説明

プロトカドヘリン、その抗体および使用

【課題】 新規の細胞間接着タンパク質(プロトカドヘリン)、およびこれらタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【解決手段】 プロトカドヘリン-42およびプロトカドヘリン-43と称する新規の細胞間接着タンパク質、およびこれらタンパク質をコードするDNA、RNA、センス鎖またはアンチセンス鎖の形態のポリヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、細胞間接着に関連した物質および方法に関する。 具体的には、本発明は、プロトカドヘリンと称する新規の接着タンパク質、およびプロトカドヘリンをコードするポリヌクレオチド配列に関する。 本発明は、プロトカドヘリンの天然リガンド/抗リガンドへの結合を阻止する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
細胞間接着は、in vivoにて、形態形成ならびに器官形成、白血球溢出、腫瘍転移および浸潤・破壊、細胞間結合の形成等、広範囲の現象において重要な役割を果たす。 従って、細胞間接着は、組織の完全性を維持する上で、極めて重要である。
【0003】
細胞間接着には、特定の細胞表面接着分子が介在する。 細胞接着分子は、イムノグロブリン超科、インテグリン超科、セレクチン科、およびカドヘリン超科を含む、少なくとも4つの科に分類されている。 固体組織を形成するすべての細胞型は、ほとんどの細胞型の選択的接着において、カドヘリン超科が関与していることを示唆する、カドヘリン超科の膜を発現する。
【0004】
カドヘリンは、一般に、カドヘリンに特有の配列を特徴とする5つサブ領域からなるN末端細胞外領域(結合に直接関与していると考えられる領域のN末端の113アミノ酸)、疎水性膜伸長領域、ならびにカテニンおよび他の細胞骨格関連タンパク質により細胞骨格と相互に作用するC末端細胞質領域を有する、グリコシル化内在性膜タンパク質とされてきた。 しかし、一部のカドヘリンには、細胞質領域が欠如しており、細胞質領域を有するカドヘリンとは異なる機序で、細胞-細胞接着において作用すると思われる。
【0005】
細胞質領域を有するカドヘリンの細胞外領域接着機能には、細胞質領域が必要である。
【0006】
異なる細胞上に発現するカドヘリン科の膜間の結合は、同種親和性(すなわち、カドヘリン科の一つが、それ自身または密接に関連したサブクラスのカドヘリンと結合する)であり、かつCa2+依存性である。 カドヘリンに関する最近の解説については、Takeichi, Annu. Rev. Biochem., 59: 237-252 (1990)およびTakeichi, Science, 251: 1451-1455 (1991)を参照されたい。
【0007】
記述すべき最初のカドヘリン(マウス上皮細胞のE型カドヘリン、鳥類肝臓のL-CAM、マウス未分化胎細胞のウボモルリン、およびヒト上皮のCAM120/80)は、それらのCa2+依存性細胞接着における関与、ならびに特有の免疫学的特徴および組織の局在性により同定された。 E型カドヘリンとは異なる組織分布を有することが判明し、その後のN型カドヘリンの免疫学的同定で、新しい科のCa2+依存性細胞-細胞接着分子群が発見されていたことが明白になった。
【0008】
E型カドヘリン[Nagafuchi et al., Nature, 329: 341-343 (1987)]、N型カドヘリン[Hatta et al., J. Cell. Biol., 106: 873-881 (1988)]、およびP型カドヘリン[Noseet al., EMBO J. 6; 3655-3661 (1987)]をコードしている遺伝子の分子クローニングは、カドヘリンが、細胞接着分子の科を含んでいるという構造上の証拠を提供した。 L-CAM [Gallin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84: 2808-2812 (1987)]およびウボモルリン[Ringwald et al., EMBO J. 6; 3647-3653 (1986)]のクローニングは、それらがE型カドヘリンと同一であることを明らかにした。 E型、N型およびP型カドヘリンのアミノ酸配列の比較では、3つのサブクラス間のアミノ酸類似性は約45〜58%であった。 Liaw et al., EMBO J. 9; 2701-2708 (1990) は、E型、N型およびP型カドヘリンの保存領域に基づく縮重オリゴヌクレオチドを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の、ウシ微小血管内皮細胞cDNA由来のN型およびP型カドヘリンの増幅における使用を記述している。
【0009】
PCRによる、さらに8つのカドヘリンの分離が、Suzuki et al., Cell Regulation, 2: 261-270 (1991) に報告された。 続いて、R型カドヘリン[Inuzuka et al., Neuron, 7; 69-79 (1991)]、M型カドヘリン[Donalies, Proc. Natl., Acad. Sci. USA, 88; 8024-8028 (1991)]、B型カドヘリン[Napolitano, J. Cell. Biol., 113; 893-905 (1991)]、T型カドヘリン[Ranscht, Neuron, 7; 391-402 (1991)]等、他のいくつかのカドヘリンが記述されている。
【0010】
加えて、デスモグレイン[Goodwin et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 173: 1224-1230 (1990)およびKoch et al., Eur. J. Cell Biol., 53: 1-12 (1990)]ならびにデスモコリン[Holton et al., J. Cell Science, 97: 239-246 (1990)]というカドヘリンと距離的に関連しているタンパク質が記述されている。 三分子の細胞外領域は、典型的なカドヘリンの細胞外領域に構造上関連しているが、各々独特な細胞質領域を有する。 Mahoney et al., 67: 853-868 (1991)は、やはりカドヘリン関連タンパク質をコードする、fatと称するDrosophilaの腫瘍サプレッサー遺伝子を記述している。 fat腫瘍サプレッサーは、34個のカドヘリン様サブ領域に続いて4つのEGF様反復、貫膜領域、および新規細胞質領域を含む。 これらのカドヘリン関連タンパク質が同定されたことは、カドヘリン細胞外領域刺激を特徴とする大きな超科が存在するという証拠でもある。
【0011】
種々のカドヘリン関連タンパク質の組織発現に関する試験は、分子の各サブクラスが独特の組織分布パターンを有することを明らかにした。 例えば、E型カドヘリンは上皮細胞に見られるが、N型カドヘリンは神経および筋細胞にみられる。 特定の発生段階にある特定の細胞および組織により、個々のタンパク質が発現されると考えられるため、カドヘリン関連タンパク質の発現も、発生中に時間的および空間的に制御されると考えられる[解説については、上記Takeichi (1991)の文献参照]。 カドヘリン関連タンパク質の異所性発現も、カドヘリン関連タンパク質本来の発現の阻害も、正常な組織構造の形成を妨げる[Detrick et al., Neuron, 4: 493-506 (1990); Fujimori et al., Development, 110: 97-104 (1990); Kinner, Cell, 69: 225-236 (1992)]。
【0012】
