説明

プロテオームにおける酸化修飾ペプチド配列の同定

本発明は、酸化修飾を受けるタンパク質標的および酸化誘導修飾を有する特定のペプチド配列を同定することに関する。本方法はさらに、タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる条件下にタンパク質を暴露し、前記タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる条件への暴露後の前記タンパク質の酸化状態を決定することに関する。本方法はさらに、前記条件への暴露の前および後のタンパク質の酸化状態を比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の補助
この発明は、アメリカ国立衛生研究所からの認可番号HL61795、HL58976、HL55993およびHV28178における政府の補助によって、一部分成り立っている。合衆国政府は、この発明について一定の権利を有し得る。
発明の分野
この発明は、酸化修飾を受けるタンパク質標的の同定に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は、生物学的形状および機能に関与する。一部転写中における遺伝子間での様々な構造カセットのスプライシングおよび交換により、遺伝子の6から7倍もの異なるタンパク質がヒトに存在すると推定されている。タンパク質は、これらをコードする遺伝子よりも豊富であるばかりか、一次、二次、三次、四次構造要素のために、構造的にもはるかに複雑である。加えて、タンパク質は、大いに変化に富む構造に大いに依存する生化学的機能を有している。さらに、成熟したタンパク質はまた、タンパク質分解、スルフヒドリル酸化およびジスルフィド結合形成、リン酸化、グリコシル化、S−ニトロソ化、脂肪酸アシル化および酸化を含む、多くの翻訳後修飾に供される。これらの生化学的修飾は、しばしば、これらの未修飾の親タンパク質とは異なる機能を有する生成物を生成し、これらの修飾(例えば酸化など)の多くは、遺伝的決定因子の環境的な調節の結果を反映する。タンパク質構造の転写後の変化は、プロテオームを含む全てのタンパク質の一次配列とともに、ゲノムによってコードされた一次タンパク質配列にさらに複雑さを与える。
【0003】
プロテオームの研究であるプロテオミクスは、生物系における全てのタンパク質の配列、修飾、および機能として定義されている。プロテオミクスはその揺籃期にあるが、それがヒトの生物学および疾病を理解するために不可欠であることが判明するであろう。プロテオミクスは、様々な疾病または疾患を有する個体間で、我々がどのように疾病を診断し、リスクを評価し、予後を決定し、治療戦略を定めるかについて革命をもたらす可能性を有している。血液試料の分析は、対象の疾病についてのリスクや、疾病または疾患の予後について、特有の予後の情報を提供することが期待されている。加えて、プロテオームを理解することは、タンパク質の機能に対する我々の理解を向上させ、変更された機能を修正したり、特定のタンパク質や一組のタンパク質の基本的な機能を強化するために治療戦略を調整したりすることを可能とする。
【発明の概要】
【0004】
細胞中のタンパク質ジスルフィドの大部分は、タンパク質機能の動的な調整決定因子というよりは、むしろ重要な不活性な構造的決定因子であると考えられている。本発明者らは、いくつかのタンパク質中のジスルフィドがまた、細胞の酸化還元状態によって調節され、機能的な結果をもたらすことを見出した。本発明の一部は、酸化修飾を受けるタンパク質標的および、これらの酸化修飾された側鎖を有する特定のペプチド配列を同定することを対象とする。特定の機構や理論によって拘束されることを意図するものではないが、G6PDおよびその酵素生成物、NADPHが、(a)細胞のチオール酸化還元状態を調節し、(b)通常の酸化シグナル伝達および細胞機能に不可欠であり、(c)代償された酸化ストレスの状態を維持するために、増加した活性酸素種(ROS)の発生に適応して反応することが作業仮説である。この仮説は、増加するROSの流れが重要なタンパク質チオールの異なるパターンの酸化およびニトロソ化修飾を引き起こし、これらのパターンが、細胞中の酸化シグナル伝達、代償性の酸化ストレスおよび非代償性の酸化ストレスの状態を判別する分子署名として働き、G6PDおよびNADPHが部分的にこれらの状態間の移行を制御するという概念を包含する。潜在的なコンセンサス配列も、そのチオールをチオラート(S−)酸化状態に維持する傾向および、過酸化水素とSN機構によって反応するその能力によって、チオール酸化(例えば、過酸化水素によるもの)を促進しうる。アクチンのカルボキシ末端の最後の4個のアミノ酸(RKCF)は、そのような配列の例を含む。
【0005】
本発明の1つの局面によれば、アミノ酸が酸化誘導修飾を受けた、酸化修飾タンパク質を同定する方法が提供される。前記方法は、前記タンパク質の酸化状態を決定し、前記タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる条件下に前記タンパク質を暴露し、前記タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる条件への暴露後の前記タンパク質の酸化状態を決定することを含む。前記タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる条件への暴露の前後の前記タンパク質の酸化状態が比較される。タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる条件への暴露後のタンパク質の酸化状態が、タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる条件への暴露前のタンパク質の酸化状態より大きい場合、該タンパク質を、酸化修飾タンパク質と同定する。
【0006】
前記タンパク質中のアミノ酸は、システイン、メチオニン、アルギニン、トリプトファンでありうる。酸化修飾タンパク質中の酸化修飾ペプチドは、質量分析により同定することができる。ある態様では、酸化状態は、チオールプールの酸化状態を含む。チオールプールは、試料中のタンパク質近接(vicinal)ジチオール(Pr(SH))プール、タンパク質グルタチオン化(PrSSG)プール、またはタンパク質間ジスルフィドプール(PrSSPr’)でありうる。ある態様では、酸化状態は、S−ニトロシル化のレベルまたはシステイン酸化のレベルを含む。
ある態様では、酸化誘導修飾は、疾病または疾患において発生する修飾を含む。ある態様では、酸化誘導修飾を生じる条件は、過酸化水素、超酸化物、ペルオキシ亜硝酸、過塩素酸塩を含む。
【0007】
本発明の別の局面によれば、対象における酸化ストレスによって特徴づけられるか、もしくは引き起こされる疾患を診断する、または同疾患の発症のリスクを予測する方法が提供される。前記方法は、タンパク質における酸化状態を決定し、前記タンパク質の酸化状態を対照と比較することを含む。対照と比較した酸化状態の増加は、前記対象が酸化ストレスによって特徴づけられるもしくは引き起こされる疾患を有するか、同疾患の発症のリスクを有することを示す。疾患は、炎症性疾患、自己免疫疾患、心臓血管疾患、インスリン非依存性糖尿病(II型糖尿病)でありうる。
【0008】
炎症性疾患の例は、アレルギー性鼻炎、強直性脊椎炎、関節炎、喘息、ベーチェット症候群、滑液包炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、チャーグ・ストラウス症候群、皮膚炎、痛風、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、炎症性腸疾患(クローン病または潰瘍性大腸炎)、炎症性ニューロパシー、川崎病、筋炎、神経炎、心膜炎、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛、前立腺炎、乾癬、放射線傷害、サルコイドーシス、ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、高安動脈炎、側頭動脈炎、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、血管炎およびウェゲナー肉芽腫症を含むがこれらに限定されない。
【0009】
自己免疫疾患の例は、アジソン病、慢性甲状腺炎、皮膚筋炎、グレイヴズ病、橋本甲状腺炎、過敏性肺炎、インスリン依存性糖尿病(I型糖尿病)、多発性硬化症、重症筋無力症、臓器移植、悪性貧血、ライター症候群、リウマチ性関節炎、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、甲状腺炎、およびじんましんを含むがこれらに限定されない。
【0010】
心臓血管疾患の例は、冠動脈疾患、虚血性心筋症、心筋虚血、虚血性または心筋虚血後の再かん流、糖尿病性網膜症、糖尿病性ネフロパシー、腎線維症、高血圧、アテローム性動脈硬化、動脈硬化、動脈硬化性プラーク、動脈硬化性プラーク破綻、脳血管障害(卒中)、一過性脳虚血発作(TIA)、末梢動脈障害、動脈閉塞性疾患、血管動脈瘤(vascular aneurysm)、虚血、虚血性潰瘍、心臓弁狭窄(heart valve stenosis)、心臓弁逆流(heart valve regurgitation)および間欠性跛行を含むがこれらに限定されない。
【0011】
ある態様では、タンパク質は、対象からの試料中にある。試料は、血液、血清、血漿、尿、痰(sputum)、唾液(saliva)、糞便、脳脊髄液、腹水、細胞、組織または分泌物でありうる。
本発明のさらに別の局面によれば、タンパク質の酸化状態を調節する作用物質(agent)のスクリーニングの方法が提供される。前記方法は、タンパク質の酸化状態を決定し、前記タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる作用物質または条件に前記タンパク質を暴露し、前記タンパク質の作用物質への暴露後の前記タンパク質の酸化状態を決定することを含む。
【0012】
