プロテオソームを用いた感染性疾患に対する予防接種
プロテオソームベース免疫活性組成物の治療用処方物を作製および使用するための方法が提供される。1つの局面において、本発明は、抗原に対して免疫応答を誘導するための方法を提供し、この方法は、抗原に対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有する。別の局面において、本発明は、微生物感染を処置または予防するための方法を提供し、この方法は、微生物感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、感染性疾患または毒性因子に対して防御するための鼻送達ワクチンに関し、そして特に、微生物病原体または毒性因子(例えば、Yersinia pestis、痘瘡ウイルス、リシントキシンおよびボツリヌストキシン)に関連する種々の疾患を処置または予防するためのプロテオソームベース組成物およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
有効な免疫応答は、生来の免疫系(侵襲性病原体に対する防御の第1ライン)と適応(特異)免疫応答との間の連絡に依存する(一般的に、Kleinら、Immunology(第2版),Blackwell Science Inc.、Boston、1997を参照のこと)。Tリンパ球は、エフェクター分子の放出を制御することによって上記適応免疫応答を協同して働かせるために、重要である。例えば、Tヘルパー(Th)1細胞は、インターロイキン−2(IL−2)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)およびインターフェロンγ(IFN−γ)を生成し、これらは、細胞媒介性免疫の発達のために重要である(Mosmannら、J.Immunol.136:2348、1986;StreetおよびMosmann、FASEB J.5:171、1991)。対照的に、Th2細胞は、IL−4、IL−13、IL−5、IL−9、IL−6およびIL−10を生成し、これらは、IgE生成の刺激、粘膜肥満細胞症および好酸球増加症のために重要である(Mosmannら;SrteetおよびMosmann)。Th1(1型応答)表現型またはTh2(2型応答)表現型へのシフトは、病原体に対する防御のために重要でありながら、1つの方向または別の方向のシフトはまた、自己免疫疾患(Th1)または炎症性疾患(Th2)の誘導と関連し得る。
【0003】
この点において、ワクチンは、適応免疫応答を誘導するために開発され、そして使用されている。ワクチンは、代表的に、弱毒化微生物または微生物抗原(すなわち、微生物成分(例えば、タンパク質または核酸))を含み、特異免疫応答を活性化する。しかし、宿主において抗原が防御免疫応答を誘導する能力は、ときに、上記抗原を免疫刺激因子またはアジュバントとともに処方することによって増強されなければならない。100年にわたる間、アルミニウムベースの無機塩(総称して、ミョウバンとして公知)は、ヒトの用途のために承認された唯一のアジュバントであった。歴史的に、ミョウバンは、筋内に注射される場合に、吸収されるタンパク質に対する応答を有意に増強することによる、有効なアジュバントであった。しかし、近年、ミョウバンアジュバントは、以下の報告に起因して、精査を受ける状態となっている(1)ミョウバンは、高度に精製された組み換えタンパク質に基づく新しい世代のワクチン抗原に対して、弱いアジュバントである;(2)ミョウバンは、報告によると、いくらかのワクチンレシピエントにおいて、IgE抗体を誘導し得、そしてアレルギー反応と関連する;そして(3)ミョウバンは、注射部位における有害反応として証明されている持続的な免疫応答を誘導し得る。これらの有害反応は、ミョウバン吸着ワクチンの、抗原特異免疫応答を2型表現型(すなわち、炎症性免疫)へと偏らせる傾向と関連することが見出されている。さらに、ミョウバンベースのワクチンは、注射経路によるヒトにおける用途のために、唯一、承認されている。
【0004】
他の公知のアジュバントとしては、フロイントアジュバント(完全または不完全)、リポポリサッカリド(LPS、また、エンドトキシンとも呼ばれる)およびpertussisアジュバント(殺したBordatella pertussis生物の生理食塩水懸濁液)が挙げられる。フロイントアジュバントは、油/水エマルジョン中の微生物の混合物からなる。しかし、この物質に対する頻繁な毒性生理学的反応および免疫学的反応に起因して、フロイントアジュバントは、ヒトにおいては使用され得ない。LPSは、生来の免疫応答を開始することによって免疫系を刺激するが、LPSは、利用可能なアジュバントであるには毒性が強すぎる。構造的にエンドトキシンと関連する分子(例えば、モノホスホリルリピドA(「MPL」または無毒化LPS))は、臨床試験においてアジュバントとして試験されている。調査されている他の潜在的なアジュバントとしては、サポニン(米国特許第6,080,725号;同第6,262,029号;および同第5,977,081号を参照のこと);両親媒性アルデヒド(米国特許第6,649,172号を参照のこと);プロテオソーム(米国特許第5,726,292号および同第5,985,284号;米国特許出願番号2001/0053368および2003/0044425を参照のこと);および環式アミノアルキルグルコサミニドホスフェート(米国特許第6,525,028号を参照のこと)が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、当該分野において、抗原とともに同時投与されて、より強力な免疫応答を促進し、微生物感染または毒性因子に対して防御し得る、優れた免疫刺激性化合物を同定および開発する必要性が認識されている。本発明は、このような必要性を満たし、そして他の関連する利点をさらに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の簡単な要旨)
本開示は、抗原のためのアジュバント処方物を提供し、特に、例えば、感染性疾患もしくは毒性因子の作用の処置または予防のような種々の治療設定における使用のための、種々の抗原を有する処方物のためのプロテオソームベースのアジュバントを提供する。
【0007】
1つの局面において、本発明は、抗原に対して免疫応答を誘導するための方法を提供し、この方法は、抗原に対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有する。別の局面において、本発明は、微生物感染を処置または予防するための方法を提供し、この方法は、微生物感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有する。特定の実施形態において、上記免疫原性組成物の抗原は、Bacillus anthracis、Chlamydia trachomatis、Staphylococcus aureus、Clostridium perfringensまたはYersinia pestis由来の1つ以上を含む。特定の他の実施形態において、上記免疫原性組成物の抗原は、ポックスウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス、フィロウイルスまたはピコルナウイルス由来を含む。さらに他の実施形態において、上記免疫原性組成物の抗原は、1以上のトキシンを含む。さらに他の実施形態において、上記抗原は、組み換え抗原である。さらに他の実施形態において、上記免疫原性組成物は、複数の異なる抗原を含む。関連する実施形態において、上記複数の抗原は、ウイルス、微生物、寄生生物、トキシンまたはそれらの組み合わせを含み得る。
【0008】
特定の実施形態において、上記免疫原性組成物は、粘膜、経腸、非経口、経皮、経粘膜、鼻もしくは吸入、またはそれらの組み合わせから選択される経路によって投与される。関連する実施形態において、上記免疫原性組成物は、防御免疫応答を誘導する。他の実施形態において、上記抗原は、Bacillus anthracisの防御抗原、Boretella pertussisの糸状赤血球凝集素(FHA)、Yersinia pestis由来のF1抗原もしくはV抗原、F1−V抗原融合タンパク質抗原またはそれらの組み合わせを含む。さらに他の実施形態において、上記抗原は、痘瘡ウイルスまたはワクシニアウイルス由来の1つ以上の抗原を含む。さらに他の実施形態において、上記抗原は、ボツリヌストキシン、StaphylococcusエンテロトキシンBまたはそのフラグメントもしくは改変体のうちの1つ以上を含む。
【0009】
さらに他の実施形態において、いずれの上述の免疫原性組成物も、その免疫原性組成物中に、約1%〜約500%の範囲のプロテオソームタンパク質の百分率として、リポサッカリド最終重量含量を有する。他の実施形態において、上記プロテオソームおよびリポサッカリドは、同じ微生物から得られても異なる微生物から得られてもよい(例えば、グラム陰性細菌)。いくつかの実施形態において、上記リポサッカリドは、Shigella種、Chlamydia種、Yersinia種、Pseudomonas種、Plesiomonas種、Escherichia種、Salmonella種またはそれらの組み合わせから選択されるグラム陰性細菌由来である。他の実施形態において、上記プロテオソームは、Neisseria種由来である。特定の実施形態において、本開示の免疫原性組成物は、Neisseria meningitides由来であるプロテオソームおよびShigella flexneri由来であるリポサッカリドを有する。他の実施形態において、いずれの上述の免疫原性組成物も、約5:1〜約1:500の範囲にあるプロテオソーム:抗原の比を有するか、またはその比は、少なくとも1:2、1:5もしくは1:10である。さらに他の実施形態において、いずれの上述の免疫原性組成物も、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤をさらに含有する。
【0010】
別の局面において、本開示は、抗原に対して免疫応答を誘導する方法を提供し、この方法は、抗原に対する免疫応答を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、アジュバントおよび抗原を含有し、ここで、上記アジュバントは、プロテオソームおよびリポサッカリドを含有し、そして上記アジュバント:抗原の比は、約1:5〜約1:500の範囲にあるか、または少なくとも1:5であり、それにより、上記抗原に対して免疫応答が誘導される。関連する局面において、微生物感染を処置または予防するための方法が提供され、この方法は、微生物感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、アジュバントおよび抗原を含有し、ここで、上記アジュバントは、プロテオソームおよびリポサッカリドを含有し、そして上記アジュバント:抗原の比は、約1:5〜約1:500の範囲にあるか、または少なくとも1:5であり、それにより、微生物感染は処置または予防される。特定の実施形態において、上述の免疫原性組成物のうちのいずれかが提供され、ここで、上記抗原は、微生物抗原、ウイルス抗原またはトキシン抗原のうちの少なくとも1つである。
【0011】
本発明のこれらの局面および他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって明白になる。さらに、種々の参考文献が本明細書中で述べられ、これらの参考文献は、特定の手順または組成物をより詳細に記載し、そして従って、その全体が参考として援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明を記述する前に、本明細書中の以下で使用される特定の用語の定義を記述することは、その理解に対する補助となり得る。
【0013】
本明細書中で使用される場合、「プロテオソームまたはProjuvant」とは、グラム陰性細菌(例えば、Neisseria種、(例えば、Lowellら、J.Exp.Med.167:658、1988;Lowellら、Science 240:800、1988;Lynchら、Biophys.J.45:104、1984;Lowell、「New Generation Vaccines」第2版、Marcel Dekker,Inc.、New York、Basil、Hong Kong、193頁、1997における;米国特許第5,726,292号;米国特許第4,707,543号を参照のこと))由来の外膜タンパク質(OMP、またはポーリンとしても公知)の調製物をいい、これらは、免疫原(例えば、微生物抗原またはウイルス抗原)のためのキャリアまたはアジュバントとして有用である。プロテオソームは、疎水性であり、そしてヒトの用途のために安全であり、そして特定のウイルスに対してサイズにおいて適合性である。プロテオソームは、20nm〜800nmの小胞または小胞様のOMPクラスターへと自己集合し、そしてタンパク質抗原(Ag)(特に、疎水性部分を有する抗原)を非共有結合的に組み込むか、調和するか、(例えば、静電気的または疎水的に)会合するか、またはそうでなければ協同して働くという興味深い能力を有する。小胞または小胞様の形態の上記外膜タンパク質成分(複数分子膜性構造または1つ以上のOMPの溶解顆粒様OMP組成物を含む)をもたらす任意の調製方法は、プロテオソームの定義内に含まれる。プロテオソームは、例えば、当該分野において記載されるように調製され得る(例えば、米国特許第5,726,292号または同第5,985,284号を参照のこと)。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「リポサッカリド」とは、グラム陰性細菌(例えば、Shigella flexneriまたはPlesiomonas shigelloides)または他のグラム陰性細菌(Alcaligenes種、Bacteroides種、Bordetella種、Borrellia種、Brucella種、Campylobacter種、Chlamydia種、Citrobacter種、Edwardsiella種、Ehrlicha種、Enterobacter種、Escherichia種、Francisella種、Fusobacterium種、Gardnerella種、Hemophillus種、Helicobacter種、Klebsiella種、Legionella種、Leptospira種(Leptospira interrogansを含む)、Moraxella種、Morganella種、Neiserria腫、Pasteurella種、Proteus種、Providencia種、他のPlesiomonas種、Porphyromonas種(Porphyromonas gingivalisを含む)、Prevotella種、Pseudomonas種、Rickettsia種、Salmonella種、Serratia種、他のShigella種、Spirillum種、Veillonella種、Vibrio種またはYersinia種を含む)由来の天然(単離されるかまたは天然構造を有するように合成的に調製される)または改変されたリポサッカリドもしくはリポオリゴサッカリド(まとめて、また、「LPS」と呼ばれる)をいう。上記リポサッカリドは、無毒化形態(すなわち、リピドAコアが除去されている)にあっても、無毒化されていない形態にあってもよい。本開示におい
て、リポサッカリドは、無毒化される必要はなく、好ましくは、無毒化されない。上記リポサッカリドは、例えば、米国特許出願公開番号2003/0044425に記載されるように調製され得る。
【0015】
本明細書中で使用される場合、「プロテオソーム:LPSまたはProtollinまたはIVXまたはIVX−908」とは、本明細書中に記載されるように少なくとも1種のリポサッカリドと混合されて、OMP−LPS組成物(これは、免疫刺激組成物として機能し得る)を提供するProjuvantの調製物をいう。従って、上記OMP−LPSアジュバントは、Protollinの2つの基本成分から構成され得、このProtollinの2つの基本成分は、(1)グラム陰性細菌(例えば、Neisseria meningitides)から調製されたプロテオソーム(すなわち、Projuvant)の外膜タンパク質調製物、および(2)1つ以上のリポサッカリドの調製物を含む。Protollinはまた、必要に応じて、脂質、糖脂質、糖タンパク質、低分子などおよびそれらの組み合わせを含有することが理解されるべきである。上記Protollinは、例えば、米国特許出願公開番号2003/0044425に記載されるように調製され得る。
【0016】
Projuvantは、一般的に、(天然に存在するかまたは改変された)疎水性部分(また、「フット(foot)」または「アンカー」と呼ばれる)を有する抗原と組み合わせて使用される。しかし、Protollin(外因的に付加されたLPSを有する)は、疎水性フットドメインを含まず、本質的には大部分が親水性である抗原とともに使用され得るか、または疎水性フットを含む抗原と会合し得るか、またはそれらの組み合わせである。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「トキシンまたは毒性因子」とは、抗原性であり、そして特定の微生物もしくはいくつかのより高等な植物種および動物種の代謝または成長の間に、細胞もしくは組織の欠くことのできない部分(例えば、エンドトキシン)として、細胞外生成物(例えば、エキソトキシン)としてまたはその2つの組み合わせとして形成または作製される、有害物質または有毒物質をいう。本開示の免疫原性組成物における使用のために、トキシンまたは毒性因子は、「トキソイド」の形態にあり、それにより、上記免疫原性組成物は、有毒でも有害でもないことが理解されるべきである。「トキソイド」形態は、抗原性をなお保持しながら、上記因子の有毒特性を破壊する(すなわち、抗トキシンを誘導し得るかまたは免疫応答を中和し得る)ように処理されているトキシンである。トキソイドを生じるトキシンの「処理」としては、化学的処理(例えば、ホルムアルデヒド)、変異、フラグメントおよびそれらの組み合わせが挙げられる。例示的なトキシンとしては、リシントキシン、ボツリヌストキシン、アルファトキシン、イプシロントキシン(episolntoxin)、StaphylococcusエンテロトキシンB、テトロドトキシン、蛇毒トキシン(snae venom toxin)、ジフテリアトキシン、コレラトキシン、サキシトキシン、トリコテセンマイコトキシンなどが挙げられる。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「免疫原性組成物」とは、適応(特異)免疫応答を開始させるか、増強するか、活性化するか、刺激するか、増大するか、増進するか、増幅するかもしくは促進し得る、任意の1つ以上の化合物または因子をいい、これらは、細胞性(T細胞)もしくは体液性(B細胞)、またはそれらの組み合わせであり得る。好ましくは、上記適応免疫応答は、防御的であるか、中和するか、またはその両方である。免疫原の代表的な例としては、微生物抗原(例えば、1つ以上の本発明の細菌タンパク質、ウイルスタンパク質または寄生生物タンパク質)または非微生物抗原(例えば、植物(リシン)、渦鞭毛藻類(サキシトキシン)などのような他の供給源から得られる抗原)である。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「特異免疫応答または獲得免疫応答または適応免疫応答」とは、感染性因子または抗原に予め曝露することの結果としてもたらされる、哺乳動物免疫系によって媒介される抵抗性をいう。例えば、特異免疫は、天然に獲得される(開存性または潜伏性)感染または意図的な予防接種からの結果であり得る。さらに、特異免疫は、生来の別のものからの抗体の転移(例えば、母性遺伝)または意図的な予防接種による抗体もしくは免疫細胞の転移(例えば、抗体媒介性免疫療法)から、受動的かつ一時的に獲得され得る。
【0020】
本説明において、任意の濃度範囲、百分率範囲、比の範囲または他の整数範囲は、別に示されなければ、その列挙される範囲および必要に応じてその分数(例えば、整数の10分の1および100分の1)内の任意の整数値を含むことが理解されるべきである。本明細書中で使用される場合、「約」または「本質的に構成する(comprising essentially of)」とは、±15%を意味する。代替物の使用(例えば、「または」)は、その代替物の1つ、両方またはその任意の組み合わせを意味することが理解されるべきである。本明細書中で使用される場合、不定冠詞(例えば、「ある(a)」または「ある(an)」)の使用は、名詞または名詞熟語の単数形および複数形をいうことが理解されるべきである。さらに、本明細書中に記載される種々の成分または組成物もしくは順序、構造および置換の組み合わせから誘導される、個々の組成物、処方物もしくは化合物、または組成物、処方物もしくは化合物の群は、各組成物もしくは化合物、または組成物もしくは化合物の群が独立して述べられるのと同じ程度に、本出願によって開示されることが理解されるべきである。従って、特定の順序、構造または置換の選択は、本発明の範囲内である。
【0021】
上述のように、そして本明細書中で記載されるように、本発明は、免疫原性組成物を使用および作製して、種々の感染性疾患を処置もしくは予防するか、または毒性因子と関連する病理学的状態を処置もしくは予防するための組成物および方法を提供する。特に、例えば、限定された量のアジュバントおよび過剰量の抗原を用いて処方された、アジュバント(例えば、プロテオソームまたはリポサッカリドを有するプロテオソーム)および抗原(例えば、微生物抗原またはトキシン)を含有する免疫原性組成物が提供される。従って、本発明は、一般的に、プロテオソームベースのアジュバントが、強力な免疫刺激活性を有し、それにより、多量の抗原が、少量のアジュバントを用いて処方されて、新規かつ有用なワクチン処方物を提供するという、驚くべき発見に関する。プロテオソーム:LPSまたは1つ以上の微生物抗原を用いて処方されたプロテオソームを含有する免疫原性組成物が、以下により詳細に議論される。特定の局面において、本説明の組成物は、治療用途(例えば、特異免疫応答を誘導するか、または(感染に対する)防御免疫を提供し、そして(毒性因子に対する)免疫性を中和することができる免疫応答を誘導することによる、微生物感染の処置または予防)のために適切である。
【0022】
(プロテオソームベースのワクチンアジュバント−(「Projuvant」および「Protollin」))
本発明は、免疫応答を誘導可能な1つ以上の抗原を含有する免疫原性組成物に関する。上述のように、多くの抗原は、アジュバントを用いて処方されなければ、免疫原性が乏しい。ヒトにおける用途のために承認されている唯一のアジュバントは、ミョウバンであるが、このアジュバントは、上記に記載のような制限を有する。代替的なアジュバントを同定するための多様な努力にも関わらず、(特に、感染性疾患および毒性因子に対する)免疫を必要としている個体を免疫するための有効な組成物に対する必要性が、いまだ存在している。
【0023】
本開示のプロテオソームベースのアジュバントは、ワクチン処方物において使用され得、このワクチン処方物は、種々の抗原供給源を含み得る。例えば、生きている減弱した微生物、殺した微生物、分裂した抗原、サブユニット抗原、毒性因子抗原およびそれらの組み合わせである。サブユニットワクチンの有効性を最大にするためには、上記抗原は、強力な免疫刺激因子またはアジュバントと組み合わせられるべきである。例示的なアジュバントとしては、ミョウバン(水酸化アルミニウム、REHYDRAGEL(登録商標))、リン酸アルミニウム、プロテオソームアジュバント(例えば、米国特許第5,726,292号および同第5,985,284号、ならびに米国特許出願公開番号2001/0053368および2003/0044425を参照のこと)、ビロソーム(virosome)、リポソーム(リピドAを含む、およびリピドAを含まない)、Detox(Ribi/Corixa)、MF59または他の油および水のエマルジョン型アジュバント(例えば、ナノエマルジョン(例えば、米国特許第5,716,637号を参照のこと)またはサブミクロンエマルジョン(例えば、米国特許第5,961,970号を参照のこと)ならびにフロイント完全アジュバントおよびフロイント不完全アジュバントが挙げられる。特に好ましいアジュバントは、プロテオソームまたはProtollinである。
【0024】
プロテオソームは、代表的には、Neisseria種由来の外膜タンパク質(OMP)から構成されるが、他のグラム陰性細菌(例えば、Lowellら、J.Exp.Med.167:658、1988;Lowellら、Science 240:800、1988;Lynchら、Biophys.J.45:104、1984;米国特許第5,726,292号;同第4,707,543号を参照のこと)に由来し得る。プロテオソームは、20nm〜800nmの小胞または小胞様のOMPクラスターへと自己集合し、そしてタンパク質抗原(Ag)(特に、疎水性部分を有する抗原)を非共有結合的に組み込むか、調和するか、会合するか、またはそうでなければ協同して働くという興味深い能力を有する。プロテオソームは、疎水性であり、そしてヒトの用途のために安全であり、そして特定のウイルスに対してサイズにおいて適合性である。背景のために、そして理論と結びつけられることは所望されず、プロテオソームとタンパク質(例えば、抗原)とを混合することは、上記抗原とプロテオソームとの間の非共有結合的な会合または調和を含む組成物を提供し、例えば、透析によって、溶解用界面活性剤が選択的に除去されるかまたは減少されると、会合または調和が形成する。プロテオソームは、当該分野において記載されるように、または米国特許出願番号2001/0053368および2003/0044425に記載されるように、調製され得る。
【0025】
上記外膜タンパク質成分の小胞または小胞様の形態(1つ以上のOMPの溶解顆粒様OMP組成物を含む)をもたらす任意の調製方法は、「プロテオソーム」の定義内に含まれる。1つの実施形態において、上記プロテオソームは、Neisseria種由来であり、そしてより好ましくは、Neisseria meningitides由来である。特定の実施形態において、プロテオソームは、キャリアではなくアジュバントである。特定の他の実施形態において、プロテオソームは、アジュバントであり得、そして抗体送達組成物であり得る。好ましい実施形態において、免疫原性組成物は、本明細書中に記載されるような1つ以上の抗原(例えば、微生物抗原、ウイルス抗原、寄生生物抗原、真菌抗原、トキシン抗原およびそのフラグメントまたは改変体)およびアジュバントを含有し、ここで上記アジュバントは、ProjuvantまたはProtollinを含む。本明細書中で記載されるように、上記抗原は、組み換え供給源由来であり得るか、または例えば、(界面活性剤)分裂抗原を含み得る。
【0026】