異なるカドヘリンおよびカドヘリン関連タンパク質の、独特な時間的および組織発現パターンは、in vivoにて、タンパク質の各サブクラスが、正常な現象(例えば、腸上皮関門の維持)および異常な現象(例えば、腫瘍転移または炎症)において果たす役割を考えるとき、特に顕著である。 異なるサブクラスまたはカドヘリン関連タンパク質サブクラスの組み合わせは、治療的検出および/または介入が望ましい、異なる細胞間接着現象の原因になるようである。 例えば、細胞接着の喪失に起因する疱疹形成を特徴とする自己免疫皮膚疾患である、尋常性天疱瘡を有する患者由来の自己抗体は、in vivoでカドヘリンの接着機能を直接援助するカドヘリン関連タンパク質と反応する[Amagai et al., Cell, 67: 869-877 (1991)]。 試験によって、カドヘリンおよびカドヘリン関連タンパク質が、接着作用に加えて調節機能も有することが示唆されている。 Matsunaga et al.,Nature, 334: 62-64 (1988)は、N型カドヘリンが神経突起増生促進作用も有することを報告している。 Drosophila fat腫瘍サプレッサー遺伝子は、哺乳類のE型カドヘリンと同様、細胞成長を制御し、腫瘍浸潤を抑制する[Mathoney et al., supra; Frixen et al., J. Cell. Biol., 113: 173-185 (1991); Chen et al., J. Cell, BIol., 114: 319-327 (1991); and Vleminckx et al., Cell, 66: 107-119 (1991)参照]。 このように、特定の組織に発現されるカドヘリン関連タンパク質の調節作用における治療的介入が望ましいと考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、細胞細胞接着および/または調節現象に関与する付加的カドヘリン関連タンパク質を、同定および特徴付けする技術上の必要性が依然として存在する。 さらに、カドヘリン関連タンパク質が、治療用剤および診断用剤の開発の基礎を形成するところまで、タンパク質コード遺伝子をクローニングすることが不可欠である。 カドヘリン関連タンパク質をコードしているDNA配列およびアミノ酸配列に関する情報は、組み換え技法による大規模なタンパク質生産および自然組織/細胞の同定を提供するであろう。 そのような配列情報は、このタンパク質が関与している天然のリガンド/抗リガンド結合反応の調節に有用な、カドヘリン関連タンパク質と特異的に反応する抗体物質、または他の新規な結合分子の調製も可能にするであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、カドヘリン関連物質および細胞間接着に関連する方法を提供する。 その一態様にて、本発明は、プロトカドヘリン-42およびプロトカドヘリン-43を含み、そこで、プロトカドヘリンと称する新規の細胞接着分子をコードする、精製および分離したポリヌクレオチド(例えば、DNAおよびRNA、センスおよびアンチセンス鎖)を提供する。
【0015】
本発明の好ましいポリヌクレオチド配列は、ゲノムならびにcDNA配列、および全部もしくは一部合成したDNA配列、およびその生物学的複製品(すなわち、in vitroで調製した配列のコピー)を含む。
【0016】
特に、プロトカドヘリンポリヌクレオチド配列は、1992年12月16日に、12301 Parklawn Drive, Rockville, Marylamd 20852に所在のアメリカン・タイプ・カルチュア・コレクション(ATCC)に寄託され、ATCC受託番号第69162号および第69163号が付与された、プラスミドpRC/RSV-pc42およびpRC/RSV-pc43への挿入断片である。
【0017】
本発明のDNAおよびアミノ酸配列の説明を通して開示する情報の科学的価値は明白である。 例えば、プロトカドヘリンをコードしている部分的または完全なDNAの配列に関する知見は、標準的なDNA/DNAハイブリダイゼーション、またはタンパク質をコードしている全長cDNAもしくはDNA配列のPCR法による分離を可能にし、またゲノムDNA配列の場合は、プロモーターやエンハンサー等のプロトカドヘリン特異的調節配列の特定を可能にする。 また、本発明のDNA配列は、従来の技法で化学的に合成してもよい。 ハイブリッド形成およびPCR法でも、この中に明確に示されているプロトカドヘリンと相同の異種タンパク質をコードしているDNAの分離が可能となる。
【0018】
本発明の他の態様によれば、宿主細胞、特に、真核および原核細胞は、細胞にてプロトカドヘリンポリペプチドが発現できる方法で、本発明のポリヌクレオチド配列を安定して形質転換または形質変換される。 プロトカドヘリンポリペプチド生成物を発現する宿主細胞は、適切な培地で成長させたとき、特に、細胞もしくは細胞を培養する培地からの、望ましいポリペプチド生成物の分離を可能にするプロトカドヘリンポリペプチド、断片およびその変異体の大規模な生産に有用である。
【0019】
本発明の新規プロトカドヘリンタンパク生成物は、自然組織起源の分離物として得てもよいが、本発明の宿主細胞を含んだ組み換え法により生産されることが望ましい。 選択した宿主細胞もしくは組み換え生産および/または分離処置後によって、この生成物は、完全または部分的にグリコシル化された形態、部分的または完全に脱グリコシル化された形態、またはグリコシル化されていない形態としてもよい。
【0020】
本発明によるプロトカドヘリン変異体は、特定された1つ以上のアミノ酸が欠失または置換されていることを特徴とする、あるいは不自然にコードされた1つ以上のアミノ酸が加えられていることを特徴とする、ポリペプチド類似体を含んでもよく、(1)プロトカドヘリンに特異的な1つ以上の生物学的活性または免疫学的特性を喪失せずに、増強することが好ましく、または、(2)特に、リガンド/抗リガンド結合機能の特異的無力化を伴うものである。
【0021】
また本発明で意図しているものは、本発明のプロトカドヘリンに特異的な抗体物質(例えば、モノクローナル抗体、キメラおよびヒト化抗体、Fab、Fab'、F(ab')2、FVまたは単一可変領域を含んだ抗体領域、および一本鎖抗体)である。 抗体基質は、分離した天然、組み換え、または合成プロトカドヘリンポリペプチド生成物、あるいはそのような生成物を表面に発現している宿主細胞を使用して発生させることもできる。 本発明のプロトカドヘリンポリペプチドの精製のために、ポリペプチドの組織発現決定のために、またプロトカドヘリンのリガンド/抗リガンド結合作用の拮抗物質として、抗体産物を使用することができる。 本発明の抗体は、1992年12月2日に、ATCCに寄託され、 ATCC受託番号第HB 11207号が付与された、38I2Cと称するイブリドーマ細胞系により産生されるプロトカドヘリン-43特異性モノクローナル抗体である。
【0022】
本発明のプロトカドヘリンアミノ酸、N型カドヘリン、およびDrosophila fat腫瘍サプレッサーのアミノ配列を示す図1A〜Cを参照すれば、下記の詳細な説明を考慮した差異に、本発明の多数の他の態様および長所が明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、プロトカドヘリンポリヌクレオチド配列のPCRによる単離を記している以下の実施例1、2および3により例示される。 実施例3は、本発明の数個のプロトカドヘリン遺伝子の染色体位置を記述している。 実施例4は、プロトカドヘリン-42もしくはプロトカドヘリン-43をコードしているポリヌクレオチドをはじめとする発現プラスミドの構築、ならびにプラスミドによるL細胞の形質変換を示している。 プロトカドヘリン-42およびプロトカドヘリン-43の抗体産生は、実施例5に記述されている。 実施例6は、形質変換したL細胞のプロトカドヘリン-42およびプロトカドヘリン-43の発現に関するイムノアッセイの結果を示している。 実施例7は、プロトカドヘリン-42、プロトカドヘリン-43またはキメラプロトカドヘリン-43/E型カドヘリン分子により形質変換したL細胞の細胞凝集特性をしている。 pc43のカルシウム結合特性を実施例8に記述した。 ノーザンブロット、ウエスターンブロットおよびおよびイン・サイテュハイブリッド形成による、プロトカドヘリン-42およびプロトカドヘリン-43の発現に関する種々の組織および細胞系の検定結果を、実施例9、10および11に示した。 実施例12は、プロトカドヘリン43と共沈する120kDaタンパク質を同定する免疫沈降実験を記している。
【実施例】
【0024】
実施例1
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、カドヘリン関連ポリペプチドをコードしている新規ラットcDNA断片を単離した。
【0025】
PCRプライマーの設計
L-CAM(前出のGallin et al.,)、E型カドヘリン (前出のNagafuchi et al.,)、マウスP型カドヘリン(前出のNose et al.,)、ウボモルリン(前出のRingwald et al.,)、ニワトリN型カドヘリン(前出のHatta et al.,)、マウスN型カドヘリン[Miyatani et al., Science, 245: 631-635 (1989)]およびヒトP型カドヘリン[Shimoyama et al., J. Cell. Biol., 109: 1787-1794 (1989)]に開示されたアミノ酸配列と比較することにより、保存アミノ酸配列の2つの領域、すなわち、第3カドヘリン細胞外サブ領域(EC-3)の中央部由来の1つと、第4細胞外サブ領域(EC-4)のC末端由来のもう1つを同定し、PCRプライマーとして使用するため、IUPAC-IUB生化学的命名法で以下にそれぞれ記述した、相当する縮重オリゴヌクレオチドを設計した。
【0026】
プライマー1(配列番号:1)
5’AARSSNNTNGAYTRYGA 3’
プライマー2(配列番号:2)
3’TTRCTRTTRCGNGGNNN 5’
縮重オリゴヌクレオチドは、Applied Biosystems 380B型DNAシンセサイザー(カリフォルニア州、フォスター市) を用いて合成した。
【0027】
PCRによるcDNA配列のクローニング