前記タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる条件への暴露の前後の前記タンパク質の酸化状態が比較される。タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる条件への暴露後のタンパク質の酸化状態が、タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる条件への暴露前のタンパク質の酸化状態より大きい場合、その作用物質または条件は、オキシダントまたはプロオキシダントである。タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる条件への暴露後のタンパク質の酸化状態が、タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる条件への暴露前のタンパク質の酸化状態より小さい場合、その作用物質または条件は、アンチオキシダントである。
本発明のこれらまたは他の局面および様々な利点および有用性は、本発明の詳細な説明を参照することでより明らかになる。本発明の各局面は、理解されるように、様々な態様を包含しうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1a−c】図1aは、CCCPで4時間処理後のChang肝細胞中のタンパク質ジスルフィドの蛍光像である。図1bは、BAECにおける、ジスルフィドを含むタンパク質(塗りつぶされたバー)およびDHE蛍光によって測定された超酸化物の生成(空白バー)に対する種々のミトコンドリア阻害剤(a)対照、b)ロテノン、c)ミキソチアゾール、d)TTFA、e)ATM、およびf)CCCP)の効果を示すヒストグラムである。タンパク質ジスルフィド染色は、蛍光顕微鏡法およびImageJソフトウェアで半定量化した。図1cは、タンパク質ジスルフィド含量に対する、カタラーゼの阻害剤(3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−AT)およびGPxの阻害剤(ベータ−メルカプトコハク酸、MS)、ならびに、GPx模倣物、エブセレンの効果を示すヒストグラムである。
【図1d−f】図1dは、タンパク質ジスルフィドの形成における抗酸化酵素の過剰発現の効果を示す免疫蛍光像である。細胞を、下記の遺伝子を含む25MOIのアデノウィルスに感染させる:MnSOD(マンガンスーパーオキシドジスムターゼ、CAT(野生型カタラーゼ)、MitoCAT(ミトコンドリアを標的にしたカタラーゼ)。図1eは、機能的なミトコンドリアを有していないRho細胞(27)中のタンパク質ジスルフィドの形成の減少を示す蛍光像である。図1fは、ビオチン標識されたジスルフィド含有タンパク質のブロットである。タンパク質ジスルフィドは、MTSEA−ビオチンまたはBIAMのいずれかで標識され、その後、ストレプトアビジン結合HRPによって検出された。レーン1:対照、レーン2:CCCP、レーン3:ATM。細胞は、ミトコンドリア阻害剤で8時間処理した。
【図1g−j】図1gは、ジスルフィド含有アクチンおよびCD98、ならびに総アクチンおよびCD98の免疫ブロットである。図1hは、ミトコンドリア阻害剤処理された細胞におけるCD98のヘテロ2量体形成を示すブロットである。図1iは、ミトコンドリア阻害剤処理後のHPAEC中の多量体vWFの蛍光ブロットである。レーン1:対照、レーン2:CCCP、レーン3:ATM、レーン4:TTFA、レーン5:DHEA、レーン6:BSO。図1jは、非還元ゲル(nonreducing gel)上のエンドグリンの免疫ブロットである。使用した抗体は、マウスモノクローナル抗P4A4抗体またはウサギポリクローナル抗H300抗体であった。
【図1k−l】図1kは、ミトコンドリア阻害剤での処理後のHPAEC中のエンドグリン、PECAMおよびvWFの免疫蛍光像である。ゴルジは、エンドグリン実験において、Alexa 350標識WGAで染色し、一方、核は、PECAMおよびvWF実験においてDAPIで染色した。図1lは、ミトコンドリア阻害剤、ツニカマイシン、またはタプシガルギンによるGRP78およびGRP94タンパク質の誘導を示すブロットである。
【0014】
【図2】図2は、酸化ストレスに対する細胞のタンパク質ジスルフィドの反応を示す。aは、BAEC中のタンパク質ジスルフィドに対する過酸化水素の効果の蛍光像である。細胞を、様々な濃度の過酸化水素(0〜8mM)で30分間処理した。bは、BAEC中のタンパク質ジスルフィドに対するグルコース−6−リン酸脱水素酵素阻害(グルタチオン還元酵素のためのNADPHの生成を阻害し、それによってGPx活性を阻害して細胞の酸化ストレスを増加させるため)の効果を示す免疫蛍光像である。細胞を、0.1mM DHEAで24時間処理した。
【0015】
【図3】図3は、タンパク質ジスルフィドの蛍光のヒストグラムである。タンパク質ジスルフィドを染色する前に、細胞を種々のROS生成酵素阻害剤で8時間処理した。a:対照、b:一酸化窒素合成酵素のためのL−NAME、c:モノアミン酸化酵素のためのニアラミド、d:シクロオキシゲナーゼのためのインドメタシン、e:キサンチン酸化酵素のためのアロプリノール、f:VDACイオンチャネルのためのDIDS、g:シトクロムp450のための1−アミノベンゾトリアゾール、およびh:NADPH酸化酵素のためのアポシニン。N=3実験は、それぞれ3反復で行った。
【0016】
【図4】図4は、ジスルフィド含有タンパク質に対する抗酸化酵素の効果を示したタンパク質ジスルフィドの蛍光のヒストグラムである。測定前に、MnSOD、CATまたはMitoCAT遺伝子を含む25MOIアデノウィルスで細胞を処理し、48時間培養した。a:MitoCATは、タンパク質ジスルフィドシグナルを著しく減少させたが、MnSODまたはCATは、そうしなかった。b:MitoCAT過剰発現細胞をタンパク質ジスルフィド染色前に8時間CCCPで処理し、CCCPで処理されていない対照MitoCAT過剰発現細胞と比較した。
【0017】
【図5a−d】図5は、種々の成長因子受容体に対するミトコンドリア阻害剤の効果を示す。細胞を、分析前に8時間ミトコンドリア阻害剤で処理した。図5aは、Chang肝細胞によるAlexa488−標識EFG、またはHPAECによるAcLDLの取り込みの免疫蛍光像である。核をDAPIで対比染色した。図5bは、CCCPでの処理後のHPAECにおける、AcLDL取り込み(黒丸)およびミトコンドリア膜電位(白丸)の時間依存性減少を示したグラフである。ミトコンドリアの電位は、590nmおよび536nmにおける発光の比で表したJC−1染料の蛍光によって測定した。細胞表面の受容体の自己リン酸化を測定するため、細胞を、溶解および免疫ブロットによる分析前に、100ng/ml EFG(図5c)または25ng/ml IGF−1(図5d)で5分間処理した。
【図5e−f】図5は、種々の成長因子受容体に対するミトコンドリア阻害剤の効果を示す。図5eでは、細胞表面の受容体の自己リン酸化を測定するため、細胞を、溶解および免疫ブロットによる分析前に、25ng/ml bEFGで5分間処理した。図5fは、ミトコンドリアの阻害後に細胞表面において、IGF−1Rの発現の著しい低下があったが、EGFRの発現の著しい低下はなかったことを示した図である。
【0018】
【図6】図6は、種々の受容体および還元酵素の発現に対するミトコンドリア阻害剤の影響を示す。細胞を8時間ミトコンドリア阻害剤で処理した。a:Chang肝細胞、b:HPAEC。
【図7】図7は、HPAECによるトランスフェリンの取り込みに対するミトコンドリア阻害剤の影響を示すヒストグラムである。細胞を8時間ミトコンドリア阻害剤で処理した。Alexa488標識トランスフェリンで標識した後、細胞をトリプシン処理し、フローサイトメトリーで分析した。N=3実験は、それぞれ3反復で行った。
【0019】
【図8a】図8は、ジスルフィドの直接還元による細胞表面受容体機能の変化を示す。ほぼコンフルエントな細胞を、受容体分析前に、増殖培地中で30分間DTTで処理した。図8aは、0.5mMDTT処理後、HPAECによるAcLDLおよびトランスフェリンの取り込み、ならびにChang肝細胞によるEGF取り込みのフローサイトメトリーにより定量を示した図である。
【図8b−d】図8は、ジスルフィドの直接還元による細胞表面受容体機能の変化を示す。ほぼコンフルエントな細胞を、受容体分析前に、増殖培地中で30分間、種々の濃度のDTTで処理した。図8b−dは、DTT処理後のChang肝細胞におけるEGFR(図8b)、IGF−1β(図8c)およびFGFR1(図8d)のリガンド誘導リン酸化反応を示した図である。
【0020】
【図9a】図9は、ジスルフィドプロテオームの細胞密度依存性を示す。Chang肝細胞またはHPAECを1,000細胞/cmまたは10,000細胞/cmでそれぞれ播種し、2日間培養した。図9aは、低密度のおよびコンフルエントなHPAECにおける、エンドグリンおよびvWFのジスルフィド染色および免疫蛍光の比較を示す。細胞は、エンドグリン実験ではWGAで、vWF実験ではDAPIで対比染色した。
【図9b−c】図9は、ジスルフィドプロテオームの細胞密度依存性を示す。Chang肝細胞またはHPAECを1,000細胞/cmまたは10,000細胞/cmでそれぞれ播種し、2日間培養した。図9bは、GSH染色、JC−1染料の蛍光によって測定されたミトコンドリア膜電位およびMitoSox染色によって測定される超酸化物の生成が示すとおり、低密度のChang肝細胞は、コンフルエントな細胞よりも、より還元的な状態であることを示す。核はHoechst33342によって対比染色した。図9cは、Chang肝細胞へのEGFの結合およびHPAECによるAcLDL取り込みを示す。核はDAPIによって対比染色した。
【図9d−e】図9は、ジスルフィドプロテオームの細胞密度依存性を示す。Chang肝細胞またはHPAECを1,000細胞/cmまたは10,000細胞/cmでそれぞれ播種し、2日間培養した。図9dでは、EGF培養後のEGFRのEGFリン酸化反応を図5のように検出した。図9eは、IGF−1との培養後のChang肝細胞におけるIGF−1βリン酸化反応を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