特定の実施形態において、本発明は、免疫刺激因子(例えば、リポサッカリド)をさらに含有する免疫原性組成物を提供する。すなわち、上記アジュバントは、調製されてさらなる免疫刺激因子を含有し得る。例えば、上記Projuvantは、リポサッカリドと混合されて、OMP−LPSアジュバントを提供し得る。従って、上記OMP−LPS(Protollin)アジュバントは、2つの基本成分からなり得る。上記第1の成分は、グラム陰性細菌(例えば、Neisseria meningitides)から調製されるプロテオソームの外膜タンパク質調製物(すなわち、Projuvant)である。上記第2の成分は、リポサッカリドの調製物である。上記リポサッカリドは、米国特許出願番号2001/0053368および2003/0044425に記載されるように調製され得る。上記第2の成分は、脂質、糖脂質、糖タンパク質、低分子などおよびそれらの組み合わせを含有し得ることがまた、意図される。
【0027】
本明細書中で記載されるように、OMP−LPSアジュバントの上記2つの成分は、特定の開始比で処方されて、上記成分間の相互作用を最適化し得、その結果、安定な会合および本発明の免疫原性組成物の調製物における使用のための上記成分の処方物をもたらす。上記プロセスは、一般的に、選択された界面活性剤溶液(例えば、Empigen(登録商標)BB、Triton(登録商標)X−100またはMega−10)中で成分を混合する工程、そして次いで、透析または好ましくは、透析/限外濾過法によって、界面活性剤の量を予め決められた好ましい濃度に減少しながら、上記OMP成分およびLPS成分を効果的に複合体化する工程を包含する。上記2つの成分の混合、共沈殿または凍結乾燥はまた、充分かつ安定な会合または処方物を生じるために使用され得る。好ましい実施形態において、免疫原性組成物は、本明細書中に記載されるような1つ以上の抗原およびアジュバントを含有し、ここで、上記アジュバントは、Projuvant(すなわち、プロテオソーム)およびリポサッカリドを含有する。
【0028】
好ましい実施形態において、プロテオソームタンパク質全体の百分率としての最終リポサッカリド重量含量は、約1%〜約500%の範囲、より好ましくは、約10%〜約200%の範囲、または約30%〜約150%の範囲にあり得る。本発明の別の実施形態は、上記プロテオソームが、Neisseria meningitidesから調製され、そして上記リポサッカリドが、Shigella flexneriまたはPlesiomonas shigelloidesから調製され、そして上記最終リポサッカリド含量が、プロテオソームタンパク質全体の50重量%〜150重量%の間である、アジュバントを含む。別の実施形態において、プロテオソームは、OMP全体の約0.5%〜約5%までの範囲にわたる内因性リポオリゴサッカリド(LOS)含量を用いて調製される。本発明の別の実施形態は、約12%〜約25%の範囲の内因性リポサッカリドを有するプロテオソームを提供し、そして好ましい実施形態においては、OMP全体の約15%と約20%との間である。本発明はまた、任意のグラム陰性細菌種由来のリポサッカリドを含有する組成物を提供し、このグラム陰性細菌種は、プロテオソームの供給源であるグラム陰性細菌種と同じであっても、異なる細菌種であってもよい。
【0029】
特定の実施形態において、上記プロテオソームまたはProtollin:抗原の比は、上記混合物において、1:1より大きいか、2:1より大きいか、3:1より大きいかまたは4:1より大きい。上記比は、8:1と同じくらい高くてもまたはそれより高くてもよい。別の実施形態において、免疫原性組成物のプロテオソーム:抗原の上記比は、約1:1〜約1:500の範囲にわたり、好ましくは、上記比は、少なくとも1:5、少なくとも1:10、少なくとも1:20、少なくとも1:50または少なくとも1:100である。本発明の予想外の結果は、Protollin:抗原の比が、抗原が免疫応答を誘導する能力に対して有意に影響することなく、劇的に減少し得た(1:2〜1:200)ことである。
【0030】
(抗原)
本発明は、1つ以上の抗原を含有する免疫原性組成物に関し、この抗原は、使用されて、免疫応答(例えば、防御免疫応答)を誘導し得る。本発明は、本明細書中に記載されるように、被験体に、1つ以上の抗原またはそのフラグメントもしくは改変体、融合タンパク質、多価免疫原またはこのような免疫原の混合物を、上記抗原に対して特異的な免疫応答(細胞性または体液性)(これは、防御免疫であり得る)を誘導するために充分な用量で投与することによって、微生物感染を処置および予防するための方法にさらに関する。上記抗原は、好ましくは、臨床的に関連する微生物(例えば、細菌、ウイルス(例えば、インフルエンザ、麻疹、コロナウイルス)、寄生生物(例えば、Trypansome、Plasmodium、Leishmania、病原性微生物)、真菌(例えば、Aspergillus、Candida、Coccidioides、Cryptococcus)など)由来である。例えば、上記抗原は、炭疽(Bacillus arthracis)、ペスト(Yersinia pestis)、胃癌(Helicobacter pylori)、Q熱(Coxiella burnetii)、百日咳(Bordetella pertussis、例えば、FHA)、ボツリヌス症(Clostridium botulinum、A型、B型、C型、D型およびE型)、ガス壊疽(Clostridium perfringens)、野兎病(Francisella tularensis)、類鼻疽(Pseudomonas pseudomallei)、ブルセラ症(Brucella suis、B.abortus、B.canis、B.melitensis)、性感染症(Chlamydia trachomatisまたはNeisseria gonorrhea)の原因因子のような微生物、Clostridium perfringensのようなトキシン産生生物(イプシロントキシン、これらのグラム陽性嫌気性芽胞形成微生物によって産生される12のタンパク質トキシンのうちの1つ)由来であり得る。
【0031】
C.perfringensの5つの株(A〜E)が存在し、各々は、独特な一連のトキシンを産生する;イプシロントキシンは、B型およびD型によって産生される。イプシロントキシンは、細胞からのカリウムおよび流体の漏出を引き起こす実行ポリペプチドとして公知である。イプシロントキシンに加えて、上記A型〜E型は、アルファトキシン、ベータトキシン、イプシロントキシンまたはイオタトキシンのうちの1つ以上を産生し得る。上記イプシロントキシンは、汚染された食物もしくは水の摂取、またはエアロゾル化トキシンの吸入によって広がり得る。関連する別の例示的なトキシンは、Staphylococcus aureusによって産生されるブドウ球菌性エンテロトキシンB(SEB)である。SEBは、吸入した場合に病気を引き起こすことが公知であり、そして恐らく、食物中毒の原因である。SEB中毒個体の免疫系は、損傷されており、そして死と関連することは多くはないが、重大かつ広範に拡大する無力化する病気(例えば、高熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、まぶたの裏の炎症、吐き気、嘔吐および下痢)となる。現在利用可能なワクチンまたは抗SEBは存在しない。
【0032】
特定の実施形態において、単離されたLPSは、抗原、例えば、P.gingivalisから単離されたLPSであり得、このLPSは、歯肉疾患、歯周疾患、虫歯(tooth decay)などを処置または予防するためのP.gingivalisに対する免疫応答の刺激における使用のために、プロテオソームを用いて処方され得る。
【0033】
他の代表的な例としては、特定のウイルス(例えば、ノーウォークウイルス、天然痘ウイルス、西ナイルウイルス、SARSウイルス、RSウイルスなど)由来の抗原が挙げられる。フィロウイルスの例としては、マルブルクウイルスおよびエボラウイルスが挙げられ;フラビウイルスの例としては、デング熱ウイルス、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、St.Louis脳炎ウイルスが挙げられ;アレナウイルスの例としては、Junin(アルゼンチン出血熱)ウイルスが挙げられ;ラッサ熱ウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス、Machupo(ボリビア出血熱)ウイルス;ブンヤウイルスの例としては、クリミア−コンゴ出血熱ウイルス、ハンターン(朝鮮出血熱)ウイルス、リフトバレー熱ウイルスが挙げられ;ピコナウイルスの例としては、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルスが挙げられ;オルトミクソウイルスの例としては、インフルエンザウイルスA、B,C(例えば、HA抗原)、トゴトウイルスが挙げられ;アルファウイルスの例としては、チクングニアウイルス、東部脳炎ウイルス、ベネズエラ脳炎ウイルス、西部脳炎ウイルスが挙げられる。真菌の例としては、Candida albicans、Aspergillus spp.、Coccidioides immites、Histoplasma capsulatum、Norcardia farcinicaが挙げられ;そして寄生生物の例としては、トリパノソーマ症、リーシュマニア、肺ペストおよびライム病(Borrellia burgdorferi)の原因因子が挙げられる。さらに、本発明の抗原は、毒性因子(例えば、リシン、ボツリヌス)であり得る。
【0034】
本明細書中で記載される場合、上記抗原は、組み換え的に、合成的に調製されてもよく、生物学的供給源から単離されてもよく、組み換え的または化学的に改変されてもよく、そして任意のそれらの組み合わせでよい。微生物抗原またはそのフラグメントは、種々の生物学的供給源(例えば、感染被験体組織または培養細胞株)から調製され得る。一次的な単離は、例えば、末梢血液細胞由来または呼吸分泌物由来であり得る。好ましくは、上記単離された微生物は、一次細胞培養物または当該分野で公知の確立された細胞株において増幅される。特定の実施形態において、上記抗原またはそのフラグメントは、完全な微生物粒子から単離される。本明細書中で使用される場合、用語「単離された」または「由来する」は、その物質が、その元々の環境または天然の環境から取り除かれることを意味する。例えば、生きている動物もしくは細胞、またはウイルスに存在する、天然に存在する核酸分子またはポリペプチドは、単離されていないが、同じ核酸分子またはポリペプチドは、その天然系においてともに存在する物質のいくつかまたは全てから分離される場合には、単離されている。例えば、核酸分子は、ベクターに含まれ得、そして/またはこのような核酸は、組成物の一部であり得、そしてさらに、このようなベクターまたは組成物は、元々の核酸分子の天然の環境の一部ではないという点で、単離されている。別の実施形態において、ペプチドまたはポリペプチド(例えば、抗原またはその改変体およびフラグメント)は、部分的に精製されるかまたは均一になるまで精製されるかのいずれかであり得る。
【0035】
本発明は、合成抗原(融合タンパク質を含む)を生成するための方法をさらに提供する。上記免疫原性ポリペプチド成分は、標準的な化学的方法(自動手順による合成を含む)によって合成され得る。一般的に、免疫原性のポリペプチドまたはペプチドは、カップリング剤としてHATUを用いた標準的な固相Fmoc保護方法に基づいて合成される。上記免疫原性ペプチドは、適切なスカベンジャーを含有するトリフルオロ酢酸を用いて固相樹脂から切断され得、このトリフルオロ酢酸はまた、側鎖官能基を脱保護する。粗製免疫原性ペプチドは、分取逆相クロマトグラフィーを用いてさらに精製され得る。他の精製方法(例えば、分割クロマトグラフィー、ゲル濾過、ゲル電気泳動またはイオン交換クロマトグラフィー)が、使用され得る。当該分野で公知の他の合成技術(例えば、tBoc保護方法、種々のカップリング試薬の使用など)が、同様の免疫原性ペプチドを生成するために用いられ得る。さらに、任意の天然に存在するアミノ酸もしくはその誘導体または天然に存在しないアミノ酸もしくはその誘導体(D−アミノ酸またはL−アミノ酸およびその組み合わせを含む)が使用され得る。
【0036】
本明細書中で使用される場合、本発明の微生物抗原またはそのフラグメントは、組み換え体であり得、ここで、所望される抗原は、核酸発現構築物において発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に結合されたポリヌクレオチドから発現される。例えば、上記免疫原をコードする核酸発現構築物を含む宿主細胞(例えば、バキュロウイルスおよび哺乳動物細胞株)は、培養されて、組み換えタンパク質免疫原またはそのフラグメントを生成し得る。上記抗原は、アミノ酸配列にさらに融合または結合され得、この配列は、ProjuvantもしくはProtollinとの非共有結合的会合を容易にするか、またはそうでなければ促進するための疎水性のアンカーまたはフットであり得る。上記抗原ポリペプチドは、微生物感染に対して防御免疫応答(細胞性または体液性)を誘導し得る少なくとも1つのエピトープを有するような、ポリペプチドの任意の部分を含み得る。本発明の免疫原性ポリペプチドはまた、直線状形態に整列され得るかまたは組み合わせられ得、そして各免疫原は、反復されてもされなくてもよく、ここで、上記反復は、1回または複数回生じ得る。さらに、複数の種々の免疫原性ポリペプチド(例えば、タンパク質改変体またはそのフラグメント)は、選択され、そしてカクテル組成物中に混合されるかまたは合わせられて、防御免疫応答の誘導における使用のための多価ワクチンを提供し得る。
【0037】
本開示の免疫原性組成物における使用のための特定の例示的な抗原についてのさらなる詳細を提供するために、以下の説明を提供する。
【0038】
(A.ペスト)
ペストは、黒死病としてもまた公知であり、長い歴史を有する疾患である。中世のペストの流行は、ヨーロッパにおいて3千万人までもの人々を死に追いやった。天然の発症は、風土病性地域において世界中でなお生じているが、抗生物質処置の有用性に起因して、上記疾患は、病的状態をほとんど引き起こさず、そして死亡は、稀にしか生じない。しかし、ペストを取り巻く恐怖は、それが生物戦闘兵器として使用され得る可能性によって、近年増大している。
【0039】
腺ペストは、Yersinia pestisに感染したノミに咬まれることによってヒトへと広がり、そして比較的容易に診断され、そして従って、抗菌剤によって効果的に処置される。ペストの最も致死的な形態である肺ペストは、呼吸経路によるか、または腺ペストもしくは敗血性ペストの拡大の結果として、感染され、かつ処置されていない人によって、人から人へと伝達される。曝露後の肺ペストの処置は、その迅速な経過に起因して、より問題がある。抗菌剤処置が、感染症状を示してから24時間以内になされなければ、Y.pestisを吸入したほとんどの人は、死亡する。ペストの起こり得る意図的な伝播に対する懸念によって、ペストの最も有毒な肺性形態に対して防御可能な安全なワクチンの開発が、非常に優先されている。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明は、ペストに対して免疫応答を誘導するための方法を提供し、この方法は、ペストに対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリド、および1つ以上のペスト抗原またはその改変体もしくはフラグメントを含有する。他の実施形態において、本発明は、ペスト感染を処置または予防するための方法を提供し、この方法は、ペスト感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリド、および1つ以上のペスト抗原またはその改変体もしくはフラグメントを含有し、ここで、上記ペスト感染は、処置または予防される。特定の実施形態において、上記免疫原性組成物において使用されるペスト抗原は、Yersinia pestis由来のF1抗原もしくはV抗原、またはF1−V抗原融合タンパク質抗原、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0041】
(B.天然痘)
1つの実施形態において、例えば、ヒトにおいて天然痘疾患を引き起こす痘瘡ウイルスによる感染に対して防御免疫応答を引き起こすウイルス抗原を含有するProtollin処方物は、本明細書中で企図される。痘瘡ウイルスは、ポックスウイルス科と呼ばれるウイルスファミリーの最も有名なメンバーであり、そして歴史的に、ヒトの文明に対して重要かつ劇的な効果を有してきた。上記ポックスウイルス科は、DNAウイルスの大きなファミリーであり、感染宿主細胞の細胞質において複製する。痘瘡ウイルスの感染は、感染したもののうちの20%〜30%を死に追いやり、そして高度に感染性である。20年の牛痘ウイルスワクチンおよびワクシニアウイルスワクチンを用いた予防免疫は、1970年代後半までに、ヒトにおける天然痘疾患の発症を効果的に撲滅してきたものの、天然痘ウイルスが、天然に存在するウイルス集団からかまたは生物学的戦闘兵器としての予測されない集団への意図的な導入の結果としてのいずれかで、重要かつ致命的な疾患として再興し得るという懸念は、残ったままである。
【0042】
感染宿主細胞から精製されたウイルス粒子は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分解された場合、30以上もの多くの別個のポリペプチドのバンドを構成する。ワクシニアウイルスのコペンハーゲン株のゲノム配列は、65個超のアミノ酸からなる約185個の独自の重複しないオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。慣例により、オルトポックスウイルスORFの命名は、HindII制限エンドヌクレアーゼフラグメントを用いた文字、その後、そのORFの数(左から右)、そしてそのORFの方向に依存したLまたはRからなる。痘瘡ウイルスのインド株およびバングラディッシュ株の完全配列およびほぼ同一の配列はまた、約187個のORFを含み、これらのうちの150個は、ワクシニアウイルスのORFに対して、90%超の配列同一性を有する。痘瘡ウイルスコードポリペプチドに対して90%の配列同一性を有する、ワクシニアウイルスORFによってコードされるポリペプチドのうちの1つ以上は、ワクシニアウイルス免疫後の防御に関与する免疫応答を媒介すると考えられている。限定するわけではないが、例として、多くのORFは、防御免疫応答の誘導に関与し得る細胞外ウイルス特異的ポリペプチドをコードすることが、公知である。それらとしては、F13L ORFによってコードされる非グリコシル化41.8kDaタンパク質;A34R ORFによってコードされるN−グリコシル化19.5kDaタンパク質;A36R ORFによってコードされる25.1kDaタンパク質;A56R ORFによってコードされるN−およびO−グリコシル化赤血球凝集素タンパク質;およびB5R ORFによってコードされるグリコシル化35.1kDaタンパク質が挙げられる。これらのタンパク質の1つ以上に対する免疫応答は、体液性免疫応答または細胞媒介性免疫応答を誘導すると考えられており、これらの免疫応答は、痘瘡ウイルス感染から防御し得るかまたは感染の病原性効果を減少し得る。均衡がとれているかまたは微調整されたTH1/Th2サイトカインプロファイルに優先的に関与する感染宿主の免疫応答は、痘瘡ウイルス感染および天然痘疾患の発症の予防または処置において有効であると考えられている。
【0043】
オルトウイルスの4種のメンバーは、ヒト感染を引き起こし得、それらは、サル痘ウイルス、牛痘ウイルス、痘瘡ウイルスおよびワクシニアウイルスである。牛痘ウイルスおよびワクシニアウイルスは、天然痘感染に対してヒトを予防接種するために、広く使用されている。なぜなら、それらは、痘瘡ウイルスによる感染と比較して、重篤な合併症を生じにくいからである。かなりの程度まで、天然痘は、深刻な健康への脅威であることから撲滅されており、そして続けられた広範に広がる集団全般の予防接種は、中止されている。しかし、天然ウイルスの再興または生物学的脅威因子としての天然痘ウイルスの迅速かつ広範な開発、および生ウイルスを用いた予防接種から生じる、起こり得る所望されない副作用から、天然痘に対する代替的なワクチンの開発の必要性が生じている。
【0044】
今日まで、天然痘ウイルス(すなわち、痘瘡ウイルス)感染に対する非生存サブユニットワクチンは存在していない。現在のワクチン処方物は、防御免疫応答(しばしば、所望されない副作用)を引き起こすために、減弱した生ウイルスの使用を必要とする。特定の実施形態において、本発明は、天然痘に対して免疫応答を誘導するための方法を提供し、この方法は、天然痘に対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリド、および1つ以上の天然痘抗原または天然痘ウイルス粒子抽出物を含有する。他の実施形態において、本発明は、天然痘感染を処置または予防するための方法を提供し、この方法は、天然痘感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリド、および1つ以上の天然痘抗原または天然痘ウイルス粒子抽出物を含有し、ここで、上記天然痘感染は、処置または予防される。
【0045】
(C.リシン)
本発明のさらに別の局面において、非感染性の毒性因子または有毒因子に対して免疫応答を引き起こし得るプロテオソームベースのワクチン組成物は、本明細書中で企図される。このような非感染性因子としては、例えば、豆植物Ricinus communisから産生されるリシントキシンが挙げられ、このリシントキシンは、ヒト、動物および昆虫に対して有毒である。リシンは、トウゴマによって産生される細胞毒であり、吸入または摂取による中毒は、リシンによって引き起こされる。リシン中毒は、用量に依存して、摂取の2時間〜3時間以内に開始して、腹痛、嘔吐、下痢を引き起こし得る。リシン中毒は、阻止されない場合、数日以内に重篤な脱水症へと進行し、そして血圧を低下させて、摂取(または吸入)後3日〜5日以内に死に至る。リシンは、実に容易に産生され、そして、小さい粒子としての吸入またはその後の摂取によって中毒(毒性)を引き起こし得る、強力なトキシンである。リシンはまた、かなり安定である。リシン中毒の症状としては、衰弱、発熱、咳および肺水腫、その後の重篤な呼吸窮迫症および低酸素血症による死が挙げられる。げっ歯動物においては、エアロゾル曝露の組織病理は、脈管水腫および肺胞水腫(aleveolar edema)を伴う気管炎、気管支炎および間質性肺炎を引き起こす壊死性気道損傷によって特徴付けられる。げっ歯動物において、リシンは、他の曝露経路によるよりも吸入によってより有毒である。地理的に集中した個体の有意な数におけるリシン中毒の症状は、エアロゾル化リシンに対する曝露を示唆し得る。
【0046】
細胞毒性は、真核生物リボソームを特異的かつ不可逆的に不活性化するメカニズムを介する、タンパク質合成の阻害によって媒介される。従って、リシンはまた、公知のリボソーム不活性化タンパク質(RIP)である。上記RIP(例えば、リシン)は、一般的に、2つのジスルフィド結合されたポリペプチド鎖から構成される。一方のポリペプチド鎖は、細胞への結合および細胞質への取り込みを媒介し、他方の鎖は、タンパク質合成を阻害するために機能する。特定の実施形態において、本発明は、リシントキシンに対して免疫応答を誘導するための方法を提供し、この方法は、リシントキシンに対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリド、および1つ以上のリシントキシン抗原またはそのフラグメントもしくは改変体を含有し、ここで、上記リシントキシン抗原は、抗体応答の中和を誘導する。従って、宿主Th1/Th2免疫応答を調節し、そしてトキシン活性を不活性化または減弱するリシン免疫原性ポリペプチドを含有するプロテオソームワクチン処方物は、本明細書中で企図される。
【0047】
(C.ボツリヌス中毒)
ボツリヌス中毒は、バシラス属のClostridium botulinumによって産生される7つの異なる神経毒のうちのいずれかによる中毒によって引き起こされる。上記ボツリヌストキシンは、約150,000KDaの分子量を有するタンパク質であり、末梢コリン作動性シナプスでニューロンのシナプス前膜に結合して、アセチルコリンの放出を阻害し、そして神経伝達を遮断する。上記遮断は、上記コリン作動性自律神経系および神経筋接合部において、臨床的に最も明らかである。吸入ボツリヌス中毒の症状は、曝露後24時間〜36時間の早さで開始し得るかまたは数日の遅さで開始し得る。初期の徴候および症状としては、下垂、全身性衰弱、倦怠および眩暈感が挙げられる。呼吸不全の発症は、突然にあり得る。
【0048】
特定の実施形態において、本発明は、ボツリヌストキシンに対して免疫応答を誘導するための方法を提供し、この方法は、ボツリヌストキシンに対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリド、および1つ以上のボツリヌストキシン抗原またはそのフラグメントもしくは改変体を含有し、ここで、上記ボツリヌストキシン抗原は、抗体応答の中和を誘導する。
【0049】
(免疫原性組成物および使用方法)
本発明はまた、1つ以上の抗原を含有する免疫原性組成物に関し、この組成物は、免疫応答(例えば、防御免疫応答)を誘導するために使用され得る。本発明は、本明細書中で記載されるように、1つ以上の抗原もしくはそのフラグメント、融合タンパク質、多価免疫原またはこのような抗原の混合物を、上記抗原に対して特異的な免疫応答(細胞性または体液性)(この免疫応答は、防御免疫応答であり得る)を誘導するために充分な用量で被験体に投与することによって、微生物感染もしくは毒性因子の影響を処置または予防するための方法にさらに関する。抗原およびその改変体、またはこのような免疫原のカクテルは、好ましくは、本発明の方法において使用される場合、アジュバント(例えば、ProjuvantまたはProtollin)を含有する組成物の一部である。1つの実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、1つ以上のさらなる微生物抗原(例えば、ウイルス抗原、微生物抗原、寄生生物抗原またはそれらの組み合わせ)をさらに含有し得る。例えば、ペストまたは炭疽に対する免疫原性はまた、風疹抗原およびムンプス抗原に対する抗原を含み得る。
【0050】
上記免疫原性組成物は、1つ以上の抗原またはそのフラグメントに加えて、薬学的に受容可能なビヒクル、キャリア、希釈剤または賦形剤、そして必要に応じて、他の成分をさらに含有し得る。例えば、本発明の免疫原性組成物との使用のために適切な薬学的に受容可能なキャリアまたは他の成分としては、濃縮剤、緩衝剤、溶媒、湿潤剤、保存剤、キレート剤、添加アジュバントなど、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