ラット脳cDNA調製に関するSuzuki et al., Cell Regulation, 2: 261-270に記載されているものに類似した方法で、PCRを実施した。 Maniatis et al., Molecular Cloning: A laboratory Manual., Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory (1982) の第196頁に記載されている、グアニジウムイソチオシアネート/塩化セシウム法により、全RNAをラット脳から調製した。 FastTrack Rキット(Invitrogen社、カリフォルニア州、サンジェゴ) を使用して脳poly(A)+ RNAを単離し、cDNA合成キット(Boehringer Mannheim Biochemicals社、インジアナ州、インジアナポリス)を使用して、cDNAを調製した。 2.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Boehringer Mannheim Biochemicals社)を、鋳型cDNA 100ngおよび各プライマー10μgに加えることにより、PCR反応を開始し、その後、94℃で1.5分間の変性、45℃で2分間のアニーリング、72℃で3分間の重合を、35反応周期実施した。 PCR反応産物をアガロースゲル電気泳動にかけると、サイズが約450塩基対および130塩基対の2つの大きなバンドが確認された。 450塩基対のバンドは、第3カドヘリン細胞外サブ領域(EC-3)の中央部および第4カドヘリン細胞外サブ領域(EC-4)のカルボキシル末端に相当する2つのプライマー部位間の予測される長さと一致したが、130塩基対バンドは、以前に同定されたカドヘリン配列のどれからも予測できなかった。
【0028】
凍結および解凍法により、450塩基対および130塩基対バンドを抽出した。 結果として生じる断片を、T4ポリヌクレオチドキナーゼにより5'末端でリン酸化し、配列分析のための平滑末端連結反応において、M13mp18(Boehringer Mannheim Biochemicals社)のSmaIに平滑末端を連結することにより、サブクローニングした。 Sequenaseキット(United States Biochemicals社、オハイオ州、クリーブランド) を使用して、ジデオキシヌクレオチド鎖終止法により、断片の配列決定を実施した。 Beckman Microgenieプログラム(Fullerton社、カリフォルニア州) を使用して、DNAおよびアミノ酸配列を分析した。
【0029】
DNA配列の分析
19個の新規部分cDNAクローンを単離した。 クローンのDNAおよび推定されるアミノ酸配列(PCRプライマーに相当する配列を含む)を以下に記載する。 RAT-123(配列番号:3および4)、RAT-212(配列番号:5および6)、RAT-214(配列番号:7および8)、RAT-216(配列番号:9および10)、RAT-218(配列番号:11および12)、RAT-224(配列番号:13および14)、RAT-312(配列番号:15および16)、RAT-313(配列番号:17および18)、RAT-314(配列番号:19および20)、RAT-315(配列番号:21および22)、RAT-316(配列番号:23および24)、RAT-317(配列番号:25および26)、RAT-321(配列番号:27および28)、RAT-323(配列番号:29および30)、RAT-336(配列番号:31および32)、RAT-352(配列番号:33および34)、RAT-441(配列番号:35および36)、RAT-413(配列番号:37および38)、RAT-551(配列番号:39および40)。
【0030】
cDNAクローンの推定されるアミノ酸配列は、公知のカドヘリンと相同であるが、全く別異のものである。 今までに記述されたカドヘリンは、サブ領域の中央領域に位置する共通配列D−Y−EもしくはD−F−E、およびその末端の共通配列D−X−N−E−X−P−X−F(配列番号:41)もしくはD−X−D−E−X−P−X−F(配列番号:42)を含む第3細胞外サブ領域に、高度に保存された、短いアミノ酸配列を有するが、第5細胞外サブ領域(EC-5)を除き、他のサブ領域に相当する配列は、それぞれD−R−EおよびD−X−N−D−N−X−P−X−F(配列番号:43)である。 対照的に、カドヘリン細胞外サブ領域に相当する新規クローンの推定されるアミノ酸配列は、配列D−Y−EもしくはD−F−Eを一端に含むが、D−X−N−E−X−P−X−FもしくはD−X−D−E−X−P−X−Fの代わりに、配列D−X−N−D−N−X−P−X−Fを他端に有する。 部分クローンにコードされたポリペプチドは、以前に同定されたカドヘリンと相同であるが、Genbankの他のいずれの配列とも顕著な相同性を示さなかった。
【0031】
実施例2
実施例1に記載されているプライマー1および2を使用して、PCRにより、実施例1に記載されているラットcDNAに構造的に類似した種々のcDNA断片を、ヒト、マウスおよびXenopus脳cDNA試料ならびにDrosophilaおよびC. elegans全身cDNA試料から単離した。 結果として生じるPCR断片のDNAおよび推定されるアミノ酸配列(PCRプライマーに相当する配列を含む)を以下に記載する。 MOUSE-321(配列番号:44および45)、MOUSE-322(配列番号:46および47)、MOUSE-324(配列番号:48および49)、MOUSE-326(配列番号:50および51)、HUMAN-11(配列番号:52および53)、HUMAN-13(配列番号:54および55)、HUMAN-21(配列番号:56および57)、HUMAN-24(配列番号:58および59)、HUMAN-32(配列番号:60および61)、HUMAN-42(配列番号:62および63)、HUMAN-43(配列番号:64および65)、HUMAN-212(配列番号:66および67)、HUMAN-213(配列番号:68および69)、HUMAN-215(配列番号:70および71)、HUMAN-223(配列番号:72および73)、HUMAN-410(配列番号:74および75)、HUMAN-443(配列番号:76および77)、XENOPUS-21(配列番号:78および79)、XENOPUS-23(配列番号:80および81)、XENOPUS-25(配列番号:82および83)、XENOPUS-31(配列番号:84および85)、DROSOPHILA-12(配列番号:86および87)、DROSOPHILA-13(配列番号:88および89)、DROSOPHILA-14(配列番号:90および91)、およびC. ELEGANS-41(配列番号:92および93)。 推定されるアミノ酸配列の比較から、これらのクローンのセット間の顕著な類似性が判明した。 特に、交差種相同性であると思われる3組のクローン、RAT-218、MOUSE-322およびHUMAN-43;MOUSE-321およびHUMAN-1;MOUSE-326およびHUMAN-42がある。
【0032】
実施例3
PCR生成物により規定にされる新規タンパク質の完全構造を確認するため、cDNA HUMAN-42およびHUMAN-43の一部に相当する2つの全長ヒトcDNAを単離した。
【0033】
全長ヒトcDNAの単離
λZapIIベクターのヒト胎児脳cDNAライブラリー(Stratagene社、カリフォルニア州、ラヨラ) を、32P標識HUMAN-42およびHUMAN-43 DNA断片を用いて、プラークハイブリダイゼーション法[Ausubel et al., Eds., Current Protocols in Molecular Biology, sections 6.1.1 to 6.1.4 and 6.2.1 to 6.2.3、John Wiley & Sons, New York (1987)に記載されている]でスクリーニングした。 陽性クローンをプラーク精製し、さらに、ヘルパーウィルスを使用して、in vivo切除法により挿入断片をBluescript SK(+)プラスミドの形で除去した。 次に、配列決定のため、挿入断片をM13ベクター(Boehringer Mannheim Biochemicals社) にサブクローニングした。 プロトカドヘリン-42(pc42)およびプロトカドヘリン-43(pc43)と称する2つの新規タンパク質の仮想上のコーディング配列を全部含む2つのcDNAを含む各プローブを用いて、いくつかの一部重複するcDNAクローンを単離した。 pc42のDNAおよび推定されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:94および92に記されており、pc43のDNAおよび推定されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:96および97に記述されている。
【0034】