オキシダント、例えば過酸化水素(H)は、多様なヒト疾病の誘導に関与している。オキシダントは、生体分子に損傷を与えることにより、および細胞の代謝を変更することにより、疾病過程に寄与する。タンパク質は、酸化修飾および/または損傷の標的の1つである。どのように酸化ストレスが疾病を起こすかを理解するために、どのタンパク質が酸化ストレスにより影響を受けるか、どのようにこれらが修飾されるか、および修飾の機能的な影響を見出すことが重要である。
【0022】
本発明は、一部において、酸化修飾を受ける1種または2種以上のタンパク質標的(1種または2種以上の酸化修飾されたタンパク質)および酸化誘導修飾を有する特定のペプチド配列を同定することに関する。本発明は、タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる条件への暴露の前および後の前記タンパク質の酸化状態を決定し、これらの酸化状態を比較することを含む。全てのペプチド側鎖は、酸化誘導修飾について試験されうる。ある態様では、チオール基を有する側鎖が酸化誘導修飾について試験される。酸化誘導修飾は、可逆的または不可逆的でありうる。修飾された配列は、DNA配列から翻訳後の酸化修飾が予測できないため、基礎となるコードされた配列から独立している。
「酸化修飾タンパク質」は、酸化にさらされたまたは酸化を受けたタンパク質である。酸化は、分子(例えば、タンパク質)または分子中の原子による電子の喪失をいう。酸化は、分子(例えば、タンパク質)または原子の電荷(酸化数)を増加させる。
【0023】
タンパク質の「酸化誘導修飾」とは、タンパク質またはタンパク質中のアミノ酸の電荷(酸化数)の増加を起こす変化をいう。したがって、アミノ酸の酸化状態の変化は、タンパク質またはアミノ酸の電荷の変化として反映される。アミノ酸による1または2以上の電子の喪失(典型的にはオキシダントによって誘導される)は、タンパク質またはアミノ酸の酸化状態の増加をもたらす。アミノ酸の1または2以上の電子の獲得(典型的には還元物質によって誘導される)は、タンパク質またはアミノ酸の酸化状態の減少をもたらす。
【0024】
オキシダントは、別の分子(例えば、タンパク質中の1または2以上のアミノ酸)を酸化する作用物質である。典型的には、オキシダントは、1または2以上の電子を受容する分子である。オキシダントの例は、過酸化水素、超酸化物、ペルオキシ亜硝酸、および過塩素酸塩を含むがこれらに限定されない。オキシダントの例はまた、一酸化窒素(NO)、NO関連種、酸素関連種、または金属イオン、あるいは、O濃度またはNO関連種の濃度の変化によって起こされる他の修飾を含む。用語「NO関連種」は、ここでは、NO(ここでxは1または2である)、NOおよびNOならびにこれらの有機誘導体(亜硝酸塩および硝酸塩を含む)を意味するものとして用いる。用語「酸素関連種」は、ここでは、Oおよび活性酸素種、例えば、超酸化物、過酸化水素または過酸化脂質を意味するものとして用いる。
【0025】
タンパク質の「酸化状態」は、タンパク質またはタンパク質中の1もしくは2以上のアミノ酸の酸化のレベルの度合いである。酸化修飾を受けうるアミノ酸の例は、システイン、メチオニン、アルギニンおよびトリプトファンを含むがこれらに限定されない。酸化のレベルは、アミノ酸、例えばシステインなどにおけるチオールプールを測定することにより決定される。システインは、酸化誘導修飾の影響をより受けやすく、ROSフラックスのレンジを反映した広範な酸化誘導体を生成する。
【0026】
ある態様では、酸化状態は、チオールプールの酸化状態を含む。チオールは、酸化還元緩衝剤、酸化還元シグナル伝達中間体、および酸化ストレスマーカーとしての役割を果たす。タンパク質チオールの酸化を支配する一連の酸化還元反応は、酸化を受けてチオラートアニオン、そしてその後、スルフェン酸、スルフィン酸、およびスルホン酸となるモノチオールタンパク質(PrSH)から始まる。最初の2つのステップは、可逆的酸化ステップであり、最後の2つは、少なくとも生理学的条件下では安定な、末端酸化生成物である。加えて、タンパク質モノチオールは、抗酸化チオール緩衝剤として役割を果たす低分子量チオール(例えば、グルタチオン)とチオール−ジスルフィド交換反応に関与することができる。これらは、活性窒素種、例えば、ペルオキシ亜硝酸などとの反応を通じて修飾を受けて、S−ニトロソタンパク質を生成することができ、また、これらは、タンパク質−タンパク質ジスルフィド交換反応を受けてタンパク質間の混合ジスルフィドを形成することができる。
【0027】
近接ジチオールは、タンパク質チオールの別の重要な下位群であり、主にタンパク質の第3次構造において立体的に近接しているため互いに化学的に反応可能である。近接ジチオールは、これらがタンパク質内の酸化ストレスの最も敏感な指標であるため、重要である。これらは、酸化を受ける最初の種であり、通常近接ジスルフィドになるが、時に混合ジスルフィドになる。
【0028】
チオールプールは、質量分析法によって測定することができる。質量分析法は、タンパク質およびペプチドの同定に重要な手段である。ESIまたはMALDI−MSを用いて、ペブチドをインタクトに気相にイオン化し、これらの質量を正確に測定することができる。この情報を基にして、タンパク質を、タンパク質質量マッピングまたはペプチド質量マッピングと呼ばれる手法を用いて容易に同定することができる。これらの手法においては、これらの測定された質量をタンパク質データーベース由来の予測値と比較する。さらなる配列情報を、タンデムMS実験において、個々のペプチドをフラグメント化することによっても得ることができる。加えて、2つの異なる試料間のタンパク質発現レベル(タンパク質プロファイリング)の大規模な変化を、定量的手法、例えば、二次元ゲル電気泳動(2D−GE)または質量分析測定と併用する安定同位体標識法等を用いて評価することができる。
【0029】
配列特異的タンパク質分解酵素または特定の化学的開裂剤が、その後質量が分析される標的タンパク質からペプチドのセットを得るのに用いられる。例えば、トリプシン酵素は、比較的豊富なアミノ酸のアルギニン(Arg)およびリジン(Lys)のC末端側のペプチドを開裂させる、よく用いられるタンパク質分解酵素である。したがって、トリプシン開裂は、多量の適度な大きさの500〜3000ダルトンのフラグメントをもたらし、標的タンパク質を同定する大きな可能性を提供する。タンパク質分解フラグメントの観察された質量は、配列データーベースに記載された全てのタンパク質の理論的な「in silico」消化物と比較する。次に、一致または「ヒット」を統計的に評価し、最高確率に従ってマークされる。
【0030】
この戦略は、調査されるデーターベース内でのタンパク質の配列の存在に基礎を置く。このようなデーターベースの質および内容は、有機体全体のゲノム配列決定の結果、継続的に改良され、得られる一致の尤度は、現在、相当に高い。完全な一致が容易に同定される上、試料に有意な相同性を示すタンパク質もまた、しばしば低い統計的有意性で同定される。特徴が不明確な試料種と相同性を有するタンパク質を同定するこの能力は、タンパク質構造および機能の研究においてタンパク質質量マッピングを価値のある手法とする。
【0031】
サーチプログラムへクエリーを提出すると、データーベース内の全てのタンパク質の理論的な消化が、研究者によって入力される条件に従って行われる。調節できる変数は、分類学的階級、消化条件、開裂失敗の許容数、タンパク質の等電点(pI)および質量範囲、あり得る翻訳後修飾(PTM)およびタンパク質質量測定許容範囲を含む。理論的なペプチドの質量のリストが、定義された条件に従ってデーターベース内のそれぞれのタンパク質について生成され、その後これらの値は、測定された質量と比較される。測定された各ペプチドは、特定された消化条件下で同じ質量を有するペプチドをもたらす候補のタンパク質のセットを生成する。これらのセットにおけるタンパク質は、その後、これらが実験データのセット全体とどれだけ厳密に一致するかに基づいて順位付けおよび得点付けされる。
【0032】
この同定方法は、合理的な精度でペプチドの質量を測定する質量分析の能力に依存しており、典型的な値はおおよそ5〜50ppmにわたる。実験的に測定された質量は、その後、最良の一致を特定するために、何十万ものタンパク質を含みうるデーターベースからの理論的に予測された全てのペプチド消化物と比較される。様々なデーターベースがウェブ上で利用でき、コンピューター検索プログラム、例えばProfound(ロックフェラー大学で開発)、ProteinProspector(カリフォルニア大学、サンフランシスコ)およびMascot(Matrix Science,Limited)等とともに利用することができる。この手法のひとつの明確な限界は、異なるアミノ酸配列を有する2つのペプチドが、それにもかかわらず全く同じ質量を有しうることである。実際には、5〜8種の異なるトリプシンペプチドの一致が、50kDaの平均分子量のタンパク質を明確に同定するのに通常十分であるが、より多数の一致が、より大きな分子量のタンパク質を同定するのに必要とされうる。ある態様では、消化されていないタンパク質の質量分析も、タンパク質同定に用いることができる。
【0033】
より特異的なデーターベース検索方法は、MS/MSデータ由来の部分配列情報の使用を含む。タンデム質量分析実験は、個々のペプチドについてのフラグメンテーションパターンを生成することにより、ペプチドの同定を可能とする。ペプチドマッピング実験と類似して、実験的に得られたフラグメンテーションパターンは、検索されるデーターベース内に含まれるそれぞれのタンパク質から生じる様々なタンパク質分解ペプチドについての論理的に生成したMS/MSフラグメンテーションパターンと比較される。結果の統計的評価、および検索エンジン、例えばSequest(Thermo Finnigan Corp.)、MASCOT(Matrix Science,Limited)を用いたスコアリングアルゴリズムは、最良の一致の同定を容易にする。同一のアミノ酸組成を有するが、異なる配列を有する2つのペプチドが異なるフラグメンテーションパターンを示すため、タンデムMS実験に含まれる部分配列情報は、単にペプチドの質量を用いるよりも特異的である。
【0034】