さらに、本発明の薬学的組成物は、希釈剤(例えば、水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS))をさらに含有し得る。好ましくは、希釈剤は、約0.1mM〜約1M、より好ましくは、約0.5mM〜約500mM、さらにより好ましくは、約1mM〜約50mM、そして最も好ましくは、約2.5mM〜約10mMの範囲の最終ホスフェート濃度;および約100mM〜約200mM、そして最も好ましくは、約125mM〜約175mMの範囲の最終塩濃度を有するPBSである。好ましくは、上記最終PBS濃度は、約5mMのホスフェートおよび約150mMの塩(例えば、NaCl)である。特定の実施形態において、本発明の抗原およびアジュバント(例えば、ProjuvantまたはProtollin)のカクテルを含有する上述の免疫原性組成物のいずれもが、好ましくは、滅菌である。
【0052】
上記組成物は、無菌環境下でそれらを調製することによって滅菌され得るか、またはそれらは、当該分野で利用可能な方法を用いて最終的に滅菌され得るかのいずれかである。多くの医薬品は、滅菌であるように製造され、そしてこの基準は、USP XXII<1211>により規定されている。この実施形態における滅菌は、この産業において受容され、そして上記USP XXII<1211>に列挙されている多くの手段(ガス滅菌、電離放射線または濾過を含む)によって達成され得る。滅菌は、無菌処理と呼ばれ、また、USP XXII<1211>に規定されている方法によって維持され得る。ガス滅菌のために使用される受容可能な気体としては、エチレンオキシドが挙げられる。電離放射線法のために使用される受容可能な放射線型としては、例えば、コバルト60供給源からのγ線および電子線が挙げられる。γ線放射の代表的な用量は、2.5MRadである。必要に応じて、濾過は、適切な孔サイズ(例えば、0.22μm)を有し、そして適切な材料(例えば、Teflon(登録商標))からなるフィルタを用いて達成され得る。用語「USP」とは、米国薬局方(www.usp.org;Rockville、MDを参照のこと)をいう。プロテオソームまたはOMP−LPSは、充分小さい粒子を生じるという事実に起因して、本発明の免疫原性組成物は、0.8μのフィルタ、0.45μのフィルタまたは0.2μのフィルタを通して濾過され得る。従って、好ましい実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、濾過によって滅菌される。このことは、非常に有益である。なぜなら、このような夾雑物の存在による任意の複雑化を除去することが、所望されるからである。
【0053】
本発明はまた、微生物感染を処置または予防するための方法に関し、この方法は、微生物感染の処置または予防を必要としている被験体に、免疫原性組成物を投与する工程を包含し、この免疫原性組成物は、アジュバントおよび1つ以上の抗原を含有し、ここで、上記アジュバントは、プロテオソームまたはOMP−LPSのいずれかを含む。別の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、免疫応答(細胞性もしくは体液性、またはその両方、これらは、1型細胞応答または2型細胞応答に有利であり得る)を誘導するために使用され得る。抗原処方物を用いた処置または免疫応答の誘導のために適切な被験体は、疾患を発達させるための危険性の充分に確立された指標、または存在する疾患の充分に確立されたに証明によって規定され得る。本明細書中で使用される場合、用語「処置する」および「改善する」とは、統計学的に有意な様式で、疾患の少なくとも1つの局面もしくはマーカーを処置するか、阻害するか、軽減するか、改善するか、減少するか、予防するかまたは変化させるために充分な量あるいは充分な時間での、所望される組成物または化合物の治療用投与をいうことが理解されるべきである。本発明の抗原を用いて処置され得るか、改善され得るかまたは予防され得る感染としては、その感染が、一次感染、二次感染、日和見感染などのいずれであるにせよ、本明細書中に記載されるいずれかの微生物によって引き起こされるかまたは起因する感染が挙げられる。他の例示的な抗原は、本明細書中で記載されるトキシンまたはその改変体である。
【0054】
本明細書中で記載される場合、上記抗原は、組み換え的に、合成的に調製されてもよく、生物学的供給源から単離されてもよく、組み換え的または化学的に改変されてもよく、そして任意のそれらの組み合わせでもよい。微生物抗原またはそのフラグメントは、種々の生物学的供給源(例えば、感染被験体組織または培養細胞株)から調製され得る。一次的な単離は、例えば、末梢血液細胞由来または呼吸分泌物由来であり得る。好ましくは、上記単離された微生物は、初代細胞培養物または当該分野で公知の樹立細胞株において増幅される。特定の実施形態において、上記抗原またはそのフラグメントは、完全な微生物粒子から単離される。本明細書中で使用される場合、用語「単離された」または「由来する」は、その物質が、その元々の環境または天然の環境から取り除かれることを意味する。例えば、生きている動物もしくは細胞、またはウイルスに存在する、天然に生じる核酸分子またはポリペプチドは、単離されていないが、同じ核酸分子またはポリペプチドは、その天然系において共存する物質のいくつかまたは全てから分離される場合には、単離されている。例えば、核酸分子は、ベクターに含まれ得、またはこのような核酸は、組成物の一部であり得、そしてさらに、このようなベクターまたは組成物は、元々の核酸分子の天然の環境の一部ではないという点で、単離されている。別の実施形態において、ペプチドまたはポリペプチド(例えば、抗原またはその改変体およびフラグメント)は、部分的に精製されるかまたは均一になるまで精製されるかのいずれかであり得る。
【0055】
本発明は、合成抗原(融合タンパク質を含む)を生成するための方法をさらに提供する。上記免疫原性ポリペプチド成分は、標準的な化学的方法(自動手順による合成を含む)によって合成され得る。一般的に、免疫原性のポリペプチドまたはペプチドは、カップリング剤としてHATUを用いた標準的な固相Fmoc保護方法に基づいて合成される。上記免疫原性ペプチドは、適切なスカベンジャーを含有するトリフルオロ酢酸を用いて固相樹脂から切断され得、このトリフルオロ酢酸はまた、側鎖官能基を脱保護する。粗製免疫原性ペプチドは、分取逆相クロマトグラフィーを用いてさらに精製され得る。他の精製方法(例えば、分配クロマトグラフィー、ゲル濾過、ゲル電気泳動またはイオン交換クロマトグラフィー)が、使用され得る。当該分野で公知の他の合成技術(例えば、tBoc保護方法、種々のカップリング試薬の使用など)が、同様の免疫原性ペプチドを生成するために用いられ得る。さらに、任意の天然に存在するアミノ酸もしくはその誘導体または天然に存在しないアミノ酸もしくはその誘導体(D−アミノ酸またはL−アミノ酸およびその組み合わせを含む)が使用され得る。
【0056】
本明細書中に記載される場合、本発明の微生物抗原またはそのフラグメントは、組み換え体であり得、ここで、所望される抗原は、核酸発現構築物において発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に結合されたポリヌクレオチドから発現される。例えば、上記免疫原コード核酸発現構築物を含む宿主細胞(例えば、バキュロウイルスおよび哺乳動物細胞株)は、培養されて、組み換えタンパク質免疫原またはそのフラグメントを生成し得る。上記抗原は、さらなるアミノ酸配列にさらに融合または結合され得、この配列は、抗原融合体と、ProjuvantもしくはProtollinとの非共有結合的会合を容易にするか、またはそうでなければ促進するための疎水性のアンカーまたはフットであり得る。上記抗原ポリペプチドは、微生物感染に対して防御免疫応答(細胞性または体液性)を誘導し得る少なくとも1つのエピトープを有するような、ポリペプチドの任意の部分を含み得る。本発明の免疫原性ポリペプチドはまた、直線状形態に整列され得るかまたは組み合わせられ得、そして各免疫原は、反復されてもされなくてもよく、ここで、上記反復は、1回または複数回生じ得る。さらに、複数の種々の免疫原性ポリペプチド(例えば、タンパク質改変体またはそのフラグメント)は、選択され、そしてカクテル組成物中に混合されるかまたは合わせられて、防御免疫応答の誘導における使用のための多価ワクチンを提供し得る。
【0057】
本開示の免疫刺激組成物、免疫調節組成物および免疫原性組成物を調製するための方法は、本明細書中に記載され、そして当該分野において公知である(例えば、米国特許出願公開番号2001/0053368および2003/0044425を参照のこと)。上記抗原およびアジュバントは、特定の開始比で処方されて、上記成分間の相互作用(または協同作用)を最適化し、その結果、上記2つの成分のかなりの部分が、互いに非共有結合会合(または、非特異的並置)することをもたらす。例えば、少なくとも1つの抗原と、プロテオソーム(projuvant)またはProtollinとの混合物は、界面活性剤の存在下で調製され、そして透析/限外濾過によって、上記混合物から上記界面活性剤を減少または除去することにより、上記抗原と、上記アジュバントとの会合(または協同作用)が導かれる。特定の実施形態において、上記混合物中の上記Protollin(またはプロテオソーム):抗原の比は、約1:1〜約5:1の範囲である。上記比は、8:1以上に高くあり得る。特定の他の実施形態において、上記混合物中の上記Protollin(またはプロテオソーム):抗原の比は、約1:1〜約1:500の範囲であるか、または約1:2〜約1:200の範囲にあるか、または約1:2〜約1:100の範囲にあるか、または約1:5〜約1:50の範囲にあるか、または約1:2〜約1:20の範囲にあるか、または少なくとも1:5、1:10、1:20もしくは1:100の範囲にある。上記2つの成分の界面活性剤ベースの溶液は、同じ界面活性剤を含んでも異なる界面活性剤を含んでもよく、そして1つより多くの界面活性剤が、限外濾過/透析に供される混合物中に存在し得る。適切な界面活性剤としては、Triton(登録商標)、Empigen(登録商標)BBおよびMega−10が挙げられる。他の界面活性剤(例えば、オクトグリコシド)がまた、使用され得る。上記界面活性剤は、上記組成物を調製するために使用される成分を溶解するために役に立つ。界面活性剤の混合物の使用は、特に有利である。もちろん、この混合物は、最終処方物の前に、除去されるかまたはその濃度は、透析/限外濾過によって減少される。
【0058】
本発明の1つ以上の抗原およびプロテオソームベースのアジュバントを含有する免疫原性組成物は、その組成物が被験体(例えば、ヒトまたは動物)に投与され得る任意の形態にあり得る。例えば、本発明の免疫原性組成物は、液体の溶液として調製され、そして投与されても、固体形態(例えば、凍結乾燥されて)として調製されてもよく、この固体形態は、投与に合わせて、固体形態で投与されても溶液中に再懸濁されてもよい。上記免疫原性ポリペプチド組成物は、そこに含有される活性成分が、被験体もしくは患者への上記組成物の投与の際に生物利用可能であり得るか、または遅延放出を介して生物利用可能であり得るように、処方される。被験体または患者に投与される組成物は、一用量単位以上の形態をとり、ここで、例えば、ドロップは、単一用量単位であり得、そして本発明の1つ以上の化合物のエアロゾル形態の容器は、複数の用量単位を保有し得る。特定の好ましい実施形態において、本発明の免疫原または免疫原(例えば、抗原)のカクテルを含有する任意の上述の薬学的組成物は、容器内にあり、好ましくは、滅菌容器内にある。特定の投与プロトコールの設計(投薬レベルおよび投与のタイミングを含む)は、当業者に周知の慣用的な方法を用いるこのような手順を最適化することによって、決定される。
【0059】
1つの実施形態において、上記免疫原性組成物は、鼻に投与される。他の代表的な投与経路としては、経腸、非経口、経皮/経粘膜、鼻および吸入が挙げられる。用語「経腸」とは、本明細書中で使用される場合、上記免疫原性組成物が、胃腸管または経口粘膜(経口、直腸および舌下を含む)を介して吸収される、投与経路である。用語「非経口」は、本明細書中で使用される場合、胃腸管を迂回する投与経路(動脈内、皮膚内、筋内、鼻内、眼内、腹腔内、静脈内、皮下、粘膜下および膣内の注射技術または注入技術を含む)を説明する。用語「経皮/経粘膜」は、本明細書中で使用される場合、上記免疫原性組成物が、皮膚を介するかまたは皮膚を通って投与される(局所的を含む)、投与経路である。用語「鼻」および「吸入」は、上記免疫原性組成物が、肺樹(pulmonary tree)内に導入される(肺内または経肺を含む)、投与技術を含む。好ましくは、本発明の組成物は、鼻に投与される。
【0060】
例えば、本明細書中に記載されるように、鼻に投与されるProtollinと組み合わされたF1−Vは、Alhydrogel(登録商標)を用いて処方されたF1−Vの筋内注射によって誘導される抗F1−V IgG力価に匹敵する、血清抗F1−V IgG力価を誘導した。しかし、Alhydrogel(登録商標)/F1−Vとは異なり、Protollin/F1−Vはまた、肺洗浄流体において検出されたように、特異的なIgA応答およびIgG応答を誘導した。免疫したマウスを、その後、エアロゾル化Y.pestisを用いて攻撃した。Protollin/F1−V免疫マウスは、Alhydrogel/F1−V群において60%であるのに対して、高用量(255LD50)の攻撃に対して80%が防御され、他方、両方のワクチンは、上記生物の低用量(170LD50)の攻撃に対して90%〜100%防御的であった。
【0061】
本明細書中において参照され、そして/または、出願データシートに列挙される全ての米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国の特許、外国の特許出願および非特許刊行物は、本明細書中でそれらの全体が参考として援用される。記載されている本発明、以下の実施例は、本発明を例示することが意図され、本発明を限定しない。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
(血清免疫応答および粘膜免疫応答を評価するためのELISAアッセイ)
ELISAを、本用途に従う試験免疫刺激因子または試験免疫原性処方物およびコントロールで免疫した動物から得られた生物の全体ならびに抗原特異的なIgG力価、IgA力価およびIgM力価を決定するために使用した。サンプルは、マウスおよびウサギにおける血清、鼻洗浄物および肺粘膜洗浄物を含んだ。標準的なELISAプロトコールを使用して、直線性、特異性、感受性および再現性を決定した。簡単に言えば、試験サンプル(血清および洗浄流体)の連続希釈液を、精製した抗原またはその誘導体でコーティングしたELISAプレートのウェルに添加した。固定化抗原に結合する抗原特異的抗体を、動物および抗体サブタイプに特異的な西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗体で検出した。HRP抗体の相互作用および洗浄の後、HRP基質(TMB)とともにインキュベーションした後に結合したHRP抗体の量を検出し、そして490nmの吸光度を測定した。上記試験サンプルの抗体濃度を、IgA、IgM、IgG、IgG1およびIgG2aに対する精製した標準抗体を用いて(これらは並行して実施された)標準曲線から計算した。別個のアッセイにおいて測定したので、必要に応じて、粘膜洗浄流体サンプルにおける特異的抗体レベルを、上記サンプル中のIgA総量またはIgG総量と比較して検出した特異的抗体を表すことによって標準化および正規化した。この技術は、ヒト臨床試験において収集した鼻洗浄流体に対して実施したアッセイにおいて、優れた再現性および一貫性をもたらした。ELISAデータを、長期変形(long−transformed)データを用いた統計的分析により、95%信頼レベルでの幾何学的平均として表す。
【0063】
(実施例2)
(粘膜抗体産生の分析)
マウスおよびウサギにおける肺洗浄物および鼻洗浄物を収集して、本用途に従う免疫刺激因子または免疫原性処方物に対する免疫応答を分析した。マウスにおいて、鼻洗浄物および肺洗浄物を、気管にカニューレ挿入することによって実施し、そして0.1%ウシ血清アルブミンおよびプロテアーゼインヒビター(0.2mM AEBSR、1μg/mL アプロチニン、3.25μM ベスタチン、10μM ロイペプチンを含有するGeneral Use Protease Inhibitor Cocktail;Sigma Chemicals)を補充した1ml PBSを、気管を通して上方へポンプした。外鼻孔から出てきた流体を収集し、ボルテックスし、そして次いで、遠心して組織および細胞の残骸を除去した。その上清を−70℃でアッセイまで保存した。カニューレを気管に再び挿入し、そしてそのカニューレを肺へと向けて維持することにより、肺流体を収集した。肺を、PBSを補充した1.0mL プロテアーゼで2回洗浄し、その流体を収集し、そしてボルテックスし、そして遠心によってその細胞の残骸を除去した。肺洗浄物および鼻洗浄物を、−70℃でアッセイするまで保存した。ウサギ粘膜流体を同様に収集し、必要に応じてその容量を調節した。特定の実施形態において、粘膜サンプルを収集した後、頚部および縦隔のリンパ節を外科手術的に除去し、そして単球細胞を単離し、そして本明細書中で記載されるようなELISPOT抗体アッセイ、サイトカインアッセイおよびCMIアッセイのために培養した。
【0064】
(実施例3)
(ペスト抗原F1−Vを用いて処方したProtollinによる免疫)
例えば、Yersinia pestisを用いた致死的な攻撃に対して防御可能な免疫応答を誘発するペスト抗原(F1−V)を用いて処方した、プロテオソーム:LPS(Protollin)組成物の性能を試験する。上記F1−V免疫応答を、0日目および21日目に、20匹の6週齢〜8週齢の雌Swiss−Websterマウス(Charles River、St−Constant、Quebec)群を免疫することによって評価した。免疫のために、Protollinの新しく解凍したアリコートおよびF1−Vの溶液を、免疫前に16時間より短い時間混合した。鼻内(i.n.)投与のために、マウスを、イソフルラン吸入によってまず軽く麻酔し、次いで25μlのワクチンサンプルまたは適切なコントロールサンプル(ProtollinまたはF1−Vのみ)を、各マウスの外鼻孔(外鼻孔あたり12.5μl)に適用した。並行した実験において、マウスを、後足に注射した、500mgのAlhydrogel(登録商標)に吸着された25μlのF1−Vで、筋内(i.m.)に免疫した。コントロールi.m.注射をまた、実施した。その後、35日目および55日目に、各群からの10匹のマウスをCO2による窒息および瀉血によって安楽死させた。血清を得て、アッセイまで−80℃で保存した。鼻洗浄物サンプルおよび肺洗浄物サンプルを得て、アッセイまで−80℃で保存した。脾臓を、インビトロ再刺激および放出サイトカインの評価のために処理した。各群からの残りの10匹のマウスを、エアロゾル化Y.pestis(Colorado 92株)の170〜250LD50の吸入によって、35日目または55日目に攻撃して、防御を評価した。マウスを、罹患率および死亡率の決定のために、攻撃後28日間モニタリングした。
【0065】
Protollinを用いて処方されたF1−V抗原の2用量で鼻内に免疫したマウスから得られた、血清サンプルおよび肺洗浄流体サンプルに存在する抗体を、F1−Vのみで鼻内に免疫したマウスまたはAlhydrogel(登録商標)吸着F1−Vで筋内に免疫したマウスからの血清サンプルおよび肺洗浄流体サンプルに存在する抗体と比較した。結果を、図1および2に示す。驚くべきことに、試験した全ての濃度において、ProtollinとF1−Vとの全ての組み合わせは、免疫原性が高く、そして、1mg/mlと9mg/mlとの間のF1−V特異的血清IgG力価を誘導した(図1および2)。F1−V濃度とProtollin濃度との任意の組み合わせによって誘導される特異的IgG力価、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着された20μgのF1−Vの筋内注射によって誘導される特異的IgG力価に、有意な差はなかった(P>0.05)。F1−V処方ワクチンによって誘導される全ての特異的血清IgG力価は、非アジュバント添加F1−Vコントロールの鼻内投与によって誘導されるものよりも、有意に高く(P≦0.001)、そしてコントロールマウスからの血清においては、F1−V特異的抗体は検出されなかった。これらの実験の予測されなかった結果は、Protollin:抗原の比は、劇的(1:2〜1:200)に減少され得、抗原が免疫応答を誘導するという能力に、有意な影響を与えないということである。この開示の前には、アジュバントの量を減少することは、免疫応答の減少をもたらすと予測されていた。
【0066】
肺洗浄物サンプルを、ELISAによってアッセイして、存在する特異的な抗F1−V抗体、抗F1抗体および抗V抗体のレベルを決定した(図3)。結果は、粘膜(例えば、鼻内)経路による免疫は、F1−V特異的肺IgAの高力価によって応答される、Protollin添加F1−V抗原で鼻内に免疫したマウスの全ての群のように、粘膜抗体を誘導する有効な手段であることを確かめる。これらの実験において、上記IgA応答は、最も高い用量のProtollinで免疫したマウスからの肺洗浄物サンプルにおいて、最も高かった;ANOVA分析は、やはり予測されなかったように、F1−VとProtollinとの任意の組み合わせによって誘導される上記IgA力価に、有意な差はないことを示した。非アジュバント添加F1−Vは、鼻内に投与され、わずかに検出可能なIgAレベルを誘導した;分泌IgAは、Alhydrogel(登録商標)吸着F1−Vで筋内注射したマウスからのサンプルにおいては検出されなかった。上記F1−V抗原の上記F1部分およびV部分に対する肺洗浄物サンプルのアッセイは、上記免疫応答は、主に、上記F1−V融合タンパク質の上記V成分に対して検出されることを示した(表1)。しかし、肺洗浄物サンプルはまた、その力価が、上記血清力価の小さい百分率を示すにすぎないにしても、F1−V特異的IgGのかなりの力価を含んでいた(0.11%〜0.56%;中央値0.175%)。
【0067】
上記F1成分およびV成分の両方を認識する血清抗体が誘導されたか否かを決定するために、20μg用量のF1−V抗原で免疫した全てのマウスからの血清を、F1およびVに対して別個に分析した。全ての場合、そして両方のサンプリング時間において、上記F1−V抗原の上記F1部分およびV部分の両方に対して特異的な血清IgG抗体および肺洗浄流体IgA抗体を、検出した(表1)。これらの実験において評価した上記F1−V抗原の処方または送達経路に関わらず、上記血清の抗F1抗体と抗V抗体との比に有意な差はなかった。
【0068】
【表1】
(実施例4)
(エアロゾル化Y.pestisで免疫したマウスの攻撃)
これらの実験を、Protollinを用いて処方されたF1−Vによる鼻内免疫によって誘導される、免疫防御レベルを評価するために設計した。マウスを、生存エアロゾル化Y.pestisに対する全身曝露によって攻撃し、そして攻撃からの防御レベルを、Alhydrogel上に吸着されたF1−Vの注射によって誘導される防御レベル、およびF1−VのみまたはProtollinのみを鼻内に投与したコントロールマウスと比較した。これらの実験において、20μg用量のF1−Vで免疫したマウスに対する結果のみを、図4および5に示す。35日目、そして170 LD50 Y.pestisの攻撃用量において、1μgまたは2.5μgのProtollinを添加した5μg、20μgまたは50μgのF1−Vで鼻内に免疫したマウスは、死に対して100%防御し、Alhydrogel上に吸着されたF1−Vによって注射したマウスも同様であった。5μg、20μgまたは50μgのF1−Vおよび0.25μgのProtollinで鼻内に免疫したマウスは、それぞれ、90%、100%、そして90%防御され、他方、Protollinを含まない同じ用量のF1−Vで鼻内に免疫したマウスは、それぞれ、30%、40%、そして40%防御されたにすぎなかった。Protollinのみを受けたコントロールマウスは、攻撃後4日目より長く生存しなかった。処方されたF1−Vで免疫した全てのマウス群に対する生存率は、コントロールマウスまたは処方されないF1−Vで免疫したマウスにおける生存率と比較して、有意に高かった(フィッシャーの正確確率検定により、P≦0.05またはそれより良い)。攻撃後55日目の生存率は、35日目のデータと非常に類似していた。F1−Vを用いて処方された2.5μgのProtollinで免疫した全てのマウスは、攻撃に対して完全に防御され、Alhydrogel(登録商標)上に吸着されたF1−Vの注射によって免疫したマウスも同様であった。50μgまたは20μgのF1−Vを用いて処方された1μgのProtollinで免疫したマウスはまた、100%防御され、ProtollinとF1−Vとの全ての他の組み合わせは、90%の防御を誘導した。処方されたF1−Vで免疫した全てのマウスにおいて、上記観察された防御は、アジュバント未添加F1−Vで免疫したマウス(10%〜30%の防御)、または生存動物が存在しなかったマウスのコントロール群と比較して、有意に高かった(P≦0.01またはそれより良い)。1μgのProtollinを含むかもしくは含まない50μgのF1−Vで鼻内に免疫したマウス、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着された20μgのF1−Vを注射したマウスを、255 LD50のエアロゾル化生存Y.pestisに対する全身曝露によって55日目に攻撃した。それぞれ、80%、20%および60%のマウスが、高用量の致死的攻撃に対して生存し、他方、Protollinのみを与えられたコントロールマウスは、全て死亡した。処方されたF1−Vによる免疫は、コントロールマウスと比較して、死に対して有意な防御を誘導した(鼻へのProtollin添加F1−Vについて、P≦0.001;注射F1−Vについて、P≦0.01)。Protollin添加F1−Vでの鼻免疫はまた、F1−Vのみでの免疫よりも、死に対するマウスの防御において有意に良好であったが(P≦0.05)、これは、上記誘導された防御が、Protollinを含まない鼻内へのF1−Vによって誘導されるよりも有意に良好ではない場合の注射F1−Vに対する事実ではなかった(P=0.95)。
【0069】
(実施例5)
(Protollin:ペスト抗原で免疫後のサイトカインプロファイルの決定)
鼻内投与Protollinまたは注射Alhydrogel(登録商標)アジュバント添加F1−Vワクチンによって誘導される適応免疫応答の表現型(1型または2型)を比較するために、免疫したマウスの選択された群からの脾臓細胞を、F1−Vを用いて、インビトロで再刺激し、そして培養上清中に放出されたIFN−γ、TNF−αおよびIL−5サイトカインの量を、測定した(図6)。Protollin(1μg)と混合されたF1−V(50μg)で鼻内に免疫したマウスからの脾臓細胞は、高レベルのIFN−γおよびTNF−αの両方を分泌することによって、インビトロ再刺激に応答し、そして非常に低い量のIL−5がまた、検出された。対照的に、Alhydrogel上に吸着されたF1−V(20μg)の注射によって免疫したマウスからの脾臓細胞は、比較的少量のIFN−γおよびTNF−αを分泌することによって応答したが、かなりの量のIL−5が検出された。従って、F1−V抗原を用いて処方された(アジュバント添加された)Protollinの鼻内投与によって誘導されるサイトカインプロファイルは、1型免疫応答を誘導することが確かであり、一方、Alhydrogel(登録商標)を用いて処方されたF1−V抗原の筋内注射によって誘導されたサイトカインプロファイルは、2型応答であることが、かなり確かである。