本発明のプロトカドヘリン配列のクローニングに関する説明は、これに関する優先権出願を提出した後、Sano et al., The EMBO Journal, 12 (6): 2249-2256 (1993)に発表された。 pc43の推定されるアミノ酸配列は、1991年12月9日のアメリカ細胞生物学学会会合にて発表された。 発表の要約は、Suzuki et al., J. Cell. Biol., 115: 72a (Abstract 416)(1991年12月9日)として出版されている。
【0035】
全長ヒトクローンの分析
pc42およびpc43の全長cDNA配列と、元々PCRで得られた種々のDNA断片配列との比較で、MOUSE-326およびHUMAN-42はpc42の第4細胞外サブ領域(EC-4)の一部と一致し、RAT-314、MOUSE-321、およびHUMAN-11はpc43の第3細胞外サブ領域(EC-3)の一部と一致し、またRAT-218、MOUSE-322およびHUMAN-43はpc43の第5細胞外領域(EC-5)と一致することが明らかにされた。
【0036】
pc42およびpc43の全体構造は、典型的なカドヘリンのそれと類似しているが、新分子は別の特徴も有する。 両プロトカドヘリンcDNA配列は仮想上のものを含み、翻訳されたアミノ酸配列は典型的なシグナル配列で始まるが、クローンには、公知のカドヘリン前駆体すべてに存在するプロ配列が欠如している。 cDNAは、貫膜配列で接続されている大きなN末端細胞外領域および比較的短いC末端細胞質領域を有するタンパク質をコードする。
【0037】
pc42およびpc43の細胞外領域は長さが異なり、pc42は典型的なカドヘリン細胞外サブ領域に極めて類似した7つのサブ領域を含むが、pc43はそのようなサブ領域を6つ有する。プロトカドヘリン細胞質領域のサイズは典型的なカドヘリンと類似しているが、配列は公知のカドヘリンもしくはカドヘリン関連タンパク質と、顕著な相同性を示さなかった。
【0038】
ヒトpc42およびpc43、ならびにマウスN型カドヘリン(配列番号:98)(「典型的」カドヘリンの例として示した)の細胞外サブ領域と、Drosophila fat腫瘍サプレッサーの18番目の細胞外サブ領域(EC-18、配列番号:99)(fatの18番目の細胞外サブ領域は始原型fat サブ領域)との間のアミノ酸同一性測定値を下記の表1に示し、この中で、例えば、「N-EC-1×pc42」はN型カドヘリンの第1細胞外サブ領域を、水平軸上に示されたpc42の細胞外サブ領域と比較したことを示す。
【0039】
【表1】

ヒトpc42およびpc43の細胞外領域と、N型カドヘリンEC-1からEC-5までおよびDrosophila fat EC-18との間のアミノ酸同一性値はほとんど40%未満である。 これらの値は、他のカドヘリンサブクラスのサブ領域間の値に匹敵する。 しかし、より高い同一性値は、pc42およびpc43が、N型カドヘリンよりfatと密接に関連していることを示す。
【0040】
【表2】

それぞれEC-1、EC-2、EC-3、EC-4、EC-5サブ領域とpc42およびpc43の最終領域との間の同一性値は、プロトカドヘリンとN型カドヘリンの比較で得られる値より一般に高い値である。 これらの結果から、pc42およびpc43は典型的カドヘリンより、互いに密接に関連していることが示唆される。
【0041】
図1A〜Cは、pc42(EC-1からEC-7まで)、pc43(EC-1からEC-6まで)、マウスN型カドヘリン(EC-1からEC-5まで)およびDrosophila fat EC-18の推定されるアミノ酸配列を示す。 図1Aの配列は、図1Bおよび1Cの同一線上に続く。 間隙は、相同性に最大限に導入された。 「モチーフ」ラインに大文字で記述されているアミノ酸残基は、N型カドヘリン、pc42、pc43およびDrosophila fatのサブ領域の半分以上に存在する。
【0042】
モチーフラインに小文字で記述されているアミノ酸残基は、ヒトpc42、pc43、およびDrosophila fatでは、良好に保存されていない。 図1A〜Cは、カドヘリン配列モチーフDXD、DREおよびDXNDNXPXF(配列番号:43)、グリシン残基2個、グルタミン酸残基1個を含め、他のカドヘリン細胞外領域の特徴を示す多くのアミノ酸が、pc42およびpc43配列に保存されていることを示す。 加えて、pc42およびpc43は、N型カドヘリンに比べ、独特な特徴を共有する。 pc42およびpc43サブ領域のアミノ酸末端付近のDXDXGXN(配列番号:100)プロトカドヘリン配列モチーフやサブ領域のカルボキシル末端付近のAXDXGXP(配列番号:101)配列モチーフのように、特定部位にて、より多くのアミノ酸がpc42とpc43の間に保存されている。 加えて、両プロトカドヘリンは、EC-2とEC-4の中間の、EC-1のカルボキシ末端付近および最終反復のカルボキシ末端の(N型カドヘリンの)典型的カドヘリンモチーフと顕著な相同性を示さない領域を共有する。 システイン残基は、pc42およびpc43のEC-4中央部の類似した位置に存在する。 一般に、pc42およびpc43の細胞外サブ領域は、N型カドヘリンの細胞外領域よりfatのEC-18に類似している。
【0043】
可能性がある他の接合
一部重複する種々のプロトカドヘリンcDNAクローンの配列分析で、一部のクローンは3'末端に独特の配列を含むが、5'末端配列は他のクローンと同一であることが明らかにされた。 3'末端領域の境界を形成する配列は、mRNA接合の共通配列と一致し、これらのクローンが代替的に接合したmRNAに相当することが示唆される。 可能性があるpc42 mRNAの1つの代替接合生成物のDNAおよび推定されるアミノ酸配列を、配列番号:102および103に記す。 可能性があるpc43 mRNAの2つの代替接合生成物のDNAおよび推定されるアミノ酸配列を、配列番号:104および105、ならびに配列番号:106および107に記す。
【0044】
染色体の局在性
プロトカドヘリン413遺伝子(配列番号:37)およびpc42およびpc43遺伝子の染色体の位置を、従来の方法で決定した。
【0045】
簡単に記述すると、C3H/HeJ-gldおよびMus spretus(スペイン)マウスならびに[(C3H/HeJ-gld×Mus spretus)F1×C3H/HeJ-gld]種間交雑マウスを、Seldin, et al., J. Exp. Med., 167:688-693 (1988)に記述されている通りに、飼育および維持した。 従来の同系交配実験種を使用する交雑に比べ、情報を提供する制限断片長変異型(RFLVs)の検出は比較的容易なため、Mus spretusを第二代親として選択した。
【0046】
標準技法でマウス臓器から単離したゲノムDNAを制限エンドヌクレアーゼで消化し、サンプル10μgを0.9%アガロースゲル中で電気泳動に適用した。 すべての操作を、前出のManiatis et al.,に記述されている通りに、DNAをNytran膜(Schleicher & Schull社、ニューハンプシャー州、キーン) に転写し、65℃で適切なプローブとハイブリッド形成し、緊縮条件下で洗浄した。 pc42遺伝子を局在させるために、配列番号:94のヌクレオチド1419〜1906に相当するマウス配列プローブを使用し、pc43には、配列番号:96のヌクレオチド1060〜1811に相当するラット配列プローブを使用した。 プロトカドヘリン413遺伝子を局在させるために、配列番号:37に記されている配列を含むプローブを使用した。 この試験でプローブとして使用した他のクローンおよびDNA 位置検出に使用したRFLVs は、すでに述べたものである[染色体7、DNAセグメント、ワシントン12(D7Was12);甲状腺ホルモン(Pth);カルシトニン(Calc);ヘモグロビン、β鎖(Hbb);メタロチオネイン-I(Mt-1) 、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Aprt);成長ホルモン受容体(Ghr);プロスタグランジンE受容体サブタイプ(Ptgerep 2);ジヒドロ葉酸レダクターゼ(Dhfr2);線維芽細胞成長因子a(Fgfa);およびグルココルイコイド受容体-1(Grl-1)]。
【0047】
プロトカドヘリン遺伝子のハプロタイプ分布とマウスゲノムの位置がもれなく決定されている条件下での比較において、それぞれをマウス染色体の特定領域にマッピングすることが可能である。 結合する確率は99%以上で、表示されたpc42遺伝子およびpc43遺伝子双方は、染色体18に対応していた。 カドヘリン413遺伝子は、染色体7に対応していた。 pc42およびpc43遺伝子がマッピングされる染色体18の領域は失調(ax)位置[Burt, Anal. Rec., 196: 61-69 (1980)およびLyon, J. Hered, 46: 77-80 (1955)]および回転 (Tw) 位置[Lyon, J. Embryol. Exp. Morphl, 6: 105-116 (1985)]に相当するが、プロトカドヘリン413遺伝子がマッピングされる染色体の領域は振盪(sh-1)位置に相当する[Kikuchi et al., Acta Oto-Laryngol., 60: 287-303 (1965) およびLord et al., Am. Nat., 63: 453-442 (1929)]。 これらの位置は、遺伝性神経疾患に関与していると考えられてきた。 この結果は、pc42およびpc43が、脳および特に小脳に強力に発現されることを示すインサイテュハイブリッド形成結果(実施例11参照)と一致する。