ESIおよびMALDIから得られる分子量情報は、特性解析の初期ステージにおいて有用であるが、また、フラグメンテーションを通じたより詳細な構造情報を得ることも重要でありうる。フラグメンテーションを引き起こし、これらのイオンで引き続く質量分析実験を行うタンデム質量分析は、この構造情報を得るのに一般的に用いられる。
【0035】
フラグメンテーションが開始されるプロセスの1つは、衝突誘起解離(CID)として知られている。CIDは、対象とするイオンを質量分析器で選択し、その後そのイオンを中性原子または分子と衝突させることにより行う。選択したイオンは、衝突ガス、例えばアルゴンと衝突してフラグメントイオンをもたらし、これをその後質量分析する。CIDは、様々な機器により、最も一般的にはトリプル四重極、四重極イオントラップ、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT−ICR)質量分析(FT−MS)、飛行時間リフレクトロンおよび四重極飛行時間型質量分析器によって達成することができる。エレクトロスプレーと組み合わせたトリプル四重極および四重極イオントラップは、高感度であり、合理的な量のフラグメンテーション情報を生成するため、現在、ペプチド構造データを生成するのに最も一般的な手段である。飛行時間リフレクトロン付きのMALDIおよびフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴もまた、構造情報の一般的な情報源である。
【0036】
質量分析によりペプチド配列情報を得るために、元の化合物の構造的特徴を反映するイオンのフラグメントが生成されなければならない。ほとんどのペプチドは線状分子であり、それによりフラグメンテーションデータの比較的容易な解釈が可能である。プロセスは、ペプチドイオンからの運動エネルギーのいくらかを振動エネルギーに変換することにより開始される。これは、選択したイオン、通常は(M+H)+または(M+nH)+イオンを衝突セルへ導入し、そこでそれを中性Ar、XeまたはHe原子と衝突させることにより行われ、フラグメンテーションが起こる。フラグメンテーションは、その後、質量分析によってモニターする。タンデム質量分析は、不均一なペプチドの溶液を分析することができ、その後、対象とするイオンを衝突セルにフィルタリングすることにより、構造情報を、複雑な混合物からのそれぞれのペプチドについて得ることができる。
【0037】
タンデム質量分析を用いて完全な配列情報を得るにおいては、一定の制限が存在する。例えば、ペプチドのアミノ酸配列を決定する際に、ロイシンとイソロイシンとは、同一の質量を有するため区別することができない。同様の問題がリジンとグルタミンとでも、これらが同一の名目上の質量を有するため生じるが、高分解能タンデム分析器(四重極−TOFおよびFTMS)は、これらのアミノ酸を区別することができる。
【0038】
質量分析における複雑な混合物による顕著なシグナルの抑制のため、これらの手法が、典型的な生物学的試料中に存在する全てのタンパク質を同定するのに直接使用することができない場合がある。典型的なタンパク質のトリプシン消化は、概ね50種のペプチドを生成し得、一方、未開裂および様々なPTMは多数の他のユニークな種をもたらしうる。したがって、生物由来の試料は、細胞抽出物全体の場合、数千から文字通り数百万の個別のペプチドを含みうる。ちなみに、約3〜5種のタンパク質のトリプシン消化は、顕著なシグナル抑制を引き起こすのに十分複雑なペプチド混合物を生成する。したがって、ある好ましい態様では、タンパク質(またはタンパク質分解消化物中のペプチド)の試料は、質量分析前にゲル電気泳動または液体クロマトグラフィーによって分離される。
【0039】
ゲル電気泳動は、インタクトなタンパク質を分離するために最も広く用いられている技術の1つである。時に一次元ゲル電気泳動と呼ばれるドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)では、タンパク質は、変性界面活性剤SDSで処理され、ゲル上に負荷される。ゲルを横切って電位をかけると、タンパク質は、ゲルをアノードへ向けて、その大きさに反比例した速度で移動する。分離が完了すると、タンパク質は、複数の異なる染料(クーマシー、シプロルビーまたはシルバー)のいずれかを用いて可視化され得、個々のバンドは、ゲルから物理的に切り取られる。これらの切り取られたスポットは、脱染色、還元的アルキル化、ゲル内消化、ペプチド抽出、および最後にタンパク質同定のための質量分析に供される。
【0040】
SDS−PAGE電気泳動と等電点電気泳動ステップとの組み合わせも、同様の質量のタンパク質の分離を可能とする。二次元ゲル電気泳動(2D−GE)では、タンパク質は、最初に固定化されたpH勾配を有する溶液またはゲルを介して電気泳動により等電点(pI)に従って分離され、各タンパク質は、その等電点に対応するpH勾配における位置へ移動する。一度等電点電気泳動ステップが完了すると、SDS−PAGEと類似したゲル電気泳動が直角に、大きさによりタンパク質を分離するために行われる。1Dゲルのように、2Dゲルスポットを切り取り、酵素的に消化し、タンパク質同定のために質量分析することができる。この技術を使うことにより、数千種のタンパク質を同時に分離し、同定のために取り出すことができる。
【0041】
加えて、2Dゲルは、一部のPTMの分析を容易にすることに役立つ。例えば、同一の基礎となるタンパク質の異なってリン酸化された形態は、おおむね同一の質量だが、異なる等電点の一連のバンドとして現れうる。
ゲルの脱染、アルキル化/還元、ゲル内消化、ペプチド抽出およびMALDIターゲットプレーティングを含むペプチドマッピング実験のためのすべてのサンプル調製ステップを行う自動液体操作ロボットが開発されている。
【0042】
マススペクトルデータ取得システムは、スペクトルを取得し、生データを処理し、多数の試料についてデーターベース検索を行うために、同様に自動化されている。1,000を超えるマッピング実験をわずか12時間程で行うことのできる商業用のMALDI−TOFシステムが利用可能である。これらのシステムは、自動較正を行い、レーザーエネルギーを変更し、レーザー照射位置をシグナルが最大化するように調節することができ、全体のデータ取得プロセスは、約30秒またはそれ未満を要する。同様に、自動データ処理装置は、適したシグナルを認識し、モノアイソトピックピークを同定し、検索エンジンに直接ピークリストの概要を提出する。
【0043】
かかるハイスループットプロテオミクスシステムは、多数の未知の試料、例えばゲルに由来するものなどの調査を同時に行うことができる。加えて、自動化取得およびデータ分析ソフトウェアは、試料のバッチの全体をユーザの最小限の労力で迅速に再取得および/または再分析できるほど柔軟である。自動化システムは、しかしながら、供給したデータと同程度でしか良好でないという点で制限される。例えば、低シグナル−ノイズ比を示す種の検出および正確な質量の割り当ては、しばしば不良である。かかる問題は、取得後のデータ処理の開発を導いた。これらのプロセスの改良は、通常得られるものと同一またはそれを超える同定「ヒット」率を達成するハイスループット自動化システムを可能とした。
【0044】
ゲル電気泳動技術への代替的な取り組みは、分析的分離法、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の使用を含む。ゲル電気泳動技術は、インタクトなタンパク質を分離するのに対して、液体クロマトグラフィーは、タンパク質分解ペプチドについて行うことができる。ペプチドLC−MS/MSを行う手段の1つは、LCをイオントラップ質量分析計にエレクトロスプレーイオン化インターフェースを介して直接結合することを含む。これらの実験に適した他の質量分析計は、トリプル四重極および四重極飛行時間型を含む。
【0045】
LS/MS実験においてタンデムMSにより提供される追加の配列情報は極めて強力であり得、時に単一のペプチドを元にして最終的なタンパク質同定が可能となる。一般に、フラグメンテーション情報は、2500ダルトンまで分子量のペプチドについて得ることができる。より大きなペプチドは、特定の問題を解決するのにたいてい十分な部分配列情報を少なくとも明らかにすることができる。
【0046】
タンパク質同定のためのLC−MS/MS手法は、MS分析前に多次元クロマトグラフィー分離を行うことにより、より一層複雑な混合物に拡張されてきた。極めて複雑なトリプシンの消化物は、最初にクロマトグラフィーの1つの方法を用いて複数の画分に分離し、次に、これらの画分のそれぞれを、異なるクロマトグラフィー法を用いてさらに分離する。
【0047】
タンパク質プロファイリング研究はまた、安定同位体標識法と組み合わせた多次元LC−MS/MSを用いて行うこともできる。比較する2つの試料は、安定同位体ペアの異なる形態で個々に標識され、そのトリプシン消化物は、その後、最終的なLC−MS分析前に混合される。この結果、各ペプチドは、質量を除いた全ての点で同一の同位体標識種のペアとして存在することになる。したがって、各同位体標識ペプチドは、効果的にそのパートナーの内部標準としての役割を果たし、2つの同位体標識種の相対高さの比は、ペプチドが生じたタンパク質中で起きた任意の変化についての定量的なデータを与える。
【0048】
あるいは、同位体コードアフィニティータグ法(ICAT)は、タンパク質試料のin vitro化学標識に基づいた適用可能な手法を提供する。ICATは、チオール基とハロアセチル(例えば、ヨードアセトアミド)との間の反応の高い特異性を利用して、タンパク質中のシステイン残基を、8個の水素または重水素原子の存在によってのみ異なる同位体的に軽いまたは重い種類の分子で、それぞれ化学的に標識する。標識されたタンパク質試料は、その後混合され、同時に消化され、システイン残基あたり8ダルトンずつ質量が異なる同位体標識ペアとして存在するシステイン含有ペプチドを生じる。化学標識の一般的な戦略は、化学的選択反応が存在する、タンパク質中に存在する他の官能基に拡張することができる。
【0049】
表1に、チオールプールを測定するための他の方法の例を記載する。
【表1】

【0050】
