sandrin他、Anti−pig IgM antibodies in human serum react predominantly with Galαl−3Gal epitopes, 90 Proc.Natl. Acad. Sci. USA 1139(1993);H.Good他、Identification of carbohydrate structures which bind human anti−porcine antibodies; implications for discordant grafting in man. 24 Transplamt/ Proc. 559(1992);B.H.Collins他、Cardiac xenografts between primate species provide evidence for the importance of the α−galactosyl determinant in hyperacture rejection, 154 J. Immunol.5500(1995))。更に、異種移植により免疫システムの作用が活発化し、高親和性の抗−Galが大量に産生する。従って、異種移植片の細胞や細胞外成分からα−galエピトープを実質的に除去して細胞性α−galエピトープの再発現を防止することで、抗−GAl抗体がα−galエピトープと結合することに関連する、異種移植片に対する免疫反応を減少させることができる。
【0053】
更に、本発明の軟骨軟組織異種移植片は酵素を使用してのα−galエピトープの生体外除去に特に好適である。臓器その他の組織とは対照的に、軟骨細胞外成分はターンオーバーが極めて遅い。しかも、軟骨細胞、即ち、繊維軟骨細胞が殺されると、先に議論したようにそれらの細胞からのα−galエピトープの再発現が妨げられる。
加えて、軟組織異種移植片はグリコシダーゼを使用する処理に先駆けてあるいは同時に、ポリエチレングリコール(PEG)を使用して処理することができる。PFGは酵素及びコラーゲン細胞外成分と共有結合してグリコシダーゼのためのキャリヤーとして働く。更に、PEG処理した異種移植片は免疫原性が低下する。
【0054】
軟組織を殺す前あるいは後の何れかに於いて、本発明の例では異種移植片が、1つ以上の異なる種類のプロテオグリカン除去因子を使用して洗浄あるいは消化される。プロテオグリカン除去因子処理はグリコシダーゼ処理に先行させあるいはその後に実施することができる。グリコサミノグリカン(GAGs)のようなプロテオグリカンは個別の分子として一様にかあるいは量を変化させて、本発明の異種移植片の細胞外成分内に散在される。GAGsには、コンドロイチン4−硫酸、コンドロイチン6−硫酸、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン硫酸、ヒアルロン酸、及びそれらの混合物等のムコ多糖類が含まれる。そうしたGAGsを含むプロテオグリカンは、α−galエピトープのような付着炭水化物を含む。そうしたエピトープは、先に議論したように、異種移植片が移植されると免疫反応を刺激する。異種移植片をプロテオグリカン除去因子を使用して洗浄あるいは消化することによりプロテオグリカン及び付着α−galエピトープの少なくとも一部分が異種移植片の細胞外成分から除去され、異種移植片を移植するに際しての異種移植片に対する免疫反応が減少される。プロテオグリカン除去因子処理及び引き続く移植が実施された後、天然の組織が残っているコラーゲンシェルを再充填することができる。
【0055】
本発明で使用するプロテオグリカン除去因子の非限定的な例には、コンドロイチナーゼABC、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチンACIIリアーゼ、ケラタナーゼ、トリプシン等が含まれる。本発明で使用するその他のプロテオグリカン除去因子にはフィブロネクチンフラグメントが含まれる。Homanberg他によれば、フィブロネクチンフラグメント、例えばアミノ−末端29−kDaフラグメントは関節軟骨軟組織の表面に結合し、軟骨に貫入して軟骨細胞を包囲することが示唆された(G. A. Homandberg他、Hyaluronic acid suppresses fibronectin fragment mediated cartilage chondrolysis;I. In vivtro, Osteoarthritis and Cartilage(1997) 5,309−319;G.A. Homandberg 他、High concentrations of fibronectin fragments cause shor−term catabolic effects in cartilage tissue while lower concentrations cause continuous anabolic effect, Archives Of Biochemistry And Biophysics, Vol. 311, No.2, 6月,pp. 213−218(1994);G.A. Homandberg他、Agents that block fibronectin fragment−mediated cartilage damage also promote repair,Inflammation Research 46(1997) 467−471)。Homanberg他によれば、選択濃度下にそうしたフィブロネクチンフラグメントを軟骨に生体外あるいは生体内追加することによりプロテオグリカン合成が一時的に阻止され、かつ細胞外メタロプロテイナーゼが強化され、結局、軟骨組織からプロテオグリカンが急速に失われる(同典拠)。
【0056】
しかしながら、当業者に既知のその他のプロテオグリカン除去因子もまた本発明に使用することができる。本発明の異種移植片は、この異種移植片の細胞外成分からプロテオグリカンの少なくとも一部分を除去するために有効な量のプロテオグリカン除去因子を使用して処理される。異種移植片は、約1.0TRU/ml〜約100.0TRU/mlの範囲の量のヒアルロニダーゼのようなプロテオグリカン除去因子、あるいは、約0.01u/ml〜約2.0u/ml、あるいは最も好ましくは、約1.0u/ml〜約2.0u/mlの範囲の量のコンドロイチナーゼABCのようなプロテオグリカン除去因子を使用して処理されるのが好ましい。異種移植片は、約0.01μM〜約1.0μM、好ましくは約0.1μM〜約1.0μMの範囲の量のフィブロネクチンフラグメント(例えば、アミノ−末端29−kDaフィブロネクチンフラグメント)のようなプロテオグリカン除去因子を使用しても処理することができる。
【0057】
グリコシダーゼあるいはプロテオグリカン除去因子を使用しての各処理に引き続き、異種移植片の残留炭水化物鎖(例えば、クリコサミノグリカン)が、キャッピング分子を使用して随意的に処理され、残留炭水化物鎖の少なくとも一部分がキャッピングされる。キャッピング分子の例にはフコシルあるいはn−アセチルグルコサミン分子が含まれる。
処理に先立ち、異種移植片の外側表面(例えばメニスカス軟組織異種移植片の外部外側表面)を随意的に孔開けし、異種移植片を実質的に非免疫原性とするために使用する作用物質の透過性を高めることができる。18ゲージ針のような滅菌した外科用針を使用してこの孔開けを実施することができる。あるいは複数の針を含む櫛様装置を使用しても良い。孔開けは、異種移植片内部への所望のアクセスを達成するために、様々な孔間隔で様々な配列模様下に実施され得る。また、孔開けはレーザーを使用して実施することもできる。本発明の1形態では約3ミリメートルの間隔を置いた1本以上の直線状の孔列が異種移植片の外部外側表面の円周方向に形成される。