【0048】
実施例4
pRC/RSV発現ベクター(Invitrogen社、カリフォルニア州、サンジエゴ)を使用して、pc42およびpc43をコードしている全長ヒトcDNAをL細胞(ATCC CCL1)に発現させた。 SspIによる消化に続いて、DNAポリメラーゼによる平滑末端切断およびXbaI(pc42に関して)による消化、あるいはSpeIおよびEcoRV(pc43に関して)による二重消化で、実施例2に記載されているBluescript SK(+)クローンからcDNAを単離した。 pRC/RSV発現ベクターをHindIIIで消化し、続いて、pc42配列の挿入にはXbaIによる平滑末端切断および再消化を行い、pc43配列の挿入にはXbaIで消化した後、SpeIによる平滑末端切断および再消化を行った。 単離したプロトカドヘリンDNAを直線化pRC/RSVベクターに連結した。 結果として生じた、pRC/RSV-pc42(ATCC 69162)と称するpc42発現プラスミドおよびpRC/RSV-pc43(ATCC 69163)と称するpc43発現プラスミドを、塩化セシウム勾配遠心分離で精製し、Ca-リン酸法でL細胞に形質変換した。
【0049】
pc42およびpc43形質変換体は、形態学的に親細胞と類似していた。 pc42またはpc43 DNA配列を形質変換されたL細胞のノーザンブロット分析は、形質変換細胞が、特定のプロトカドヘリンをコードすると期待されるサイズのmRNAを発現することを示した。
【0050】
実施例5
pc42およびpc43に特異的なウサギポリクローナル抗体ならびにpc43に特異的なマウスモノクローナル抗体を生成した。
【0051】
pc42およびpc43に特異的なポリクローナル抗体の調製
pc42およびpc43の細胞外領域のタンパク質をコードしているDNA配列を、各々マルトース結合タンパク質コード配列に融合し、細菌に発現させた。 具体的には、pc42のEC-4からEC-7までとpc43のEC-3からEC-5に相当するDNAをPCRで調製し、正確な読取枠内で、マルチクローニング部位のすぐ上流のマルトース結合タンパク質をコードしている配列を含むpMAL発現ベクター(New England Biolabs社、マサチュセッツ州、ビバリー)のマルチクローニング部位にサブクローニングした。 次に、結果として生じたプラスミドを一工程形質転換法でE. coli NM522細胞(Invitrogen、カリフォルニア州、サンジエゴ)に導入した。 IPTGを加えて融合タンパク質の発現を誘導し、製造業者の使用説明書に従い、アミロース樹脂アフィニティクロマトグラフィ(New England Biolabs社) で融合タンパク質を細胞抽出物から精製した。 それ以上精製せずに、融合タンパク質をウサギの免疫処置に使用した。
【0052】
Freund完全アジュバント中の精製融合タンパク質50μgで、皮下部位4カ所に免疫処置することにより、ウサギ内でポリクローナル抗体を調製した。 融合タンパク質100μgによる次の免疫処置は、Freund不完全アジュバントにて行った。 免疫血清はマルトース結合タンパク質に結合したセファロースゲル(New England Biolabs社) を通過するため、精製融合タンパク質と臭化シアンセファロース(Pharmacia社) との反応により調製したセファロースアフィニティカラムを使用して、免疫血清からポリクローナル抗体を精製した。 ポリクローナル血清と、精製pc42融合タンパク質およびpc42形質変換細胞抽出物(実施例4に記載)との反応性を確認した。
【0053】
pc43特異性モノクローナル抗体の調製
Kennett, Methods in Enzymol., 58: 345-359 (1978)の方法に従って、pc43融合タンパク質(pc43のEC-3からEC-5までのサブ領域を含む)を、マウスにおけるモノクローナル抗体の生成に使用した。 要するに、pc43融合タンパク質(100μg)を用いて、皮下部位2か所でマウスを免疫処置した。 最高抗体価マウス由来の脾臓をNS1骨髄腫細胞系に融合した。 結果として生じたハイブリドーマ上清の、pc43融合タンパク質との反応性およびマルトース結合タンパク質との反応性を、ELISA検定でスクリーニングした。 pc43細胞外領域に対して最高反応性を有する融合ウェルをサブクローニングした。 38I2C(ATCC HB 11207)と称するハイブリドーマ細胞系は、pc43に特異的なIgG1サブタイプモノクローナル抗体を産生する。 実施例に記載されているpc43L細胞形質変換体を免疫ブロッティングすることにより、ハイブリドーマ細胞系38I2Cにより産生したモノクローナル抗体のpc43に対する反応性を確認した。 38I2Cモノクローナル抗体は、ヒトpc43に特異であった。
【0054】
実施例6
実施例4で調製したpc42およびpc43をコードしているDNA配列で形質変換したL細胞を、そのプロトカドヘリンの発現について、免疫ブロットおよび免疫蛍光検顕微鏡法で検定した。
【0055】
免疫ブロット分析
pc42およびpc43形質変換体の細胞抽出物をSDS-PAGEに適用し、次に、電気泳動的にPVDF膜(Millipore社、マサチューセッツ州、ベッドフォード) 上にブロットした。 この膜を、トリス緩衝食塩水(TBS)中の5%スキムミルクと共に2時間、次いで、pc42ポリクローナル血清もしくはpc43モノクローナル抗体のいずれかと共に1時間、それぞれインキュベートした。 この膜を、0.05% Tween 20を含むTBSで3回洗浄(各5分間洗浄)し、アルカリホスファターゼ結合抗ウサギIgG抗体または抗マウスIgG抗体(ウィスコンシン州マジソン、Promega)と、同一緩衝液中で1時間、それぞれインキュベートした。 0.05%Tween 20を含むTBSで膜を洗浄した後、Western Blue溶液(Promega社)を使用して、反応性バンドを可視化した。
【0056】
抗pc42ポリクローナル抗体は、pc42形質変換細胞中の約170kDa分子量のバンドを染色したが、親のL細胞は染色しなかった。 pc43特異的モノクローナル抗体(38I2C)およびポリクローナル抗体は、pc43形質変換細胞中の、約150kDa分子量の隣接する2つのバンドを染色した。 pc43抗体は、親のL細胞を染色しなかった。 pc42およびpc43抗体によるバンドの染色で示される分子量は、推定されるアミノ酸配列から予測される分子量よりはるかに大きい。 この分子量の矛盾は、種々のカドヘリン関連タンパク質の間で共通しており、グリコシル化および/またはカドヘリン特異的構造タンパク質に原因があると考えられる。 pc42抗体は、より小さなバンドも染色するが、これはタンパク質分解生成物と考えられる。
【0057】
形質変換細胞をトリプシン処理し、細胞抽出物を調製し、SDS/PAGEに適用し、さらに適切な抗体で免疫ブロットした時、形質変換細胞により発現されたpc42およびpc43ポリペプチドは、タンパク質分解に極めて敏感であり、0.01%トリプシン処理で容易に消化された。 しかし、典型的なカドヘリンと違って、これらの蛋白は1〜5mM Ca2+の存在下では、消化から保護されなかった。
【0058】
免疫蛍光検顕微鏡法
フィブロネクチンで前被覆したカバースリップ上にて、形質変換細胞を成長させ、4%パラホルムアルデヒドを用いて室温で5分間固定するか、あるいは、氷上冷メタノールで10分間に続いて、4%パラホルムアルデヒド固定を行った。 TBSで洗浄した後、細胞を1%BSAを含むTBSと共に30分間、その後、1%BSAを含むTBS中の抗pc42ポリクローナル抗体もしくはpc43モノクローナル抗体と共に室温で1時間インキュベートした。 次に、カバースリップを0.01%BSAを含むTBSで洗浄し、FITC結合抗ウサギ抗体もしくは抗マウス抗体(Cappel社、ノースカロライナ州、ダラム) と共に室温で60分間、それぞれインキュベートした。 細胞を、0.01%BSAを含むTBSで再度洗浄し、蛍光検顕微鏡法に適用した。 pc42特異的およびpc43特異的ポリクローナル抗体は、両者ともプロトカドヘリンタンパク質を発現している形質変換細胞の細胞周囲、主として、細胞-細胞接触部位を染色した。
【0059】
抗体は、親のL細胞を染色せず、また前免疫処置したウサギ血清もpc42およびpc43形質変換体を染色しなかった。
【0060】
実施例7