【0070】
(実施例6)
(Protollin:炭疽免疫原性処方物は、免疫応答の中和を引き起こす)
Bacillus anthracisの組み換え防御抗原(rPA)を用いたProtollin処方物を、細胞培養物アッセイ系を用いて、PA媒介性マクロファージ殺傷の統計学的に有意な減少を誘導可能な免疫応答を誘導する能力に対して評価した。1μgのProtollinと混合した5μgまたは25μgのrPA(List Laboratories)で鼻内に免疫したマウス(0日目、14日目)は、5μgまたは25μgのrPAのみで鼻内に免疫したマウスの特異的抗rPA血清IgGレベルおよび特異的抗rPA肺IgAよりも、有意に高い特異的抗rPA血清IgGレベルおよび特異的抗rPA肺IgAレベルを示し(P<0.05)(図7)、このことは、低レベルのProtollinのアジュバント化(adjuvanticity)はまた、rPA抗原を用いても有効であることを示す。上記ProtollinのみおよびrPAのみのコントロール群における粘膜IgAレベルは、このアッセイの検出レベルよりも低かった。
【0071】
特異的抗rPA抗体がPA媒介性マクロファージ貪食を中和する能力を評価した。炭疽PA中和アッセイをまた、これらの動物からの血清サンプルおよび肺洗浄流体サンプルを用いて、記載されるように実施した。このアッセイのために、2×105 RAW264.7細胞を、滅菌96ウェルプレートにプレートし、そして37℃で24時間、5%CO2中でインキュベートした。(PA免疫マウスからの)血清サンプルまたは肺洗浄流体サンプルの連続希釈液を、PA溶液とともに1時間、37℃でインキュベートし、次いで、細胞を含むウェルに添加した。その後、LFの溶液を上記ウェルに添加して、上記プレートを、37℃で、5%CO2中で4時間インキュベートした。次いで、(細胞生存度を測定するための)MTTの溶液を、各ウェルに添加し、そして上記プレートを、さらに4時間、37℃で5%CO2中でインキュベートした。上記反応を、50% DMF(pH 4.3)中の20% SDS添加することによって停止し、そして上記プレートを、690nmを参照として、570nmで読んだ。このアッセイは、Protollinを有するrPAのプロテオソームアジュバント化鼻内ワクチンが、筋内ミョウバンアジュバント化ワクチンがそうであるのに匹敵する、rPA活性を中和する抗体レベルを誘導することを示した(図8)。しかし、サンプル間の顕著な差は、Protollin処方物rPAで免疫したマウスからの肺洗浄物サンプル中に存在する、中和IgA抗体の存在である。
【0072】
(実施例7)
(さらなる炭疽ワクチン処方物の調製)
鼻Protollin炭疽ワクチンを、免疫の前に、上記炭疽PA抗原と、LPSを添加した可溶性の事前に形成したプロテオソーム(すなわち、Protollin)とを混合することによって作製した。rPAおよびrPAアンカー抗原の両方を、いくつかのProtollinの様式で評価して、最適なProtollin:免疫抗原の比を有する処方物を決定した。例えば、コントロール処方物としては、Protollinのみまたは(必要に応じて)1つ以上のコントロール抗原(例えば、組み換え連鎖球菌性タンパク質)と混合したProtollinが挙げられ、このコントロール抗原は、疎水性アンカー配列を含むかまたは欠いている。従って、種々の供給源からのLPSを含有するProtollinの処方物、種々のProtollin:LPSの比および種々のProtollin:rPA抗原の比を評価する。rPAアンカーは、非常に低いレベルのLPS(2重量%未満)を有するプロテオソームを用いて処方する。特定の実施形態において、上記プロテオソームアジュバント調製物は、添加された外因性LPSを有しない。これまで、プロテオソームは、それ自体が、前臨床毒性研究において、ならびに第1相および第2相の安全なプロテオソーム鼻インフルエンザワクチンの免疫原性実験的攻撃試験で、500人近くにおいて使用されている。
【0073】
LPSの好ましい様式のプロセス開発(LPS微生物性供給源に関して)およびProtollinの好ましい処方(LPS供給源およびプロテオソーム:LPSの比に関して)を、LPS供給源に関するProtollinの成分およびプロテオソーム:LPSの比を同定するために設計した免疫原性研究の結果に基づいて、実施する。LPSのための好ましい微生物供給源の発酵の後、LPS精製および分析を行う。次いで、選択されたLPSを、選択された比でプロテオソームOMP粒子と混合して、好ましいProtollinを形成する。上記LPSと上記OMPとの会合の程度は、キャピラリー電気泳動を用いた、特別に開発された「遊離−対−結合」アッセイ、LPS「スパイク(spiking)」研究および必要に応じて他の分析において、立証される。Protollinの特徴付けとしては、代表的に、KDO、NMRおよび銀染色PAGEを用いたLPS含量の分析、プロテオソームOMP含量のためには、必要に応じて、LC−MS、RP−HPLC、SDS−Page(C.Blue & Western Blot w/MAb & PAbs)、N−末端配列決定、アミノ酸分析、LowryまたはBCAによる総タンパク質およびMALDI−TOFMSを用いた分析、そして残査LPS、核酸および界面活性剤のためには、それぞれ、KDOアッセイ、核酸アッセイおよびHPLCアッセイを用いた分析が挙げられる。
【0074】
(実施例8)
(炭疽に対する免疫を評価するための細胞媒介性免疫アッセイ)
プロテオソームベースのPAワクチンでの免疫後に誘導される細胞性免疫応答を、種々の方法を用いて研究する。例えば、T細胞由来のサイトカインを、マウスの脾臓および/またはリンパ節から単離された、PA再刺激した精製T細胞または濃縮T細胞において評価する。1型(例えば、IFN−γ)サイトカインおよび2型(例えば、IL−4およびIL−5)サイトカインを、ELISA、ELISPOTを含む1つ以上の方法によって決定し、そして細胞内サイトカインを、フローサイトメトリーによって決定した。PBMC由来のPA再刺激したPBMC T細胞の増殖を使用して、ウサギサイトカインに特異的な試薬の欠如に起因するウサギにおけるCMI応答を評価する。Tリンパ球増殖アッセイを使用して、種々の動物モデルにおいて、クローン性増殖に対する免疫の効果および記憶リンパ球の存在を測定する。動物を犠牲にした後、縦隔リンパ節および頚リンパ節を、標準的な技術を用いて外科的に取り出し、上記リンパ球を単離し、培養して、そしてその単離細胞にPAを添加する。増殖を、H3−チミジンの取り込みによって測定する。偽ワクチンで免疫した動物由来の細胞を、ネガティブコントロールとして使用する。アッセイ結果を、粘膜免疫に関与し、そして炭疽攻撃研究において決定されるように免疫の効力に関連する、リンパ節におけるT細胞分化に対する免疫の効果を決定するために使用する。
【0075】
上述から、本発明の具体的な実施形態が、本明細書中で例示の目的のために記載されるが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変がなされ得ることが理解される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除いて限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、Protollin(2.5μg、1μgまたは0.25μg)を含むかもしくは含まないかで、50μg、20μgまたは5μgのF1−Vを用いて鼻内に2回免疫したマウス、またはミョウバン(Alhydrogel(登録商標))に吸着されたF1−Vを20μg用いて粘膜内に注射したマウスからの血清IgG力価を示す。上記マウスの半分を、一次免疫後35日目に、そして他の半分を55日目に安楽死させた。力価を、特異的抗体濃度(血清IgGに対してμg/ml;肺のIgAおよびIgGに対してng/ml)の幾何平均値として表し、そして95%信頼限界を示す。
【図2】図2は、図1に記載されたように免疫したマウスからの肺IgG力価を示す。
【図3】図3は、図1に記載されたように免疫したマウスからの肺IgA力価を示す。
【図4A】図4Aおよび図4Bは、エアロゾル化Yersinia pesitisの致死用量を用いた攻撃に対するマウスの生存を示す。Protollinを含むか(0.25μg、1μgまたは2.5μg)もしくは含まないかで鼻内に、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着されて筋内に、20μgのF1−Vで2回免疫したマウスを、一次免疫後(A)35日目または(B)55日目に、Y.pesitisの170LD50に対する全身曝露によって攻撃した。全ての研究において、(Protollinのみを受けた)全てのコントロールマウスは、Y.pesitisに攻撃された場合に死亡し、使用した接種材料が致死的であったことを確認した。
【図4B】図4Aおよび図4Bは、エアロゾル化Yersinia pesitisの致死用量を用いた攻撃に対するマウスの生存を示す。Protollinを含むか(0.25μg、1μgまたは2.5μg)もしくは含まないかで鼻内に、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着されて筋内に、20μgのF1−Vで2回免疫したマウスを、一次免疫後(A)35日目または(B)55日目に、Y.pesitisの170LD50に対する全身曝露によって攻撃した。全ての研究において、(Protollinのみを受けた)全てのコントロールマウスは、Y.pesitisに攻撃された場合に死亡し、使用した接種材料が致死的であったことを確認した。
【図5A】図5Aおよび図5Bは、エアロゾル化Yersinia pesitisの致死用量を用いた攻撃に対するマウスの生存を示す。1μgのProtollinを含むかもしくは含まないかで鼻内に、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着されて筋内に、50μgのF1−Vで2回免疫したマウスを、(A)一次免疫後55日目に、Y.pesitisの255LD50に対する全身曝露によって攻撃した;(B)は、170致死用量のエアロゾル化Y.pesitisで一次免疫後、35日目および55日目(異なる群のマウス)に攻撃したマウスの生存を示す。マウスを、Protollinを含むか(0.25μg、1μgまたは2.5μg)もしくは含まないかで、鼻内に、5μgのF1−Vで2回免疫した。全てのコントロールマウス(Protollinのみを受けたマウス)は、Y.pesitisで攻撃された場合に死亡し、使用した接種材料が致死的であったことを確認した。
【図5B】図5Aおよび図5Bは、エアロゾル化Yersinia pesitisの致死用量を用いた攻撃に対するマウスの生存を示す。1μgのProtollinを含むかもしくは含まないかで鼻内に、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着されて筋内に、50μgのF1−Vで2回免疫したマウスを、(A)一次免疫後55日目に、Y.pesitisの255LD50に対する全身曝露によって攻撃した;(B)は、170致死用量のエアロゾル化Y.pesitisで一次免疫後、35日目および55日目(異なる群のマウス)に攻撃したマウスの生存を示す。マウスを、Protollinを含むか(0.25μg、1μgまたは2.5μg)もしくは含まないかで、鼻内に、5μgのF1−Vで2回免疫した。全てのコントロールマウス(Protollinのみを受けたマウス)は、Y.pesitisで攻撃された場合に死亡し、使用した接種材料が致死的であったことを確認した。
【図6】図6は、抗原FI−Vを用いてインビボで刺激した脾臓細胞から放出された、IFN−γ、TNF−αおよびIL−5の量を示す。脾臓細胞を、免疫後35日目に、1μgのProtollinを含むかもしくは含まないかで、50μgのF1−Vで鼻内に免疫したマウス、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着した20μgのF1−Vを筋内に注射したマウスから収集した。
【図7A】図7Aおよび図7Bは、Protollinを含むか(1μg)または含まないで混合した、Bacillus anthracis由来の5μgまたは25μgの組み換え防御抗原(rPA)で鼻内に免疫した(0日目および14日目)マウスにおける、血清IgGレベルおよび肺IgAレベルを示す。
【図7B】図7Aおよび図7Bは、Protollinを含むか(1μg)または含まないで混合した、Bacillus anthracis由来の5μgまたは25μgの組み換え防御抗原(rPA)で鼻内に免疫した(0日目および14日目)マウスにおける、血清IgGレベルおよび肺IgAレベルを示す。
【図8A】図8Aおよび図8Bは、Protollinと混合したrPAで免疫したマウス由来の血清洗浄流体および肺洗浄流体を用いた、炭疽中和アッセイの結果を示す。
【図8B】図8Aおよび図8Bは、Protollinと混合したrPAで免疫したマウス由来の血清洗浄流体および肺洗浄流体を用いた、炭疽中和アッセイの結果を示す。
【図9】図9は、リポソーム(鼻内(i.n.))、Protollin(鼻内)、またはAlhydrpgel(登録商標)(腹腔内(i.p.))と混合したBordetella pertusis由来の15μgの組み換え糸状赤血球凝集素(rFHA)で免疫した(1日目、21日目および31日目)マウスにおける、血清IgGを示す。コントロールとして、マウスを、QuadracelTMで腹腔内に(ポジティブ)、そして賦形剤PBS単独で鼻内に(ネガティブ)免疫した。QuadracelTM(Aventis Pasteur Ltd.)は、抗原のなかでもとりわけ、Bordetella pertusis FHAを含有するワクチンである。力価を、最後の免疫後7日目(38日目)に収集した血清における抗rFHAレベルを測定することによって、決定した(1日目のマウスからの血清中に見出された(存在すれば)バックグラウンド力価レベル未満)。
【図10】図10は、図9について記載されたのと同じ組成物において処方されるBordetella pertusis由来の15μgの組み換え糸状赤血球凝集素(rFHA)で免疫した(1日目、21日目および31日目)マウスにおける、唾液IgAを示す。
【図11】図11は、図9について記載されたように免疫したマウス由来のプールした血清における、抗rFHA血清IgGサブクラス(IgG2aおよびIgGl)を示す。
【図12】図12は、最後の免疫後11日目(42日目)にエアロゾル化B.pertusisで攻撃した場合の、図9について記載されたように免疫したマウスの肺において見られる、Bordetella pertusisレベルを示す。肺のカウントを、エアロゾル攻撃後1日目、3日目、7日目および14日目に測定した。
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、感染性疾患または毒性因子に対して防御するための鼻送達ワクチンに関し、そして特に、微生物病原体または毒性因子(例えば、Yersinia pestis、痘瘡ウイルス、リシントキシンおよびボツリヌストキシン)に関連する種々の疾患を処置または予防するためのプロテオソームベース組成物およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
有効な免疫応答は、生来の免疫系(侵襲性病原体に対する防御の第1ライン)と適応(特異)免疫応答との間の連絡に依存する(一般的に、Kleinら、Immunology(第2版),Blackwell Science Inc.、Boston、1997を参照のこと)。Tリンパ球は、エフェクター分子の放出を制御することによって上記適応免疫応答を協同して働かせるために、重要である。例えば、Tヘルパー(Th)1細胞は、インターロイキン−2(IL−2)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)およびインターフェロンγ(IFN−γ)を生成し、これらは、細胞媒介性免疫の発達のために重要である(Mosmannら、J.Immunol.136:2348、1986;StreetおよびMosmann、FASEB J.5:171、1991)。対照的に、Th2細胞は、IL−4、IL−13、IL−5、IL−9、IL−6およびIL−10を生成し、これらは、IgE生成の刺激、粘膜肥満細胞症および好酸球増加症のために重要である(Mosmannら;SrteetおよびMosmann)。Th1(1型応答)表現型またはTh2(2型応答)表現型へのシフトは、病原体に対する防御のために重要でありながら、1つの方向または別の方向のシフトはまた、自己免疫疾患(Th1)または炎症性疾患(Th2)の誘導と関連し得る。
【0003】
この点において、ワクチンは、適応免疫応答を誘導するために開発され、そして使用されている。ワクチンは、代表的に、弱毒化微生物または微生物抗原(すなわち、微生物成分(例えば、タンパク質または核酸))を含み、特異免疫応答を活性化する。しかし、宿主において抗原が防御免疫応答を誘導する能力は、ときに、上記抗原を免疫刺激因子またはアジュバントとともに処方することによって増強されなければならない。100年にわたる間、アルミニウムベースの無機塩(総称して、ミョウバンとして公知)は、ヒトの用途のために承認された唯一のアジュバントであった。歴史的に、ミョウバンは、筋内に注射される場合に、吸収されるタンパク質に対する応答を有意に増強することによる、有効なアジュバントであった。しかし、近年、ミョウバンアジュバントは、以下の報告に起因して、精査を受ける状態となっている(1)ミョウバンは、高度に精製された組み換えタンパク質に基づく新しい世代のワクチン抗原に対して、弱いアジュバントである;(2)ミョウバンは、報告によると、いくらかのワクチンレシピエントにおいて、IgE抗体を誘導し得、そしてアレルギー反応と関連する;そして(3)ミョウバンは、注射部位における有害反応として証明されている持続的な免疫応答を誘導し得る。これらの有害反応は、ミョウバン吸着ワクチンの、抗原特異免疫応答を2型表現型(すなわち、炎症性免疫)へと偏らせる傾向と関連することが見出されている。さらに、ミョウバンベースのワクチンは、注射経路によるヒトにおける用途のために、唯一、承認されている。
【0004】
他の公知のアジュバントとしては、フロイントアジュバント(完全または不完全)、リポポリサッカリド(LPS、また、エンドトキシンとも呼ばれる)およびpertussisアジュバント(殺したBordatella pertussis生物の生理食塩水懸濁液)が挙げられる。フロイントアジュバントは、油/水エマルジョン中の微生物の混合物からなる。しかし、この物質に対する頻繁な毒性生理学的反応および免疫学的反応に起因して、フロイントアジュバントは、ヒトにおいては使用され得ない。LPSは、生来の免疫応答を開始することによって免疫系を刺激するが、LPSは、利用可能なアジュバントであるには毒性が強すぎる。構造的にエンドトキシンと関連する分子(例えば、モノホスホリルリピドA(「MPL」または無毒化LPS))は、臨床試験においてアジュバントとして試験されている。調査されている他の潜在的なアジュバントとしては、サポニン(米国特許第6,080,725号;同第6,262,029号;および同第5,977,081号を参照のこと);両親媒性アルデヒド(米国特許第6,649,172号を参照のこと);プロテオソーム(米国特許第5,726,292号および同第5,985,284号;米国特許出願番号2001/0053368および2003/0044425を参照のこと);および環式アミノアルキルグルコサミニドホスフェート(米国特許第6,525,028号を参照のこと)が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、当該分野において、抗原とともに同時投与されて、より強力な免疫応答を促進し、微生物感染または毒性因子に対して防御し得る、優れた免疫刺激性化合物を同定および開発する必要性が認識されている。本発明は、このような必要性を満たし、そして他の関連する利点をさらに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の簡単な要旨)
本開示は、抗原のためのアジュバント処方物を提供し、特に、例えば、感染性疾患もしくは毒性因子の作用の処置または予防のような種々の治療設定における使用のための、種々の抗原を有する処方物のためのプロテオソームベースのアジュバントを提供する。
【0007】
1つの局面において、本発明は、抗原に対して免疫応答を誘導するための方法を提供し、この方法は、抗原に対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有する。別の局面において、本発明は、微生物感染を処置または予防するための方法を提供し、この方法は、微生物感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有する。特定の実施形態において、上記免疫原性組成物の抗原は、Bacillus anthracis、Chlamydia trachomatis、Staphylococcus aureus、Clostridium perfringensまたはYersinia pestis由来の1つ以上を含む。特定の他の実施形態において、上記免疫原性組成物の抗原は、ポックスウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス、フィロウイルスまたはピコルナウイルス由来を含む。さらに他の実施形態において、上記免疫原性組成物の抗原は、1以上のトキシンを含む。さらに他の実施形態において、上記抗原は、組み換え抗原である。さらに他の実施形態において、上記免疫原性組成物は、複数の異なる抗原を含む。関連する実施形態において、上記複数の抗原は、ウイルス、微生物、寄生生物、トキシンまたはそれらの組み合わせを含み得る。
【0008】
特定の実施形態において、上記免疫原性組成物は、粘膜、経腸、非経口、経皮、経粘膜、鼻もしくは吸入、またはそれらの組み合わせから選択される経路によって投与される。関連する実施形態において、上記免疫原性組成物は、防御免疫応答を誘導する。他の実施形態において、上記抗原は、Bacillus anthracisの防御抗原、Boretella pertussisの糸状赤血球凝集素(FHA)、Yersinia pestis由来のF1抗原もしくはV抗原、F1−V抗原融合タンパク質抗原またはそれらの組み合わせを含む。さらに他の実施形態において、上記抗原は、痘瘡ウイルスまたはワクシニアウイルス由来の1つ以上の抗原を含む。さらに他の実施形態において、上記抗原は、ボツリヌストキシン、StaphylococcusエンテロトキシンBまたはそのフラグメントもしくは改変体のうちの1つ以上を含む。
【0009】
さらに他の実施形態において、いずれの上述の免疫原性組成物も、その免疫原性組成物中に、約1%〜約500%の範囲のプロテオソームタンパク質の百分率として、リポサッカリド最終重量含量を有する。他の実施形態において、上記プロテオソームおよびリポサッカリドは、同じ微生物から得られても異なる微生物から得られてもよい(例えば、グラム陰性細菌)。いくつかの実施形態において、上記リポサッカリドは、Shigella種、Chlamydia種、Yersinia種、Pseudomonas種、Plesiomonas種、Escherichia種、Salmonella種またはそれらの組み合わせから選択されるグラム陰性細菌由来である。他の実施形態において、上記プロテオソームは、Neisseria種由来である。特定の実施形態において、本開示の免疫原性組成物は、Neisseria meningitides由来であるプロテオソームおよびShigella flexneri由来であるリポサッカリドを有する。他の実施形態において、いずれの上述の免疫原性組成物も、約5:1〜約1:500の範囲にあるプロテオソーム:抗原の比を有するか、またはその比は、少なくとも1:2、1:5もしくは1:10である。さらに他の実施形態において、いずれの上述の免疫原性組成物も、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤をさらに含有する。
【0010】
別の局面において、本開示は、抗原に対して免疫応答を誘導する方法を提供し、この方法は、抗原に対する免疫応答を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、アジュバントおよび抗原を含有し、ここで、上記アジュバントは、プロテオソームおよびリポサッカリドを含有し、そして上記アジュバント:抗原の比は、約1:5〜約1:500の範囲にあるか、または少なくとも1:5であり、それにより、上記抗原に対して免疫応答が誘導される。関連する局面において、微生物感染を処置または予防するための方法が提供され、この方法は、微生物感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、アジュバントおよび抗原を含有し、ここで、上記アジュバントは、プロテオソームおよびリポサッカリドを含有し、そして上記アジュバント:抗原の比は、約1:5〜約1:500の範囲にあるか、または少なくとも1:5であり、それにより、微生物感染は処置または予防される。特定の実施形態において、上述の免疫原性組成物のうちのいずれかが提供され、ここで、上記抗原は、微生物抗原、ウイルス抗原またはトキシン抗原のうちの少なくとも1つである。
【0011】
本発明のこれらの局面および他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって明白になる。さらに、種々の参考文献が本明細書中で述べられ、これらの参考文献は、特定の手順または組成物をより詳細に記載し、そして従って、その全体が参考として援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明を記述する前に、本明細書中の以下で使用される特定の用語の定義を記述することは、その理解に対する補助となり得る。
【0013】