近接ジチオールは、セファロース−アミノヘキサエノイル−4−アミノフェニルアルシンオキシド、またはより高い感度のためには、ビオチニル−4−(N−(S−グルタチオニル−アセチル)アミノ)フェニルアルシンオキシド(GSAO−B)のいずれかを用いて特徴づけることができる(Prot Sci 9:2436-2445)。試料をこの試薬で反応させた後、Pr(SH)をストレプトアビジンアフィニティーカラムを用いて単離することができる。
【0051】
ビオチン結合ヨードアセトアミド(BIAM)は、Kimら(Anal. Biochem 283:214-221, 2000)によって記載されたように、反応性システイニル残基を同定するのに用いることができる。システイニル残基は、低濃度のHによる酸化に敏感であるため、これらは、低レベルのROSの潜在的な初期の標的となり、近接ジチオールで得た情報を補完することができる。タンパク質中のスルフェン酸残基(PrSOH)は、プロテオームをジメドンで処理することにより決定することができ(Biochemistry 42:9906-9914; 2003)、生じる誘導体化タンパク質は、標識されたペプチドの質量スペクトル中の141質量単位のシフトを検出することにより決定することができる。
【0052】
ある態様では、タンパク質の酸化状態の決定は、S−ニトロシル化のレベルを測定することを含む。これは、細胞中のS−ニトロソタンパク質を検出するビオチンスイッチ法の変法を用いて行うことができる。200mMのメタンチオスルホン酸メチル(MMTS)を用いてチオールをブロックし、続いて200μMのアスコルビン酸を用いてPrSNOを還元し、その後、PrSNOに由来するチオールをMMTS−ビオチンと反応させる。アビジンアフィニティーカラムを、PrSNO含有タンパク質を単離するのに用いることができ、2−D(二次元)ゲル電気泳動を行う。タンパク質スポットのゲル内消化は、トリプシンで行うことができる。2−Dゲル上のタンパク質スポットを切り取り、Montage in-gel digestion kit(Millipore)を用いてゲル内消化を行う。タンパク質バンドの消化物は、初めに、マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析によって分析し、試料を、Q-TOF Ultimaシステム(Waters, Milford, MA)を用いるマイクロ液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化−質量分析/質量分析(microLC-ESI-MS/MS)に供する。MS/MSフラグメンテーションスペクトルを、ProteinLynxソフトウェアパッケージを用いて分析する。
【0053】
本発明の1つの局面によれば、対象における酸化ストレスにより特徴付けられるか、または引き起こされる疾患を診断する方法が提供される。前記方法は、タンパク質の酸化状態を決定すること、およびタンパク質の酸化状態を対照と比較することを含む。ある態様では、タンパク質は、対象からの試料中にある。タンパク質の酸化状態は、上述の任意の方法によって決定することができる。本発明はまた、タンパク質中の酸化状態を対照値と比較することを含む。対照値は、様々な形態をとり得る。これは、単一の値(例えば、カットオフ値)、例えば、中央値または平均値でありうる。これは、比較群に基づいて規定することができる。これは、範囲、例えば、試験集団を、群、例えば、低リスク群、中リスク群および高リスク群などの群、または四分位群(quadrant)に、均等に(または不均等に)分けた範囲であることができる。例えば、最も低い四分位群の酸化状態を、酸化ストレスにより特徴づけられる/引き起こされる疾患を発症するリスクの最も低い個体とし、最も高い四分位群を、酸化ストレスにより特徴づけられる/引き起こされる疾患を発症するリスクの最も高い個体とする。対照値は、選択される特定の集団に依存してもよい。対照値は、対象が属するカテゴリーを考慮しうる。
【0054】
下記の実施例は、本発明の実施の特定の例を説明するために設けられており、本発明の範囲を限定することを意図していない。当業者に明らかなように、本発明は、種々の方法に応用される。
【実施例】
【0055】

細胞中のタンパク質ジスルフィドの大部分は、タンパク質機能の動的な調整決定因子というよりは、むしろ重要な不活性な構造的決定因子であると考えられている。我々は、いくつかのタンパク質中のジスルフィドがまた、細胞の酸化還元状態によって調節され、機能的な結果をもたらすことを示した。我々は、ミトコンドリアによって生成されたROSが、哺乳動物細胞内で、フォールディングおよび輸送だけでなく、細胞表面タンパク質ジスルフィドの形成を容易にするために細胞によって積極的に利用されることも見出した。ミトコンドリアのROS生成の阻害はタンパク質ジスルフィド形成を抑制するとともに還元ストレスを惹起し、これが細胞表面のジスルフィド含有タンパク質の集団の機能障害および保持(おそらく、部分的にゴルジ内)をもたらした。低密度で培養した細胞は、コンフルエントの細胞よりも少ないROSを生成し、これは、ジスルフィドの形成を減少させ、ジスルフィド含有細胞表面受容体のサブグループの活動を減少させた。これらのデータは、構造的なグループおよび酸化還元感受性調節グループという、ジスルフィドプロテオームを含む2つのサブプロテオーム(subproteome)の概念を支持し、後者は、細胞にとって直接機能的な影響をもたらす。
【0056】
ジスルフィド結合形成は、タンパク質合成および機能における重大な事象である。あるタンパク質ジスルフィドが、タンパク質の機能および細胞の表現型に影響を与える細胞の酸化還元状態を反映して、一時的にサイトゾルで形成することが近年の研究によって示された(1、2)。タンパク質ジスルフィド異性化酵素ファミリーによって触媒されるジスルフィド交換は、徹底的に研究されてきた。しかしながら、哺乳動物細胞におけるタンパク質ジスルフィド結合のde novo形成は、あまりよくは明らかにされていない(3)。酸化酵素触媒がジスルフィド結合形成に必要である他の細胞型においてタンパク質ジスルフィド形成の機構が近年明らかになったにすぎない。ジスルフィド形成の中心となるエフェクターは、酵母の必須遺伝子であるER固有(resident)チオール酸化酵素(4,5)、および、E.ColiにおけるDsbBタンパク質および電子伝達鎖からなるジスルフィド調節システム(6)を含む。Ero1のホモログが哺乳動物細胞において同定されており、これらの過剰発現は、細胞内のジスルフィド形成を促進する(7〜10)。しかしながら、これらのタンパク質は、哺乳動物細胞の生存のために必須ではなく、細胞のジスルフィド形成の主要決定因子であることが証明されているわけでもない。我々は、ミトコンドリアによって生成された活性酸素種が、哺乳動物細胞における細胞表面タンパク質ジスルフィドの形成を容易にするために細胞に積極的に利用されていることを見出した。我々のデータは、構造的なグループおよび酸化還元感受性調節グループという、ジスルフィドプロテオームを含む2つのサブプロテオームの概念を支持し、後者は、細胞にとって直接機能的な影響をもたらす。
【0057】
細胞内の全体的なタンパク質ジスルフィドの状態を定量化するために、我々は、最初にタンパク質チオールをブロックし、次いでジスルフィドを還元し、得られるチオールを蛍光的に標識することにより、in situでタンパク質ジスルフィドを撮像する特定の方法を確立した。培養細胞にこの方法を用いることで、我々は、ゴルジ体への局在化と一致するパターンを観察し(図1a、1k)、一方ミトコンドリアもまた弱いシグナルを示した。シグナルは、細胞が酸化状態に暴露された際にいくらか増加した(図2)。アフィニティ精製および細胞のジスルフィド含有タンパク質の質量分析による同定(表2)は、9種のタンパク質を明らかにし、そのうち7種は、ジスルフィドを含むことが知られている細胞表面の膜タンパク質であり、通常の成育条件ではジスルフィドを含む大部分のタンパク質は、分泌されるか膜結合性であると報告する植物(11)およびE.coli(12)での研究と一致する。ミトコンドリア脱共役剤であるカルボニルシアニド−m−クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)での処理では、全体的なシグナルが減少したが(図1a)、これはジスルフィドプロテオームがミトコンドリアのROS生成に依存することを示唆している。図1bに示されるように、試験した全てのミトコンドリア阻害剤うち、CCCP、ロテノン、チエノイルトリフルオロアセトン(TTFA)およびミキソチアゾール(myxothiazol)はタンパク質ジスルフィドの形成を減少させ、CCCPが最も効果的であり、ROS生成をブロックできないとして知られるミトコンドリア阻害剤であるアンチマイシンA(ATM)は最も効果が少なかった。シグナルの減少は、ジヒドロエチジウム(DHE)蛍光法によって測定した超酸化物の生成の減少を伴っていた。それに反して、他のROS生成酵素の阻害剤は、細胞のタンパク質ジスルフィド量を変えなかった(図3)。ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ−1(GPx−1)の阻害は、タンパク質ジスルフィド量を20%(P<0.05)増加させ(図1c)、一方、GPx模倣物であるエブセレンはシスルフィド形成を55%(P<0.01)阻害した。タンパク質ジスルフィド形成におけるミトコンドリアの役割は、ミトコンドリア内でカタラーゼ(MitoCAT)を過剰発現させた際に細胞中のジスルフィド形成が著しく減少し、ペルオキシソーム内ではそうではなく(図1d、図4)、また、ミトコンドリアDNAを欠いている偽(pseudo)Rho細胞が、インタクトなミトコンドリアを有する細胞よりもはるかに低いタンパク質ジスルフィドシグナルを示す(図1e)事実によってさらに支持される。MitoCAT過剰発現細胞において、CCCPはもはやタンパク質ジスルフィド形成になんら影響を与えず(図4)、これは、CCCP処理およびMitoCAT過剰発現が、同様の機構でタンパク質ジスルフィド形成を減少させる、すなわち、ミトコンドリアのROS生産を減少させることを示している。
【0058】