【0058】
移植に先立ち、本発明の軟組織異種移植片はフィシンあるいはトリプシンのようなタンパク分解性の酵素により限定的に消化処理されて組織の柔軟性を高めても良く、あるいは抗石灰化剤コーティング、抗血栓症コーティング、抗生物質、発育因子その他の、受容者の関節中への異種移植片組み込みを助長させ得る薬品で処理され得る。
本発明の軟組織異種移植片は、既知の方法、例えば、追加的なグルタルアルデヒドあるいはホルムアルデヒド処理、エチレンオキシド滅菌、プロピレンオキシド滅菌その他の方法を使用して更に滅菌することができる。異種移植片は使用が必要とされるまで凍結保存され得る。
【0059】
本発明の軟組織異種移植片あるいはそのセグメントは、既知の関節鏡外科技法を使用して、当業者により、損傷した人間の関節内に移植され得る。軟組織移植の正確且つ再生可能な配置を保証する関節鏡技法を実施するための特別の機器は当業者には既知である。
【0060】
メニスカス軟骨軟組織異種移植片の移植:
メニスカス軟骨交換を成功させるには以下の目標、即ち、
1.損傷した本来のメニスカス軟骨の断片の除去。
2.メニスカスホーン取り付け部位の解剖学的配置。
3.軸方向負荷及び回転負荷を許容するに充分なメニスカス移植片周辺部のしっかりとした取り付け。
4.膝関節の周囲被膜及び靱帯を固定技法により過度に破壊若しくは拘束しないこと。
を達成するのが好ましい。以下に詳細を説明するメニスカス移植法はK.R.Stone他、Arthroscopy:The Journal of Arthroscopic and Related Surgery,9,234−237(1993)によるものであるが、その他のメニスカス移植法を使用して本発明の異種移植性メニスカス異種移植の使用のために用いることができる。
【0061】
まず最初に、膝関節の関節鏡診断は既知の方法を使用して完全に達成される。仮にACL外科手術を同時に行う場合、十字靱帯再生のために大腿骨及び脛骨トンネルを先ず穿孔すべきである。次いで、メニスカス軟骨の損傷部分が評価され、もし、裂開がひどくあるいは組織の質が良くなく、メニスカス補修が無理な場合、軟骨組織の損傷部分を除去してメニスカスリムの調製にとりかかる(図3)。人間のメニスカス全体を本発明の異種移植性のメニスカス異種移植片と交換する場合、人間のほぼ全てのメニスカスを取り出す。また更に、人間のメニスカス全体を本発明の異種移植性のメニスカス異種移植片と交換する場合、人間のメニスカスホーンの切除と、骨プラグを受けるための骨トンネルの調製とが必要となる。人間のメニスカスの一部分のみを本発明の異種移植性のメニスカス異種移植片セグメントと交換する場合には損傷を受けた部分のみが除去され、異種移植片セグメントを取り付けるための周辺リム及びホーンは残される。人間のメニスカスリムが全くない場合はメニスカスの部分交換は行うべきではない。関節が過度にきつい場合は関節伸展装置を使用するか、あるいは内側副靭帯を部分的に解放させ得る。
【0062】
内側あるいは外側の各メニスカス交換に際しては、関節鏡を中央外側(mid−lateral)若しくは前方外側(anterior lateral)の門脈(portal)内に配置し、前方内側(anterior medial)門脈を通して脛骨ガイドを配置する。脛骨ガイドの先端部は先ずメニスカスの後方ホーン(posterior horn)に到達する。後方内側ホーンが脛骨隆起部の後方傾斜部上に挿入されることを銘記されたい。次いで、ドリルピンを脛骨粗面の前方内側から後方ホーン挿入物へ到達させる(図4)。ドリルピンの配置は、顆間の隙間に関節鏡を通してドリルピンの出口部位を観察することで確認することができる。膝の後方膜(capsule)を刺し通して神経血管束を危険に晒すことがないよう厳重に注意を払う必要がある。ドリルピン位置を確認したら、随意的なドリルストッパを使用して後方被膜貫通を防止しつつ、4.5mmカニューレドリルビットを使用してオーバードリルする(図5)。ドリルビットは然るべき位置に残され、ジョンソン&ジョンソン社から入手することのできる#2Ethibond(商標名)のような縫合糸を通す通路のためのトンネルとして使用される。縫合糸がドリルビットの穿孔に通されるとドリルビットが除去され、縫合糸が然るべき位置に残される。
【0063】
人間の場合、前方内側メニスカスの挿入位置は相当変化し、最もしばしばには、内側脛骨隆起の前方位置である。外側メニスカスの前方ホーンは前方十字靱帯の直ぐ後方に挿入される。前方ドリル孔は、先ず、外側メニスカスの前方ホーンの挿入位置を特定し、次いでドリルガイドの先端を比較的垂直な孔が形成されるように配置することにより形成される(図6)。ドリルピンを配置し、次いでカニューレドリルビットを使用してドリルピン配置部分をオーバードリル加工し、前方ドリル孔を形成する。縫合糸通路を前方ドリル孔内に配置する。あるいは、内側メニスカスの前方ホーンを縫合糸アンカーを使用して、ドリル孔とは対照的に骨に直接固定する。
【0064】
縫合糸が前方及び後方の各ドリル孔から把持される前に、前方門脈を約2cmまで拡幅する。次いで、拡幅した門脈に縫合糸把持を通し、前方及び後方の縫合糸を共に同時に引き出す。この技法により、縫合糸が脂肪パッド及び膜(capsule)組織の2つの異なる平面内で絡み合うのが防止される。
【0065】
次いで移植作業に入る。2本の水平な刺し縫い縫合糸、例えば#2−0Ethibond(商標名)縫合糸その他を、異種移植性のメニスカス異種移植片の各ホーンを通して、下表面に存在する端部をフリーにした状態で配置する(図7)。次いで2本の後方縫合糸を膝を貫いて延伸させて後方脛骨トンネルから引き出す(図8)。もし中央外側門脈側から見た場合、前外側の門脈にプローブを挿入して移植片の中央を押して約2.54cm(1インチ)切開を通して然るべく配置することができる。カニューレを挿入する必要はない。次いで前方縫合糸を同様に挿通させる。次いでホーン縫合糸を前方脛骨骨ブリッジの上から結紮する。
【0066】
次いで、帯域限定のメニスカス補修カニューレを然るべき位置に設置する。内側挿入の場合、伏在神経を保護し、またメニスカス補修針を取り出すために、膝の裏側から3分の1の距離の後方の内側位置に垂直切開部を形成する。通常、前方から引き出される針を捕捉するために、更に別の第2の垂直切開部を膝前方の、前方内側の関節鏡門脈に隣り合う位置に形成する必要がある。これらの2つの切開部を通して縫合糸針を捕捉し、結び目を膜(capsule)の直ぐ上方に配置することができる(図9)。
【0067】
メニスカス補修針を使用する場合、縫合糸を垂直に且つ一様な間隔を置いて配置する状況下に後方カニューレを先ず使用すべきである。補修は後方から前方に向けて実施し、異種移植片内に座屈が生じないようにすべきである。各々の結び目はその配置時に結束し、縫合糸が絡み合うのを回避する。結び目は約4mm離間される。膝は、異種移植片が衝突を生じることなく円滑に移動するのが保証される幾つかの全種類の運動を通してサイクルされる。
【0068】