本明細書中で使用される場合、「プロテオソームまたはProjuvant」とは、グラム陰性細菌(例えば、Neisseria種、(例えば、Lowellら、J.Exp.Med.167:658、1988;Lowellら、Science 240:800、1988;Lynchら、Biophys.J.45:104、1984;Lowell、「New Generation Vaccines」第2版、Marcel Dekker,Inc.、New York、Basil、Hong Kong、193頁、1997における;米国特許第5,726,292号;米国特許第4,707,543号を参照のこと))由来の外膜タンパク質(OMP、またはポーリンとしても公知)の調製物をいい、これらは、免疫原(例えば、微生物抗原またはウイルス抗原)のためのキャリアまたはアジュバントとして有用である。プロテオソームは、疎水性であり、そしてヒトの用途のために安全であり、そして特定のウイルスに対してサイズにおいて適合性である。プロテオソームは、20nm〜800nmの小胞または小胞様のOMPクラスターへと自己集合し、そしてタンパク質抗原(Ag)(特に、疎水性部分を有する抗原)を非共有結合的に組み込むか、調和するか、(例えば、静電気的または疎水的に)会合するか、またはそうでなければ協同して働くという興味深い能力を有する。小胞または小胞様の形態の上記外膜タンパク質成分(複数分子膜性構造または1つ以上のOMPの溶解顆粒様OMP組成物を含む)をもたらす任意の調製方法は、プロテオソームの定義内に含まれる。プロテオソームは、例えば、当該分野において記載されるように調製され得る(例えば、米国特許第5,726,292号または同第5,985,284号を参照のこと)。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「リポサッカリド」とは、グラム陰性細菌(例えば、Shigella flexneriまたはPlesiomonas shigelloides)または他のグラム陰性細菌(Alcaligenes種、Bacteroides種、Bordetella種、Borrellia種、Brucella種、Campylobacter種、Chlamydia種、Citrobacter種、Edwardsiella種、Ehrlicha種、Enterobacter種、Escherichia種、Francisella種、Fusobacterium種、Gardnerella種、Hemophillus種、Helicobacter種、Klebsiella種、Legionella種、Leptospira種(Leptospira interrogansを含む)、Moraxella種、Morganella種、Neiserria腫、Pasteurella種、Proteus種、Providencia種、他のPlesiomonas種、Porphyromonas種(Porphyromonas gingivalisを含む)、Prevotella種、Pseudomonas種、Rickettsia種、Salmonella種、Serratia種、他のShigella種、Spirillum種、Veillonella種、Vibrio種またはYersinia種を含む)由来の天然(単離されるかまたは天然構造を有するように合成的に調製される)または改変されたリポサッカリドもしくはリポオリゴサッカリド(まとめて、また、「LPS」と呼ばれる)をいう。上記リポサッカリドは、無毒化形態(すなわち、リピドAコアが除去されている)にあっても、無毒化されていない形態にあってもよい。本開示におい
て、リポサッカリドは、無毒化される必要はなく、好ましくは、無毒化されない。上記リポサッカリドは、例えば、米国特許出願公開番号2003/0044425に記載されるように調製され得る。
【0015】
本明細書中で使用される場合、「プロテオソーム:LPSまたはProtollinまたはIVXまたはIVX−908」とは、本明細書中に記載されるように少なくとも1種のリポサッカリドと混合されて、OMP−LPS組成物(これは、免疫刺激組成物として機能し得る)を提供するProjuvantの調製物をいう。従って、上記OMP−LPSアジュバントは、Protollinの2つの基本成分から構成され得、このProtollinの2つの基本成分は、(1)グラム陰性細菌(例えば、Neisseria meningitides)から調製されたプロテオソーム(すなわち、Projuvant)の外膜タンパク質調製物、および(2)1つ以上のリポサッカリドの調製物を含む。Protollinはまた、必要に応じて、脂質、糖脂質、糖タンパク質、低分子などおよびそれらの組み合わせを含有することが理解されるべきである。上記Protollinは、例えば、米国特許出願公開番号2003/0044425に記載されるように調製され得る。
【0016】
Projuvantは、一般的に、(天然に存在するかまたは改変された)疎水性部分(また、「フット(foot)」または「アンカー」と呼ばれる)を有する抗原と組み合わせて使用される。しかし、Protollin(外因的に付加されたLPSを有する)は、疎水性フットドメインを含まず、本質的には大部分が親水性である抗原とともに使用され得るか、または疎水性フットを含む抗原と会合し得るか、またはそれらの組み合わせである。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「トキシンまたは毒性因子」とは、抗原性であり、そして特定の微生物もしくはいくつかのより高等な植物種および動物種の代謝または成長の間に、細胞もしくは組織の欠くことのできない部分(例えば、エンドトキシン)として、細胞外生成物(例えば、エキソトキシン)としてまたはその2つの組み合わせとして形成または作製される、有害物質または有毒物質をいう。本開示の免疫原性組成物における使用のために、トキシンまたは毒性因子は、「トキソイド」の形態にあり、それにより、上記免疫原性組成物は、有毒でも有害でもないことが理解されるべきである。「トキソイド」形態は、抗原性をなお保持しながら、上記因子の有毒特性を破壊する(すなわち、抗トキシンを誘導し得るかまたは免疫応答を中和し得る)ように処理されているトキシンである。トキソイドを生じるトキシンの「処理」としては、化学的処理(例えば、ホルムアルデヒド)、変異、フラグメントおよびそれらの組み合わせが挙げられる。例示的なトキシンとしては、リシントキシン、ボツリヌストキシン、アルファトキシン、イプシロントキシン(episolntoxin)、StaphylococcusエンテロトキシンB、テトロドトキシン、蛇毒トキシン(snae venom toxin)、ジフテリアトキシン、コレラトキシン、サキシトキシン、トリコテセンマイコトキシンなどが挙げられる。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「免疫原性組成物」とは、適応(特異)免疫応答を開始させるか、増強するか、活性化するか、刺激するか、増大するか、増進するか、増幅するかもしくは促進し得る、任意の1つ以上の化合物または因子をいい、これらは、細胞性(T細胞)もしくは体液性(B細胞)、またはそれらの組み合わせであり得る。好ましくは、上記適応免疫応答は、防御的であるか、中和するか、またはその両方である。免疫原の代表的な例としては、微生物抗原(例えば、1つ以上の本発明の細菌タンパク質、ウイルスタンパク質または寄生生物タンパク質)または非微生物抗原(例えば、植物(リシン)、渦鞭毛藻類(サキシトキシン)などのような他の供給源から得られる抗原)である。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「特異免疫応答または獲得免疫応答または適応免疫応答」とは、感染性因子または抗原に予め曝露することの結果としてもたらされる、哺乳動物免疫系によって媒介される抵抗性をいう。例えば、特異免疫は、天然に獲得される(開存性または潜伏性)感染または意図的な予防接種からの結果であり得る。さらに、特異免疫は、生来の別のものからの抗体の転移(例えば、母性遺伝)または意図的な予防接種による抗体もしくは免疫細胞の転移(例えば、抗体媒介性免疫療法)から、受動的かつ一時的に獲得され得る。
【0020】
本説明において、任意の濃度範囲、百分率範囲、比の範囲または他の整数範囲は、別に示されなければ、その列挙される範囲および必要に応じてその分数(例えば、整数の10分の1および100分の1)内の任意の整数値を含むことが理解されるべきである。本明細書中で使用される場合、「約」または「本質的に構成する(comprising essentially of)」とは、±15%を意味する。代替物の使用(例えば、「または」)は、その代替物の1つ、両方またはその任意の組み合わせを意味することが理解されるべきである。本明細書中で使用される場合、不定冠詞(例えば、「ある(a)」または「ある(an)」)の使用は、名詞または名詞熟語の単数形および複数形をいうことが理解されるべきである。さらに、本明細書中に記載される種々の成分または組成物もしくは順序、構造および置換の組み合わせから誘導される、個々の組成物、処方物もしくは化合物、または組成物、処方物もしくは化合物の群は、各組成物もしくは化合物、または組成物もしくは化合物の群が独立して述べられるのと同じ程度に、本出願によって開示されることが理解されるべきである。従って、特定の順序、構造または置換の選択は、本発明の範囲内である。
【0021】
上述のように、そして本明細書中で記載されるように、本発明は、免疫原性組成物を使用および作製して、種々の感染性疾患を処置もしくは予防するか、または毒性因子と関連する病理学的状態を処置もしくは予防するための組成物および方法を提供する。特に、例えば、限定された量のアジュバントおよび過剰量の抗原を用いて処方された、アジュバント(例えば、プロテオソームまたはリポサッカリドを有するプロテオソーム)および抗原(例えば、微生物抗原またはトキシン)を含有する免疫原性組成物が提供される。従って、本発明は、一般的に、プロテオソームベースのアジュバントが、強力な免疫刺激活性を有し、それにより、多量の抗原が、少量のアジュバントを用いて処方されて、新規かつ有用なワクチン処方物を提供するという、驚くべき発見に関する。プロテオソーム:LPSまたは1つ以上の微生物抗原を用いて処方されたプロテオソームを含有する免疫原性組成物が、以下により詳細に議論される。特定の局面において、本説明の組成物は、治療用途(例えば、特異免疫応答を誘導するか、または(感染に対する)防御免疫を提供し、そして(毒性因子に対する)免疫性を中和することができる免疫応答を誘導することによる、微生物感染の処置または予防)のために適切である。
【0022】
(プロテオソームベースのワクチンアジュバント−(「Projuvant」および「Protollin」))
本発明は、免疫応答を誘導可能な1つ以上の抗原を含有する免疫原性組成物に関する。上述のように、多くの抗原は、アジュバントを用いて処方されなければ、免疫原性が乏しい。ヒトにおける用途のために承認されている唯一のアジュバントは、ミョウバンであるが、このアジュバントは、上記に記載のような制限を有する。代替的なアジュバントを同定するための多様な努力にも関わらず、(特に、感染性疾患および毒性因子に対する)免疫を必要としている個体を免疫するための有効な組成物に対する必要性が、いまだ存在している。
【0023】
本開示のプロテオソームベースのアジュバントは、ワクチン処方物において使用され得、このワクチン処方物は、種々の抗原供給源を含み得る。例えば、生きている減弱した微生物、殺した微生物、分裂した抗原、サブユニット抗原、毒性因子抗原およびそれらの組み合わせである。サブユニットワクチンの有効性を最大にするためには、上記抗原は、強力な免疫刺激因子またはアジュバントと組み合わせられるべきである。例示的なアジュバントとしては、ミョウバン(水酸化アルミニウム、REHYDRAGEL(登録商標))、リン酸アルミニウム、プロテオソームアジュバント(例えば、米国特許第5,726,292号および同第5,985,284号、ならびに米国特許出願公開番号2001/0053368および2003/0044425を参照のこと)、ビロソーム(virosome)、リポソーム(リピドAを含む、およびリピドAを含まない)、Detox(Ribi/Corixa)、MF59または他の油および水のエマルジョン型アジュバント(例えば、ナノエマルジョン(例えば、米国特許第5,716,637号を参照のこと)またはサブミクロンエマルジョン(例えば、米国特許第5,961,970号を参照のこと)ならびにフロイント完全アジュバントおよびフロイント不完全アジュバントが挙げられる。特に好ましいアジュバントは、プロテオソームまたはProtollinである。
【0024】
プロテオソームは、代表的には、Neisseria種由来の外膜タンパク質(OMP)から構成されるが、他のグラム陰性細菌(例えば、Lowellら、J.Exp.Med.167:658、1988;Lowellら、Science 240:800、1988;Lynchら、Biophys.J.45:104、1984;米国特許第5,726,292号;同第4,707,543号を参照のこと)に由来し得る。プロテオソームは、20nm〜800nmの小胞または小胞様のOMPクラスターへと自己集合し、そしてタンパク質抗原(Ag)(特に、疎水性部分を有する抗原)を非共有結合的に組み込むか、調和するか、会合するか、またはそうでなければ協同して働くという興味深い能力を有する。プロテオソームは、疎水性であり、そしてヒトの用途のために安全であり、そして特定のウイルスに対してサイズにおいて適合性である。背景のために、そして理論と結びつけられることは所望されず、プロテオソームとタンパク質(例えば、抗原)とを混合することは、上記抗原とプロテオソームとの間の非共有結合的な会合または調和を含む組成物を提供し、例えば、透析によって、溶解用界面活性剤が選択的に除去されるかまたは減少されると、会合または調和が形成する。プロテオソームは、当該分野において記載されるように、または米国特許出願番号2001/0053368および2003/0044425に記載されるように、調製され得る。
【0025】
上記外膜タンパク質成分の小胞または小胞様の形態(1つ以上のOMPの溶解顆粒様OMP組成物を含む)をもたらす任意の調製方法は、「プロテオソーム」の定義内に含まれる。1つの実施形態において、上記プロテオソームは、Neisseria種由来であり、そしてより好ましくは、Neisseria meningitides由来である。特定の実施形態において、プロテオソームは、キャリアではなくアジュバントである。特定の他の実施形態において、プロテオソームは、アジュバントであり得、そして抗体送達組成物であり得る。好ましい実施形態において、免疫原性組成物は、本明細書中に記載されるような1つ以上の抗原(例えば、微生物抗原、ウイルス抗原、寄生生物抗原、真菌抗原、トキシン抗原およびそのフラグメントまたは改変体)およびアジュバントを含有し、ここで上記アジュバントは、ProjuvantまたはProtollinを含む。本明細書中で記載されるように、上記抗原は、組み換え供給源由来であり得るか、または例えば、(界面活性剤)分裂抗原を含み得る。
【0026】
特定の実施形態において、本発明は、免疫刺激因子(例えば、リポサッカリド)をさらに含有する免疫原性組成物を提供する。すなわち、上記アジュバントは、調製されてさらなる免疫刺激因子を含有し得る。例えば、上記Projuvantは、リポサッカリドと混合されて、OMP−LPSアジュバントを提供し得る。従って、上記OMP−LPS(Protollin)アジュバントは、2つの基本成分からなり得る。上記第1の成分は、グラム陰性細菌(例えば、Neisseria meningitides)から調製されるプロテオソームの外膜タンパク質調製物(すなわち、Projuvant)である。上記第2の成分は、リポサッカリドの調製物である。上記リポサッカリドは、米国特許出願番号2001/0053368および2003/0044425に記載されるように調製され得る。上記第2の成分は、脂質、糖脂質、糖タンパク質、低分子などおよびそれらの組み合わせを含有し得ることがまた、意図される。
【0027】
本明細書中で記載されるように、OMP−LPSアジュバントの上記2つの成分は、特定の開始比で処方されて、上記成分間の相互作用を最適化し得、その結果、安定な会合および本発明の免疫原性組成物の調製物における使用のための上記成分の処方物をもたらす。上記プロセスは、一般的に、選択された界面活性剤溶液(例えば、Empigen(登録商標)BB、Triton(登録商標)X−100またはMega−10)中で成分を混合する工程、そして次いで、透析または好ましくは、透析/限外濾過法によって、界面活性剤の量を予め決められた好ましい濃度に減少しながら、上記OMP成分およびLPS成分を効果的に複合体化する工程を包含する。上記2つの成分の混合、共沈殿または凍結乾燥はまた、充分かつ安定な会合または処方物を生じるために使用され得る。好ましい実施形態において、免疫原性組成物は、本明細書中に記載されるような1つ以上の抗原およびアジュバントを含有し、ここで、上記アジュバントは、Projuvant(すなわち、プロテオソーム)およびリポサッカリドを含有する。
【0028】
好ましい実施形態において、プロテオソームタンパク質全体の百分率としての最終リポサッカリド重量含量は、約1%〜約500%の範囲、より好ましくは、約10%〜約200%の範囲、または約30%〜約150%の範囲にあり得る。本発明の別の実施形態は、上記プロテオソームが、Neisseria meningitidesから調製され、そして上記リポサッカリドが、Shigella flexneriまたはPlesiomonas shigelloidesから調製され、そして上記最終リポサッカリド含量が、プロテオソームタンパク質全体の50重量%〜150重量%の間である、アジュバントを含む。別の実施形態において、プロテオソームは、OMP全体の約0.5%〜約5%までの範囲にわたる内因性リポオリゴサッカリド(LOS)含量を用いて調製される。本発明の別の実施形態は、約12%〜約25%の範囲の内因性リポサッカリドを有するプロテオソームを提供し、そして好ましい実施形態においては、OMP全体の約15%と約20%との間である。本発明はまた、任意のグラム陰性細菌種由来のリポサッカリドを含有する組成物を提供し、このグラム陰性細菌種は、プロテオソームの供給源であるグラム陰性細菌種と同じであっても、異なる細菌種であってもよい。
【0029】
特定の実施形態において、上記プロテオソームまたはProtollin:抗原の比は、上記混合物において、1:1より大きいか、2:1より大きいか、3:1より大きいかまたは4:1より大きい。上記比は、8:1と同じくらい高くてもまたはそれより高くてもよい。別の実施形態において、免疫原性組成物のプロテオソーム:抗原の上記比は、約1:1〜約1:500の範囲にわたり、好ましくは、上記比は、少なくとも1:5、少なくとも1:10、少なくとも1:20、少なくとも1:50または少なくとも1:100である。本発明の予想外の結果は、Protollin:抗原の比が、抗原が免疫応答を誘導する能力に対して有意に影響することなく、劇的に減少し得た(1:2〜1:200)ことである。
【0030】
(抗原)
本発明は、1つ以上の抗原を含有する免疫原性組成物に関し、この抗原は、使用されて、免疫応答(例えば、防御免疫応答)を誘導し得る。本発明は、本明細書中に記載されるように、被験体に、1つ以上の抗原またはそのフラグメントもしくは改変体、融合タンパク質、多価免疫原またはこのような免疫原の混合物を、上記抗原に対して特異的な免疫応答(細胞性または体液性)(これは、防御免疫であり得る)を誘導するために充分な用量で投与することによって、微生物感染を処置および予防するための方法にさらに関する。上記抗原は、好ましくは、臨床的に関連する微生物(例えば、細菌、ウイルス(例えば、インフルエンザ、麻疹、コロナウイルス)、寄生生物(例えば、Trypansome、Plasmodium、Leishmania、病原性微生物)、真菌(例えば、Aspergillus、Candida、Coccidioides、Cryptococcus)など)由来である。例えば、上記抗原は、炭疽(Bacillus arthracis)、ペスト(Yersinia pestis)、胃癌(Helicobacter pylori)、Q熱(Coxiella burnetii)、百日咳(Bordetella pertussis、例えば、FHA)、ボツリヌス症(Clostridium botulinum、A型、B型、C型、D型およびE型)、ガス壊疽(Clostridium perfringens)、野兎病(Francisella tularensis)、類鼻疽(Pseudomonas pseudomallei)、ブルセラ症(Brucella suis、B.abortus、B.canis、B.melitensis)、性感染症(Chlamydia trachomatisまたはNeisseria gonorrhea)の原因因子のような微生物、Clostridium perfringensのようなトキシン産生生物(イプシロントキシン、これらのグラム陽性嫌気性芽胞形成微生物によって産生される12のタンパク質トキシンのうちの1つ)由来であり得る。
【0031】
C.perfringensの5つの株(A〜E)が存在し、各々は、独特な一連のトキシンを産生する;イプシロントキシンは、B型およびD型によって産生される。イプシロントキシンは、細胞からのカリウムおよび流体の漏出を引き起こす実行ポリペプチドとして公知である。イプシロントキシンに加えて、上記A型〜E型は、アルファトキシン、ベータトキシン、イプシロントキシンまたはイオタトキシンのうちの1つ以上を産生し得る。上記イプシロントキシンは、汚染された食物もしくは水の摂取、またはエアロゾル化トキシンの吸入によって広がり得る。関連する別の例示的なトキシンは、Staphylococcus aureusによって産生されるブドウ球菌性エンテロトキシンB(SEB)である。SEBは、吸入した場合に病気を引き起こすことが公知であり、そして恐らく、食物中毒の原因である。SEB中毒個体の免疫系は、損傷されており、そして死と関連することは多くはないが、重大かつ広範に拡大する無力化する病気(例えば、高熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、まぶたの裏の炎症、吐き気、嘔吐および下痢)となる。現在利用可能なワクチンまたは抗SEBは存在しない。
【0032】
特定の実施形態において、単離されたLPSは、抗原、例えば、P.gingivalisから単離されたLPSであり得、このLPSは、歯肉疾患、歯周疾患、虫歯(tooth decay)などを処置または予防するためのP.gingivalisに対する免疫応答の刺激における使用のために、プロテオソームを用いて処方され得る。
【0033】
他の代表的な例としては、特定のウイルス(例えば、ノーウォークウイルス、天然痘ウイルス、西ナイルウイルス、SARSウイルス、RSウイルスなど)由来の抗原が挙げられる。フィロウイルスの例としては、マルブルクウイルスおよびエボラウイルスが挙げられ;フラビウイルスの例としては、デング熱ウイルス、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、St.Louis脳炎ウイルスが挙げられ;アレナウイルスの例としては、Junin(アルゼンチン出血熱)ウイルスが挙げられ;ラッサ熱ウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス、Machupo(ボリビア出血熱)ウイルス;ブンヤウイルスの例としては、クリミア−コンゴ出血熱ウイルス、ハンターン(朝鮮出血熱)ウイルス、リフトバレー熱ウイルスが挙げられ;ピコナウイルスの例としては、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルスが挙げられ;オルトミクソウイルスの例としては、インフルエンザウイルスA、B,C(例えば、HA抗原)、トゴトウイルスが挙げられ;アルファウイルスの例としては、チクングニアウイルス、東部脳炎ウイルス、ベネズエラ脳炎ウイルス、西部脳炎ウイルスが挙げられる。真菌の例としては、Candida albicans、Aspergillus spp.、Coccidioides immites、Histoplasma capsulatum、Norcardia farcinicaが挙げられ;そして寄生生物の例としては、トリパノソーマ症、リーシュマニア、肺ペストおよびライム病(Borrellia burgdorferi)の原因因子が挙げられる。さらに、本発明の抗原は、毒性因子(例えば、リシン、ボツリヌス)であり得る。
【0034】
本明細書中で記載される場合、上記抗原は、組み換え的に、合成的に調製されてもよく、生物学的供給源から単離されてもよく、組み換え的または化学的に改変されてもよく、そして任意のそれらの組み合わせでよい。微生物抗原またはそのフラグメントは、種々の生物学的供給源(例えば、感染被験体組織または培養細胞株)から調製され得る。一次的な単離は、例えば、末梢血液細胞由来または呼吸分泌物由来であり得る。好ましくは、上記単離された微生物は、一次細胞培養物または当該分野で公知の確立された細胞株において増幅される。特定の実施形態において、上記抗原またはそのフラグメントは、完全な微生物粒子から単離される。本明細書中で使用される場合、用語「単離された」または「由来する」は、その物質が、その元々の環境または天然の環境から取り除かれることを意味する。例えば、生きている動物もしくは細胞、またはウイルスに存在する、天然に存在する核酸分子またはポリペプチドは、単離されていないが、同じ核酸分子またはポリペプチドは、その天然系においてともに存在する物質のいくつかまたは全てから分離される場合には、単離されている。例えば、核酸分子は、ベクターに含まれ得、そして/またはこのような核酸は、組成物の一部であり得、そしてさらに、このようなベクターまたは組成物は、元々の核酸分子の天然の環境の一部ではないという点で、単離されている。別の実施形態において、ペプチドまたはポリペプチド(例えば、抗原またはその改変体およびフラグメント)は、部分的に精製されるかまたは均一になるまで精製されるかのいずれかであり得る。
【0035】
本発明は、合成抗原(融合タンパク質を含む)を生成するための方法をさらに提供する。上記免疫原性ポリペプチド成分は、標準的な化学的方法(自動手順による合成を含む)によって合成され得る。一般的に、免疫原性のポリペプチドまたはペプチドは、カップリング剤としてHATUを用いた標準的な固相Fmoc保護方法に基づいて合成される。上記免疫原性ペプチドは、適切なスカベンジャーを含有するトリフルオロ酢酸を用いて固相樹脂から切断され得、このトリフルオロ酢酸はまた、側鎖官能基を脱保護する。粗製免疫原性ペプチドは、分取逆相クロマトグラフィーを用いてさらに精製され得る。他の精製方法(例えば、分割クロマトグラフィー、ゲル濾過、ゲル電気泳動またはイオン交換クロマトグラフィー)が、使用され得る。当該分野で公知の他の合成技術(例えば、tBoc保護方法、種々のカップリング試薬の使用など)が、同様の免疫原性ペプチドを生成するために用いられ得る。さらに、任意の天然に存在するアミノ酸もしくはその誘導体または天然に存在しないアミノ酸もしくはその誘導体(D−アミノ酸またはL−アミノ酸およびその組み合わせを含む)が使用され得る。
【0036】