ミトコンドリアのROS生成が阻害された際にタンパク質ジスルフィド量の全体的な減少があるが(図1f)、異なるタンパク質のジスルフィドは、ミトコンドリアの阻害によって誘導された細胞の酸化還元状態の変化に対して異なった影響を受ける。ミトコンドリアのROS阻害は、アクチンのジスルフィドシグナルを減少させたが、CD98のものは減少させなかった(図1g)。我々は、CCCPがジスルフィド結合多量体vWF(内皮細胞におけるもの)の解離を伴ったが(図1i)、一方でヘテロ二量体CD98(Chang肝細胞におけるもの)はインタクトのままであること(図1g)を見出した。vWF中のジスルフィド量の変化はまた、vWF免疫蛍光法でも確認されたが、これは、使用した抗vWF抗体が還元されたvWF単量体よりも多量体のジスルフィド結合vWFに対しはるかに高い反応性を有していることから(図1k)、ミトコンドリアの呼吸が阻害されたヒト肺動脈血管内皮細胞(HPAEC)内のシグナルの減少を示すものであった。興味深いことに、HPAECを、酸化ストレスを誘発するために、グルコース−6−リン酸脱水酵素阻害剤のデヒドロエピアンドロステロンまたはガンマ−グルタミルシステイン合成酵素阻害剤のブチオニンスルホキシミン(BSO)で処理したところ、検出できる多量体vWFも増加した(図1i)。
【0059】
ミトコンドリアのROSの阻害に伴って、エンドグリンの膜局在化は解消されたがPECAMのそれは解消されず、一方、ゴルジ内の染色は増加した。表面発現の変化はまた、ジスルフィド形成システイン部位突然変異を有するCD13について報告された(13)。同様に、ジスルフィド結合タンパク質は、ジチオトレイトール(DTT)処理された細胞では還元され、可逆的にERに保持されるが、分泌経路に入るタンパク質はそうではなかったことを、過去の研究が示している(14)。我々は、エンドグリン、P4A4に対するモノクローナル抗体がジスルフィド含有エピトープに高感度であることを観察した。非還元の免疫ブロットでは、CCCPまたはTTFA処理された細胞中でP4A4抗体により、より少ないエンドグリンが検出されたが、別のウサギポリクローナル抗体H300を用いてエンドグリンを検出した場合には消失した(図1j)。これは、エンドグリン内のジスルフィド形成がミトコンドリアROSに依存することを示唆している。かかるジスルフィド依存性の抗体認識は、以前に細胞表面タンパク質CD13について報告されている(13)。
【0060】
CCCPは、タンパク質ジスルフィド量を著しく減少させたが、それはツニカマイシンおよびタプシガルキン処理と比較してGRP78またはGRP94の有意な上方調節を誘導しなかった(図1l)。ゴルジ体へのジスルフィド染色の局在化、ゴルジにおけるジスルフィド欠損タンパク質の保持、およびCCCP処理細胞における上方調節されたERストレスマーカーの欠如は、これらのジスルフィド欠損タンパク質が、ゴルジシステム内で少なくとも部分的に折り畳まれていることを示唆し、いくつかのタンパク質ジスルフィドが、通常の条件下で、ER(15)よりはむしろゴル体内で形成されているという確かな可能性を提起する。
【0061】
障害されたジスルフィド結合の形成の、細胞表面の受容体機能に対する影響を評価するために、細胞表面のジスルフィド含有タンパク質の一群を調査した。調査した全ての受容体の発現は、ミトコンドリア阻害処理で変化しなかった(図5、図6)。HPAECにおける受容体依存性の取り込みは、EGF(図5a)またはトランスフェリン(CD71媒介性)については、ミトコンドリア阻害によって影響されなかった(図7)。興味深いことに、HPAECによるアセチル化LDL(AcLDL)の取り込みは、CCCPまたはTTFA処理後に減少したが、ATM処理後では減少しなかった。AcLDLの取り込みの減少は、CCCP処理後のミトコンドリア膜電位(MMP)の直接の減少(図5b)より非常に遅い、累積的過程であり、これは、MMPに直接関連していないが、むしろ、動力学的に遅い下流の過程、例えばLOX−1タンパク質の重要なジスルフィドの減少に関連していることを示唆している。ミトコンドリアの阻害により、これらのタンパク質の折り畳みおよび輸送が障害を受ける。しかしながら、細胞表面にすでに存在する正確に折り畳まれたタンパク質は、その分解までおよび新しい合成が経時的に枯渇するまで、機能し続けることができる。
【0062】
それぞれのリガンドにより刺激された細胞内では、受容体の発現レベルに変化がないという事実にもかかわらず、IGF−1RおよびFGFRのリン酸化がミトコンドリアのROSの阻害後に減少したが、EGFRのそれは減少しなかった(図5c、d、e)。受容体の機能の喪失は、これらの受容体の局在化の変化によって説明される。ミトコンドリアの阻害後に細胞表面における、IGF−1Rの発現ははるかに少ないが、EGFRの発現はそうではない(図5f)。これはミトコンドリアROS酸化還元依存性のジスルフィド含有タンパク質の局在化のさらに別の例である。内因性キナーゼドメインを有する受容体は、別のROS介在性の機構によって調節されていることが以前に示されており、この機構において、ROSによるタンパク質チロシンホスファターゼの可逆的不活化(16〜21)は、受容体のリン酸化の増大に関与する。これらの機構は、近年の研究(22)と一致して、リガンド誘導性のEGFリン酸化がミトコンドリア呼吸に依存しなかったため、我々の所見の説明としては排除される。
【0063】
これらの受容体の機能に対するROSの直接的なジスルフィド介在性の効果を確認するため、我々はまた、ジスルフィドを直接還元すべく、細胞を種々の濃度のDDTに暴露した。ミトコンドリア阻害剤に感受性の全ての受容体は、DDTにも感受性であった。図8aおよび8bに示されるように、細胞によるEGFまたはトランスフェリンの取り込みは、0.5mM DDT処理では変わらなかったが、一方、HPAECによるAcLDLの取り込みは減少した(図8a)。DDT処理後に、リン酸化特異的抗体により検出されたEGFRリン酸化の減少がみられたが、EGFRは完全に検出不能であった(23)(Santa Cruz sc-03抗体によるEFGRの免疫検出)。これは、EFGRが0.5mM DDTの存在下でさえもEGFにより完全に活性化されることを示唆している。これに対し、IGF−1RβおよびFGFRのリン酸化は、0.3mM DDTの存在下で完全に阻害された(図8c、d)。
【0064】
図9aに示すとおり、低密度で培養した細胞は、コンフルエント細胞よりも、著しく少ないタンパク質ジスルフィド量を示す。この所見と並び、低密度で培養した状態では、コンフルエント細胞よりも、多い細胞内GSH、少ないMMPおよびミトコンドリアでの少ない超酸化物の生成があり(図9b)、これは、低密度で培養した細胞におけるより還元的な状態の存在が、より少ないタンパク質ジスルフィド形成につながることを示唆している。その結果、CCCP処理された細胞での所見と同様に、低密度で培養した細胞において、エンドグリンは細胞表面よりはむしろゴルジに局在化する。加えて、低密度で培養した細胞においては、より少ない多量体vWF(図9a)、より少ないAcLDLの取り込み、およびより少ないIGF−1Rβのリガンド誘導性リン酸化があり、一方、EGFの取り込み、EGFRのEGF誘導性リン酸化(図9c)およびトランスフェリンの取り込みは、細胞密度に影響されなかった。これらのデータは、低密度で培養した細胞における受容体機能の変化がこれらの細胞内での不十分な酸化能の結果である可能性を示唆している。ここで記載した細胞密度の酸化還元能との関係はまた、部分的に、細胞密度に応じた内皮細胞内における生物的に活性な一酸化窒素の違いを説明しうる(24)。補足の表3は、チオール還元(DTT)、ミトコンドリア電子伝達阻害(CCCP)および細胞密度に対する特定の細胞表面受容体の機能の感受性を比較している。
【0065】
要約すると、我々は、ミトコンドリア由来のROSが、細胞表面のタンパク質ジスルフィドの形成を容易とするために細胞により積極的に利用されており、ひいてはタンパク質の折り畳みおよび輸送に重要であることを、ここに報告する。哺乳動物細胞は、de novoジスルフィド合成を扱う種々の方法を有しており、ミトコンドリアが主要な決定因子である。これに対して、酵母細胞は、ジスルフィドの形成にEro1pをもっぱら必要とし(4、5、15、25)、ジスルフィドの形成についてミトコンドリア呼吸に依存しない(15)。通常はミトコンドリア呼吸の副生成物である過酸化水素の哺乳動物細胞における「構造的ジスルフィド」の恒常性維持のための使用は、改善されたエネルギー効率を通じて進化上の利点を提供しうる。
【0066】
ジスルフィド形成、ミトコンドリア阻害、還元電位および細胞密度の間の非常に強い関連性は、細胞内で最も豊富なジスルフィドであり、伝統的に命名された「構造的ジスルフィド」でさえ、機能的なタンパク質の完全性を維持するそれらの役割に関して等価ではないということを示している。したがって、我々は、ジスルフィド含有サブプロテオーム群間の構造的完全性と機能的完全性との解離を明らかにするため、ジスルフィドプロテオームの下位群を「調節性ジスルフィド(regulatory disulfides)」と定義する。細胞の酸化還元状態の変化が、シグナル伝達に全体的に影響を与えることが多くのグループにより示されてきた。しかしながら、この効果を介在する機構はほとんど知られていない。ごく少数の細胞表面タンパク質、CD4およびインテグリンのみが、機能的スイッチとして作用する開裂可能なジスルフィドを有すると示されてきた(26)。我々はここで、ジスルフィド結合の細胞の酸化還元による調節は、以前に理解されてきたよりもはるかに広範囲であることを報告する。これは、表面分子がどのようにして、細胞の酸化還元状態により調節されているかについての新しい視点を提供するものであり、最適なタンパク質機能のために酸化および還元ストレスの両方を制限すべく、細胞が適切な酸化還元状態を維持しなければならないという観点と一致する。この概念は、哺乳動物細胞におけるジスルフィドプロテオームの下位群のための、および当該下位群によるユニークな調節メカニズム、およびタンパク質の機能および細胞表現型についてのその潜在的影響を強調する。
【0067】
材料および方法