プロトカドヘリンタンパク質を発現している形質変換L細胞の細胞凝集特性を試験した。 形質変換L細胞を、5%CO2にて、37℃で、10%ウシ血清を補足したDulbecoのイーグル改良培地(DEME)(Gibco社、ニューヨーク州、グランドアイランド)中で培養した。 融合付近で生育した細胞を、1mM ETGAの存在下、ロータリーシェーカーにて、37℃で25分間、0.01%トリプシン処理し、遠心分離で収集した。 大豆トリプシンインヒビター添加後、Ca2+を含まないHEPES緩衝食塩水(HBS)で細胞を3回洗浄し、1%BSA を含むHBSに再懸濁した。 DMEMと、1%BSA、2mM CaCl2およびデオキシリボヌクレアーゼ20μg/mlを含有するHBSの1:1混合液中に再懸濁した細胞を、ロータリーシェーカーにて、37℃で、30分〜6時間インキュベートすることにより、細胞凝集検定法[Urushihara et al., Dev. Biol., 70: 206-216 (1979)]を実施した。
【0061】
pc42およびpc43形質変換体は、1時間未満のインキュベーション期間中に、顕著な細胞凝集作用を示さなかった。 これは、類似した実験における典型的なカドヘリンで生じる細胞凝集と対照的である(前出のNagafuchi et al., ならびに Hatta et al.,)。 しかし、形質変換細胞を長時間インキュベート(1〜2時間以上)すると、細胞は次第に小集合体に再凝集することになる。 Ca2+の存在下、トリプシン処理により、形質変換細胞の単細胞懸濁液を調製するとき、類似した結果が得られた。 非形質変換L細胞pRC/RSVベクターのみを形質変換したL細胞を試験するとき、同一条件下で、再凝集は確認されなかった。 細胞凝集検定で、DiO(Molecular probes社、オレゴン州、ユージーン) プローブで標識したpc43形質変換体を無標識のpc42形質変換体と共にインキュベートすると、標識細胞と無標識細胞の凝集はほぼ相互に排他的で、プロトカドヘリン結合は同種親和性であることを示した。
【0062】
プロトカドヘリン細胞質領域は明白なカドヘリン領域相同性を示すという事実を考慮して、カドヘリンとプロトカドヘリン形質変換体で観られた細胞凝集作用の違いを、細胞質領域の違いで説明できるかどうかを決定する実験をした。 pc43の細胞質領域をE型カドヘリンの細胞質領域と置き換え、キメラ構造物を形質変換した細胞の凝集を分析した。
【0063】
pc43のコード配列全体を含む、実施例2に記載のBluescriptSK(+)クローンをEcoRVで消化し、次に、XbaIで部分的に消化して、細胞質領域に相当する配列を除去し、アガロースゲル電気泳動法でプラスミドDNAを精製した。 マウス肺mRNAから調製したマウスcDNAおよび細胞質領域配列のN末端に近い領域またはマウスE型カドヘリンの停止コドンを含有する領域に相当する特異的プライマーを鋳型として使用して、PCRによりマウスE型カドヘリンの細胞質領域に相当するcDNAを合成した(前出のNagafuchi et al.,)。 XabI配列は、上流プライマーの5'末端に含まれていた。 次に、E型カドヘリン細胞質領域cDNAを、直線化pc43 Bluescriptクローンにサブクローニングした。 結果として生じたキメラ配列全体を含有するDNAを、SpeIおよびEcoRVで切断し、発現ベクターpRC/RSVベクターのSpeI-平滑XbaI部位にサブクローニングした。 最終的に、結果として得られた構造物をリン酸カルシウム法でL細胞に形質変換した。 G418で約10日間スクリーニングした後、形質変換体をFITC標識38I2C抗pc43抗体で染色し、FACS分析に適用した。 高度に標識した細胞の一部を分離し、クローニングした。 形質変換体は、親のL細胞に類似した形態を示し、免疫蛍光顕微鏡法用pc43抗体を用いて、発現したタンパク質を細胞周囲に局在化させた。
【0064】
キメラ形質変換体の細胞凝集作用を下記のように分析した。 キメラpc43形質変換体を、室温で20分間、DiOで標識した。 結果として得られた細胞を、1mM ETGA存在下でトリプシン処理し、単細胞懸濁液を調製した。 次に、この細胞を他型の無標識形質変換体と混合し、ロータリーシェカーにて、2時間インキュベートした。 蛍光および位相差顕微鏡装置でその結果を調べた。 標準検定媒体中のポリクローナル抗pc43抗体(100ng/ml)の存在下、形質変換体のインキュベーションにより細胞凝集の抗体阻害を調べた。
【0065】
細胞凝集検定で、キメラpc43形質変換体は、40分のインキュベーション時間内に明白なCa2+依存性細胞凝集を示した。 pc43特異的ポリクローナル抗体を加えることにより、細胞凝集は阻害された。
【0066】
実施例8
Maruyama et al., J. Biochem., 95: 511-519 (1984)の手法を使用して、カルシウム-45の存在下および非存在下でウエスタンブロット分析により、pc43のカルシウム結合特性を決定した。 EC-3からEC-5までのpc43サブ領域を含む実施例5に記載のpc43融合タンパク質を、カルシウム結合タンパク質カルモジュリンと比較した。 精製pc43融合タンパク質の試料をSDS/PAGEに適用し、PVDF膜に電気泳動的に転移した。 pc43融合タンパク質への45Ca2+の結合が、オートラジオグラフィーで検出され、カルモジュリンへの45Ca2+の結合とほぼ同じ程度、有効であると決定された。 対照的に、pc43細胞外領域が欠如している精製マルトース結合タンパク質へのカルシウム結合は認められなかった。 EC-3からEC-5までのpc43サブ領域は、E-カドヘリンに見られる仮想上のCa2+結合モチーフと高度に関連する[Ringwald et al., EMBO J., 6: 3647-3653 (1987) 参照]。
【0067】
実施例9
ノーザンブロットにより、pc42およびpc43をコードしているmRNAの種々の組織および細胞系における発現を検定した。
【0068】
グアニジウムイソチオシアネート法で全RNAを調製し、Fast Trackキット(Invitorogen社)を使用してpoly(A)+RNA を単離した。 変性条件下で、RNA調製物を0.8%アガロースゲル中にて電気泳動に適用し、毛細管法を用いてニトロセルロースフィルター上に転移した。 Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 5201-5205 (1980)の方法に従って、ノーザンブロット分析法を実施した。 最終洗浄は、0.2×0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含む標準クエン酸食塩水にて、65℃で10分間行った。
【0069】
成体ラット組織におけるプロトカドヘリンmRNA発現
脳、心、肝、肺、皮膚、腎および筋等のラット組織の全mRNA調製物を、変性条件下で電気泳動的に分離し(10μg mRNA/レーン)、ニトロセルロースフィルター上に転移した。 フィルターを、32P標識cDNA断片MOUSE-326(ヒトpc42のEC-4に相当する)およびRAT-218(ヒトpc43のEC-5に相当する)でハイブリッド形成した。 両プロトカドヘリンのmRNAは、脳で高度に発現した。 pc42プローブは、7kbの大きなバンドとサイズが4kbの小さなバンドを検出し、これは代替接合物の生成物を意味するものと考えられる。 pc43プローブは、サイズが5kbの大きなバンドと、より小さなサイズのバンドを混合体を検出した。
【0070】
ラット脳におけるプロトカドヘリンmRNAの発生的発現
プロトカドヘリンのmRNA発現の発生的制御を試験するため、17日および20日目の胎児、5日および11日目の新生児、および成体ラット由来の脳mRNAを調製し、他のラット組織について上述したノーザンブロット分析に適用した。 βアクチンを、内部標準として使用した。 pc42およびpc43タンパク質のmRNAレベルは、βアクチン発現と比べ、胎児期の脳において上昇した。
【0071】
ヒト細胞系におけるプロトカドヘリンmRNA発現
pc42およびpc43 mRNAの発現用32P標識を使用して、いくつかの神経細胞およびグリア細胞系(ヒトSK-N-SH神経芽細胞腫、ヒトU251グリオーマ、およびマウスNeuro-2a神経芽細胞腫細胞系を含む) をノーザンブロットで検定した。 HUMAN-42(ヒトpc42のEC-4に相当する)およびHUMAN-43(ヒトpc43のEC-5に相当する)cDNA断片を用いてヒト細胞系を精査し、一方、MOUSE-326(ヒトpc42のEC-4に相当する)およびRAT-322(ヒトpc43のEC-5に相当する)cDNA断片を用いてマウス細胞系を精査した。 SK-N-SH ヒト神経芽細胞腫およびU251ヒトグリオーマ細胞は、pc43 mRNAを発現し、Neuro-2aマウス神経芽細胞腫細胞は、pc42 mRNAを発現することが確認された。
【0072】
実施例10
種々の組織、抽出物および細胞におけるpc43タンパク質の発現を、ウエスタンブロットおよび免疫蛍光顕微鏡法で検定した。
【0073】
ラット心筋抽出物における発現