外側メニスカス交換を実施する場合、内側門脈は異種移植片を挿入するのに好適である。これには、靱帯粘膜を切除して脂肪パッドを除去する必要があり得る。外側メニスカスの後方ホーンのためのドリルガイドが前方内側門脈を通して挿入される。メニスカスホーンを正確に挿入するために外側脛骨脊椎の後方傾斜部を特定すべきである。前方ホーンは、外側脛骨脊椎の前方傾斜部上に、前方十字靱帯の外側の外観に近似する状態で挿通される。これらの孔を内側から穿孔する利益は、トンネルの開きが大きくなってホーン挿入部間の骨ブリッジが大きくなることである。この挿入技法のその他の部分は、後方ホーンを縫合する場合に神経血管束を保護するために厳重な注意を払うべき点を除き同じである。共通の腓骨神経を保護し、また外側膜(lateral capsule)を露出させるために、アクセス用に後方外側部を露出させる必要がある。
【0069】
縫合糸配置に自信がもてない場合は標準様式での開放後方ホーン縫合を行うべきである。あるいは、メニスカス及び/又はアロー若しくはステープルのような安定化装置を縫合糸に代えて使用することもできる。ペンシルベニア州モールヴァンのBionix社の製造する安定化アローは、これに限定するものではないがそうした安定化アローの1例である。当業者に既知のその他の安定化装置も使用することができる。
通常の皮膚覆いや包帯を当てがうことができる。所望であれば、エピネフリンと共に30ミリリットルの0.5%Marcaine(商標、Astra社製)を染みこませることができる。施術後、伸張方向に30度、屈伸方向に90度の範囲で運動を制限した、ヒンジ蝶着した膝ブレースを当てがうことができる。
【0070】
関節軟骨軟組織異種移植片の移植:
受容者の関節の下側の骨床が、海綿状の出血床を創出するための骨バー(burr)を使用して調製される。移植には、関節表面全体かあるいはその一部分が関与され得る。本発明の実質的に非免疫原性の関節軟骨異種移植片は受容者の関節にカバーとして適用され、縫合糸アンカー、生体吸収性ピン、ネジ、ステープルその他の1つ以上のものにより適所に保持される。実質的に非免疫原性の関節軟骨異種移植片をフィブリンクロットを使用して適所に配置することもできる。
【0071】
靱帯軟組織異種移植片の移植:
回復不能なほどに損傷を受けた靱帯は外科的削具を使用して除去される。靱帯を挿入する解剖学的部位が特定され、骨プラグを収受するべく穿孔される。骨プラグの寸法は幅約9〜10mm、深さ約20〜40mmであり得る。異種性靱帯が穿孔に通され、締まり嵌めネジを使用して固着される。通常の縫合(closure)閉鎖手術が行われる。
以下の各例によって更に例示される本発明はこれに限定することを意図したものではない。本願中で引用されるすべての参考文献並びに公開された特許及び特許出願の内容を、本明細書中に参考として援用する。
【0072】
心臓弁軟組織異種移植片の移植:
本発明の心臓弁異種移植片あるいはそのセグメントは、豚の腹膜あるいは心膜から採取して形成され得、既知の技法を使用する当業者により、損傷を受けた心臓弁を交換及びあるいは補修するべく移植され得る。そうした技法は、移植片の正確且つ再生可能な配置を保証する特別の機器を使用して実施され、当業者には既知のものである。
【実施例】
【0073】
例1:α−ガラクトシダーゼによる軟組織からのα−galエピトープ除去のための分析;
本例ではELISA分析を使用して、軟組織からのα−galエピトープ除去が評価される。
α1.3ガラクトシル移転酵素のための抗−Gal産生用のノックアウトマウスからの脾臓細胞と、マウスハイブリドーマ融合パートナーの脾臓細胞とを融合させることにより、グリコプロテインのα−galエピトープに対し極めて特異的なモノクローナル抗−Gal抗体(M86)が生成された。グリコプロテイン上のα−galエピトープに対するM86の特異性は図10に例示される。M86は“●”で示す牛の血清アルブミン(BSA)に結合された人工α−galエピトープと結合し、“▲”で示され、11α−galエピトープを持つ牛のチログロブリン(R.G.Spiro他、Occurrence of α−D−galactosyl residues in the thyroglobulin from several species. Localizetion in the saccharide chains of completx carbohydratess, 259 J.Biol.Chem.9858(1984))と結合し、若しくは、“■”で表され、50α−galエピトープを持つマウスラミニン(R.G.Arumugham他、Structure of the asparagine−linked sugar chains of laminin.883 Biochem. Biophys. Acta 112(1986))と結合する。しかし、その全てがα−galエピトープを全く有さない、“□”で表すヒトチログロブリンあるいはヒトラミニン、O−Galβ1−4GlcNAc−BSA(N−アセチルラクトサミン−BSA)及びGalα1−4Galβl−4GlcNAc−BSA(BSAに結合したPl抗原)とは結合しない。結合は、希釈度の異なるM86組織培養培地で測定される。
【0074】
M86抗体を分離したモノクローナル抗体は約1:20〜約1:160、好ましくは約1:50〜約1:130に希釈される。抗体は、約3℃〜約8℃の範囲の所定温度下に約5〜約24時間培養される。抗体は約5〜約100μmの軟組織フラグメント、もっと好ましくは、約10〜約50μmの寸法範囲の軟組織フラグメントと共に、約200〜約1.5mg/mlの様々な軟組織濃度範囲下に一定回転状態に維持される。引き続き、軟組織フラグメントは、約20,000xg〜約50,000xgの遠心分離速度下に遠心分離除去される。軟組織に対するM86の結合比は、例えば、従来技術に説明されるような、α−Gal−BSAを使用してELISA内での上澄み中における残留M86の活性度を測定することにより評価する(U.Gsalili他、Porcine and bovine cartilage transplants in cynomolgus monkey: II.Changes in anti−Gal response during chronic rejection, 63mTransplantation 645−651(1997))。軟組織に対するM86の結合の程度は、その後のα−Gal−BSAに対する結合の抑制割合として定義される。軟組織中のα−GAlエピトープ量と、軟組織フラグメントと複合体化されて上澄みから除去されるM86の比率(即ち、抑制割合)との間には直接の関係がある。
【0075】
図11には分析の1例が示される。ホモジェナイズされたメニスカス軟骨フラグメント(○)あるいはα−ガラクトシダーゼを使用して処理されたメニスカス軟骨フラグメント(・)が、M86モノクローナル抗体(1:100に希釈)と共に20時間、4℃でインキュベートされた。引き続き、メニスカス軟骨フラグメントは、35,000xgでの遠心分離により除去され、上澄み中の残留M86が固相抗体としてのα−Gal−BSAを使用してELISAで評価された。図11には、200U/mlのα−ガラクトシダーゼを使用して30℃下に4時間メニスカス軟骨を処理し、引き続きリン酸緩衝溶液(PBS)を使用して5回洗浄することにより、α−galエピトープが完全に排除されたことが示される。かくして、メニスカス軟骨フラグメント濃度が200mg/mlと高くとも、引き続くM86のα−gal−BSAへの結合はもはや抑制されない。
【0076】
例2: αガラクトシダーゼ処理した、豚のメニスカス軟骨、関節軟骨、靱帯及び心臓弁の、各軟組織異種移植片の移植に対する霊長類の反応の評価:
本例では、豚のメニスカス軟骨、関節軟骨、靱帯、腹膜心臓弁の各軟組織移植片をα−ガラクトシダーゼ処理してα−ガラクトシルエピトープを除去し、これをカニクイザルに移植した場合の軟組織移植片に対する霊長類反応を評価した。
豚の後膝関節が無菌調製され、メニスカス軟骨、関節軟骨、及びその他周囲の軟組織付着物が外科的に除去された。心臓弁異種移植片のための豚の腹膜も採取され、付着性の脂肪組織及び或は筋肉組織が外科的に除去された。メニスカス軟骨、関節軟骨及び心臓弁の各軟組織試料が、アルコール、例えばエタノールあるいはイソプロパノールを使用して少なくとも5分間洗浄され、滑液や脂質夾雑物が除去された。次いで、試料は約−35℃〜約−90℃、好ましくは約−70℃の温度範囲下に冷凍され、これら組織の繊維軟骨細胞が破壊、即ち殺された。
【0077】
豚の後膝関節が更にまた無菌調製され、一端あるいは両端に骨ブロックを付着させた靱帯が、厳密な無菌技法を使用して冷温下に取り出された。各々の骨ブロックは直径約9mm長さ約40mmの実質的に円筒プラグ状であった。各靱帯軟組織片は注意深く同定され、付着組織のない状態へ切り分けられ異種移植片が形成された。次いで、靱帯軟組織移植片は例えばエタノール、イソプロパノールのようなアルコールを使用して少なくとも5分間洗浄され、滑液や脂質夾雑物が除去された。これらの異種移植片は、次いで約−70℃の温度下に凍結され、靱帯異種移植片の細胞が破壊、即ち殺された。
【0078】
メニスカス軟骨、関節軟骨及び心臓弁、そして靱帯の各軟組織異種移植片は第1及び第2の2つの部分に切断された。各第1の部分は所定濃度のα−ガラクトシダーゼを含有する緩衝溶液内に浸漬された。各異種移植片は所定温度下に所定時間、緩衝溶液中でインキュベートされた。第2部分の各々は相当する第1部分と同様であるがα−ガラクトシダーゼを含まない条件下に、緩衝溶液中でインキュベートされて対照標準とした。
インキュベートの終了時点において、軟組織異種移植片は酵素を散出させる条件下に洗浄された。分析により、α−galエピトープが完全に除去されたことが確認された。
【0079】
各メニスカス軟骨軟組織異種移植片が6匹のカニクイザルの膝蓋上包(supra patellar pouch)に移植された。全身吸入麻酔法の下に、膝蓋上包の、膝蓋骨の中心方向に伸延する上内側縁位置を約1cm直接切開した。約0.5cm〜約1cmの長さの豚の軟骨軟組織片を、標識タグとしてのシングル3−0ナイロンステッチと共に上包内に配置した。
上述の移植に実質的に従って、関節軟骨異種移植片が6匹のカニクイザルの膝蓋上包に移植された。
【0080】
豚の腹膜が心臓弁として形成され、この心臓弁異種移植片が、当業者に既知の心臓弁移植手順に従い6匹のカニクイザルに移植された。
靱帯軟組織異種移植片が以下の移植手順を使用して6匹のカニクイザルに移植された。全身吸入麻酔法の下に異種移植片靱帯のための解剖学的な挿入部位が特定され、実質的に直径9mm長さ40mmの骨プラグを収受するための穿孔が形成された。靱帯異種移植片は穿孔に通され、締まり嵌めネジを使用して固着された。
【0081】
移植手順は無菌外科技法下に実施され、傷口は3−0ヴィクリルあるいは当業者に既知の好適な同等物を使用して閉鎖された。動物達は拘束されないカゴ内で活動し、不快や腫れ、感染、あるいは拒絶反応の兆候が監視された。血液サンプル(例えば2ml)が定期的(例えば2週間毎)に採取され、抗体が監視された。
移植したサルから採取した血清サンプル内の抗−Gal及び非抗−Galの抗−軟組織抗体(即ち、α−galエピトープ以外の軟組織抗原に結合する抗体)を判定することにより異種移植片に対する免疫反応の発生が評価された。移植手術日及び移植後定期的(例えば2週間毎)間隔で移植を受けたサルから少なくとも2mlの血液サンプルが採取された。採取した血液サンプルは遠心分離にかけられた後、血清サンプルが凍結され、抗Gal及びその他の非抗Gal抗軟組織抗体の活性が評価された。
【0082】
例えば、Galili他、Porcin,and bovine cartilage transplants in cynomolgus monkey:II. Changesinanti−Gal response during chronic rejection, 63 Transplantation 645−651(1997)に説明される方法の如き従来既知の方法に従い、固相抗原としてのα−gal−BSAを使用したELISA分析により血清サンプルにおける抗−Gal活性度が判定された。
α−ガラクトシダーゼ処理された異種移植片に抗軟組織抗体が形成されたか否かを判定するべく分析を実施した。抗軟組織抗体の活性度を測定するため、ELISA分析が従来既知の方法、例えば、K.R.Stone他、Porcine and bovine cartilage transplants in cynomolgus monkey; I.A. model for chronic xenograft rejection, 63 Transplantation 640−645(1997)に記載される方法に従い実施された。
【0083】
軟組織異種移植片は、移植後1〜2ヶ月の時点で、炎症性浸潤の組織学的評価のために随意的に外移植され、切片を作成され、染色された。抗Gal及びその他の抗軟骨軟組織抗体の活性度の移植後変化が移植後1〜2ヶ月の時点において、外移植された軟組織における炎症性の組織学的特性(即ち、顆粒球あるいは単核細胞浸潤物)と、例えば、Porcine and bovine cartilage transplants in cynomolgus monkey; I.A. model for chronic xenograft rejection, 63 Transplantation 640−645(1997)に記載されるような従来既知の方法に従い相関された。
【0084】
軟組織を外移植した場所において、軟組織異種移植片が、麻酔手順、関節の外科的露出、移植片の除去、軟組織の閉鎖を使用して無菌採取された(動物を回復させる場合)。異種移植片を除去するに際し、関節液がもし吸引されるに十分な量生じて、移植した軟組織の移植片の肉眼的(gros)且つ組織学的評価が良好であった場合には、免疫試験を実施する場合に備えてこの関節液を後膝関節から収集しておく。
メニスカス軟骨あるいは関節軟骨の異種移植片を移植された動物は、回復後、傷口が癒えて普通に歩けるようになるまで密着監視を続ける。異種移植片サンプルが収集され、プロセス処理され、顕微鏡検査にかけられる。
【0085】
メニスカス軟骨、関節軟骨、心臓弁及び靱帯の各異種移植片及び周囲組織の一部が、包埋モールド内で組織片を凍結させるための包埋媒体内で凍結され、従来既知の方法に従い免疫組織化学的に評価された。約10%w/wポリビニルアルコール、約4%W/Wポリエチレングリコール、約86%w/wの非反応性成分を含み、カリフォルニア州トーレンスのSakura FinTekの製造する“TISSUE−TEK(商標名)”O.C.T配合物は、本発明で使用することのできる包埋媒体の非限定例である。当業者に既知のその他のその他の包埋媒体を使用することもできる。残余の移植片及び周囲組織は組織病理学検査のために10%の中性緩衝ホルマリン内に収集された。
【0086】
例3:
α−ガラクトシダーゼ、フコシル及びフコシル転移酵素を使用して処理し、移植したメニスカス軟骨、関節軟骨、靱帯及び心臓弁の各軟組織移植片に対する霊長類反応の評価:
本例では、豚のメニスカス軟骨、関節軟骨、靱帯及び腹膜心臓弁の各軟組織異種移植片が例2で説明した如くαガラクトシダーゼ処理され、α−エピトープが除去された。軟組織移植片は更に、フコシル及びフコシル転移酵素処理され、残留炭水化物鎖がフコシルによりキャッピングされた。フコシル転移酵素は、異種移植片へのフコシル転移を容易化する。フコシルは残留炭水化物鎖と結合してこれをキャッピングする。フコシルによるキャッピングは、レシピエントの免疫システムの、異種移植片を異物と認識する能力を妨害する。軟組織移植片はカニクイザルに移植され、これらの軟組織移植片に対する霊長類反応が評価された。
【0087】
豚の後膝関節から採取したメニスカス軟骨及び関節軟骨移植片、豚の腹膜から採取した心臓弁移植片、豚の後膝関節から採取した靱帯移植片が、αガラクトシダーゼ処理を含む例2において移植片が調製された如く調製された。しかしながら、サルへの移植に先立ち、各移植片は所定濃度のフコシル及びフコシル転移酵素で所定温度下に所定時間処理され、残留炭水化物鎖がフコシルでキャッピングされた。例えば、各移植片は所定濃度のフコシル及びフコシル転移酵素の緩衝溶液内に浸漬された。各移植片は所定温度下に所定時間インキュベートされた。
移植片の炭水化物鎖をキャッピングするためにその他の分子、例えばN−アセチルグルコサミンと、相当するグリコシルトランスフェラーゼとの組み合わせも使用され得る。
【0088】
次いで、各移植片は洗浄されて酵素が除去された後、サルに移植され、これらの異種移植片に対する免疫反応の発生が、例2に関連して説明した如く評価された。
例4: 冷凍解凍サイクル及びプロテオグリカン除去因子処理を受けたメニスカス軟骨、関節軟骨、靱帯及び心臓弁の各軟組織異種移植片移植に対する霊長類反応の評価:
【0089】
本例では、例2で説明されたように、豚のメニスカス軟骨、関節軟骨、靱帯、腹膜から採取した心臓弁の各軟組織移植片が調製され、冷凍され、細胞が破壊、即ち殺された。これらの軟組織移植片は更にプロテオグリカン除去因子処理され、プロテオグリカンがこれらの異種移植片から実質的に排除された。次いで、各異種移植片は、例2で説明した如くグリコシダーゼ処理され、残留α−galエピトープが除去された。プロテオグリカン及び残留α−galエピトープが実質的に排除されたことにより、レシピエントの免疫システムの、異種移植片を異物と認識する能力が妨害される。各軟組織移植片はカニクイザルに移植され、これらの軟組織移植片に対する霊長類反応が評価された。
【0090】
豚の後膝関節から採取したメニスカス軟骨、関節軟骨、靱帯と、豚の腹膜から採取した心臓弁が調製され、次いで、例2に説明した、滅菌、冷凍/解凍サイクルの各処理を含む調製手順が実施された。コンドロイチナーゼABC溶液が、0.05MTris−HCL(7.88gm/リットル−MW=157.60)、5mMベンズアミジン−HCL(0.783gm/リットル−MW=156.61),0.010MN−エチルマレイミド(1.2513gm/リットル−MW=12513)、0.001Mフェニルメチルスルホニルフルオリド(0.17420gm/リットル−M=174.2)を組み合わせることにより調製され、メタノール中に溶解された。0.15MNaCl(8.775gm/リットル−Mw=58.5)、ペニシリン及びストレプトマイシン(1%(v/v)10ml/リットル)の混合物が、溶液1ミリリットル当たり1単位量のコンドロイチナーゼABC(Sigma#C−3509)酵素溶液の酵素と共に添加され、溶液が1リットルとされた。
【0091】
各軟組織異種移植片が、直径3mmの軟組織プラグ1個当たり溶液1mlの濃度下にコンドロイチナーゼABC酵素溶液中でインキュベートされた。インキュベートはシェーカー水浴内で48時間、pH8.0及び37℃の温度下に実施された。インキュベート後、各軟組織異種移植片は適宜の緩衝剤で洗浄され、コンドロイチナーゼABC酵素溶液に洗液が添加された。次いで、各軟組織異種移植片は更に48時間、1mlの溶液当たり1単位量のコンドロイチナーゼABC(Sigma#C−3509)酵素溶液の濃度下に、コンドロイチナーゼABC溶液を使用して上述した如く再インキュベートされた。各軟組織異種移植片は適宜の緩衝溶液内で再度洗浄され、洗液がコンドロイチナーゼABC溶液に追加された。
【0092】
次いで、各軟組織異種移植片は、pH7.2の状態下に、1mlのトリプシン溶液(1mg/mlトリプシン、0.15MNaCl、0.05Mナトリウムホスフェート)中で24時間インキュベートされた。インキュベートは37℃の温度下にシェーカー水浴内で実施された。各軟組織移植片は適宜の緩衝溶液内で洗浄され、洗液がトリプシン溶液に追加された。
次いで、各移植片は、1mlのヒアルロニダーゼ溶液(0.01mg/ml精巣ヒアルロニダーゼ、0.005MベンザミジンHCL、001M PMSF、0.010M ネチルマレイミド、0.005M ベンザミジンHCL、1%v/vペニシリン及びストレプトマイシン)中に、pH6.0の状態下に24時間置かれた。インキュベートは37℃の温度下にシェーカー水浴内で実施された。各軟組織移植片は適宜の緩衝溶液内で再度洗浄され、洗液がヒアルロニダーゼ溶液に追加された。
【0093】
引き続き、各軟組織異種移植片は例2で説明した如くグリコシダーゼ処理され、サルに移植され、これらの異種移植片に対する免疫反応の発生が例2で説明した如く評価された。
以上、本発明を実施例を参照して説明したが、本発明の内で種々の変更をなし得ることを理解されたい。
【0094】
本発明は次の[1]〜[57]にもある。
[1] 人間に移植するための軟組織異種移植片を調製するための方法であって、
a. 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去して異種移植片を用意すること、
b. 異種移植片を水及びアルコールで洗浄すること、
c. 異種移植片を細胞破壊処理すること、
d. 異種移植片から実質的に複数のプロテオグリカンを除去し、異種移植片を非免疫原性化し且つ実質的に天然の軟組織と同じ機械特性を実質的に有すものとすること、
を含む人間に移植するための軟組織異種移植片を調製するための方法。
[2] プロテオグリカンの除去が、異種移植片をコンドロイチナーゼABC、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチンACIIリアーゼ、ケラタナーゼ、トリプシン及びフィブロネクチンフラグメントから成る群から選択した少なくとも1つのプロテオグリカン除去因子を使用して消化することを含んでいる[1]の方法。
[3] ステップcの後、異種移植片に孔開けすることが含まれる[1]の方法。
[4] ステップcの後、異種移植片を少なくとも1つの酵素を使用して処理することが含まれる[1]の方法。
[5] フィシン及びトリプシンから成る群から酵素を選択することを含む[4]の方法。
[6] ステップcの後、異種移植片を、抗石灰化剤、抗血栓症剤、抗生物質及び成長因子から成る群から選択した1つ以上の作用物質を使用して処理することが更に含まれる[1]の方法。
[7] ステップcの後、異種移植片を滅菌することが更に含まれる[1]の方法。
[8] 異種移植片の滅菌処理が、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドから成る群から選択した1つ以上の作用物質を使用して処理することを更に含む[7]の方法。
[9] ステップcの後、ポリエチレングリコールを使用して異種移植片を処理することが更に含まれる[1]の方法。
[10] ステップcの後、異種移植片を蒸気形態の架橋剤に暴露することが更に含まれる[1]の方法。