細胞のジスルフィド含有タンパク質の検出:我々は、in situでジスルフィド含有タンパク質を撮像する方法を開発した。メタノール固定細胞を100mMトリス、pH8.3中の200mMヨードアセトアミド、5mM EDTAで37℃にて1時間処理してチオールをブロックした。次いで、細胞をトリス緩衝食塩水、pH8.0、5mM EDTAで6回洗浄し、その後、細胞を、ジスルフィドを還元するために5mM EDTA、1mMトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、pH8.3で、室温にてインキュベートし、得られたチオールを標識するために100mMトリス中の1mM 5−ヨードアセトアミドフルオレセイン(5−IAF)で1時間インキュベートした。過剰の染料をTBSで繰り返し細胞を洗浄することにより除去した。スライドに固定された染色された細胞を、その後、Prolonged Antifade Mounting Mediumで処理し、細胞核をDAPIで対比染色した。蛍光像は、ニコン蛍光TE2000顕微鏡で撮像した。蛍光強度は、バックグラウンド蛍光を減算し、次いでNIH IMAGEJプログラムで像を積算し、DAPI蛍光により決定した細胞数で平均化することにより定量した。実験毎に×20に拡大した4視野を分析し、試料毎に100〜200個の細胞を計数した。
【0068】
細胞のジスルフィド含有タンパク質のプロテオミクス同定:HPAECにおけるジスルフィド含有タンパク質を上述した方法により標識した。ただし、5−IAFの代わりに、0.2mM MTSEA−ビオチン−Xまたは1mMビオチン化ヨードアセトアミド(BIAM)を用いた。次いで、ビオチン標識タンパク質を、アビジン−Dアガロースゲルアフィニティークロマトグラフィーにより単離した。タンパク質の消化物をLCQ Deca XPシステム(Thermo Finnigan)を用いたマイクロ液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析(microLC-ESI-MS/MS)に供した。MS−MSフラグメンテーションスペクトルをSequestソフトウェアパッケージを用いて分析した。
【0069】
表面レセプターの機能的評価:処理後に、細胞を、1%BSA含有DMEM中の500ng/ml Alexa488標識EGF、または50μg/ml Alexa488標識トランスフェリンとともに10分間、あるいは増殖培地中の10μg/ml Alexa488標識 AcLDLとともにで30分間インキュベートし、その後、ホルムアルデヒドで室温にて固定する前に、冷HBSSで4回洗浄した。また、細胞をトリプトシン処理し、リガンドの取り込みをフローサイトメトリー(FACS Calibur)によって定量化した。また、タンパク質リン酸化研究のために、リガンドによる刺激の5分後に細胞溶解物を採取した。
【0070】
試薬:メタンチオスルホン酸メチル(MMTS)は、Calbiochem, La Jolla, CAより購入した。グルタチオン、ブチオニンスルホキシミン(BSO)、L−アルギニン、アスコルビン酸塩、HEPES、N−エチル−マレイミド、ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート(DCFDA)、ヨードアセトアミド(IAA)、ネオクプロイン、アンチマイシンA(ATM)、ミキソチアゾール、アジ化ナトリウム、チエノイルトリフルオロアセトン(TTFA)、カルボニルシアニド m−クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)、L−ニトロアルギニンメチルエステル(L−NAME)、ニアラミド、インドメタシン、アロプリノール、キサンチン酸化酵素、1−アミノベンゾトリアゾール、アポシニン、タプシガルギン、ツニカマイシン、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ロテノン、ウリジン、臭化エチジウム、ジチオトレイトール(DTT)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)は、Sigma, St.Louis, MOより得た。2−((6−ビオチノイル)アミノ)−ヘキサノイル)アミノ)エチルメタンチオスルホナート(MTSEA ビオチン−X)および、ビオチン化ヨードアセトアミド(BIAM)は、Biotium(Hayward, CA)より購入した。アビジン−Dアガロースゲルは、Vector Laboratories, Burlingame, CAより得た。臭化ジヒドロエチジン(DHE)、MitoSox(JC−1)、Prolonged Antifade kit、DAPI、Hoechst 33342、5−ヨードアセトアミドフルオレセイン(5−IAF)、フルオレセイン−5−マレイミド標識コムギ胚芽凝集素(WGA)、フルオレセイン−5−マレイミド標識Con A(コンカナバリンA)、Alexa488標識アセチル化LDL、Alexa488標識EGF、Texas Red標識トランスフェリン、および上皮成長因子は、Molecular Probes, Solon, OHより得た。Bis-Tris GelおよびMOPS−SDS泳動バッファー、Silverquest silver stain kit、DMEM、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびウシ胎仔血清(FBS)は、Invitrogen, Carlsbad, CAより購入した。Biorad DCタンパク質アッセイおよびBiosafe Coomassie blue stainは、Bio-Rad, Hercules, CAより得た。塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)およびインスリン様成長因子(IGF−1)は、R&D, Minneapolis, MNより購入した。
【0071】
培養細胞:ウシ大動脈血管内皮細胞(BAEC)、ヒト肺動脈血管内皮細胞(HPAEC)およびEGM−2MV培地は、Cambrex(San Diego, CA)より得た。Chang肝細胞は、ATCCより得た。BAECおよびChang肝細胞は、10%FBS、ペニシリン(100ユニット/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)添加DMEM中で増殖させた。HPAECは、完全EGM−2MV培地中で増殖させた。偽Rho細胞と呼ばれる機能的ミトコンドリアを欠いた細胞を生成するために、実験前に、BAECまたはChang肝細胞を臭化エチジウム(100ng/ml)およびウリジン(100μg/ml)を含むDMEM中で10日間インキュベートし2回継代した。抗酸化酵素を過剰発現させるため、細胞をMnSOD、CATまたはMitoCATを含む25MOIのアデノウィルスとともに1晩インキュベートし、その後、タンパク質ジスルフィド染色前に36時間さらに培養した。
【0072】
活性酸素種の検出:細胞をPBSで2度洗浄し、DHEを含む培地で1時間インキュベートした。細胞外の染料を、PBSで3度洗浄することにより除去した。蛍光をSpectraMax Gemini XPS蛍光プレートリーダーで測定した。ミトコンドリア生成超酸化物を測定するために、細胞を培地中でMitosoxと10分間インキュベートし、その後洗浄し、蛍光顕微鏡検査前に培地中で1時間インキュベートした。
【0073】
細胞表面チオールおよび細胞内GSHの染色:細胞を、氷冷DPBSで洗浄し、10μMフルオレセイン−5−マレイミドを含むDMEMと10分間氷上でインキュベートした。非結合染料を、冷DPBSで洗浄することにより除去した。その後、細胞を、顕微鏡検査前にホルムアルデヒドで固定した。細胞内GSHの染色のために、細胞を、HBSS中の20μMモノブロモビマンと10分間37℃でインキュベートした。非結合染料をHBSSで洗浄することにより除去した。陰性対照のために、標識前に細胞を100μM N−エチル−マレイミドと10分間インキュベートしてGSHをアルキル化した。
【0074】
細胞小器官の染色:固定した細胞をDPBSと5分間、次いでDPBS中の1%BSAと10分間インキュベートした。細胞を手早くDPBSで洗浄し、次いで細胞内小器官(ゴルジ体または小胞体のそれぞれ)を染色するために蛍光標識レクチン(WGAまたはCon A)とともに50分間インキュベートし、その後、これらを再度4回DPBSで洗浄した。
ミトコンドリア膜電位測定:細胞を1μg/mlのJC−1を含む培地で30℃にて培養し、HBSSで洗浄し、その後、直ちに蛍光顕微鏡検査法により観察した。あるいは、蛍光をGEMINI XPSマイクロプレートリーダーで、励起波長528nmおよび発光波長590nmとともに、励起波長488nmおよび発光波長536nmで測定した。ミトコンドリア膜電位は、536nmにおける発光に対する590nmにおける発光の比で表される。
【0075】
ウェスタンブロッティングおよび間接免疫蛍光法:細胞を細胞溶解緩衝液(Cell Signaling, Danvers, MA)中で溶解させた。溶解物のタンパク質濃度を、Biorad DCタンパク質アッセイにより測定した。MOPS−SDS−PAGEにより等量のタンパク質を分離し、その後、ポリ(ビニリデンジフルオリド)メンブレン(Invitrogen, Carlsbad, CA)に移した。次いでメンブレンをブロッキングし、シグナルを、BM Chemiluminescence Blotting kit(Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)、BM POD沈降性(precipitating)ブロッティング基質(Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)、またはSupersignal West Femtoブロッティングキット(Pierce, Rockford, IL)により、製造業者の指示に従って検出した。タンパク質サブユニット間のジスルフィド結合の検出のため、細胞を200mM N−エチル−マレイミドを含む細胞溶解緩衝液中で溶解させ、37℃で1時間インキュベートした。DTTを含むまたは含まないLDS試料緩衝液を細胞溶解物に添加し、タンパク質をMOPS−SDS−PAGEにより分離した。間接免疫蛍光研究のため、ホルムアルデヒド固定細胞を0.3%Tritonで10分間透過処理し、1%BSAで30分間ブロッキングし、その後、抗体で検出した。本研究で用いた一次抗体は、SantaCruzからのCD98、PECAM、エンドグリン、vWF、pEGFR、EGFR、FGFRおよびCD71に対する、Sigma, St. Louis, MOからのアクチンに対する、Cell Signaling(Danvers, MA)からのpFGFR、pIGF1RおよびIGF1Rに対する、Abcam, Cambridge, MAからのチオレドキシン、MnSOD、カタラーゼ、およびGAPDHに対する、Serotec, Raleigh, NCからのLOX−1に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体を含む。全ての蛍光標識またはホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体は、Jackson Immunoresearch, West Grove, PAより得た。