本明細書中で使用される場合、本発明の微生物抗原またはそのフラグメントは、組み換え体であり得、ここで、所望される抗原は、核酸発現構築物において発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に結合されたポリヌクレオチドから発現される。例えば、上記免疫原をコードする核酸発現構築物を含む宿主細胞(例えば、バキュロウイルスおよび哺乳動物細胞株)は、培養されて、組み換えタンパク質免疫原またはそのフラグメントを生成し得る。上記抗原は、アミノ酸配列にさらに融合または結合され得、この配列は、ProjuvantもしくはProtollinとの非共有結合的会合を容易にするか、またはそうでなければ促進するための疎水性のアンカーまたはフットであり得る。上記抗原ポリペプチドは、微生物感染に対して防御免疫応答(細胞性または体液性)を誘導し得る少なくとも1つのエピトープを有するような、ポリペプチドの任意の部分を含み得る。本発明の免疫原性ポリペプチドはまた、直線状形態に整列され得るかまたは組み合わせられ得、そして各免疫原は、反復されてもされなくてもよく、ここで、上記反復は、1回または複数回生じ得る。さらに、複数の種々の免疫原性ポリペプチド(例えば、タンパク質改変体またはそのフラグメント)は、選択され、そしてカクテル組成物中に混合されるかまたは合わせられて、防御免疫応答の誘導における使用のための多価ワクチンを提供し得る。
【0037】
本開示の免疫原性組成物における使用のための特定の例示的な抗原についてのさらなる詳細を提供するために、以下の説明を提供する。
【0038】
(A.ペスト)
ペストは、黒死病としてもまた公知であり、長い歴史を有する疾患である。中世のペストの流行は、ヨーロッパにおいて3千万人までもの人々を死に追いやった。天然の発症は、風土病性地域において世界中でなお生じているが、抗生物質処置の有用性に起因して、上記疾患は、病的状態をほとんど引き起こさず、そして死亡は、稀にしか生じない。しかし、ペストを取り巻く恐怖は、それが生物戦闘兵器として使用され得る可能性によって、近年増大している。
【0039】
腺ペストは、Yersinia pestisに感染したノミに咬まれることによってヒトへと広がり、そして比較的容易に診断され、そして従って、抗菌剤によって効果的に処置される。ペストの最も致死的な形態である肺ペストは、呼吸経路によるか、または腺ペストもしくは敗血性ペストの拡大の結果として、感染され、かつ処置されていない人によって、人から人へと伝達される。曝露後の肺ペストの処置は、その迅速な経過に起因して、より問題がある。抗菌剤処置が、感染症状を示してから24時間以内になされなければ、Y.pestisを吸入したほとんどの人は、死亡する。ペストの起こり得る意図的な伝播に対する懸念によって、ペストの最も有毒な肺性形態に対して防御可能な安全なワクチンの開発が、非常に優先されている。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明は、ペストに対して免疫応答を誘導するための方法を提供し、この方法は、ペストに対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリド、および1つ以上のペスト抗原またはその改変体もしくはフラグメントを含有する。他の実施形態において、本発明は、ペスト感染を処置または予防するための方法を提供し、この方法は、ペスト感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリド、および1つ以上のペスト抗原またはその改変体もしくはフラグメントを含有し、ここで、上記ペスト感染は、処置または予防される。特定の実施形態において、上記免疫原性組成物において使用されるペスト抗原は、Yersinia pestis由来のF1抗原もしくはV抗原、またはF1−V抗原融合タンパク質抗原、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0041】
(B.天然痘)
1つの実施形態において、例えば、ヒトにおいて天然痘疾患を引き起こす痘瘡ウイルスによる感染に対して防御免疫応答を引き起こすウイルス抗原を含有するProtollin処方物は、本明細書中で企図される。痘瘡ウイルスは、ポックスウイルス科と呼ばれるウイルスファミリーの最も有名なメンバーであり、そして歴史的に、ヒトの文明に対して重要かつ劇的な効果を有してきた。上記ポックスウイルス科は、DNAウイルスの大きなファミリーであり、感染宿主細胞の細胞質において複製する。痘瘡ウイルスの感染は、感染したもののうちの20%〜30%を死に追いやり、そして高度に感染性である。20年の牛痘ウイルスワクチンおよびワクシニアウイルスワクチンを用いた予防免疫は、1970年代後半までに、ヒトにおける天然痘疾患の発症を効果的に撲滅してきたものの、天然痘ウイルスが、天然に存在するウイルス集団からかまたは生物学的戦闘兵器としての予測されない集団への意図的な導入の結果としてのいずれかで、重要かつ致命的な疾患として再興し得るという懸念は、残ったままである。
【0042】
感染宿主細胞から精製されたウイルス粒子は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分解された場合、30以上もの多くの別個のポリペプチドのバンドを構成する。ワクシニアウイルスのコペンハーゲン株のゲノム配列は、65個超のアミノ酸からなる約185個の独自の重複しないオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。慣例により、オルトポックスウイルスORFの命名は、HindII制限エンドヌクレアーゼフラグメントを用いた文字、その後、そのORFの数(左から右)、そしてそのORFの方向に依存したLまたはRからなる。痘瘡ウイルスのインド株およびバングラディッシュ株の完全配列およびほぼ同一の配列はまた、約187個のORFを含み、これらのうちの150個は、ワクシニアウイルスのORFに対して、90%超の配列同一性を有する。痘瘡ウイルスコードポリペプチドに対して90%の配列同一性を有する、ワクシニアウイルスORFによってコードされるポリペプチドのうちの1つ以上は、ワクシニアウイルス免疫後の防御に関与する免疫応答を媒介すると考えられている。限定するわけではないが、例として、多くのORFは、防御免疫応答の誘導に関与し得る細胞外ウイルス特異的ポリペプチドをコードすることが、公知である。それらとしては、F13L ORFによってコードされる非グリコシル化41.8kDaタンパク質;A34R ORFによってコードされるN−グリコシル化19.5kDaタンパク質;A36R ORFによってコードされる25.1kDaタンパク質;A56R ORFによってコードされるN−およびO−グリコシル化赤血球凝集素タンパク質;およびB5R ORFによってコードされるグリコシル化35.1kDaタンパク質が挙げられる。これらのタンパク質の1つ以上に対する免疫応答は、体液性免疫応答または細胞媒介性免疫応答を誘導すると考えられており、これらの免疫応答は、痘瘡ウイルス感染から防御し得るかまたは感染の病原性効果を減少し得る。均衡がとれているかまたは微調整されたTH1/Th2サイトカインプロファイルに優先的に関与する感染宿主の免疫応答は、痘瘡ウイルス感染および天然痘疾患の発症の予防または処置において有効であると考えられている。
【0043】
オルトウイルスの4種のメンバーは、ヒト感染を引き起こし得、それらは、サル痘ウイルス、牛痘ウイルス、痘瘡ウイルスおよびワクシニアウイルスである。牛痘ウイルスおよびワクシニアウイルスは、天然痘感染に対してヒトを予防接種するために、広く使用されている。なぜなら、それらは、痘瘡ウイルスによる感染と比較して、重篤な合併症を生じにくいからである。かなりの程度まで、天然痘は、深刻な健康への脅威であることから撲滅されており、そして続けられた広範に広がる集団全般の予防接種は、中止されている。しかし、天然ウイルスの再興または生物学的脅威因子としての天然痘ウイルスの迅速かつ広範な開発、および生ウイルスを用いた予防接種から生じる、起こり得る所望されない副作用から、天然痘に対する代替的なワクチンの開発の必要性が生じている。
【0044】
今日まで、天然痘ウイルス(すなわち、痘瘡ウイルス)感染に対する非生存サブユニットワクチンは存在していない。現在のワクチン処方物は、防御免疫応答(しばしば、所望されない副作用)を引き起こすために、減弱した生ウイルスの使用を必要とする。特定の実施形態において、本発明は、天然痘に対して免疫応答を誘導するための方法を提供し、この方法は、天然痘に対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリド、および1つ以上の天然痘抗原または天然痘ウイルス粒子抽出物を含有する。他の実施形態において、本発明は、天然痘感染を処置または予防するための方法を提供し、この方法は、天然痘感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリド、および1つ以上の天然痘抗原または天然痘ウイルス粒子抽出物を含有し、ここで、上記天然痘感染は、処置または予防される。
【0045】
(C.リシン)
本発明のさらに別の局面において、非感染性の毒性因子または有毒因子に対して免疫応答を引き起こし得るプロテオソームベースのワクチン組成物は、本明細書中で企図される。このような非感染性因子としては、例えば、豆植物Ricinus communisから産生されるリシントキシンが挙げられ、このリシントキシンは、ヒト、動物および昆虫に対して有毒である。リシンは、トウゴマによって産生される細胞毒であり、吸入または摂取による中毒は、リシンによって引き起こされる。リシン中毒は、用量に依存して、摂取の2時間〜3時間以内に開始して、腹痛、嘔吐、下痢を引き起こし得る。リシン中毒は、阻止されない場合、数日以内に重篤な脱水症へと進行し、そして血圧を低下させて、摂取(または吸入)後3日〜5日以内に死に至る。リシンは、実に容易に産生され、そして、小さい粒子としての吸入またはその後の摂取によって中毒(毒性)を引き起こし得る、強力なトキシンである。リシンはまた、かなり安定である。リシン中毒の症状としては、衰弱、発熱、咳および肺水腫、その後の重篤な呼吸窮迫症および低酸素血症による死が挙げられる。げっ歯動物においては、エアロゾル曝露の組織病理は、脈管水腫および肺胞水腫(aleveolar edema)を伴う気管炎、気管支炎および間質性肺炎を引き起こす壊死性気道損傷によって特徴付けられる。げっ歯動物において、リシンは、他の曝露経路によるよりも吸入によってより有毒である。地理的に集中した個体の有意な数におけるリシン中毒の症状は、エアロゾル化リシンに対する曝露を示唆し得る。
【0046】
細胞毒性は、真核生物リボソームを特異的かつ不可逆的に不活性化するメカニズムを介する、タンパク質合成の阻害によって媒介される。従って、リシンはまた、公知のリボソーム不活性化タンパク質(RIP)である。上記RIP(例えば、リシン)は、一般的に、2つのジスルフィド結合されたポリペプチド鎖から構成される。一方のポリペプチド鎖は、細胞への結合および細胞質への取り込みを媒介し、他方の鎖は、タンパク質合成を阻害するために機能する。特定の実施形態において、本発明は、リシントキシンに対して免疫応答を誘導するための方法を提供し、この方法は、リシントキシンに対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリド、および1つ以上のリシントキシン抗原またはそのフラグメントもしくは改変体を含有し、ここで、上記リシントキシン抗原は、抗体応答の中和を誘導する。従って、宿主Th1/Th2免疫応答を調節し、そしてトキシン活性を不活性化または減弱するリシン免疫原性ポリペプチドを含有するプロテオソームワクチン処方物は、本明細書中で企図される。
【0047】
(C.ボツリヌス中毒)
ボツリヌス中毒は、バシラス属のClostridium botulinumによって産生される7つの異なる神経毒のうちのいずれかによる中毒によって引き起こされる。上記ボツリヌストキシンは、約150,000KDaの分子量を有するタンパク質であり、末梢コリン作動性シナプスでニューロンのシナプス前膜に結合して、アセチルコリンの放出を阻害し、そして神経伝達を遮断する。上記遮断は、上記コリン作動性自律神経系および神経筋接合部において、臨床的に最も明らかである。吸入ボツリヌス中毒の症状は、曝露後24時間〜36時間の早さで開始し得るかまたは数日の遅さで開始し得る。初期の徴候および症状としては、下垂、全身性衰弱、倦怠および眩暈感が挙げられる。呼吸不全の発症は、突然にあり得る。
【0048】
特定の実施形態において、本発明は、ボツリヌストキシンに対して免疫応答を誘導するための方法を提供し、この方法は、ボツリヌストキシンに対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、ここで、上記免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリド、および1つ以上のボツリヌストキシン抗原またはそのフラグメントもしくは改変体を含有し、ここで、上記ボツリヌストキシン抗原は、抗体応答の中和を誘導する。
【0049】
(免疫原性組成物および使用方法)
本発明はまた、1つ以上の抗原を含有する免疫原性組成物に関し、この組成物は、免疫応答(例えば、防御免疫応答)を誘導するために使用され得る。本発明は、本明細書中で記載されるように、1つ以上の抗原もしくはそのフラグメント、融合タンパク質、多価免疫原またはこのような抗原の混合物を、上記抗原に対して特異的な免疫応答(細胞性または体液性)(この免疫応答は、防御免疫応答であり得る)を誘導するために充分な用量で被験体に投与することによって、微生物感染もしくは毒性因子の影響を処置または予防するための方法にさらに関する。抗原およびその改変体、またはこのような免疫原のカクテルは、好ましくは、本発明の方法において使用される場合、アジュバント(例えば、ProjuvantまたはProtollin)を含有する組成物の一部である。1つの実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、1つ以上のさらなる微生物抗原(例えば、ウイルス抗原、微生物抗原、寄生生物抗原またはそれらの組み合わせ)をさらに含有し得る。例えば、ペストまたは炭疽に対する免疫原性はまた、風疹抗原およびムンプス抗原に対する抗原を含み得る。
【0050】
上記免疫原性組成物は、1つ以上の抗原またはそのフラグメントに加えて、薬学的に受容可能なビヒクル、キャリア、希釈剤または賦形剤、そして必要に応じて、他の成分をさらに含有し得る。例えば、本発明の免疫原性組成物との使用のために適切な薬学的に受容可能なキャリアまたは他の成分としては、濃縮剤、緩衝剤、溶媒、湿潤剤、保存剤、キレート剤、添加アジュバントなど、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
さらに、本発明の薬学的組成物は、希釈剤(例えば、水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS))をさらに含有し得る。好ましくは、希釈剤は、約0.1mM〜約1M、より好ましくは、約0.5mM〜約500mM、さらにより好ましくは、約1mM〜約50mM、そして最も好ましくは、約2.5mM〜約10mMの範囲の最終ホスフェート濃度;および約100mM〜約200mM、そして最も好ましくは、約125mM〜約175mMの範囲の最終塩濃度を有するPBSである。好ましくは、上記最終PBS濃度は、約5mMのホスフェートおよび約150mMの塩(例えば、NaCl)である。特定の実施形態において、本発明の抗原およびアジュバント(例えば、ProjuvantまたはProtollin)のカクテルを含有する上述の免疫原性組成物のいずれもが、好ましくは、滅菌である。
【0052】
上記組成物は、無菌環境下でそれらを調製することによって滅菌され得るか、またはそれらは、当該分野で利用可能な方法を用いて最終的に滅菌され得るかのいずれかである。多くの医薬品は、滅菌であるように製造され、そしてこの基準は、USP XXII<1211>により規定されている。この実施形態における滅菌は、この産業において受容され、そして上記USP XXII<1211>に列挙されている多くの手段(ガス滅菌、電離放射線または濾過を含む)によって達成され得る。滅菌は、無菌処理と呼ばれ、また、USP XXII<1211>に規定されている方法によって維持され得る。ガス滅菌のために使用される受容可能な気体としては、エチレンオキシドが挙げられる。電離放射線法のために使用される受容可能な放射線型としては、例えば、コバルト60供給源からのγ線および電子線が挙げられる。γ線放射の代表的な用量は、2.5MRadである。必要に応じて、濾過は、適切な孔サイズ(例えば、0.22μm)を有し、そして適切な材料(例えば、Teflon(登録商標))からなるフィルタを用いて達成され得る。用語「USP」とは、米国薬局方(www.usp.org;Rockville、MDを参照のこと)をいう。プロテオソームまたはOMP−LPSは、充分小さい粒子を生じるという事実に起因して、本発明の免疫原性組成物は、0.8μのフィルタ、0.45μのフィルタまたは0.2μのフィルタを通して濾過され得る。従って、好ましい実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、濾過によって滅菌される。このことは、非常に有益である。なぜなら、このような夾雑物の存在による任意の複雑化を除去することが、所望されるからである。
【0053】
本発明はまた、微生物感染を処置または予防するための方法に関し、この方法は、微生物感染の処置または予防を必要としている被験体に、免疫原性組成物を投与する工程を包含し、この免疫原性組成物は、アジュバントおよび1つ以上の抗原を含有し、ここで、上記アジュバントは、プロテオソームまたはOMP−LPSのいずれかを含む。別の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、免疫応答(細胞性もしくは体液性、またはその両方、これらは、1型細胞応答または2型細胞応答に有利であり得る)を誘導するために使用され得る。抗原処方物を用いた処置または免疫応答の誘導のために適切な被験体は、疾患を発達させるための危険性の充分に確立された指標、または存在する疾患の充分に確立されたに証明によって規定され得る。本明細書中で使用される場合、用語「処置する」および「改善する」とは、統計学的に有意な様式で、疾患の少なくとも1つの局面もしくはマーカーを処置するか、阻害するか、軽減するか、改善するか、減少するか、予防するかまたは変化させるために充分な量あるいは充分な時間での、所望される組成物または化合物の治療用投与をいうことが理解されるべきである。本発明の抗原を用いて処置され得るか、改善され得るかまたは予防され得る感染としては、その感染が、一次感染、二次感染、日和見感染などのいずれであるにせよ、本明細書中に記載されるいずれかの微生物によって引き起こされるかまたは起因する感染が挙げられる。他の例示的な抗原は、本明細書中で記載されるトキシンまたはその改変体である。
【0054】
本明細書中で記載される場合、上記抗原は、組み換え的に、合成的に調製されてもよく、生物学的供給源から単離されてもよく、組み換え的または化学的に改変されてもよく、そして任意のそれらの組み合わせでもよい。微生物抗原またはそのフラグメントは、種々の生物学的供給源(例えば、感染被験体組織または培養細胞株)から調製され得る。一次的な単離は、例えば、末梢血液細胞由来または呼吸分泌物由来であり得る。好ましくは、上記単離された微生物は、初代細胞培養物または当該分野で公知の樹立細胞株において増幅される。特定の実施形態において、上記抗原またはそのフラグメントは、完全な微生物粒子から単離される。本明細書中で使用される場合、用語「単離された」または「由来する」は、その物質が、その元々の環境または天然の環境から取り除かれることを意味する。例えば、生きている動物もしくは細胞、またはウイルスに存在する、天然に生じる核酸分子またはポリペプチドは、単離されていないが、同じ核酸分子またはポリペプチドは、その天然系において共存する物質のいくつかまたは全てから分離される場合には、単離されている。例えば、核酸分子は、ベクターに含まれ得、またはこのような核酸は、組成物の一部であり得、そしてさらに、このようなベクターまたは組成物は、元々の核酸分子の天然の環境の一部ではないという点で、単離されている。別の実施形態において、ペプチドまたはポリペプチド(例えば、抗原またはその改変体およびフラグメント)は、部分的に精製されるかまたは均一になるまで精製されるかのいずれかであり得る。
【0055】
本発明は、合成抗原(融合タンパク質を含む)を生成するための方法をさらに提供する。上記免疫原性ポリペプチド成分は、標準的な化学的方法(自動手順による合成を含む)によって合成され得る。一般的に、免疫原性のポリペプチドまたはペプチドは、カップリング剤としてHATUを用いた標準的な固相Fmoc保護方法に基づいて合成される。上記免疫原性ペプチドは、適切なスカベンジャーを含有するトリフルオロ酢酸を用いて固相樹脂から切断され得、このトリフルオロ酢酸はまた、側鎖官能基を脱保護する。粗製免疫原性ペプチドは、分取逆相クロマトグラフィーを用いてさらに精製され得る。他の精製方法(例えば、分配クロマトグラフィー、ゲル濾過、ゲル電気泳動またはイオン交換クロマトグラフィー)が、使用され得る。当該分野で公知の他の合成技術(例えば、tBoc保護方法、種々のカップリング試薬の使用など)が、同様の免疫原性ペプチドを生成するために用いられ得る。さらに、任意の天然に存在するアミノ酸もしくはその誘導体または天然に存在しないアミノ酸もしくはその誘導体(D−アミノ酸またはL−アミノ酸およびその組み合わせを含む)が使用され得る。
【0056】
本明細書中に記載される場合、本発明の微生物抗原またはそのフラグメントは、組み換え体であり得、ここで、所望される抗原は、核酸発現構築物において発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に結合されたポリヌクレオチドから発現される。例えば、上記免疫原コード核酸発現構築物を含む宿主細胞(例えば、バキュロウイルスおよび哺乳動物細胞株)は、培養されて、組み換えタンパク質免疫原またはそのフラグメントを生成し得る。上記抗原は、さらなるアミノ酸配列にさらに融合または結合され得、この配列は、抗原融合体と、ProjuvantもしくはProtollinとの非共有結合的会合を容易にするか、またはそうでなければ促進するための疎水性のアンカーまたはフットであり得る。上記抗原ポリペプチドは、微生物感染に対して防御免疫応答(細胞性または体液性)を誘導し得る少なくとも1つのエピトープを有するような、ポリペプチドの任意の部分を含み得る。本発明の免疫原性ポリペプチドはまた、直線状形態に整列され得るかまたは組み合わせられ得、そして各免疫原は、反復されてもされなくてもよく、ここで、上記反復は、1回または複数回生じ得る。さらに、複数の種々の免疫原性ポリペプチド(例えば、タンパク質改変体またはそのフラグメント)は、選択され、そしてカクテル組成物中に混合されるかまたは合わせられて、防御免疫応答の誘導における使用のための多価ワクチンを提供し得る。
【0057】
本開示の免疫刺激組成物、免疫調節組成物および免疫原性組成物を調製するための方法は、本明細書中に記載され、そして当該分野において公知である(例えば、米国特許出願公開番号2001/0053368および2003/0044425を参照のこと)。上記抗原およびアジュバントは、特定の開始比で処方されて、上記成分間の相互作用(または協同作用)を最適化し、その結果、上記2つの成分のかなりの部分が、互いに非共有結合会合(または、非特異的並置)することをもたらす。例えば、少なくとも1つの抗原と、プロテオソーム(projuvant)またはProtollinとの混合物は、界面活性剤の存在下で調製され、そして透析/限外濾過によって、上記混合物から上記界面活性剤を減少または除去することにより、上記抗原と、上記アジュバントとの会合(または協同作用)が導かれる。特定の実施形態において、上記混合物中の上記Protollin(またはプロテオソーム):抗原の比は、約1:1〜約5:1の範囲である。上記比は、8:1以上に高くあり得る。特定の他の実施形態において、上記混合物中の上記Protollin(またはプロテオソーム):抗原の比は、約1:1〜約1:500の範囲であるか、または約1:2〜約1:200の範囲にあるか、または約1:2〜約1:100の範囲にあるか、または約1:5〜約1:50の範囲にあるか、または約1:2〜約1:20の範囲にあるか、または少なくとも1:5、1:10、1:20もしくは1:100の範囲にある。上記2つの成分の界面活性剤ベースの溶液は、同じ界面活性剤を含んでも異なる界面活性剤を含んでもよく、そして1つより多くの界面活性剤が、限外濾過/透析に供される混合物中に存在し得る。適切な界面活性剤としては、Triton(登録商標)、Empigen(登録商標)BBおよびMega−10が挙げられる。他の界面活性剤(例えば、オクトグリコシド)がまた、使用され得る。上記界面活性剤は、上記組成物を調製するために使用される成分を溶解するために役に立つ。界面活性剤の混合物の使用は、特に有利である。もちろん、この混合物は、最終処方物の前に、除去されるかまたはその濃度は、透析/限外濾過によって減少される。
【0058】
本発明の1つ以上の抗原およびプロテオソームベースのアジュバントを含有する免疫原性組成物は、その組成物が被験体(例えば、ヒトまたは動物)に投与され得る任意の形態にあり得る。例えば、本発明の免疫原性組成物は、液体の溶液として調製され、そして投与されても、固体形態(例えば、凍結乾燥されて)として調製されてもよく、この固体形態は、投与に合わせて、固体形態で投与されても溶液中に再懸濁されてもよい。上記免疫原性ポリペプチド組成物は、そこに含有される活性成分が、被験体もしくは患者への上記組成物の投与の際に生物利用可能であり得るか、または遅延放出を介して生物利用可能であり得るように、処方される。被験体または患者に投与される組成物は、一用量単位以上の形態をとり、ここで、例えば、ドロップは、単一用量単位であり得、そして本発明の1つ以上の化合物のエアロゾル形態の容器は、複数の用量単位を保有し得る。特定の好ましい実施形態において、本発明の免疫原または免疫原(例えば、抗原)のカクテルを含有する任意の上述の薬学的組成物は、容器内にあり、好ましくは、滅菌容器内にある。特定の投与プロトコールの設計(投薬レベルおよび投与のタイミングを含む)は、当業者に周知の慣用的な方法を用いるこのような手順を最適化することによって、決定される。
【0059】
1つの実施形態において、上記免疫原性組成物は、鼻に投与される。他の代表的な投与経路としては、経腸、非経口、経皮/経粘膜、鼻および吸入が挙げられる。用語「経腸」とは、本明細書中で使用される場合、上記免疫原性組成物が、胃腸管または経口粘膜(経口、直腸および舌下を含む)を介して吸収される、投与経路である。用語「非経口」は、本明細書中で使用される場合、胃腸管を迂回する投与経路(動脈内、皮膚内、筋内、鼻内、眼内、腹腔内、静脈内、皮下、粘膜下および膣内の注射技術または注入技術を含む)を説明する。用語「経皮/経粘膜」は、本明細書中で使用される場合、上記免疫原性組成物が、皮膚を介するかまたは皮膚を通って投与される(局所的を含む)、投与経路である。用語「鼻」および「吸入」は、上記免疫原性組成物が、肺樹(pulmonary tree)内に導入される(肺内または経肺を含む)、投与技術を含む。好ましくは、本発明の組成物は、鼻に投与される。
【0060】