[11] 細胞破壊処理が冷凍/解凍サイクルを含む[1]方法。
[12] 細胞破壊処理がガンマ放射線への暴露を含む[1]の方法。
[13] ステップdの後、異種移植片から実質的に複数の第1表面炭水化物成分が除去される[1]の方法。
[14] 上記除去ステップには、グリコシダーゼを使用して異種移植片を消化することが含まれる[13]の方法。
[15] グリコシダーゼがガラクトシダーゼである[14]の方法。
[16] ガラクトシダーゼがα−ガラクトシダーゼである[15]の方法。
[17] 上記除去後、複数のキャッピング分子を使用して異種移植片上の複数の第2表面炭水化物成分を処理し、該第2表面炭水化物成分の少なくとも一部分をキャッピング処理することが更に含まれる[13]の方法。
[18] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のフコシル分子である[17]の方法。
[19] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のn−アセチルグルコサミン分子である[17]の方法。
[20] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、上(superior)主表面及び下(inferior)主表面を有する内側(medial)メニスカス又は外側(lateral)メニスカスの一部を除去することを含み、各主表面が外部外側(outer lateral)表面により連結された外部(outer)部分を有し、各主表面が内部外側(inner lateral)表面により連結された内部(inner)部分を有する、[1]の方法。
[21] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、靱帯の一部分を除去することを含む[1]の方法。
[22] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、靱帯の一部分と共に、該一部分の第1の端部に付着した第1の骨ブロックを除去することを含む[21]の方法。
[23] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、靱帯の一部分と共に、該一部分の、第1の端部とは反対側の第2の端部に付着した第2の骨ブロックを除去することを含む[22]の方法。
[24] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、関節軟骨の一部分を除去することを含む[1]の方法。
[25] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、関節軟骨の一部分と共に肋軟骨下の骨層を除去することを含む[24]の方法。
[26] 人間に移植するための実質的に非免疫原性の、プロテオグリカン除去された軟組織異種移植片を含む製造物品であって、
a.人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去して異種移植片を用意すること、
b.異種移植片を水及びアルコールで洗浄すること、
c.異種移植片を細胞破壊処理すること、
d.異種移植片をプロテオグリカン除去因子を使用して消化し、異種移植片から実質的に複数のプロテオグリカンを除去し、
異種移植片を実質的に非免疫原性化し且つ天然の軟組織と同じ機械特性を有するものとして調製した製造物品。
[27] プロテオグリカン除去因子を、コンドロイチナーゼABC、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチンACIIリアーゼ、ケラタナーゼ、トリプシン及びフィブロネクチンフラグメントから成る群から選択した[26]の製造物品。
[28] 異種移植片が、作用物質及び酵素に対する透過性を高めるための複数の孔を有する[26]の製造物品。
[29] 抗石灰化剤、抗血栓症剤、抗生物質及び成長因子、から成る群から選択した1つ以上の作用物質を更に含む[26]の製造物品。
[30] 異種移植片が滅菌される[26]の製造物品。
[31] 異種移植片がポリエチレングリコール処理した異種移植片である[26]の製造物品。
[32] 架橋剤を更に含む[26]の製造物品。
[33] 異種移植片が、第1表面炭水化物成分が実質的に除去されている[26]の製造物品。
[34] 異種移植片が、グリコシダーゼ処理された異種移植片である[33]の製造物品。
[35] グリコシダーゼ処理された異種移植片がガラクトシダーゼ処理された異種移植片である[34]の製造物品。
[36] ガラクトシダーゼ処理された異種移植片がα−ガラクトシダーゼ処理された異種移植片である[35]の製造物品。
[37] 異種移植片の第2表面炭水化物成分にキャッピングされた複数のキャッピング分子を更に含む[33]の製造物品。
[38] キャッピング分子が、フコシル分子及びn−アセチルグルコサミン分子から成る群の1つ以上から選択される[37]の製造物品。
[39] 異種移植片が、凍結異種移植片を解凍したものである[26]の製造物品。
[40] 異種移植片が、ガンマ線照射された異種移植片である[26]の製造物品。
[41] 人間以外の動物から除去される軟組織の一部分が、上主表面及び下主表面を有する内側メニスカス又は外側メニスカスの一部であり、各主表面が外部外側表面により連結された外部部分を有し、各主表面が内部外側表面により連結された内部部分を有する、[26]の製造物品。
[42] 人間以外の動物から除去される軟組織の一部分が靱帯である[26]の製造物品。
[43] 靱帯の一部分が、該部分の第1の端部に付着した第1の骨ブロックを含んでいる[42]の製造物品。
[44] 靱帯の一部分が、該部分の、第1の端部とは反対側の第2の端部に付着した第2の骨ブロックを含んでいる[43]の製造物品。
[45] 人間以外の動物から除去される軟組織の一部分が関節軟骨である[26]の製造物品。
[46] 関節軟骨の一部分が肋軟骨下の骨層を含んでいる[45]の製造物品。
[47] 人間に移植するための軟組織異種移植片であって、
人間以外の動物からの軟組織の一部分にして、該一部分が、複数の実質的に死細胞のみと、複数の細胞外成分とを含み、該細胞外成分がプロテオグリカン減少されており、該軟組織の一部分が実質的に非免疫原性であり且つ実質的に天然軟組織と同じ機械特性を有する軟組織異種移植片。
[48] 細胞外成分と、実質的に死細胞のみとが、実質的に表面α−ガラクトシル成分を有さない[47]の軟組織異種移植片。
[49] 軟組織の一部分が、異種移植片の複数の表面炭水化物成分の少なくとも一部分と架橋されたキャッピング分子を有する[47]の軟組織異種移植片。
[50] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のフコシル分子である[49]の軟組織異種移植片。
[51] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のn−アセチルグルコサミン分子である[49]の軟組織異種移植片。
[52] 軟組織の一部分が、上主表面及び下主表面を有する内側メニスカス又は外側メニスカスの一部であり、各主表面が外部外側表面により連結された外部部分を有し、各主表面が内部外側表面により連結された内部部分を有する、[47]の軟組織異種移植片。
[53] 軟組織の一部分が靱帯である[47]の軟組織異種移植片。