摘出、乳鉢および乳棒で粉末化し、[10mM PIPES(pH 6.8)、50mM NaCl、250mM NH4SO4、300mM 蔗糖、3mM MgCl2]中の0.5%Noindet p40中のポリトロン中で軽く擦り潰し、さらに、15分間微量遠沈した後、液体窒素中で凍結することにより、ラット心非イオン性洗浄剤抽出物を調製した。 試料を、SDS-PAGEで分離し、電気泳動的にニトロセルロースに転移した(Towbin et al., PNAS 76: 4350-4354, 1979)。 実施例6に記載の免疫ブロット法により、pc43に対するウサギポリクローナル抗体で、150kDaおよび140kDAの分子量をもつ2つのpc43タンパク質バンドが検出された。
【0074】
組織切片および細胞における発現
種々の組織におけるプロトカドヘリンの位置を決定するため、ヒトおよびラット成体組織を摘出し、4℃のPBS 中30%蔗糖中で、30分間インキュベートし、低温鋳型内のOCT化合物に包埋した(Tissue-Tek社、インジアナ州、エクハート)。 6ミクロン切片を切断し、スライドガラス上に置いた。 このスライドをPBSで洗浄し、3%P-ホルムアルデヒド中に5分間固定した。 組織切片を透過できるようにするため、スライドを−20℃アセトンに10分間浸漬し風乾した。 2%ヤギ血清およびPBS中の1%BSAで切片を30分間ブロックし、次に、ウサギ抗pc43ポリクローナル抗血清と共に室温で、1時間インキュベートした。 この切片を、0.1%BSAを含むPBS中で3回洗浄し、PBS中の1%BSA中のビオチニル化抗ウサギ(Vector Laboratories社、カリフォルニア州、バーリンゲーム)と共に30分間インキュベートした。 3回洗浄した後、FITC(Vector Laboratories社)と結合したストレパビジンを30分間にわたって加え、再度3回洗浄した。 共局在化試験のため、TRITC接合した二次抗体と共に適切な一次抗体を使用した。
【0075】
A.筋肉
ラット心筋におけるpv43の免疫位置は、pc43が、サルコメアと関連したpc43と一致する反復パターン中に局在することを示した。 サルコメアは、骨格筋および心筋の接着面間の反復収縮単位である。 細胞骨格タンパク質との共局在位置は、デスミンおよびアクチン結合タンパク質ビンクリンならびにαアクチニンと関連したZ線のサルコメアの末端にpc43が存在することを示した。 Fアクチンの薄いッミクロフィラメントは、Z線との間の厚いミオシンフィラメントと関連している。 対照的に、N型カドヘリンは筋細胞:筋細胞収縮部位の接着面接合点の心筋細胞末端に局在している。 心筋におけるpc43の局在から、pc43は、収縮器を原形質膜に固定する際の筋収縮において、ある役割を果たすとことが示唆される。
【0076】
類似したpc43の局在が、ラット骨格筋に認められた。 超構造試験は、デュシェン筋ジストロフィーに欠如している遺伝子生成物であるジストロフィンが筋線維鞘の成分であることを示した[Proter et al., J. Cell. Biol., 117:997-1005 (1992)]。 筋線維鞘は、pc43が局在しているMおよびZ線の収縮器に接続している。
【0077】
B.
ラットおよびヒト小脳の凍結切片上の抗pc43ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体38I2Cの反応性は、それぞれ、大半のpc43発現部位が、プルキンエ細胞および多くの小さなニューロンを含む顆粒細胞相に位置することを示した。
【0078】
C.胎盤
早期(妊娠5〜7週)における胎盤発生において、モノクローナル抗体38I2Cのヒト合胞体層との強力な反応性も確認された。 段階が進行するにつれて、発現は次第に低減するようであり、受精卵の胎盤着床にpc43が関与していることを示した。
【0079】
D.神経芽細胞腫および星状細胞腫
抗pc43抗体を使用したSk-N-SH神経芽細胞腫細胞およびUW28星状細胞腫細胞におけるpc43の免疫細胞化学的局在化で、pc43の点状細胞表面分布が明らかにされ、一部の細胞では、ニューロンの足突起の伸長先端に局在がみられた。 UW28星状細胞腫細胞の細胞−細胞収縮部位では、pc43は一連の平行線に編成されている。 線は収縮部位で始まり、約5ミクロン伸びている。 ローダミン−ファロイジン(Molecular Probes社、オレゴン州、ユージン:使用説明書に従った) で、Fアクチンミクロフィラメントが同定され、細胞中のミクロフィラメントが、細胞収縮部位の端から延びるpc43線状構造の末端に出現することが示された。
【0080】
pc43特異的抗体による免疫ブロッティング試験は、140kDaの分子量を有するタンパク質が、ヒトSk-N-SH神経芽細胞腫細胞およびUW星状細胞腫細胞で認識されることを示した。
【0081】
2つのヒト耳性肉腫細胞系[SaOS(ATCC HTB85)およびMG-63(ATCC CRL 1427)]および正常なヒト柱骨芽細胞培養[Civitelli et al., J. Clin. Invest., 91: 1888-1896 (1993)に記述されている培養系]のモノクローナル抗体38I2Cを用いたpc43の免疫細胞化学的局在化は、UW28星状細胞腫細胞に認められるものと類似したパターンで、骨芽細胞に発現されることを示した。 細胞間収縮部位で、pc43はアクチン緊張線維に相当すると考えられる一連の平行線に編成されている。 加えて、一部の細胞では、収縮細胞突起の先端に局在しているようである。 ノーザンブロット分析は、正常なヒト柱骨芽細胞にpc43が発現されるという証拠を加えた。 pc43特異的DNAプローブは、正常なヒト柱骨芽細胞から分離されたpoly-A mRNA試料中の5kbの大きなバンドにハイブリッド形成した。
【0082】
実施例11
ラット組織の低温切片に、プロトカドヘリン特異的RNAプローブを使用したインサイテュハイブリッド形成を実施した。
【0083】
Promega(ウィスコンシン州、マジソン)が記述している標準法を用いて、センスおよびアンチセンス35S−リボプローブを作った。 MOUSE-326 cDNAクローンの約400bpのEcoRI-XbaI断片を、pc42特異的プローブとして使用した。 この断片は、pc42のEC-3の中央部からEC-4の末端までをコードする。 RAT-218 cDNAクローンの約700bpのSmaI断片を、pc43特異的プローブとして使用した。 この断片は、pc43のEC-3の末端からEC-5の末端までをコードする。
【0084】
ラット成体組織を収集し、直ちに低温鋳型内のOCT化合物(Tissue-Tek)で包埋し、95%エタノール/ドライアイスのバス内で速やかに凍結した。 凍結ブロックは、切断するまで−80℃で保存した。 クリオスタット(Reichert-Jung、#2800型 Frigocut N、Leica社、カリフォルニア州、ギルロイ)を使用して、6ミクロン組織切片を切断した。 切断組織切片を−80℃で保存した。
【0085】
使用したインサイテュプロトコールは、Anger et al., Methods in Enzymology, 152: 649-660 (1987)に記述されているものの変法であった。 すべての溶液をジエチルピロカーボネート(DEPC、Sigma 社、ミズーリ州、セントルイス) で処理し、RNAase混入物を除去した。 最初に、組織切片を、4℃の4%パラホルムアルデヒド中で20分間固定した。
【0086】
余分なパラホルムアルデヒドを除去し、組織固定を停止するため、PBS(リン酸緩衝食塩水)中でスライドを洗浄し、一連の段階的アルコール(70、95、100%)中で変性し、そして、乾燥した。 インサイテュ中に組織がスライドグラスからはずれないように、室温で10分間、組織切片をポリ-L-リジン溶液(Sigma)で処理した。 組織中の全RNAを変性するため、70℃で20分間、切片を77%ホルムアミド/2×SSC溶液(0.15M NaCl/0.3Mクエン酸ナトリウム、pH 7.0)に入れ、その後冷却した2×SSC中で洗浄し、一連の段階的アルコール中で脱水し、そして乾燥した。 乾燥するとすぐに、最終ハイブリッド形成温度で約4時間、切片をハイブリッド形成緩衝液[50%ホルムアミド/50mM DTT(ジチオスレイトール)/0.3M NaCl/20mM Tris、pH 8.0/5mM EDTA/1×Denhardt's(0.02% Ficoll Type 400/0.02%ポリビニルピロリドン/0.02%BSA)/10%硫酸デキストラン]中でハイブリッドを前形成した。 ハイブリッド前形成した後、約1×106cpmの適切なリボプローブを各切片に加えた。 切片は一般に、45℃で一晩(12〜16時間)でハイブリッド形成した。 確認されるハイブリッド形成を確実に特異的にするため、一部の実験では、ハイブリッド形成温度を50℃に上昇させることにより、ハイブリッド形成力を高めた。 45℃および50℃の実験にて、共に類似した結果を得たため、使用した標準ハイブリッド形成温度は45℃とした。
【0087】
余分な、非ハイブリッド形成プローブを除去するため、一連の洗浄液に切片を通した。
【0088】