例えば、本明細書中に記載されるように、鼻に投与されるProtollinと組み合わされたF1−Vは、Alhydrogel(登録商標)を用いて処方されたF1−Vの筋内注射によって誘導される抗F1−V IgG力価に匹敵する、血清抗F1−V IgG力価を誘導した。しかし、Alhydrogel(登録商標)/F1−Vとは異なり、Protollin/F1−Vはまた、肺洗浄流体において検出されたように、特異的なIgA応答およびIgG応答を誘導した。免疫したマウスを、その後、エアロゾル化Y.pestisを用いて攻撃した。Protollin/F1−V免疫マウスは、Alhydrogel/F1−V群において60%であるのに対して、高用量(255LD50)の攻撃に対して80%が防御され、他方、両方のワクチンは、上記生物の低用量(170LD50)の攻撃に対して90%〜100%防御的であった。
【0061】
本明細書中において参照され、そして/または、出願データシートに列挙される全ての米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国の特許、外国の特許出願および非特許刊行物は、本明細書中でそれらの全体が参考として援用される。記載されている本発明、以下の実施例は、本発明を例示することが意図され、本発明を限定しない。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
(血清免疫応答および粘膜免疫応答を評価するためのELISAアッセイ)
ELISAを、本用途に従う試験免疫刺激因子または試験免疫原性処方物およびコントロールで免疫した動物から得られた生物の全体ならびに抗原特異的なIgG力価、IgA力価およびIgM力価を決定するために使用した。サンプルは、マウスおよびウサギにおける血清、鼻洗浄物および肺粘膜洗浄物を含んだ。標準的なELISAプロトコールを使用して、直線性、特異性、感受性および再現性を決定した。簡単に言えば、試験サンプル(血清および洗浄流体)の連続希釈液を、精製した抗原またはその誘導体でコーティングしたELISAプレートのウェルに添加した。固定化抗原に結合する抗原特異的抗体を、動物および抗体サブタイプに特異的な西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗体で検出した。HRP抗体の相互作用および洗浄の後、HRP基質(TMB)とともにインキュベーションした後に結合したHRP抗体の量を検出し、そして490nmの吸光度を測定した。上記試験サンプルの抗体濃度を、IgA、IgM、IgG、IgG1およびIgG2aに対する精製した標準抗体を用いて(これらは並行して実施された)標準曲線から計算した。別個のアッセイにおいて測定したので、必要に応じて、粘膜洗浄流体サンプルにおける特異的抗体レベルを、上記サンプル中のIgA総量またはIgG総量と比較して検出した特異的抗体を表すことによって標準化および正規化した。この技術は、ヒト臨床試験において収集した鼻洗浄流体に対して実施したアッセイにおいて、優れた再現性および一貫性をもたらした。ELISAデータを、長期変形(long−transformed)データを用いた統計的分析により、95%信頼レベルでの幾何学的平均として表す。
【0063】
(実施例2)
(粘膜抗体産生の分析)
マウスおよびウサギにおける肺洗浄物および鼻洗浄物を収集して、本用途に従う免疫刺激因子または免疫原性処方物に対する免疫応答を分析した。マウスにおいて、鼻洗浄物および肺洗浄物を、気管にカニューレ挿入することによって実施し、そして0.1%ウシ血清アルブミンおよびプロテアーゼインヒビター(0.2mM AEBSR、1μg/mL アプロチニン、3.25μM ベスタチン、10μM ロイペプチンを含有するGeneral Use Protease Inhibitor Cocktail;Sigma Chemicals)を補充した1ml PBSを、気管を通して上方へポンプした。外鼻孔から出てきた流体を収集し、ボルテックスし、そして次いで、遠心して組織および細胞の残骸を除去した。その上清を−70℃でアッセイまで保存した。カニューレを気管に再び挿入し、そしてそのカニューレを肺へと向けて維持することにより、肺流体を収集した。肺を、PBSを補充した1.0mL プロテアーゼで2回洗浄し、その流体を収集し、そしてボルテックスし、そして遠心によってその細胞の残骸を除去した。肺洗浄物および鼻洗浄物を、−70℃でアッセイするまで保存した。ウサギ粘膜流体を同様に収集し、必要に応じてその容量を調節した。特定の実施形態において、粘膜サンプルを収集した後、頚部および縦隔のリンパ節を外科手術的に除去し、そして単球細胞を単離し、そして本明細書中で記載されるようなELISPOT抗体アッセイ、サイトカインアッセイおよびCMIアッセイのために培養した。
【0064】
(実施例3)
(ペスト抗原F1−Vを用いて処方したProtollinによる免疫)
例えば、Yersinia pestisを用いた致死的な攻撃に対して防御可能な免疫応答を誘発するペスト抗原(F1−V)を用いて処方した、プロテオソーム:LPS(Protollin)組成物の性能を試験する。上記F1−V免疫応答を、0日目および21日目に、20匹の6週齢〜8週齢の雌Swiss−Websterマウス(Charles River、St−Constant、Quebec)群を免疫することによって評価した。免疫のために、Protollinの新しく解凍したアリコートおよびF1−Vの溶液を、免疫前に16時間より短い時間混合した。鼻内(i.n.)投与のために、マウスを、イソフルラン吸入によってまず軽く麻酔し、次いで25μlのワクチンサンプルまたは適切なコントロールサンプル(ProtollinまたはF1−Vのみ)を、各マウスの外鼻孔(外鼻孔あたり12.5μl)に適用した。並行した実験において、マウスを、後足に注射した、500mgのAlhydrogel(登録商標)に吸着された25μlのF1−Vで、筋内(i.m.)に免疫した。コントロールi.m.注射をまた、実施した。その後、35日目および55日目に、各群からの10匹のマウスをCO2による窒息および瀉血によって安楽死させた。血清を得て、アッセイまで−80℃で保存した。鼻洗浄物サンプルおよび肺洗浄物サンプルを得て、アッセイまで−80℃で保存した。脾臓を、インビトロ再刺激および放出サイトカインの評価のために処理した。各群からの残りの10匹のマウスを、エアロゾル化Y.pestis(Colorado 92株)の170〜250LD50の吸入によって、35日目または55日目に攻撃して、防御を評価した。マウスを、罹患率および死亡率の決定のために、攻撃後28日間モニタリングした。
【0065】
Protollinを用いて処方されたF1−V抗原の2用量で鼻内に免疫したマウスから得られた、血清サンプルおよび肺洗浄流体サンプルに存在する抗体を、F1−Vのみで鼻内に免疫したマウスまたはAlhydrogel(登録商標)吸着F1−Vで筋内に免疫したマウスからの血清サンプルおよび肺洗浄流体サンプルに存在する抗体と比較した。結果を、図1および2に示す。驚くべきことに、試験した全ての濃度において、ProtollinとF1−Vとの全ての組み合わせは、免疫原性が高く、そして、1mg/mlと9mg/mlとの間のF1−V特異的血清IgG力価を誘導した(図1および2)。F1−V濃度とProtollin濃度との任意の組み合わせによって誘導される特異的IgG力価、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着された20μgのF1−Vの筋内注射によって誘導される特異的IgG力価に、有意な差はなかった(P>0.05)。F1−V処方ワクチンによって誘導される全ての特異的血清IgG力価は、非アジュバント添加F1−Vコントロールの鼻内投与によって誘導されるものよりも、有意に高く(P≦0.001)、そしてコントロールマウスからの血清においては、F1−V特異的抗体は検出されなかった。これらの実験の予測されなかった結果は、Protollin:抗原の比は、劇的(1:2〜1:200)に減少され得、抗原が免疫応答を誘導するという能力に、有意な影響を与えないということである。この開示の前には、アジュバントの量を減少することは、免疫応答の減少をもたらすと予測されていた。
【0066】
肺洗浄物サンプルを、ELISAによってアッセイして、存在する特異的な抗F1−V抗体、抗F1抗体および抗V抗体のレベルを決定した(図3)。結果は、粘膜(例えば、鼻内)経路による免疫は、F1−V特異的肺IgAの高力価によって応答される、Protollin添加F1−V抗原で鼻内に免疫したマウスの全ての群のように、粘膜抗体を誘導する有効な手段であることを確かめる。これらの実験において、上記IgA応答は、最も高い用量のProtollinで免疫したマウスからの肺洗浄物サンプルにおいて、最も高かった;ANOVA分析は、やはり予測されなかったように、F1−VとProtollinとの任意の組み合わせによって誘導される上記IgA力価に、有意な差はないことを示した。非アジュバント添加F1−Vは、鼻内に投与され、わずかに検出可能なIgAレベルを誘導した;分泌IgAは、Alhydrogel(登録商標)吸着F1−Vで筋内注射したマウスからのサンプルにおいては検出されなかった。上記F1−V抗原の上記F1部分およびV部分に対する肺洗浄物サンプルのアッセイは、上記免疫応答は、主に、上記F1−V融合タンパク質の上記V成分に対して検出されることを示した(表1)。しかし、肺洗浄物サンプルはまた、その力価が、上記血清力価の小さい百分率を示すにすぎないにしても、F1−V特異的IgGのかなりの力価を含んでいた(0.11%〜0.56%;中央値0.175%)。
【0067】
上記F1成分およびV成分の両方を認識する血清抗体が誘導されたか否かを決定するために、20μg用量のF1−V抗原で免疫した全てのマウスからの血清を、F1およびVに対して別個に分析した。全ての場合、そして両方のサンプリング時間において、上記F1−V抗原の上記F1部分およびV部分の両方に対して特異的な血清IgG抗体および肺洗浄流体IgA抗体を、検出した(表1)。これらの実験において評価した上記F1−V抗原の処方または送達経路に関わらず、上記血清の抗F1抗体と抗V抗体との比に有意な差はなかった。
【0068】
【表1】
(実施例4)
(エアロゾル化Y.pestisで免疫したマウスの攻撃)
これらの実験を、Protollinを用いて処方されたF1−Vによる鼻内免疫によって誘導される、免疫防御レベルを評価するために設計した。マウスを、生存エアロゾル化Y.pestisに対する全身曝露によって攻撃し、そして攻撃からの防御レベルを、Alhydrogel上に吸着されたF1−Vの注射によって誘導される防御レベル、およびF1−VのみまたはProtollinのみを鼻内に投与したコントロールマウスと比較した。これらの実験において、20μg用量のF1−Vで免疫したマウスに対する結果のみを、図4および5に示す。35日目、そして170 LD50 Y.pestisの攻撃用量において、1μgまたは2.5μgのProtollinを添加した5μg、20μgまたは50μgのF1−Vで鼻内に免疫したマウスは、死に対して100%防御し、Alhydrogel上に吸着されたF1−Vによって注射したマウスも同様であった。5μg、20μgまたは50μgのF1−Vおよび0.25μgのProtollinで鼻内に免疫したマウスは、それぞれ、90%、100%、そして90%防御され、他方、Protollinを含まない同じ用量のF1−Vで鼻内に免疫したマウスは、それぞれ、30%、40%、そして40%防御されたにすぎなかった。Protollinのみを受けたコントロールマウスは、攻撃後4日目より長く生存しなかった。処方されたF1−Vで免疫した全てのマウス群に対する生存率は、コントロールマウスまたは処方されないF1−Vで免疫したマウスにおける生存率と比較して、有意に高かった(フィッシャーの正確確率検定により、P≦0.05またはそれより良い)。攻撃後55日目の生存率は、35日目のデータと非常に類似していた。F1−Vを用いて処方された2.5μgのProtollinで免疫した全てのマウスは、攻撃に対して完全に防御され、Alhydrogel(登録商標)上に吸着されたF1−Vの注射によって免疫したマウスも同様であった。50μgまたは20μgのF1−Vを用いて処方された1μgのProtollinで免疫したマウスはまた、100%防御され、ProtollinとF1−Vとの全ての他の組み合わせは、90%の防御を誘導した。処方されたF1−Vで免疫した全てのマウスにおいて、上記観察された防御は、アジュバント未添加F1−Vで免疫したマウス(10%〜30%の防御)、または生存動物が存在しなかったマウスのコントロール群と比較して、有意に高かった(P≦0.01またはそれより良い)。1μgのProtollinを含むかもしくは含まない50μgのF1−Vで鼻内に免疫したマウス、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着された20μgのF1−Vを注射したマウスを、255 LD50のエアロゾル化生存Y.pestisに対する全身曝露によって55日目に攻撃した。それぞれ、80%、20%および60%のマウスが、高用量の致死的攻撃に対して生存し、他方、Protollinのみを与えられたコントロールマウスは、全て死亡した。処方されたF1−Vによる免疫は、コントロールマウスと比較して、死に対して有意な防御を誘導した(鼻へのProtollin添加F1−Vについて、P≦0.001;注射F1−Vについて、P≦0.01)。Protollin添加F1−Vでの鼻免疫はまた、F1−Vのみでの免疫よりも、死に対するマウスの防御において有意に良好であったが(P≦0.05)、これは、上記誘導された防御が、Protollinを含まない鼻内へのF1−Vによって誘導されるよりも有意に良好ではない場合の注射F1−Vに対する事実ではなかった(P=0.95)。
【0069】
(実施例5)
(Protollin:ペスト抗原で免疫後のサイトカインプロファイルの決定)
鼻内投与Protollinまたは注射Alhydrogel(登録商標)アジュバント添加F1−Vワクチンによって誘導される適応免疫応答の表現型(1型または2型)を比較するために、免疫したマウスの選択された群からの脾臓細胞を、F1−Vを用いて、インビトロで再刺激し、そして培養上清中に放出されたIFN−γ、TNF−αおよびIL−5サイトカインの量を、測定した(図6)。Protollin(1μg)と混合されたF1−V(50μg)で鼻内に免疫したマウスからの脾臓細胞は、高レベルのIFN−γおよびTNF−αの両方を分泌することによって、インビトロ再刺激に応答し、そして非常に低い量のIL−5がまた、検出された。対照的に、Alhydrogel上に吸着されたF1−V(20μg)の注射によって免疫したマウスからの脾臓細胞は、比較的少量のIFN−γおよびTNF−αを分泌することによって応答したが、かなりの量のIL−5が検出された。従って、F1−V抗原を用いて処方された(アジュバント添加された)Protollinの鼻内投与によって誘導されるサイトカインプロファイルは、1型免疫応答を誘導することが確かであり、一方、Alhydrogel(登録商標)を用いて処方されたF1−V抗原の筋内注射によって誘導されたサイトカインプロファイルは、2型応答であることが、かなり確かである。
【0070】
(実施例6)
(Protollin:炭疽免疫原性処方物は、免疫応答の中和を引き起こす)
Bacillus anthracisの組み換え防御抗原(rPA)を用いたProtollin処方物を、細胞培養物アッセイ系を用いて、PA媒介性マクロファージ殺傷の統計学的に有意な減少を誘導可能な免疫応答を誘導する能力に対して評価した。1μgのProtollinと混合した5μgまたは25μgのrPA(List Laboratories)で鼻内に免疫したマウス(0日目、14日目)は、5μgまたは25μgのrPAのみで鼻内に免疫したマウスの特異的抗rPA血清IgGレベルおよび特異的抗rPA肺IgAよりも、有意に高い特異的抗rPA血清IgGレベルおよび特異的抗rPA肺IgAレベルを示し(P<0.05)(図7)、このことは、低レベルのProtollinのアジュバント化(adjuvanticity)はまた、rPA抗原を用いても有効であることを示す。上記ProtollinのみおよびrPAのみのコントロール群における粘膜IgAレベルは、このアッセイの検出レベルよりも低かった。
【0071】
特異的抗rPA抗体がPA媒介性マクロファージ貪食を中和する能力を評価した。炭疽PA中和アッセイをまた、これらの動物からの血清サンプルおよび肺洗浄流体サンプルを用いて、記載されるように実施した。このアッセイのために、2×105 RAW264.7細胞を、滅菌96ウェルプレートにプレートし、そして37℃で24時間、5%CO2中でインキュベートした。(PA免疫マウスからの)血清サンプルまたは肺洗浄流体サンプルの連続希釈液を、PA溶液とともに1時間、37℃でインキュベートし、次いで、細胞を含むウェルに添加した。その後、LFの溶液を上記ウェルに添加して、上記プレートを、37℃で、5%CO2中で4時間インキュベートした。次いで、(細胞生存度を測定するための)MTTの溶液を、各ウェルに添加し、そして上記プレートを、さらに4時間、37℃で5%CO2中でインキュベートした。上記反応を、50% DMF(pH 4.3)中の20% SDS添加することによって停止し、そして上記プレートを、690nmを参照として、570nmで読んだ。このアッセイは、Protollinを有するrPAのプロテオソームアジュバント化鼻内ワクチンが、筋内ミョウバンアジュバント化ワクチンがそうであるのに匹敵する、rPA活性を中和する抗体レベルを誘導することを示した(図8)。しかし、サンプル間の顕著な差は、Protollin処方物rPAで免疫したマウスからの肺洗浄物サンプル中に存在する、中和IgA抗体の存在である。
【0072】
(実施例7)
(さらなる炭疽ワクチン処方物の調製)
鼻Protollin炭疽ワクチンを、免疫の前に、上記炭疽PA抗原と、LPSを添加した可溶性の事前に形成したプロテオソーム(すなわち、Protollin)とを混合することによって作製した。rPAおよびrPAアンカー抗原の両方を、いくつかのProtollinの様式で評価して、最適なProtollin:免疫抗原の比を有する処方物を決定した。例えば、コントロール処方物としては、Protollinのみまたは(必要に応じて)1つ以上のコントロール抗原(例えば、組み換え連鎖球菌性タンパク質)と混合したProtollinが挙げられ、このコントロール抗原は、疎水性アンカー配列を含むかまたは欠いている。従って、種々の供給源からのLPSを含有するProtollinの処方物、種々のProtollin:LPSの比および種々のProtollin:rPA抗原の比を評価する。rPAアンカーは、非常に低いレベルのLPS(2重量%未満)を有するプロテオソームを用いて処方する。特定の実施形態において、上記プロテオソームアジュバント調製物は、添加された外因性LPSを有しない。これまで、プロテオソームは、それ自体が、前臨床毒性研究において、ならびに第1相および第2相の安全なプロテオソーム鼻インフルエンザワクチンの免疫原性実験的攻撃試験で、500人近くにおいて使用されている。
【0073】
LPSの好ましい様式のプロセス開発(LPS微生物性供給源に関して)およびProtollinの好ましい処方(LPS供給源およびプロテオソーム:LPSの比に関して)を、LPS供給源に関するProtollinの成分およびプロテオソーム:LPSの比を同定するために設計した免疫原性研究の結果に基づいて、実施する。LPSのための好ましい微生物供給源の発酵の後、LPS精製および分析を行う。次いで、選択されたLPSを、選択された比でプロテオソームOMP粒子と混合して、好ましいProtollinを形成する。上記LPSと上記OMPとの会合の程度は、キャピラリー電気泳動を用いた、特別に開発された「遊離−対−結合」アッセイ、LPS「スパイク(spiking)」研究および必要に応じて他の分析において、立証される。Protollinの特徴付けとしては、代表的に、KDO、NMRおよび銀染色PAGEを用いたLPS含量の分析、プロテオソームOMP含量のためには、必要に応じて、LC−MS、RP−HPLC、SDS−Page(C.Blue & Western Blot w/MAb & PAbs)、N−末端配列決定、アミノ酸分析、LowryまたはBCAによる総タンパク質およびMALDI−TOFMSを用いた分析、そして残査LPS、核酸および界面活性剤のためには、それぞれ、KDOアッセイ、核酸アッセイおよびHPLCアッセイを用いた分析が挙げられる。
【0074】
(実施例8)
(炭疽に対する免疫を評価するための細胞媒介性免疫アッセイ)
プロテオソームベースのPAワクチンでの免疫後に誘導される細胞性免疫応答を、種々の方法を用いて研究する。例えば、T細胞由来のサイトカインを、マウスの脾臓および/またはリンパ節から単離された、PA再刺激した精製T細胞または濃縮T細胞において評価する。1型(例えば、IFN−γ)サイトカインおよび2型(例えば、IL−4およびIL−5)サイトカインを、ELISA、ELISPOTを含む1つ以上の方法によって決定し、そして細胞内サイトカインを、フローサイトメトリーによって決定した。PBMC由来のPA再刺激したPBMC T細胞の増殖を使用して、ウサギサイトカインに特異的な試薬の欠如に起因するウサギにおけるCMI応答を評価する。Tリンパ球増殖アッセイを使用して、種々の動物モデルにおいて、クローン性増殖に対する免疫の効果および記憶リンパ球の存在を測定する。動物を犠牲にした後、縦隔リンパ節および頚リンパ節を、標準的な技術を用いて外科的に取り出し、上記リンパ球を単離し、培養して、そしてその単離細胞にPAを添加する。増殖を、H3−チミジンの取り込みによって測定する。偽ワクチンで免疫した動物由来の細胞を、ネガティブコントロールとして使用する。アッセイ結果を、粘膜免疫に関与し、そして炭疽攻撃研究において決定されるように免疫の効力に関連する、リンパ節におけるT細胞分化に対する免疫の効果を決定するために使用する。
【0075】
上述から、本発明の具体的な実施形態が、本明細書中で例示の目的のために記載されるが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変がなされ得ることが理解される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除いて限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、Protollin(2.5μg、1μgまたは0.25μg)を含むかもしくは含まないかで、50μg、20μgまたは5μgのF1−Vを用いて鼻内に2回免疫したマウス、またはミョウバン(Alhydrogel(登録商標))に吸着されたF1−Vを20μg用いて粘膜内に注射したマウスからの血清IgG力価を示す。上記マウスの半分を、一次免疫後35日目に、そして他の半分を55日目に安楽死させた。力価を、特異的抗体濃度(血清IgGに対してμg/ml;肺のIgAおよびIgGに対してng/ml)の幾何平均値として表し、そして95%信頼限界を示す。
【図2】図2は、図1に記載されたように免疫したマウスからの肺IgG力価を示す。
【図3】図3は、図1に記載されたように免疫したマウスからの肺IgA力価を示す。
【図4A】図4Aおよび図4Bは、エアロゾル化Yersinia pesitisの致死用量を用いた攻撃に対するマウスの生存を示す。Protollinを含むか(0.25μg、1μgまたは2.5μg)もしくは含まないかで鼻内に、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着されて筋内に、20μgのF1−Vで2回免疫したマウスを、一次免疫後(A)35日目または(B)55日目に、Y.pesitisの170LD50に対する全身曝露によって攻撃した。全ての研究において、(Protollinのみを受けた)全てのコントロールマウスは、Y.pesitisに攻撃された場合に死亡し、使用した接種材料が致死的であったことを確認した。
【図4B】図4Aおよび図4Bは、エアロゾル化Yersinia pesitisの致死用量を用いた攻撃に対するマウスの生存を示す。Protollinを含むか(0.25μg、1μgまたは2.5μg)もしくは含まないかで鼻内に、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着されて筋内に、20μgのF1−Vで2回免疫したマウスを、一次免疫後(A)35日目または(B)55日目に、Y.pesitisの170LD50に対する全身曝露によって攻撃した。全ての研究において、(Protollinのみを受けた)全てのコントロールマウスは、Y.pesitisに攻撃された場合に死亡し、使用した接種材料が致死的であったことを確認した。
【図5A】図5Aおよび図5Bは、エアロゾル化Yersinia pesitisの致死用量を用いた攻撃に対するマウスの生存を示す。1μgのProtollinを含むかもしくは含まないかで鼻内に、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着されて筋内に、50μgのF1−Vで2回免疫したマウスを、(A)一次免疫後55日目に、Y.pesitisの255LD50に対する全身曝露によって攻撃した;(B)は、170致死用量のエアロゾル化Y.pesitisで一次免疫後、35日目および55日目(異なる群のマウス)に攻撃したマウスの生存を示す。マウスを、Protollinを含むか(0.25μg、1μgまたは2.5μg)もしくは含まないかで、鼻内に、5μgのF1−Vで2回免疫した。全てのコントロールマウス(Protollinのみを受けたマウス)は、Y.pesitisで攻撃された場合に死亡し、使用した接種材料が致死的であったことを確認した。
【図5B】図5Aおよび図5Bは、エアロゾル化Yersinia pesitisの致死用量を用いた攻撃に対するマウスの生存を示す。1μgのProtollinを含むかもしくは含まないかで鼻内に、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着されて筋内に、50μgのF1−Vで2回免疫したマウスを、(A)一次免疫後55日目に、Y.pesitisの255LD50に対する全身曝露によって攻撃した;(B)は、170致死用量のエアロゾル化Y.pesitisで一次免疫後、35日目および55日目(異なる群のマウス)に攻撃したマウスの生存を示す。マウスを、Protollinを含むか(0.25μg、1μgまたは2.5μg)もしくは含まないかで、鼻内に、5μgのF1−Vで2回免疫した。全てのコントロールマウス(Protollinのみを受けたマウス)は、Y.pesitisで攻撃された場合に死亡し、使用した接種材料が致死的であったことを確認した。
【図6】図6は、抗原FI−Vを用いてインビボで刺激した脾臓細胞から放出された、IFN−γ、TNF−αおよびIL−5の量を示す。脾臓細胞を、免疫後35日目に、1μgのProtollinを含むかもしくは含まないかで、50μgのF1−Vで鼻内に免疫したマウス、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着した20μgのF1−Vを筋内に注射したマウスから収集した。