[54] 靱帯の一部分が、該部分の第1の端部に付着した第1の骨ブロックを含んでいる[52]の軟組織異種移植片。
[55] 靱帯の一部分が、該部分の、第1の端部とは反対側の第2の端部に付着した第2の骨ブロックを含んでいる[54]の軟組織異種移植片。
[56] 軟組織の一部分が関節軟骨である[47]の軟組織異種移植片。
[57] 関節軟骨の一部分が肋軟骨下の骨層を含んでいる[56]の軟組織異種移植片。
【0095】
本発明は次の[1]〜[54]にもある。
[1] 人間に移植するための軟組織異種移植片を調製するための方法であって、
a.人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去して異種移植片を用意すること、
b.異種移植片を水及びアルコールで洗浄すること、
c.異種移植片を細胞破壊処理すること、
d.異種移植片から実質的に複数のプロテオグリカンを除去し、異種移植片を非免疫原性化し且つ実質的に天然の軟組織と同じ機械特性を実質的に有すものとすること、
を含み、プロテオグリカンの除去が、異種移植片をコンドロイチナーゼABC、ヒアルロニダーゼ、及びフィブロネクチンフラグメントから成る群から選択した少なくとも1つのプロテオグリカン除去因子を使用して消化することを含んでいる方法であり、使用される濃度がコンドロイチナーゼABCについては0.01u/ml〜2.0u/ml、ヒアルロニダーゼについては1.0TRU/ml〜100.0TRU/ml、フィブロネクチンフラグメントについては0.01μM〜1.0μMである方法。
[2] ステップcの後、異種移植片に孔開けすることが含まれる[1]の方法。
[3] ステップcの後、異種移植片を少なくとも1つの酵素を使用して処理することが含まれる[1]の方法。
[4] フィシン及びトリプシンから成る群から酵素を選択することを含む[3]の方法。
[5] ステップcの後、異種移植片を、抗石灰化剤、抗血栓症剤、抗生物質及び成長因子から成る群から選択した1つ以上の作用物質を使用して処理することが更に含まれる[1]の方法。
[6] ステップcの後、異種移植片を滅菌することが更に含まれる[1]の方法。
[7] 異種移植片の滅菌処理が、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドから成る群から選択した1つ以上の作用物質を使用して処理することを更に含む[6]の方法。
[8] ステップcの後、ポリエチレングリコールを使用して異種移植片を処理することが更に含まれる[1]の方法。
[9] ステップcの後、異種移植片を蒸気形態の架橋剤に暴露することが更に含まれる[1]の方法。
[10] 細胞破壊処理が冷凍/解凍サイクルを含む[1]の方法。
[11] 細胞破壊処理がガンマ放射線への暴露を含む[1]の方法。
[12] ステップdの後、異種移植片から実質的に複数の、炭水化物鎖の非還元末端位置の末端α−ガラクトシル糖である第1表面炭水化物成分が除去される[1]の方法。
[13] 上記除去ステップには、グリコシダーゼを使用して異種移植片を消化することが含まれる[12]の方法。
[14] グリコシダーゼがガラクトシダーゼである[13]の方法。
[15] ガラクトシダーゼがα−ガラクトシダーゼである[14]の方法。
[16] 上記除去後、複数のキャッピング分子を使用して異種移植片上の複数の、炭水化物鎖の非還元末端位置でのN−アセチルラクトサミン基である第2表面炭水化物成分を処理し、該第2表面炭水化物成分の少なくとも一部分をキャッピング処理することが更に含まれる[12]の方法。
[17] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のフコシル分子である[16]の方法。
[18] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のn−アセチルグルコサミン分子である[16]の方法。
[19] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、上(superior)主表面及び下(inferior)主表面を有する内側(medial)メニスカス又は外側(lateral)メニスカスの一部を除去することを含み、各主表面が外部外側(outer lateral)表面により連結された外部(outer)部分を有し、各主表面が内部外側(inner lateral)表面により連結された内部(inner)部分を有する、[1]の方法。
[20] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、靱帯の一部分を除去することを含む[1]の方法。
[21] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、靱帯の一部分と共に、該一部分の第1の端部に付着した第1の骨ブロックを除去することを含む[20]の方法。
[22] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、靱帯の一部分と共に、該一部分の、第1の端部とは反対側の第2の端部に付着した第2の骨ブロックを除去することを含む[21]の方法。
[23] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、関節軟骨の一部分を除去することを含む[1]の方法。
[24] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、関節軟骨の一部分と共に肋軟骨下の骨層を除去することを含む[23]の方法。
[25] 人間に移植するための実質的に非免疫原性の、プロテオグリカン除去された軟組織異種移植片を含む製造物品であって、
a.人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去して異種移植片を用意すること、
b.異種移植片を水及びアルコールで洗浄すること、
c.異種移植片を細胞破壊処理すること、
d.異種移植片をプロテオグリカン除去因子を使用して消化し、異種移植片から実質的に複数のプロテオグリカンを除去し、
異種移植片を実質的に非免疫原性化し且つ天然の軟組織と同じ機械特性を有するものとして調製した製造物品であり、
プロテオグリカン除去因子を、コンドロイチナーゼABC、ヒアルロニダーゼ、及びフィブロネクチンフラグメントから成る群から選択して使用され、使用される濃度がコンドロイチナーゼABCについては0.01u/ml〜2.0u/ml、ヒアルロニダーゼについては1.0TRU/ml〜100.0TRU/ml、フィブロネクチンフラグメントについては0.01μM〜1.0μMである、製造物品。
[26] 異種移植片が、作用物質及び酵素に対する透過性を高めるための複数の孔を有する[25]の製造物品。
[27] 抗石灰化剤、抗血栓症剤、抗生物質及び成長因子、から成る群から選択した1つ以上の作用物質を更に含む[25]の製造物品。
[28] 異種移植片が滅菌される[25]の製造物品。
[29] 異種移植片がポリエチレングリコール処理した異種移植片である[25]の製造物品。
[30] 架橋剤を更に含む[25]の製造物品。
[31] 異種移植片が、炭水化物鎖の非還元末端位置の末端α−ガラクトシル糖である第1表面炭水化物成分が実質的に除去されている[25]の製造物品。
[32] 異種移植片が、グリコシダーゼ処理された異種移植片である[31]の製造物品。
[33] グリコシダーゼ処理された異種移植片がガラクトシダーゼ処理された異種移植片である[32]の製造物品。