最初に4×SSCで切片を洗浄してハイブリッド化溶液およびプローブのバルクを除去した。 次に、4×SSC/50mM DDTで、室温で15分間洗浄した。 強力な洗浄液も使用した。 50%ホルムアミド/2×SSC/50mM DDTで、60℃で40分間洗浄した。 室温で4回(2×SSCで2回、0.1×SSCで2回)、各10分間ずつ、最終洗浄した。 洗浄したスライドを、一連の段階的アルコール中で脱水し、そして、乾燥した。
【0089】
ハイブリッド形成したプローブを可視化するため、dH2Oに1:1希釈したKodak NTB核乳濁液(International Biotechnology社、コネチカット州、ニューヘブン) に浸漬した。 曝露時間を適正にするため、乾燥後すぐに、スライドを4℃で遮光箱の中に保存した。 2人が無関係にインサイテュスライドを調べ、ハイブリッド形成信号の陽性または陰性を評定した。
【0090】
すべてのインサイテュハイブリッド形成試験を、ラット組織に実施した。 ノーザンブロット実験(実施例9参照)の結果が、pc42もpc43も成体脳に発現されることを示したため、インサイテュハイブリッド形成試験を実施して、これらの分子の特定の脳細胞型への発現を局在化した。 正常な成体ラット脳で認められるハイブリッド形成は特異的で(センスプローブを用いると、バックグラウンド・ハイブリッド形成は認められなかった)、脳の特定の位置に局在している。 pc42およびpc43で認められる発現の型は、全体的に極めて類似しており、主な違いは発現レベルであった。 両分子は海馬の胚および錐体細胞、小脳のプルキンエ細胞および灰白質のニューロンに発現される。 加えて、pc42は白質のグリア細胞に発現されるが、グリオーマ細胞系におけるpc43の発現(実施例9に記述)と違って、正常なグリア細胞におけるpc43の発現は認められなかった。 脊髄では、両プロトカドヘリン共に、灰白質の運動神経に発現され、pc42は白質のグリア細胞に発現される。
【0091】
EAE(実験的アレルギー性脳脊髄炎)ラット由来の脳および脊髄の両プロトカドヘリン分子の発現を分析すると[Vandenbark et al., Cell. Immunol., 12: 85-93 (1974)]、上記と同じ構造が陽性であることが確認された。 加えて、EAA組織の白血球浸潤物にpc42の発現が確認された。 2つの白血球細胞系、RBL-1およびy3のインサイテュハイブリッド形成分析で、白血球におけるpc42の発現が確認された。
【0092】
試験したすべての発生学的日(E15-E19)において、ラット胎児の脳にプロトカドヘリン-42および-43の両発現が認められた。 加えて、試験した全ての発生学的日(E13-E19)に、ラット胎児の心臓にプロトカドヘリン-43が認められた。 この結果は、成体心臓におけるプロトカドヘリン-43発現を示す免疫組織化学結果と一致する。
【0093】
実施例12
pc43特異的ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体38I2Cを用いて、定型的な免疫沈降を実施して、L細胞形質変換体のpc43と相互に作用するタンパク質を同定した。
【0094】
35S]メチオニン(50uCi/ml)を含む、Dulbecoのイーグル改良培地中で細胞を一晩インキュベートすることにより、pc43およびキメラpc43形質変換体を代謝的に標識した。 洗浄後、TritonX100を含むPBSで形質変換体を溶解し、抗pc43抗体とインキュベートした。 タンパクA−セファロースビーズを使用して、免疫複合体を収集した。 結果として生じたビーズを、室温で、洗浄緩衝液(50mM Tris-HCl、pH 8.0、0.5M NaClを含む、0.1%卵アルブミン、0.5%NP-40、0.5 %TritonX100および1mM EDTA)で5回洗浄した。 タンパク質を、SDS-PAGEで分離し、オートラジオグラフィーに適用した。
【0095】
抗αカテニンおよび抗βカテニン抗体を、比較可能なバンドを染色するため、キメラpc43は、それぞれα−およびβカテニンに相当すると考えられる105kDaおよび95kDaバンドと共沈した。 一方、pc43は、120kDaバンドを共沈した。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本願発明は、カドヘリン関連タンパク質をコードしているDNA配列およびアミノ酸配列に関する情報を提供する。 このような配列情報は、組み換え技法による大規模なタンパク質生産および自然組織/細胞の同定を行う上で有用である。 また、本願発明によって提供された配列情報は、カドヘリン関連タンパク質と特異的に反応する抗体物質、または他の新規な結合分子を調製する際に役立ち、これら物質は、対象とするタンパク質が関与している天然のリガンド/抗リガンド結合反応を調節する上で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1A】PC42、PC43、Drosophila fat EC-18、およびマウスN型カドヘリンの推定アミノ酸配列を示す図である。
【図1B】PC42、PC43、Drosophila fat EC-18、およびマウスN型カドヘリンの推定アミノ酸配列を示す図である。
【図1C】PC42、PC43、Drosophila fat EC-18、およびマウスN型カドヘリンの推定アミノ酸配列を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトカドヘリン-42をコードする精製および単離したポリヌクレオチド。
【請求項2】
プロトカドヘリン-43をコードする精製および単離したポリヌクレオチド。
【請求項3】
DNAである請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
cDNAである請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
ゲノミックDNAである請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
全体的または部分的に化学合成したDNAである請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
配列番号:94に記載の配列をコードするプロトカドヘリン-42を含む請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号:96に記載の配列をコードするプロトカドヘリン-43を含む請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項3に記載のDNAを含む、ことを特徴とする生物学的機能性DNAベクター。
【請求項10】
前記DNAが、発現制御DNA配列に操作的に結合する請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
プロトカドヘリンポリペプチドの宿主細胞での発現を許容する方法にて、請求項3に記載のDNAで安定的に形質転換または形質変換された、ことを特徴とする宿主細胞。
【請求項12】
適切な栄養培地にて請求項11に記載の宿主細胞を成長させ、および当該細胞またはその成長培地からプロトカドヘリンポリペプチドを単離する工程を含む、ことを特徴とするプロトカドヘリンポリペプチドを製造する方法。
【請求項13】
精製および単離したプロトカドヘリン-42。
【請求項14】
精製および単離したプロトカドヘリン-43。
【請求項15】
プロトカドヘリン-42に特異的な抗体。
【請求項16】
プロトカドヘリン-43に特異的な抗体。
【請求項17】
モノクローナル抗体である、請求項15または16に記載の抗体。
【請求項18】
請求項16に記載の抗体を産生し、かつATCC受託番号第 HB 11207号が付与されたハイブリドーマ細胞系。
【請求項19】
プロトカドヘリンと、請求項15に記載の抗体とを接触させる工程を含む、ことを特徴とするプロトカドヘリン-42の結合活性を調整する方法。
【請求項20】
プロトカドヘリンと、当該プロトカドヘリンのペプチドリガンドを接触させる工程を含む、ことを特徴とするプロトカドヘリン-42の結合活性を調整する方法。
【請求項21】
プロトカドヘリンと、請求項16に記載の抗体とを接触させる工程を含む、ことを特徴とするプロトカドヘリン-43の結合活性を調整する方法。
【請求項22】
プロトカドヘリンと、当該プロトカドヘリンのペプチドリガンドを接触させる工程を含む、ことを特徴とするプロトカドヘリン-43の結合活性を調整する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【公開番号】特開2006−109840(P2006−109840A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302922(P2005−302922)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【分割の表示】特願平6−515472の分割
【原出願日】平成5年12月23日(1993.12.23)
【出願人】(503068602)ドーニー アイ インスティテュート (1)
【Fターム(参考)】