【0076】
表2 質量分析により同定されたHPAECにおけるジスルフィド含有タンパク質
【表2】

【0077】
表3 細胞表面受容体の機能に対するジスルフィド形成の関係
【表3】

【0078】
参考文献
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
ここで参照する全ての参考文献および/または出版物は、その全体を参照によって本明細書に援用する。開示が矛盾する場合には、本詳細な説明が支配する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸が酸化誘導修飾を受ける酸化修飾タンパク質を同定する方法であって、
(a)前記タンパク質の酸化状態を決定すること、
(b)前記タンパク質中のアミノ酸の酸化誘導修飾が起こる条件に前記タンパク質を暴露すること、
(c)(b)の条件への暴露後の前記タンパク質の酸化状態を決定すること、および
(b)の条件への暴露前の酸化状態と、(b)の条件への暴露後の前記タンパク質の酸化状態とを比較すること、
を含み、ここで、(c)において決定されるタンパク質の酸化状態が(a)において決定されるタンパク質の酸化状態よりも大きい場合に、前記タンパク質を酸化修飾タンパク質と同定する、前記方法。
【請求項2】
酸化修飾タンパク質中の酸化修飾ペプチドを質量分析により同定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化状態が、チオールプールの酸化状態を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
チオールプールが、試料中のタンパク質近接ジチオール(PR(SH))プール、タンパク質グルタチオン化(PrSSG)プール、またはタンパク質間ジスルフィドプール(PrSSPr’)を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
酸化状態が、S−ニトロシル化のレベルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸化状態が、システイン酸化のレベルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アミノ酸が、システイン、メチオニン、アルギニンまたはトリプトファンである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
酸化誘導修飾が、疾病もしくは疾患において発生する、または疾病もしくは疾患に関連する修飾を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
酸化誘導修飾が起こる条件が、過酸化水素、超酸化物、ペルオキシ亜硝酸または過塩素酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
対象における酸化ストレスによって特徴づけられるもしくは引き起こされる疾患を診断する、または前記疾患の発症のリスクを予測する方法であって、
タンパク質における酸化状態を決定すること、
前記タンパク質における酸化状態を対照と比較すること、
を含み、ここで、前記対照と比較した酸化状態の増加が、前記対象が酸化ストレスによって特徴づけられるもしくは引き起こされる疾患を有する、または前記疾患の発症のリスクを有することを示す、前記方法。
【請求項11】
疾患が、炎症性疾患、自己免疫疾患、心臓血管疾患、インスリン非依存性糖尿病(II型糖尿病)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
炎症性疾患が、アレルギー性鼻炎、強直性脊椎炎、関節炎、喘息、ベーチェット症候群、滑液包炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、チャーグ・ストラウス症候群、皮膚炎、痛風、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、炎症性腸疾患(クローン病または潰瘍性大腸炎)、炎症性ニューロパシー、川崎病、筋炎、神経炎、心膜炎、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛、前立腺炎、乾癬、放射線傷害、サルコイドーシス、ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、高安動脈炎、側頭動脈炎、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、血管炎またはウェゲナー肉芽腫症である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
自己免疫疾患が、アジソン病、慢性甲状腺炎、皮膚筋炎、グレイヴズ病、橋本甲状腺炎、過敏性肺炎、インスリン依存性糖尿病(I型糖尿病)、多発性硬化症、重症筋無力症、臓器移植、悪性貧血、ライター症候群、リウマチ性関節炎、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、甲状腺炎、またはじんましんである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
心臓血管疾患が、冠動脈疾患、虚血性心筋症、心筋虚血、虚血性もしくは心筋虚血後の再かん流、糖尿病性網膜症、糖尿病性ネフロパシー、腎線維症、高血圧、アテローム性動脈硬化、動脈硬化、動脈硬化性プラーク、動脈硬化性プラーク破綻、脳血管障害(卒中)、一過性脳虚血発作(TIA)、末梢動脈障害、動脈閉塞性疾患、血管動脈瘤、虚血、虚血性潰瘍、心臓弁狭窄、心臓弁逆流または間欠性跛行である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
タンパク質が、対象からの試料中にある、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
試料が、血液、血清、血漿、尿、痰、唾液、糞便、脳脊髄液、腹水、細胞、組織または分泌物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
タンパク質の酸化状態を調節する作用物質のスクリーニングの方法であって、
(a)前記タンパク質の酸化状態を決定すること、
(b)前記タンパク質中のアミノ酸側の酸化誘導修飾が起こる作用物質または条件に前記タンパク質を暴露すること、
(c)前記タンパク質の前記作用物質への暴露後の前記タンパク質の酸化状態を決定すること、および
(a)における前記タンパク質の酸化状態と(b)における前記タンパク質の酸化状態とを比較すること、
を含み、ここで(b)において決定されるタンパク質の酸化状態が、(a)において決定されるタンパク質の酸化状態より大きい場合、前記作用物質または条件は、オキシダントまたはプロオキシダントであり、(b)において決定されるタンパク質の酸化状態が、(a)において決定されるタンパク質の酸化状態より小さい場合、その作用物質または条件は、アンチオキシダントである、前記方法。

【図1a−c】
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【図1d−f】
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【図1g−j】
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【図1k−l】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a−d】
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【図5e−f】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b−d】
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【図9a】
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【図9b−c】
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【図9d−e】
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【公表番号】特表2010−527449(P2010−527449A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508411(P2010−508411)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/006150
【国際公開番号】WO2008/143873
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(500173066)ブライハム アンド ウィミンズ ホスピタル,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】