【図7A】図7Aおよび図7Bは、Protollinを含むか(1μg)または含まないで混合した、Bacillus anthracis由来の5μgまたは25μgの組み換え防御抗原(rPA)で鼻内に免疫した(0日目および14日目)マウスにおける、血清IgGレベルおよび肺IgAレベルを示す。
【図7B】図7Aおよび図7Bは、Protollinを含むか(1μg)または含まないで混合した、Bacillus anthracis由来の5μgまたは25μgの組み換え防御抗原(rPA)で鼻内に免疫した(0日目および14日目)マウスにおける、血清IgGレベルおよび肺IgAレベルを示す。
【図8A】図8Aおよび図8Bは、Protollinと混合したrPAで免疫したマウス由来の血清洗浄流体および肺洗浄流体を用いた、炭疽中和アッセイの結果を示す。
【図8B】図8Aおよび図8Bは、Protollinと混合したrPAで免疫したマウス由来の血清洗浄流体および肺洗浄流体を用いた、炭疽中和アッセイの結果を示す。
【図9】図9は、リポソーム(鼻内(i.n.))、Protollin(鼻内)、またはAlhydrpgel(登録商標)(腹腔内(i.p.))と混合したBordetella pertusis由来の15μgの組み換え糸状赤血球凝集素(rFHA)で免疫した(1日目、21日目および31日目)マウスにおける、血清IgGを示す。コントロールとして、マウスを、QuadracelTMで腹腔内に(ポジティブ)、そして賦形剤PBS単独で鼻内に(ネガティブ)免疫した。QuadracelTM(Aventis Pasteur Ltd.)は、抗原のなかでもとりわけ、Bordetella pertusis FHAを含有するワクチンである。力価を、最後の免疫後7日目(38日目)に収集した血清における抗rFHAレベルを測定することによって、決定した(1日目のマウスからの血清中に見出された(存在すれば)バックグラウンド力価レベル未満)。
【図10】図10は、図9について記載されたのと同じ組成物において処方されるBordetella pertusis由来の15μgの組み換え糸状赤血球凝集素(rFHA)で免疫した(1日目、21日目および31日目)マウスにおける、唾液IgAを示す。
【図11】図11は、図9について記載されたように免疫したマウス由来のプールした血清における、抗rFHA血清IgGサブクラス(IgG2aおよびIgGl)を示す。
【図12】図12は、最後の免疫後11日目(42日目)にエアロゾル化B.pertusisで攻撃した場合の、図9について記載されたように免疫したマウスの肺において見られる、Bordetella pertusisレベルを示す。肺のカウントを、エアロゾル攻撃後1日目、3日目、7日目および14日目に測定した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原に対して免疫応答を誘導するための方法であって、該方法は、抗原に対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、該免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有し、該抗原は、Bacillus anthracis、Chlamydia trachomatis、Staphylococcus aureus、Clostridium perfringensまたはYersinia pestis由来であり、それにより、該抗原に対して免疫応答が誘導される、方法。
【請求項2】
微生物感染を処置または予防するための方法であって、該方法は、微生物感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、該免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有し、該抗原は、Bacillus anthracis、Chlamydia trachomatis、Staphylococcus aureus、Clostridium perfringensまたはYersinia pestis由来であり、それにより、微生物感染が処置または予防される、方法。
【請求項4】
前記抗原は、組み換え抗原である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記抗原は、Bacillus anthracis由来の防御抗原である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記抗原は、Yersinia pestis由来のF1抗原もしくはV抗原、またはそれらの組み合わせである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記F1抗原およびV抗原は、F1−V抗原融合タンパク質である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫原性組成物は、複数の異なる抗原を含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の抗原は、ウイルス、微生物、寄生生物、トキシンまたはそれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫原性組成物は、粘膜、経腸、非経口、経皮、経粘膜、鼻および吸入からなる群より選択される経路によって投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫原性組成物は、鼻に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
プロテオソームタンパク質の百分率としての前記リポサッカリド最終重量含量は、約1%〜約500%の範囲にある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記プロテオソームおよびリポサッカリドは、同じ微生物から得られる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記プロテオソームおよびリポサッカリドは、異なる微生物由来である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記リポサッカリドは、グラム陰性細菌由来である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記リポサッカリドは、Shigella種、Chlamydia種、Yersinia種、Pseudomonas種、Plesiomonas種、Escherichia種、Salmonella種およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるグラム陰性細菌由来である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記プロテオソームは、Neisseria種由来である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
前記プロテオソームは、Neisseria meningitides由来であり、そして前記リポサッカリドは、Shigella flexneri由来である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫原性組成物のプロテオソーム:抗原の比は、約5:1〜約1:500の範囲にある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項20】
前記免疫原性組成物のプロテオソーム:抗原の比は、少なくとも1:2である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫原性組成物のプロテオソーム:抗原の比は、少なくとも1:10である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫原性組成物は、防御免疫応答を誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫原性組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤をさらに含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項24】
プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有する組成物であって、該抗原は、F1−V抗原融合タンパク質である、組成物。
【請求項25】
プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有する組成物であって、該抗原は、Bacillus anthracis由来の防御抗原である、組成物。
【請求項26】
前記組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤をさらに含有する、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項27】
プロテオソームタンパク質の百分率としての前記リポサッカリド最終重量含量は、約1%〜約500%の範囲にある、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項28】
前記プロテオソームおよびリポサッカリドは、同じ微生物から得られる、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項29】
前記プロテオソームおよびリポサッカリドは、異なる微生物由来である、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項30】
前記プロテオソームは、Neisseria meningitides由来であり、そして前記リポサッカリドは、Shigella flexneri由来である、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項31】
前記免疫原性組成物のプロテオソーム:抗原の比は、約5:1〜約1:500の範囲にある、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項32】
前記免疫原性組成物のプロテオソーム:抗原の比は、少なくとも1:2である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記免疫原性組成物のプロテオソーム:抗原の比は、少なくとも1:10である、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
抗原に対して免疫応答を誘導するための方法であって、該方法は、抗原に対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、該免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有し、該抗原は、ポックスウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス、フィロウイルスまたはピコルナウイルス由来であり、それにより、該抗原に対して免疫応答が誘導される、方法。
【請求項35】
微生物感染を処置または予防するための方法であって、該方法は、微生物感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、該免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有し、該抗原は、ポックスウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス、フィロウイルスまたはピコルナウイルス由来であり、それにより、微生物感染が処置または予防される、方法。
【請求項36】
前記抗原は、痘瘡ウイルス由来である、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記抗原は、ワクシニアウイルス由来である、請求項34または35に記載の方法。
【請求項38】
抗原に対して免疫応答を誘導するための方法であって、該方法は、抗原に対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、該免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有し、該抗原は、トキシンであり、それにより、該トキシンに対して免疫応答が誘導される、方法。
【請求項39】
前記抗原は、ボツリヌストキシンまたはそのフラグメントである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記抗原は、リシントキシンまたはそのフラグメントである、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記抗原は、StaphylococcusエンテロトキシンBまたはそのフラグメントである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
抗原に対して免疫応答を誘導するための方法であって、該方法は、抗原に対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、該免疫原性組成物は、アジュバントおよび抗原を含有し、該アジュバントは、プロテオソームおよびリポサッカリドを含み、そして該アジュバント:抗原の比は、約1:5〜約1:500の範囲にあり、それにより、該抗原に対して免疫応答が誘導される、方法。
【請求項43】
微生物感染を処置または予防するための方法であって、該方法は、微生物感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、該免疫原性組成物は、アジュバントおよび抗原を含有し、該アジュバントは、プロテオソームおよびリポサッカリドを含み、そして該アジュバント:抗原の比は、約1:5〜約1:500の範囲にあり、それにより、微生物感染が処置または予防される、方法。
【請求項44】
前記抗原は、微生物抗原、ウイルス抗原またはトキシン抗原のうちの少なくとも1つである、請求項42または43に記載の方法。
【請求項1】
抗原に対して免疫応答を誘導するための方法であって、該方法は、抗原に対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、該免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有し、該抗原は、Bacillus anthracis、Chlamydia trachomatis、Staphylococcus aureus、Clostridium perfringensまたはYersinia pestis由来であり、それにより、該抗原に対して免疫応答が誘導される、方法。
【請求項2】
微生物感染を処置または予防するための方法であって、該方法は、微生物感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、該免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有し、該抗原は、Bacillus anthracis、Chlamydia trachomatis、Staphylococcus aureus、Clostridium perfringensまたはYersinia pestis由来であり、それにより、微生物感染が処置または予防される、方法。
【請求項4】
前記抗原は、組み換え抗原である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記抗原は、Bacillus anthracis由来の防御抗原である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記抗原は、Yersinia pestis由来のF1抗原もしくはV抗原、またはそれらの組み合わせである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記F1抗原およびV抗原は、F1−V抗原融合タンパク質である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫原性組成物は、複数の異なる抗原を含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の抗原は、ウイルス、微生物、寄生生物、トキシンまたはそれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫原性組成物は、粘膜、経腸、非経口、経皮、経粘膜、鼻および吸入からなる群より選択される経路によって投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫原性組成物は、鼻に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
プロテオソームタンパク質の百分率としての前記リポサッカリド最終重量含量は、約1%〜約500%の範囲にある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記プロテオソームおよびリポサッカリドは、同じ微生物から得られる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記プロテオソームおよびリポサッカリドは、異なる微生物由来である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記リポサッカリドは、グラム陰性細菌由来である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記リポサッカリドは、Shigella種、Chlamydia種、Yersinia種、Pseudomonas種、Plesiomonas種、Escherichia種、Salmonella種およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるグラム陰性細菌由来である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記プロテオソームは、Neisseria種由来である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
前記プロテオソームは、Neisseria meningitides由来であり、そして前記リポサッカリドは、Shigella flexneri由来である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫原性組成物のプロテオソーム:抗原の比は、約5:1〜約1:500の範囲にある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項20】
前記免疫原性組成物のプロテオソーム:抗原の比は、少なくとも1:2である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫原性組成物のプロテオソーム:抗原の比は、少なくとも1:10である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫原性組成物は、防御免疫応答を誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫原性組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤をさらに含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項24】
プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有する組成物であって、該抗原は、F1−V抗原融合タンパク質である、組成物。
【請求項25】
プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有する組成物であって、該抗原は、Bacillus anthracis由来の防御抗原である、組成物。
【請求項26】
前記組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤をさらに含有する、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項27】
プロテオソームタンパク質の百分率としての前記リポサッカリド最終重量含量は、約1%〜約500%の範囲にある、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項28】
前記プロテオソームおよびリポサッカリドは、同じ微生物から得られる、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項29】
前記プロテオソームおよびリポサッカリドは、異なる微生物由来である、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項30】
前記プロテオソームは、Neisseria meningitides由来であり、そして前記リポサッカリドは、Shigella flexneri由来である、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項31】
前記免疫原性組成物のプロテオソーム:抗原の比は、約5:1〜約1:500の範囲にある、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項32】
前記免疫原性組成物のプロテオソーム:抗原の比は、少なくとも1:2である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記免疫原性組成物のプロテオソーム:抗原の比は、少なくとも1:10である、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
抗原に対して免疫応答を誘導するための方法であって、該方法は、抗原に対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、該免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有し、該抗原は、ポックスウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス、フィロウイルスまたはピコルナウイルス由来であり、それにより、該抗原に対して免疫応答が誘導される、方法。
【請求項35】
微生物感染を処置または予防するための方法であって、該方法は、微生物感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、該免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有し、該抗原は、ポックスウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス、フィロウイルスまたはピコルナウイルス由来であり、それにより、微生物感染が処置または予防される、方法。
【請求項36】
前記抗原は、痘瘡ウイルス由来である、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記抗原は、ワクシニアウイルス由来である、請求項34または35に記載の方法。
【請求項38】
抗原に対して免疫応答を誘導するための方法であって、該方法は、抗原に対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、該免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含有し、該抗原は、トキシンであり、それにより、該トキシンに対して免疫応答が誘導される、方法。
【請求項39】
前記抗原は、ボツリヌストキシンまたはそのフラグメントである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記抗原は、リシントキシンまたはそのフラグメントである、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記抗原は、StaphylococcusエンテロトキシンBまたはそのフラグメントである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
抗原に対して免疫応答を誘導するための方法であって、該方法は、抗原に対する免疫応答の誘導を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、該免疫原性組成物は、アジュバントおよび抗原を含有し、該アジュバントは、プロテオソームおよびリポサッカリドを含み、そして該アジュバント:抗原の比は、約1:5〜約1:500の範囲にあり、それにより、該抗原に対して免疫応答が誘導される、方法。
【請求項43】
微生物感染を処置または予防するための方法であって、該方法は、微生物感染の処置または予防を必要としている被験体に、治療有効量の免疫原性組成物を投与する工程を包含し、該免疫原性組成物は、アジュバントおよび抗原を含有し、該アジュバントは、プロテオソームおよびリポサッカリドを含み、そして該アジュバント:抗原の比は、約1:5〜約1:500の範囲にあり、それにより、微生物感染が処置または予防される、方法。
【請求項44】
前記抗原は、微生物抗原、ウイルス抗原またはトキシン抗原のうちの少なくとも1つである、請求項42または43に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−525373(P2006−525373A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514314(P2006−514314)
【出願日】平成16年5月5日(2004.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/014236
【国際公開番号】WO2004/098636
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(502296914)アイディー バイオメディカル コーポレイション オブ ケベック (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月5日(2004.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/014236
【国際公開番号】WO2004/098636
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(502296914)アイディー バイオメディカル コーポレイション オブ ケベック (9)
【Fターム(参考)】
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