[34] ガラクトシダーゼ処理された異種移植片がα−ガラクトシダーゼ処理された異種移植片である[33]の製造物品。
[35] 異種移植片の、炭水化物鎖の非還元末端位置でのN−アセチルラクトサミン基である第2表面炭水化物成分にキャッピングされた複数のキャッピング分子を更に含む[31]の製造物品。
[36] キャッピング分子が、フコシル分子及びn−アセチルグルコサミン分子から成る群の1つ以上から選択される[35]の製造物品。
[37] 異種移植片が、凍結異種移植片を解凍したものである[25]の製造物品。
[38] 異種移植片が、ガンマ線照射された異種移植片である[25]の製造物品。
[39] 人間以外の動物から除去される軟組織の一部分が、上主表面及び下主表面を有する内側メニスカス又は外側メニスカスの一部であり、各主表面が外部外側表面により連結された外部部分を有し、各主表面が内部外側表面により連結された内部部分を有する、[25]の製造物品。
[40] 人間以外の動物から除去される軟組織の一部分が靱帯である[25]の製造物品。
[41] 靱帯の一部分が、該部分の第1の端部に付着した第1の骨ブロックを含んでいる[40]の製造物品。
[42] 靱帯の一部分が、該部分の、第1の端部とは反対側の第2の端部に付着した第2の骨ブロックを含んでいる[41]の製造物品。
[43] 人間以外の動物から除去される軟組織の一部分が関節軟骨である[25]の製造物品。
[44] 関節軟骨の一部分が肋軟骨下の骨層を含んでいる[43]の製造物品。
[45] 人間に移植するための軟組織異種移植片であって、
人間以外の動物からの軟組織の一部分にして、該一部分が、複数の実質的に、該組織を細胞破壊処理した結果死んだ細胞のみと、複数の細胞外成分とを含み、該細胞外成分がプロテオグリカン除去因子で該組織を処理した結果プロテオグリカン減少されており、軟組織の該一部分が細胞破壊処理及びプロテオグリカン除去因子での処理の結果、実質的に非免疫原性であり且つ実質的に天然軟組織と同じ機械特性を有する軟組織異種移植片であり、プロテオグリカン除去因子を、コンドロイチナーゼABC、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチンACIIリアーゼ、ケラタナーゼ、トリプシン及びフィブロネクチンフラグメントから成る群から選択した移植片であり、
細胞外成分と、実質的に死細胞のみとが、実質的に表面α−ガラクトシル成分を有さない軟組織異種移植片。
[46] 軟組織の一部分が、異種移植片の複数の表面炭水化物成分の少なくとも一部分と架橋されたキャッピング分子を有する[45]の軟組織異種移植片。
[47] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のフコシル分子である[46]の軟組織異種移植片。
[48] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のn−アセチルグルコサミン分子である[46]の軟組織異種移植片。
[49] 軟組織の一部分が、上主表面及び下主表面を有する内側メニスカス又は外側メニスカスの一部であり、各主表面が外部外側表面により連結された外部部分を有し、各主表面が内部外側表面により連結された内部部分を有する、[45]の軟組織異種移植片。
[50] 軟組織の一部分が靱帯である[45]の軟組織異種移植片。
[51] 靱帯の一部分が、該部分の第1の端部に付着した第1の骨ブロックを含んでいる[49]の軟組織異種移植片。
[52] 靱帯の一部分が、該部分の、第1の端部とは反対側の第2の端部に付着した第2の骨ブロックを含んでいる[51]の軟組織異種移植片。
[53] 軟組織の一部分が関節軟骨である[45]の軟組織異種移植片。
[54] 関節軟骨の一部分が肋軟骨下の骨層を含んでいる[53]の軟組織異種移植片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間に移植するための軟組織異種移植片であって、
人間以外の動物からの軟組織の一部分にして、該一部分が、複数の実質的に、該組織を細胞破壊処理した結果死んだ細胞のみと、複数の細胞外成分とを含み、該細胞外成分がプロテオグリカン除去因子で該組織を処理した結果プロテオグリカン減少されており、軟組織の該一部分が細胞破壊処理及びプロテオグリカン除去因子での処理の結果、実質的に非免疫原性であり且つ実質的に天然軟組織と同じ機械特性を有する軟組織異種移植片であり、プロテオグリカン除去因子を、コンドロイチナーゼABC、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチンACIIリアーゼ、ケラタナーゼ、トリプシン及びフィブロネクチンフラグメントから成る群から選択した移植片であり、
細胞外成分と、実質的に死細胞のみとが、実質的に表面α−ガラクトシル成分を有さない軟組織異種移植片。
【請求項2】
軟組織の一部分が、異種移植片の複数の表面炭水化物成分の少なくとも一部分と架橋されたキャッピング分子を有する請求項1の軟組織異種移植片。
【請求項3】
キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のフコシル分子である請求項2の軟組織異種移植片。
【請求項4】
キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のn−アセチルグルコサミン分子である請求項2の軟組織異種移植片。
【請求項5】
軟組織の一部分が、上主表面及び下主表面を有する内側メニスカス又は外側メニスカスの一部であり、各主表面が外部外側表面により連結された外部部分を有し、各主表面が内部外側表面により連結された内部部分を有する、請求項1の軟組織異種移植片。
【請求項6】
軟組織の一部分が靱帯である請求項1の軟組織異種移植片。
【請求項7】
靱帯の一部分が、該部分の第1の端部に付着した第1の骨ブロックを含んでいる請求項5の軟組織異種移植片。
【請求項8】
靱帯の一部分が、該部分の、第1の端部とは反対側の第2の端部に付着した第2の骨ブロックを含んでいる請求項7の軟組織異種移植片。
【請求項9】
軟組織の一部分が関節軟骨である請求項1の軟組織異種移植片。
【請求項10】
関節軟骨の一部分が肋軟骨下の骨層を含んでいる請求項9の軟組織異種移植片。

【図1】
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【図2】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−166039(P2012−166039A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−95033(P2012−95033)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【分割の表示】特願2000−598085(P2000−598085)の分割
【原出願日】平成12年2月8日(2000.2.8)
【出願人】(500418299)アペリオン・バイオロジックス・ インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Aperion Biologics,Inc.
【住所又は居所原語表記】11969 Starcrest Drive, San Antonio, TEXAS 78247 U.S.A.
【Fターム(参考)】